JPS6347630Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、燃焼室壁のうちシリンダボア上端部
の壁温を低下させるようにした内燃機関の冷却装
置に関する。

［従来の技術］ 内燃機関の燃費を改善するには、高圧縮比化が
効果的であることは一般によく知られている。し
かし、機関の高圧縮比化をはかつた場合、高負荷
領域、とくに低、中速領域の高負荷領域でのノツ
キンが激しくなり、ノツキングの発生の点から高
圧縮比化が制限されているのが現状である。

一方、ノツキングの発生は燃焼室内の点火プラ
グから離れた位置にある高温部分の未燃ガスが、
その高温と、点火プラグまわりの急激な火炎膨張
による圧縮等により、火炎到着以前に自発火して
しまうことに起因することはよく知られている。
燃焼室は、ピストンの頂面、シリンダヘツド下
面、シリンダブロツクボア内周面によつて囲まれ
た空間として形成されるので、燃焼室壁の高温部
の温度を低下させてノツキングの発生を抑えるた
めに、シリンダボア内周面、そくにノツキング発
生に関与する上死点後15〜20度迄のシリンダボア
上端部内周面の温度を低く抑えることが望まれ
る。

ところで、シリンダボア上端部に特別な部材を
介装した考案としては、特開昭55−117027号、特
開昭56−12014号公報等の発明があるが、これら
は電気絶縁用のセラミツク材を配設するものであ
るから、熱伝導性が悪く、シリンダボア上端部内
周面を高温化させてしまうだけであり、また実開
昭55−112023号公報のように熱容量が大きく燃焼
室の他の壁面にくらべ熱い状態にある円筒状リン
グを装着した考案もあるが、かえつてノツキング
を発生し易くするものであり、ノツキングの発生
を抑えるという趣旨に沿うものはなかつた。

［考案が解決しようとする課題］ 本考案は、シリンダブロツクボア上端部に特別
な部材を装着することにより、シリンダブロツク
ボア上端部内周面の温度を低下させることを目的
とするものであり、究極的にはノツキングの発生
を抑えて、燃費の改善、軸トルクの向上、運転性
の向上等をはかることを目的とする。

［課題を解決するための手段］ この目的に沿う本考案の内燃機関の冷却装置
は、シリンダヘツドとシリンダブロツクとの間
に、シリンダブロツクにより形成されるシリンダ
ボアと同一の内径を有し該内径面が燃焼室に臨ん
でシリンダボアの一部を構成しかつ熱伝導性の良
好な材料から形成されたスペーサを介在させ、該
スペーサとシリンダヘツド下面およびシリンダブ
ロツク上面との間にそれぞれ断熱材を介在させる
とともに、スペーサに該スペーサを挿通する冷却
水通路を設け、かつ、スペーサの厚さを、該スペ
ーサの内径面がピストン頂面に対しクランク角度
にて上死点後少なくとも15度の位置のシリンダボ
アを構成するように設定したものから成る。

スペーサの材料は、銅又はアルミ合金等から成
る。

［作用］ このような冷却装置においては、冷却水通路を
通水される冷却水によりスペーサが冷却され、ス
ペーサは熱伝導性の良好な材料から形成されてい
るので、シリンダボア面に露出しシリンダボアの
一部を構成するスペーサ内径面も冷却される。そ
してスペーサはその両側の断熱材によりシリンダ
ヘツドおよびシリンダブロツクから熱遮断されて
いるので、上記スペーサ内径面の温度は効果的に
低く保たれる。この低温に保たれるスペーサ内径
面は、シリンダボア上端部の少なくともクランク
角度で15度に相当する位置までシリンダボア面を
構成するので、ノツキングを生じ易い燃焼室壁面
が効果的に冷却される。

［実施例］ 以下に、本考案の内燃機関の冷却装置の望まし
い実施例を図面を参照して説明する。

第１図は、本考案の実施例装着の断面を示して
おり、第２図は、そのうちスペーサの形状の一例
を示している。図中、１はシリンダヘツド、２は
シリンダブロツクであり、その間にスペーサ３が
介装されている。スペーサ３はシリンダブロツク
２に形成されたシリンダボア４と同一の内径の穴
５を有しており、同心状に装着されることによ
り、内径面としての穴５はシリンダボア４上端部
内周面の一部を形成している。

スペーサ３は、熱伝導性の良好な材料、たとえ
ば銅、アルミ合金などから成つている。スペーサ
３は、ピストン頂面に対し、クランク角度にてノ
ツキング発生に関与するピストン上死点後少なく
とも15度、望ましくは15〜20度迄のシリンダボア
上端部に位置するだけの厚みをもつていればよ
く、通常20mm迄の厚さの平板から構成されてい
る。スペーサ３とシリンダヘツド１、シリンダブ
ロツク２との間には、断熱材としても機能するガ
スケツト６，７介装されている。そして、スペー
サ３とシリンダブロツク２との間に介装されたガ
スケツト７が、ピストン８の第１ピストンリング
９と互に干渉しないようにするために、スペーサ
３の厚さは、ピストン８のトツプランドの高さ、
すなわち第１ピストンリング９の上端からピスト
ン８上端迄の高さから、ガスケツト６，７の厚さ
をさしひいたものより小とされている。

スペーサ３、ガスケツト６，７には、冷却水通
路１０，１１，１２がそれぞれ設けられており、
該冷却水通路１０，１１，１２を介して、シリン
ダブロツク２のウオータジヤツケツト１３とシリ
ンダヘツド１のウオータジヤツケツト１４とは互
に連通している。冷却水通路１０，１１，１２
は、第２図に示すように、シリンダボア４の周囲
に弧状に長く延びており、ボア４周面の多くの部
分を冷却するように配慮されている。なお、第２
図中１５はボルト穴である。

上記のように構成された装置において、冷却は
つぎのように行われる。すなわち、爆発行程の燃
焼により燃焼室壁は高温となるが、ノツキングの
発生に関与するシリンダボア４上端部内径面、す
なわち穴５の内周面の熱は、熱伝導性の良いスペ
ーサ３を熱伝導により伝わつて冷却水通路１０に
至り、そこで、シリンダブロツク２のウオータジ
ヤツケツト１３からシリンダヘツド１のウオータ
ジヤツケツト１４へと流れる冷却水に放熱され
る。スペーサ３の穴５の内周面、つまりスペーサ
３の内径面はシリンダボアの一部を構成して完全
にシリンダボア面に露出しているので、燃焼室の
この部分が強力にかつ効果的に冷却される。昇温
された冷却水はシリンダヘツド１を冷却した後ラ
ジエータに運ばれ、そこで冷却されてシリンダブ
ロツク２へと循環される。

シリンダボア上端部の穴５内周面は、まわりに
比べて効率よく冷却されて低温となるが、この低
温化は、スペーサ３がガスケツト６，７によつて
シリンダヘツド１、シリンダブロツク２から熱遮
断されているため、シリンダヘツド１、シリンダ
ブロツク２から熱的影響を受けることはない。こ
のシリンダボア４上端部壁面の冷却により、エン
ドガスが冷却され、それだけノツキングは発生し
難くなる。

また、上記冷却されるスペーサ３の内径面は、
ピストン上死点後のクランク角度で15度程度のノ
ツキングの発生し易いところまで延在しているの
で、上記冷却によりノツキングの発生が最も効率
よく抑えられる。

［考案の効果］ 本考案の内燃機関の冷却装置によるときは、ス
ペーサを熱伝導性の良好な材料から構成し両側を
断熱して効率よく冷却し、シリンダボアの一部を
構成し燃焼室壁面として直接露出するスペーサ内
径面を強力に冷却できるようにしたので、ノツキ
ングの発生に関与するシリンダボア上端部の壁温
を効率よく下げることができ、点火プラグから離
れた部位のエンドガスの冷却をはかることができ
る。これによつて、ノツキングの発生が抑止され
るので、機関の高圧縮比を進めることができ、高
圧縮比化を通じて燃費の改善をはかることができ
る他、点火進角も進めることができ、これを通じ
て軸トルクの向上、運転性の改善もはかられると
いう効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例に係る内燃機関の冷
却装置の縦断面図、第２図は第１図の装置のうち
スペーサの部分の平面図、である。 １……シリンダヘツド、２……シリンダブロツ
ク、３……スペーサ、４……シリンダボア、５…
…スペーサの穴、６，７……ガスケツト、８……
ピストン、９……第１ピストンリング、１０，１
１，１２……冷却水通路。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) シリンダヘツドとシリンダブロツクとの間
   に、シリンダブロツクにより形成されるシリン
   ダボアと同一の内径を有し該内径面が燃焼室に
   臨んでシリンダボアの一部を構成しかつ熱伝導
   性の良好な材料から形成されたスペーサを介在
   させ、該スペーサとシリンダヘツド下面および
   シリンダブロツク上面との間にそれぞれ断熱材
   を介在させるとともに、前記スペーサに該スペ
   ーサを挿通する冷却水通路を設け、かつ、前記
   スペーサの厚さを、該スペーサの内径面がピス
   トン頂面に対しクランク角度にて上死点後少な
   くとも15度の位置のシリンダボアを構成するよ
   うに設定したことを特徴とする内燃機関の冷却
   装置。 (2) 前記スペーサの厚みがピストンのトツプラン
   ドから断熱材の厚みを差しひいたものより小さ
   い実用新案登録請求の範囲第１項記載の内燃機
   関の冷却装置。 (3) 前記スペーサが銅またはアルミ合金の何れか
   一つから成る実用新案登録請求の範囲第１項記
   載の内燃機関の冷却装置。