JP7506442B1 - 地盤注入工法および地盤注入装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】非アルカリシリカグラウトを用いてゲルタイムを瞬時に連続的に変化させ、地盤状況や注入状況に応じて過剰な酸を用いることなく最適なゲルタイムと固結強度が得られる地盤注入工法および地盤注入装置を提供する。【解決手段】地盤中に挿入した注入管を通してシリカグラウトを注入する地盤注入工法である。A液とB液を注入管に通して地上合流または地中合流させて混合した注入液を地盤に注入する。A液として水ガラスを含む溶液、B液として反応剤を含む溶液を用い、これらをA液ポンプおよびB液ポンプにより送液する複数の駆動装置と、インバータと、複数の駆動装置を一括管理する制御装置とを用いて、インバータを制御して、地盤状況および注入目的に応じA液およびB液の流量および合流比率を連続的に可変制御し、地上合流部または地中合流部から注入管の吐出口までの管路で混合された所定のゲルタイムとシリカ濃度を有する注入液を地盤に注入する。【選択図】図4

Description

本発明はシリカグラウトを用いた軟弱地盤の環境保全型注入固結法に関し、詳細には、軟弱あるいは漏水地盤を、地盤状況に合わせて連続的にゲルタイムと環境影響イオン濃度を可変として、均質かつ強固に固結あるいは止水するとともに、注入地盤中に生成される環境影響イオンの濃度の管理を行う地盤注入工法および地盤注入装置に関する。
軟弱地盤は通常、粗粒土層と細粒土層とが相互になって形成された軟弱な地盤である。これは、地盤内に固結剤を注入して、均質にかつ低い環境負荷で固結することが必要である。
近年の地震の多発化や掘削工事の大規模化に伴う工事の長期化や、複雑な地盤条件において安全施工が要求される工事が増大するにつれて、薬液注入において、長期耐久性に優れ、地下水面下における浸透固結性に優れ、かつ、地盤構造物や水質に対して安全な地盤改良注入技術が要求されるようになってきた。
この要望に応えるため、本出願人は既に、非アルカリシリカグラウト(図1参照)を開発し、実用化している。非アルカリシリカグラウトには、図2に示すように、水ガラスのアルカリを酸で中和したpHが1~10付近の中・酸性系シリカグラウト(シリカゾルグラウト)や、水ガラスのアルカリをイオン交換法で除去し増粒して弱アルカリ性で安定させたコロイド、金属珪素と水ガラスと酸とからなるpHが1~10を示すシリカグラウト(活性複合シリカグラウト)がある。また、本出願人は、非アルカリシリカグラウトの地中における反応生成物の低減に関して、特許文献1に記載の技術を提案している。非アルカリシリカグラウトは、いずれもゲルタイムを数秒から数十時間に設定できるので、大量の注入液を作って置いてもゲル化の心配がないのみならず、大量の注入液を長時間かけて送液でき、かつ、地盤中に注入した後、確実にゲル化し、さらには粘性が小さく、浸透性がよいという利点がある(図1参照)。
非アルカリシリカグラウトは、図1および図2から分かるように、pHが中性付近ではゲルタイムが短く、pHが2付近ではゲルタイムが大幅に長く、その領域では安定したゲルタイムを示すが、その中間であるpH領域ではゲルタイムが急激に変化するため、所定のpHに対応したゲルタイムを有するグラウトを注入することが不可能であった。このため、実際の注入においては、瞬結グラウトを注入するか、極めて長いゲルタイムでpHが1~2の注入液を注入するか、または、これらを組み合わせた複合注入を多用するしかなかった。
一方、軟弱地盤の注入工法としては、従来、次の方法が公知である。
(1)ロッド注入工法
この方法は、固結材として、反応剤の水溶液またはセメント物質を含む懸濁液(A液)と、水ガラス水溶液(B液)とを用い、これらをY字管を用いて合流させながら地盤中に圧入する方法である。しかし、ボーリングロッドと地盤との間に隙間が生じ、この隙間から固結材が地表に噴出したり、また、粗い層を通して注入液が逸脱してしまうため、細粒土層部分の固結や、所定範囲の固結が困難である。
(2)二重管注入工法
この方法は、A液として水ガラスを、B液としてゲル化反応剤を用いて、地盤中に設置された二重管の先端部で合流させて、短いゲルタイムでも固結する配合のグラウトを注入する方法である。この工法によれば、ゲルタイムが短いために、ロッド周辺に沿ってグラウトが地上部に噴出することは防止できるが、ゲルタイムが短いために粗い層を脈状にしか固結し得ず、土粒子間に浸透させることはできない。そのため、掘削にあたって、湧水土砂の崩壊が生じやすい。
(3)二重管複合注入工法
上記問題を解決するために、従来より、まず、ゲルタイムの短い注入材で注入管と地盤との隙間を充填することによりパッカ効果のあるシールを形成するとともに、粗い層や層の境界面を填充した脈状の主体とする固結層を形成し、その後、ゲルタイムの長い注入材を、ゲルタイムの短い注入材が既に注入してある領域に、上記シールを破って注入する地盤注入工法が開発されている。この工法は、ゲルタイムの長い注入材が注入管周囲や粗い層から逸脱することがないので、注入対象に確実に浸透させて固結することを目的としたものである(特許文献2)。
特許文献2に記載の発明は、注入材を形成するために主剤配合液に反応剤を合流するもので、A液として、主剤配合液としての水ガラス配合液または水ガラスと反応剤との混合配合液を用い、それに、B液としての水ガラス溶液や急結剤を加えた反応剤溶液を合流させる。
具体的には、水ガラスと反応剤とを合流させた瞬結グラウトを注入した後、アルカリ性浸透グラウトからなる浸透性グラウトを注入する。または、酸性水ガラスに反応剤を合流して瞬結性グラウトを注入した後、酸性水ガラスのみを注入する。主剤に対する反応剤の合流をオン、オフしながら瞬結グラウトを一次注入し、その後、浸透性グラウトに切り替えて二次注入する。
また、水ガラス配合液は、pHがアルカリ側になるとゲル化が不安定になるか、または、ゲルタイムが無限大になりゲル化しなくなるという問題があった(図1)。そこで、酸性水ガラスに水ガラスを合流して瞬結グラウトを注入した後、酸性水ガラスのみ、または、酸性水ガラスに緩結性反応剤を加えて注入する過程をオン、オフしながら切り替えて注入する方法がとられるが、極めて複雑であって、酸性水ガラスは配合途中でゲル化が進行するため、実際に注入されている注入液のゲルタイムやpHは不明確である。
また、溶液型のシリカグラウトは、ゲル化の安定領域がpHが2前後の領域とpHが7~8付近の領域であり、その中間はpHのわずかな違いで大幅にゲルタイムが変動するため、pHが7~8付近の瞬結領域とpHが2~3付近の非常に長いゲルタイムのいずれかを用い、地盤状況や注入状況に応じてその中間のpHのゲルタイムを用いることは困難であった(図1参照)。従って、安定した領域のpH値を得るために過剰の酸を必要とし、その結果、その地盤中に生成される反応生成物の地盤に対する影響を考慮する必要があった。
このように、耐久性と浸透性に優れた注入材としては、非アルカリ領域のシリカグラウトがあるが、非アルカリシリカグラウトは、瞬結領域(pHが8付近)から長結領域(pH3付近)の中間領域のゲルタイムを緩結グラウトとして最適のゲルタイムを設定して適用することが困難であった。また、瞬結グラウトと緩結グラウトの併用は施工が煩雑であり、かつ、急激にpHやゲルタイムが変動するため、地盤状況や注入状況に応じてゲルタイムを連続的に変化させることは困難であった。もちろん、アルカリ領域においては、さらにこれらが困難であった。さらに、特許文献3には、地盤中に多量の硫酸根を持ち込まない地盤硬化法が記載されており、使用する硬化剤は硫酸と硫酸アルミニウムである。しかし、この方法では、地盤条件、注入目的に応じてゲルタイムを瞬時に、連続して変化させて地盤中における硫酸イオンの生成を所定範囲に管理する思想はなく、また、ゲルタイムと反応生成物である硫酸イオンの濃度の関係に基づいて硫酸イオン濃度を環境に影響しない範囲内に管理する手法は示していない。
特許文献1では、本出願人による注入地盤中に生成する反応生成物である硫酸イオン濃度を低減するための技術を提案している。しかし、注入中に注入地盤中の硫酸イオンの濃度の挙動や地盤状況をリアルタイムで把握したり、注入地盤中に生成する環境に影響する成分を水質規準或いは環境規準の所定濃度まで低減するまでには至っていない。また、特許文献4に記載の技術は、A液とB液とをバッチで混合してから注入する方式であって、A液・B液の流量と合流比率を瞬時に連続的に変化させて注入することはできない。さらに、特許文献5に記載の技術は、A液は水ガラスと酸性反応剤を含む酸性シリカ溶液であり、B液は水ガラスを含むアルカリ性シリカ溶液であって、A液とB液とを混合して注入する方法において、A液とB液の比率を変えてゲルタイムが変動するシステムである。
特許第7146202号公報 特公昭61-017970号公報 特開2000-328056号公報 特許第5017488号公報 特許第7212423号公報
アルカリ領域は水ガラスグラウトのわずかなpHの違いや反応剤の量によってゲル化が不安定であって、緩結領域ではゲル化しなかったり、また、ゲル化剤を少なくしてゲルタイムを長くすると、ゲル化が不完全で強度が得られなくなる問題があった。
そこで本発明は、浸透性グラウトとして非アルカリ領域のシリカグラウトを用いた地盤注入工法および地盤注入装置の改良を行ったものである。
非アルカリシリカグラウトには、水ガラスグラウトの劣化要因であるアルカリを酸で除去したシリカグラウトや、金属珪素法や地熱水由来のシリカコロイドを含有するシリカグラウトがある。これらの非アルカリシリカグラウトは、瞬結領域から緩結領域まで確実にゲル化する点と、シリカ濃度が濃い領域から薄い領域まで確実に固結する点で優れているが、酸性領域ではpHが少し違うとゲルタイムが大幅に変動するため、ゲルタイムの調整が不可能で、実際にはゲルタイムが安定しているpH1~3付近の数十時間の領域か、数秒~十数秒の瞬結領域しか使用できないという問題があった(図1参照)。
本発明の目的は、非アルカリシリカグラウトを用いてゲルタイムを瞬時に連続的に変化させて、地盤状況および注入状況に応じて、過剰な酸を用いることなく最適のゲルタイムと固結強度が得られる地盤注入工法および地盤注入装置を提供することにある。
特許文献5では、A液の酸性シリカ溶液は、それ自体が図4の注入液配合部の主剤配合液中でゲル化が進行するので、A液とB液の合流液のpHやゲルタイムは、合流液の注入中に変動してしまう。これに対し、本発明では、A液は水ガラス溶液、B液は反応剤溶液であるので、その配合液のゲルタイムおよびpHは、注入中において合流比率により常に一定であり、かつ、地上合流部または地中合流部から注入管の吐出口までの管路で混合された正確に所定のpHおよびゲルタイムを有する合流液を注入できる。単にA液・B液の合流液を注入するのみの場合、A液とB液はそれぞれ混合されることなく層流のまま地盤中に注入されてしまうことが起こりうる。この場合、地盤中に注入される注入液は混合がなされておらず、正確に所定のpHおよびゲルタイムを有する注入液とはいえなくなる。従って、本発明では、特許文献5の注入液配合部におけるように、酸性シリカ溶液を作製するための製造部も必要ない。また、本発明のように図4,図5に示す制御部で正確に連続的にA液B液の合流比率を管理された注入液送液部を用いない場合、単にA液・B液を合流・混合しても、地盤中に注入される注入液は、正確に所定のpHとゲルタイムを有する注入液とはいえなくなる。このようにして本発明は、上記2つの要素があって初めて正確に所定のpHおよびゲルタイムを有する混合液を地盤中に注入することが可能になった。さらに、本発明では、所定のゲルタイムおよびpHの合流液は、注入管の地上合流または地中合流による混合によって正確に製造され、地盤に注入されるため、シンプルな構造で済むという利点がある。
このように、本発明においては、従来工法のようにバッチシステムを用いることなく、管路におけるA液とB液との合流によって生じる乱流がA液とB液とを混合して、所定のpHおよびゲルタイムを有する注入液を瞬時に連続的に処方できるため、A液・B液の合流地点から注入管の先端に至る管路がそのままA液とB液との混合機能を持つ注入装置となる。その結果、所定のpHおよびゲルタイムを有する注入液を地盤中に注入できる地盤改良工法および注入装置の発明に成功したものである。
上述のように、従来の特許文献1に記載された発明では、硫酸イオンの生成を低減した注入液の配合組成については述べているが、その改良地盤中における硫酸イオンの挙動から、注入地盤における硫酸イオンの濃度を注入作業中に環境に影響を生じない濃度までリアルタイムで瞬時に連続的に制御できるものではなかった。これに対して、本発明者らは、特許文献1に記載の発明において、地盤状況や地下水の流動状況、注入設計に対応して、注入作業中に注入地盤における硫酸イオンの濃度が環境に影響がないと考えられる値以下になるように、水ガラスを含有するA液と硫酸イオンを含有するB液を合流して、A液とB液の流量と合流比率を瞬時に連続的に可変制御して、硫酸を含む反応剤を過剰な量で処方することなく、地盤改良を行うことができる。また、ゲルタイムの設定に必要な所定の濃度内に処方できるため、A液とB液との合流点以後の合流液の管路そのものがA液とB液との混合装置となり、B液の硫酸濃度および/またはA・B液の合流液中の硫酸濃度が劇物とならない10%以下の範囲となって、すなわち、注入液の製造装置として安全に環境負荷の少ない地盤改良が可能になった。さらに、本発明者らは同様の原理で本発明者らによる特許文献1に記載の発明をさらに発展させて、地盤中における反応生成物の濃度について、硫酸イオン濃度のみならず、BOD(生物学的酸素要求量,Biochemical Oxygen Demand)、COD(化学的酸素要求量,Chemical Oxygen Demand)、重金属など、地盤注入において水質や土壌などの環境に影響する成分を、水質規準や土壌環境規準の範囲内に収めることができるように管理可能な地盤改良工法を開発したものである。
すなわち、本発明の地盤注入工法は、地盤中に挿入した注入管を通して非アルカリ領域のシリカグラウトを注入する地盤注入工法において、A液とB液とを該注入管に通して地中合流させて、地中合流部から該注入管の吐出口までの管路からなる混合装置で混合した注入液を地盤に注入する地盤注入工法であって、
前記注入管は、前記A液および前記B液のそれぞれを送液する複数の管路を有し、該A液および該B液を、それぞれ滞留させることなく連続的に流動させながら、バッチシステムを用いることなく、地中に設けられた前記混合装置を経て合流、混合して、地盤に注入するものであり、
前記A液として水ガラスを含む溶液を用い、前記B液として硫酸イオンを含み硫酸濃度が10%以下である反応剤を含む溶液を用い、該A液および該B液をそれぞれA液ポンプおよびB液ポンプにより送液する複数の駆動装置と、インバータと、該複数の駆動装置を一括管理する制御装置と、を用いて、前記インバータを制御して、地盤状況および注入目的に応じて前記A液および前記B液の流量および合流比率βを、β=A/B=0.5~2.0の範囲内で、ゲルタイムに対応したpHおよびシリカ濃度になるように、瞬結配合から緩結配合に連続的に可変制御することによって、前記A液および前記B液の反応生成物のイオン濃度を連続的に変化させて、前記反応剤を過剰な量で処方することなく、ゲルタイムの設定に必要な所定の濃度内で、前記注入液を、地盤に注入することを特徴とするものである。
さらにまた、本発明の地盤注入工法においては、地盤改良領域の地盤状況および地下水状況に基づき、前記A液および前記B液の流量および合流比率を、地盤中の反応生成物の残存イオン濃度が所定の濃度となるように設定して、地盤中における該反応生成物の濃度を所定の濃度内にして地盤を固結させることができる。
さらにまた、本発明の地盤注入工法においては、前記注入液が、硫酸イオンを含み、シリカ濃度が1~40w/vol%、pHが1~10である非アルカリシリカグラウトであって、前記地盤が、コンクリート構造物の近接部または掘削後にコンクリート構造物を構築する予定の近接部であり、
地盤改良領域の地盤状況および地下水状況から、地盤内に溶出した硫酸イオンの該地盤中における挙動に基づき、注入地盤を下記の(1)開放系、(2)停滞系または(3)濃縮系のいずれかに分類し、
(1)開放系:地下水が前記コンクリート構造物よりも外方向に流れており、希釈によって硫酸イオン濃度が低減していく地盤
(2)停滞系:地下水流が停滞しており、硫酸イオン濃度がほとんど変化しない地盤
(3)濃縮系:硫酸イオンが前記コンクリート構造物の表面から浸透して濃縮され、硫酸イオン濃度が増大していく地盤
前記分類された注入地盤のタイプに応じ、該注入地盤における硫酸イオンの低減要因(Y)として、下記△1~△7のうちから選ばれるいずれかまたは複数を設定し、
△1:前記地盤改良領域内に非注入部分を設け、非注入部分の比率を硫酸イオンの溶出率αとしたときの、改良地盤中における硫酸イオンの残存率 △1=1-α
△2:地下水中に硫酸イオンが溶出する溶出率をαとしたときの、前記地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △2=1-α
△3:前記地盤改良領域内における硫酸イオンの固定率を溶出率αとしたときの、該地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △3=1-α
△4:前記地盤改良領域内における非硫酸系注入材、または、低硫酸系注入材による硫酸系注入材の硫酸イオンの置換率を溶出率αとしたとき、該地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △4=1-α
△5:前記地盤注入材中のシリカ成分のコロイドによる置換率を溶出率αとしたとき、前記地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △5=1-α
△6:前記地盤注入材中において硫酸イオンの一部または全部を捕捉し、その捕捉率を溶出率αとしたとき、前記地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △6=1-α△7:前記地盤改良領域内の前記地盤注入材の注入率を低減し、該注入率の低減率を溶出率αとしたとき、該地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △7=1-α
前記注入地盤に応じて設定された前記低減要因(Y)に基づき、前記地盤注入材として、前記非アルカリシリカグラウト由来の硫酸イオンが、前記地盤改良領域に残存する硫酸イオン濃度の平均値(X)の値で8,000ppm以下になるような反応剤配合処方からなるものを選択することができる。
本発明の地盤注入装置は、上記地盤注入工法に用いられる地盤注入装置であって、
前記A液ポンプおよび前記B液ポンプと、前記複数の駆動装置と、前記インバータと、前記制御装置と、前記注入管と、を含み、前記A液と前記B液との地中合流部から前記注入管の吐出口までの管路が、前記混合装置を構成することを特徴とするものである。
また、本発明の地盤注入装置は、上記地盤注入工法に用いられる地盤注入装置であって、
前記A液ポンプおよび前記B液ポンプと、前記複数の駆動装置と、前記インバータと、前記制御装置と、前記注入管と、を含み、前記A液と前記B液とを、前記混合装置に配置されたスタティックミキサーで混合することを特徴とするものである。
さらに、本発明の地盤注入装置は、上記地盤注入工法に用いられる地盤注入装置であって、
前記A液ポンプおよび前記B液ポンプと、前記複数の駆動装置と、前記インバータと、前記制御装置と、前記注入管と、を含み、該制御装置により、前記複数の駆動装置を一括管理することを特徴とするものである。
本発明によれば、非アルカリシリカグラウトを用いてゲルタイムを瞬時に連続的に変化させることで、地盤状況および注入状況に応じて過剰な酸を用いることなく最適のゲルタイムと固結強度が得られる地盤注入工法および地盤注入装置を提供することができた。
非アルカリシリカグラウトのpHとゲルタイムとシリカ濃度の関係を示す図である。 [H]/[SiOとゲルタイムの関係を示す図である。 水ガラス(モル比=3)を用いた場合のpHとシリカ濃度とゲルタイムと強度の関係を示す表である。 耐久性シリカグラウトのシリカ溶液のpHとゲルタイムの関係を示すグラフである。 本発明の注入システムの概要を示すブロック図である。 本発明の一実施形態における注入システムの詳細を示すブロック図である。 本発明の一実施形態における注入システムの詳細を概念的に示した図である。 A液とB液の比率とゲルタイムおよびシリカ濃度の関係(実施例1,2)を示すグラフである。 A液とB液の比率とゲルタイムおよびシリカ濃度の関係(実施例3,4)を示すグラフである。 A液とB液の比率とゲルタイムおよびシリカ濃度の関係(実施例5,6)を示すグラフである。 A液とB液の比率とゲルタイムおよびシリカ濃度の関係(実施例7,8)を示すグラフである。 A液とB液の比率とゲルタイムおよびシリカ濃度の関係(実施例9,10)を示すグラフである。 A液とB液の比率とゲルタイムおよびシリカ濃度の関係(実施例11,12)を示すグラフである。 ゲルからの硫酸イオンの溶出率を示すグラフである。 ゲル中のSO --濃度の経時的変化を示すグラフである。 注入地盤における非アルカリシリカグラウトのコンクリートに対する影響を確認するための試験における養生方法を示す図である。 注入地盤における非アルカリシリカグラウトのコンクリートに対する影響を確認するための試験における養生状況を示す写真図である。 注入地盤における非アルカリシリカグラウトのコンクリートに対する影響を確認するための試験における養生後の状況を示す写真図である。 養生条件の違いによるモルタルの強度と養生液のpHの経時的変化を示すグラフである。 反応剤中の硫酸混入率が養生媒体のpHに与える影響を示すグラフである。 モルタル供試体と同体積の金属イオン封鎖剤を含むシリカゾル中に3年間養生したあとの不溶性被覆を形成したモルタル表面の状態を示す図である。 金属イオン封鎖剤を含むモルタル供試体と同体積のホモゲル中で16年半養生後のモルタル供試体の状況と金属イオン封鎖剤による不溶性被覆(マスキングシリカ)の形成を示す図である。 ホモゲルに浸漬養生したモルタル表面の被膜のX線チャートである。 ヘキサメタリン酸ソーダと金属イオン封鎖剤の機能を示す図である。 モルタル供試体を金属イオン封鎖剤含有シリカグラウトの同体積のサンドゲル中に包み硫酸系シリカグラウトのサンドゲル中に養生した場合の金属イオン封鎖剤の効果を確認するための実験を示す図である。 マスキングシリカによるコンクリート保護効果とマスキングセパレート法を示す図である。 注入領域における異なる注入液の注入部分の区分を示す図である。 非アルカリシリカグラウトを注入した現場における実際の例を示す図である。 非アルカリシリカグラウトにおける酸の種類とゲルタイムの関係の例を示す図である。 薬液pHと気中ゲルタイムおよび土中ゲルタイムの関係を示すグラフである。 注入液の浸透メカニズムを示す図である。 注入液の逸脱や拡散の状況を示す図である。 (a),(b)はシリカ濃度に対応した固結砂の一軸圧縮強度を示し、(c)は異なる現場砂における一軸圧縮強度を示す。 従来の瞬結・緩結注入工法の注入システムの例を示す図である。 スタティックミキサー装置注入管を示す図である。 二重管ロッド注入工法における注入管先端部に混合装置を設けた例を示す図である。 A液およびB液を二重管ロッドの吐出口で噴射混合して注入液を作製して地盤に注入する注入管装置を示す図である。 二重管注入管の先端部でA液とB液を渦流を生じさせて混合して注入する装置を示す図である。 ダブルパッカ方式で使用される注入管を示す図である。 ダブルパッカ工法における内部がA液・B液の管路によって構成され内管の上下のパッカ内に吐出されたA液B液の混合液が外管スリーブで覆われた吐出口から地盤に注入される例を示す図である。 外管ゴムスリーブを通過して注入する工法の説明図である。 シリカの粒径を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の地盤注入工法は、地盤中に挿入した注入管を通してシリカグラウトを注入するにあたり、A液とB液とを注入管に通して地上合流または地中合流させて混合した注入液を地盤に注入するものである。
本発明においては、A液として水ガラスを含む溶液を用い、B液として反応剤を含む溶液を用いて、これらA液およびB液をそれぞれA液ポンプおよびB液ポンプにより送液する複数の駆動装置と、インバータと、複数の駆動装置を一括管理する制御装置と、を用いて、インバータを制御して、地盤状況および注入目的に応じてA液およびB液の流量および合流比率を瞬結配合から緩結配合に連続的に可変制御することによって、地上合流部または地中合流部から注入管の吐出口までの管路で混合された所定のゲルタイムおよびシリカ濃度を有する注入液を、地盤に注入する。
非アルカリシリカグラウトのゲルタイムはpHによって急激に変動するため、酸性領域でゲルタイムを設定することが不可能に近い。本発明においては、この問題を解決するために、図3、図4、図5に示すような注入システムを用いて、pHを瞬時に連続して変化させることを可能にし、地盤状況、注入状況に応じて、非アルカリシリカグラウトのゲルタイムを瞬時に連続的に変化させて管理しながら注入することを可能にし、または、所定の強度に連続的に変化させることを可能にしたものである。
特に、軟弱な土層において、土層ごとに最適なゲルタイムおよび強度を設定できる地盤改良を可能にし、また、同一土層においても、1ステージにおいて瞬結配合の一次注入の後、ゲルタイムを最適に管理した緩結配合の二次注入に連続して変化させ、しかも最適な強度に一定に保持し、または、最適な強度に連続的に変化させる地盤改良を可能にしたものである。
なお、ここでpHが中性領域とは、pHがほぼ10以下であることを意味する(図1参照)。
本発明の地盤注入装置は、本発明の地盤注入工法に用いられ、A液ポンプおよびB液ポンプと、複数の駆動装置と、インバータと、制御装置と、注入管と、を含み、A液とB液との合流部、または、合流部から注入管の吐出口までの管路に、A液とB液との混合装置が設けられているものである。
また、本発明の地盤注入装置は、本発明の地盤注入工法に用いられ、A液ポンプおよびB液ポンプと、複数の駆動装置と、インバータと、制御装置と、注入管と、を含み、制御装置により、複数の駆動装置を一括管理するものである。
本発明の注入システムの例を以下に示す(図3、図4、図5参照)。材料配合部から注入製造部へ、さらに注入液送液部から圧力計・流量計を通して、送液管から混合装置を通し、注入管部へ注入される。注入液送液部、圧力計・流量計、送液管から注入管理部へリアルタイムでデータが入力され、記録部にて記録され、地盤状況や注入状況に応じて注入製造部で配合などが調整される。
次に、図4、図5の注入システムにおいて、材料配合部では使用する材料を地盤状況や注入状況に応じて調整し、注入配合部でA液とB液に分けられる。材料配合部には、酸性液からなる配合液のB液と、シリカ溶液のA液とが配置されている。添加剤は、A液およびB液のいずれか、または、酸に添加されてもよい。
注入液送液部では、インバータ、ポンプおよびPQ(流量・圧力検出器)がそれぞれに配置され、コントローラにて調整されて、注入液注入部にて混合装置を用いて地上合流または地中合流される。制御部のコントローラは、材料配合部、注入送液部およびインバータを制御し、記録部にデータを送信する。
A液、B液の混合合流は、図3、図4,図5に示すように注入管の地上部で合流してもよく、二重管先端部で混合合流してもよく、また、注入外管内の複数の管路から合流して注入してもよい(図33~図39)。単管ロッド注入でも、表11に示すような各種注入方式に適用できる。
図5は、本発明を実施する注入システムの例の概略図を示すものであって、ダイヤフラム式二連グラウトポンプを用いた注入システムの例を示す(東陽商事株式会社製)。この注入システムを用いることによって、地盤状況や注入状況に応じて、制御部(コントローラ)により、A液ポンプおよびB液ポンプのそれぞれのインバータを連動して制御して、A液およびB液の合流液の吐出量とそれぞれのポンプの流量比率を可変管理することにより、AB合流液の吐出量やA液・B液の吐出量の比率を瞬時に連続的に変化させることができる。A液とB液は、合流部において管径が変化して乱流を生じて混合されたり(図36、図37)、噴射によって混合されたり(図34,図35)、または、管路においてスタティックミキサーなどの管状混合装置(図33)などによって混合されるため、地盤中にA液・B液が混合されないまま注入されることを防ぐことができる。混合装置は注入管内または注入管地上部に設置し、A液とB液を合流混合させた液を注入管から地盤中へ注入することができる。
また、このようにして本発明による注入工法および注入装置によれば、従来のバッチシステムのように配合槽中でpHやゲルタイムを調整する作業をすることなく、材料配合部のA液、B液のシリカ濃度や反応剤によって、所定のpHとゲルタイムに応じた注入濃度をコントローラーにより調整することができる。しかも、従来のバッチシステムにおいては、注入作業中に混合槽内でゲル化が進行するため、所定のpHやゲルタイムでの注入が困難という難点もある。
本発明は、A液を水ガラスを含むアルカリシリカ溶液、B液を酸性溶液(酸または酸性塩(図4))とし(図4,図5)、コントローラから材料配合部に指示して、シリカ量を地盤状況に応じて可変とし、A液・B液の吐出量の比率を変えることにより、A・B液合流液のゲルタイムを瞬時に連続的に変動させることができる。また、同時に反応生成物の濃度を瞬時に連続的に変化させることができる。または、A液、B液の合流液の吐出量およびA液、B液の比率の変動に対する反応生成物の濃度の変化をあらかじめ実験によって把握しておき(表3~表14、図6~11)、現場において、注入前にインバータに対応してキャリブレーションしておけば、注入中におけるインバータの制御に対応して反応生成物の濃度をリアルタイムで把握できる。すなわち、図5のシステムを用いて、実質的に注入を見える化管理することができる。
A液、B液の比率を変えれば、ゲルタイムは変動しながらシリカ濃度を所定の濃度に管理して、反応生成物の濃度を管理することができる。例えば、A液、B液の流量比率と合流吐出量をA液、B液それぞれのインバータで制御することにより、ゲルタイムとpHと反応生成物の濃度を瞬時に連続的に可変とすることができる。
本発明においては、管路で混合された所定のゲルタイムおよびシリカ濃度を有する注入液の注入において、反応生成物のイオン濃度を連続的に変化させて、ゲルタイムおよび反応生成物のイオン濃度をリアルタイムで把握することで、反応剤を過剰な量で処方することなく、ゲルタイムの設定に必要な所定の濃度内で地盤を固結させることができる。
なお、本発明の実施に用いる注入システムとしては、ダイヤフラムポンプ以外にも、プランジャーポンプやピストンポンプを用いて、少なくともA液、B液を送液する多連式注入システムであって、A液、B液の合計流量とA液、B液の送液比率を瞬時に連続的に可変とする制御システムを有する注入システムを用いることができる。
このように、本発明はA液、B液の合計量と、A液とB液の比率をコントロールして瞬結配合と緩結配合に切り替えることができ、しかも比率をインバータ制御によって瞬時に連続的に可変とすることができ、緩結配合のゲルタイムを制御することができるため、設定した比率に対応したゲルタイムを設定することができる。
図30(c)は、注入地盤の粗い層に瞬結グラウトを注入後、細かい層に連続して注入する例を示す。
本発明は、B液:酸性溶液、A液:水ガラス溶液とし、A液、B液のA液ポンプ、B液ポンプのインバータを制御して、A液・B液の合計流量とA液、B液の流量の比率を管理することにより、以下の特徴を得ることができる。
本発明において、酸性溶液に用いる酸としては、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸、スルファミン酸等の無機酸、クエン酸などの有機酸、および、これらの混酸やこれらの塩、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムなどのアルミニウム等のアルミニウム塩や、塩化鉄、硫酸鉄、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等を用いることができ、pHを調整できる酸であれば限定されない。また、酸として作用する塩(例えば、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等)、または、pHを酸性から中性方向に移行させるアルカリ剤、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、または、その他のアルカリを用いることができる。さらに、任意の塩やアルカリ、pH調整剤を添加剤として用いて、ゲルタイムを調整したり、強度を調整することができる。
シリカ溶液としては、水ガラスや活性シリカ(水ガラスのアルカリを除去したシリカ、または、水ガラスとコロイドからアルカリを除去したシリカ)、コロイダルシリカ、金属珪素、地熱水由来のシリカが挙げられ、これらの一種または複数種を用いることが可能である。本発明において、使用する水ガラスの種類や濃度、モル比は限定されない。
本発明においては、B液として硫酸イオンを含む溶液を用い、B液および/または注入液の硫酸濃度を10%以下とすることで、環境負荷を低減した地盤改良が可能である。
例えば、上記注入液が、シリカ濃度が1~40w/vol%、pHが1~10、20℃におけるゲルタイムが5秒以上7日以内である非アルカリシリカグラウトであって、B液として酸を含む溶液を用い、A液とB液との合流比率βをβ=A/B=0.5~2.0として、A液およびB液の流量および合流比率を、瞬結配合から緩結配合に連続的にゲルタイムに対応したpHおよびシリカ濃度になるように可変制御することによって、所定のゲルタイムおよびシリカ濃度を有する注入液を地盤に注入することができる。
また、A液およびB液の流量および合流比率を、瞬結配合から緩結配合に連続的に可変制御して、得られた注入液を地盤に注入するにあたって、注入開始時における合流比率を、注入液のpHが酸性側から始まるように可変制御することが好ましい。
本発明においては、地盤改良領域の地盤状況および地下水状況に基づき、A液およびB液の流量および合流比率を、地盤中の反応生成物の残存イオン濃度が所定の濃度となるように設定して、地盤中における反応生成物の濃度を所定の濃度内にして地盤を固結させることができる。
また、本発明においては、A液およびB液の合流比率を瞬結配合から緩結配合に連続的に変化させることにより、ゲルタイムおよび改良地盤中における反応生成物の濃度が、地盤状況、地下水状況および注入目的に応じた所定の値となるように、注入液を地盤に注入することができる。
さらに、本発明においては、シリカグラウトとして、相対的にゲルタイムの短いグラウトと相対的にゲルタイムの長いグラウトを、瞬結配合から緩結配合に連続して地盤に注入するものとし、ゲルタイムの短いグラウトは地盤に粗結注入する一次注入材として注入し、ゲルタイムの長いグラウトは二次注入材として浸透注入することができる。
以下に、具体例について説明する。
(実施例1~12)
表3(a)~表14(b)に、A液およびB液の配合、A液とB液との合流液の反応生成物である硫酸イオン濃度およびリン酸イオン濃度、β=A/Bに対応するゲルタイム、pHおよびシリカ濃度を示す。
また、そのときの硫酸イオン濃度をppmで示すが、10,000ppmは1%である。
さらに、図6~11には、β=A/Bに対応するゲルタイムとシリカ濃度(すなわち、A液とB液との合流比率)との関係が示されている。
以上より、β=A/Bを連続的に変化させることにより、ゲルタイム、シリカ濃度(強度)および反応生成物(硫酸イオン、リン酸イオン)の濃度を、瞬時に連続的に変化させることができることがわかる。
一方、この注入液の注入による地盤改良領域における反応生成物の濃度(X)には、注入地盤の地盤条件、地下水条件、注入設計条件が大きく影響することが、本出願人によって解明されている(特許文献1)。
硫酸イオン濃度について言えば、改良地盤中の硫酸イオンの濃度をX、改良地盤中のゲルからの硫酸イオンの溶出率をαとすると、地盤中の硫酸イオンの残存率は△=1-αとなる。硫酸イオン残存率△の濃度がコンクリートに影響を与えない濃度X以下となる注入液の処方(反応剤濃度=a)を、XがW以下になるようなβ=A/Bが得られるようにA液、B液の吐出量をA液・B液のインバータを制御して注入することで、地盤中の反応生成物の濃度を所定の値(W)内に収めることができる。一方、室内実験によるシリカ配合液のゲル化物からの硫酸イオンの溶出率をαとし、図12,図13に示した硫酸ナトリウムの濃度がコンクリート供試体に及ぼす影響を、表16に示す。表16より、コンクリートに影響を及ばさない最小限の濃度をWとする。以上より、図6~11のβ=A/Bに対応する硫酸イオン濃度が、地盤条件、地下水条件および注入設計条件に対応する硫酸イオンの残存率で、表16より8000ppm(=W)以下になる注入液の配合処方を設定して、A液、B液のインバータを制御すればいいことがわかる。
上記のような地盤注入材を用いて地盤改良領域を形成するにあたり、本発明者らは、地盤注入材に含まれる成分と注入地盤との関係について、以下のような検討を行った。
[硫酸イオンのコンクリートに対する影響]
[実験]
地下水が停滞(または滞留)したまま地下水の流動がほとんどない場合を想定して、水溶性反応生成物である硫酸ナトリウム水溶液の濃度が1年間変化することなくコンクリート(モルタル)に作用すると仮定し、硫酸イオン濃度が10,000ppm、8,000ppm、5,000ppm、3,000ppm、0ppmの硫酸ソーダ水溶液に表17(a)のモルタル供試体を1年間養生して、一軸圧縮強度試験を行い、コンクリートに対する影響を調べた。
地下水による希釈がない場合、実験では、SO --でコンクリートに外見上の変化が生ずるのは、10,000ppmでは6ヶ月以内であり、8,000ppmでは1年でわずかではあるが変化が出る。
表16に、硫酸ナトリウム水溶液にコンクリート供試体を浸漬し、硫酸イオンの濃度によるコンクリートへの影響を観察した結果を示す。○は外観形状に異常なしの状態、△は一部表面が剥離している状態、×は表面の剥離が著しい状態をそれぞれ示す。この結果から、地下水による希釈がない場合、1年以内でコンクリート構造物に影響を与える硫酸イオン濃度は10,000ppm以上であって、5,000ppm以下は1年以上でも影響はほとんどなかった。表16において、硫酸ナトリウムの濃度が8,000ppmの場合は、1年でわずかに影響を生ずる濃度であるが、実際には地下水による硫酸イオンの希釈が生ずるので、注入地盤の硫酸イオン濃度が8,000ppm以下ならば、モルタル供試体に問題を生じないとみなしてよいと考えられる。
[注入地盤における非アルカリシリカグラウトのコンクリートに対する影響]
水ガラスグラウトの劣化要因となるアルカリを酸性中和剤で除去した非アルカリシリカグラウトには、酸性中和剤として、(1)硫酸、(2)リン酸、(3)硫酸とリン酸の混酸、(4)非硫酸系酸、(5)非硫酸系酸性塩、または、(6)上記(1)~(5)のいずれかの併用が用いられる(表21~表23)。
上述したように、硫酸イオンは、数か月内に養生水中に溶出して、ほぼ一定値になると思われる(図12、図13)。実際の現場では、固結物に対して地下水が極めて多く、地下水が流動して希釈される場合は、溶出と拡散の速度は速くなると思われるが、その希釈速度やSO --のゲル中残存率は、地盤条件や地下水条件、注入領域の大きさ等が影響することを考慮する必要がある。従って、希釈を伴わない場合でも、モルタル供試体にほとんど影響を生じないシリカグラウトの検討が有効となる。それが、金属イオン封鎖剤を含有する非アルカリシリカグラウトの適用である。
表17(a)のモルタル供試体を同体積の金属イオン封鎖剤を含有する非アルカリシリカのゲル中に養生して(図14)、コンクリート表面に析出した被膜に関して、外観観察を行った。その結果、いずれの注入材においてもモルタル表面に白色の被膜が形成されていることを確認した(図15、図16)。そこで、比較のために、同様の条件でII(非硫酸系・リン酸系、表21、No.2)、IIα(硫酸・リン酸系、表21、No.3)およびIIδ(硫酸系、表21、No.1)の非アルカリシリカに養生したモルタル供試体の被膜を採取し、その成分を蛍光X線法にて、結晶構造をX線回折法にて、それぞれ評価した(図21、表24)。
表24に被膜成分を、図21にX線回折チャートを、それぞれ示す。これらの測定結果より、モルタル表面の被膜は、IIでハイドロキシアパタイト、IIαではハイドロキシアパタイトやリン酸カルシウム、IIδではカルサイトやヴァテライトであると思われる。
なお、これらのII、IIαの被覆は、被膜形成は金属イオン封鎖剤によってなされるものであり、特に、リン酸、リン酸ソーダやヘキサメタリン酸ソーダ、リン酸塩が顕著である。また、クエン酸やコハク酸等の有機酸や有機酸塩も効果的である。図22に、ヘキサメタリン酸ソーダを例として、金属イオン封鎖剤の機能を示す。金属イオン封鎖剤を含む非アルカリシリカグラウトは、モルタル表面に存在するカルシウムやマグネシウムのイオンとキレート結合することにより不動態化するとともに、注入材に含まれるシリカと反応し、モルタル内からのCaイオンの溶出を抑え、外部からの硫酸イオンの侵入を抑える難溶性の被膜を形成するものと考えられる(図23)。
[金属イオン封鎖剤を含む非アルカリシリカグラウトのゲル中のモルタル供試体の強度試験]
表26のモルタル供試体を、表23に示す金属イオン封鎖剤を含む非アルカリシリカグラウトを用いて、図14の養生方法で16年養生した養生試験の状況を図15、図16に、その間の養生水のpHと強度比を図17に、それぞれ示した。モルタル供試体を養生した蒸留水のpHは12付近であるが、硫酸塩水溶液中で崩壊する場合のpHは13以上となり、モルタル中のアルカリが溶出していることがわかる。それに対して、金属イオン封鎖剤を含む非アルカリシリカにより被覆されている場合、pHはほぼ中性値を保っている。この結果より、上記シリカはモルタル中のアルカリの溶出を遮断(中性化を抑制)するとともに、モルタル内部への硫酸イオンの侵入を防いでいると考えられる。以上より、金属イオン封鎖剤の機能が確認された(図14~図24)。
[モルタル供試体を金属イオン封鎖剤含有シリカグラウトの同体積のサンドゲル中に包み硫酸系シリカグラウトのサンドゲル中に養生した場合の金属イオン封鎖剤の効果]
図23(a)に示すように、表17(a)のモルタルを表27の△印の金属イオン封鎖剤を含む表22(a)のシリカグラウトのサンドゲルで包み、それを表27の〇印の硫酸系シリカグラウトのホモゲル内で養生した(図23(b))。6ヶ月後にホモゲル、サンドゲルを解体して(図23(c))、モルタルを観察したところ、変化はなく、表面には、上記金属イオン封鎖剤を含むシリカ(マスキングシリカ)による白色被覆が形成されて(図23(d))、モルタルに変状は見られなかった。モルタル表面にフェノールフタレインを噴霧しても赤色反応を生じず、さらにモルタルに傷を付けて(図23(d))、フェノールフタレインを噴霧したところ、傷部のみがコンクリート内部のアルカリを示す赤色反応を呈した。また、取り出したモルタル供試体を水に浸漬したところ、養生水のpHは中性付近を呈した(図17)。このことから、マスキングシリカ層が硫酸イオンのモルタル内部への侵入を防ぐとともに、モルタル供試体内部からのアルカリの溶出を防いでいることがわかった。
以下に、注入液が硫酸イオンを含み、地盤が、コンクリート構造物の近接部または掘削後にコンクリート構造物を構築する予定の近接部である場合の地盤条件、地下水条件および注入設計による硫酸イオンの挙動について説明する(表15)。
[実験1]
シリカゾルグラウト(水ガラス+硫酸系の非アルカリシリカグラウト)のゲルからのSO --の溶出試験
(1)溶出方法
試験に用いたシリカゾル配合液を表18に示す。また、表18のシリカゾルによる固結豊浦砂を表19に示す。φ6.8cm、L12.7cm(容積430cm)のポリプロピレン容器に、約φ5×h10cmの表18、表19によるホモゲルまたはサンドゲルを入れ、それに水200mLを注水して、ゲル中の硫酸イオンが地下水に拡散あるいは地下水が流動している場合を想定し、定期的に水交換して、1,3,7,28,60日経過時に水のSO --を測定した。水交換は、1日目、3日目、7日目、28日目とし、SO --濃度の測定後に行った。
(2)試験結果
シリカゾルグラウトは、地盤中に注入した場合、ゲル中のNaイオンとSO --は地下水中に短期間のうちに溶出してしまい、不溶性のシリカ分のみでゲルとして残る。地下水中に溶出したSO --は、地下水中に拡散されて短期間のうちに消滅するとみなしてよい(表20)。実験によれば、ほぼ1日で40%のSO --が溶出し(ゲル中残存率ほぼ60%)、1ヶ月で85%が溶出し(ゲル中残存率ほぼ15%)、2ケ月でほぼ100%が溶出する(ゲル中残存率ほぼ0%)。以上において、注入地盤中において注入液中に含有する硫酸イオン濃度よりも注入した地盤中における硫酸イオンが低減する要因を(Y)とすると、(Y)は硫酸イオンのゲルからの溶出率(α)とゲル中の硫酸イオンの残存率(=△)に変わることが分かる(△=1-α)。
(A)開放系:注入地盤中のゲル化物から注入範囲外へ容易に溶出する場合、地下水がコンクリート構造物よりも外方向に流れている場合。例えば、海岸や河川が近く、その方向に流れている場合、潮の干満で地下水位が変動している場合、動水勾配が外側方向である場合、または、砂礫等、透水性の大きい地盤の場合には、硫酸イオンは希釈されて比較的短期間、1~2ヶ月以内に低減する。本発明者らの室内実験によれば、1~2ヶ月以内に硫酸イオンはほとんど全量拡散する(図12、表21の1、図13、表15)。最終的には、自然界の硫酸イオン濃度に収斂するとみてよい。従って、図1の硫酸系を用いても、注入地盤中のSOイオンは短期間に低減しやすい。しかし、実際の現場では、硫酸イオンの溶出速度は地盤条件、地下水要件、固結範囲の大きさが影響すると思われるため、これらの条件等が不明確な場合、表21の2、3、または1、2、3と4、5の併用を用いるのが望ましい。また、懸濁型カルシウム含有一次注入材の注入率を増やして、硫酸イオン含有シリカグラウトの二次注入率を低減すると同時にカルシウムによる硫酸イオンの固定を図ることができる。なお、薬液注入地盤において、注入領域から10m離れた位置の検査孔における水質変化は通常1~2ヶ月でほぼ一定になるところから、注入地盤におけるゲルからの反応生成物の濃度は、通常1~2ヶ月で拡散によってほぼ一定になるとみなしてよい。従って、図12、図13より、1/10以下になるとみなしてよい。
(B)停滞系(滞留系):地下水流がほとんどなく、停滞している場合。この領域のSOイオンは、遅かれ早かれ、イオン濃度の勾配が低い方向、すなわち、注入範囲外に向かう方向に移動して、希釈され、最終的には影響のない濃度まで低減するものの、その溶出速度は不明である。この場合、表21の2、3か表21の1、2、3と表25のE、Fの併用系を用いることが好ましい。これによって、コンクリートに影響のない濃度まで希釈するまでの間、または、その後もコンクリートを保護することができる。または、硫酸イオンが希釈されなくても、そのままコンクリートを保護することができる。
(C)濃縮系:硫酸イオンの低減が生じず、むしろ濃縮する可能性が高い場合は、コンクリートの表面から浸透した硫酸イオンが乾燥濃縮を繰り返して濃縮される場合である。この場合は、表21の2または3や、表25のE、FやGの併用を用いることが好ましい。
また、コンクリートが高品質の場合、硫酸イオンは侵入せず問題を生じない(表17(b))。
(D)注入範囲内に非注入部分を設け、未固結部を残しておいて、硫酸イオンがその部分に拡散して、全体の硫酸イオン濃度を低減する(図25)。
(E)注入範囲内地盤のカルシウム含有量または地盤にあらかじめ注入したカルシウム含有注入材によるカルシウム含有量によって、注入材中の硫酸イオンを硫酸カルシウムとして不動態化する。注入範囲内にカルシウム含有アルカリ注入領域を設けて、注入材中の硫酸イオンを硫酸カルシウムとして不動態化する。または、地盤中に含有するカルシウムと注入材中の硫酸イオンが硫酸カルシウムとなって不動態化することによって、硫酸イオン濃度を低減する。注入材の気中pHは、地盤中に注入した場合、土のpHによってpHが中性方向に移行して、土中ゲルタイムGTsは短縮するが(図1、図2)、その他に土の成分、特に、注入対象地盤のCa含有量が大きく影響する。図26は、非アルカリシリカグラウトを注入した現場における実際の例を示す。このデータより、地盤中の硫酸イオンは施工完了後、最終的には低減し、その硫酸イオンの低減率は、例えば、表27と図27のSO --イオン20,000ppmの配合処方を用いる場合、シリカグラウトでCaイオンが10,000ppmの場合、ほぼ半減、または1/3に減るとみなすことができる。
(F)コンクリート構造物の周辺に表21の2、3、4、5を注入して、コンクリートへの侵入を防ぎ、硫酸イオンを不動態化する(図25)。
また、金属イオン封鎖剤のうち、特に、ヘキサメタリン酸ソーダを含む非アルカリシリカでは、ゲル化物からの硫酸イオンの溶出量が初期において極めて少なく、用いた硫酸イオン濃度の30%である。このため、コンクリートの保護機能が極めて高い。この理由は、コンクリート表面に形成されたカルシウムと結合したハイドロキシアパタイトの強固な構造の中に、SO --イオンが取り込まれたものと推察される(図21、図22)。
なお、上記における地下水状況は、以下のようにして把握することができる。注入地盤に設けた注入孔と、注入領域や注入領域より離れた位置に設けた観測井戸から、注入液または検出液を採取して、地下水中の注入液の成分やpHを分析し、溶出の有無、溶出速度や希釈の程度を推定できる。例えば、注入孔から染料や電解質等の検出液を注入して、注入領域から離れた観測井戸から地下水を採取し、導電率や濃度を測定して検出したり、また、潮の干満による、地盤中の地下水位の変動で判断できる。さらに、コンクリート構造物内部に漏出した漏出水を分析することによっても判断できる。このように拡散速度や希釈速度や希釈度を知るために、電気伝導度の測定やpH測定をセンサーとして使用できる。
また、上記において地盤改良領域の硫酸イオン濃度は、硫酸イオン含有注入液の注入率が減少することによって低減するのみならず、硫酸イオンがカルシウムによって硫酸カルシウムとして捕捉(固定)されることによっても低減する。
さらに、同様に一次注入においてカルシウム含有グラウトとして懸濁型グラウトを用いる場合も、地盤改良領域の硫酸イオン濃度は、全注入率から一次注入材の注入率を除いた硫酸イオン含有注入材による二次注入材の注入率が低減したことによる硫酸イオンの低減の他に、二次注入材の硫酸イオンが一次注入材のカルシウムによって捕捉(固定)されることによっても低減される(表15、△3,4,6,7)。
すなわち、本発明においては、地盤が、コンクリート構造物の近接部または掘削後にコンクリート構造物を構築する予定の近接部である場合に、注入液が硫酸イオンを含み、シリカ濃度が1~40w/vol%、pHが1~10である非アルカリシリカグラウトを地盤注入材として注入して地盤改良領域を形成するにあたり、地盤改良領域の地盤状況および地下水状況から、地盤内に溶出した硫酸イオンの地盤中における挙動に基づき、注入地盤を下記の(1)開放系、(2)停滞系または(3)濃縮系のいずれかに分類して、分類された注入地盤のタイプに応じ、注入地盤における硫酸イオンの低減要因(Y)として、下記△1~△7のうちから選ばれるいずれかまたは複数を設定し、注入地盤に応じて設定された低減要因(Y)に基づき、地盤注入材として、非アルカリシリカグラウト由来の硫酸イオンが、地盤改良領域に残存する硫酸イオン濃度の平均値(X)の値で8,000ppm以下になるような反応剤配合処方からなるものを選択することが好ましい(表15)。
(1)開放系:地下水がコンクリート構造物よりも外方向に流れており、希釈によって硫酸イオン濃度が低減していく地盤
(2)停滞系:地下水流が停滞しており、硫酸イオン濃度がほとんど変化しない地盤
(3)濃縮系:硫酸イオンがコンクリート構造物の表面から浸透して濃縮され、硫酸イオン濃度が増大していく地盤
△1:地盤改良領域内に非注入部分を設け、非注入部分の比率を硫酸イオンの溶出率αとしたときの、改良地盤中における硫酸イオンの残存率 △1=1-α
△2:地下水中に硫酸イオンが溶出する溶出率をαとしたときの、地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △2=1-α
△3:地盤改良領域内における硫酸イオンの固定率を溶出率αとしたときの、地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △3=1-α
△4:地盤改良領域内における非硫酸系注入材、または、低硫酸系注入材による硫酸系注入材の硫酸イオンの置換率を溶出率αとしたとき、地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △4=1-α
△5:地盤注入材中のシリカ成分のコロイドによる置換率を溶出率αとしたとき、地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △5=1-α
△6:地盤注入材中において硫酸イオンの一部または全部を捕捉し、その捕捉率を溶出率αとしたとき、地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △6=1-α
△7:地盤改良領域内の地盤注入材の注入率を低減し、注入率の低減率を溶出率αとしたとき、地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △7=1-α
以下に、具体例を示す。
注入目的に対応できるシリカグラウトとして、SiO濃度6w/vol%の配合を用いるとする。ここで、t:注入率(例えば、改良地盤1m当たりの注入液の注入量を0.4mとすると注入率t=0.4となる)、a:注入液中の硫酸イオンの濃度、Y:硫酸イオンの低減要因とすると、Y=△となる。△:硫酸イオンの残存率、X:地盤中に生成される硫酸イオン濃度、W:コンクリートに対して問題を生ずる硫酸イオンの濃度とする。Wの値は状況によって設定するが、W=5000ppmとする。W≧X=t×a×Y(=△)とし、地盤条件、地下水条件を考慮して、W=5,000ppmとなる注入材の配合設計を行ったうえで、実施例1~10において、表3~14、図6~図11から、地盤中における硫酸イオンの濃度がコンクリートに影響を生じない濃度の範囲になるようにA液およびB液のインバータを制御して、注入前に作液したA液およびB液の比率(=β)を連続的に変化させ、ゲルタイムと硫酸イオン濃度とインバータによるβ=A/Bの値の変化とそれに対応した地盤中において生成する硫酸イオン濃度を確認しておくことにより、実際の注入時においてリアルタイムで地盤中のゲルタイムと硫酸イオンの濃度を把握することができ、従って地盤中に生成される硫酸イオン濃度(X)がコンクリートに対して問題を生ずるW以内に収まるように注入管理することができる。
硫酸イオンの低減要因Y(=△)とし、図12、図13より、硫酸イオン濃度は1年以内に10倍に希釈されるとみなせば、硫酸イオンの90%が溶出することになり(溶出率=α=0.9)、硫酸イオンの残存率△2=1-0.9=0.1となる。図27の1の曲線で、表27の〇印の配合、硫酸イオン濃度21,000~28,000ppmを用いて、地盤中の硫酸イオンはX=a×0.4×0.1=872~1,120ppmとなり、W≧X=872~1,120ppmとなり、問題ない。また、粘性土がある地盤で安全をみて△2=0.3とすると、
X=t×a×Y(=△2(=0.3))=0.4×(21,000~28,000ppm)×0.3=2,520~3,360ppmとなる。(aは注入液中の硫酸イオン濃度である。)
従って、図27の曲線1の範囲、および、表27の〇印の配合を用いればよいことがわかる。また、適用条件が表24のBまたはCの場合、すなわち、注入地盤が停滞状態または濃縮状態の場合は、図27の曲線3の配合(表27の×印)を用いるか、安全を考慮して、曲線4の配合(表27の△印)の配合を用いてβ=A/Bのインバータ管理を行って所定のゲルタイムと反応生成物(硫酸イオン)濃度を管理することができる。
上述したように、注入目的および施工法、地盤条件から、注入設計に用いようとする配合処方がコンクリートに対して安全な設計が可能になり、定量的注入設計により環境負荷を低減した地盤注入が可能になる。
次に、X=5,000ppmとなる硫酸イオン濃度aのシリカグラウトを算出する。通常、水ガラスのシリカ濃度が1~50w/wt%の場合、硫酸単独で非アルカリ領域にする場合、硫酸イオン濃度が50,000~5,000ppm必要である。従って、50,000~5,000ppmで注入地盤の硫酸イオン濃度Xは、地下水の停滞下では、注入率t=0.4とすれば、20,000~2,000ppmとなる。この値を5,000ppm以下にするためには、水ガラスのシリカ濃度の半分をコロイドで置き換えれば、注入液の硫酸イオン濃度は半分(△5=0.5)となり、注入地盤の硫酸イオン濃度(X)は10,000~1,000ppmとなる。また、注入液の硫酸イオン濃度の半分をリン酸やクエン酸、コハク酸、AlCl、FeCl等の非硫酸系で置き換えれば(△4=0.5)、注入地盤の硫酸イオンは10,000~1,000ppmとなる。上記を併用すれば(△4=0.5、△5=0.5)、注入地盤の硫酸イオンは5,000~500ppm≦Wとなる。なお、さらに上記において地下水で1/10に希釈されるとすれば、注入率t=0.4とすれば硫酸イオン濃度は2,000~200ppm<Wとなる。
このように、硫酸の一部をリン酸等の無機酸や有機酸、AlCl、FeClやポリ塩化アルミニウム等の無機塩または有機物の酸性を呈する塩で置換えればよいことがわかる。また、金属イオン封鎖剤を用いれば、前述したように、硫酸イオンを低減しなくてもコンクリートを保護できる。
また、一例として、地盤条件が開放系で注入率45%とし、そのうち10%を懸濁系のセメントベントナイト(CB)を用いた一次注入の注入率として、二次注入としての、硫酸系シリカグラウトの注入率を低減した。同現場でCBが脈状に正常に固結していた。この場合、注入率t(=0.45)のうち0.1を一次注入材(CB)、0.35を二次注入材(シリカゾルグラウト)とした。使用したシリカゾルグラウトの反応剤は、硫酸イオン単独で(表1のNo.1)注入液の配合は、表27の〇印、図27の1ライン、ゲルタイム約1,000分、硫酸イオン含有量25,000ppmのシリカグラウトの注入である。注入率t=45%とし、CB:シリカゾルグラウトの注入率をそれぞれ10%、35%とした。一次注入(CB)の注入率0.1、二次注入(シリカゾルグラウト)の注入率を0.35とすれば、地盤中の硫酸イオン濃度X=25,000×0.35=8,750ppmとなる。地下水で10倍に希釈されて硫酸イオンの溶出率α=0.9となり、従って、地盤中の硫酸イオンの残存率は△=1-0.9=0.1となる。従って、注入地盤の硫酸イオン濃度X=8,750×0.1=875<W、となる。または、一次注入材の注入により透水性が低下して硫酸イオンの溶出率α=0.5となり、従って、注入地盤の硫酸イオンの残存率を△=1-0.5=0.5とすれば、X=8,750×0.5=4,375<Wとなる。以上より、一次注入材を注入して硫酸系シリカグラウトを地盤に注入して硫酸イオンの地盤中の濃度がW=5,000ppm以内になるように地盤状況に対応して溶出率を想定して、一次注入材の注入率を設定すればよいことがわかる。同様のことを、カルシウムシリケート系やスラグ系等の懸濁型グラウトやカルシウム系グラウトまたはカルシウム含有の溶液型注入材を一次注入材として用いて行うことができる。また、一次注入でセメントグラウトや石灰、スラグ等のカルシウム含有材を注入すれば、注入液の注入率0.4のうち、0.1(α=0.1、表15)を一次注入材として注入すると、シリカグラウトの注入率は0.3となる。さらに、セメントや石灰、スラグのCa分と硫酸イオンが反応して、注入率0.4のうちの0.1の硫酸イオンがCaSOとして固定される(α=0.1、表15)と想定すると、地盤中の硫酸イオン濃度の残存率△3=0.2となる。従って、X=25,000×0.2=5,000ppmである。従って、25,000ppmのシリカグラウトを注入すると、地盤の硫酸イオンはX=5,000≦Wとなる。なお、Caを含有する地盤に注入する場合のCaイオンによる硫酸イオンの固定率は、硫酸系注入液をCaイオン含有土と混合して予測することができる。以上の値から、β=A/BがWの範囲内になるようなゲルタイムと硫酸イオンの生成濃度になるようにA液B液のインバータを管理すれば、注入目的と環境負荷の少ない地盤注入工法が可能になる。
また、図25に示すように、地盤改良領域2を、例えば、未改良部分3と改良部分4とが等しくなるように区切ることで、硫酸イオンを未改良部分に拡散させ、5000ppm以下とすることもできる(△1=0.5)。さらに、図25の未改良部分3に非硫酸系シリカ溶液を注入してもよい(△4)。例えば、水ガラス-重ソー系のアルカリ系水ガラスグラウトやその他の水ガラス-無機塩、無機酸、有機系反応剤等を未改良領域に注入してもよい(図25(a),(b),(c))。この場合、アルカリ系水ガラスグラウトは、アルカリ領域で未反応水ガラスやアルカリが残存しているため耐久性はないが、周辺部の過剰の酸がゲル中に侵入してアルカリを中和して、耐久性を向上することができる。この場合、非硫酸系注入材の注入部分に注入されるアルカリ系水ガラスグラウトのアルカリ分の量が、注入部分周辺の酸性シリカグラウトの酸分の量と同じかまたは少ないことが好ましい。なぜならば、アルカリ分が多ければ、酸性シリカのゲルを劣化させる恐れがあるからである。これを確認するにはアルカリ系水ガラスグラウトのゲルを同体積の酸性シリカグラウトのサンドゲルで包んだ後、アルカリ系水ガラスグラウトのサンドゲルの強度が増加することを確認すればよい。
すなわち、例えば、地盤改良領域を、硫酸系注入材とともにアルカリ系グラウト、カルシウム含有グラウトまたは懸濁型グラウトのいずれかまたは複数の非硫酸系注入材を併用して注入するものとし、アルカリ系グラウト、カルシウム含有グラウトまたは懸濁型グラウトの注入率をt1とし、酸性シリカグラウトの注入率をt2とする。アルカリ系グラウトを用いる場合は、アルカリが酸性シリカグラウトの酸により中和されることによって、アルカリ系グラウトの耐久性が得られるものとし、酸性シリカグラウトの注入率t2において硫酸イオンが構造物に影響を生じないと想定される注入率になるように設定する。また、非硫酸系注入材として、カルシウム含有グラウトまたは懸濁型グラウトを用いる場合は、注入率t1を、酸性シリカグラウトの注入率t2において硫酸イオンが構造物に影響を生じないと想定される注入率となるように設定する。これにより、地盤改良領域の耐久性が得られる。
また、上記において地盤改良領域の硫酸イオン濃度は、硫酸イオン含有注入液の注入率が減少することによって低減するのみならず、硫酸イオンがカルシウムによって硫酸カルシウムとして捕捉(固定)されることによっても低減する。
さらに、同様に一次注入においてカルシウム含有グラウトとして懸濁型グラウトを用いる場合も、地盤改良領域の硫酸イオン濃度は、全注入率から一次注入材の注入率を除いた硫酸イオン含有注入材による二次注入材の注入率が低減したことによる硫酸イオンの低減の他に、二次注入材の硫酸イオンが一次注入材のカルシウムによって捕捉(固定)されることによっても低減される(表15、△3,4,6,7)。
以上より、本発明においては、コンクリートに影響を与えない地盤改良領域全体の硫酸イオン濃度の平均Xの値をW以下であるとすると、Wは8,000ppm以下または5,000ppm以下とし、または、このWの値は地盤条件、地下水条件、コンクリート構造物の構造と位置関係、水質条件、土質条件または実績等によって定めることができる。また、地盤改良領域の硫酸系非アルカリシリカ注入材が注入されていない領域に、アルカリ性シリカ注入材またはリン酸系注入材のように金属イオン封鎖材を含む注入材やカルシウムやセメント、スラグを含むアルカリ性懸濁液を注入することもでき、さらに、硫酸系非アルカリ性シリカ注入材はリン酸化合物または金属封鎖剤を含んでもよく、さらにまた、硫酸系非アルカリ性シリカ注入材に用いられるシリカ化合物は、水ガラスおよび/またはシリカコロイドを有効成分とするpHが1~10のシリカグラウトからなるものとする。また、地盤改良領域内のコンクリート構造物の周辺部について、酸性中和剤として先に挙げた、(1)硫酸、(2)リン酸、(3)硫酸とリン酸の混酸、(4)非硫酸系酸、(5)非硫酸系酸性塩のうちのいずれかまたは複数を併用することにより、地盤改良領域内の硫酸系の地盤注入材の硫酸イオン濃度を、コンクリート構造物に影響を及ぼさないと想定される濃度まで低減することもできる。これに対して、前述のようにβ=A/Bの比率をインバータ管理すればよいことがわかる。
以上は、反応生成物として硫酸イオンの例を示した。環境保全性の影響からリン酸イオン濃度の許容範囲を設定する場合も同様である。また、上記において硫酸イオン濃度W=8000ppmとしたが、状況に応じてもっとシビアにしても、同様にβ=A/Bを管理することができるのはもちろんである。このように本発明によれば、インバータ制御によってゲルタイムや強度を連続的に変化させて、かつ、改良地盤中で環境負荷の少ない反応生成物の濃度、または、組成物の濃度になるように管理することができる。
また、その他の水質基準または組成分濃度が土壌環境基準の場合も、同様に可能である。例えば、A液として水ガラスを含有する溶液が、水質規制や環境基準値よりも多い重金属や、反応生成物がBODやCODを水質基準値よりも過大に生ずる有機物などを含む場合、B液として水または不溶化材を用いれば、A・B合流液のイオン濃度を許容範囲に管理することができる。また、本出願人による特許発明(特許文献4)において、地熱水由来のシリカ等のA液に重金属等の組成分が含有されている場合、B液として不溶化材を用いることで、A液B液の比率を制御することにより、環境基準内に収めることができる。水ガラスを以下の有機反応剤を用いてゲル化させる場合、それぞれの有機反応剤はアルカリの存在のもとにグリコール酸、酢酸、炭酸を生じ、それが水ガラスのアルカリと反応してケイ酸ゲルを生成する。
Figure 0007506442000030
この場合、水質規準、環境基準において、COD、BODの基準値がある場合は、A液として水ガラス、B液として有機反応剤を組成分として用いる場合、A・B合流液のBOD、CODが改良地盤内において基準内におさまるように、A液・B液の流量をインバータ制御によって管理することができる。
以上により、本発明は以下の効果を得ることが可能になった。
(1)瞬結・緩結変換がタイムラグなく連続して行える。
(2)瞬結一次注入と浸透二次注入が連続して行える。
(3)浸透二次注入が地上部に逸脱したら、瞬結一次注入により直ちに逸脱を防ぐことができる。
(4)注入液のゲルタイムとシリカ濃度を地盤状況、注入状況に応じて連続的に変動させることができる。
(5)複数の異なる土層からなる地盤への注入において、各土層毎に同一強度の地盤改良が可能となる。
(6)注入ステージ毎に地盤状況に対応したゲルタイムと強度からなる注入液の注入が可能になる。
(7)A液をアルカリ性、B液を酸性とすることで、A液・B液の混合液の瞬結;中性~アルカリ性、緩結・瞬結の変換がタイムラグなく瞬時に連続的に可能となる。
(8)注入地盤の採取土と注入液を混合した土中ゲルタイムおよび/または土中pHのデータに基づき、注入過程の浸透状況から想定する注入範囲までの浸透しうる気中ゲルタイムGTおよび気中PHの配合を調整することができる。
(9)A液、B液を地上合流または地中合流することにより、例えば、以下の1)~8)の全ての注入方法に適用することができる。
1)ロッド注入工法
2)ダブルパッカ工法
3)点注入工法
4)多点同時注入工法
5)柱状注入工法
6)瞬結・緩結複合注入工法
7)多ステージ同時注入工法
8)多注入孔同時注入工法
以下に、具体的な適用例を示す。非アルカリ性グラウトは、液状化対策工等の経済性を得るために、大きな注入孔間隔(1.0~4.0m)で数時間~十数時間の連続注入による広範囲浸透固結を行うため(表2)、それが可能な長いゲルタイムで、しかも長期耐久性を保持する溶液型シリカグラウトを用いなくてはならない(図1、図2参照)。
また、掘削工事においても、既存のコンクリート構造物の周辺部、直下部の、または、今後コンクリート構造物を構築する予定の地盤の地盤改良において、長いゲル化による浸透性、長期耐久性と水中固結性に優れたシリカグラウトの適用が要求される。永年にわたる研究の結果、脱アルカリした非アルカリシリカ溶液が適合することが実証されている。脱アルカリにはイオン交換法や金属珪素法などによるコロイダル法と酸性中和剤で水ガラスのアルカリを中和除去する中和法(シリカゾル法)とがある(図1、図2)。
非アルカリシリカグラウトは、地盤中に注入すると土中pH(pHs)が中性方向に移行し、土中ゲルタイム(GTs)が短縮するという特性がある(図1)。
土中ゲルタイム(GTs)、土中pH(pHs)といっても、地盤中における変化は測定しにくいが、注入液を現場土と混合した土中ゲルタイム(GTs)や土中pH(pHs)は測定できるので、配合液のpH(pH)やゲルタイム(GT)を基準として考える(図28、図29)。
本出願人による室内実験および種々の注入方式を用いた現場試験による研究により、地盤に注入された非アルカリ性シリカ注入液のゲルタイムとその流動性の挙動について、以下のことがわかった。
酸性シリカ溶液は、pHの変化で急激に配合液のゲルタイムが変動する。しかも、地中に入ると、地盤のpHと反応成分と反応して注入中にpHが変動し、地中ゲルタイムが変動する(図28)。このために、酸性シリカ溶液について配合液の気中ゲルタイムで固結範囲を調整することは、実質的に不可能であることがわかった。
まして、1.5~4mといった広範囲な領域を、あらかじめ設定した配合液のpHとゲルタイムで浸透固結させることは、さらに不可能である。このため、本発明者らは、注入時間(H)、土中ゲルタイム(GTs)を基本にして配合液を設定するというコンセプトにより、以下の手法によって、注入した注入液が注入量に相当する固結体を形成することを可能にした(表2、図28、29、30)。
(1)比較的均質な地盤の場合:このような酸性領域のシリカグラウトのゲル化特性の研究の結果、均質な地盤では、所定量注入すれば、所定の注入液を注入した時点でゲル化していなくても注入液が地盤中で中性方向に移行し、遅かれ早かれその場所でゲル化する。これは、酸性シリカ溶液が、それよりもpHが高い地盤中でゲル化が促進され、かつ、酸性シリカ溶液中のシリカ分は、たとえ地下水で希釈されても全量が確実に析出されるという特性を利用したものである。
(2)不均質な地盤の場合:地中におけるゲル化を進行させながら、半ゲル状態で乗り越えながら浸透させることによって逸脱を防ぐ。
配合組成による逸脱防止について、以下に説明する。
耐久性に優れた注入材を所定量で地盤中に注入しても、注入液が注入領域外へ脈状に割裂して逸脱したり(図30(a))、下方に流下してしまっては、耐久性地盤は形成されない(図30(b))。所定の領域に注入を可能とするためには、まず、注入地盤が薬液注入の浸透可能な地盤でなくてはならない。
注入液が粗い土層を通して注入範囲外へ逸脱したり、注入速度が大きく割裂して注入範囲外へ逸脱し続けた場合、図30(a)のような現象が起こる。また、所定注入量で注入後にもゲル化に到らず、かつ、透水性の大きい地盤では、下方に流下してしまい所定領域が固結しない現象が起こる(図30(b))。このような場合、以下の、所定領域への逸脱を低減して浸透固結するための、注入液の流動特性と注入方式に対応したゲル化の挙動を示す、本発明者らによる配合液を注入することが必要である(表2)。
図28は、シリカ濃度6%のときの薬液pHとゲルタイムと各現場土における土中ゲルタイムの関係を示す。図中の●は、薬液pHと気中ゲルタイム(GT)の関係を示す。それ以外は、現場砂の薬液pHと土中ゲルタイム(GTs)の関係を示す。
本発明におけるA液・B液の比率を連続的に可変とすることにより、●のラインに沿った薬液pHと気中ゲルタイムを確認できる。また、あらかじめ薬液の気中pHと現場土の土中pHと土中ゲルタイムの関係は、図28のように知ることができる。
注入中の流動特性が図28の範囲内であれば、注入液は図29の浸透メカニズムによって固結範囲を拡大しながら所定注入量に対応した固結体を形成する。したがって、地盤状況に合わせた浸透固結可能なpH(pHs)とゲルタイム(GTs)に対応した気中ゲルタイムを得るA液・B液の比率を、現場における試験で、A液、B液のそれぞれのポンプのインバータによる数値で設定しておけば、地盤条件に最も適した所定のゲルタイムの配合液または瞬結と緩結の異なるゲルタイムの配合液を注入することができる。
図31(a),(b)は、シリカ濃度に対応した固結砂の一軸圧縮強度を示す。また、図31(c)は、異なる現場砂における一軸圧縮強度を示す。
表1は、表2に示す注入方式別、注入目的別、土質別の注入材の注入率の例を示す。このように地盤状況、注入目的に応じて懸濁型の一次注入が行われ、溶液型の注入液の注入量も異なる。
以下に、前述したA液・B液合流点または合流後の注入液吐出口に至るまでの管路、および、混合装置における注入液制御装置について説明する。本発明においては、A液およびB液をpH、ゲルタイムを瞬時に連続的に変化させて所定のpHとゲルタイムの注入液を製造でき、かつ、A液とB液の合流点で、合流にあたってA液およびB液の管路の径と合流後の管路の径が異なるため、合流後の合流液は乱流となって混合される。従って、合流後の管路はそれ自体、混合装置となるため、バッチグラウトにおける混合槽を必要としない。
また、この合流混合システムからなる注入液製造装置によって製造された注入液を貯留槽に貯留して、複数の注入ポンプで複数の注入孔に注入することができる。貯留槽には、A液・B液の合流システムにより混合された所定のpH、ゲルタイムの注入液が瞬時に連続的に調製されて導入されるため、貯留槽中でpHとゲルタイムを調整する必要がなく、そのまま地盤中に注入することができる。
このようにして得られた注入液のシリカは、水ガラスの粒径が0.1nm程度に対して1nm付近になり、それがゲル化に至るまでに大きな径に成長し、耐久性に優れたゲルとなる。
図33(a)は、二重管内に設けたスタティックミキサーを示す。図33(b)は、スタティックミキサーエレメントの形状を示す。
スタティックミキサーは、駆動部のない静止型混合器(ラインミキサー)であって、ミキサー内に入ったA液、B液は、エレメントにより順次攪拌混合される。スタティックミキサーは、分割・転換・反転の作用により流体を効果的に混合する。流体は、ひとつのエレメントを通過するごとに2分割される。
分割数N=2,n:エレメント数
流体は、エレメント内のねじれ面に沿って管の中央部から壁部へ、管の壁部から中央部へと並び替えられる。また、流体は、1エレメントごとに回転方向が替わり、急激な慣性力の反転を受け乱流攪拌される。スタティックミキサーは、注入管内に設けても、注入管に至るまでのホース内のA液B液合流点から注入管先端部までのどの地上部に設けてもよい。このスタティックミキサーは、二重管ロッドでなくても単管ロッドまたはダブルパッカ工法における内管に接続してもよく、前述したいずれの注入工法の注入管からの注入にも用いることができる。
図34は、二重管ロッド注入工法における注入管先端部に混合装置を設けた例である。図34(a)は、水により注入管から地盤中に削孔して注入管ロッドを設置した後、A液、B液を混合して得られた注入液を地盤に注入している状況を示す。
図35は、A液B液を二重管ロッドの吐出口で噴射混合して注入液を作って地盤に注入する注入管装置であって、図35(a)は削孔状態を示し、図35(b)は注入状態を示す。図36は、二重管注入管の先端部でA液とB液を渦流を生じさせて混合して注入する例を示す。図37は、二重管ダブルパッカ方式の例であって、A液B液を地上部で合流して注入管内管から外管内に噴射し、合流した注入液が外管のスリーブから、図38は、ダブルパッカ工法における内部がA液・B液の管路によって構成され内管の上下のパッカ内に吐出されたA液B液の混合液が外管スリーブで覆われた吐出口から、それぞれ地盤に注入される例である。図39は、外管のスリーブ内でA液B液を混合して形成した注入液を地盤に注入する例である。
1,1’,1” 配合液配合装置
2,2’,2” 注入ポンプ
3 多重管外管
3’ 多重管内管
4,4’,4” 送液管
5,5’,5” 圧力測定器
6,6’,6” 流量測定器
7 昇降機
7’ 注入管深度計
8 コントローラ
9 内管から注入管先端部への流入部
9’ 注入管先端部
10,10’,10” 圧力計からコントローラへの情報通知回路
11,11’,11” 流量計からコントローラへの情報通知回路
12 注入深度計からコントローラへの情報通知回路
13,13’,13” コントローラから注入ポンプへの指示回路
14 注入材組み合わせ調整装置
15 コントローラから注入材組み合わせ調整装置への指示回路
16 コントローラから昇降機への指示回路
17,17’,17” コントローラから配合液配合装置への指示回路
A 急結用反応配合液
B 主材配合液
C 反応剤配合液

Claims (6)

  1. 地盤中に挿入した注入管を通して非アルカリ領域のシリカグラウトを注入する地盤注入工法において、A液とB液とを該注入管に通して地中合流させて、地中合流部から該注入管の吐出口までの管路からなる混合装置で混合した注入液を地盤に注入する地盤注入工法であって、
    前記注入管、前記A液および前記B液のそれぞれを送液する複数の管路を有し、該A液および該B液を、それぞれ滞留させることなく連続的に流動させながら、バッチシステムを用いることなく、地中に設けられた前記混合装置を経て合流、混合して、地盤に注入するものであり、
    前記A液として水ガラスを含む溶液を用い、前記B液として硫酸イオンを含み硫酸濃度が10%以下である反応剤を含む溶液を用い、該A液および該B液をそれぞれA液ポンプおよびB液ポンプにより送液する複数の駆動装置と、インバータと、該複数の駆動装置を一括管理する制御装置と、を用いて、前記インバータを制御して、地盤状況および注入目的に応じて前記A液および前記B液の流量および合流比率β、β=A/B=0.5~2.0の範囲内で、ゲルタイムに対応したpHおよびシリカ濃度になるように、瞬結配合から緩結配合に連続的に可変制御することによって、前記A液および前記B液の反応生成物のイオン濃度を連続的に変化させて、前記反応剤を過剰な量で処方することなく、ゲルタイムの設定に必要な所定の濃度内で、前記注入液を、地盤に注入することを特徴とする地盤注入工法。
  2. 地盤改良領域の地盤状況および地下水状況に基づき、前記A液および前記B液の流量および合流比率を、地盤中の反応生成物の残存イオン濃度が所定の濃度となるように設定して、地盤中における該反応生成物の濃度を所定の濃度内にして地盤を固結させる請求項1記載の地盤注入工法。
  3. 前記注入液が、硫酸イオンを含み、シリカ濃度が1~40w/vol%、pHが1~10である非アルカリシリカグラウトであって、前記地盤が、コンクリート構造物の近接部または掘削後にコンクリート構造物を構築する予定の近接部であり、
    地盤改良領域の地盤状況および地下水状況から、地盤内に溶出した硫酸イオンの該地盤中における挙動に基づき、注入地盤を下記の(1)開放系、(2)停滞系または(3)濃縮系のいずれかに分類し、
    (1)開放系:地下水が前記コンクリート構造物よりも外方向に流れており、希釈によって硫酸イオン濃度が低減していく地盤
    (2)停滞系:地下水流が停滞しており、硫酸イオン濃度がほとんど変化しない地盤
    (3)濃縮系:硫酸イオンが前記コンクリート構造物の表面から浸透して濃縮され、硫酸イオン濃度が増大していく地盤
    前記分類された注入地盤のタイプに応じ、該注入地盤における硫酸イオンの低減要因(Y)として、下記△1~△7のうちから選ばれるいずれかまたは複数を設定し、
    △1:前記地盤改良領域内に非注入部分を設け、非注入部分の比率を硫酸イオンの溶出率αとしたときの、改良地盤中における硫酸イオンの残存率 △1=1-α
    △2:地下水中に硫酸イオンが溶出する溶出率をαとしたときの、前記地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △2=1-α
    △3:前記地盤改良領域内における硫酸イオンの固定率を溶出率αとしたときの、該地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △3=1-α
    △4:前記地盤改良領域内における非硫酸系注入材、または、低硫酸系注入材による硫酸系注入材の硫酸イオンの置換率を溶出率αとしたとき、該地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △4=1-α
    △5:前記地盤注入材中のシリカ成分のコロイドによる置換率を溶出率αとしたとき、前記地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △5=1-α
    △6:前記地盤注入材中において硫酸イオンの一部または全部を捕捉し、その捕捉率を溶出率αとしたとき、前記地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △6=1-α△7:前記地盤改良領域内の前記地盤注入材の注入率を低減し、該注入率の低減率を溶出率αとしたとき、該地盤改良領域内における硫酸イオンの残存率 △7=1-α
    前記注入地盤に応じて設定された前記低減要因(Y)に基づき、前記地盤注入材として、前記非アルカリシリカグラウト由来の硫酸イオンが、前記地盤改良領域に残存する硫酸イオン濃度の平均値(X)の値で8,000ppm以下になるような反応剤配合処方からなるものを選択する請求項1記載の地盤注入工法。
  4. 請求項1記載の地盤注入工法に用いられる地盤注入装置であって、
    前記A液ポンプおよび前記B液ポンプと、前記複数の駆動装置と、前記インバータと、前記制御装置と、前記注入管と、を含み、前記A液と前記B液との地中合流部から前記注入管の吐出口までの管路が、前記混合装置を構成することを特徴とする地盤注入装置。
  5. 請求項1記載の地盤注入工法に用いられる地盤注入装置であって、
    前記A液ポンプおよび前記B液ポンプと、前記複数の駆動装置と、前記インバータと、前記制御装置と、前記注入管と、を含み、前記A液と前記B液とを、前記混合装置に配置されたスタティックミキサーで混合することを特徴とする地盤注入装置。
  6. 請求項1記載の地盤注入工法に用いられる地盤注入装置であって、
    前記A液ポンプおよび前記B液ポンプと、前記複数の駆動装置と、前記インバータと、前記制御装置と、前記注入管と、を含み、該制御装置により、前記複数の駆動装置を一括管理することを特徴とする地盤注入装置。
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