JPH0422051Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、点火プラグの着脱における作業性を
改善した４バルブ１頭上カム軸式エンジンに関す
るものである。

〔従来の技術〕

自動車用等のエンジンとして、１気筒について
２個の吸気バルブと２個の排気バルブを備えた４
弁式のエンジンが実用化されている。このエンジ
ンによれば、吸気充填効率や排気効率が向上して
燃焼状態が改善されることにより、エンジンの高
出力化が実現される。一方、吸気バルブと排気バ
ルブとをそれぞれ異なるカム軸で駆動するように
した２頭上カム軸式エンジンも実用化されてお
り、このエンジンによれば、動弁機構におけるロ
ツカーアームが廃止されることにより、高回転化
の妨げとなる往復慣性質量が低減されてエンジン
の高回転化が可能となる。しかし、この２頭上カ
ム軸式エンジンは、構造が著しく複雑化するので
コストが高くつくという欠点がある。

そこで、高出力は必要とするが、特に高回転を
要しないエンジンの場合には、１気筒について吸
気バルブおよび排気バルブをそれぞれ２個づつ備
えると共に、これらのバルブを１本の頭上カム軸
で駆動することにより、所要の出力を確保し且つ
コストを低減することが考えられる。

しかし、このエンジンの場合、着火性とサービ
ス性とを両立できるように点火プラグを配置する
上で次のような問題がある。つまり、１気筒につ
いて吸・排気バルブを各２個づつ備えるエンジン
では、良好な着火性を得るために、４個のバルブ
を燃焼室に対して四角形状に配置し、これらバル
ブの中央部に点火プラグを配置することが必要で
あるが、カム軸が１本の場合は、該カム軸が燃焼
室の中央部上方を通過するので、点火プラグの直
上方にカム軸が位置することになる。そのため、
該カム軸が点火プラグの取付け取外しの邪魔とな
つてエンジンのサービス性が悪化するのである。

４バルブ１頭上カム軸式エンジンに関する上記
のような問題に対して、例えば、特開昭57−
102506号公報に示すように、比較的スペースの余
裕がある排気バルブ側の側部で、２個の排気バル
ブの間に点火プラグを傾斜状に配置することによ
り、点火プラグの先端の着火部を燃焼室の中央部
に位置させると共に、その上部をカム軸の側方か
ら斜め上方に臨ませたものがある。

これによれば、良好な着火性が得られ、また、
カム軸に邪魔されることなく、その側方斜め上方
から点火プラグを着脱することが可能となる。

ところで、上記のように点火プラグを２個の排
気バルブの間に配置する場合、該プラグの取付ス
ペースをその両側に位置する２個の排気ポート間
に確保する必要がある。上記公報に開示されたエ
ンジンの場合、このプラグ取付スペースを確保す
るために、２個の排気ポートを燃焼室側の開口部
から下流に向けて次第に離反させて平面形状がハ
状となるように設けている。そして、両排気ポー
トを離反させることに伴つて、その外側に配置さ
れるヘツドボルトのクランク軸方向の間隔が吸気
ポート側のヘツドボルトの間隔よりも広く設定さ
れている。

このような構成は、エンジンのクランク軸方向
への寸法の制限が比較的少ない単気筒エンジンに
は支障なく適用できる。しかし、自動車用等とし
て通常用いられる多気筒エンジンでは２個の排気
ポートの間隔あるいはヘツドボルトのクランク軸
方向の間隔を大きくするとエンジン全体のクラン
ク軸方向の寸法が著しく長くなるので、このよう
な構成を適用することは困難である。

そこで、多気筒４バルブ１頭上カム軸式エンジ
ンにおいて、エンジン全体のクランク軸方向の寸
法を長くすることなく、各気筒の２個の排気バル
ブの間に点火プラグ取付スペースを確保するため
に、２個の排気ポートを燃焼室側の開口部から下
流に向けて次第に離反させ、途中から互いに平行
になる方向、あるいは、互いに集合する方向にく
字形状に曲げることが考えられる。

例えば、実開昭51−154607号公報では、シリン
ダヘツド内で隣接する気筒の排気ポート同士を１
本の排気ポートに合流させた構成が開示されてい
る。この構成では、隣接する気筒間の間隔をでき
るだけ短くすることができ、エンジンのクランク
軸方向の寸法を短く設定することができる。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところが、特開昭57−102506号公報に開示され
ている構成は、上記のようにしてエンジンのクラ
ンク軸方向の寸法を短くすることができるもの
の、狭い空間に点火プラグを着脱するようになつ
ているため、点火プラグの着脱作業において、パ
イプレンチ等の工具が取り扱にくくなり、作業性
があまり良くなかつた。

本考案は、上記の事情を鑑みてなされたもので
あつて、排気ポート側からの点火プラグの着脱作
業を容易に行えるようにしたエンジンの構造を提
供することを目的としている。

〔課題を解決するための手段〕

本考案に係る４バルブ１頭上カム軸式エンジン
は、１気筒について２個の吸気バルブと２個の排
気バルブを備え、これらのバルブを１本の頭上カ
ム軸で駆動するようにし、上記排気バルブにより
開閉される排気ポートのうち、隣接する気筒間で
隣り合う排気ポート同士がシリンダヘツド内で合
流すると共に、点火プラグ取付穴の一端が燃焼室
の中央に開口している多気筒エンジンであつて、
上記の課題を解決するために、以下の手段を講じ
ていることを特徴としている。

すなわち、上記４バルブ１頭上カム軸式エンジ
ンは、上記排気バルブを開閉させるステムの上部
が、上記頭上カム軸に近接して配される一方、１
気筒に接続されて互いに隣接する排気ポートが、
ほぼ平行となり、かつ、上記シリンダヘツドの側
壁へほぼ水平方向に延びるように配され、上記点
火プラグ取付穴が、上記排気ポート同士の間に形
成される領域に配され、その他端部を上記ステム
の上部と上記排気ポートのシリンダヘツド側壁に
おける開口部との間の高さに開口し、さらに、隣
接する気筒間で隣合う排気ポート間を隔てる隔壁
に上記シリンダヘツドをシリンダブロツクに固定
するヘツドボルトを挿通させる挿通穴が設けられ
ているものである。

〔作用〕

上記の構成では、ステムの上部と排気ポートと
の間隔が大きく開いていることによりシリンダヘ
ツド側壁に大きな空間が形成される。従つて、点
火プラグ取付穴を、１気筒でほぼ平行に配される
排気ポート間に設けるとともに、排気バルブ側の
ステムの上部と上記排気ポートのシリンダヘツド
側壁における開口部との間の高さに開口させるこ
とで、点火プラグ着脱の際、動弁機構等に邪魔さ
れることなくパイプレンチ等の工具の取り扱いを
行うことができ、点火プラグの着脱における作業
性を向上させることができる。

また、上記の領域に点火プラグを設けたことに
より、この位置でシリンダヘツドとシリンダブロ
ツクとの締結固定ができなくなるが、隣接する気
筒間の排気ポートを隔てる隔壁で上記の締結固定
を行うようにしているので、シリンダヘツドの排
気側の熱変形を抑制して、排気側のシール性を確
保することができる。

〔実施例〕

本考案の一実施例を第１図ないし第３図に基づ
いて説明すると、以下の通りである。

４気筒４バルブ１頭上カム軸式エンジン１は、
シリンダブロツク２と、この上側にガスケツト３
を介して固定されたシリンダヘツド４を有してお
り、上記シリンダブロツク２内には４個の縦軸の
シリンダ５が形成されている。また、このエンジ
ン１は、各シリンダ５内に摺動可能に挿入された
ピストン６と、このピストン６より上側のシリン
ダ５内の空間７ａと、シリンダヘツド４の下面に
この空間７ａと同心かつ連通状に凹設されたキヤ
ビテイ７ｂとで構成されたペンタルーフ形燃焼室
７を有している。

シリンダヘツド４には、この一方の側面から燃
焼室７に通じる２個の吸気ポート８と、他方の側
面から燃焼室７に通じる２個の排気ポート９とが
設けられる。これらの吸・排気ポート８，９の燃
焼室７側開口部８ａ，９ａは、上記キヤビテイ７
ｂの上面に平面視において四角形状に配置され、
それぞれに対応する吸気バルブ１０または排気バ
ルブ１１で開閉されるように構成されている。ま
た、排気ポート９は、シリンダヘツド４におい
て、上記開口部９ａから立ち上がると直ぐに第２
図における右方へほぼ水平に延びて、シリンダヘ
ツド４の側壁に開口している。

上記吸気バルブ１０および排気バルブ１１は、
それぞれシリンダヘツド４を傾斜状に貫通するス
テム１０ａ，１１ａを有し、これらステム１０
ａ，１１ａをシリンダヘツド４の斜め上方に付勢
する閉弁ばね１２，１３により閉弁される。上記
ステム１１ａは、上部がカム軸１７に近接するし
て、排気ポート９に対して大きく立ち上がつた状
態に配されている。また、これらの吸気バルブ１
０および排気バルブ１１は、上記ステム１０ａ，
１１ａの上端に当接されるロツカーアーム１４を
介して対応する吸気カム１５または排気カム１６
によつて、上記閉弁ばね１２，１３に抗して開弁
駆動される。上記吸気カム１５及び排気カム１６
は、燃焼室７中央の直上でシリンダヘツド４の上
部に回転可能に配置された１本のカム軸１７の周
囲に一体的に形成され、図示しないクランク軸に
連動連結されている。

各燃焼室７の上記排気ポート９は、上記開口部
９ａから下流に向かつて僅かな距離だけ互いに離
反させ、その僅かな距離を超える部分では、同じ
シリンダ５の他方の排気ポート９側の壁面９ｂ同
士がほぼ平行に延び、隣接シリンダ５の排気ポー
ト９側の壁面９ｃ同士はその先端をシリンダヘツ
ド４内で互いに接続されるように形成される。こ
れにより、互いに隣接するシリンダ５の排気ポー
ト９で、かつ、互いに隣り合うもの同士の下流部
９ｄが合流して、サイアミズ部を形成することに
なる。

上記排気ポート９の間には点火プラグ取付穴１
８が傾斜状に設けられる。この点火プラグ取付穴
１８は、点火プラグ１９を螺合するねじ穴１８ａ
と、プラグ脱着作業に用いるパイプレンチ等の工
具を挿入する脱着作業穴１８ｂとからなる。この
点火プラグ取付穴１８は、点火プラグ１９を挿入
する側の端部が、上記ステム１１ａの上部と上記
排気ポート９のシリンダヘツド４側壁における開
口部との間の高さに開口するように形成されてい
る。また、点火プラグ取付穴１８の軸心は上記キ
ヤビテイ７ｂの中心部を通り、ここに取付けられ
て点火プラグ１９の先端が上記キヤビテイ７ｂの
中心に位置される一方、この点火プラグ１９の上
部を上記カム軸１７の排気ポート側の側方から斜
めに臨ませるように構成されている。

なお、図示しないヘツドボルトのうち排気ポー
ト９側に配置されるものは、互いに合流させた排
気ポート９の間の隔壁部としての肉壁部２０に形
成された挿通穴２に挿通される。

また、上記エンジン１の点火順序は、例えば、
１−３−４−２のシリンダ５の順に行われる。

上記の構成において、開口部９ａから排気ポー
ト９に流出する排気は上記肉壁部２０に案内され
ながら、最初に開口部９ａから流出した方向から
ほとんど離れることなく隣接するシリンダ５の排
気ポート９に向かつて流れる。従つて、排気抵抗
は排気ポート９がく字形に曲がり、排気流の方向
が最初に開口部９ａから流出した方向から大きく
反れるものに比べると著しく小さくなる。

また、エンジン１の点火順序が、１−３−４−
２といつたように隣接する一方のシリンダ５の排
気ポート９内の排気の脈動により生じる負圧が他
方のシリンダ５の排気バルブ１１開弁時と重なり
合うような場合には、その負圧で燃焼室７から排
気が吸い出され、排気効率を高めることができる
のである。

さらに、排気ポート９とステム１１ａとの間が
大きく開いているので、シリンダヘツド４の排気
ポート９側の側壁において、点火プラグ取付穴１
８の開口部周辺に広い空間が形成されることにな
る。これにより、動弁機構等にパイプレンチ等の
工具の取り扱いを邪魔されるがなくなり、点火プ
ラグ１９の着脱作業が楽に行えるようになる。

ところで、点火プラグ取付穴１８が１気筒で隣
接する排気ポート間に設けられることにより、こ
の領域でシリンダブロツク２とシリンダヘツド４
とをヘツドボルトにより締結固定することができ
なくなる。しかしながら、肉壁部２０に挿通穴２
１が設けられているので、そこにヘツドボルトを
挿通して上記の締結固定を行うことにより、シリ
ンダヘツド４の排気側の熱変形を抑制し、シール
性を確保することができる。

なお、本考案は各シリンダ５の二つの吸気ポー
ト８がシリンダヘツド４内でそれぞれ独立して形
成されている場合であつても、また各シリンダ５
の二つの吸気ポート８がシリンダヘツド４内で分
岐させられている場合でも同様に適用できる。

〔考案の効果」 本考案の４バルブ１頭上カム軸式エンジンは、
以上のように、排気バルブを開閉させるステムの
上部が、頭上カム軸に近接して配される一方、１
気筒に接続されて互いに隣接する排気ポートが、
ほぼ平行となり、かつ、シリンダヘツドの側壁へ
ほぼ水平方向に延びるように配され、点火プラグ
取付穴が、上記排気ポート同士の間に形成される
領域に配され、その他端部を上記ステムの上部と
上記排気ポートのシリンダヘツド側壁における開
口部との間の高さに開口し、さらに、隣接する気
筒間で隣合う排気ポート間を隔てる隔壁に上記シ
リンダヘツドをシリンダブロツクに固定するヘツ
ドボルトを挿通させる挿通穴が設けられている構
成である。

これにより、シリンダヘツドにおける点火プラ
グ取付穴の開口部周辺に広い空間が形成され、点
火プラグ取付穴を点火プラグ着脱用の工具の取り
扱いが容易になる。

また、上記の位置に点火プラグ取付穴を設ける
ことにより、この位置でシリンダヘツドとシリン
ダブロツクとを締結固定することができなくなる
が、隣接する気筒間の排気ポート同士の間に形成
される隔壁部を利用して、上記の締結固定を行う
ようにしているので、排気側のシール性を確保す
ることができる。

それゆえ、本考案を採用すれば、シリンダヘツ
ドとシリンダブロツクとの排気側におけるシール
性を確保しつつ、点火プラグ着脱における作業性
を向上させることができるという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例のシリンダヘツドの
横断平面図、第２図は第１図の要部断面図、第３
図はその要部の平面図である。 １はエンジン、４はシリンダヘツド、９は排気
ポート、１０は吸気バルブ、１１は排気バルブ、
１７はカム軸、１８は点火プラグ取付穴、２０は
肉壁部（隔壁部）、２１は挿通穴である。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １気筒について２個の吸気バルブと２個の排気
   バルブを備え、これらのバルブを１本の頭上カム
   軸で駆動するようにし、上記排気バルブにより開
   閉される排気ポートのうち、隣接する気筒間で隣
   り合う排気ポート同士がシリンダヘツド内で合流
   すると共に、点火プラグ取付穴の一端が燃焼室の
   中央に開口している多気筒エンジンであつて、 上記排気バルブを開閉させるステムの上部が、
   上記頭上カム軸に近接して配される一方、１気筒
   に接続されて互いに隣接する排気ポートが、ほぼ
   平行となり、かつ、上記シリンダヘツドの側壁へ
   ほぼ水平方向に延びるように配され、上記点火プ
   ラグ取付穴が、上記排気ポート同士の間に形成さ
   れる領域に配され、その他端部を上記ステムの上
   部と上記排気ポートのシリンダヘツド側壁におけ
   る開口部との間の高さに開口し、さらに、隣接す
   る気筒間で隣合う排気ポート間を隔てる隔壁に上
   記シリンダヘツドをシリンダブロツクに固定する
   ヘツドボルトを挿通させる挿通穴が設けられてい
   ることを特徴とする４バルブ１頭上カム軸式エン
   ジン。