JP7486011B2 - 溶融めっき鋼板 - Google Patents

溶融めっき鋼板 Download PDF

Info

Publication number
JP7486011B2
JP7486011B2 JP2024503837A JP2024503837A JP7486011B2 JP 7486011 B2 JP7486011 B2 JP 7486011B2 JP 2024503837 A JP2024503837 A JP 2024503837A JP 2024503837 A JP2024503837 A JP 2024503837A JP 7486011 B2 JP7486011 B2 JP 7486011B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hot
region
dip
steel sheet
phase
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2024503837A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2023238941A1 (ja
Inventor
哲也 鳥羽
保明 河村
順 中川
進太朗 上村
勇亮 小東
智仁 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Publication of JPWO2023238941A1 publication Critical patent/JPWO2023238941A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7486011B2 publication Critical patent/JP7486011B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C18/00Alloys based on zinc
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C18/00Alloys based on zinc
    • C22C18/04Alloys based on zinc with aluminium as the next major constituent
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C2/00Hot-dipping or immersion processes for applying the coating material in the molten state without affecting the shape; Apparatus therefor
    • C23C2/04Hot-dipping or immersion processes for applying the coating material in the molten state without affecting the shape; Apparatus therefor characterised by the coating material
    • C23C2/06Zinc or cadmium or alloys based thereon
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C2/00Hot-dipping or immersion processes for applying the coating material in the molten state without affecting the shape; Apparatus therefor
    • C23C2/14Removing excess of molten coatings; Controlling or regulating the coating thickness
    • C23C2/16Removing excess of molten coatings; Controlling or regulating the coating thickness using fluids under pressure, e.g. air knives
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C2/00Hot-dipping or immersion processes for applying the coating material in the molten state without affecting the shape; Apparatus therefor
    • C23C2/26After-treatment

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Coating With Molten Metal (AREA)

Description

本発明は、溶融めっき鋼板に関する。
本願は、2022年6月10日に、日本に出願された特願2022-094358号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
溶融めっき鋼板は、耐食性に優れており、その中でもZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板は、特に優れた耐食性を備えている。このような溶融めっき鋼板は、建材、家電、自動車分野等種々の製造業において広く使用されており、近年、その使用量が増加している。
ところで、溶融めっき鋼板の溶融めっき層の表面に、文字、デザイン画などを現すことを目的として、溶融めっき層に印刷や塗装などの工程を施すことにより、文字、デザイン画などを溶融めっき層の表面に現す場合がある。
しかし、溶融めっき層に印刷や塗装などの工程を行うと、文字やデザイン等を施すためのコストや時間が増大する問題がある。更に、印刷や塗装によって文字やデザイン等をめっき層の表面に現す場合は、需要者から高い支持を得ている金属光沢外観が失われるだけでなく、塗膜自体の経時劣化や塗膜の密着性の経時劣化の問題から、耐久性が劣り、時間とともに文字やデザイン等が消失してしまう恐れがある。また、インクをスタンプすることで文字やデザイン等をめっき層の表面に現す場合は、コストや時間は比較的抑えられるものの、インクによって、溶融めっき層の耐食性が低下する懸念がある。
下記特許文献に示されるように、Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板に対する様々な技術開発がなされているが、めっき層の表面に文字やデザイン等を現した場合にその耐久性を向上させる技術は知られていない。
Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板に関し、Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板にみられる梨地状のめっき外観をより美麗とすることを目的とする従来技術は存在する。
例えば、特許文献1は、キメが細かく、かつ平滑な光沢部が多い梨地状の外観を有するZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板、すなわち、単位面積当たりの白色部の個数が多く、そして、光沢部の面積の割合が大きいという良好な梨地状の外観を有するZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板が記載されている。また、特許文献1においては、好ましくない梨地の状態を、不定形な白色部と円形状の光沢部とが混在して表面に点在した表面外観を呈している状態であることが記載されている。
また、特許文献2には、めっき層の厚さ方向断面において、めっき層と地鉄との界面からめっき表層の間にAl晶が非存在である部分が、該断面の幅方向長さの10%~50%を占めることで、めっき外観を向上させたZn-Al-Mg系めっき鋼板が記載されている。
更に、特許文献3には、めっき鋼板表面の中心線平均粗さRaが0.5~1.5μmであり、PPI(1インチ(2.54cm)あたりに含まれる1.27μm以上の大きさのピークの数)が150~300であり、Pc(1cmあたりに含まれる0.5μm以上の大きさのピークの数)がPc≧PPI/2.54+10である成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板が記載されている。
更にまた、特許文献4は、Al/MgZn/Znの三元共晶組織を微細化させることで、全体的にめっき層の光沢度が増し、外観均一性が向上した高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板が記載されている。
しかしながら、めっき層の表面に文字等を現した場合に、その耐久性を向上させ、かつ、耐食性を低下させないようにする技術は、従来から知られていなかった。
特許第5043234号公報 特許第5141899号公報 特許第3600804号公報 国際公開第2013/002358号
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、めっき層の表面に文字やデザイン等を現すことができ、それらの耐久性に優れ、また、耐食性にも優れた溶融めっき鋼板を提供することを課題とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 鋼板と、前記鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、
前記溶融めっき層は、平均組成で、Al:5~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、
前記溶融めっき層に、パターン部と、非パターン部とがあり、
前記パターン部及び前記非パターン部は、それぞれ、下記の測定方法で得られる第1領域、第2領域のうちの1種または2種を含み、
前記パターン部における前記第1領域の面積率と、前記非パターン部における前記第1領域の面積率との差の絶対値が、30%以上であることを特徴とする、溶融めっき鋼板。
[測定方法]
前記溶融めっき層の厚みをtとして、前記溶融めっき層の表面から3t/4位置、t/2位置またはt/4位置のいずれかの位置において前記表面に平行な1~5mm四方の断面を露出させ、前記の各断面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、前記仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、〔Zn相〕および〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕の合計面積分率Aに対する〔Zn相〕の面積分率Bの比率(B/A(%))が20%以上になる領域を前記第1領域とし、比率(B/A(%))が20%未満となる領域を第2領域とする。
[2] 鋼板と、前記鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、
前記溶融めっき層は、平均組成で、Al:5~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、
さらに下記A群、B群からなる群から選択される1種または2種を含有し、
前記溶融めっき層に、パターン部と、非パターン部とがあり、
前記パターン部及び前記非パターン部は、それぞれ、下記の測定方法で得られる第1領域、第2領域のうちの1種または2種を含み、
前記パターン部における前記第1領域の面積率と、前記非パターン部における前記第1領域の面積率との差の絶対値が、30%以上であることを特徴とする、溶融めっき鋼板。
[A群]Si:0.0001~2質量%
[B群]Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~2質量%
[測定方法]
前記溶融めっき層の厚みをtとして、前記溶融めっき層の表面から3t/4位置、t/2位置またはt/4位置のいずれかの位置において前記表面に平行な1~5mm四方の断面を露出させ、前記の各断面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、前記仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、〔Zn相〕および〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕の合計面積分率Aに対する〔Zn相〕の面積分率Bの比率(B/A(%))が20%以上になる領域を前記第1領域とし、比率(B/A(%))が20%未満となる領域を第2領域とする。
[3] 前記パターン部が、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の溶融めっき鋼板。
[4] 前記溶融めっき層の付着量が前記鋼板両面合計で30~600g/mであることを特徴とする[1]~[3]の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
[5] 前記溶融めっき層が、質量%で、前記A群を含有する平均組成を有する[2]~[4]の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
[6] 前記溶融めっき層が、質量%で、前記B群を含有する平均組成を有する[2]~[5]の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
本発明によれば、溶融めっき層の表面に文字やデザイン等を現すことができ、それらの耐久性に優れ、また、耐食性にも優れた溶融めっき鋼板を提供できる。
図1は、本発明の実施形態であるZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板において、溶融めっき層のめっき組織を測定するための断面(露出面)を説明する断面模式図。 図2は、本発明の実施形態であるZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板において、溶融めっき層のめっき組織を測定するための露出面を説明する斜視図。 図3は、本発明の実施形態であるZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板の第1領域及び第2領域の模式図。 図4は、実施例の鋼板表面にZn粉を転写するために用いられた、格子形状を有する金属板の模式図。
本発明者らは、梨地状の外観を呈するZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板のめっき層を詳細に調査した。梨地状の外観は、金属光沢を示す微細な金属光沢部分と、白色を呈する微細な白色部分とが混在することによって現れる。このうち、金属光沢部分におけるめっき層の組織を調べたところ、めっき層表面における〔Zn相〕の面積分率が、白色部分に比べて少なくなっていることを見出した。他方、白色部分におけるめっき層の組織を調べたところ、〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕に対する〔Zn相〕の割合が金属光沢部分に比べて高くなっていることを見出した。
そこで、溶融めっき層において、金属光沢部分と白色部分の分布状態を任意に制御できるかどうか検討したところ、溶融めっき層の化学成分を調整するとともに、鋼板を溶融めっき浴に浸漬させる前に、鋼板表面に、清浄度が比較的低い領域を意図的な形状になるように配置した上で溶融めっきを行うことにより、溶融めっき層表面において金属光沢部分が比較的多く含まれる領域を、意図的に配置できることを見出し、本発明を完成させた。
以下、本発明の実施形態である溶融めっき鋼板について説明する。
本実施形態の溶融めっき鋼板は、図1~図3に示されるように、鋼板1と、鋼板1の表面に形成された溶融めっき層と2、を備え、溶融めっき層2は、平均組成で、Al:5~22質量%、Mg:1~10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、溶融めっき層2に、パターン部21と、非パターン部22とがあり、パターン部21及び非パターン部22は、それぞれ、下記の測定方法で得られる第1領域A1、第2領域A2のうちの1種または2種を含み、パターン部21における第1領域A1の面積率と、非パターン部22における第1領域A1の面積率との差の絶対値が、30%以上である溶融めっき鋼板である。
パターン部21における第1領域A1の面積率、及び非パターン部22における第1領域A1の面積率の測定方法は、次の通りである。溶融めっき層2の厚みをtとして、溶融めっき層2の表面から3t/4位置、t/2位置またはt/4位置のいずれかの位置において、溶融めっき層2の表面2aに平行な1~5mm四方の断面を露出させる。そして、図3に例示されるように、各断面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、〔Zn相〕および〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕の合計面積分率Aに対する〔Zn相〕の面積分率Bの比率(B/A(%))が20%以上になる領域を第1領域A1とし、比率(B/A(%))が20%未満となる領域を第2領域A2とする。
なお、図3に例示される測定用の露出面は、5mm四方の正方形である。当該露出面において、仮想格子線によって区画される領域の数は100である。パターン部が小さく、5mm四方の露出面をパターン部の内部に形成できない場合は、露出面のサイズを小さくしてもよい。この場合、複数の露出面を形成し、これにより、仮想格子線によって区画される領域の数の合計値を100とする。例えば露出面を1mm四方の正方形とした場合、1つの当該露出面において、仮想格子線によって区画される領域の数は4である。1mm四方の露出面を25箇所で形成すると、仮想格子線によって区画される領域の数の合計値が100となる。
なお、パターン部の個数は2以上であってもよい。この場合において、測定用の露出面は、複数のパターン部それぞれに形成してもよい。
パターン部が非常に狭く、仮想格子線によって区画される領域の数を100とすることができない場合は、仮想格子線の間隔を狭めてもよい。例えば、仮想格子線の間隔を0.2mm以上0.5mm未満の値に変更してもよい。仮想格子線の間隔を狭めることにより、非常に狭いパターン部の内部において、仮想格子線によって区画される領域(即ち測定点)の数を100とすることができる。
パターン部の内部に複数の露出面を形成する場合、これら露出面同士の距離は可能な限り小さくする。パターン部の内部に形成される複数の露出面が接していてもよい。非パターン部の内部に複数の露出面が形成される場合も、複数の露出面同士の距離は可能な限り小さくすることが好ましく、複数の露出面が接していてもよい。
また、パターン部21における第1領域A1の面積率、及び非パターン部22における第1領域A1の面積率を測定する際には、パターン部の内部に形成される露出面と、非パターン部の内部に形成される露出面との間の距離も、可能な限り小さくすることが好ましい。
本実施形態の溶融めっき鋼板では、溶融めっき層2の表面から3t/4位置、t/2位置またはt/4位置のいずれかの位置において1~5mm四方の断面を露出させ、当該断面に0.5mm間隔で仮想格子線を描いた場合に、仮想格子線によって区画される複数の領域が、第1領域A1または第2領域A2のいずれかに区分される。第1領域A1、第2領域A2のいずれに区分されるかは、〔Zn相〕および〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕の合計面積分率Aに対する〔Zn相〕の面積分率Bの比率(B/A(%))に応じて決定する。
第1領域A1は、比率(B/A(%))が20%以上になる領域とする。第1領域A1は比率(B/A(%))が高いため、溶融めっき層2において第1領域が多く含まれる箇所は、肉眼または顕微鏡下で観察した際に、白色もしくは白色に近い色に見える。一方、第2領域A2は、比率(B/A(%))が20%未満の領域とする。第2領域A2は、比率(B/A(%))が低いため、溶融めっき層において第2領域A2が多く含まれて第1領域A1が少なくなる箇所は、肉眼または顕微鏡下で観察した際に、金属光沢があるように見える。更に、第1領域A1と第2領域A2とが混在し、第1領域A1の面積率が30~70%である箇所は、外観が梨地状に見える。
このように、第1領域A1の面積率によって、溶融めっき層2の表面2aは、白色もしくは白色に近い色、金属光沢または梨地状に見える。ここで、溶融めっき層2の表面2aに、文字、図形、線、ドットなどが視認できるようにするためには、これらの文字等を構成するパターン部21と、それ以外の非パターン部22とが、識別できるようになればよい。そのためには、パターン部21における第1領域A1の面積割合と、非パターン部22における第1領域A1の面積割合とが、異なっていればよい。
具体的には、パターン部21における第1領域A1の面積率と、非パターン部22における第1領域A1の面積率との差が、絶対値で30%以上であるとよい。これにより、パターン部21と非パターン部22とが識別可能になる。なお、面積率の差を評価する際には、パターン部21及び非パターン部22の全域を評価する必要はない。図3に示されるように、パターン部21の内部に設けられる測定用の1~5mm四方の面(露出面)における第1領域A1の面積率を、パターン部21全体における第1領域A1の面積率とみなすことができる。同様に、非パターン部22の内部に設けられる測定用の1~5mm四方の面(露出面)における第1領域A1の面積率を、非パターン部22全体における第1領域A1の面積率とみなすことができる。
パターン部21の視認性を一層向上させる観点から、パターン部21における第1領域A1の面積率と、非パターン部22における第1領域A1の面積率との差の絶対値が40%以上、45%以上、又は50%以上であってもよい。パターン部21における第1領域A1の面積率と、非パターン部22における第1領域A1の面積率との差の絶対値の上限を設ける必要はないが、例えばパターン部21における第1領域A1の面積率と、非パターン部22における第1領域A1の面積率との差の絶対値を95%以下、90%以下、又は85%以下としてもよい。
例えば、パターン部21における第1領域A1の面積割合が75%である場合、パターン部21は白色若しくは白色に近い色に見える。また、非パターン部22における第1領域A1の面積割合が45%以下である場合、梨地状、あるいは金属光沢があるように見える。そして、パターン部21、非パターン部22における第1領域A1の面積率の差が30%以上の場合に、このような外観の違いにより、パターン部21と非パターン部22が識別可能になる。
また、パターン部21の第1領域A1の面積割合が65%程度であり、非パターン部22の第1領域A1の面積割合が35%程度である場合、パターン部21及び非パターン部22はともに梨地状に見えるが、パターン部21における第1領域A1の面積割合が大きいため、パターン部21は非パターン部22に対してより白い外観を呈する。そして、パターン部21、非パターン部22における第1領域A1の面積率の差が30%以上の場合に、このような外観の違いにより、パターン部21と非パターン部22が識別可能になる。
更に、パターン部21の第1領域A1が50%である場合、パターン部21は梨地状に見える。また、非パターン部22における第1領域A1の面積割合が20%以下である場合、金属光沢があるように見える。そして、パターン部21、非パターン部22における第1領域A1の面積率の差が30%以上の場合に、このような外観の違いにより、パターン部21と非パターン部22が識別可能になる。
このように、パターン部21における第1領域A1の面積率と非パターン部22における第1領域A1の面積率との差が絶対値で30%以上になると、パターン部21と非パターン部22の外観が異なるようになるため、パターン部21を明確に識別できるようになる。すなわち、めっき層2の表面2aの可視光像において、パターン部21及び非パターン部22の色相、明度、彩度等の差が大きくなるため、パターン部21と非パターン部22が識別可能になる。
一方、パターン部21における第1領域A1の面積率と非パターン部22における第1領域A1の面積率との差が絶対値で30%未満になると、パターン部21と非パターン部22の外観の差がなくなり、パターン部21を明確に識別できなくなる。すなわち、めっき層2の表面2aの可視光像において、パターン部21及び非パターン部22の色相、明度、彩度等の差が小さくなるため、パターン部21と非パターン部22が識別できなくなる。
以上のように、パターン部21及び非パターン部22における第1領域A1の存在割合の一例を示したが、パターン部21における第1領域A1の面積率と非パターン部22における第1領域A1の面積率との差が絶対値で30%以上であればよく、パターン部21及び非パターン部22のそれぞれにおける第1領域A1の存在割合を限定する必要はない。
溶融めっき層の下地となる鋼板は、材質に特に制限はない。詳細は後述するが、材質として、一般鋼などを特に制限はなく用いることができ、Alキルド鋼や一部の高合金鋼も適用することも可能であり、形状にも特に制限はない。鋼板に対して後述する溶融めっき法を適用することで、本実施形態に係る溶融めっき層が形成される。
次に、溶融めっき層の化学成分について説明する。
溶融めっき層は、平均組成で、Al:5~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物を含む。好ましくは、平均組成で、Al:5~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物からなる。
また、溶融めっき層は、下記A群、B群からなる群から選択される1種または2種を含有してもよい。
[A群]Si:0.0001~2質量%
[B群]Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~2質量%
Alの含有量は、平均組成で5~22質量%の範囲である。Alは、耐食性を確保するために含有させるとよい。溶融めっき層中のAlの含有量が5質量%以上であれば、耐食性を向上させる効果がより高まる。22質量%以下であれば、めっき層を安定して形成できる。22質量%を超えると耐食性を向上させる効果が飽和する。Alの含有量は、耐食性の観点から、より好ましくは6質量%以上、8質量%以上又は11質量%以上である。Alの含有量は、耐食性の観点から、より好ましくは20質量%以下、19質量%以下、又は17質量%以下である。
Mgの含有量は、平均組成で1.0~10質量%の範囲である。Mgは、耐食性を向上させるために含有させるとよい。溶融めっき層中のMgの含有量が1.0質量%以上であれば、耐食性を向上させる効果がより高まる。10質量%を超えるとめっき浴でのドロス発生が著しくなり、安定的に溶融めっき鋼板を製造するのが困難となる。Mgの含有量は、耐食性とドロス発生のバランスの観点から、好ましくは1.5質量%以上、2質量%以上、又は4質量%以上とする。Mgの含有量は、耐食性とドロス発生のバランスの観点から、好ましくは8質量%以下、7質量%以下、又は6質量%以下とする。
また、溶融めっき層は、Siを0.0001~2質量%の範囲で含有していてもよい。Siは、溶融めっき層の密着性を向上させる場合があるので、含有させてもよい。Siを0.0001質量%以上含有させることで密着性を向上させる効果が発現するため、Siを0.0001質量%以上含有させることが好ましい。一方、2質量%を超えて含有させてもめっき密着性を向上させる効果が飽和するため、Siの含有量は2質量%以下とする。Siの含有量は、めっき密着性の観点からは、好ましくは0.0100質量%以上、0.0300質量%以上、又は0.1000質量%以上である。Siの含有量は、1質量%以下、0.9質量%以下、又は0.8質量%としてもよい。
溶融めっき層中には、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cの1種又は2種以上を合計で0.0001~2質量%を含有していてもよい。これらの元素を含有することで、さらに耐食性を改善することができる。REMは、周期律表における原子番号57~71の希土類元素の1種または2種以上である。
溶融めっき層の化学成分の残部は、亜鉛及び不純物である。不純物には、亜鉛ほかの地金中に不可避的に含まれるもの、めっき浴中で、鋼が溶解することによって含まれるものがある。
なお、溶融めっき層の平均組成は、次のような方法で測定できる。まず、めっきを浸食しない塗膜剥離剤(例えば、三彩化工社製ネオリバーSP-751)で表層塗膜を除去した後に、インヒビター(例えば、スギムラ化学工業社製ヒビロン)入りの塩酸で溶融めっき層を溶解し、得られた溶液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析に供することで求めることができる。また、表層塗膜を有しない場合は、表層塗膜の除去作業を省略できる。
次に、溶融めっき層の組織について説明する。Al、Mg及びZnを含有する溶融めっき層は、〔Al相〕と、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とを含んでいる。〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔Al相〕が包含された形態を有している。更に、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中には、〔MgZn相〕や〔Zn相〕が含まれる。また、Siを添加した場合には、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔MgSi相〕が含まれていても良い。
ここで、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とは、Al相と、Zn相と金属間化合物MgZn相との三元共晶組織であり、この三元共晶組織を形成しているAl相は例えばAl-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当するものである。この高温でのAl″相は常温では通常は微細なAl相と微細なZn相に分離して現れる。また、該三元共晶組織中のZn相は少量のAlを固溶し、場合によってはさらに少量のMgを固溶したZn固溶体である。該三元共晶組織中のMgZn相は、Zn-Mgの二元系平衡状態図のZn:約84質量%の付近に存在する金属間化合物相である。状態図で見る限りそれぞれの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられるがその量は通常の分析では明確に区別できないため、この3つの相からなる三元共晶組織を本明細書では〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕と表す。
また、〔Al相〕とは、前記の三元共晶組織の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、これは例えばAl-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当するものである。
この高温でのAl″相はめっき浴のAlやMg濃度に応じて固溶するZn量やMg量が相違する。この高温でのAl″相は常温では通常は微細なAl相と微細なZn相に分離するが、常温で見られる島状の形状は高温でのAl″相の形骸を留めたものであると見てよい。状態図で見る限りこの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられるが通常の分析では明確に区別できないため、この高温でのAl″相に由来し且つ形状的にはAl″相の形骸を留めている相を本明細書では〔Al相〕と呼ぶ。この〔Al相〕は前記の三元共晶組織を形成しているAl相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。
また、〔Zn相〕とは、前記の三元共晶組織の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlさらには少量のMgを固溶していることもある。状態図で見る限りこの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。この〔Zn相〕は円相当直径で2.5μm以上となる領域であり、前記の三元共晶組織を形成しているZn相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。
また、〔MgZn相〕とは、前記の三元共晶組織の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlを固溶していることもある。状態図で見る限りこの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。この〔MgZn相〕は前記の三元共晶組織を形成しているMgZn相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。本発明のめっき層には、製造条件により〔MgZn相〕が含まれない場合も有るが、ほとんどの製造条件ではめっき層中に含まれる。
また、〔MgSi相〕とは、Siを添加した場合のめっき層の凝固組織中に明瞭な境界をもって島状に見える相である。状態図で見る限りZn、Al、その他の添加元素は固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。この〔MgSi相〕はめっき中では顕微鏡観察において明瞭に区別できる。
次に、溶融めっき層の表層におけるパターン部、非パターン部、第1領域及び第2領域について説明する。
本実施形態の溶融めっき層の表面には、パターン部と、非パターン部とが形成される。パターン部の美観を確保する観点から、パターン部は所定の形状となるように配置されることが好ましい。また、パターン部の視認性を確保する観点から、パターン部のサイズは大きいほど好ましい。例えば、パターン部が、人工的な形状を有することが好ましい。パターン部は、意図的な形状に配置されていることが好ましい。パターン部は、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていることが好ましい。例えば、溶融めっき層の表面には、パターン部からなる文字列、数字列、記号、マーク、線図、デザイン画あるいはこれらの組合せ等が現される。パターン部における直線部や曲線部はそれぞれ1mm以上の長さであることが好ましい。これらのような形状を示すことでパターン部は、意図的に形成されたと言える。パターン部における直線部や曲線部は、後述するような目視で認識できる程度の幅を有し、かつそれぞれ1mm以上の長さであることが好ましい。パターン部におけるドット部は円相当直径1mm以上10mm未満であることが好ましく、複数のドット部が規則正しく配列されることが更に好ましい。また、パターン部が、図形、数字、記号、模様若しくは文字である場合には、これらの形状が後述するような目視で認識できることが好ましい。このような寸法及び形状を示すことで更に意図的に形成されたと言える。また、非パターン部は、パターン部以外の領域である。パターン部の形状は、ドット抜けのように一部が欠けていても、全体として認識できれば、許容される。非パターン部はパターン部の境界を縁取るような形状であってもよい。
溶融めっき層表面に、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状が配置されている場合に、これらの領域をパターン部とし、それ以外の領域を非パターン部とすることができる。この形状は、後述する製造方法によって意図的若しくは人工的に形成された形状であり、自然に形成されたものではない。
パターン部と非パターン部の境界は、肉眼で把握することができる。パターン部と非パターン部の境界は、光学顕微鏡や拡大鏡などによる拡大像から把握してもよい。
パターン部は、肉眼、拡大鏡下または顕微鏡下でパターン部の存在を判別可能な程度の大きさに形成されるとよい。また、非パターン部は、溶融めっき層(溶融めっき層の表面)の大部分を占める領域である。
パターン部は、非パターン部内に配置されている。具体的には、パターン部は、非パターン部内において、直線部、曲線部、図形、ドット部、図形、数字、記号若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されている。パターン部の形状を調整することによって、溶融めっき層の表面に、直線部、曲線部、図形、ドット部、図形、数字、記号若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状が現される。例えば、溶融めっき層の表面には、パターン部からなる文字列、数字列、記号、マーク、線図、デザイン画あるいはこれらの組合せ等が現される。この形状は、後述する製造方法によって意図的若しくは人工的に形成された形状であり、自然に形成されたものではない。通常の溶融めっき層の外観を知る当業者であれば、人為的形状を有するパターン部と非パターン部とを容易に区別することができる。
なお、パターン部の視認性を向上させる観点から、パターン部が溶融めっき層の表面に占める面積率が、非パターン部よりも大幅に小さいことが好ましい。例えば、パターン部が溶融めっき層の表面に占める面積率が、30%以下、25%以下、20%以下、又は15%以下であることが好ましい。
このように、パターン部及び非パターン部は、溶融めっき層の表面に形成された領域であり、また、パターン部及び非パターン部には、それぞれ、第1領域、第2領域のうちの1種または2種が含まれる。
第1領域は、比率(B/A(%))が20%以上の領域であるため、溶融めっき層において第1領域が多い箇所は、白色もしくは白色に近い色に見える。一方、第2領域は、比率(B/A(%))が20%未満の領域であるため、溶融めっき層において第2領域が多い箇所は、金属光沢があるように見える。また、第1領域と第2領域がそれぞれ分散して集まり、第1領域の面積率が30~70%である箇所は、外観が梨地状に見える。
第1領域および第2領域は、次のように決定される。溶融めっき層の厚みをtとして、溶融めっき層の表面から3t/4位置、t/2位置またはt/4位置のいずれかの位置において、表面2aに平行でかつ、平面視において1~5mm四方の正方形状の露出面3、4、又は5が現れるように、溶融めっき層を切り欠く。これにより、溶融めっき層の表面に平行な1~5mm四方の露出面(断面)を形成する。各露出面に0.5mm間隔で仮想格子線を描く。仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、〔Zn相〕および〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕の合計面積分率Aに対する〔Zn相〕の面積分率Bの比率(B/A(%))が20%以上になる領域を第1領域とし、比率(B/A(%))が20%未満となる領域を第2領域とする。
以下、第1領域および第2領域の具体的な決定方法について説明する。
図1及び図2に示すように、鋼板1上に形成された溶融めっき層2の厚みをtとし、溶融めっき層2の表面2aから3t/4位置、t/2位置またはt/4位置のいずれかの位置において表面に平行な1~5mm四方の露出面3、4、又は5を形成する。なお、パターン部及び/又は非パターン部の内部に5mm四方の露出面が形成できない程度にパターン部及び/又は非パターン部が小さい場合は、露出面の形状を最小で1mm四方としてもよい。この場合、露出面の数を増大させることにより、測定用の領域の面積を確保する。
これらの露出面3、4、又は5を形成する際には、研削やアルゴンスパッタ等の手段により、溶融めっき層を削り取る。また、露出面は鏡面とすることが望ましく、例えば露出面の最大高さRzを0.2μm以下とすることが望ましい。観察対象とする露出面は、溶融めっき層表面から3t/4位置、t/2位置またはt/4位置のいずれの露出面であってもよい。好ましくはt/2位置の露出面を選択してもよい。t/2位置の露出面において求められたB/A比率は、他の位置においても同等の値をとる可能性が高い。
次いで、図3に示されるように、観察対象とする露出面に、0.5mm間隔で仮想格子線を描き、仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、比率(B/A(%))を測定する。
比率(B/A(%))が20%以上の領域が第1領域となり、比率(B/A(%))が20%未満の領域が第2領域となる。
比率(B/A(%))の測定は、次のようにして行う。走査型電子顕微鏡(SEM)の二次電子像により、領域毎にめっき組織を観察して、〔Zn相〕および〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕を特定する。各相および組織を特定する際は、SEMに付属するエネルギー分散型X線元素分析装置による元素分析を併用し、Zn、AlおよびMgの分布を確認しつつ特定する。そして、〔Zn相〕および〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕の合計面積分率Aに対する〔Zn相〕の面積分率Bの比率(B/A(%))を求める。〔Zn相〕は、円相当直径で2.5μm以上となる領域のものを〔Zn相〕として計測する。これにより、〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕中のZn相と〔Zn相〕とを区別する。
パターン部には、仮想格子線によって区画された複数の領域が含まれており、各領域は、第1領域、第2領域の何れかに分類される。また、非パターン部にも、仮想格子線によって区画された複数の領域が含まれており、各領域は、第1領域、第2領域のいずれかに分類される。すなわち、パターン部は、第1領域、第2領域のいずれかのみを含んでいてもよく、第1領域、第2領域の2種を含んでいてもよい。同様に、非パターン部は、第1領域、第2領域のいずれかのみを含んでいてもよく、第1領域、第2領域の2種を含んでいてもよい。
ここで、パターン部においては、第1領域及び第2領域のそれぞれの面積割合を求めることができる。そして、第1領域の面積分率が70%を超える場合は、パターン部が白色もしくは白色に近い色に見える。第1領域の面積分率が30%以上70%以下である場合は、パターン部が梨地状に見える。また、第1領域の面積分率が30%未満である場合、パターン部は金属光沢があるように見える。このように、パターン部の外観は、第1領域の面積分率に依存する。
一方、非パターン部においても、第1領域及び第2領域のそれぞれの面積割合を求めることができる。パターン部と同様、非パターン部の外観は、第1領域の面積分率に依存する。
そして、パターン部における第1領域の面積割合と、非パターン部における第1領域の面積割合との差が、絶対値で30%以上の場合に、パターン部と非パターン部とを識別できるようになる。面積割合の差が30%未満では、パターン部における第1領域の面積割合と、非パターン部における第1領域の面積割合との差が小さく、パターン部及び非パターン部の外観が似たような外観になり、パターン部を識別することが困難になる。面積割合の差は、大きければ大きいほどよく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。
パターン部及び非パターン部は、肉眼で識別可能であってもよく、拡大鏡下または顕微鏡下で目視で識別可能であってもよい。拡大鏡下または顕微鏡下で目視で識別可能とは、例えば、パターン部で構成される形状が50倍以下の視野で目視で識別可能であればよい。パターン部は人為的な所定の形状を有するので、50倍以下の視野であれば、パターン部と非パターン部は、その外観の違いにより、識別可能である。パターン部と非パターン部は、好ましくは20倍以下、さらに好ましくは10倍以下、より好ましくは5倍以下で識別可能である。
本実施形態に係る溶融めっき鋼板は、溶融めっき層の表面に化成処理皮膜層や塗膜層を有してもよい。ここで、化成処理皮膜層や塗膜層の種類は特に限定されず、公知の化成処理皮膜層や塗膜層を用いることができる。
以上、本発明の第一実施形態に係る溶融めっき鋼板について説明した。次に本発明の第二実施形態に係る溶融めっき鋼板について説明する。第二実施形態に係る溶融めっき鋼板は、鋼板と、鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、溶融めっき層は、平均組成で、Al:5~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、溶融めっき層の表面は、下記の測定方法で得られる第1領域、第2領域のうちの1種または2種を含み、1.0mm四方以上の領域である第1部分における第1領域の面積率と、第1部分に隣接する1.0mm四方以上の領域である第2部分における第1領域の面積率との差の絶対値が、30%以上である。
[測定方法]
溶融めっき層の厚みをtとして、溶融めっき層の表面から3t/4位置、t/2位置またはt/4位置のいずれかの位置において表面に平行な1~5mm四方の断面を露出させ、各断面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、〔Zn相〕および〔Al/MgZn2/Znの三元共晶組織〕の合計面積分率Aに対する〔Zn相〕の面積分率Bの比率(B/A(%))が20%以上になる領域を第1領域とし、比率(B/A(%))が20%未満となる領域を第2領域とする。
第二実施形態に係る溶融めっき鋼板の鋼板、及び溶融めっき層の成分は、第一実施形態に係る溶融めっき鋼板と同じである。
第二実施形態に係る溶融めっき鋼板においては、1.0mm四方以上の領域である第1部分における第1領域の面積率と、第1部分に隣接する1.0mm四方以上の領域である第2部分における第1領域の面積率との差の絶対値が、30%以上とされる。ここで、「1.0mm四方以上の領域」とは、1.0mm四方の正方形よりも大きい領域のことをいう。1.0mm四方の正方形の全体をその内部に包含可能な領域は、「1.0mm四方以上の領域」である。この特徴点によれば、第一部分及び第二部分を、肉眼によって明瞭に識別可能である。第一部分及び第二部分を任意の形状にすることにより、めっき層の表面に文字やデザイン等を現すことができる。
次に、本実施形態の溶融めっき鋼板の製造方法を説明する。
本実施形態の溶融めっき鋼板を溶融めっき法により製造するには、化学成分を調整した溶融めっき浴に鋼板を浸漬させることにより、溶融金属を鋼板表面に付着させる。次いで、鋼板をめっき浴から引き上げ、ガスワイピングにより付着量を制御した後に、溶融金属を凝固させる。凝固時には、組成にもよるが、最初に、〔Al相〕が形成され、その後、溶融金属の温度低下に伴い、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が形成される。また、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔MgZn相〕および〔Zn相〕が形成される。さらに、溶融めっき層中にSiが含有される場合は、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に〔MgSi相〕が形成される。
溶融めっきの凝固時に、粗大な〔Zn相〕が形成されると、溶融めっき層中の〔Al相〕や〔MgZn相〕の比率が相対的に増加し、これらの相がめっき表面へ露出するため、溶融めっき層表面の外観が白色に近い外観を呈することを本発明者らが知見した。〔Zn相〕の形成は、Znの核生成点の数に影響を受けるものと推測される。すなわち、Znの核生成点が少ない場合、最終凝固直前における液相中のZnは〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕中の微細なZn相としては晶出されず、粗大な〔Zn〕相として晶出することを本発明者らが知見するに至った。Znの核生成点を少なくする手段としては、原板である鋼板の表面清浄度を高め、Znの核生成点となりうる物質を極力低減させることが考えられる。
一方、Znの核生成点が多い場合では、最終凝固直前における液相中のZnは、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕中の微細なZn相として晶出し、粗大な〔Zn〕相としては晶出しにくくなり、溶融めっき層表面の外観が金属光沢の外観を呈するようになる。Znの核生成点を多くする手段としては、鋼板の表面清浄度を高めた後に、Znの核生成点となりうる物質を所定のパターンになるように配置することが考えられる。
以下、本実施形態の溶融めっき鋼板の製造方法をより詳細に説明する。本実施形態の溶融めっき鋼板は、鋼板表面の清浄度を高める処理を行い、次いで、清浄度が低い領域を所定のパターンになるように配置する。次いで鋼板を溶融めっき浴に浸漬させてから引き上げ、次いで冷却して溶融めっき層を凝固させることによって製造する。
具体的には、まず、熱間圧延鋼板を製造し、必要に応じて熱延板焼鈍を行う。酸洗後、冷間圧延を行い、冷延板とする。冷延板を脱脂、水洗した後、焼鈍(冷延板焼鈍)し、焼鈍後の冷延板を溶融めっき浴に浸漬させて溶融めっき層を形成する。ここで、冷間圧延から冷延板焼鈍する間において、表面清浄度を高めるために、鋼板に対してアルカリ電解洗浄を行い、純水で水洗後、不活性雰囲気の下で乾燥してから、冷延板焼鈍工程へと移行する。冷延板焼鈍は、アルカリ電解洗浄の終了時から10秒以内に実施する。アルカリ電解洗浄の終了時は、アルカリ電解洗浄の最後の純水によるスプレー水洗の抽出時とする。焼鈍条件は特に限定はない。
アルカリ電解洗浄に用いる洗浄液としては、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを含むアルカリ性の洗浄液が好ましい。アルカリ電解洗浄の手順としては、洗浄液中に鋼板を浸漬して浸漬洗浄した後、洗浄液中にて鋼板を電解洗浄する。電解洗浄は、交番電解洗浄が好ましい。次いで、純水を鋼板表面にスプレーすることで、付着した洗浄液を洗い流す。スプレー水洗は、鋼板の進行方向に沿って複数基のスプレーノズルを配置し、各ノズルから純水を噴射させてもよい。純水としては、電気抵抗率が1MΩ・cm以上の水がよい。
スプレー水洗の抽出後から焼鈍を行うまでの間、不活性雰囲気中にて乾燥を行うことによって鋼板表面に付着した水分を極力除去することが、空気中の微細な浮遊粒子の付着を抑制できる点で好ましい。
アルカリ電解洗浄によって鋼板表面に付着した有機系の汚れを除去し、更に純水による最終のスプレー水洗終了後から焼鈍までの間を不活性雰囲気中で乾燥し、その後に焼鈍を行うことで、空気中の微細な浮遊粒子が冷延板上に固着することを防止することができる。
次いで、冷延板焼鈍から溶融めっきに浸漬させるまでの間において、Znの核生成点を増加させるべく、焼鈍後の冷延板にZn粉を所定形状となるように付着させる。焼鈍後の冷延板へのZn粉の付着は、予めロールに所定形状となるようにZn粉を付着させておき、当該ロールを焼鈍後の冷延板が通過する際に転写させる方法としてもよい。
付着させたZn粉は溶融めっき中には完全溶解せず、めっきの最終凝固時にZnの核生成サイトとなる。一部のZn粉は固体のままめっき浴中に拡散する。冷延焼鈍前にZn粉を付着させると、焼鈍時にZnが鋼板と合金化してしまい、溶融めっき層の形成が阻害されるので好ましくない。また、溶融めっき浴への浸漬後にZn粉を付着させた場合、付着したZn粉によってかえってめっきの表面外観が荒れる原因となる。付着させるZn粉は、Znおよび不純物を含有するZn粉であればよい。Zn粉の平均粒径は例えば4~6μmの範囲であればよい。Zn粉の付着量は、例えば、1~5g/m程度がよい。平均粒径および付着量がこの範囲であれば、Zn粉をZnの核生成サイトとして機能させることができる。
次に、鋼板を、溶融めっき浴に浸漬させる。溶融めっき浴は、Al:5~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物を含む。更に、溶融めっき浴は、Si:0.0001~2質量%を含有してもよい。更にまた、溶融めっき浴は、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~2質量%含有してもよい。
溶融めっき法は、鋼板を溶融めっき浴に連続通板させる連続式溶融めっき法とする。
溶融めっき浴の温度は、組成によって異なるが、例えば、400~500℃の範囲が好ましい。溶融めっき浴の温度がこの範囲であれば、所望の溶融めっき層を形成できるためである。
また、溶融めっき層の付着量は、溶融めっき浴から引き上げられた鋼板に対してガスワイピング等の手段で調整すればよい。溶融めっき層の付着量は、鋼板両面の合計の付着量が30~600g/mの範囲になるように調整することが好ましい。付着量が30g/m未満の場合、溶融めっき鋼板の耐食性が低下するので好ましくない。付着量が600g/m超の場合、鋼板に付着した溶融金属の垂れが発生して、溶融めっき層の表面を平滑にすることができなくなるため好ましくない。
溶融めっき層の付着量を調整した後、鋼板を冷却する。冷却条件は特に限定する必要はない。鋼板に付着した溶融金属の冷却は、溶融めっき浴から鋼板を引き上げた後に開始される。溶融めっき浴の組成にもよるが、たとえば、430℃付近から〔Al相〕が晶出し始める。次いで、370℃付近から〔MgZn相〕が晶出し始め、340℃付近から〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が晶出し、更に〔Zn相〕が晶出して、凝固が完了する。
溶融めっき前の鋼板表面は、全面にわたって清浄度が高められた後に、Znの核生成点となるZn粉付着領域が配置される。Zn粉付着領域には、Znの核生成点が多く含まれるため、共晶組織としてのZnまたはMgZnが晶出されて〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が多く形成され、他方、液相中のZnが減少して、粗大な〔Zn相〕の形成が抑制される。これにより、Zn粉付着領域では、〔Zn相〕および〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕の合計面積分率Aに対する〔Zn相〕の面積分率Bの比率(B/A(%))が低くなる。一方、Zn粉が付着されず清浄度が比較的高いままの領域では、比率(B/A(%))が高くなる。
本実施形態の溶融めっき鋼板は、第1領域及び第2領域のうち、パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差の絶対値を30%以上とすることで、パターン部と非パターン部とを識別できるようになる。形成されたパターン部及び非パターン部は、印刷や塗装によって形成されたものではないため、耐久性が高くなっている。また、パターン部及び非パターン部が印刷や塗装によって形成されたものではないため、溶融めっき層の耐食性への影響もない。更に、パターン部及び非パターン部は、溶融めっき層の表面を研削等によって形成したものではない。従って、パターン部における溶融めっき層の厚みは、非パターン部における溶融めっき層の厚みに比べて、耐食性が劣化するほどのめっき層の厚みの減少はみられない。よって、本実施形態の溶融めっき鋼板は、耐食性に優れたものとなる。
本実施形態によれば、パターン部の耐久性が高く、耐食性等の好適なめっき特性を有する溶融めっき鋼板を提供できる。特に本実施形態では、清浄度を高めた焼鈍後の冷延板に対して所定の形状とした範囲にZn粉を付着させたロールを押し付けて、ロールの表面形状を焼鈍後の冷延板に転写することで、溶融めっき後に、溶融めっき層の表面をパターン部または非パターン部の範囲を意図的若しくは人工的な形状にすることができ、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるようにパターン部を配置できる。これにより、溶融めっき層の表面に、印刷、塗装または研削を行うことなく様々な意匠、商標、その他の識別マークを表すことができ、鋼板の出所の識別性やデザイン性等を高めることができる。また、パターン部によって、工程管理や在庫管理などに必要な情報や需要者が求める任意の情報を、溶融めっき鋼板に付与することもできる。
これにより、溶融めっき鋼板の生産性の向上にも寄与することができる。
次に、本発明の実施例を説明する。冷間圧延後の鋼板をアルカリ電解洗浄を行い、超純水で洗浄した後、不活性雰囲気下で10秒以内に焼鈍工程へと移行した。アルカリ電解洗浄に用いる洗浄液としては、水酸化ナトリウムを含むアルカリ性の洗浄液とした。アルカリ電解洗浄の手順としては、洗浄液中に鋼板を浸漬して浸漬洗浄した後、洗浄液中にて鋼板を電解洗浄した。電解洗浄は、交番電解洗浄とした。次いで、超純水にてスプレー水洗することで、付着した洗浄液を洗い流した。超純水としては、電気抵抗率が1MΩ・cm以上の水とした。その後、不活性雰囲気中にて乾燥してから、冷延板焼鈍を行った。焼鈍条件は、均熱温度800℃、均熱時間は1分とした。
焼鈍後、図4に示されるような格子状パターンが転写された形状をもつ金属板に、平均粒径4~6μmの範囲のZn粉を付着させた。格子状パターンを構成する線の太さは10mmとした。線の中心軸の間隔は50mmとした。そして、この金属板を焼鈍後の鋼板に押し付けて鋼板表面にZn粉を転写することにより、Znの核生成サイトを局所的(50mm間隔の格子状)に形成した。Zn粉の付着量は1~5g/mの範囲とした。その後、鋼板を溶融めっき浴に浸漬してから引き上げた。その後、付着量をガスワイピングによって調整し、さらに冷却を行った。このようにして、表1A~表3Bに示すNo.1~No.51の溶融めっき鋼板を製造した。
ただし、一部の鋼板には、Zn粉を付着させなかった。Zn粉を付着させなかった鋼板に対して、No.1~48と同様の条件で溶融めっき浴によるめっき処理をして、溶融めっき鋼板を製造した。この鋼板の溶融めっき層の表面に、インクジェット法により、50mm間隔の格子状パターンを印刷した。このようにして、No.52のZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板を製造した。
また、Zn粉を付着させなかった鋼板に対して、No.1~48と同様の条件で溶融めっき浴によるめっき処理をして、溶融めっき鋼板を製造した。その後、溶融めっき層の表面を研削して、50mm間隔の格子状パターンを形成した。このようにして、No.53の溶融めっき鋼板を製造した。
得られた溶融めっき鋼板について、パターン部及び非パターン部に含まれる第1領域、第2領域の面積率を求めた。まず、パターン部及び非パターン部の境界は、溶融めっき層の表面を肉眼で観察することにより特定した。肉眼での境界の特定が難しい場合は、拡大鏡や光学顕微鏡の拡大像を利用した。境界の判別が難しい例では、ロール表面の正方形パターンに対応する箇所がパターン部であるとして第1領域、第2領域の面積率を評価した。
次に、パターン部及び非パターン部に含まれる各領域の面積率は、次に説明する測定方法により求めた。まず、鋼板上に形成された溶融めっき層の厚みをtとし、溶融めっき層の表面からt/2位置において表面に平行な5mm四方の露出面を形成した。この際、パターン部の内部に完全に包含される5mm四方の露出面(即ち、全域がパターン部に該当する露出面)、及び非パターン部の内部に完全に包含される5mm四方の露出面(即ち、全域が非パターン部に該当する露出面)を形成した。この露出面を形成する際には、研削により、溶融めっき層を削り取った。また、露出面の最大高さRzを0.2μm以下とした。
次いで、観察対象とする露出面に、まず、溶融めっき層の表面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、仮想格子線によって区画される複数の領域(0.5mm四方)においてそれぞれ、比率(B/A(%))を測定した。
比率(B/A(%))の測定は、次のようにして行った。走査型電子顕微鏡(SEM)の二次電子像により、領域毎にめっき組織を観察して、〔Zn相〕および〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕を特定した。各相および組織を特定する際は、SEMに付属するエネルギー分散型X線元素分析装置による元素分析を併用し、Zn、AlおよびMgの分布を確認しつつ特定した。すなわち、Zn、AlおよびMgのうち、Znが主として検出される領域をZn相とし、Alが主として検出される領域をAl相とし、ZnとMgが主として検出される領域をMgZn相とした。検出された各相の分布から、上述の方法に従って、〔Al相〕、〔MgZn相〕および〔Zn相〕と、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕に分類した。そして、〔Zn相〕および〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕の合計面積分率Aに対する〔Zn相〕の面積分率Bの比率(B/A(%))を、仮想格子線によって区画される複数の領域(0.5mm四方)それぞれにおいて求める。〔Zn相〕は、円相当直径で2.5μm以上となる領域のものを〔Zn相〕として計測した。これにより、〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕中のZn相と〔Zn相〕とを区別した。
比率(B/A(%))が20%以上の領域を第1領域とし、比率(B/A(%))が20%未満の領域を第2領域とした。
そして、パターン部における第1領域の面積率及び非パターン部における第1領域の面積率を求めた。また、パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差を求めた。
[識別性]
正方形状のパターン部を施した試験板の、製造した直後の初期状態のものと、6ヶ月間屋外暴露した経時状態のものを対象に、下記の判定基準に基づいて目視評価した。初期状態、経時状態とも、A、B及びCを合格とした。
A:5m先からでもパターン部を視認できる。
B:5m先からはパターン部を視認できないが、3m先からの視認性は高い。
C:3m先からはパターン部を視認できないが、1m先からの視認性は高い。
D:1m先からパターン部を視認できない。
[耐食性]
試験板を150×70mmに切断し、JASO-M609に準拠した腐食促進試験CCTを30サイクル試験した後、錆発生状況を調査し、下記の判定基準に基づいて評価した。A、B、及びCを合格とした。
A:錆発生がなく、パターン部と非パターン部ともに美麗な意匠外観を維持している。
B:錆発生はないが、パターン部と非パターン部にごくわずかな意匠外観変化が認められる。
C:意匠外観がやや損なわれているが、パターン部と非パターン部が目視で区別できる。
D:パターン部と非パターン部の外観品位が著しく低下しており、目視で区別できない。
表に示すように、No.1~No.45の本発明例のZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板は、溶融めっき層の化学成分が本発明の範囲であり、アルカリ電解洗浄、超純水によるスプレー水洗、乾燥、焼鈍およびZn粉の付着を行ってから溶融めっきを実施したため、溶融めっき層に、パターン部と非パターン部とが形成され、パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差の絶対値が30%以上になった。これにより、識別性及び耐食性の両方に優れていた。
No.46の溶融めっき鋼板は、溶融めっき層のAl含有量が少なかったため、パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差の絶対値が30%未満になった。これにより、識別性及び耐食性の両方が劣位となった。
No.47の溶融めっき鋼板は、溶融めっき層のAl含有量が過剰であったため、6ヶ月間の屋外暴露によってパターン部が薄くなり、識別性が劣位となった。
No.48の溶融めっき鋼板は、溶融めっき層のMg含有量が少なかったため、6ヶ月間の屋外暴露によってパターン部が薄くなり、識別性が劣位になり、また、耐食性も低下した。
No.49の溶融めっき鋼板は、溶融めっき層のMg含有量が過剰であったため、識別性および耐食性が劣位になった。
No.50の溶融めっき鋼板は、溶融めっき層の成分は適切であったが、Zn粉を付着させなかった。そのため、No.50の溶融めっき鋼板は、パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差の絶対値が30%未満になった。これにより、識別性および耐食性が劣位になった。
No.51の溶融めっき鋼板は、溶融めっき層の成分が適切であり、また、溶融めっき処理の前に鋼板表面にZn粉を付着させた。ただしNo.51の溶融めっき鋼板は、Znを付着させる前の鋼板の表面の洗浄が不十分であった。そのため、No.51の溶融めっき鋼板は、パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差の絶対値が30%未満になった。これにより、識別性が劣位となった。
インクジェット法で正方形状のパターン部を印刷したNo.52は、6ヶ月間の屋外暴露によってパターン部が薄くなり、識別性が低下した。
また、研削によって正方形状のパターンを形成したNo.53は、研削した箇所のめっき層の厚みが低下し、研削箇所での耐食性が低下した。
Figure 0007486011000001
Figure 0007486011000002
Figure 0007486011000003
Figure 0007486011000004
Figure 0007486011000005
Figure 0007486011000006
1…鋼板
2…溶融めっき層
2a…溶融めっき層の表面
21…パターン部
22…非パターン部
3…t/4位置における断面
4…t/2位置における断面
5…3t/4位置における断面
A1…第1領域
A2…第2領域

Claims (7)

  1. 鋼板と、前記鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、
    前記溶融めっき層は、平均組成で、Al:5~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、
    前記溶融めっき層に、パターン部と、非パターン部とがあり、
    前記パターン部及び前記非パターン部は、それぞれ、下記の測定方法で得られる第1領域、第2領域のうちの1種または2種を含み、
    前記パターン部における前記第1領域の面積率と、前記非パターン部における前記第1領域の面積率との差の絶対値が、30%以上であることを特徴とする、溶融めっき鋼板。
    [測定方法]
    前記溶融めっき層の厚みをtとして、前記溶融めっき層の表面から3t/4位置、t/2位置またはt/4位置のいずれかの位置において前記表面に平行な1~5mm四方の断面を露出させ、前記の各断面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、前記仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、〔Zn相〕および〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕の合計面積分率Aに対する〔Zn相〕の面積分率Bの比率(B/A(%))が20%以上になる領域を前記第1領域とし、比率(B/A(%))が20%未満となる領域を第2領域とする。
  2. 鋼板と、前記鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、
    前記溶融めっき層は、平均組成で、Al:5~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、
    さらに下記A群、B群からなる群から選択される1種または2種を含有し、
    前記溶融めっき層に、パターン部と、非パターン部とがあり、
    前記パターン部及び前記非パターン部は、それぞれ、下記の測定方法で得られる第1領域、第2領域のうちの1種または2種を含み、
    前記パターン部における前記第1領域の面積率と、前記非パターン部における前記第1領域の面積率との差の絶対値が、30%以上であることを特徴とする、溶融めっき鋼板。
    [A群]Si:0.0001~2質量%
    [B群]Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~2質量%
    [測定方法]
    前記溶融めっき層の厚みをtとして、前記溶融めっき層の表面から3t/4位置、t/2位置またはt/4位置のいずれかの位置において前記表面に平行な1~5mm四方の断面を露出させ、前記の各断面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、前記仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、〔Zn相〕および〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕の合計面積分率Aに対する〔Zn相〕の面積分率Bの比率(B/A(%))が20%以上になる領域を前記第1領域とし、比率(B/A(%))が20%未満となる領域を第2領域とする。
  3. 前記パターン部が、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶融めっき鋼板。
  4. 前記溶融めっき層の付着量が鋼板両面合計で30~600g/mであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶融めっき鋼板。
  5. 前記溶融めっき層が、質量%で、前記A群を含有する平均組成を有する請求項2に記載の溶融めっき鋼板。
  6. 前記溶融めっき層が、質量%で、前記B群を含有する平均組成を有する請求項2に記載の溶融めっき鋼板。
  7. 前記溶融めっき層の前記表面からt/4位置において前記表面に平行な1~5mm四方の前記断面を露出させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶融めっき鋼板。
JP2024503837A 2022-06-10 2023-06-09 溶融めっき鋼板 Active JP7486011B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022094358 2022-06-10
JP2022094358 2022-06-10
PCT/JP2023/021579 WO2023238941A1 (ja) 2022-06-10 2023-06-09 溶融めっき鋼板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2023238941A1 JPWO2023238941A1 (ja) 2023-12-14
JP7486011B2 true JP7486011B2 (ja) 2024-05-17

Family

ID=89118456

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2024503837A Active JP7486011B2 (ja) 2022-06-10 2023-06-09 溶融めっき鋼板

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JP7486011B2 (ja)
TW (1) TWI840251B (ja)
WO (1) WO2023238941A1 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002241962A (ja) 2001-02-13 2002-08-28 Sumitomo Metal Ind Ltd 溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板とその製造方法
WO2018169085A1 (ja) 2017-03-17 2018-09-20 新日鐵住金株式会社 めっき鋼板
CN109897990A (zh) 2019-04-28 2019-06-18 攀钢集团攀枝花钢铁研究院有限公司 热浸镀锌铝镁合金镀层钢板及其制备方法
JP2021508779A (ja) 2017-12-26 2021-03-11 ポスコPosco 耐食性及び表面平滑性に優れた亜鉛合金めっき鋼材及びその製造方法
WO2021106259A1 (ja) 2019-11-29 2021-06-03 日本製鉄株式会社 溶融めっき鋼板

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3357471B2 (ja) * 1994-08-22 2002-12-16 川崎製鉄株式会社 耐食性に優れたZn−Mg−Al系溶融めっき鋼材およびその製造方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002241962A (ja) 2001-02-13 2002-08-28 Sumitomo Metal Ind Ltd 溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板とその製造方法
WO2018169085A1 (ja) 2017-03-17 2018-09-20 新日鐵住金株式会社 めっき鋼板
JP2021508779A (ja) 2017-12-26 2021-03-11 ポスコPosco 耐食性及び表面平滑性に優れた亜鉛合金めっき鋼材及びその製造方法
CN109897990A (zh) 2019-04-28 2019-06-18 攀钢集团攀枝花钢铁研究院有限公司 热浸镀锌铝镁合金镀层钢板及其制备方法
WO2021106259A1 (ja) 2019-11-29 2021-06-03 日本製鉄株式会社 溶融めっき鋼板

Also Published As

Publication number Publication date
TWI840251B (zh) 2024-04-21
TW202405205A (zh) 2024-02-01
WO2023238941A1 (ja) 2023-12-14
JPWO2023238941A1 (ja) 2023-12-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6648871B1 (ja) Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板及びその製造方法
JP7328543B2 (ja) 溶融めっき鋼板
JP7381865B2 (ja) Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板
JP7381864B2 (ja) Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板
JP7328542B2 (ja) 溶融めっき鋼板
CN111094613B (zh) 热浸镀网纹钢板及其制造方法
JP7486011B2 (ja) 溶融めっき鋼板
KR102658299B1 (ko) Zn-Al-Mg계 용융 도금 강판
JP7328541B2 (ja) 溶融めっき鋼板
JP7339531B2 (ja) 溶融めっき鋼板
KR102676570B1 (ko) 용융 도금 강판
JP7410448B1 (ja) 溶融めっき鋼板
JP7440819B1 (ja) 溶融めっき鋼板
JP2022124269A (ja) 溶融めっき鋼板
WO2023238940A1 (ja) Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板
JP7415194B2 (ja) 溶融めっき鋼板
WO2023238934A1 (ja) Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240122

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20240122

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240305

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240326

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20240402

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20240415

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7486011

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150