JPH0562658B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、自動車の無段変速機等に用いられる
Ｖベルトに関する。

（従来の技術） 従来のＶベルトとしては、例えば、時開昭57−
22442号公報に記載されているようなものが知ら
れている。

この従来のＶベルトは、相互に重ね合せたリン
クプレート１００から成る複数のリンクプレート
１００の組と、前記リンクプレート１００の関節
作用を可能になす様に各個のリンクプレート１０
０の組を相隣るリンクプレート１００の組に連結
するピン１０１と、各相隣るピン１０１，１０１
の間に配置され、駆動装置と接触する様に附形さ
れた側縁を有する荷重ブロツク１０２とより構成
されたものであつた。

（発明が解決しようとする問題点） しかしながら、このような従来のＶベルトにあ
つては、リンクプレート１００とピン１０１とに
よつて構成されるチエーンが単列であり、荷重ブ
ロツク１０２はリンクプレート１００に支持され
る（以下リンクマウントという）構造であつたた
め、従来のＶベルトがプーリに巻き付く時には、
第１２図に示すように、相隣るピン１０１₁，１
０１₂を結ぶ線（ピツチ線pl′）を一辺とする多角
形的な巻き付き方であり、プーリに最初に接触噛
み合い始めるリンクプレート１００₁のピン１０
１₁位置p₁′は、半ピツチ（ピツチ＝ピン間距離）
進むとp₂′の位置となり、半径方向に変位して振
幅ΔL′による弦振動が発生する。ここで振幅
ΔL′は、 ΔL′＝Ｒ／cosθ−Ｒ＝Ｒ（１／cosθ−１） θ＝tan^-1（１／２pich／Ｒ） Ｒ；走行半径 θ；半ピツチ回転角 であらわされる。

従つて、大きな振幅ΔL′による弦振動が発生す
ることになり、接触噛み合い時にプーリと荷重ブ
ロツクとが衝突する衝突音が発生したり、また、
Ｖベルトの全長が一定であるため振幅ΔL′の弦振
動によりＶベルトが伸びたり、プーリの入出力軸
間距離が変化して軸振動が発生し、ケースを共鳴
箱として外部に騒音を発生してしまうという問題
点があつた。

特に、ピツチが一定なためベルトピツチ１次に
相当する周波数の騒音が異常に大きくなる。

一方、ピツチが長ければ長い程、弦振動の振幅
ΔLも大きく音の発生エネルギも大きくなること
が知られている。

例えば、Ｖベルト走行半径Ｒ＝50mm、Pich＝
８mm、４mmについて振幅ΔLを計算すると、 ΔL₈＝0.16mm ΔL₄＝0.04mm となり、pichの２乗に比例して振幅ΔLが大きく
なることがわかる。

以上のことから騒音低減には、半径方向の運動
成分が減少するようにピツチを短かくすることが
有効であるが、現状のチエーンではピツチを短か
くすると、ピン径、リンクプレート幅が小さくな
り、強度が低下する。このため、排気量２程度
の自動車に適用するにぱPich9.5mm〜８mm程度が
限界である。

（問題点を解決するための手段） 本発明は、上述のような問題点を解決すること
を目的としてなされたもので、この目的達成のた
めに、本発明では、多数のリンク要素を関節作用
が可能なようにピンにて連結されたチエーンと、
該チエーンが挿通するチエーン窓を有し、両側面
にプーリのＶ溝に接触するプーリ接触面が形成さ
れた荷重ブロツクとを組み付けることにより構成
されるＶベルトにおいて、前記チエーンを、その
ピン位置をピツチ方向に互いにずらして並列に配
列させた複数列のチエーンとし、前記荷重ブロツ
クを、チエーンの数に対応して複数のチエーン窓
を有すると共に、ピン位置に配置されるチエーン
窓の内面両側にピン収納部が形成された荷重ブロ
ツクとしたことを特徴とするＶベルトとした。

（作用） 従つて、本発明のＶベルトでは、上述のよう
に、チエーンを、そのピン位置をピツチ方向に互
いにずらして並列に配列させた複数列のチエーン
としたため、各チエーンのピツチは所定のピツチ
長のままであつても、ピン位置のピツチ方向ずれ
により、各チエーンで発生する弦振動は位相がず
れて振幅を小さくするように作用し、チエーン全
体としてのピツチが実質的に短くなつたのと同様
な弦振動を示す。

このように、各チエーンは所定のピツチ長を保
持できることで高いチエーン強度が確保されると
同時に、弦振動の振幅がちいさくなるのでプーリ
への接触噛み合い時の騒音が低減される。

加えて、ピン位置に配置される荷重ブロツクの
チエーン窓の内面両側にピン収納部を形成し、ピ
ン位置にも荷重ブロツクを配置させるようにして
いるため、ピン位置を除く位置にのみ荷重ブロツ
クを配置させる場合のように、プーリへの接触噛
み合い時に間欠的なプーリ衝突音の発生や各荷重
ブロツクの負担荷重増大が防止される。

（実施例） 以下、本発明の実施例を図面により詳述する。
尚、この実施例を述べるにあたつて、自動車用無
段変速機に用いられるＶベルトを例にとる。

まず、実施例の構成を説明する。

実施例のＶベルトＡは、第３図に示すように、
駆動側プーリ１のＶ溝１ａと従動側プーリ２のＶ
溝２ａとに掛け渡されるもので、駆動側プーリ１
は駆動側固定プーリ１０１と駆動側可動プーリ１
０２とから構成され、従動側プーリ２は従動側固
定プーリ２０１と従動側可動プーリ２０２とから
構成されている。

尚、両可動プーリ１０２，２０２が外力（油圧
力やバネ力や遠心力等）により回転方向は一体回
転し、かつ、軸方向に移動し、ＶベルトＡの回転
半径を変えることで無段変速比が得られる。

ＶベルトＡは、第１図、第２図及び第４図〜第
７図に示すように、第１チエーン３、第２チエー
ン４、荷重ブロツク５、最終組付荷重ブロツク６
によつて構成されているもので、以下各構成要素
を具体的に述べる。

前記第１チエーン３及び第２チエーン４は、前
記駆動側プーリ１及び従動側プーリ２から加わる
ＶベルトＡへの引張力を受ける部材で、同構造の
第１チエーン３と第２チエーン４は、ピン位置を
半ピツチ（1/2）だけベルト長さ方向にずらし
て並列に配列されている。

そして、第１チエーン３は、第１リンクプレー
ト３１と第１ピン３２により構成され、第２チエ
ーン４は第２リンクプレート４１と第２ピン４２
により構成されている。

尚、前記第１リンクプレート３１及び第２リン
クプレート４１は、長円板状の金属材により形成
され、ベルト幅方向に５枚配列され、ベルト長さ
方向に交互に重ね合せ状態で配列されている。

前記第１ピン３２及び第２ピン４２は、関節作
用を可能となすように前記第１リンクプレート３
１及び第２リンクプレート４１を連結させる部材
で、この第１ピン３２及び第２ピン４２は第１リ
ンクプレート３１及び第２リンクプレート４１の
ピン穴３１ａ，４１ａに差し込まれる。

前記荷重ブロツク５は、前記駆動側プーリ１及
び従動側プーリ２から加わるＶベルトＡへの面圧
力（プーリ推力）を主に受ける部材で、前記第１
ピン３２と第２ピン４２との各ピン位置にそれぞ
れ２枚配置され、第１チエーン３及び第２チエー
ン４を取り囲む形状に打抜成形された鋼板材で形
成されている。

この荷重ブロツク５には、第１図に示すよう
に、両プーリ１，２のＶ溝１ａ，２ａに対応する
傾斜面によるプーリ接触面５１，５１と、前記第
１チエーン３及び第２チエーン４に対応する第１
チエーン窓５２及び第２チエーン窓５３と、両チ
エーン窓５２，５３の一方の内面両側位置に形成
されるピン収納部５４，５４と、を備えている。

尚、前記プーリ接触面５１，５１は、耐摩耗性
を高めるために熱処理及び表面加工が施されてい
る。

前記第１チエーン窓５２及び第２チエーン窓５
３は、左右対称位置に開穴され、第１チエーン３
及び第２チエーン４に対して図面上下方向及び左
右方向にわずかの隙間t₁，t₂をもたせた窓形状と
している。前記第２チエーン窓５３には、第１図
に示すように、ピン収納部５４，５４のそれぞれ
の上下位置にリンクガイド面５３ａが４箇所形成
されていて、リンクに対する両側からのガイド作
用により、リンクの整列性を良くすると共に音や
強度を向上させている。

前記ピン収納部５４，５４は、第１ピン３２及
び第２ピン４２に対して隙間余裕のある形状で切
除され、第１ピン３２の位置と第２ピン４２の位
置に配置する場合にはピン収納部５４，５４の位
置と異なるが、これは同形状の荷重ブロツク５を
組付け時に反転させて組付けることで対応させて
いる。

また、荷重ブロツク５…同士が接触する面の一
方には、両プーリ１，２に巻き付く時の接触干渉
を防止するため逃げ傾斜面５５が形成されてい
る。

前記最終組付荷重ブロツク６は、第６図及び第
７図に示すように、実施例のＶベルトＡを組付け
る時に、前記荷重ブロツク５が第１チエーン窓５
２及び第２チエーン窓５３に両チエーン３，４を
挿通させることで組立けられるブロツクであるの
に対し、最後に組付けるブロツクだけは両チエー
ン３，４の上下のどちらからか組付けられるブロ
ツクである必要があることで形成されたブロツク
で、主ブロツク部６ａと組付けプレート６ｂとで
構成されている。

主ブロツク部６ａは、両チエーン３，４に対し
下からの差し込み組付けができるように、前記荷
重ブロツク５の上辺部を切除した形状の部材で、
プーリ接触面６１，６１と、第１チエーン窓用溝
６２及び第２チエーン窓用溝６３と、ピン収納部
６４，６４と、プレート挿入溝６５，６５とブロ
ツク側係合部６６，６６とが形成されている。

尚、プレート挿入溝６５のブロツク厚み方向の
開口寸法は、組付けプレート６ｂの幅に対応して
設定され、プレート６ｂの組込時にプレート６ｂ
が係合部６６，６６へ向けて通過できる最小寸法
としてある。

尚、主ブロツク部６ａの厚みは、前記荷重ブロ
ツクの厚みのほぼ倍の厚みであり、ブロツク同士
の接触面の一方には逃げ傾斜面６７が形成されて
いる。

組付けプレート６ｂは、前記主ブロツク部６ａ
に係合状態で組み付けられる部材で、両端部にプ
レート側係合部６８，６８が形成されている。

尚、前記主ブロツク部６ａの第１のチエーン窓
用溝６２と第２チエーン窓用溝６３は、組付けプ
レート６ｂを組付け係合させた状態で第１チエー
ン窓及び第２チエーン窓になる。

次に、実施例の作用を説明する。

(イ) ＶベルトＡの組付け時 ＶベルトＡの組付け時には、第１チエーン３
と第２チエーン４との組付けを先行させなが
ら、各チエーン３，４のピン位置を確かめて、
各ピン３２，４２位置に２枚ずつの荷重ブロツ
ク５を組付ける。

この荷重ブロツク５の組付けは、荷重ブロツ
ク５の両チエーン窓５２，５３に両チエーン
３，４を挿通させることで行なわれ、各ピン３
２，４２は荷重ブロツク５の挿通でピン収納部
５４，５４に収まる。

そして、無端状のチエーンとなすために最終
のピンでリンクプレートとを連結した後は、最
終組付荷重ブロツク６の主ブロツク部６ａを両
チエーン３，４の下方から差し込み、次いで、
組付けプレート６ｂをプレート挿入溝６５，６
５から下方に差し込むと共に横方向に押し込ん
でブロツク側係合部６６，６６とプレート側係
合部６８，６８とを係合させて組付けを完了す
る。

尚、組付けプレート６ｂは、横方向に押し込
んでの係合で組付けられることで、ＶベルトＡ
の使用時、特に両プーリ１，２への巻き付き時
に若干の間隔が形成されても脱落することがな
い。

また、ＶベルトＡの長さを変えたり、Ｖベル
トＡの痛んだ部品を交換する時も、最終組付荷
重ブロツク６を外し、組付けとは逆に分解する
ことで行なわれる。

(ロ) ＶベルトＡの使用時 第３図に示すように、ＶベルトＡを駆動側プ
ーリ１と従動側プーリ２とに掛け渡しての使用
時で、ＶベルトＡがプーリに巻き付く時には、
第８図に示すように、相隣る第１ピン３２と第
２ピン４２とを結ぶピツチ線plを一辺とする多
角形的な巻き付き方となり、プーリに最初に接
触噛み合いを始めるリンクプレート３１₁の第
１ピン３２₁位置p₁は、半ピツチ進むとp₂の位
置となり振幅ΔLによる弦振動が発生する。

しかしながら、実施例では、両チエーン３，
４のピン位置を1/2だけずらして配列させてい
ることで、各チエーン３，４で発生する弦振動
の位置ずれにより、両リンクプレート３１，４
１及び荷重ブロツク５を介して互いに半径方向
のリンク変位量を小さくすように、すなわち振
幅ΔLを小さくするように作用する。

つまり、第１チエーン３の第１ピン３２₁が
関節作用で半径方向に離れようとするのに対
し、この第１ピン３２₁の前後位置に配置され
る第２ピン４２₀，４２₁は第１ピン３２₁を中
心Ｏに向かつて近づけるように作用し、また逆
に、第２ピン４２₁に対しても第１ピン３２₁，
３２₂が同様に作用し、ＶベルトＡの走行軌跡
Ｄをほぼ内接円とする1/2の長さのピツチ線
plによる多角形が形成されることになる。

従つて、各チエーン３，４のピツチはｌであ
つても、チエーン全体としては、ほぼ1/2ピツ
チ（1/2ｌ）のチエーンに近い振幅ΔLによる弦
振動を示す。

以上説明してきたように、実施例のＶベルトＡ
にあつては、第１チエーン３と第２チエーン４と
の第１ピン３２と第２ピン４２とのピン位置を1/
２ピツチずらして並列に配列させたため、各チエ
ーン３，４は所定のピツチ長ｌを保持したまま
で、チエーン全体としては小さな振幅ΔLとなり、
高いチエーン強度の確保と両プーリ１，２への接
触噛み合い時の騒音低減とが同時に達成される。

また、実施例では、荷重ブロツク５，６を鋼板
材による打抜成形品としていることで、鍛造品の
荷重ブロツクにする場合に比べて、軽量でコスト
的にも有利であり、部品点数の少ない簡単な構成
にすることができる。

また、実施例では、ピンをカシメたりすること
なく、単に荷重ブロツク５を両チエーン３，４へ
の挿通で組付けるようにしているし、最終組付荷
重ブロツク６も下方から組付けるようにしている
ことで組付け分解が容易である。

さらに、実施例では、各ピン３２，４２に対し
て２枚の荷重リング５，５を配置するようにして
いることで、荷重リング５が両プーリ１，２へ接
触するときの接触音の周波数を可聴周波数より高
い周波数に設定でき、この点からも騒音の低減を
図ることができる。

以上、本発明の実施例を図面により詳述してき
たが、具体的な構成はこの実施例に限られるもの
ではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲におけ
る設計変更等があつても本発明に含まれる。

例えば、本発明のＶベルトの適用分野として
は、自動車を無段変速機に限られず、動力伝達用
ベルトとして実施例以外のものに適用してもよ
い。

また、実施例ではチエーンが２列のものを示し
たが、３列や４列に配列してもよいし、ピン位置
も1/2ピツチのずらし方に限られず、1/3ピツチや
１／４ピツチや、さらには荷重ブロツクの厚みを変
えることで不等ピツチにしてもよい。

また、ピンとしては、第９図〜第１１図に示す
ように、互いに背中合せのピン要素０１，０２に
より構成されるサイレントピン０３を用いてもよ
く、この場合はサイレントピン０３を介しての駆
動伝達が転がり伝達になるので、駆動ロスを小さ
くすることができる。

尚、このサイレントピン０３が用いられる場合
は、ピン要素０１，０２にピン回り止め用溝０１
ａ，０２ａが形成されると共に、リンクプレート
０４にピン係止部０４ａとピン回り止め段差０４
ｂが形成されている。

（発明の効果） 以上説明してきたように、本発明のＶベルトに
あつては、チエーンを、そのピン位置をピツチ方
向に互いにずらして並列に配列された複数列のチ
エーンとし、荷重ブロツクを、チエーンの数に対
応して複数のチエーン窓を有すると共に、ピン位
置に配置されるチエーン窓の内面両側にピン収納
部が形成された荷重ブロツクとしたため、各チエ
ーンは所定のピツチ長を保持することでの高いチ
エーン強度の確保と、プーリ噛み合い時の騒音低
減との両立を達成することができるという効果が
得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明実施例のＶベルトを示す図、第
２図は第１図Ｉ−Ｉ線による断面図、第３図は実
施例のＶベルトを適用した無段変速機を示す概略
図、第４図は実施例のＶベルトを示す平面図、第
５図は実施例のＶベルトを示す側面図、第６図は
実施例のＶベルトに用いられる最終組付荷重ブロ
ツクを示す図、第７図は第６図−線による断
面図、第８図は実施例のＶベルトの作用説明図、
第９図はサイレントピンを用いた実施例を示す
図、第１０図は第９図−線による断面図、第
１１図は第９図−線による断面図、第１２図
は従来のＶベルトの作用説明図である。 ３……第１チエーン、３１……第１リンクプレ
ート、３２……第１ピン、４……第２チエーン、
４１……第２リンクプレート、４２……第２ピ
ン、５……荷重ブロツク、５２……第１チエーン
窓、５３……第２チエーン窓、５４……ピン収納
部。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 多数のリンク要素を関節作用が可能なように
   ピンにて連結させたチエーンと、該チエーンが挿
   通するチエーン窓を有し、両側面にプーリのＶ溝
   に接触するプーリ接触面が形成された荷重ブロツ
   クとを組み付けることにより構成されるＶベルト
   において、 前記チエーンを、そのピン位置をピツチ方向に
   互いにずらして並列に配列させた複数列のチエー
   ンとし、 前記荷重ブロツクを、チエーンの数に対応して
   複数のチエーン窓を有すると共に、ピン位置に配
   置されるチエーン窓の内面両側にピン収納部が形
   成された荷重ブロツクとしたことを特徴とするＶ
   ベルト。