JPH0426679Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、往復動ピストンをもつ内燃機関にお
いて、シリンダライナの上部内面に、外周面に空
隙を有する耐熱鋼環及びサラミツクス環を挿入し
て断熱構造としたシリンダライナに関するもので
ある。

従来の技術 従来、内燃機関において、シリンダ内を高温に
出来ればエンジン効率をよくすることが出来るこ
とは知られていることであるが、その反面、所定
の温度以上にならないようにする為に冷却水で冷
却する必要があつた。しかし、冷却水による冷却
が高温燃焼ガスの熱量の冷却損失となつてエンジ
ン効率を低下させることになるので、その解決に
サラミツクス材などのよい耐熱材からなるシリン
ダライナをクランクケースに嵌着してシリンダを
形成し、しかも、耐熱性シリンダライナの存在
で、高温燃焼ガスの熱量の流出を防止する断熱構
造を設けたものが考えられるようになつた。

そして、実開昭60−23232号公報記載の考案の
如く、外周面に突起を設けたシリンダライナを圧
入してシリンダブロツクとの間に断熱空間を形成
したものがあつた。

また、特公昭55−17865号公報記載の発明の如
く、シリンダライナ本体とその外周に嵌合した外
筒との間に空間を形成したシリンダライナ構造も
あつた。

考案が解決しようとする課題 ところが、シリンダが従来のシリンダライナの
如く、全体に断熱空隙を設けた断熱構造を有した
ものであつたり、また、シリンダライナをクラン
クケースに取付ける為に筒体が挿入されて、一
応、筒体に断熱空隙の断熱構造を形成したものも
あつたが、どちらかというと複雑化して、構造
上、無駄のない経済性に豊んだ効果的なものとは
いえなかつた。そして、どちらにしてもピストン
の往復動に耐えれる耐摩耗性に優れ、高温燃焼ガ
スに耐えるための高温強度、硬度が高いシリンダ
ライナが要求され、また、構造上、その精度が高
い加工でなければならなかつた為に加工面積の大
きい程、また複雑化した構造程、加工を困難に
し、経費の嵩むことになつて不都合の点が多かつ
た。

そこで、本考案は、エンジン効率をも考慮して
内燃機関の燃焼工程を検討した結果、高温燃焼ガ
スの熱量が冷却損失するのはピストンが燃焼行程
初期のピストン上死点附近のときであることが判
明した。そこで、その状態の高温燃焼ガスからシ
リンダライナを介して冷却水へ流れる熱流を断熱
化すれば冷却損失が低減されることに鑑み、燃焼
行程初期のピストン上死点においてトツプリング
が位置するより上方部分のシリンダライナに、断
熱空隙を形成し耐熱鋼環及びサラミツクス環を嵌
入することを目的とするものである。

課題を解決するための手段 本考案は、前述の課題を解決するもので、往復
動ピストンをもつクランクケース内にシリンダラ
イナを嵌着させ、その両者間を冷却の為の冷却水
が循環するようにした内燃機関において、燃焼行
程初期のピストン上死点でピストンのトツプリン
グが達する位置より上方のシリンダライナ内周面
に、外周面に空隙を有するサラミツクス環を挿入
すると共に外周面に空隙を有する耐熱鋼環を前記
サラミツクス環の内周面に挿入し、前記耐熱鋼環
と前記サラミツクス環との間及び前記セラミツク
ス環と前記シリンダライナとの間に、空気が対流
しない空隙を形成して二層の断熱構造としたこと
を特徴とする断熱シリンダライナである。

作 用 前述の手段よれば、耐熱鋼環及びサラミツクス
環より成る二層のスリーブが形成され、しかも、
耐熱鋼環及びサラミツクス環の両外周面に空隙を
設けので、空気の対流しない空隙も二層形成され
て熱伝達率が小さくなる。

実施例 本考案による断熱シリンダライナの一実施例を
図１ないし図３に基づいて説明する。

図において、１はシリンダライナ、２はピスト
ン、３はクランクケースであつて、クランクケー
ス３に嵌着したシリンダライナ１の内周面で、か
つ、燃焼工程初期のピストンが上死点に達した折
のピストンのトツプリング４が到達する位置の上
方部分に、耐熱鋼環５ａ及びサラミツクス環５ｂ
より成る二層構造のスリーブ５を挿着してある。
このスリーブ５は、外周面に空隙６を有するサラ
ミツクス環５ｂがシリンダライナ１の内周面に挿
入され、さらに、外周面に空隙６を有する耐熱鋼
管５ａがサラミツクス環５ｂの内周面に挿入され
て、耐熱鋼管５ａの外周面とサラミツクス環５ｂ
の外周面との間及びサラミツクス環５ｂの外周面
とシリンダライナ１の内周面との間に、二層の空
隙６を形成している。そして、耐熱鋼管５ａ及び
サラミツクス環５ｂの挿着は、圧入による焼嵌
め、溶接、及びロー付け等の接着から適当な方法
を選択して実施すればよく、これにより、空隙６
は空気が対流させられるようなことのない断熱空
間となる。

なお、７はウオータギヤラリ、８は冷却水、９
はシリンダヘツド、１０は排気カムを各々示して
いる。

以下、上述した断熱シリンダライナの作用を説
明する。

第２図に示された如く、クランクケース３に嵌
着されたシリンダライナ１よりなるシリンダ内を
ピストン２が往復動する内燃機関にあたつては、
エンジン効率をよくする為には高温燃焼ガスを有
効に使用することが必要でつて、シリンダライナ
１を介して冷却の為に循環させた冷却水８へ流れ
る熱流を断熱することも有効な手段のひとつであ
る。

ところで、第３図において、燃焼ガス温度をａ
線で、シリンダライナ温度をｂ線で示すと、クラ
ンク角が上死点（TDC）附近では燃焼ガス温度
ａ線がシリンダライナ温度ｂ線を越え、下死点
（BDC）附近では燃焼ガス温度ａ線がシリンダラ
イナ温度ｂ線を下まわることがわかる。すなわ
ち、エンジン効率上、高熱がシリンダライナを越
えて流出しないように断熱する必要があるのはピ
ストン上死点附近であり、従つて、第１図に示す
如く、シリンダライナ１の上方に断熱空間となる
空隙６を備えたスリーブ５を挿着すればよいこと
になる。

そして、耐熱鋼環５ａ及びサラミツクス環５ｂ
より成る二層構造のスリーブ５を層着したことに
よつて、空気が対流しない空隙６も二層に形成さ
れる断熱構造となる。このため、熱伝達率を小さ
くでき、断熱化の向上に加えて、熱応力の繰り返
しによるサラミツクス環５ｂの亀裂発生を防止す
ることもできる。すなわち、サラミツクス環５ｂ
への熱伝達は耐熱鋼環５ａを介したものであり、
従つてその温度変化は比較的小さくてすむので、
サラミツクス環５ｂに作用する熱応力も小さなも
のとなる。また、スリーブ５の挿着位置までトツ
プリング４が上昇することはないので、シリンダ
ライナ１とスリーブ５との継ぎ目でトツプリング
４やピストン２に損傷を与える恐れはない。

考案の効果 前述した本考案によれば、耐熱鋼環とサラミツ
クス環との二層構造したスリーブを挿着し、二層
の空隙が形成された断熱構造となるので、スリー
ブ挿着部の熱伝達率を小さくできる。従つて、ピ
ストン上死点付近において、高温燃焼ガスからシ
リンダライナを介して冷却水へ流れる熱流を断熱
化し、冷却損失を低減することができるので、エ
ンジン効率を向上させる効果がある。また、サラ
ミツクス環へ作用する熱応力は比較的小さくてす
むので、熱応力の繰り返しによる亀裂の発生を防
止でき、耐久性や信頼性を向上させる効果もあ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案の一実施例を示す断熱シリン
ダライナの構造図、第２図は、シリンダライナ嵌
着状態を示す内燃機関の構造図、第３図は、クラ
ンク角に対する燃焼ガス温度及びシリンダライナ
温度状態図である。 １……シリンダライナ、２……ピストン、３…
…クランクケース、４……トツプリング、５……
スリーブ、５ａ……耐熱鋼環、５ｂ……サラミツ
クス環、６……空隙、７……ウオータギヤラリ、
８……冷却水、９……シリンダヘツド、１０……
排気カム。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 往復動ピストンをもつクランクケース内にシリ
   ンダライナを嵌着させ、その両者間を冷却の為の
   冷却水が循環するようにした内燃機関において、
   燃焼行程初期のピストン上死点でピストンのトツ
   プリングが達する位置より上方のシリンダライナ
   内周面に、外周面に空隙を有するサラミツクス環
   を挿入すると共に外周面に空隙を有する耐熱鋼環
   を前記サラミツクス環の内周面に挿入し、前記耐
   熱鋼環と前記サラミツクス環との間及び前記セラ
   ミツクス環と前記シリンダライナとの間に、空気
   が対流しない空隙を形成して二層の断熱構造とし
   たことを特徴とする断熱シリンダライナ。