JPH0232226Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、ミシン縫製作業において常に良好
な縫目が得られるように、上糸供給源から天秤へ
の上糸繰出し量を布厚及び送りピツチに関連して
自動的に制御するようにしたミシンの上糸供給源
装置に関する。

従来、ミシンにおいて良好な縫目を得るために
は、送りピツチや布厚等の各条件に対応して上下
糸の張力調節を上糸調子器と下糸ボビンケースの
各糸調子ばねのばね圧を調節することにより各別
に行なつていたが、この調節に熟練を要し且つ操
作が非常に煩雑であつた。

この考案は、布厚と送りピツチを検出しこれら
に基いて適切な糸の繰出し量を算出し、各縫目毎
にその算出結果どうりの上糸量を供給源側から天
秤へ繰出すように繰出し制限体の作用を制御して
上記従来の欠点を解消することを目的とし、特
に、繰出し制限体をして、上糸ループが釜抜けす
るまでは上糸の繰出を防ぐように上糸を把持し、
また上糸ループの釜抜け時点から上糸と下糸との
交絡点が天秤により布下面に位置するまでの間、
即ちほぼ下吊状態の時点において供給源から天秤
への上糸の繰出しを許容し、且つ送りピツチ及び
布厚の各検出信号から算出した上糸量に対応する
上糸繰出しに関連して上記上糸の繰出しを阻止す
るようにしたことを特徴とする。

以下この考案の実施例を図面により説明する。

ミシン１は公知の本縫いミシンであり、下端に
針２を支持し上下動する針棒３と、針棒３に同期
して上下動する天秤４及び一固定軸線を中心に回
転又は揺動する釜５とを備えている。

６は上糸Ｔの供給源としての上糸ボビンで、こ
の上糸ボビン６と天秤４との間の上糸経路上に上
糸Ｔの捩れや慣性による乱れ等を取り除くための
第一ベーステンシヨン７と第二ベーステンシヨン
８を設ける。この第一、第二ベーステンシヨン
７，８は詳細に図示しないがコイルばねの弾性力
により二枚の皿体を介して上糸Ｔを軽く挾持する
公知のもので、上記コイルばねの弾性力は、その
まま縫製を行つた場合に上糸Ｔと下糸ｔとの交絡
点が被縫物（以下布とする）Ｗの下面に接する位
置（いわゆる下吊り状態）となる強さに設定す
る。

繰出し検出器としてのロータリーエンコーダ９
は、回動可能とした回動体１０と、回動体１０の
円周に等間隔に設けた複数のスリツト（図示せ
ず）と、スリツトの移動経路に対向配置されスリ
ツトを検出する毎に糸信号を発生するホト・セン
サー又はホールIC等の検出器２１とからなる公
知のもので、回動体１０は上糸Ｔの供給源６から
天秤４への移動に連動して回動するように、第一
ベーステンシヨン７と第二ベーステンシヨン８と
の間の上糸経路上に配置する。

繰出し制限体１１は、第一ベーステンシヨン７
及びプーリ１０間の上糸経路上に設けた一組の皿
体１２とソレノイド１３とからなり、ソレノイド
１３の励磁により一組の皿体１３で上糸Ｔを把握
して供給源６からの繰出しを阻止し、またソレノ
イド１３の消磁により皿体１２による上糸Ｔの把
持を解放してその供給源６からの繰出しを許容す
る構成である。

糸把持器１４は、天秤４及び針２間の上糸経路
上に設けた一組の皿体１５とソレノイド１６とか
らなり、繰出し制限体１１と同様に、ソレノイド
１６の励磁により上糸Ｔを把持してその移動を阻
止し、ソレノイド１６の消磁により上糸Ｔの把持
を解放する。糸取りばね１７は、天秤４と第二ベ
ーステンシヨン８間にあつて、その間の上糸Ｔの
弛みを吸収するためのものである。

１８はミシン縫目のピツチＰ、即ちミシンの布
送りビツチを変更するための操作ダイヤルであ
り、このダイヤル１８には設定した布送りピツチ
に対応した送りピツチ信号を発生するように公知
のエンコーダからなる布送りピツチ検出器１９を
関連設置する。

２０は公知の布押え足であり、これには布Ｗの
厚さ２ｄに応じた布押え足２０のベツド上面１ａ
からの上昇量に対応して布厚信号を発生するよう
にポテンシヨメータ又は差動トランス等からなる
布厚検出器２４を関連設置する。

２２は釜位置検出器で、主軸（図示せず）の回
転角を検出し、第３図に示した釜曲線上における
上糸ループTaの釜５からの糸抜け時期を検出し
て糸抜け信号を発生する。

２３は演算、記憶、比較、入出力等の公知の機
能をもつマイクロコンピユータ（以下マイコンと
する）で、図示しないがマイコンの機能は次のと
おりである。即ちマイコン２３は、布の送りピツ
チと布の厚さに基づいて一縫い目形成に必要な量
の上糸を演算しその結果を基準糸量情報として出
力する第一の演算手段と、繰り出し検出器からの
測定糸量情報を基準糸量情報と比較し双方が一致
したときに一致信号を発生する比較手段と、釜位
置検出器からの糸抜け信号発生に関連してパルス
発生器からの主軸パルスを計数しその値が予め設
定した数に達したときに第一のタイミング信号を
発生する第一のタイミング信号発生手段と、天秤
による上糸の緊張期間終了時に一縫い目に必要な
上糸量を上糸供給源から繰り出し且つ、上下糸の
交絡部を布の下面に接する位置から布内に引き込
み終えるために必要な主軸の回転角度を天秤の運
動曲線と布の送りピツチと布の厚さに基づいて演
算しこの結果からさらに糸抜け信号発生時より上
糸繰り出し開始時までの主軸の回転角度を演算し
この角度を主軸パルス数で表したタイミング情報
を発生する第二の演算手段と、前記糸抜け信号の
発生から主軸パルスを計数しその値を前記タイミ
ング情報と比較し双方が一致したときに第二のタ
イミング信号を出力する第二のタイミング信号発
生手段とから成つている。そして、第２図に示し
たように、入力部には釜位置検出器２２、上糸繰
出検出器９、パルス発生器、布送りピツチ検出器
１９及び布厚検出器２４を接続し、また出力部に
は繰出し制限体１１及び糸把持器１４の各ソレノ
イド１３，１６を接続する。

次にこの作用を説明する。まず布Ｗを布押え足
２０の下にセツトし、これにより布押え足２０が
ベツド上面１ａから浮上すると、布厚検出器２４
がそれを検出して布厚２ｄに対応する布厚信号を
発生する。次に操作ダイヤル１８によりミシンの
送りピツチＰを設定すると、布送りピツチ検出器
１９がその設定値を検出してミシンの送りピツチ
Ｐに対応する送りピツチ信号を発生する。そし
て、上記二つの布厚信号及びピツチ信号を受け
て、マイコン２３は一縫目の形成に必要な上糸量
としての「Ｐ＋2d」を算出し、その値を回動体
の回転角に対応するスリツトの数をコード化して
内部の記憶手段に記憶する。

一方、ミシン１の電源を入れると、常には繰出
し制限体１１のソレノイド１３が励磁（ON）す
ると共に、糸把持器１４のソレノイド１６はその
まま消磁（OFF）し続ける。そこで、ミシン１
を駆動すると、第３図に示すように糸抜け時期○イ
において、釜位置検出器２２から糸抜け信号が発
生しこれに関連して主軸がさらに所定角度回転し
た○ロの時期に繰出し制御体１１のソレノイド１３
が消磁して皿体１２による上糸Ｔの把持を解放す
る。

従つて、布Ｗの下方に形成された上糸ループ
Taはその後の天秤４の上昇によつて次第に布上
方に引き上げられるが、ベーステンシヨン７，８
の上糸Ｔに対する作用力が下吊となるように非常
に弱く設定されているのので、上糸Ｔと下糸ｔと
の交絡点が布Ｗの下面に接合した繰出し開始時期
○ハからは天秤４の上昇に伴なつて上糸Ｔが供給源
６から天秤４へ繰出される。

また上糸Ｔが繰出されると回動体１０が第１図
において時計方向に回動し、これにより検出器２
１は回動体１０のスリツトと対向する毎に糸信号
（パルス）を発生し、この糸信号はマイコン２３
内部のカウンターによつてカウントされる。そし
てカウンターの値は先に算出し記憶された「Ｐ＋
2d」の値とマイコン内部の比較器により比較さ
れ、両方の値が一致したとき、即ち上糸繰出し量
がマイコン２３によつて算出された「ｐ＋2d」
に達することに関連してマイコン２３の指令（比
較器の出力）により繰出し制御体１１を励磁して
再び上糸Ｔの繰出しを阻止し、同時に上記カウン
ターはリセツトされる。

なお、○ハ〜○ニの期間はマイコン２３の指令によ
り糸把持器１４のソレノイド１６を励磁すること
により、針２側から天秤４側への上糸Ｔの移動が
阻止されるので、この期間中の天秤４の上昇によ
つて繰出し制限体１１及び糸把持器１４間の上糸
Ｔは確実に「Ｐ＋2d」だけ増える。

この様にして供給源６から繰出された「Ｐ＋
2d」の上糸Ｔは縫目形成時に消費されると共に、
布厚2dに相当する天秤のその後の上昇により上
糸と下糸の交絡部が布の中央部に引き込まれて縫
い目が完成する。以下同様の作用を一縫目形成毎
に繰返す。

以上のようにこの考案は、布厚と送りピツチを
検出しこれらに基いて適切な糸の繰出し量を算出
し、各縫目毎にその算出結果どうりの上糸量を供
給源側から天秤へ繰出すように、繰出し制限体及
び糸把持器の作用を人手を煩らわさずに自動的に
制御する構成としたから、従来の上下のばね圧調
整を不要にして、未熟練者にも良好な縫目が簡単
に得られる。また上糸の縫締めコントロールを従
来のような張力で行うのではなく、上糸の繰出量
のコントロールで行うので、糸の種類や縫製時の
慣性の影響を受けることがなく、所定の良好な縫
目が確実に得られる。さらに繰出し検出器により
実際に繰出された糸量を検出しその検出信号を繰
出し制限体の制限作用条件としているので上糸の
繰出量が正確となりこれによつても縫目品質を向
上できる等の効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案装置を備えたミシンの正面図、
第２図は電気回路のブロツク図、第３図は釜曲線
及び天秤曲線と繰出し制限体及び糸把持器との関
係を示した説明図である。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 布の送りピツチと布の厚さに基づいて一縫い目
   形成に必要な量の上糸を演算しその結果を基準糸
   量情報として出力する第一の演算手段と、 上糸供給源と天秤との間に配置され上糸供給源
   から繰り出される糸量を測定しその糸量に対応し
   た測定糸量信号を発生する繰り出し検出器と、 測定糸量情報を基準糸量情報と比較し一致した
   ときに一致信号を発生する比較手段と、 天秤及び釜と同期する主軸の回転角度位置から
   上糸ループが釜から抜ける時期を検出して糸抜け
   信号を発生する釜位置検出手段と、 主軸と同期して主軸パルスを発生するパルス発
   生器と、 糸抜け信号の発生時から主軸パルスをカウント
   しそのカウントが予め設定した数に達したときに
   第一のタイミング信号を出力する第一のタイミン
   グ信号発生手段と、 天秤による上糸の緊張期間終了時に一縫い目に
   必要な上糸量を上糸供給源から繰り出し且つ上下
   糸の交絡部を布の下面に接する位置から布内に引
   き込み終えるために必要な主軸の回転角度を天秤
   の運動軌跡と布の送りピツチと布の厚さに基づい
   て演算しこの結果からさらに糸抜け信号発生時よ
   り上糸繰り出し開始時までの主軸の回転角度を演
   算しこの角度を主軸パルス数で表したタイミング
   情報を発生する第二の演算手段と、 糸抜け信号の発生時から主軸パルスをカウント
   しそのカウント値を前記タイミング情報と比較し
   双方が一致したときに第二のタイミング信号を出
   力する第二のタイミング信号発生手段と、 第一のタイミング信号を受けて上糸の把持を解
   放し一致信号を受けて上糸を把持する繰り出し制
   限体と、 第二のタイミング信号を受けて上糸を把持し一
   致信号を受けて上糸の把持を解放する糸把持器、
   とを備えたことを特徴とするミシンの上糸供給装
   置。