JPH0568556U - 防火区画体の長尺物貫通部の防火措置構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 鉄管を使用する必要がなく、プラスチック製
のサヤ管が本来の機能を損なうことのない防火措置構造
を実現する。 【構成】 防火区画体１の開口部２の開口方向両側に耐
火性仕切り板５を配置し、その開口部２及び耐火性仕切
り板５の挿通孔４に長尺体３を貫通し、両耐火性仕切り
板５に囲まれた内側空間部６に耐火材７を充填してなる
防火区画体の長尺物貫通部の防火措置構造において、前
記挿通孔４の内側において長尺体３の外周に、半円筒状
の包囲部材８の内面に半円筒状の熱膨張性耐火材９を取
付けた防火具１０を複数個向かい合わせて包被させて充
填配置させた。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は建築物の床や壁等（防火区画体）の開口部にケーブルや合成樹脂製の パイプなどの長尺物を貫通した場合に、その貫通部に火災延焼防止のために施す 防火区画体の長尺物貫通部の防火措置構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

防火区画体の開口部にケ−ブル、パイプ等の長尺物を貫通させた場合、同長尺 物貫通部から防火区画体の反対側へ火災が延焼するのを防止するため、該貫通部 に防火措置を施す義務がある。この防火措置構造には従来より各種構造のものが ある。

【０００３】 従来の防火措置構造の主なものとして図６に示すようなものがある。これは長 尺体３が貫通された防火区画体１の開口部２の両外側にけい酸カルシュ−ム製の 耐火仕切り板５を配置し、両耐火仕切り板５に囲まれた内側空間部６内にロック ウ−ル等の耐火材７を充填したものである。

【０００４】 この場合、長尺体３がプラスチック管路の場合は図６の様にそれを不燃性の鉄 パイプ２０内に挿入し、且つ鉄パイプ２０を防火区画体１の外側に夫々１ｍ以上 突出させる必要がある（建築基準法により）。

【０００５】 前記長尺体３が電線ケ−ブルであり、しかも図７のように電線ケ−ブル３がプ ラスチック製のサヤ管２１内に配線されている場合は、わざわざサヤ管２１を切 断して耐火仕切り板５の両外側に耐熱パテ２２を詰めている。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

図６の防火措置構造では次のような問題があった。 火災時の温度上昇によりプラスチック管路３が収縮変形して、鉄管２０と その開口端部に封止したパテ２３との間に隙間ができ、プラスチック管路３の燃 焼による焼失跡に空洞が生じ、その空洞内を熱気、煙、炎が通って火災が防火区 画体１の反対側に延焼してしまう。 防火区画体の両外側に鉄管２０を１ｍも突き出すことは、狭い配管、配線 スペース（ＥＰＳ）内では不可能に近い。

【０００７】 図７の防火措置構造ではプラスチック製のサヤ管２１が切断されてケ−ブル３ しか貫通されていないので耐火上の問題はないが、サヤ管本来の機能であるケ− ブル保護機能及びケ−ブル３を通線するときのガイドとしての機能が全く損なわ れてしまうという問題があった。

【０００８】 本考案の目的は図６のように鉄管２１を使用する必要がなく、図７のプラスチ ック製のサヤ管が本来の機能を損なうことのない防火区画体の長尺物貫通部の防 火措置構造を実現するものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】

本考案の防火区画体の長尺物貫通部の防火措置構造は、例えば壁を貫通させる 場合には図３のように防火区画体（壁）１の開口部２の開口方向両側に耐火性仕 切り板５を配置し、その開口部２及び耐火性仕切り板５の挿通孔４に長尺体３を 貫通し、両耐火性仕切り板５に囲まれた内側空間部６に耐火材７を充填してなる 防火区画体の長尺物貫通部の防火措置構造において、前記挿通孔４の内側の長尺 体３の外周に、半円筒状の包囲部材８の内面に半円筒状の熱膨張性耐火材９を取 付けた防火具１０を複数個向かい合わせて包被させて充填配置してなるものであ る。

【００１０】

【作用】

本考案の防火区画体の長尺物貫通部の防火措置構造は図３のように、防火区画 体（壁）１の開口部２の開口方向両側に耐火性仕切り板５を配置し、その開口部 ２及び耐火性仕切り板５の挿通孔４に長尺体３を貫通し、両耐火性仕切り板５に 囲まれた内側空間部６に耐火材７を充填した後、図１の様に長尺体３の外周に防 火具１０を２つ向かい合わせて被せ、両防火具１０を耐熱線１１により連結し、 その状態で図１の耐火性仕切り板５の挿通孔４内に押し込むと、挿通孔４と長尺 体３の間の空間が閉塞される。しかも、防火具１０の熱膨張性耐火材９は火災時 の熱により膨張するので、長尺体３がプラスチックパイプの場合、同プラスチッ クパイプが火災時の熱で消失すると同時に膨張して、プラスチックパイプの焼失 跡が閉塞され、延焼が防止される。

【００１１】

【実施例】

本考案の防火区画体の長尺物貫通部の防火措置構造を図３の実施例に基づいて 詳細に説明する。図３の防火措置構造は建物の壁（防火区画体）１に形成した開 口部２の開口方向両側に耐火性仕切り板５を配置し、その開口部２及び耐火性仕 切り板５の挿通孔４にプラスチック管路、プラスチック製サヤ管路等の長尺体３ を貫通し、この耐火性仕切り板５により囲まれた内側空間６内にロックウ−ル等 の耐火材７を充填し、更に、挿通孔４の内側の長尺体３の外周に防火具１０を２ 個向かい合わせて被せてある。この場合、図３のように防火具１０の係止片１２ が耐火性仕切り板５の内面に係止するようにする。

【００１２】 前記の防火具１０は例えば図１に示す様に金属板製の半円筒状の包囲部材８の 内面に半円筒状の熱膨張性耐火材９を取付けてなる。前記包囲部材８は熱膨張性 耐火材９の膨張圧に耐える材質、構造のものでなければならない。なぜならば、 火災側の耐火仕切り板３は２時間程の耐火試験中に熱収縮を起こして強度が低下 し、熱膨張性耐火材９の膨張圧を直接受けると破損してしまうためである。その ため包囲部材８は加工性、剛性に富んだ鉄板などで図２のように半円筒状に形成 される。また、包囲部材８はその軸線方向一端に半円形フランジ状のストッパ− １３が外側に突出するように形成され、軸線方向他端に半円状の受縁１４が内側 に突出するように形成され、周方向下部に耐火性仕切り板５に係止する係止片１ ２が形成されている。

【００１３】 前記ストッパ−１３は防火具１０を図３のように耐火性仕切り板５の挿通孔４ 内に挿入した時に耐火性仕切り板５の内面に係止して挿通孔４への挿入を規制す るものであり、前記受縁１４は熱膨張性耐火材８を支持するものであり、前記係 止片１２は図１のように耐火性仕切り板５の挿通孔４内に挿入した時に、耐火性 仕切り板５の内面に係止して脱落及び抜けを防止するものである。

【００１４】 前記熱膨張性耐火材９には例えば「ダンシ−ルＦ」（商品名：古河電気工業株 式会社製）が使用される。この「ダンシ−ルＦ」は既にある程度発泡した発泡体 であり、熱容量が小さく且つ体積発泡率が高い。従ってその内部の熱が速やかに 伝導されて素早く、しかも大きく膨張する。しかも発泡体であるので柔らかく、 長尺体Ｃに馴染み易く、また発泡後は断熱性に富んだ灰化生成物に変化するため 、非常に断熱効果が高いという利点もある。

【００１５】 前記熱膨張性耐火材９としては「ダンシ−ルＤ」（商品名：古河電気工業株式 会社製）を使用してもよい。この「ダンシ−ルＤ」は発泡していないパテ状の組 成物で成形された可撓性のあるシ−ト状物あり、熱容量が大きく且つ密度が高い 。従って、発泡により比較的低速ではあるが強力な押圧力で合成樹脂製可撓管（ 長尺体Ｃ）を押し潰すことができ、同可撓管内が完全に閉塞される。しかも前記 「ダンシ−ルＦ」と同様に、発泡後は断熱性に富んだ灰化生成物に変化するため 非常に断熱効果が高い。

【００１６】 前記熱膨張性耐火材１としては前記以外に、例えばフォモックス（商品名：西 独バイエル社）、ファイヤ−ストップ（商品名：米国ダウ・コ−ニング社）、シ −ト状の膨張性耐火材であるケミ−リンツ社のインタメックスＬ、硬化性の熱膨 張性耐火パテ（ケミ−リング社のインタメックスＭＷ）等も使用できる。

【００１７】 防火区画体１の開口部２を貫通するプラスチック管路等の長尺体３が同開口部 ２の付近において確実に支持固定されれば、熱膨張性耐火材９として非硬化型の 熱膨張性防火パテを使用しても、プラスチック管路３が揺れたり、ズレたりして 非硬化性パテが変形する恐れがないので、一向に差し支えない。

【００１８】 図４は本考案の防火区画体の長尺物貫通部の防火措置構造の他の実施例を示す ものであり、防火区画体１が床で、しかも、その開口部２に長尺体３としてプラ スチック管路を貫通した場合の実施例である。図４（ａ）は防火区画体１の上下 に配置した耐火性仕切り板５の挿通孔４に上方と下方から防火具１０を挿入した 例、図４（ｂ）は防火区画体１の下に配置した耐火性仕切り板５の挿通孔４に下 方から防火具１０を挿入し、防火区画体１の上に配置した耐火性仕切り板５の挿 通孔４に耐熱パテ１７を充填した例、図４（ｃ）は防火区画体１の上下に配置し た両耐火性仕切り板５の夫々の挿通孔４に共に上方から防火具１０を挿入した例 である。

【００１９】 図５は長尺体３が空調機器の配管に多用され、その冷媒管３が床１を貫通する 場合の例である。この冷媒管３は銅管１５の外周に可燃性断熱層１６が被覆され ている。この場合は、防火区画体１の開口部２の内側に埋込んである鉄板製の箱 （筐体）１６内にロックウ−ル等の耐火材７を充填し、その筐体１６の下部と上 部に耐火性仕切り板５を配置し、その耐火性仕切り板５の挿通孔４内に防火具１ ０を挿入固定したものである。

【００２０】 図１の１８は熱膨張性耐火材９の周方向両端前面上下に取付けた連結片であり 、これは長尺体３の両外側に図１の様に向かい合わせて対向させた防火具１０同 士を耐熱線１１で連結するためのものである。

【００２１】 本考案の防火措置構造を示す図３〜図５について、ＪＩＳ Ａ１３０４による ２時間耐火試験を実施した結果、プラスチック管路（長尺体）３が変形、収縮、 溶解すると同時に、防火具１０の熱膨張性耐火材９が包囲部材８の内側で膨張し て、プラスチック管路３が圧縮閉塞され、延焼が防止された。即ち、建築基準法 による防火措置構造の条件を満足させる構造であった。

【００２２】

【考案の効果】

本考案の防火措置構造は次のような効果がある。 鉄管を使用しなくとも建築基準法による防火措置構造の条件を満たすので 鉄管が不要となり、狭い配管、配線空間でも防火措置構造が可能となる。 プラスチック製のサヤ管を図７の様に切断しなくとも防火措置を施すこと ができるので、サヤ管本来の機能であるケーブル挿入時のガイド管又はケーブル 保護管としての機能が損なわれない。 ケ−ブルとプラスチック管路が混在して防火区画体１の開口部２を貫通す る場合でもそのまま施工可能な防火措置構造となる。 施工性も良く、防火具１０が耐火性仕切り板５の挿通孔４から脱落するこ ともない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の防火措置構造用防火具の一例を示す説
明図。

【図２】図１の防火措置構造用防火具の包囲部材の一例
を示す説明図。

【図３】本考案の防火措置構造の一例を示す縦断面図。

【図４】（ａ）（ｂ）（ｃ）は本考案の防火措置構造の
各種例を示す縦断面図。

【図５】本考案の防火措置構造の他例の説明図。

【図６】従来の防火措置構造の一例の説明図。

【図７】従来の防火措置構造の他例の説明図。

【符号の説明】

１ 防火区画体 ２ 開口部 ３ 長尺体 ４ 挿通孔 ５ 耐火性仕切り板 ６ 内側空間 ７ 耐火材 ８ 熱膨張性耐火材

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 防火区画体１の開口部２の開口方向両側
   に耐火性仕切り板５を配置し、その開口部２及び耐火性
   仕切り板５の挿通孔４に長尺体３を貫通し、前記両耐火
   性仕切り板５に囲まれた内側空間部６に耐火材７を充填
   してなる防火区画体の長尺物貫通部の防火措置構造にお
   いて、前記挿通孔４の内側の長尺体３の外周に、半円筒
   状の包囲部材８の内面に半円筒状の熱膨張性耐火材９が
   取付けられた防火具１０を複数個向かい合わせ包被させ
   て充填配置したことを特徴とする防火区画体の長尺物貫
   通部の防火措置構造。