JPH0529546Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案はデイスクブレーキに関し、特に、その
ブレーキの鳴きを抑制する技術に関するものであ
る。

従来の技術 シリンダボアを有し、そのシリンダボアの開口
部がデイスクロータの一面に対向するようにその
デイスクロータの外周部に跨設されたキヤリパ
と、有底円筒状を成し、開口端がデイスクロータ
の一面と対向するようにシリンダボア内に突出し
可能に嵌合されたピストンと、それらピストンお
よびデイスクロータの間においてそのデイスクロ
ータの軸心と平行な方向の移動可能に設けられた
パツドを備え、そのパツドを前記ピストンにより
前記デイスクロータに押し付けることにより制動
する形式のデイスクブレーキが知られている。

斯かるデイスクブレーキにおいては、パツドを
デイスクロータに押し付けることに関連してブレ
ーキの鳴きを生ずることが問題とされており、そ
の鳴き対策の一例として、制動時におけるパツド
の振動を減衰させるためにピストンとパツドとの
間にゴム板等から成るダンパを介挿することが考
えられている。

考案が解決しようとする課題 しかしながら、このようにピストンとパツドと
の間にゴム板等のダンパを介挿した場合には、制
動時においてそのダンパがピストンにより比較的
大きな押圧力で繰り返し押圧されるうちに永久変
形させられたり或いは損傷させられたりすること
によつてダンパの振動減衰機能が大幅に損なわれ
る虞れがあるとともに、そのダンパの分だけデイ
スクブレーキの設置スペースが増大することが避
け難い。

本考案は、斯かる事情を背景として為されたも
のであつて、その目的とするところは、前記パツ
ドの振動を減衰させるためのダンパを、ピストン
により押圧されることなく且つデイスクブレーキ
の設置スペースを増大されることながないように
設ける技術を提供することにある。

課題を解決するための手段 上記目的を達成するために、本考案は、上記の
ような形式のデイスクブレーキにおいて、弾性体
とそれに一体的に固着された重り部材とを有し、
制動時に前記パツドに生ずる振動に伴つてその重
り部材がその弾性体を介して振動させられること
によりそのパツドの振動を減衰させるダンパを、
前記ピストンの内部に設けたことを特徴とする。

作用および考案の効果 このようにすれば、ダンパがピストンの内部に
設けられており、制動時にパツドに生ずる振動に
伴つてそのダンパの重り部材がダンパの弾性体を
介して振動させられ、この重り部材の振動に伴つ
て弾性体が弾性変形させられることによりパツド
の振動が減衰させられてブレーキの鳴きが抑制さ
れるので、制動時においてピストンの押圧力がダ
ンパに作用させられることはなく、そのピストン
の押圧力によるダンパの永久変形や損傷を解消し
得てダンパの振動減衰機能を好適に維持し得ると
ともに、ダンパを設けることによつてデイスクブ
レーキの設置スペースが増大するのを回避し得
る。

実施例 以下、本考案の一実施例を示す図面に基づいて
詳細に説明する。

第１図は本考案が適用されたデイスクブレーキ
の要部を示す図であつて、１０はデイスクロー
タ、１２はキヤリパ、１４はトルクプレートであ
る。キヤリパ１２は、内部にシリンダボア１６が
形成されたシリンダ部１８と、そのシリンダ部１
８から一体に延び出してデイスクロータ１０を間
にしてシリンダ部１８と対向する二股状の爪部２
０とを備えて構成されており、シリンダボア１６
内には、有底円筒状を成すピストン２２がその開
口端がデイスクロータ１０の一面２４に対向する
状態でその一面２４に向つて突出し可能に嵌合さ
れている。

上記トルクプレート１４は、固定部２６と、そ
の固定部２６のデイスクロータ１０周方向両側の
デイスクロータ１２外周側に位置する部分からそ
れぞれ一体に延び出してデイスクロータ１０を間
にして固定部２６と対向する一対の対向部２８，
２８（一方のみ図示）と、それら対向部２８，２
８を互いに連結して補強する補強部３０とを有し
て構成されている。固定部２６には、デイスクロ
ータ１０の軸心と平行な方向に一対のスライドピ
ン（図示せず）が突設されており、これらスライ
ドピンがシリンダ部１８のデイスクロータ１０周
方向両側部にそれぞれ設けられた図示しないガイ
ド穴に摺動可能に嵌合されることにより、キヤリ
パ１２がデイスクロータ１０の軸心と平行な方向
の浮動可能に支持されてデイスクロータ１０の外
周部に跨設されている。

トルクプレート１４の固定部２６には、裏金３
２およびそれに固着された摩擦材３４を有するパ
ツド３６がピストン２２とデイスクロータ１０と
の間においてデイスクロータ１０の軸心と平行な
方向の移動可能に支持されているとともに、対向
部２８，２８間には、パツド３６と同様のパツド
３８が爪部２０とデイスクロータ１０との間にお
いてデイスクロータ１０の軸心と平行な方向の移
動可能に支持されている。

ここで、本実施例においては、更に、ピストン
２２の内部にダンパ４４が一体的に設けられてい
る。ダンパ４４は、円筒部材４６と、その円筒部
材４６の内周側に配設された重り部材４８と、そ
れら円筒部材４６および重り部材４８間に設けら
れて一体成形により両部材にそれぞれ固着された
環状かつゴム製の弾性体５０とを備えて構成され
ており、円筒部材４６の外周面においてピストン
２２の内周面に圧入により嵌合されることによ
り、ピストン２２の内周面に軸心方向中間部分に
固着されている。このとき、重り部材４８の両端
部とピストン２２の底面および開口端との間に
は、車両走行中の振動や制動時に生ずるパツド３
６の振動に伴つて重り部材４８が振動させられた
ときに、その重り部材４８がピストン２２の底面
およびパツド３６の裏金３２と干渉することがな
いように、所定の間隔がそれぞれ確保されてい
る。なお、円筒部材４６は、好適には、周方向の
一部の長手方向の全長に亘つて切り欠かれること
により、ピストン２２への圧入時において弾性体
５０を内周側へ弾性変形させつつ縮径可能とさ
れ、これにより、圧入時におけるピストン２２の
変形が防止される。この場合において、好適に
は、ピストン２２の内周面に段付面が設けられる
とともに、この段付面に突き当てられるまで円筒
部材４６が圧入された後円筒部材４６のデイスク
ロータ１０側の端部に位置するピストン２２内周
面に止め輪が嵌着されることにより、円筒部材４
６のピストン２２に対する軸心方向の相対移動が
一層確実に阻止される。

以上のように構成されたデイスクブレーキにお
いては、液室５２に油圧が供給されると、ピスト
ン２２がシリンダボア１６から突き出されて一方
のパツド３６がデイスクロータ１０の一面２４に
押し付けられるとともに、その反力でキヤリパ１
２がピストン２２の突出し方向とは反対の方向へ
移動させられて爪部２０により他方のパツド３８
がデイスクロータ１０の他面５４に押し付けられ
る。これにより、両パツド３６，３８によりデイ
スクロータ１０が挟圧されて制動が行われる。こ
の制動時においてはパツド３６，３８が振動させ
られるが、一方のパツド３６の振動によつてピス
トン２２、ダンパ４４の円筒部材４６および弾性
体５０を介してダンパ４４の重り部材４８が振動
させられ、この重り部材４８の振動に伴つて弾性
体５０が弾性変形させられることにより、その弾
性体５０の内部摩擦力等によつてパツド３６の振
動が効果的に減衰させられる。重り部材４８の重
量や、弾性体５０の材質、硬度、肉厚等が予めそ
のように決定されるのである。これにより、パツ
ド３６の振動に伴つて生ずるブレーキの鳴きが好
適に抑制される。

このように本実施例によれば、ダンパ４４がピ
ストン２２の内部に設けられており、制動時にパ
ツド３６に生ずる振動に伴つてダンパ４４の重り
部材４８がそのダンパ４４の弾性体５０を介して
振動させられることに基づいてパツド３６の振動
が減衰させられてブレーキの鳴きが抑制されるの
で、制動時においてピストン２２の押圧力がダン
パ４４に作用させられることはなく、そのピスト
ン２２の押圧力によりダンパ４４の弾性体５０が
永久変形させられたり損傷させられたりすること
が全く解消されてダンパ４４の振動減衰機能が好
適に維持されるとともに、ダンパ４４を設けるこ
とによつてデイスクブレーキの設置スペースが増
大することは全くないのである。

また、本実施例によれば、パツド３６からピス
トン２２に伝達される熱は、そのピストン２２か
ら弾性体５０に直接伝えられることなく円筒部材
４６を介して弾性体５０に伝えられることになる
ため、ピストン２２から弾性体５０への伝熱を或
る程度低減し得る等の利点がある。

なお、前述の実施例において、ダンパ４４の円
筒部材４６は必ずしも必要なもではなく、円筒部
材４６を削除して弾性体５０をピストン２２の内
周面に直接固定するようにしても差し支えない。

また、前述の実施例では、ゴム製の弾性体５０
が用いられているが、樹脂製の弾性体であつても
よい。

また、前述の実施例では、ダンパ４４はピスト
ン２２の内周面に固着されているが、必ずしもそ
のように構成する必要はなく、たとえば第２図に
示すようなダンパ５６をピストン２２の内部にお
いてパツド３６に固定してもよい。このダンパ５
６は、環状を成す重り部材５８と、その重り部材
５８の内周側に配設された円筒状部材６０と、そ
れら重り部材５８および円筒状部材６０間に設け
られて一体成形により両部材に固着された環状か
つゴム製の弾性体６２とを備えて構成されてお
り、パツド３６の裏金３２に突設されたピン６４
に円筒部材６０において圧入により固定されてい
る。この場合においては、パツド３６の振動に伴
つてピン６４、円筒部材６０、および弾性体６２
を介して重り部材５８が振動させられて弾性体６
２が弾性変形させられることによりパツド３６の
振動が減衰させられるとともに、ピン６４および
ダンパ５６によりパツド３６の振動特性自体が変
えられることにより、ブレーキの鳴きを効果的に
抑制することができる。この場合において、円筒
状部材６０が削除されて弾性体６２がピン６４に
直接固着されてもよいし、ピン６４はピストン２
２の底面等に突設されてもよい。

また、前述の実施例では、一方のパツド３６側
にのみダンパ４４が設けられているが、それに加
えて、他方のパツド３８の裏金３２にピンを突設
し、そのピンに第２図の場合と同様のダンパを固
定することにより、ゴム板等のダンパを用いるこ
となくパツド３８の振動によるブレーキの鳴きを
抑制するように構成することも可能である。

その他、本考案はその趣旨を逸脱しない範囲に
おいて種々変更が加えられ得るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案が適用されたデイスクブレーキ
の一例を示す図であつて、要部を示す断面図であ
る。第２図は本考案の他の例を示す図であつて、
第１図の要部に相当する図である。 １０……デイスクロータ、１２……キヤリパ、
１６……シリンダボア、２２……ピストン、２４
……一面、３６……パツド、４４，５６……ダン
パ、４８，５８……重り部材、５０，６２……弾
性体。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 シリンダボアを有し、該シリンダボアの開口部
   がデイスクロータの一面に対向するように該デイ
   スクロータの外周部に跨設されたキヤリパと、有
   底円筒状を成し、開口端が該デイスクロータの一
   面と対向するように該シリンダボア内に突出し可
   能に嵌合されたピストンと、該ピストンおよび該
   デイスクロータの間において該デイスクロータの
   軸心と平行な方向の移動可能に設けられたパツド
   とを備え、該パツドを前記ピストンにより前記デ
   イスクロータに押し付けることにより制動する形
   式のデイスクブレーキにおいて、 弾性体とそれに一体的に固着された重り部材と
   を有し、制動時に前記パツドに生ずる振動に伴つ
   て該重り部材が該弾性体を介して振動させられる
   ことにより該パツドの振動を減衰させるダンパ
   を、前記ピストンの内部に設けたことを特徴とす
   るデイスクブレーキ。