JPH06235453A - 自動変速機のライン圧制御装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 走行レンジへのシフトの応答遅れを防止す
る。 【構成】 レンジ選択スイッチ１を操作することによる
電気的信号に基づいて動作してレンジを設定するための
油圧の供給路を切換えるレンジ設定バルブ２と、ライン
圧の調圧レベルを電気的信号に基づいて変えるライン圧
調圧機構３とを備えた自動変速機４のライン圧制御装置
において、前記自動変速機４で設定されているレンジを
検出するレンジ検出手段５と、停車状態を設定するため
のレンジが前記レンジ検出手段５で検出されかつ前記レ
ンジ選択スイッチ１により走行のためのレンジが選択さ
れたときに、ライン圧の調圧レベルを高くする指示信号
を前記ライン圧調圧機構３に出力する制御手段６とを備
えている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、スイッチ操作に基づ
く電気的な信号によってレンジ設定バルブを切換え動作
させるいわゆるシフトバイワイヤー自動変速機において
ライン圧を制御するための装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般的な車両用自動変速機は、前進走行
のための各変速段は、車速やスロットル開度等に基づい
て自動的に設定するように構成されているが、車両を停
車状態に維持するパーキングもしくはニュートラル状態
や後進段あるいはエンジンブレーキの効く前進段の設定
などは、運転者の手動操作に基づいて行うようになって
いる。このレンジの選択のための機構は、従来、運転席
に設けたシフトレバーと自動変速機のバルブボデーのマ
ニュアルバルブとを、ケーブルおよびリンク機構を介し
て連結した構造のものが一般的である。

【０００３】これに対して最近では、各種の電気的な制
御機器の信頼性が高くなり、またコストも下がってきて
いることにより、変速段の設定のみならず、レンジの選
択をも電気的な手段を介して行うようになってきてい
る。その一例が特開昭６１−２７８６４７号公報に記載
されている。この公報に記載された装置は、レンジの選
択のためのシフトバルブとしてロータリーバルブを使用
したものであって、シフトスイッチを操作することに基
づくコントローラからの指令信号によりモータを駆動
し、このモータによってロータリーバルブのスプールを
回転させて油圧を送る油路を切換えるように構成されて
いる。

【０００４】またこの公報に記載された装置は、摩擦係
合装置が急激に係合することによるショックを緩和する
ための圧力制御弁を備えている。すなわちロータリーバ
ルブが走行レンジを設定するように切り替わった場合
に、走行レンジで係合させるべき摩擦係合装置に供給さ
れる油圧を、圧力制御弁によって比較的低圧の係合開始
油圧に調圧するとともに、その後、次第に圧力を高くし
て完全締結油圧にまで昇圧するようになっている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上述した電気的信号に
基づいてレンジの切換えを行ういわゆるシフトバイワイ
ヤー自動変速機では、レンジの切換えのために運転者に
要求される操作はスイッチ操作のみであるから、運転者
の行う操作は極めて簡単なものである。しかしながら実
際にレンジが切り替わるためには、モータに通電されて
所定のトルクを発生し、それによりロータリーバルブが
回転し、その結果、油路の切換えが行われた後に、その
油路を介して油圧が所定の摩擦係合装置に供給されるこ
とが必要である。そのため、運転者に要求される操作
と、各機構の動作による実際のレンジの切換え動作との
差が大きくなり、これが応答遅れとして体感されること
になる。

【０００６】すなわち従来のレバー操作によりレンジの
切換えを行う装置であれば、運転者の切換え操作がその
ままマニュアルバルブに伝達され、手動操作とマニュア
ルバルブとの動作とが一致していたため、応答の遅れ感
が生じることはほとんどなかったが、シフトバイワイヤ
ー自動変速機では、運転者の操作が軽減されたことに反
し、レンジの切換えのためのバルブとの間にモータなど
のアクチュエータを新たに介在させることになったの
で、レンジの切換えの応答遅れが増幅される余地が多
い。

【０００７】さらに上述した公報に記載された装置で
は、ロータリーバルブが切り替わった後に、係合油圧を
係合開始油圧から完全締結油圧に次第に昇圧するように
構成しているから、走行レンジを設定するべく係合させ
られる摩擦係合装置が、その走行レンジを設定するため
に必要とするトルク容量をもつまでの時間が長くなり、
これがレンジ切換えの応答遅れを更に増大させる不都合
があった。

【０００８】この発明は、上記の事情に鑑みてなされた
もので、シフトバイワイヤー自動変速機において走行レ
ンジを設定する際のレンジ切換えの応答遅れを解消する
ことのできるライン圧制御装置を提供することを目的と
するものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】この発明は、上記の目的
を達成するために、図１に示す構成としたことを特徴と
するものである。すなわちこの発明は、レンジ選択スイ
ッチ１を操作することによる電気的信号に基づいて動作
してレンジを設定するための油圧の供給路を切換えるレ
ンジ設定バルブ２と、ライン圧の調圧レベルを電気的信
号に基づいて変えるライン圧調圧機構３とを備えた自動
変速機４のライン圧制御装置において、前記自動変速機
４で設定されているレンジを検出するレンジ検出手段５
と、停車状態を設定するためのレンジが前記レンジ検出
手段５で検出されかつ前記レンジ選択スイッチ１により
走行のためのレンジが選択されたときにライン圧の調圧
レベルを高くする指示信号を前記ライン圧調圧機構３に
出力する制御手段６とを備えていることを特徴とするも
のである。

【００１０】

【作用】この発明で対象とする自動変速機のレンジは、
レンジ選択スイッチ１を操作することにより設定され
る。すなわちレンジ選択スイッチ１を操作することによ
り出力される電気的信号に基づいてレンジ設定バルブ２
が動作し、選択されたレンジを設定するように油圧を所
定箇所に供給する。その場合、自動変速機に設定されて
いるレンジがパーキングレンジなどの車両を停車状態に
維持するレンジであれば、これがレンジ検出手段５によ
って検出されるとともに、レンジ選択スイッチ１で選択
されたレンジが走行のためのレンジであれば、制御手段
６がライン圧の調圧レベルを高くしてライン圧を高くす
るための信号をライン圧制御機構３に出力する。したが
って停車状態を維持するレンジから走行レンジに切換え
る場合、その走行レンジを設定するための摩擦係合装置
に対する油圧の供給が迅速に行われ、そして走行レンジ
を設定するようにレンジ設定バルブ２が切り替わった時
点では高い圧力のライン圧が走行レンジを設定するため
の摩擦係合装置に供給されてこれが直ちに係合し、前記
選択された走行レンジが迅速に設定される。すなわち機
構上での応答遅れをカバーするように油圧の供給が迅速
化される。

【００１１】

【実施例】つぎこの発明の実施例を図面を参照して説明
する。図２はこの発明の一実施例を示すブロック図であ
って、エンジン１０に連結された自動変速機１１は、い
わゆるシフトバイワイヤー自動変速機であり、レンジを
設定するためのマニュアルバルブ１２にモータなどのア
クチュエータ１３が付設され、そのアクチュエータ１３
によってマニュアルバルブ１２を切換え動作させて所定
のレンジに設定するようになっている。なお、このマニ
ュアルバルブ１２は、従来一般のスプールを直線移動さ
せる形式のものや前述した公報に記載されたロータリー
バルブを使用できる。またアクチュエータ１３は、電気
信号に基づいて動作するものであれば良いのであって、
モータ以外のものを使用することもできる。

【００１２】選択されたレンジを設定するべくアクチュ
エータ１３を制御する電子制御装置（以下、仮にＳＢＷ
−ＥＣＵと記す）１４が設けられている。このＳＢＷ−
ＥＣＵ１４は、マイクロコンピュータを主体とするもの
であって、運転者によって手動操作されるレンジ選択ス
イッチ１５と自動変速機１１において実際に設定されて
いるレンジを検出するレンジセンサ１６とが接続されて
いる。このレンジセンサ１６は、所定の油路や摩擦係合
装置への油圧の給排状態から走行レンジが設定されてい
るか否かを検出するものであって、一例として油圧スイ
ッチを使用することができる。

【００１３】また図に示す自動変速機１１は、スロット
ル開度に応じてライン圧を高くするように構成されてお
り、そのための手段として、リニアソレノイドバルブ１
７が設けられている。このリニアソレノイドバルブ１７
は、ライン圧調圧機構の一部をなすものであり、そのラ
イン圧調圧機構としては、例えば、油圧ポンプで発生さ
せた油圧と、リニアソレノイドバルブ１７で調圧した油
圧とを、スプールを挟んで対抗させることにより、リニ
アソレノイドバルブ１７で設定した圧力を発生させるよ
うに構成した機構を採用することができる。

【００１４】このリニアソレノイドバルブ１７を制御す
るための手段として、自動変速機用電子制御装置（以
下、仮にＥＣＴ−ＥＣＵと記す）１８が設けられてい
る。このＥＣＴ−ＥＣＵ１８には、スロットル開度セン
サ１９からの検出信号と、前記レンジセンサ１６からの
検出信号とが入力され、さらにＳＢＷ−ＥＣＵ１４から
制御レンジ信号すなわちレンジ選択スイッチ１６で選択
したレンジの信号が入力されている。

【００１５】つぎに上述した装置の作用について説明す
る。図３は上述した装置によるライン圧の制御ルーチン
を示すフローチャートであって、ステップ１では、自動
変速機１１で設定されているレンジが停車のためのレン
ジすなわちパーキング（Ｐ）レンジあるいはニュートラ
ル（Ｎ）レンジか否かを判断する。この判断は前記レン
ジセンサ１６の検出信号に基づいて行うことができる。
その判断結果が“イエス”の場合には、ステップ２にお
いて制御レンジすなわちレンジ選択スイッチ１５で選択
したレンジが走行のためのレンジ、すなわち前進走行の
ためのレンジ（Ｄレンジ、“２”レンジ、Ｌレンジ）あ
るいはリバース（Ｒ）レンジであるか否かを判断する。
この判断は、ＳＢＷ−ＥＣＵ１４から制御レンジ信号が
ＥＣＴ−ＥＣＵ１８に送信されていることにより行うこ
とができる。そしてその判断結果が“イエス”であれ
ば、ライン圧を予め定めた所定の圧力まで高くする制御
を実行する（ステップ３）。これは、その走行のための
レンジを設定する摩擦係合装置の係合の遅れを防止する
ための制御であり、したがってライン圧の設定圧力は、
その摩擦係合装置の係合によるショックが過大にならな
い範囲で高く設定される。また油圧の供給速度は粘性が
高いほど遅くなり、スロットル開度が大きいほどライン
圧が高められるから、ステップ３での目標設定圧力は油
温やスロットル開度に応じて変えてもよい。

【００１６】ライン圧の昇圧制御の指令信号の出力と同
時に前記アクチュエータ１３に駆動信号を出力するが、
マニュアルバルブ１２の動作および走行レンジを設定す
るための所定の摩擦係合装置に対する油圧の供給に遅れ
があるので、ステップ３に続くステップ４では、自動変
速機１１の実際のレンジが、走行のためのレンジに切り
替わったか否かを判断する。応答遅れのために自動変速
機１１のレンジが走行のためのレンジに切り替わってい
ない場合、すなわちステップ４の判断結果が“ノー”の
場合には、制御プロセスはリターンし、また自動変速機
１１のレンジが走行のためのレンジに切り替わった場
合、すなわちステップ４の判断結果が“イエス”になっ
た場合には、ステップ５に進んでタイマＴをスタートさ
せる。そのカウント値が予め定めた時間αになるまでカ
ウントを継続する。

【００１７】この時間αは、走行レンジを設定するため
の摩擦係合装置における油圧サーボのピストンが移動す
る直前までオイルが充満するに要する時間であって、そ
の時間αが経過した後、すなわちステップ６の判断結果
が“イエス”になった場合には、その摩擦係合装置が急
激に係合することを防ぐために、ライン圧を通常の圧力
まで降下させるライン圧復帰制御を実行する（ステップ
７）。なお、その時間αは、予め設定した一定時間でな
く、油温などの油圧の給排速度に関係するパラメータに
基づいて変化させる時間であってもよい。

【００１８】一方、ステップ１もしくはステップ２の判
断結果が、“ノー”の場合、すなわち自動変速機１１で
設定されているレンジもしくは制御レンジのいずれかが
前進もしくは後進のためのレンジであれば、通常のライ
ン圧の制御を行う（ステップ８）。

【００１９】上述した制御におけるライン圧の変化のタ
イムチャートを示せば、図４のとおりであり、ｔ1 時点
で走行レンジへのシフトが行われると、これと同時にラ
イン圧の昇圧制御が実行される。ついで自動変速機１１
のレンジがｔ2 時点に走行レンジに切り替わり、この時
点から所定時間αが経過したｔ3 時点に、ライン圧を通
常の圧力に降下させる制御が行われる。その結果、摩擦
係合装置の係合までの時間が短縮され、またその摩擦係
合装置の係合は通常のライン圧によって行われ、変速シ
ョックが大きくなることはない。

【００２０】したがって上述したライン圧制御を行う自
動変速機１１においては、パーキングレンジもしくはニ
ュートラルレンジからドライブレンジなどの走行のため
のレンジにシフトした場合、そのシフトの指示信号の出
力と同時にライン圧を高くするから、走行レンジを設定
するための摩擦係合装置の係合までのディレイタイムが
短くなり、その結果、レンジ切換えの応答性が良好にな
る。

【００２１】

【発明の効果】以上説明したようにこの発明によれば、
レンジを設定するためのマニュアルバルブを電気信号に
基づいて動作するアクチュエータによって駆動する自動
変速機であっても、停車状態を維持するレンジから走行
のためのレンジに切り換える際にライン圧を高くするの
で、走行レンジを設定するための摩擦係合装置が係合す
るまでの時間を短縮でき、その結果、走行レンジへの切
換えの応答性を向上させ、変速フィーリングが良好にな
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の基本的な構成を示すブロック図であ
る。

【図２】この発明の一実施例を説明するためのブロック
図である。

【図３】この発明の装置によるライン圧制御ルーチンを
示すフローチャートである。

【図４】この発明の装置によるライン圧制御時のライン
圧の変化を示すタイムチャートである。

【符号の説明】

１ レンジ選択スイッチ ２ レンジ設定バルブ ３ ライン圧調圧機構 ４ 自動変速機 ５ レンジ検出手段 ６ 制御手段

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 レンジ選択スイッチを操作することによ
   る電気的信号に基づいて動作してレンジを設定するため
   の油圧の供給路を切換えるレンジ設定バルブと、ライン
   圧の調圧レベルを電気的信号に基づいて変えるライン圧
   調圧機構とを備えた自動変速機のライン圧制御装置にお
   いて、 前記自動変速機で設定されているレンジを検出するレン
   ジ検出手段と、停車状態を設定するためのレンジが前記
   レンジ検出手段で検出されかつ前記レンジ選択スイッチ
   により走行のためのレンジが選択されたときにライン圧
   の調圧レベルを高くする指示信号を前記ライン圧調圧機
   構に出力する制御手段とを備えていることを特徴とする
   自動変速機のライン圧制御装置。