JPH0379479B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、金属を含む布帛の製造方法に関す
る。

さらに詳しくは、衣料用として風合、肌ざわり
と審美性に優れ、かつ保温性の高い布帛の製造方
法に関するものである。

（従来技術） 従来、金属光沢による審美感や輻射熱の反射効
果による保温性をねらつて、布帛の表面に直接金
属蒸着加工を施して金属被膜面を形成したもの、
金属蒸着を施した合成樹脂フイルムと布帛を接着
したもの、あるいは金属を含んだ樹脂をコーテイ
ングしたものなどが知られている。

しかし、これらのうち、金属蒸着を施した合成
樹脂フイルムと布帛を接着したものあるいは金属
を含んだ樹脂をコーテイングしたものは、風合が
粗硬でかつ重くまた通気性が劣るという欠点があ
つた。また、布帛表面に直接金属蒸着加工を施し
て金属被膜面を形成したものは耐洗濯性に劣るも
のであり、さらに、これらの従来知られている布
帛の金属被膜形成面を肌面側にして衣料として利
用する際には、該金属被膜面が肌面に接触し肌触
りが悪く、また金属被膜面は熱伝導率が高いため
に熱伝導による熱発散を招き、ねらい通りの保温
効果を発揮できないという問題点があつた。

一方、特開昭60−252761号公報には、少なくと
も一方の面に金属蒸着面を有するシート状物を基
布として、該基布にパイル糸を縫編させることに
より、該基布の少なくとも一方にパイル層を形成
させ、かつ該金属蒸着面が該パイル層もしくは該
縫編ニードルループに覆われている構造を有する
複合布帛が記載されている。しかしながら、この
布帛は、(1)金属蒸着面を有するシート状物を基布
として該基布にパイル糸を縫編するためにストレ
ツチ性において著しく乏しい、(2)基布の製造工程
の後、縫編工程が必要であり、工程が繁雑でかつ
縫編機にはマリポール機などの特殊な装置が必要
である、(3)金属面がパイル糸で覆われているた
め、外観上は金属蒸着面が観察されず審美性とい
う点で何の配慮もなされていない、等の短所があ
るものであつた。

一方、近年、スポーツ衣料として金属加工布の
展開が試みられつつあり、機能もさることながら
“ハイタツチ”感覚にあふれた審美性がまず第１
にあることの要求も強く、同時にまたストレツチ
性のある布帛素材であること等の要求が高まつて
きた。

特に、繊維布帛に金属を併用するということ
は、それ自体が、例えばストレツチ性、軽量感、
耐洗濯性などの衣料用繊維布帛、特にスポーツ衣
料用繊維布帛として必要とされる諸機能をある程
度損うことともなり、また、熱的特性だけにとら
われた、審美性等を論ずるまでもなく美的感覚の
乏しいものとなつてしまうという危険に直面して
いるものなのである。

一方、見方を変えれば、金属の有する、光沢や
金属感、力強さ、質感等をスポーツ衣料としてう
まく利用できれば、“ハイタツチ”感覚に富んだ
審美性のあるスポーツウエア、ユニホーム、トレ
ーナー等の新感覚衣料として広く展開が期待でき
るのである。

（発明が解決しようとする問題点） 本発明の目的は、上記したような問題点に鑑
み、衣料用として、風合、肌触り、審美性に優
れ、また軽量で適度なストレツチ性を有する上
に、保温性にも優れ、かつ金属が布帛中から容易
に脱落すること等の問題もない新規な金属を含む
布帛の製造方法を提供せんとするにある。

（問題点を解決するための手段） 上記した目的を達成する本発明は、以下の構成
からなる。

すなわち、本発明の金属を含む布帛の製造方法
は、少なくとも一方の面が凹凸構造を有する布帛
に対して、該凹凸面側全体に金属被膜を形成せし
め、しかる後、凸部を覆つている金属被膜を除去
せしめることを特徴とする金属を含む布帛の製造
方法である。

（作用） 以下、図面などに基づいてさらに詳しく本発明
について説明をする。

本発明で言う少なくとも一方の面が凹凸構造を
有する布帛とは、繊維集合体からなる織物、編
物、不織布などであつて、布帛の少なくとも一方
面に第１図に示すように凹凸外観、すなわち高い
部分(A)と低い部分(B)を有するものである。この凹
凸外観の付与手段は特別に限定されないが、たと
えば、編織物であれば糸使い、編織組織などによ
つて得ることができるものであり、あるいは不織
布や編織物であればエンボス加工などによつて得
ることができるものである。

本発明に用いるかかる布帛に用いられる繊維と
しては、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、
ポリアミド、レーヨン、綿などの各種の合成繊
維、あるいは天然繊維などであり、またはそれら
の組合せであつてもよい。

なお、審美な金属光沢を効果的に発揮せしめて
かつ布帛全体としても光沢感に富んだ布帛を得る
ためには、少なくとも金属被膜が形成される側の
繊維は、合成繊維の非捲縮性糸条や低捲縮性加工
糸等の繊維としても光沢感のより強いものを用い
るのが好ましく、さらに酸化チタンなどの艶消し
剤を全く含まないか、また含んでいてもごく少量
であるものを用いるのが好ましい。

また、金属被膜の形成に際して、イオンプレー
テイング法やスパツタリング法を採用するために
は、系内を真空にする必要があるものであるが、
これにより水分を多く含む天然繊維のような素材
は用いるとしても少ない方が好ましく、合成繊維
100％の布帛設計が最も好ましい。ただしなお、
この問題はスパツタリングする前に被処理シート
を乾燥させて、水分率を低下させるなどの方法に
よつても解決することはできる。

本発明の金属を含む布帛は、第１図に示すよう
に、凹凸構造を有する凹部分に実質的に金属被膜
が形成されているものであるが、結果として第２
図に示すように凹部分の側面に金属被膜が形成さ
れているものも含むものである。

本発明における金属被膜とは、真空蒸着法、無
電解メツキ法、スパツタリング法、イオンプレー
テイング法などによつて、金属を繊維表面に積層
させた金属層であり、その被膜形成方法、金属の
種類などは特に限定されるものでないが、洗濯時
の耐久性等の点から金属の付着強力の強いスパツ
タリング法、あるいはイオンプレーテイング法が
好ましい。使用される金属としては、アルミニウ
ム、銅、金、銀、チタンなど、合金としてはステ
ンレス鋼、窒化チタンなどを用いることができる
ものが、かかる金属の種類は所望の製品の色、デ
ザインや用途等に応じて適宜選択すればよいもの
である。

また、金属被膜の厚さは、布帛の表面に金属光
沢が認識され得る厚さが必要であり、金属や繊維
によつても異なるが一般的には100Å以上あれば
よく、厚過ぎても生産性、経済性の点から好まし
くない。好ましくは300〜1000Åの範囲内である。

本発明は実質的に凹凸構造になつた凹部に金属
被膜を形成することによつて、該金属被膜を有す
る面を肌側にした衣料として着用しても、金属被
膜が直接に肌と接触することが妨げる。従つて、
良好な肌ざわりが実現される上に、体熱の金属被
膜による熱伝導の逃げを防ぐことができる。ま
た、金属被膜の有する輻射反射効果による保温性
の効果も同時に得ることができる。

実質的に凹部にのみ金属被膜を形成する方法と
しては、たとえば次のものが採用できる すなわち、金属被膜形成加工前の布帛の凹凸構
造の凸部にあらかじめ糊剤もしくは合成樹脂剤を
塗布し、その後、その面全体に金属被膜形成加工
を行ない、しかる後、浴中で前記糊剤もしくは合
成樹脂剤を除去することによつて凸部の金属被膜
をもこれとともに除去せしめる方法等を採用する
ことができる。前記布帛の凸部のみへの糊剤等の
塗布に際してはキスローラーを用いる方法等によ
つて容易に行なうことができる。用いる糊剤、合
成樹脂剤は特に限定されるものではないが、水溶
性のものが望ましく、糊剤であれば、アルギン酸
ソーダ、澱粉、CMC、PVAなどが好ましく用い
られる。

また別の方法として、金属被膜を形成せしめた
後、該面にバフイング加工を行ない、凸部を覆つ
ている金属被膜を除去せしめる方法なども採用す
ることができる。なお、このバフイング加工に際
しては、凹部を実質的に損傷しないようにバフイ
ングローラの接圧を管理することが肝要である。
この方法を採用する場合、布帛の凹凸構造におけ
る凹部と凸部の高低差は少なくとも１mm以上ある
ような布帛設計にしておくのが望ましい。

（実施例） 以下、実施例により本発明の具体的構成、効果
について説明する。

実施例 １ 20Gの両面丸編機を用い、一方の面（裏面）が
凹凸構造を有し、該凹部がポリエステルの艶消し
剤を実質的に含まない270D（デニール）−72F（フ
イラメント）の低捲縮仮ヨリ加工糸で形成され、
一方、該凸部が通常のポリエステル仮ヨリ加工糸
150D−48Fにより形成されてなる編地を製編し、
これを通常の染色加工条件に準じて精練、染色、
乾熱セツトを行なつて、基布とする編地を得た。

次に、その編地の前記裏面の凸部にのみアルギ
ン酸ソーダを塗布し、しかる後、次の条件で編地
の裏面側に対してスパツタリング加工を行なつ
た。

金属：ステンレス鋼 減圧度：１×10^-5Torr 加工時の雰囲気：アルゴンガス こうして得られた編物は、凹部凸部共に金属被
膜の形成されたものであつた。

次に、この編地を精練して、凸部のアルギン酸
ソーダを除去せしめて、凸部の被膜を除去させ
た。

こうして得られた本発明の編地は、凹部にのみ
金属被膜が形成された新規な審美感を有するもの
であり、肌ざわりも良く、かつ、また凹部に金属
被膜が形成されていない編地（本実施例に基布と
して用いた編地）に比べ、保温性もCLO値で0.08
向上した良好なものであつた。

この編地を用いてスポーツ衣料を作つたとこ
ろ、従来のものには見られないハイタツチ感覚の
ある審美性を有していて、かつ重量感もほとんど
感じられなく、またストレツチ性も良好なものと
して好評であつた。

なお、金属の付着強度は、洗濯30回以上の耐久
性を有するものであり、十分にスポーツ衣料とし
ての過酷な使用に耐え得ると認められるものであ
つた。

なお、保温性はA.S.T.M.D−1518−57Tに準じ
て測定したものである。

（発明の効果） 以上述べた通りの本発明の方法によれば、金属
被膜の有する輻射熱反射効果で、保温性の良好な
布帛が得られ、そして、この布帛は少なくとも一
方面における凹凸表面の該凹部にのみ金属被膜が
形成されているものであることから、該凹凸面側
を肌側にして着用したとしても、金属面と肌が実
質的に接触することがなく肌触りが良好であり、
かつ金属被膜が直接に肌と接触しないために体熱
の金属被膜による熱伝導の逃げを防ぐことができ
る。また、凹部にのみ金属被膜があるので、該金
属の耐洗濯性も良好でかつ軽量なものであり、ス
トレツチ性や、また審美性にも富んでいる。

本発明の方法による金属を含む布帛は、機能性
にも優れかつハイタツチ感覚のある新感覚衣料と
して、スポーツ衣料やカジユアル衣料等の分野に
最適に使用することのできるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図、第２図は、本発明の方法により得られ
る金属を含む布帛の一実施態様構造例を説明する
側面概略図であり、Ａは布帛の一面における凹凸
構造の凸部、Ｂは凹部をそれぞれ示し、１は金属
被膜である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 少なくとも一方の面が凹凸構造を有する布帛
   に対して、該凹凸面側全体に金属被膜を形成せし
   め、しかる後、凸部を覆つている金属被膜を除去
   せしめることを特徴とする金属を含む布帛の製造
   方法。 ２ 金属被膜の形成を、イオンプレーテイング法
   あるいはスパツタリング法により行なうことを特
   徴とする特許請求の範囲第１項記載の金属を含む
   布帛の製造方法。 ３ 凹凸構造の凸部に糊剤あるいは合成樹脂剤を
   付与した後、金属被膜を形成せしめ、しかる後、
   前記糊剤あるいは合成樹脂剤の除去を行なつて凸
   部の金属被膜を除去せしめることを特徴とする特
   許請求の範囲第１項または第２項記載の金属を含
   む布帛の製造方法。 ４ 金属被膜を形成せしめた後、該被膜面にバフ
   イング処理をして、凸部を覆つている金属被膜を
   除去せしめることを特徴とする特許請求の範囲第
   １項または第２項記載の金属を含む布帛の製造方
   法。