JP7195081B2 - スカラップ及びそのスカラップを用いた梁端現場接合部 - Google Patents

スカラップ及びそのスカラップを用いた梁端現場接合部 Download PDF

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Description

本発明は、H形断面梁の梁端現場接合部を形成するため、H形断面梁のウェブの端部に設けるスカラップ、及びスカラップを用いた梁端現場接合部に関する。
梁、柱等が鉄骨部材によって構成される鉄骨建物は、建設時の工事現場において梁と柱が接合される場合がある。とくに、梁としてH形断面部材を用いるH形断面梁の場合は、H形断面梁のウェブの端部と柱とを工事現場において溶接あるいはボルト接合し、H形断面梁の上下フランジの端部と柱とを工事現場において溶接するという、梁端現場接合部が広く一般に採用されている。この際、H形断面梁の下フランジの端部と柱との溶接を行うために、H形断面梁のウェブの端部には通常スカラップと呼ばれる溶接孔が設けられる。スカラップは、H形断面梁のウェブの端部をH形断面梁の下フランジの近傍で部分的に切り欠くものであり、H形断面梁の下フランジと柱との溶接部は、このスカラップを通してH形断面梁のウェブを横切るように形成される。
また、上記のH形断面梁に用いられるH形断面部材としては、溶接組立H形断面と圧延H形鋼がある。溶接組立H形断面は、上下一対のフランジとウェブとがそれぞれ交差する部分を溶接することで成形される。このため、上下一対のフランジとウェブとがそれぞれ交差する部分には、溶接金属によってウェブの厚さ方向に幅広となるように形成された隅肉部が設けられる。また、圧延H形鋼は、上下一対のフランジとウェブからなる断面H形形状に、圧延によって一体に成形される。この際、上下一対のフランジとウェブとがそれぞれ交差する部分には、ウェブの厚さ方向に幅広となるように形成された通常フィレット部と呼ばれる隅肉部が設けられる。
ところで、上記のような梁端現場接合部は、スカラップにひずみが集中することでH形断面梁の下フランジが地震時に破断するおそれがあり、これを防止する対策が求められている。このために従来から、スカラップへのひずみの集中を緩和することのできるスカラップの形状やスカラップを補強する対策が講じられてきた。
例えば非特許文献1には、スカラップへのひずみの集中を緩和することのできるスカラップの形状として、二つの曲率半径の円弧を組み合わせた形状であって、フランジと接続する部分の円弧の曲率半径を10mmとし、フランジから離れた部分の円弧の曲率半径を35mmとする形状の複合円型スカラップが開示されている。さらに非特許文献1には、スカラップへのひずみの集中を緩和することのできるスカラップの形状として、フランジと接続する部分の1/4円状の円弧の曲率半径を10mmとし、この円弧から垂直に伸びる直線部を有する形状の改良B型スカラップが開示されている。また、非特許文献2及び3には、スカラップへのひずみの集中を緩和することのできるスカラップの形状として、円弧となる部分と、当該円弧となる部分から直線状に延びてフランジと接続される形状のスカラップが開示されている。
一方、特許文献1には、スカラップを補強する対策として、鉄骨柱梁フランジ溶接接合部を、梁のフランジと、フランジの外側に接合した板状部材と、鉄骨柱の通しダイアフラムとからなる開先部を完全溶け込み溶接した接合部とし、板状部材を肉厚部から肉薄部にかけて直線的に減厚するテーパープレートとし、梁のウェブにスカラップを設けた構造が開示されている。
また、特許文献2には、スカラップを補強する対策として、スカラップを溶接などで充填する構造が開示されている。
特開2013-7194号公報 特開2015-224427号公報
日本建築学会:鉄骨工事技術指針・工場製作編、日本、2007年2月15日、第5版、p.208-211 中込忠男、藤田哲也:角形鋼管柱に通しダイアフラム形式で溶接接合される圧延H形鋼梁端部の力学的性能 梁スカラップの有無および形状と目違いが破壊性状に及ぼす影響、日本建築学会構造系論文集第455号、1994年1月、p.187-196 J.M.Ricles,J.W.Fisher,Le-Wu Lu,E.J.Kaufmann;Development of improved welded moment connections for earthquake-resistant design、Journal of Constructional Steel Research、2002年、58号、p.565-604
しかし、非特許文献1~3のようなスカラップは、通常スカラップ底と呼ばれる、スカラップとH形断面梁の下フランジとが接続される部分の近傍にひずみが集中するという問題がある。すなわち、スカラップ底に歪が集中することで地震時にこの部分にき裂が発生し、このき裂がH形断面梁の下フランジの外面に進展するという問題がある。このき裂がH形断面梁の下フランジの外面に進展すると、これを起点としてH形断面梁の下フランジが破断してしまい、鉄骨建物の耐震性能を損なうおそれがある。このため、スカラップ底へのひずみの集中を緩和することのできるスカラップの形状が現在広く求められている。また、スカラップ底にひずみが集中することで地震時にこの部分にき裂が発生した場合、発生したき裂はH形断面梁が接合される柱などの他の鉄骨材があるために視認しづらく、地震後の損傷の診断が困難となるという問題がある。
また、特許文献1のような構造では、梁の端部の応力を低減することが可能であるが、補強するためのテーパープレートを用意し接続する手間がかかってしまう問題がある。同様に、特許文献2のような構造でも、補強するためにスカラップを溶接などにより充填するための手間がかかってしまう問題がある。
本発明は、上述の事情を鑑みてスカラップの形状の見直しを図ったもので、補強するために別の構成を設けなくても、スカラップ底へのひずみの集中を緩和することができ、スカラップ底へのき裂の発生を抑制し、H形断面梁の下フランジの破断を防止することができるスカラップ及び梁端現場接合部を提供するものである。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明によるスカラップは、H形断面梁の梁端現場接合部を形成するために、前記H形断面梁のウェブの端部に設けるものであって、前記H形断面梁の下フランジ側に位置する第一の開口端と、前記第一の開口端と相反する側に位置する第二の開口端とを有し、前記第一の開口端から、前記ウェブの端部から離れる向きに延びる第一の開口縁部と、前記第二の開口端から、前記ウェブの端部から離れる向きに延びる第二の開口縁部と、前記第一の開口縁部と前記第二の開口縁部とを接続する第三の開口縁部とを有し、前記第一の開口縁部は、前記ウェブと前記フランジとが交差する部分に設けられた隅肉部における前記ウェブ側の止端部と交差するように、円弧状に形成され、前記第一の開口端側の一端で、その接線が前記下フランジの内側の面と平行となる第一の円弧部を有し、前記第三の開口縁部は、前記第一の開口縁部と前記第二の開口縁部とを接続する円弧状に形成された第二の円弧部を有し、前記第一の円弧部の曲率半径が前記第二の円弧部の曲率半径より大きいことを特徴とする。
なお、本発明によるスカラップは、前記下フランジ側のスカラップ底のひずみの集中を緩和することを目的とするものであるが、当然、上フランジ側に対しても同様のスカラップを用いることができる。
この構成によれば、前記第一の開口縁部と前記第二の開口縁部とを接続する前記第三の開口縁部における前記第二の円弧部の曲率半径に対して、前記下フランジ側に位置する前記第一の開口縁部における前記第一の円弧部の曲率半径を大きくすることで、前記スカラップの周辺において、前記ウェブのせん断変形を起こしやすくすることができる。これにより、前記スカラップ底へのひずみの集中を緩和することが可能であり、前記スカラップ底にき裂が発生することを抑制することができる。ここで、本発明におけるスカラップ底とは、第一の円弧部における第一の開口端側の一端の近傍を意味する。さらに、前記第一の開口縁部が、前記隅肉部の前記ウェブ側の止端部と交差するように円弧状に形成されていることで、断面H形形状の幅方向の厚みが相対的に小さい前記隅肉部の前記ウェブ側の止端部において意図的に延性き裂を発生させることができる。この延性き裂は、前記フランジに進展することなく、前記フランジと比較して引張応力が小さい前記隅肉部の前記ウェブ側の止端部に沿って軸方向に安定的に進展するため、前記下フランジが破断して鉄骨建物の耐震性能を損なうことを防止することができる。
また、前記第一の円弧部と前記第二の円弧部とは、前記第一の円弧部がなす円弧と前記第二の円弧部がなす円弧とが共通の接線となる部分において接続されているものとしてもよい。
この構成によれば、前記第一の円弧部と前記第二の円弧部とが連続的に接続されることで、前記スカラップ底へのひずみの集中を一層緩和することができ、前記スカラップ底にき裂が発生することをより抑制することができる。
また、上記のようなスカラップの形状において、前記第一の開口端を含み直近の前記下フランジにおける内側の面に平行に配された直線部を有し、前記第一の円弧部の前記第一の開口端側の一端が前記直線部と接続されているものとしてもよい。
この構成によれば、前記下フランジと柱とを溶接するための十分なスペースを確保することができ、前記フランジと前記柱との溶接を安定的に行い、溶接欠陥を生じないようにすることができる。
さらに、本発明においては、前記第一の円弧部の曲率半径が前記第二の円弧部の曲率半径の2.5倍以上とすることが好ましい。
これにより、スカラップの下フランジ側におけるひずみの集中を緩和して、スカラップからのき裂の発生を安定的に抑制することが可能となる。
また、上記のようなスカラップの大きさは、梁端現場接合部の耐力を安定的に確保するためになるべく小さくすることが望ましいが、前記フランジと前記柱との溶接の施工性の観点から、前記スカラップの前記下フランジ側から上フランジ側へ向かう方向の寸法は、15mm以上とすることが好ましい。
また、上記のようなスカラップの形成は、通常切削によって行われるが、円弧部の切削面を滑らかにしてき裂の発生を抑制するためには、切削加工上その曲率半径をなるべく大きくするのが好ましい。このとき、スカラップをカッターによって切削して成形し、前記第二の円弧部の曲率半径が6mm以上とすることが好ましい。
本発明によれば、補強するために別の構成を設けなくても、前記スカラップ底へのひずみの集中を緩和することができ、前記スカラップ底へのき裂の発生を抑制し、前記下フランジの破断を防止することができる。
実施形態の梁端現場接合部の概要を示す斜視図である。 図1におけるA部の詳細図である。 図1における切断線I-Iで切断した断面図である。 実施形態の第一の態様であるスカラップの詳細を示す側面図である。 実施形態の第二の態様であるスカラップの詳細を示す側面図である。 実施形態の第三の態様であるスカラップの詳細を示す側面図である。 実施形態の第四の態様であるスカラップの詳細を示す側面図である。 実施例で用いた解析モデルの全体を示すモデル図である。 撓み角を説明するための説明図である。 解析モデルNO.12における相当塑性ひずみ分布を示す分布図である。 解析モデルNO.45における相当塑性ひずみ分布を示す分布図である。 解析モデルNO.12における塑性せん断ひずみ分布を示す分布図である。 解析モデルNO.24おける塑性せん断ひずみ分布を示す分布図である。 解析結果に基づく第二の円弧部の曲率半径に対する第一の円弧部の曲率半径の比と、最大相当塑性ひずみとの関係を示すグラフである。
以下、本発明に係る実施形態について図1から図14を参照して説明する。図1及び図2は、本実施形態の梁端現場接合部100を示していて、この梁端現場接合部100は、柱110と、柱110と接続される梁1とを備える。柱110は、鋼材からなり角管状に形成された複数の柱材111を軸方向に連結して構成されている。
また、柱110と梁1とが接続する柱梁接合部110aには、梁1と接続するための一対のダイアフラム112、112が設けられている。各ダイアフラム112は、略矩形状の板体状に形成されたいわゆる通しダイアフラムであり、柱梁接合部110aの上下両端側に配設されていて、この柱梁接合部110aと柱材111とによってそれぞれ挟み込まれている。そして、各ダイアフラム112は、周縁部分が各柱材111の側面111aから突出した状態で溶接等により柱梁接合部110a及び柱材111と一体化されている。
なお、梁端現場接合部については、本実施形態のような通しダイアフラム形式の構造に限定されず、例えば梁1がダイアフラムを介さず柱110に直接接続される構成でもよいし、柱110がH形鋼で梁1とは柱110あるいはダイアフラムを介して接続される構成でもよい。
梁1は、通常H形断面梁によって形成されている。本実施形態において梁1は、溶接組立H形断面により形成されている。梁1は、全体として一方向(水平方向)に延びていて、ウェブ10と、ウェブ10の軸方向と直交する方向の両端部(以下、ウェブ(10)の軸方向と直交する方向の端部を「縁」ということがある。)10b,10bに接続された一対のフランジ20とを有する。
ウェブ10は、ウェブ10の軸方向と直交する方向、すなわちウェブ幅方向を梁1の高さ方向として、梁1の軸方向に延びている。一対のフランジ20は、梁1の軸方向に延びており、ウェブ10の両縁10b、10bに接続されている。また、一対のフランジ20は、ウェブ10の上下両端部において、それぞれウェブ10からウェブ10の厚さ方向に略直角に張出している。そして、梁1の軸線方向の端部が、柱110の周面に接続されている。なお、一対のフランジ20、20のうち、下側に位置するフランジ20を下フランジ、上側に位置するフランジ20を上フランジと称する。
ここで、本発明においては、梁において柱と接続する軸方向の端部を軸端部(1a)と称し、梁の軸端部において、ウェブ及びフランジが柱と接続される部分をそれぞれ軸端(10a、20a)と称する。
この実施形態における接組立H形断面は、図3に示すように、ウェブ10と一対のフランジ20とが交差する部分には溶接により形成された隅肉部30が設けられている。すなわち、隅肉部30は、溶接材または溶接材と母材とが溶融することにより形成されている。隅肉部30は、ウェブ10の両縁10b、10bにおいて、ウェブ10の両方のウェブ面11、11と、一対のフランジ20の互いに向かう内側の面である内面21、21との間にそれぞれ形成されている。言い換えれば、隅肉部30は、ウェブ10の各縁10b、10bにおいてウェブ10を挟み込むように各ウェブ面11、11に設けられている。
また、図3に示すように、本実施形態において隅肉部30は、梁1の軸方向視した断面において、ウェブ10のウェブ面11と接続するウェブ止端部31から、フランジ20の内面21と接続するフランジ止端部32までを繋ぐ直線状の傾斜面を有する三角形状に形成されており、さらに本実施形態では断面二等辺三角形状に形成されている。隅肉部30におけるウェブ10のウェブ面11及びフランジ20の内面21に沿う各辺の大きさ、すなわちフランジ20の内面21からウェブ止端部31までの距離である隅肉高さHf、及び、ウェブ10のウェブ面11からフランジ止端部32までの距離である隅肉幅Wfとしては、例えば3~30mm程度である。
なお、隅肉部30の断面は三角形状に限定されるものではない。ウェブ止端部31からフランジ止端部32まで円弧状の凹曲面で接続されてよく、ウェブ止端部31及びフランジ止端部32において当該凹曲面の接線がウェブ10のウェブ面11及びフランジ20の内面21に平行となるようにして接続されていてもよい。また、ウェブ止端部31からフランジ止端部32まで凸曲面で接続されていてもよい。
本実施形態では、上記のとおり隅肉部30はウェブ10とフランジ20とを隅肉溶接を行うことにより形成されるものであり、隅肉部30と、隅肉部30近傍のウェブ10及びフランジ20との各部分によって溶接部が形成されている。
そして、当該梁1は、本実施形態のH形断面部材の端部接続構造200により柱110に接続されている。すなわち、本実施形態のH形断面部材の端部接続構造200は、梁1のフランジ20の軸端20aを柱110に溶接するフランジ溶接部40と、梁1のウェブ10の軸端10aを柱110に溶接するウェブ溶接部50とを有する。また、フランジ溶接部40の下面側には、このフランジ溶接部40を形成する溶金が、フランジ20に開先面40aと柱110との間から抜け落ちるのを防ぐ裏当金が設けられている。
本実施形態においては、フランジ20の軸端20aは柱110のダイアフラム112に溶接されて、ウェブ10の軸端10aは柱材111の側面111aに溶接されている。
また、梁1におけるウェブ10の軸端10aにはスカラップ60が設けられている。スカラップ60は、ウェブ10の軸端10a側における一対のフランジ20、20側となる両縁10b、10b位置に、直近のフランジ20の軸端20a側及びウェブ10の軸端10a側の方向に向けて開口するように、且つウェブ10の厚さ方向に貫通するようにそれぞれ設けられている。これにより、フランジ溶接部40は、フランジ20の幅方向一方の端部から、スカラップ60を通してウェブ10を横切って幅方向他方の端部まで形成されている。また、ウェブ溶接部50は、ウェブ10の両縁10b、10bに設けられたスカラップ60まで形成されている。
なお、本実施形態においては、梁1のウェブ10は、その軸端10aを柱110に溶接することにより柱110に接続されているが、梁のウェブの軸端を接合する方法は溶接に限定されるものではなく、例えばボルト接合によるものでもよい。
図4に示すように、スカラップ60は、上記のように、直近のフランジ20の軸端20a側及び直近のウェブ10の軸端10a側の方向に開いた開口を有しているため、2つの開口端を含んでいる。すなわち、直近のフランジ20側に位置する第一の開口端60aと、第一の開口端60aと相反する側、言い換えれば、一対のフランジ20で挟まれたウェブ10のウェブ幅方向の中央側に位置する第二の開口端60bとを含む。より具体的に、第一の開口端60aは、直近のフランジ20の内面21側の位置に、第二の開口端60bはウェブ10の軸端10aにそれぞれ形成されている。
また、スカラップ60は、第一の開口縁部61と、第二の開口縁部62と、第三の開口縁部63とを有している。第一の開口縁部61は、第一の開口端60aを含み、第一の開口端60aから、梁1の軸方向における軸端部1aから離れる方向に向かって延びている。第二の開口縁部62は、第二の開口端60bを含み、第二の開口端60bから梁1の軸端部1aから離れる向き、すなわち梁1の軸方向の中央に向かって延びている。第三の開口縁部63は、第一の開口縁部61と第二の開口縁部62とを接続している。
具体的に、第一の開口縁部61は、隅肉部30におけるウェブ止端部31と交差するようにして円弧状に形成された、第一の開口端60a側の一端71aで接線が前記フランジ20の内面21と平行となる第一の円弧部71を有する。
第二の開口縁部62は、形状は特に限定されないが、本実施形態の場合は第二の開口端60bから直線状に延びている。
また、第三の開口縁部63は、第一の開口縁部61から第二の開口縁部62に向かって湾曲する円弧状に形成された第二の円弧部72を有している。
ここで、第一の円弧部71の曲率半径R1は、第二の円弧部72の曲率半径R2の2.5倍以上であることが望ましい。このように、第一の円弧部71の曲率半径R1を、第二の円弧部72の曲率半径R2の2.5倍以上としたのは、スカラップ60のフランジ20側におけるひずみの集中を緩和して、スカラップ60からのき裂の発生をより安定的に抑制することが可能となるためである。
なお、第一の開口縁部61、第二の開口縁部62及び第三の開口縁部63によって構成されるスカラップ60において、一対のフランジ20が互いに離間する方向(梁1の高さ方向)におけるスカラップ60の高さ寸法Hsは、梁端現場接合部100の耐力を安定的に確保するためになるべく小さくすることが望ましいが、フランジ20と柱110との溶接の施工性の観点から、スカラップ60の下フランジ20側から上フランジ20側へ向かう方向の寸法は、15mm以上とすることが望ましい。さらに、スカラップ60の高さ寸法Hsは、ウェブ10でもモーメントをより効率よく伝達させて、スカラップ60のフランジ20側のひずみの集中をさらに緩和させるため、35mm以下であるものとしてもよい。
また、第二の円弧部72の曲率半径R2は、スカラップの形成の際にカッターにより切削することを考慮し、作業性を確保するためも6mm以上であるものとしてもよい。
以下、スカラップ60のより詳細な態様について説明する。
図4は第一の態様のスカラップ60を示している。図4に示すように、第一の態様のスカラップ60において、第一の開口縁部61は、直近のフランジ20側の位置に配設されていて、第一の開口端60aを含む第一の直線部73と、第一の直線部73に接続された第一の円弧部71とを有する。
第一の直線部73は、直近のフランジ20の内面21において、スカラップ60によりウェブ10が切り欠かれた部分に相当するもので、本態様においては、直近のフランジ20の内面21に含まれている。また、第一の開口端60aは、直近のフランジ20の軸端20aに設けられていて、さらに具体的には、柱110と溶接されるフランジ溶接部40を形成する際に用いられる開先面40aにおけるウェブ10側の端部がこの第一の開口端60aとなっている。
第一の円弧部71は、第一の直線部73と接続する位置における接線がフランジ20の内面21と平行であり、且つ梁1の軸端部1aから離れるに従って、次第にフランジ20から離れる方向に湾曲する凹曲線状に形成されている。この第一の円弧部71は、第一の直線部73と接続されて隅肉部30を横断する隅肉横断部71cと、隅肉横断部71cにおける直近のフランジ20とは反対側の一端部からウェブ10のウェブ面11に沿って形成されるウェブ形成部71dとを有する。
一方、第二の開口縁部62は、第二の開口端60bを含む直線状に形成され、梁1の軸方向に沿って延びている第二の直線部74を有している。
また、第三の開口縁部63は、第二の円弧部72を有していて、第二の円弧部72の一端72aは、第一の開口縁部61の第一の円弧部71と接続されているとともに、他端72bは第二の開口縁部62の第二の直線部74と接続されている。
ここで、第一の円弧部71と第二の円弧部72とは、第一の円弧部71がなす円弧と第二の円弧部72がなす円弧とが共通の接線となる部分において接続されている。また、第二の円弧部72と第二の直線部74との接続部分では、第二の円弧部72をなす円弧の接線と第二の直線部74とが一致している。これにより、第一の開口縁部61、第二の開口縁部62及び第三の開口縁部63で構成されるスカラップ60の縁部の形状は連続的になっている。
なお、本態様においてスカラップ60の高さ寸法Hsは第一の直線部73と第二の直線部74との離間距離によって定まる。
また、図5は第二の態様のスカラップ60Aを示している。なお、第一態様と同一の構成については同一の符号を付与した上で説明を省略する。
図5に示すように、第二の態様のスカラップ60Aにおいて第一の開口縁部61は、第一の態様における第一の直線部73に相当する部分を備えず、第一の円弧部71における直近のフランジ20側の一端71aが第一の開口端60aとなっている。第一の開口端60aとなる第一の円弧部71の一端71aは、フランジ20の内面21上に位置しており、当該一端71aにおける接線がフランジ20の内面21に平行である。
なお、本態様においてスカラップ60の高さ寸法Hsは、第一の円弧部71の一端71aと第二の直線部74との離間距離によって定まる。
また、図6は第三の態様のスカラップ60Bを示している。同様に、第一態様と同一の構成については同一の符号を付与した上で説明を省略する。
図6に示すように、本態様においては、フランジ溶接部40を形成する際に用いられる開先面40aが、上方に(厳密には上方に行くに従って次第に梁1の軸端部1aから離れる方向)に立ち上がっていて、開先面40aの一端が、直近のフランジ20の内面よりもウェブ幅方向中央側に位置している。そして、この開先面40aの一端が第一の開口端60aとなっている。
具体的に、スカラップ60Bは、第一の開口縁部61が、第一の開口端60aを含む第一の直線部75と、第一の直線部75と接続された第一の円弧部71とを有していて、第一の直線部75は、第一の開口端60aが直近のフランジ20の内面よりもウェブ幅方向中央側に位置している分だけフランジ20の内面21から離間した状態で、フランジ20の内面21と平行に形成されている。
ここで、第一の直線部75とフランジ20の内面21との距離で表わされるスカラップ離間距離Xsは、少なくとも隅肉部30のウェブ止端部31からフランジ20の内面21までの距離である隅肉高さHfよりも小さい。これにより、第一の直線部75と接続されている第一の円弧部71はウェブ止端部31と交差している。
なお、本態様においてスカラップ60の高さ寸法Hsは第一の直線部75と第二の直線部74との離間距離によって定まる。
また、図7は第四の態様のスカラップ60Cを示している。なお、第三態様と同一の構成については同一の符号を付与した上で説明を省略する。
図7に示すように、第四の態様のスカラップ60Cにおいて第一の開口縁部61は、第三の態様における第一の直線部75に相当する部分を備えず、第一の円弧部71の一端71aが第一の開口端60aとなっている。第一の開口端60aとなる第一の円弧部71の一端71aは、第三の態様と同様にフランジ20の内面21から離間していて、当該一端71aにおける接線はフランジ20の内面21に平行となっている。
ここで、第一の円弧部71の一端71aとフランジ20の内面21との距離で表わされるスカラップ離間距離Xsは、少なくとも隅肉部30のウェブ止端部31からフランジ20の内面21までの距離である隅肉高さHfよりも小さい。これにより、第一の直線部73と接続されている第一の円弧部71はウェブ止端部31と交差している。
なお、本態様においてスカラップ60の高さ寸法Hsは、第一の円弧部71の一端71aと第二の直線部74との離間距離によって定まる。
なお、上記第一~第四の態様において、第一の開口縁部61の第一の円弧部71と第三の開口縁部63の第二の円弧部72とは、第一の円弧部71がなす円弧と第二の円弧部72がなす円弧とが共通の接線となる部分において接続されているものとした。しかしながら、第一の円弧部71と第二の円弧部72とが、共通の接線となる部分において接続されない、すなわち境界となる角が形成された状態で接続されていてもよい。また、第一の円弧部71と第二の円弧部72との間に直線部を設けて、これらの第一の円弧部71と第二の円弧部72とが間接的に接続される構成であってもよい。
さらに、第二の開口縁部62については、本実施形態においては直線部であるとしたが、任意の形状とすることができ、例えば円弧状に形成されていてもよい。
上記のようなH形断面部材の端部接続構造200では、第一の開口縁部61と第二の開口縁部62とを接続する第三の開口縁部63における第二の円弧部72を設けると共に、フランジ20側に位置する第一の開口縁部61における第一の円弧部71を設けて、第一の円弧部71を第二の円弧部72の2.5倍以上大きい曲率半径しても良い。
これにより、スカラップ60のフランジ20側におけるひずみの集中を緩和し、スカラップ60からのき裂の発生を抑制することができる。そして、このような第一の円弧部71が隅肉部30におけるウェブ止端部31と交差するようにして形成されていることで、仮に延性き裂が発生したとしても、幅が相対的に狭く断面がウェブ10から断面変化が生じるウェブ止端部31近傍でき裂を発生させることができる。また、仮にウェブ10側の止端部近傍で延性き裂が発生したとしても、発生したき裂を、フランジ20に比較して引張応力が低いウェブ止端部31に沿って軸方向に安定的にき裂を進展させることができる。したがって、本実施形態のようなH形断面部材の端部接続構造200では、補強するために別の構成を設けなくても、スカラップから初期き裂が発生することを遅らせつつ、万一初期き裂が発生しても早期破断に至らないように延性き裂を進展させることができ、より安全性の高い梁端現場接合部100とすることができる。
また、スカラップ60の高さ寸法を15mm以上とすることで、フランジ20と柱110との溶接の施工性を向上させることができる。
また、スカラップ60の高さ寸法を35mm以下とすることで、ウェブ10でもモーメントをより効率よく伝達することができるため、柱110と梁1との接合部としての降伏曲げ耐力を向上させることができる。また、スカラップ60の高さ寸法を低く抑えることによって、ウェブ10でモーメントをより効率よく伝達することができるため、スカラップ60のフランジ20側のひずみの集中をさらに緩和させることができる。
さらに、第一の円弧部71と第二の円弧部72とが共通の接線により接続されていることで、第一の円弧部71と第二の円弧部72とが凹凸なく滑らかに接続されるため、より一層ひずみの集中を緩和することができ、き裂の発生をより安定的に抑制することができる。
また、第二の円弧部72の曲率半径R2を6mm以上とすることで、第二の円弧部72におけるひずみの集中も緩和することができるとともに、スカラップをカッターによって容易に切削して成形することができる。
さらに、上記H形断面部材の端部接続構造200は、上記の第三の態様のように、第一の開口縁部61は、第一の開口端60aを有し前記フランジ20の内面21に平行に配された直線部75を有し、第一の円弧部71の一端71aがこの直線部75と接続されているものとしてもよく、これにより、フランジ20の軸端20aを溶接するための十分なスペースを確保することができ、フランジ20と柱110との溶接を安定的に行い、溶接欠陥を生じないようにすることができる。
本発明の効果を実証するため、上記実施形態のような梁端現場接合部100の具体例について、数値解析を行った。
解析手法としては有限要素法を用い、解析ソフトとしてはANSYS.Ver16を用いた。図8は本実施例で解析を行う解析モデルとなる梁端現場接合部100のモデルの全体を示している。図8に示すように、解析モデルは、片持ち梁形式とし、対称性を考慮して、梁1の幅方向に1/2モデルとした。解析モデルは、8節点6面体要素を使用した三次元ソリッド要素で作成した。柱110及び梁1に用いる鋼材の材料特性は、柱110及び梁1ともに同一材で同一の材料特性とし、SN490Bの材料試験結果から得られた応力-ひずみ曲線を複数の直線成分によってモデル化したものを用いた。
梁1として用いるH形断面梁の断面としては、図3に示すせいDbが700mm、幅Bが200mm、ウェブ10の厚さtbwが16mm、フランジ20の厚さtbfが22mmのものを用いた。ここで、隅肉部30の形状はフランジ20の内面21からウェブ止端部31までの隅肉高さHfと、ウェブ10のウェブ面11からフランジ止端部32までの隅肉幅Wfとは等しい二等辺三角形であり、Hf=Wf=18mmとした。また、柱110の側面から梁1の軸方向の端部までの長さLbを3500mmとした。なお、フランジ20の軸端20aが溶接される柱110側のダイアフラム112の厚さtd(図2参照)は32mmとした。また、図示しないが、柱110の外径Bcは500mm、板厚tcfは16mmとした。
解析は、スカラップ60の形状に関するパラメータを変化させて53種類のモデルについて解析を行った。解析モデルとして用いたスカラップ60の形状は図4~図7に示すものが含まれる。なお、第二の開口縁部62は第二の直線部74のみで構成されており、第一の円弧部71と第二の円弧部72とは共通する接線で連続的に接続されている。スカラップ60の形状に関するパラメータとしては、第一の円弧部71の曲率半径R1(mm)と、第二の円弧部72の曲率半径R2(mm)と、第一の直線部73(75)の長さL1と、スカラップ離間距離Xs(mm)と、スカラップ60の高さ寸法Hsとがある。第一の円弧部71において軸端部1aから離間する側の他端71bのフランジ20の内面21からの高さである円弧部終端高さHcは、第一の円弧部71の曲率半径R1(mm)と、第二の円弧部72の曲率半径R2(mm)と、スカラップ離間距離Xsと、スカラップ60の高さ寸法Hsとにより幾何学的に定まるものである。表1、表2に各解析モデルのパラメータ値を示す。
Figure 0007195081000001
Figure 0007195081000002
表1、表2に示すように、NO.1~25では、上記パラメータを変化させつつ、第一の円弧部71の曲率半径R1を第二の円弧部72の曲率半径R2の1.0倍より大きくするとともに、第一の円弧部71がウェブ止端部31と交差、すなわち円弧部終端高さHcを隅肉高さHf以上とした。
一方、NO.26~39では、上記パラメータを変化させつつ、第一の円弧部71の曲率半径R1を第二の円弧部72の曲率半径R2の1.0倍より大きくするとともに、円弧部終端高さHcを隅肉高さHf未満とした。
また、NO.40~44では、上記パラメータを変化させつつ、第一の円弧部71の曲率半径R1を第二の円弧部72の曲率半径R2の1.0倍未満にするとともに、円弧部終端高さHcを隅肉高さHf以上とした。
さらに、NO.45~53では、上記パラメータを変化させつつ、第一の円弧部71の曲率半径R1を第二の円弧部72の曲率半径R2の1.0倍未満にするとともに、円弧部終端高さHcが隅肉高さHf未満とした。
これら解析モデルに対して、梁1の軸方向の端部に荷重を加えて、梁1を変形させた。そして、図9に示すように、梁1の載荷点における回転角θ(変形前の梁1の軸線L0に対する変形後の梁1の軸線L1の両端を結ぶ線L2のなす角度)が、梁1の軸端部1aにおいて全断面塑性化した時の回転角をθpとし、この3倍の角度3・θpとなるまで梁1を変形させた。そして、θ=3・θpにおける相当塑性ひずみ分布及び塑性せん断ひずみ分布を有限要素法により求めた。一例として、図10にNO.12の相当塑性ひずみ分布を、図11にNO.45の相当塑性ひずみ分布を示す。また、一例として、図12にNO.12の塑性せん断ひずみ分布を、図13にNO.24の塑性せん断ひずみ分布を示す。さらに、本有限要素法による解析結果に基づいて、スカラップ60のスカラップ底における最大相当塑性ひずみεmax(%)を求めた。表1、表2に、各解析モデルにおける最大相当塑性ひずみεmaxを示す。また、第二の円弧部72の曲率半径R2に対する第一の円弧部71の曲率半径R1の比R1/R2と、対応する最大相当塑性ひずみεmaxとの関係をプロットしたグラフを図14に示す。なお、横軸に平行な点線P1は、εmax=20%を示している。また、縦軸に平行な点線Q1は比R1/R2=1.0を示している。
表1、表2及び図14から、第二の円弧部72の半径に対する第一の円弧部71の半径の比R1/R2が大きくなることで、最大相当塑性ひずみεmaxが小さくなる傾向にあることが分かる。とくに、R1/R2が1.0を超える解析ケースは、個々の解析パラメータの数値によらずεmaxは20%程度以下の低値に留まっている。すなわち、R1/R2が1.0を超える場合には、R1/R2が1.0以下である場合に比べてスカラップ底へのひずみの集中が緩和されている。なお、さらに安定してスカラップ底へのひずみの集中を緩和するにはR1/R2をより大きくすることが望ましく、H型断面梁の靱性のばらつきなどを考慮すれば、R1/R2は2.5以上とすることが望ましい。図10に示すように、R1/R2>1.0である解析モデルでは、例えば図10に示す解析モデルNO.12のように、スカラップ底における最大相当塑性ひずみεmaxを抑制し、特に第一の円弧部71において接線がフランジ20の内面21と平行となる一端71a近傍における相当塑性ひずみを抑制することができていることが認められる。すなわち、R1/R2>1.0とすることで、ウェブ10とフランジ20との交差部分近傍でき裂が発生することを抑制することができる。このため、R1/R2>1.0である解析モデルのような構造とすることで、極大地震時において第一の円弧部71にき裂が発生することを抑制し、き裂がフランジ20の外面22(図3参照)に向かって進展することを抑制することができる。一方、比R1/R2≦1.0である解析モデルでは、図11に示す従来型の形状を示す解析モデルNO.45のように、スカラップ底における最大相当塑性ひずみεmaxが大きくなるとともに、特に第一の円弧部71において接線がフランジ20の内面21と平行となる一端71a近傍における相当塑性ひずみを抑制することができていないことが認められる。このように、ウェブ10とフランジ20との交差部分近傍でき裂が発生することを抑制することができない。このため、R1/R2≦1.0である解析モデルのような構造では、極大地震時において第一の円弧部71にき裂が発生してしまい、き裂がフランジ20の外面22に向かって進展してしまうおそれがある。き裂がフランジ20の外面22に向かって進展すると、フランジ20には高い引張応力が作用しているため、フランジの脆性破断を助長することとなる。
また、Hc≧Hfである解析モデルでは、図12に示す解析モデルNO.12のように、隅肉部30におけるウェブ止端部31の近傍に沿った塑性せん断ひずみの分布が梁1の材軸方向に向かって広く形成されており、そのひずみの数値も高いことが分かる。すなわち、Hc≧Hfであることで第一の円弧部71がウェブ止端部31と交差するスカラップ60の形状では、延性き裂はウェブ止端部31近傍で発生し、発生したき裂は断面H形形状の幅方向の厚みが相対的に小さい前記隅肉部30の前記ウェブ止端部31に沿って軸方向に安定的に進展させることができる。すなわち、き裂がフランジ20の外面22へ向かうことによる破断を抑制することができ、さらに、き裂が発生する箇所を明確にして極大地震後のき裂の視認を容易とし、補修を速やかかつ容易に行うことも可能となる。一方、Hc<Hfである解析モデルNO.24では、図13に示すように第一の円弧部71が前記隅肉部30の前記ウェブ止端部31と交差せず、第二の円弧部72も隅肉部30に含まれるため、スカラップから梁の軸方向に沿った塑性せん断ひずみの分布は形成されない。したがって、き裂は第一の円弧部71において発生する。このき裂は隅肉部30の内部で進展するため、き裂の発生を発見しにくく、また、フランジ20の外面22に向かってき裂が進展しフランジの脆性破断を助長することになる。
以上、本発明の実施形態及び実施例について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態及び実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記実施形態では、柱に接続するH形鋼は溶接組立H形断面としたが、これに限られるものではなく、圧延H形鋼としても良い。圧延H形鋼の場合には、隅肉部30も母材により形成される。
1 梁(H形断面梁)
1a 軸端部
10 ウェブ
20 フランジ
30 隅肉部
60、60A、60B、60C スカラップ
60a 第一の開口端
60b 第二の開口端
61 第一の開口縁部
62 第二の開口縁部
63 第三の開口縁部
71 第一の円弧部
72 第二の円弧部
73 第一の直線部(直線部)
R1 第一の円弧部の曲率半径
R2 第二の円弧部の曲率半径
Hs スカラップの高さ寸法
100 梁端現場接合部
110 柱
200 H形断面部材の端部接続構造

Claims (7)

  1. H形断面梁の梁端現場接合部を形成するために、前記H形断面梁のウェブの端部に設けるスカラップであって、
    前記H形断面梁の下フランジ側に位置する第一の開口端と、
    前記第一の開口端と相反する側に位置する第二の開口端とを有し、
    前記第一の開口端から、前記ウェブの端部から離れる向きに延びる第一の開口縁部と、前記第二の開口端から、前記ウェブの端部から離れる向きに延びる第二の開口縁部と、
    前記第一の開口縁部と前記第二の開口縁部とを接続する第三の開口縁部とを有し、
    前記第一の開口縁部は、前記ウェブと前記下フランジとが交差する部分に設けられた隅肉部における前記ウェブ側の止端部と交差するように、円弧状に形成され、前記第一の開口端側の一端で、その接線が前記下フランジの内側の面と平行となる第一の円弧部を有し、
    前記第三の開口縁部は、前記第一の開口縁部と前記第二の開口縁部とを接続する円弧状に形成された第二の円弧部を有し、前記第一の円弧部の曲率半径が前記第二の円弧部の曲率半径より大きいことを特徴とするスカラップ。
  2. 前記第一の円弧部と前記第二の円弧部とは、前記第一の円弧部がなす円弧と前記第二の円弧部がなす円弧とが共通の接線となる部分において接続されている請求項1に記載のスカラップ。
  3. 前記第一の開口縁部は、前記第一の開口端を含み直近の前記下フランジにおける内側の面に平行に配された直線部を有し、前記第一の円弧部の前記第一の開口端側の一端が前記直線部と接続されている請求項1または請求項2に記載のスカラップ。
  4. 前記第一の円弧部の曲率半径が前記第二の円弧部の曲率半径の2.5倍以上である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスカラップ。
  5. 前記スカラップの前記下フランジ側から上フランジ側へ向かう方向の寸法が15mm以上である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のスカラップ。
  6. 前記スカラップをカッターによって切削して成形し、前記第二の円弧部の曲率半径が6mm以上である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のスカラップ。
  7. 前記請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のスカラップを用いて形成された梁端現場接合部。
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