JPH0595133U - 防火区画体における断熱被覆管貫通部の防火構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 施工が容易で、床下で作業を行う必要がな
く、多数本の断熱被覆管を一括して施工でき、耐熱性、
耐火性に優れたものにする。 【構成】 防火区画体１の貫通孔２内に耐火性スリ−ブ
３を配置し、その耐火性スリ−ブ３内に断熱被覆管４を
貫通し、耐火性スリ−ブ３の底に耐火仕切り板５を配置
する。更に、その耐火仕切り板５の上において、断熱被
覆管４の周囲を熱膨張性耐火材６により包み、その熱膨
張性耐火材６の外周に、その膨張により変形破壊されな
い強度の耐火性補強体７を設け、耐火性スリ−ブ３内の
空間に耐火性充填材８を充填する。 【効果】 床上での作業だけですみ、作業性が良く、施
工スペ−スが縮小され、狭い天井空間での配管の自由度
が大きくなり、耐火性、耐熱性に優れる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案の防火構造は、建築物の床や壁等の防火区画体を、断熱被覆管が貫通す る貫通部に適した防火構造に関するものであり、特に、多数本の断熱被覆管が防 火区画体を貫通する場合の防火構造として適するものである。

【０００２】

【従来の技術】

工場、ビル等の建物では床や壁等の防火区画体に貫通孔を開けて、そこに冷媒 通路用の断熱被覆管、ケ−ブル、樹脂製パイプ等の長尺物を貫通させている。そ の場合、貫通孔と長尺物との間の隙間を耐火材で埋め戻す等して防火措置を施さ なければならない。

【０００３】 そこで従来は、断熱被覆管等を貫通させた場合は図７のような防火構造にして いた。図７の防火構造は保護管としての不燃性鋼管Ａを、防火区画体（床）Ｂの 貫通孔Ｃ内に上下に突出するように貫通配置し、両者の間隙部にモルタルＤを充 填して固定し、この鋼管Ａ内に冷媒通路用の断熱被覆管（銅管の外周に断熱被覆 を施したもの）Ｅを配管し、鋼管Ａの軸線方向両端部において、断熱被覆管Ｅの 周囲に熱膨張耐火材Ｆを巻つけ、この熱膨張耐火材Ｆの外側を２つ割りの押え金 具Ｇで被覆して、内側の熱膨張耐火材Ｆが外側に膨張せずに内側（被覆銅管側） にのみ膨張するようにしたものである。

【０００４】 図７の防火構造では、防火区画体Ｂの下（床下）で火災が発生すると、床下に 露出している断熱被覆管Ｅの断熱被覆層（ポリエチレンフォ−ム等の可燃物）Ｈ が消失すると、床下の熱膨張耐火材Ｆが内側に膨張して、断熱被覆層Ｈの消失跡 の空間が埋められ、床下の火炎、煙等が床上に伝播しないようしたものである。

【０００５】 図７の防火構造は、熱膨張耐火材Ｆを使わずに、鋼管Ａ内に配管した断熱被覆 管Ｅの断熱被覆層Ｈを除去して、代りに鋼管Ａ内にロックウ−ル等の不燃材を充 填する防火構造に比して、結露の心配がないという利点はあるが、次のような問 題点があった。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

１．防火区画体（床）Ｂの上下が対称構造であるため、防火区画体Ｂの上（床 上）だけでなく、下（床下）でも作業をしなければならず、施工に高所作業を伴 い、ハンドリング等、作業条件が悪く、施工能率が悪かった。 ２．多数本の断熱被覆管Ｅが貫通されている場合は、各断熱被覆管Ｅ毎に鋼管 Ａを防火区画体Ｂの貫通孔Ｃ内に貫通配置し、その外側にモルタルＤを充填して 固定したり、熱膨張耐火材Ｆを取り付けたり、押え金具Ｇを取り付けたりしなけ ればならないので、作業が面倒であった。 ３．防火区画体Ｂの強度低下を防ぐために、鋼管Ａを防火区画体Ｂに密接して 設置することはできず、少なくとも防火区画体Ｂの貫通孔Ｃの内周面から鋼管Ａ の外周面まで１０ｃｍ程度は離さなければならない。このため広いスペ−スを必 要とし、狭いパイプシャフトスペ−スのなかでは施工が困難となる。 ４．鋼管Ａの床下への突出長も２０〜３０ｃｍ必要となり、スペ−スの狭い天 井、床空間で断熱被覆管Ｅを直角に曲げなければならない場合には困難を伴う。

【０００７】 本考案は、施工が容易で、特に、床下で作業を行う必要がなく、狭いスペ−ス に配管された多数本の断熱被覆管を一括して施工でき、しかも耐熱性、耐火性に 優れた防火構造を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

本考案の防火構造は、図１〜図３のように、防火区画体１の貫通孔２内に耐火 性スリ−ブ３を配置し、その耐火性スリ−ブ３内に断熱被覆管４を貫通し、耐火 性スリ−ブ３の底に耐火仕切り板５を配置し、耐火仕切り板５の上で断熱被覆管 ４の周囲に熱膨張性耐火材６を設け、熱膨張性耐火材６の外周にその膨張により 変形破壊されない強度の耐火性補強体７を設置し、残る耐火性スリ−ブ３内の空 間に耐火性充填材８を充填してなるものである。

【０００９】

【作用】

本考案の防火構造では、火災が発生するとその熱で膨張性耐火材６が膨張する 。この場合、熱膨張性耐火材６は耐火性補強体７により拘束されているので外側 には膨張できず、専ら内側（断熱被覆管４側）に膨張する。このため、断熱被覆 管４の断熱被覆層９が火災で焼失して生ずる空間が、膨張した熱膨張性耐火材６ により確実に閉塞される。

【００１０】

【実施例】

本考案の防火構造の一実施例を図１〜図３に基づいて詳細に説明する。図１〜 図３中符号１は防火区画体（床）、２は防火区画体に開口されている貫通孔、３ は貫通孔２の内周に埋め込んだ横長筒状の耐火性スリ−ブ、４は耐火性スリ−ブ ３内に貫通配管した断熱被覆管である。この断熱被覆管４は例えば、銅管１０の 外周に難燃性発泡ポリエチレンなどによる断熱被覆層９を施したものである。

【００１１】 図１〜図３中符号５は耐火性スリ−ブ３の底部の上に配置した不燃材製の耐火 仕切り板（例えばケイ酸カルシウムを主成分とする耐火仕切り板：通称ケイカル 板）、６は耐火仕切り板の上に設けた熱膨張性耐火材である。この熱膨張性耐火 材６は断熱被覆管４の周囲に、例えば５０ｍｍ程度の高さに盛り上げる。また熱 膨張性耐火材６の厚さ（図３の横方向の肉厚）は断熱被覆管４の断熱被覆層９の ５０％以上あれば十分である。

【００１２】 前記の熱膨張性耐火材６には、例えば、ダンシ−ル−Ｄ（商品名：古河電気工 業株式会社製）が適する。このダンシ−ル−Ｄは発泡（膨張）していないパテ状 の組成物で成形された可撓性のあるシ−ト状物であり、熱容量が大きく且つ密度 が高く、熱により発泡して膨張し、しかも発泡後は断熱性に富んだ灰化生成物に 変化するため非常に高い断熱効果を発揮するものである。従って、発泡により比 較的低速ではあるが、強力な押圧力で断熱被覆管４の断熱被覆層９の消失跡の空 間が閉塞され、しかも非常に高い断熱効果が得られる。

【００１３】 図１〜図３中符号７は熱膨張性耐火材６の外周に配置した耐火性補強体である 。この実施例の耐火性補強体７は、耐火性の材料を熱膨張性耐火材６と同じ高さ で充填することによって形成される。この耐火性補強体７には熱膨張性耐火材６ が膨張しても変形したり破壊したりせず、断熱被覆管４を埋設、撤去する際に容 易に除去可能な性質の材料を使用するのが良い。これには例えば、難燃シリコ− ンゴム、カットシ−ルＷ、モルライト又は密度２５０ｋｇ／ｍ³ 以上のロックウ −ルなどが適する。

【００１４】 図１〜図３中符号８は耐火性充填材であり、これは耐火性スリ−ブ３の残りの 内部空間に充填されている。この耐火性充填材１８としては、ロックウ−ル、セ ラミックフエルト、モルライト、カットシ−ルＷ等の不燃材又はシリコ−ン発泡 体などの難燃材が適当である。

【００１５】 前記耐火性補強体７には鋼板を用い、それを図４のように熱膨張性耐火材６の 外周を囲むように配置してもよい。この場合、鋼板の変形を防ぐために鋼板に補 強用のリブ又はビ−トを入れておくのがよい。

【００１６】 また、耐火性補強体７にはケイ酸カルシウムを主成分とする耐火仕切板または セラミック系を主成分とする耐火仕切板を用い、それを図５のように熱膨張性耐 火材６の外周に設置することも有効である。

【００１７】 また、図６のように熱膨張性耐火材６の表面に硬化性難燃エポキシ樹脂を２〜 ５ｍｍ厚にコ−テイングして、それを耐火性補強体７としてもよい。

【００１８】

【考案の効果】

本考案の防火構造は次のような効果がある。 ．従来の防火構造では床下の作業が必要であったが、本考案の防火構造では 床上からの作業だけですむため、作業性が大幅に向上する。 ．多数本の断熱被覆管４を一括して施工できるので、この面からも作業性が 改善され、しかも施工スペ−スが大幅に縮小できる。 ．床下への防火構造の突出がないので、狭い天井空間での配管の自由度が大 きくなる。 ．熱膨張性耐火材６を使用するので、耐火性、耐熱性に優れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の防火構造の一実施例を示す正面図。

【図２】同実施例の防火構造の縦断平面図。

【図３】同実施例の防火構造の縦断側面図。

【図４】本考案の防火構造の第２の実施例を示す縦断側
面図。

【図５】本考案の防火構造の第３の実施例を示す縦断側
面図。

【図６】本考案の防火構造の第４の実施例を示す縦断側
面図。

【図７】従来の防火構造の一例を示す縦断面図。

【符号の説明】

１ 防火区画体 ２ 貫通孔 ３ 耐火性スリ−ブ ４ 断熱被覆管 ５ 耐火仕切り板 ６ 熱膨張性耐火材 ７ 耐火性補強体 ８ 耐火充填材

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 防火区画体１の貫通孔２内に耐火性スリ
   −ブ３を配置し、その耐火性スリ−ブ３内に断熱被覆管
   ４を貫通配管し、耐火性スリ−ブ３の底に耐火仕切り板
   ５を配置し、耐火仕切り板５の上で断熱被覆管４の周囲
   に熱膨張性耐火材６を設け、熱膨張性耐火材６の外周に
   その膨張により変形破壊されない強度の耐火性補強体７
   を設置し、残る耐火性スリ−ブ３内の空間に耐火性充填
   材８を充填してなることを特長とする防火区画体におけ
   る断熱被覆管貫通部の防火構造。