JP7500414B2 - 梁接合構造及び梁接合構造の性能向上方法 - Google Patents

梁接合構造及び梁接合構造の性能向上方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼製の柱に接合される鋼製の梁の接合構造及び接合構造の性能向上方法に関する。
特許文献1には、鋼製の柱に接合されるH形鋼材製の梁のウェブ部にスカラップを設けた構成が開示されている。
特開2004-68385号公報
特許文献1に記載の梁接合構造のように、鋼製の柱に対して梁のフランジ部を連続溶接するために、梁のウェブ部にはフランジ部に向かって切り欠かれた略四分円形状のスカラップが一般的に設けられる。このように梁のウェブ部にスカラップが設けられた構成では、地震等によって梁に鉛直方向荷重や捩じり荷重が作用すると、スカラップ周辺に応力が集中することによって梁のフランジ部に早期に亀裂が生じるおそれがある。
本発明は、スカラップを有する梁接合構造において、梁に早期に亀裂が生じることを抑制することを目的とする。
本発明は、鋼製の柱に接合される鋼製の梁の接合構造であって、前記梁は、一対のフランジ部と前記一対のフランジ部に挟まれたウェブ部とを有するH形鋼材により形成され、強軸方向が鉛直方向に沿うように前記柱に接合され、前記ウェブ部は、前記柱に対向する端面から前記一対のフランジ部のうち鉛直方向下方に配置される下側フランジに向かって切り欠かれた下側スカラップと、前記下側スカラップから所定の範囲にわたって厚さが減少された減厚部と、を有し、前記減厚部の上端は、前記下側スカラップの鉛直方向における最大高さよりも上方に位置する
また、本発明は、鋼製の柱に接合される鋼製の梁の接合構造の性能向上方法であって、前記梁が、一対のフランジ部をウェブ部に溶接接合することにより形成され、その強軸方向が鉛直方向に沿うように前記柱に接合され、前記ウェブ部が、前記柱に対向する端面から前記一対のフランジ部のうち鉛直方向下方に配置される下側フランジに向かって切り欠かれた下側スカラップを有する、梁接合構造の性能を向上する方法において、前記下側スカラップから所定の範囲にわたって厚さが減少された減厚部を前記ウェブ部に形成する工程と、前記下側フランジと前記ウェブ部とを溶接接合する際に設けられた溶接部を前記ウェブ部とともに切削することによって前記下側スカラップを前記梁の材軸方向において拡大する工程と、を有し、前記減厚部の上端は、前記下側スカラップの鉛直方向における最大高さよりも上方に位置する
本発明によれば、スカラップを有する梁接合構造において、梁に早期に亀裂が生じることを抑制することができる。
本発明の第1実施形態に係る梁接合構造の側面図である。 図1の矢印Aで示される部分の拡大図である。 図2のB-B線に沿う立断面図である。 減厚部による変形性能の変化を示すグラフである。 減厚部による破断寿命の変化を示すグラフである。 本発明の第2実施形態に係る梁接合構造の側面図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る梁接合構造及び梁接合構造の性能向上方法について説明する。
<第1実施形態>
図1~3を参照して、第1実施形態に係る梁接合構造100について説明する。梁接合構造100は、鉄骨造の建築物において、鋼製の柱10に溶接接合される鋼製の梁20の接合部の構造であり、以下では、図1に示すように、鉛直方向に沿って立設された柱10に対して溶接接合される水平方向に沿って配置された梁20の接合部の構造を例に説明する。
図1は、第1実施形態に係る梁接合構造100を示す側面図であり、図2は、図1の矢印Aで示される部分を拡大して示した拡大図であり、図3は、図2のB-B線に沿う断面を拡大して示した拡大断面図である。なお、柱10は、厳密に鉛直方向に沿ったものに限定されず、また、梁20は、厳密に水平方向に沿って配置されたものに限定されない。また、柱10と梁20とは互いに直交して接合されるものに限定されない。
図1に示すように、柱10は、角形鋼管により形成された鋼管部11と、鉛直方向において鋼管部11の間に設けられ、突合せ溶接によって鋼管部11と一体化されるダイアフラム12と、により構成された鋼管柱である。
ダイアフラム12は、いわゆる通しダイアフラムであり、鋼管部11よりも一辺の長さが大きい略正方形の鋼板により形成される。ダイアフラム12は、後述の梁20の一対のフランジ部21,22の間隔に合わせて、鉛直方向に所定の間隔をあけて一対配置され、その厚さは、フランジ部21,22の板厚よりも所定の大きさだけ厚く設定されている。
また、一対のダイアフラム12間に配置される鋼管部11には、図示しない高力ボルトを介して後述の梁20のウェブ部23と接合されるガセットプレート14が鉛直方向に沿って溶接接合されている。
なお、柱10の構成は、上述の構成に限定されず、梁20が溶接接合可能であればどのような構成であってもよく、例えば、H形鋼や円形鋼管で構成された鋼製柱や複数の等辺山形鋼を連結することにより構成されたトラス構造柱、鋼管内にコンクリートを流し込むことにより形成されたコンクリート充填鋼管柱であってもよい。また、ダイアフラム12は、通しダイアフラムに限定されず、鋼管部11の内側に溶接された内ダイアフラムであってもよいし、ダイアフラムが設けられない構成であってもよい。
梁20は、一対のフランジ部21,22と、一対のフランジ部21,22に挟まれたウェブ部23と、を有するH形鋼材であって、一対のフランジ部21,22となる一対の鋼板がウェブ部23となる鋼板に溶接接合されることによって形成された、いわゆるビルドH形鋼である。
梁20は、ウェブ部23をガセットプレート14に図示しない高力ボルトを介して仮接合した状態で、一対のフランジ部21,22をダイアフラム12にそれぞれ溶接接合することによって柱10に接合される。つまり、梁20は、強軸方向が鉛直方向に沿った状態、すなわち、鉛直方向下方に配置された下側フランジ21と鉛直方向上方に配置された上側フランジ22とに挟まれたウェブ部23が鉛直方向に沿って配置された状態で柱10に接合される。
なお、柱10に対するウェブ部23の接合は、高力ボルトによるボルト接合に限定されず、ウェブ部23の端面23aを柱10に直接溶接接合することにより行われてもよい。この場合、ガセットプレート14は柱10に設けられない。
柱10に対する梁20の溶接接合は、具体的には、各フランジ部21,22の下面とダイアフラム12の側面とに対して部分的に溶接固定された裏当て金31を各フランジ部21,22の幅方向に沿って予め設けておき、裏当て金31に沿って各フランジ部21,22とダイアフラム12との対向部分を連続的に溶接する完全溶け込み溶接によって行われる。
溶接が行われることによって、各フランジ部21,22とダイアフラム12と裏当て金31とにより囲まれた領域には、溶接部32が形成されるが、この溶接部32を各フランジ部21,22の幅方向に沿って連続して形成するために、ウェブ部23には下側スカラップ25a及び上側スカラップ25bが予め形成されている。
下側スカラップ25aは、下側フランジ21とダイアフラム12とが溶接される部分の近傍において、柱10に対向するウェブ部23の端面23aから下側フランジ21に向かってウェブ部23を略四分円形状に切り欠かくことにより形成された切り欠きである。下側スカラップ25aが設けられることで、下側フランジ21とダイアフラム12との間に溶接部32を裏当て金31に沿って連続的に形成することが可能である。
一方、上側スカラップ25bは、上側フランジ22とダイアフラム12とが溶接される部分の近傍において、柱10に対向するウェブ部23の端面23aから上側フランジ22に向かってウェブ部23を略四分円形状に切り欠かくことにより形成された切り欠きである。上側スカラップ25bが設けられることで、上側フランジ22の幅方向に沿って裏当て金31を予め通しておくことが可能である。
このようにウェブ部23に下側スカラップ25a及び上側スカラップ25bを設けておくことによって、各フランジ部21,22をダイアフラム12に対してそれぞれ連続溶接することが可能となり、柱10と梁20との接続強度を十分確保することができる。なお、溶接部32の始端及び終端において溶接不良が生じることを防止するために、各フランジ部21,22の幅方向外側にエンドタブを設けてもよい。
一方で、下側スカラップ25aがウェブ部23に設けられた構成では、地震等によって梁20に鉛直方向荷重や捩じり荷重が作用すると、ウェブ部23を介して下側フランジ21に荷重が伝達される際に、下側スカラップ25aの下端周辺に応力が集中し、応力集中部分を起点として下側フランジ21に早期に亀裂が生じ、結果として、梁20が早期に破断に至るおそれがある。
特に、図2に示すように、下側フランジ21とウェブ部23とが溶接接合されるビルドH形鋼においては、ウェブ部23の最も端面23a側に形成される端面側溶接部24aの周辺、すなわち、下側フランジ21に下側スカラップ25aの下端部が接合される部分の周辺には、直線状の溶接よりも作業時間が長くなる回し溶接が行われることによって、溶接熱影響部が比較的広い範囲に形成される。溶接熱影響部は溶接時の熱により母材が変質し脆化していることから、溶接熱影響部が形成された下側スカラップ25aの下端周辺に応力が集中すると、この部分を起点として下側フランジ21に亀裂が生じやすくなる。
このような現象が生じることを避けるために、本実施形態では、下側スカラップ25aから所定の範囲にわたって厚さが減少された減厚部26をウェブ部23に設けている。
減厚部26は、図3に示されるように、その厚さt2が、ウェブ部23の他の部分における板厚t1、すなわち、ウェブ部23を形成する鋼板の板厚t1よりも薄くされた部分であり、図2に示されるように、梁20の材軸方向(長手方向)に沿って下側スカラップ25aから所定の範囲にわたって、下側フランジ21の上面21aから所定の高さで設けられる。
具体的には、減厚部26の厚さt2は、例えばウェブ部23の板厚t1の半分以下に設定され、下側フランジ21の上面21aからの鉛直方向における減厚部26の高さH2は、例えば下側スカラップ25aの最大高さであるスカラップ高さH1から5mmを超えない範囲に設定される。
また、減厚部26が設けられる部分のウェブ部23の端面23aからの梁20の材軸方向における長さL2、すなわち、減厚部26が設けられる部分のうち梁20の材軸方向においてウェブ部23の端面23aから最も離れた部分までの端面23aからの長さL2は、例えばウェブ部23の端面23aからの梁20の材軸方向における下側スカラップ25aの最大長さであるスカラップ長さL1の2倍以上に設定される。
なお、上述の減厚部26の厚さt2、高さH2及び長さL2の設定範囲は例示であって、この範囲に限定されるものではなく、減厚部26の厚さt2は、ウェブ部23の元々の厚さよりも薄くなっていればよく、また、減厚部26の高さH2は、ウェブ部23の剛性が極度に低下しなければ、スカラップ高さH1から5mmを超えていてもよいし、スカラップ高さH1と同等かこれよりも低くてもよい。
また、図2及び図3に示されるように、下側フランジ21とウェブ部23とを梁20の材軸方向に沿って隅肉溶接する際に形成される材軸方向溶接部24b(溶接部)が設けられる場合、減厚部26は、材軸方向溶接部24bに及んで設けられ、その一部を下側フランジ21の上面21aに沿って切削加工等によって除去することにより形成される。
図3に示される例では、減厚部26が設けられる部分のウェブ部23の厚さは、材軸方向溶接部24bが形成される部分においても下側フランジ21に向かって同じ厚さ(t2)に設定されているが、材軸方向溶接部24bが形成される部分では、例えば、図3において一点鎖線(26a)で示されるように、材軸方向溶接部24bの余盛がある程度残るように、下側フランジ21に向かって厚さが徐々に厚くなっていてもよい。なお、材軸方向溶接部24bの一部が除去されることで形成される下側フランジ21側の平面は、下側フランジ21の上面21aと同一平面上に位置することが好ましいが、厳密に面一となっていなくともよい。
このように減厚部26は、ウェブ部23やウェブ部23と下側フランジ21と溶接接合する材軸方向溶接部24bの厚さを減少させることによって形成される。
上記形状の減厚部26は、梁20が柱10に溶接接合される前、または、梁20が柱10に溶接接合された後に、エンドミル等の一般的な工具を用いて形成することが可能であり、例えば、既に建築されている建築物の梁20に減厚部26を後から加工することも可能である。
このような減厚部26がウェブ部23に設けられることによって、下側フランジ21に対してウェブ部23が接続される部分における断面積は、減厚部26が設けられていない部分よりも減厚部26が設けられる下側スカラップ25aの周辺において小さくなる。
換言すれば、減厚部26が設けられることで、下側スカラップ25aの周辺ではウェブ部23を介して下側フランジ21へと荷重を伝達することが可能な面積が減ることになる。このため、下側スカラップ25aの周辺において下側フランジ21に作用する荷重が減少し、結果として、下側スカラップ25aの下端周辺に応力が集中してしまうことが抑制される。
これにより、下側スカラップ25aの下端部が下側フランジ21に接合された部分の周辺に形成された溶接熱影響部において、早期に亀裂が生じることが抑制され、梁20が早期に破断に至ることを抑制することができる。
続いて、図4A及び図4Bを参照し、減厚部26が設けられることによる梁20の変形性能の変化について説明する。図4Aは、減厚部26の厚さt2を変えた場合の変形性能の変化を示すグラフであり、図4Bは、減厚部26の長さL2を変えた場合の破断寿命の変化を示すグラフである。
図4Aのグラフは、下側スカラップ25aが形成されたウェブ部23と、ウェブ部23が溶接接合された下側フランジ21と、下側フランジ21が溶接接合されたダイアフラム12と、にそれぞれ相当する部材を少なくとも有する試験片に対して、下側フランジ21に相当する部材とダイアフラム12に相当する部材とを引き離す方向に引張荷重を負荷した際の荷重方向における試験片の変形量を計測した結果を示している。
図4Aのグラフ中の実線Aは、減厚部26が設けられていない、つまり、減厚部26の厚さt2が板厚t1に等しい従来の梁接合構造に相当する試験片の変形量を示し、一点鎖線Bは、減厚部26の厚さt2が板厚t1の2分の1に設定された本実施形態に係る梁接合構造100に相当する試験片の変形量を示し、二点鎖線Cは、減厚部26の厚さt2が板厚t1の3分の1に設定された本実施形態に係る梁接合構造100に相当する試験片の変形量を示している。
各試験片に作用する荷重が塑性範囲において最大荷重の90%に低下したときを終局点とすると、終局点に至ったときの変形量は、図4Aに示されるように、減厚部26が設けられていない場合の変形量δAが最も小さく、減厚部26の厚さt2が板厚t1の2分の1である場合の変形量δBよりも減厚部26の厚さt2が板厚t1の3分の1である場合の変形量δCの方が大きくなっていることがわかる。
つまり、上述のような減厚部26をウェブ部23に設け、その厚さt2を板厚t1の2分の1から3分の1程度に設定することによって、減厚部26が設けられていない場合に比べて塑性変形性能を向上させることが可能であるといえる。
図4Bのグラフは、下側スカラップ25aが形成されたウェブ部23を有する梁20と、梁20が接合された柱10と、を少なくとも有する解析モデルに対して、梁20を所定の塑性率(μ=2.0)で振幅させ、下側フランジ21が破断に至るまでの繰り返し回数をシミュレーションにより求めた結果を示している。
図4Bのグラフにおいて、横軸は、スカラップ長さL1に対する減厚部26の長さL2の比率(L2/L1)を示し、縦軸は、減厚部26が設けられていない場合の破断寿命を1としたときの破断寿命の比率を示している。
図4Bに示されるように、スカラップ長さL1に対する減厚部26の長さL2の比率(L2/L1)を2よりも大きくするにつれて破断寿命が向上し、比率(L2/L1)が4程度になると、破断寿命の向上が鈍化していることがわかる。
つまり、スカラップ長さL1に対する減厚部26の長さL2の比率(L2/L1)を2~4程度に設定することによって、減厚部26が設けられていない場合に比べて破断寿命を向上させることが可能であるといえる。
このように、下側スカラップ25aから所定の範囲にわたって所定の厚さの減厚部26を設けることによって、下側フランジ21に早期に亀裂が生じることが抑制され、梁20の塑性変形能力及び破断寿命を向上させることができる。
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
上記構成の梁接合構造100では、鋼製の柱10に溶接接合されるH形鋼材により形成された梁20のウェブ部23に、下側スカラップ25aと、下側スカラップ25aから所定の範囲にわたって厚さが減少された減厚部26と、が設けられる。
このように、下側スカラップ25aから所定の範囲にわたって所定の厚さの減厚部26を設けることによって、下側スカラップ25aの周辺ではウェブ部23を介して下側フランジ21へと荷重を伝達することが可能な面積が減少する。このため、下側スカラップ25aの周辺において下側フランジ21に作用する荷重が減少し、結果として、下側スカラップ25aの下端周辺に応力が集中してしまうことが抑制される。これにより、下側フランジ21に早期に亀裂が生じることが抑制され、梁20が早期に破断に至ることを抑制することができる。
また、減厚部26が設けられた部分ではウェブ部23と下側フランジ21との接続面積が減少することから、減厚部26が設けられた部分の周辺では下側フランジ21の塑性変形性能が向上することとなる。これにより、地震力に対する梁20のエネルギー吸収性能が向上し、結果として、上記構成の梁接合構造100が適用された建築物の耐震性を向上させることができる。
<第2実施形態>
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る梁接合構造200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、その説明を省略する。
第2実施形態に係る梁接合構造200は、下側スカラップ25aから所定の範囲にわたって所定の厚さの減厚部26が設けられている点においては、上述の第1実施形態に係る梁接合構造100と同じであるが、下側スカラップ25aを梁20の材軸方向において拡大することにより形成された拡大スカラップ125aが設けられている点において、上述の第1実施形態に係る梁接合構造100と異なっている。なお、図5は、図2に相当する部分を示した拡大図である。
拡大スカラップ125aは、図5に示されるように、梁20の材軸方向において下側スカラップ25aよりもウェブ部23の端面23aから離れた位置に設けられた切り欠きであり、下側スカラップ25aとほぼ同じ形状に形成される。
具体的には、拡大スカラップ125aは、下側スカラップ25aが形成されたウェブ部23と下側フランジ21とを溶接接合する際に形成される端面側溶接部24aを下側フランジ21の上面21aに沿うように切削加工等によって除去するとともに、下側スカラップ25aが設けられたウェブ部23の部分を材軸方向に沿って所定の長さだけ切削することによって形成される。
また、拡大スカラップ125aが設けられる梁20のウェブ部23には、上記第1実施形態と同様に、ウェブ部23の端面23aから梁20の材軸方向において所定の長さL2を有し、下側フランジ21の上面21aから鉛直方向において所定の高さH2を有する減厚部26が下側スカラップ25aから所定の範囲にわたって設けられる。
このため、梁接合構造200は、下側スカラップ25aから所定の範囲にわたって厚さが減少された減厚部26をウェブ部23に形成する工程と、下側フランジ21とウェブ部23とを溶接接合する際に設けられた溶接部である端面側溶接部24aをウェブ部23とともに切削することによって下側スカラップ25aを梁20の材軸方向において拡大し拡大スカラップ125aを形成する工程と、の2つの工程を経て形成される。なお、これら2つの工程は、どちらが先に行われてもよい。
上記形状の減厚部26及び拡大スカラップ125aは、梁20が柱10に溶接接合される前、または、梁20が柱10に溶接接合された後に、エンドミル等の一般的な工具を用いて形成することが可能であり、例えば、既に建築されている建築物の梁20に減厚部26及び拡大スカラップ125aを後から加工することも可能である。
ここで、下側スカラップ25aの下端に形成される端面側溶接部24aの周辺は、上述のように脆化した溶接熱影響部となっている。このため、ウェブ部23及び端面側溶接部24aを介して下側フランジ21へと荷重が伝達されると、端面側溶接部24aと下側フランジ21とが最も端面23a寄りにおいて融合した部分に生じた端面側熱影響部P1(図5参照)に応力が集中し、この端面側熱影響部P1やその周辺を起点として下側フランジ21に早期に亀裂が生じるおそれがある。
これに対して本実施形態では、上述のように下側スカラップ25aを拡大して拡大スカラップ125aを形成することにより、拡大スカラップ125aの下端位置を、下側スカラップ25aの下端位置よりもウェブ部23の端面23aから離れて位置させている。
つまり、ウェブ部23と下側フランジ21とが端面23a側において接続される位置である拡大スカラップ125aの下端位置は、図5に示されるように、梁20の材軸方向において端面側熱影響部P1から所定の第1距離D1だけ離れた場所に位置することになる。なお、第1距離D1の大きさは、例えば、端面側熱影響部P1から下側スカラップ25aの下端位置までの距離である第2距離D2の2倍以上に設定される。
このため、ウェブ部23を介して下側フランジ21へと伝達される荷重は、端面側熱影響部P1から離れた拡大スカラップ125aの下端位置周辺に作用することとなり、端面側熱影響部P1に応力が集中することが抑制される。これにより、端面側熱影響部P1やその周辺を起点として下側フランジ21に早期に亀裂が生じることを抑制することができる。
なお、溶接熱影響部の脆化を改善するために、端面側溶接部24aを除去し拡大スカラップ125aを形成した後、拡大スカラップ125aの下端位置からウェブ部23の端面23aに向かって下側フランジ21の上面21aにピーニング処理を施すことが好ましい。このように端面側溶接部24aが除去された部分を含む範囲にピーニング処理を施すことによって、端面側溶接部24aが除去された部分、端面側熱影響部P1、及び、これらの周辺において早期に亀裂が生じることを抑制することができる。
続いて、図4Aを参照し、減厚部26及び拡大スカラップ125aが設けられることによる梁20の変形性能の変化について説明する。図4Aのグラフは、下側スカラップ25aまたは拡大スカラップ125aが形成されたウェブ部23と、ウェブ部23が溶接接合された下側フランジ21と、下側フランジ21が溶接接合されたダイアフラム12と、にそれぞれ相当する部材を少なくとも有する試験片に対して、下側フランジ21に相当する部材とダイアフラム12に相当する部材とを引き離す方向に引張荷重を負荷した際の荷重方向における試験片の変形量を計測した結果を示している。
図4Aのグラフ中の実線Aは、下側スカラップ25aは設けられているが上述のように減厚部26が設けられていない従来の梁接合構造に相当する試験片の変形量を示し、破線Dは、減厚部26の厚さt2が板厚t1の2分の1に設定されるとともに上述の拡大スカラップ125aが形成された本実施形態に係る梁接合構造200に相当する試験片の変形量を示している。
各試験片に作用する荷重が塑性範囲において最大荷重の90%に低下したときを終局点とすると、終局点に至ったときの変形量は、図4Aに示されるように、減厚部26及び拡大スカラップ125aが設けられていない場合の変形量δAに比べて、減厚部26及び拡大スカラップ125aが設けられた場合の変形量δDの方が大幅に大きくなっていることがわかる。また、減厚部26及び拡大スカラップ125aが設けられた場合の変形量δDは、減厚部26のみが設けられた上述の第1実施形態に係る梁接合構造100に相当する試験片の変形量δB及びδCよりも大きくなっている。
つまり、減厚部26を設けるとともに拡大スカラップ125aを設けることによって、減厚部26が設けられていない場合や減厚部26のみが設けられている場合に比べて塑性変形性能を大幅に向上させることが可能であるといえる。
以上の第2実施形態によれば、上述の第1実施形態と同様の効果に加えて、以下に示す効果を奏する。
上記構成の梁接合構造200では、鋼製の柱10に溶接接合されるH形鋼材により形成された梁20のウェブ部23に、下側スカラップ25aから所定の範囲にわたって厚さが減少された減厚部26と、下側スカラップ25aを梁20の材軸方向において拡大することにより形成された拡大スカラップ125aと、が設けられる。
このように、下側スカラップ25aを梁20の材軸方向において拡大し拡大スカラップ125aを形成することによって、ウェブ部23を介して下側フランジ21へと伝達される荷重は、端面側熱影響部P1から所定の第1距離D1だけ離れた拡大スカラップ125aの下端位置周辺に作用することとなる。これにより、端面側熱影響部P1に応力が集中することが抑制され、結果として、端面側熱影響部P1やその周辺が起点なって下側フランジ21に早期に亀裂が生じることを抑制することができる。
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の各実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
上記各実施形態では、減厚部26の厚さは全域において一定である。減厚部26の厚さは全域で一定でなくともよく、例えば、ウェブ部23の端面23aに向かって徐々に薄くなるようにしてもよいし、下側フランジ21に向かって徐々に薄くなるようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、減厚部26は、下側スカラップ25aの周囲のみに設けられている。ウェブ部23を介して鉛直方向下方に向かう荷重が下側フランジ21に作用することによって下側フランジ21に形成された溶接熱影響部において早期に亀裂が生じることを抑制するためには、少なくとも下側スカラップ25aの周囲に減厚部26を設けておけばよいが、溶接熱影響部は、上側スカラップ25bの上端部が上側フランジ22に接合された部分の周囲にも形成されている。このため、減厚部26は、下側スカラップ25aの周囲に加えて、上側スカラップ25bの周囲に設けられていてもよい。このように上側スカラップ25bの周囲にも減厚部26を設けておくことによって、上側フランジ22の溶接熱影響部において早期に亀裂が生じることを抑制することができる。
また、上記各実施形態では、下側スカラップ25a及び拡大スカラップ125aの形状は、略四分円形状である。下側スカラップ25a及び拡大スカラップ125aの形状はこれに限定されず、異なる曲率の円弧が複数組み合わされた形状であってもよく、例えば、下端位置よりもウェブ部23の端面23aから離れている部分を有する形状であってもよい。
また、上記各実施形態では、梁20は、ビルドH形鋼であるが、梁20は、ウェブ部23と、ウェブ部23と一体化された下側フランジ21と、を有する鋼材であればよく、例えば、圧延により形成されたH形鋼である、いわゆるロールH形鋼であってもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
100,200・・・梁接合構造
10・・・柱
20・・・梁
21・・・下側フランジ
21a・・・下側フランジ21の上面
23・・・ウェブ部
23a・・・ウェブ部23の端面
24a・・・端面側溶接部
24b・・・材軸方向溶接部
25a・・・下側スカラップ
26・・・減厚部
125a・・・拡大スカラップ
H1・・・スカラップ高さ
L1・・・スカラップ長さ
t1・・・ウェブ部23の板厚
t2・・・減厚部26の厚さ
H2・・・減厚部26の高さ
L2・・・減厚部26の長さ
P1・・・端面側熱影響部
D1・・・第1距離
D2・・・第2距離

Claims (5)

  1. 鋼製の柱に接合される鋼製の梁の接合構造であって、
    前記梁は、一対のフランジ部と前記一対のフランジ部に挟まれたウェブ部とを有するH形鋼材により形成され、強軸方向が鉛直方向に沿うように前記柱に接合され、
    前記ウェブ部は、
    前記柱に対向する端面から前記一対のフランジ部のうち鉛直方向下方に配置される下側フランジに向かって切り欠かれた下側スカラップと、
    前記下側スカラップから所定の範囲にわたって厚さが減少された減厚部と、を有し、
    前記減厚部の上端は、前記下側スカラップの鉛直方向における最大高さよりも上方に位置する、
    梁接合構造。
  2. 前記減厚部は、前記下側フランジからの鉛直方向における高さが、前記下側スカラップの鉛直方向における最大高さから5mmを超えない範囲に設けられる、
    請求項1に記載の梁接合構造。
  3. 前記減厚部が設けられる部分のうち前記梁の材軸方向において前記ウェブ部の前記端面から最も離れた部分までの前記端面からの長さは、前記端面からの前記梁の材軸方向における前記下側スカラップの最大長さの2倍以上である、
    請求項1または2に記載の梁接合構造。
  4. 前記梁は、前記一対のフランジ部が前記ウェブ部に溶接接合されることにより形成され、
    前記減厚部は、前記下側フランジと前記ウェブ部とを前記梁の材軸方向に沿って溶接接合する溶接部に及んで設けられる、
    請求項1から3の何れか1つに記載の梁接合構造。
  5. 鋼製の柱に接合される鋼製の梁の接合構造の性能向上方法であって、
    前記梁が、一対のフランジ部をウェブ部に溶接接合することにより形成され、その強軸方向が鉛直方向に沿うように前記柱に接合され、前記ウェブ部が、前記柱に対向する端面から前記一対のフランジ部のうち鉛直方向下方に配置される下側フランジに向かって切り欠かれた下側スカラップを有する、梁接合構造の性能を向上する方法において、
    前記下側スカラップから所定の範囲にわたって厚さが減少された減厚部を前記ウェブ部に形成する工程と、
    前記下側フランジと前記ウェブ部とを溶接接合する際に設けられた溶接部を前記ウェブ部とともに切削することによって前記下側スカラップを前記梁の材軸方向において拡大する工程と、を有し、
    前記減厚部の上端は、前記下側スカラップの鉛直方向における最大高さよりも上方に位置する、
    梁接合構造の性能向上方法。
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