JPH0324856Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は内燃機関用ピストン、特にセラミツク
製ピストンリングを用いたピストンの構造に関す
る。

（従来の技術） 近年、自動車等の内燃機関等に於て、燃焼効率
を上げるべくピストンの一部又は全部をセラミツ
ク材料に代替して断熱化を図り燃焼室温度の高温
化を可能としたピストンが開発され実用化される
ようになつた。斯かるピストンを用いたエンジン
は、燃焼室温度を高く維持出来るので、燃焼効率
が良く、出力が大であり、且つ排出されるハイド
ロカーボン濃度及び燃費が低く、従つて、排ガス
規制や省資源化が叫ばれる昨今においては極めて
意義深く、これからもその必用性は益々増大する
こと必至である。然し乍ら、個々には次のような
改良されるべき点が残存していることは否めな
い。

（考案が解決しようとする問題点） 即ち、上記ピストンに装着されるピストンリン
グは、一般に金属製である為、燃焼室温度の高
温化と共に高温クリープが発生し、ピストンリン
グの重要な機能であるシーリングのための張力が
これによつて劣化し、シーリング機能が減退す
る。亦、セラミツク製ピストンシリンダの場合、
熱膨張係数が異なる為、高温時に適正なスキマを
設定すると、低温時の合口スキマが大となり、亦
低温時に適正なスキマを設定すると合口スキマが
なくなり、前者の場合、ブローバイガス量が大
となり、リング周辺のオイルを固着させ所謂リン
グスチツクを生起し、且つクランクケース通して
オイルパン内オイルの温度上昇及び劣化を来た
し、一方、後者の場合、ピストンリングとシリ
ンダとが圧接され、作動中に折損等が生じる…
等々である。

このような問題点を解消する為には、ピストン
リングをセラミツクスによつて製作することが有
効であるが、ピストンに対しリングを装着する
際、リングの合口を拡開してなされる為、金属に
比べヤング率が２〜３倍と大であるセラミツク製
ピストンリングでは装着時に応力が大となつて折
損率が高く、従つてピストンリングをセラミツク
化するには困難があつた。

（問題点を解決するための手段） 本考案は上記に鑑みなされたもので、ピストン
を、本体、ピストンリング及びスカート部材の３
分割体で構成することによつて、セラミツク製ピ
ストンリングの合口を拡開することなく装着を可
能とし、これによつて上記問題点を一掃せんとす
るものである。

（実施例） 本考案は添付図面に基づき具体的に詳述する
と、第１図は本考案のピストンの構造の一例を示
す部分切欠斜視図であり、ピストンヘツド１１及
び該ヘツド１１に同心的に連なつた胴部１２を含
むセラミツク又は金属より成るピストン本体１
と、該ピストン本体１の外周にホルダーリング３
を介して胴部１２側から環装されたセラミツク製
ピストンリング２と、該ピストンリング２の環装
部に連なりピストン本体１の胴部１２に套嵌され
たピストンスカート部材４と、該スカート部材４
及びピストン本体１の胴部１２を関着一体とした
ピストンピン５とより成り、前記本体１の胴部１
２に上記複数のピストンリング２と組し該リング
２…を所定の間隔に保持したホルダーリング３を
前記ピストンヘッド１１に隣接状態で外嵌すると
共に、同じく胴部１２に前記ピストンスカート部
材４を、上記ホルダーリング３に連ねて套嵌し、
且つこれらを相互に一体として構成されている内
燃機関用ピストンにある。ピストン本体１は、上
記ピストンヘツド１１及び筒状の胴部１２以外
に、頂面に凹設された燃焼室１３及び胴部１２に
掘設された断熱室１４を含み、セラミツク材料の
焼結成型により一体的に製せられたものである。
亦、ピストンリング２…は同じくセラミツクスに
より製せられたもので、図例では２本のピストン
リング２，２が、ホルダーリング３によつて所定
の間隔をもつて装着されている。このホルダーリ
ング３は既述の如く、ピストンリング２，２を所
定の間隔に維持する為のもので、図示の如く上下
にピストンリング２，２を嵌装し得る小径部３
１，３１を有し、この小径部３１，３１にピスト
ンリング２，２を嵌装した上で、前記本体１の胴
部１２に外嵌し得るようにした構造のものが最も
望ましいが、第２図（第１図線部に対応する他
の実施例の拡大図）に示す如く胴部１２に凹設さ
れた周溝１２１に嵌装されたカラー状のリング
３′によつてピストンリング２，２を保持するも
のも除外するものではなく、その材質は金属或い
はセラミツクスいずれも採用可能である。但し、
第２図のリング３′は周溝１２１に嵌装されるも
のであるから拡開が可能である金属で製作すべき
ことは当然である。更に、ピストンスカート部材
４は、鉄、アルミニウム等の金属或いはセラミツ
クスによつて筒状に成型されたもので、その上部
にはオイルスクレーパーリング４１が装着されて
いる。

（作用） 上記各部材を用いて１個のピストンＰを組み立
てる要領を略述すれば、先づホルダーリング３の
小径部３１，３１にピストンリング２，２を嵌装
し、本体１の胴部１２に外嵌してピストンヘツド
１１に隣接させる。この時、ホルダーリング３と
胴部１２とはセラミツク接着剤等で相互に接着さ
せることが望ましい。次いで、ピストンスカート
部材４をその上端部が上記ホルダーリング３に連
なるよう胴部１２に套嵌し、該スカート部材４と
本体１の胴部１２とをピストンピン５によつて関
着一体とし、これによつて上記各部材が所定位置
に定まつた１個のピストンＰが組み立てられる。

尚、図における符号５１，５１はピストンピン
５を所定位置に保持する為のピストンピンクリツ
プであり、亦、６はクランク（不図示）に連結さ
れるコンロツドであり、これらの構造は従来のこ
の種のピストンと何等異なるものではない。

（考案の効果） 叙述の如く、上記ピストンＰにおいては、ピス
トンリング２，２が耐熱性・断熱性に優れたセラ
ミツクスにより成るから、燃焼室温度を高く維持
しても高温クリープの発生する懸念がなく、ピス
トンリングのシーリング機能が充分に発揮され
る。亦、セラミツク製ピストンシリンダにこれを
応用しても、シリンダとピストンリングとは同じ
セラミツク製であるから、両者の熱膨張係数を同
一にすることは容易であり、従つて両者の合口ス
キマを正しく設定しておけば、作動中もこの合口
スキマを適正に保つことが出来、ブローバイガス
による前記のトラブルやピストンリングとシリン
ダの圧接による折損等の発生が有効に防止され
る。しかもピストンリング２，２は拡開すること
なく装着されるから、装着時の応力は何等付与さ
れず、折損等のトラブルを惹起することなく極め
て簡易に装着され、セラミツク製ピストンリング
を用いることによる、ブローバイガス量の低減、
リングスチツクの防止、オイル劣化、オイル消費
量低減などの特質がピストンＰにおいて遺憾なく
発揮されることになるのである。更にピストンス
カート部材４は、ピストン本体１の胴部１２に套
嵌された後ピストンピン５により該胴部１２に関
着一体とされるから、ピストンリング２の拡開を
伴わないピストンＰ組立が確実且つ極めて容易に
なされる。

斯かるピストンの構造は、燃焼効率及び出力の
アツプ、ハイドロカーボン濃度及び燃費の低減化
に極めて有効であり、その実益は頗る大である。

尚、図例のピストンＰは本考案の一例を示した
に過ぎず、本考案を逸脱しない限り他の態様も包
含することは云うまでもない。例えば、ピストン
リング２を２本としたが、ピストンの規模に応じ
てこれを３本以上とすることも可能であり、この
場合、図例のホルダーリング３は２つ割り若しく
は３つ割りにして用いるべきことは容易に理解さ
れよう。亦、本体１の胴部１２に堀設された断熱
室１４は文字通り有効な断熱性を保証するもので
あり、胴部１２の軸心の廻りに連続したリング状
の空洞或いは不連続な独立した複数の空洞によつ
てこれを構成する等、必要とされる断熱性に応じ
て掘設されるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案のピストンの構造の一例を示す
部分切欠斜視図、第２図は第１図線部に対応す
る他の実施例の拡大図である。 符号の説明、１……ピストン本体、１１……ピ
ストンヘツド、１２……胴部、２……セラミツク
製ピストンリング、３……ホルダーリング、４…
…ピストンスカート部材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ピストンヘツド及び該ヘツドに同心一体的に連
   なつた胴部を含むピストン本体の外周にホルダー
   リングを介して胴部側からセラミツク製ピストン
   リングを環装し、該ピストンリングの環装部に連
   なりピストン本体の胴部に套嵌されたスカート部
   材と上記ピストン本体の胴部とをピストンピンに
   よつて関着一体としたことを特徴とする内燃機関
   用ピストン。