JPH0213688Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、主として自動二輪車用四サイクルエ
ンジンにおけるクランクケース構造、特に湿式多
板（または、単板）摩擦クラツチ配設部のクラン
クケース構造に関するものである。

従来の技術 自動二輪車用四サイクルエンジンでは、クラン
クケースの底部に潤滑オイル貯溜部を設け、この
貯溜部に所定量のオイルを溜める、いわゆる湿式
油溜め潤滑方式を採用することが多い。

この潤滑方式では、エンジン運転状態でエンジ
ンの各潤滑部分に供給されていた潤滑オイルが、
エンジン停止時に、重力により潤滑オイル貯溜部
に落下するために、潤滑オイル面が上昇して、ク
ランク軸端部、あるいは主軸端部に配設した湿式
多板（または、単板）摩擦クラツチが潤滑オイル
面に接することとなり、オイル避け手段を設けな
ければ、エンジン始動時に、クラツチが回転する
際に貯溜したオイルを撹拌し、動力損失を生ず
る。また、クラツチデイスクがエンジン停止時に
常時潤滑オイル面に接していると、ライナーが膨
張してクラツチの切れが悪くなることがある。

通常、斯かる現象を回避するために、以下の如
き対策を講じている。

すなわち、第１図、第２図に示すように、クラ
ツチ０１では、クランクケース０２に枢支された
主軸０６の軸端部に配設されており、同クラツチ
０１の外周ないし外側を囲繞するように、クラツ
チカバー０４がクランクケース０２の壁端部０３
に固着されている。そして、エンジン停止時にク
ラツチ室０５下方のクランクケース底部に貯溜さ
れる潤滑オイルからクラツチ０１を離隔するため
に、クランクケース０２側に隔壁用リブ０３ａが
突設され、またクラツチカバー０４側に隔壁用リ
ブ０４ａが突設されている。この両リブ０３ａ，
０４ａは、クラツチカバー０４をクランクケース
０２の壁端部０３に取付けた時、連接して潤滑オ
イル避けの隔壁を形成し、クランク室０７と連通
孔０８を介して連通しているクラツチ室０９内の
底部オイル充満部０１０に対し両リブ０３ａ，０
４ａの上方空間０１１がこの両リブ０３ａ，０４
ａでもつて仕切られている。

解決しようとする課題 ところが、前記のようにクランクケース０２、
ないしクラツチカバー０４の壁面に薄手のリブ０
３ａ，０４ａを形成すると、クランクケース０２
とクラツチカバー０４の鋳型形状が複雑化し、製
作費が高価になる。

また、クランクケース０２と一体のリブ０３ａ
とクラツチカバー０４と一体のリブ０４ａとを正
確に形成しないと、組付中時にクランクケースリ
ブ０３ａにクラツチカバーリブ０４ａが合致せ
ず、しかも両リブ０３ａ，０４ａの接合部を水密
にするためのパツキンが必要となり、部品点数が
増加するとともに、組立作業が煩雑化する。

課題を解決するための手段および作用 本考案は、このような難点を克服した内燃機関
のクランクケースの改良に係り、クラツチ摩擦板
間に適量の潤滑オイルを供給するクラツチを備え
た内燃機関において、クラツチカバーとクランク
ケースとの合せ面より内方のクランクケース側
に、クラツチ収納部を形成して、同クラツチ収納
部にクラツチを配設し、同クラツチ収納部とクラ
ンク室とをクランクケースに形成した隔壁でもつ
て仕切り、前記クラツチ収納部の下壁部を前記ク
ラツチの外周面に対し間隔を存して略円弧面状に
形成するとともに、クラツチ下部の回転方向側端
部より垂下する端面を形成し、同クラツチ収納部
の下壁部よりクラツチ下部の回転方向側に潤滑オ
イル溜めを構成し、同潤滑オイル溜めよりクラン
ク室に向つて潤滑オイルを流下させる連通孔を前
記クランクケースに貫通させたことを特徴とする
ものである。

本考案は前記したように構成されたため、前記
クラツチ収納部の下壁部とクランクケースの隔壁
とクラツチカバーとで囲まれたクラツチ収納部の
凹部は、前記潤滑オイル溜めに対して仕切られ、
その結果、エンジン停止時にクランク室の底部に
溜つた潤滑オイルのオイル面が上昇し、その潤滑
オイルが連通孔を介して潤滑オイル溜め内に逆流
しても、該潤滑オイル溜め内の潤滑オイルが前記
凹部に進入することがない。

そしてクラツチ摩擦板間に供給されて同摩擦板
を冷却した潤滑オイルが、前記クラツチ収納部の
凹部に落下しても、これに接近しているクラツチ
でもつてその回転方向に掻き出されて前記潤滑オ
イル溜めに送られ、この潤滑オイル溜め内の潤滑
オイルは、前記連通孔を介してクランク室内に流
下する。

実施例 以下、本考案の一実施例を第３図ないし第７図
に則して説明する。

自動二輪車用四サイクルエンジン１は、クラン
クケース２内に、トランスミツシヨンが一体に収
納されている。クランクケース２は、上型３と下
型４で構成され、第３図に図示されるように、下
型４の底部の下面にオイルパン８が油密に付設さ
れている。そして、下型４におけるトランスミツ
シヨン室画成用隔壁５はクランクケース２の側壁
に相当し、該隔壁５よりも外方に延設された下壁
部６は、これと連続する形状で上型に形成された
壁部と共にクラツチ収納部３３を画成し、同クラ
ツチ収納部３３内に多板摩擦クラツチ１０が配設
され、同クラツチ１０の外方を覆うように、クラ
ツチカバー２０が、上、下型３，４の外側方開放
壁端部６ｄに気水密に装着されている。

前記多板摩擦クラツチ１０は、前記クラツチ収
納部３３内において、主軸４０の軸端部に枢支さ
れ、同クラツチ１０のクラツチアウター１２と一
体のドリブンギヤ１１は、クランク軸３０上のド
ライブギヤ３１と噛合している。クラツチセンタ
ー１５は、主軸４０上にスプライン噛合され、ク
ラツチアウター１２の軸方向割溝に係合するクラ
ツチデイスク１３と、クラツチセンター１５の軸
方向溝に係合するクラツチプレート１４とが、ス
プリング１７に付勢されたプレツシヤープレート
１６の押圧力で相互に摩擦係合し得るようになさ
れている（以上、第３図ないし第５図参照）。

しかして、下壁部６は、上、下型３，４の合わ
せ面４ａから端面６ａまで、多板摩擦クラツチ１
０の外周部を囲繞するように形成され、端面６ａ
上部は、クランクケース２内の貯溜潤滑オイル上
限レベルＬよりも上位に位置している（第３図、
第８図参照）。

しかも、下壁部６は、端面６ａと、ドリブンギ
ヤ１１と対向する凹陥円弧状内方壁６ｂと、クラ
ツチアウター１２と対向する外方円弧状壁６ｃと
で形成されている（第５図、第６図参照）。

また、下壁４における下壁部６と隔壁５とクラ
ツチカバー２０とで囲まれた凹部１８は、クラツ
チ下部の回転方向Ｒ側の潤滑オイル溜め１９に対
して仕切られており、この下壁部６の潤滑オイル
溜め１９よりクランク室３２に向つて隔壁５を連
通孔７が貫通しており、主軸４０の端部から多板
摩擦クラツチ１０内に供給されて凹部１８に溜ま
つた潤滑オイルが、多板摩擦クラツチ１０の回転
に伴つて潤滑オイル溜め１９に掻き出され、連通
孔７を介してクランク室３２の下方オイルパン８
側へ流下するようになつている。

本実施例は、前記のように構成されているの
で、クランクケース２の下方のオイルパン８内に
貯溜した潤滑オイルのオイル面は、エンジン停止
時に、エンジン潤滑部分中の潤滑オイル落下でも
つて第３図、第８図に図示される線Ｌ迄上昇し、
その潤滑オイルが連通孔７を介して潤滑オイル溜
１９に逆流しても、この潤滑オイル溜１９に貯溜
した潤滑オイルは、下端部６の端面６ａの上部に
遮られて、クラツチ収納部３３の凹部１８内に進
入することがない。

しかも、エンジン稼働時には、クランクケース
２内の貯溜潤滑オイルは、オイルポンプによつて
汲上げられてエンジン潤滑部分に供給されるた
め、クランクケース２内の貯溜潤滑オイルレベル
は、その上限レベルＬより低下し、主軸４０から
クラツチ収納部３３内へ排出される潤滑オイル
は、多板摩擦クラツチ１０の回転によつて順次掻
き出されて、クラツチ収納部３３内の凹部１８に
溜まることがない。したがつて、貯溜潤滑オイル
撹拌による動力損失がなく、またクラツチデイス
ク１３が、貯溜潤滑オイルに浸漬されないので、
クラツチデイスク１３表面のライナーが膨張する
こともない。

また、クランクケース２のみに、端面６ａ、凹
陥円弧状内方壁６ｂおよび外方円弧状壁６ｃより
なる下壁部６を形成し、クラツチカバー２０に
は、これに対応する部分を形成する必要がないの
で、クラツチカバー２０の鋳型が単純化し、コス
トダウンが可能となる。

さらに第１図ないし第２図に図示の従来のもの
のように、クランクケース側のリブとクラツチカ
バー側のリブとを水密に接合する必要がないの
で、両リブに介装されるパツキンが不要となつて
部品点数が減少し、組立て作業が簡単となる。

さらに、従来では多板摩擦クラツチをクラツチ
カバー側に配設していたため、クラツチアウター
に比してドリブンギヤの外径が大きければ、それ
に対応してクラツチカバーの合せ面側を大きくし
なければならなかつたが、本実施例では、ドリブ
ンギヤ１１の外径が大きくても、下壁部６の形状
変化によつて対応し得るので、クラツチカバー２
０の合せ面の大きさを最小限にしてクラツチカバ
ー２０装着時の面圧を大きくすることができ、シ
ーリング効果が大である。

考案の効果 このように本考案においては、前記潤滑オイル
溜め内の潤滑オイルが前記クラツチ収納部の凹部
に進入することがなく、しかも該凹部に溜つた潤
滑オイルは前記潤滑オイル溜めに掻き出され、連
通孔を介してクランク室に流下するため、潤滑オ
イルの撹拌による動力損失がないとともに、エン
ジン停止時にクランク室内の潤滑オイル面が上昇
しても、クラツチ摩擦板のオイル浸漬がないの
で、該摩擦板の膨潤が阻止される。

また、本考案では、クランクケース側のみに比
較的形状の複雑なクラツチ収納部の下壁部を形成
するだけでよいため、クラツチカバーの鋳型が単
純化されて、コストダウンが可能となり、しかも
従来のもののようにクランクケース側とクラツチ
カバー側とにリブを形成する必要がないため、両
者の接合部を水密にするためのパツキンが不要と
なり、部品点数が減少するとともに、組立て作業
が容易に遂行されうる。

【図面の簡単な説明】

第１図は公知に係る自動二輪車用四サイクルエ
ンジンに於ける多板摩擦クラツチ配設構造を示す
横断面図、第２図は第１図に於ける−線に対
応するクランクケース側面図、第３図は本考案の
一実施例に係るクランクケースを備えた自動二輪
車用四サイクルエンジンの要部切欠き概略側面
図、第４図は同エンジンに於ける多板摩擦クラツ
チ配設構造を示す横断面図、第５図は第４図に対
応するクランクケースおよびクラツチカバーを示
す説明図、第６図は第５図に於ける−線切断
図、第７図は第５図に於ける−線矢視図、第
８図は第５図の−線に切断図である。 １……エンジン、２……クランクケース、３…
…上型、４……下型、４ａ……合せ面、５……隔
壁、６……下壁部、６ａ……端面、６ｂ……凹陥
円弧状内方壁、６ｃ……外方円弧状壁、６ｄ……
外側方開放壁端部、７……連通孔、８……オイル
パン、１０……多板摩擦クラツチ、１１……ドリ
ブンギヤ、１２……クラツチアウター、１３……
クラツチデイスク、１４……クラツチプレート、
１５……クラツチセンター、１６……プレツシヤ
ープレート、１７……スプリング、１８……凹
部、１９……潤滑オイル溜、２０……クラツチカ
バー、３０……クランク軸、３１……ドライブギ
ヤ、３２……クランク室、３３……クラツチ収納
部、４０……主軸。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クラツチ摩擦板間に適量の潤滑オイルを供給す
   るクラツチを備えた内燃機関において、クラツチ
   カバーとクランクケースとの合せ面より内方のク
   ランクケース側に、クラツチ収納部を形成して、
   同クラツチ収納部にクラツチを配設し、同クラツ
   チ収納部とクランク室とをクランクケースに形成
   した隔壁でもつて仕切り、前記クラツチ収納部の
   下壁部を前記クラツチの外周面に対し間隔を存し
   て略円弧面状に形成するとともに、クラツチ下部
   の回転方向側端部より垂下する端面を形成し、同
   クラツチ収納部の下壁部よりクラツチ下部の回転
   方向側に潤滑オイル溜めを構成し、同潤滑オイル
   溜めよりクランク室に向つて潤滑オイルを流下さ
   せる連通孔を前記クランクケースに貫通させたこ
   とを特徴とする内燃機関のクランクケース。