JP7410448B1 - 溶融めっき鋼板 - Google Patents

溶融めっき鋼板 Download PDF

Info

Publication number
JP7410448B1
JP7410448B1 JP2023561141A JP2023561141A JP7410448B1 JP 7410448 B1 JP7410448 B1 JP 7410448B1 JP 2023561141 A JP2023561141 A JP 2023561141A JP 2023561141 A JP2023561141 A JP 2023561141A JP 7410448 B1 JP7410448 B1 JP 7410448B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hot
dip
plating layer
layer
steel sheet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2023561141A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2023238938A1 (ja
Inventor
哲也 鳥羽
保明 河村
順 中川
進太朗 上村
智仁 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Publication of JPWO2023238938A1 publication Critical patent/JPWO2023238938A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7410448B1 publication Critical patent/JP7410448B1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C2/00Hot-dipping or immersion processes for applying the coating material in the molten state without affecting the shape; Apparatus therefor
    • C23C2/04Hot-dipping or immersion processes for applying the coating material in the molten state without affecting the shape; Apparatus therefor characterised by the coating material
    • C23C2/06Zinc or cadmium or alloys based thereon
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C2/00Hot-dipping or immersion processes for applying the coating material in the molten state without affecting the shape; Apparatus therefor
    • C23C2/14Removing excess of molten coatings; Controlling or regulating the coating thickness
    • C23C2/16Removing excess of molten coatings; Controlling or regulating the coating thickness using fluids under pressure, e.g. air knives
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C2/00Hot-dipping or immersion processes for applying the coating material in the molten state without affecting the shape; Apparatus therefor
    • C23C2/26After-treatment
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C2/00Hot-dipping or immersion processes for applying the coating material in the molten state without affecting the shape; Apparatus therefor
    • C23C2/26After-treatment
    • C23C2/28Thermal after-treatment, e.g. treatment in oil bath

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Oil, Petroleum & Natural Gas (AREA)
  • Thermal Sciences (AREA)
  • Coating With Molten Metal (AREA)

Abstract

この溶融めっき鋼板は、鋼板の表面に形成された溶融めっき層を備え、溶融めっき層は、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、溶融めっき層に、パターン部と、非パターン部とが形成され、パターン部における鋼板と溶融めっき層との界面に、元素Mを含有する元素濃化領域と、FeおよびAlを含有する界面合金層と、が存在し、パターン部に存在する溶融めっき層と元素濃化領域とに含まれる元素Mの平均濃度が0.0010~2質量%であり、元素濃化領域には、パターン部に存在する溶融めっき層に対して元素Mが2倍以上に濃化するか、または、元素Mが偏在している。

Description

本発明は、溶融めっき鋼板に関する。
本願は、2022年6月10日に、日本に出願された特願2022-094362号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
溶融亜鉛めっき鋼板に比べて高い耐食性を有するZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板は、建材、家電、自動車分野等種々の製造業において広く使用されており、近年、その使用量が増加している。
ところで、溶融めっき鋼板の溶融めっき層の表面に、文字、デザイン画などを現すことを目的として、溶融めっき層に印刷や塗装などの工程を施すことにより、文字、デザイン画などを溶融めっき層の表面に現す場合がある。
しかし、溶融めっき層に印刷や塗装などの工程を行うと、文字やデザイン等を施すためのコストや時間が増大する問題がある。更に、印刷や塗装によって文字やデザイン等をめっき層の表面に現す場合は、需要者から高い支持を得ている金属光沢外観が失われるだけでなく、塗膜自体の経時劣化や塗膜の密着性の経時劣化の問題から、耐久性が劣り、時間とともに文字やデザイン等が消失してしまう恐れがある。また、インクをスタンプすることで文字やデザイン等をめっき層の表面に現す場合は、コストや時間は比較的抑えられるものの、インクによって溶融めっき層の耐食性が低下する懸念がある。更に、溶融めっき層の研削によって意匠等を現す場合は、意匠等の耐久性は優れるものの、研削箇所の溶融めっき層の厚みが大幅に減少することから耐食性低下が必然であり、めっき特性の低下が懸念される。
下記特許文献に示されるように、Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板に対する様々な技術開発がなされているが、めっき層の表面に文字やデザイン等を現した場合にその耐久性を向上させる技術は知られていない。
Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板に関し、Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板にみられる梨地状のめっき外観をより美麗とすることを目的とする従来技術は存在する。
例えば、特許文献1は、キメが細かく、かつ平滑な光沢部が多い梨地状の外観を有するZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板、すなわち、単位面積当たりの白色部の個数が多く、そして、光沢部の面積の割合が大きいという良好な梨地状の外観を有するZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板が記載されている。また、特許文献1においては、好ましくない梨地の状態を、不定形な白色部と円形状の光沢部とが混在して表面に点在した表面外観を呈している状態であることが記載されている。
また、特許文献2には、めっき層の厚さ方向断面において、めっき層と地鉄との界面からめっき表層の間にAl晶が非存在である部分が、該断面の幅方向長さの10%~50%を占めることで、めっき外観を向上させたZn-Al-Mg系めっき鋼板が記載されている。
更に、特許文献3には、めっき鋼板表面の中心線平均粗さRaが0.5~1.5μmであり、PPI(1インチ(2.54cm)あたりに含まれる1.27μm以上の大きさのピークの数)が150~300であり、Pc(1cmあたりに含まれる0.5μm以上の大きさのピークの数)がPc≧PPI/2.54+10である成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板が記載されている。
更にまた、特許文献4は、Al/MgZn/Znの三元共晶組織を微細化させることで、全体的にめっき層の光沢度が増し、外観均一性が向上した高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板が記載されている。
しかしながら、めっき層の表面に文字等を現した場合に、その耐久性を向上させ、かつ、耐食性を低下させないようにする技術は、従来から知られていなかった。
特許第5043234号公報 特許第5141899号公報 特許第3600804号公報 国際公開第2013/002358号
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、溶融めっき層の表面に文字やデザイン等を現すことができ、それらの耐久性および耐食性に優れ、更に、文字やデザインが現された部分における溶融めっき層の密着性に優れた溶融めっき鋼板を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 鋼板と、前記鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、
前記溶融めっき層は、平均組成で、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、
前記溶融めっき層に、パターン部と、非パターン部とがあり、
前記パターン部における前記鋼板と前記溶融めっき層との界面に、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、Ni、Ti、Zr、Mo、W、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上の元素Mを含有する元素濃化領域と、FeおよびAlを含有する界面合金層と、が存在し、
前記パターン部に存在する溶融めっき層と前記元素濃化領域とに含まれる前記元素Mの平均濃度が0.0010~2質量%であり、
前記元素濃化領域には、前記パターン部に存在する溶融めっき層に対して前記元素Mが2倍以上に濃化するか、または、前記元素Mが偏在している、溶融めっき鋼板。
[2] 前記非パターン部の前記鋼板と前記溶融めっき層との界面に、FeおよびAlを含む界面合金層がある、[1]に記載の溶融めっき鋼板。
[3] 前記パターン部の前記界面における前記元素Mの濃度が、前記非パターン部の前記界面における前記元素Mの濃度の1.5倍以上である、[1]または[2]に記載の溶融めっき鋼板。
[4] 前記パターン部が、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていることを特徴とする[1]乃至[3]の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
[5] 前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Si:0.0001~2質量%を含有することを特徴とする[1]乃至[4]の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
[6] 前記パターン部に形成される前記界面合金層に、更にSiが含有される、[5]に記載の溶融めっき鋼板。
[7] 前記非パターン部に形成される前記界面合金層に、更にSiが含有される、[5]または[6]に記載の溶融めっき鋼板。
[8] 前記元素濃化領域を除く前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~1質量%含有することを特徴とする[1]乃至[7]の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
[9] 前記溶融めっき層の付着量が鋼板両面合計で30~600g/mであることを特徴とする[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の溶融めっき鋼板。
本発明によれば、溶融めっき層の表面に文字やデザイン等を現すことができ、それらの耐久性および耐食性に優れ、更に、文字やデザインが現された部分における溶融めっき層の密着性に優れた溶融めっき鋼板を提供できる。
本発明の実施形態である溶融めっき鋼板のパターン部及び非パターン部を説明する断面模式図。
本発明の実施形態である溶融めっき鋼板について説明する。
本実施形態の溶融めっき鋼板は、鋼板と、鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備える。
溶融めっき層は、平均組成で、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含む。
溶融めっき層には、パターン部と、非パターン部とが形成されている。
パターン部の鋼板と溶融めっき層との界面には、元素濃化領域と界面合金層とがある。
非パターン部の鋼板と溶融めっき層との界面には、界面合金層がある。
パターン部は、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されている。
パターン部は、意図的に形成されたものである。
溶融めっき層の下地となる鋼板は、材質に特に制限はない。詳細は後述するが、材質として、一般鋼などを特に制限はなく用いることができ、Alキルド鋼や一部の高合金鋼も適用することも可能であり、形状にも特に制限はない。鋼板に対して後述する溶融めっき法を適用することで、本実施形態に係る溶融めっき層が形成される。
次に、溶融めっき層の化学成分について説明する。
溶融めっき層は、平均組成で、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物を含む。更に好ましくは、平均組成で、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物からなる。また、溶融めっき層は、平均組成で、Si:0.0001~2質量%を含有してもよい。更に、溶融めっき層は、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~1質量%含有していてもよい。
Alの含有量は、平均組成で4~22質量%の範囲である。Alは、耐食性を確保するために含有させるとよい。溶融めっき層中のAlの含有量が4質量%以上であれば、耐食性を向上させる効果がより高まる。22質量%を超えると耐食性を向上させる効果が飽和する。耐食性の観点から、下限値は5質量%が好ましく、より好ましくは6質量%である。上限値は18質量%が好ましく、より好ましくは16質量%である。
Mgの含有量は、平均組成で1.0~10質量%の範囲である。Mgは、耐食性を向上させるために含有させるとよい。溶融めっき層中のMgの含有量が1.0質量%以上であれば、耐食性を向上させる効果がより高まる。しかし、Mgが10質量%を超えるとめっき浴でのドロス発生が著しくなり、安定的に溶融めっき鋼板を製造するのが困難となるので、Mgの含有量は10質量%以下とする。耐食性とドロス発生のバランスの観点から、Mgの含有量の下限値は1.5質量%が好ましく、より好ましくは2.0質量%である。上限値は6.0質量%が好ましく、より好ましくは5.0質量%である。
溶融めっき層には、平均組成で0.0001~2質量%のSiを含有してもよい。Siは、溶融めっき層の密着性を向上させるのに有効な元素である。Siを溶融めっき層に0.0001質量%以上含有させることで密着性を向上させる効果が発現するため、Siを0.0001質量%以上含有させることが好ましい。一方、2質量%を超えて含有させてもめっき密着性を向上させる効果が飽和するため、溶融めっき層にSiを含有させる場合であっても、Siの含有量は2質量%以下とする。めっき密着性の観点からは、溶融めっき層におけるSiの含有量の下限値は0.0010としてもよく、0.0100質量%としてもよい。上限値は1.0質量%としてもよく、0.8質量%としてもよい。
溶融めっき層中には、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cの1種又は2種以上を合計で0.0001~1質量%を含有していてもよい。これらの元素を含有することで、溶融めっき層の耐食性を更に改善することができる。REMは、周期律表における原子番号57~71の希土類元素の1種または2種以上である。これらの元素は、溶融めっき浴に添加されることによって溶融めっき層に含有される場合と、凝固核から拡散することによって溶融めっき層に含有される場合とがあるが、本実施形態では、元素濃化領域を除くめっき層において、上記の元素が合計で0.0001~1質量%の範囲であればよい。
溶融めっき層の化学成分の残部は、亜鉛及び不純物である。不純物には、亜鉛ほかの地金中に不可避的に含まれるもの、めっき浴中で、鋼が溶解することによって含まれるものがある。
なお、溶融めっき層の平均組成は、次のような方法で測定できる。まず、めっきを浸食しない塗膜剥離剤(例えば、三彩化工社製ネオリバーSP-751)で表層塗膜を除去した後に、インヒビター(例えば、スギムラ化学工業社製ヒビロン)入りの塩酸で溶融めっき層を溶解し、得られた溶液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析に供することで求めることができる。また、表層塗膜を有しない場合は、表層塗膜の除去作業を省略できる。
次に、溶融めっき層の組織について説明する。本実施形態の溶融めっき層の組織は、例えば、以下のような組織を有していてもよい。これにより、溶融めっき層の表面の外観が梨地状の外観となり、美観性に優れたものとなる。なお、溶融めっき層の組織は、上記の化学組成を有するめっきであれば得られるものであるので、本発明において溶融めっき層の組織を限定する必要はない。
Al、Mg及びZnを含有する溶融めっき層は、〔Al相〕と、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とを含んでいる。具体的には、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔Al相〕が包含された形態を有している。更に、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔MgZn相〕や〔Zn相〕が含まれていてもよい。また、Siを含有させた場合には、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔MgSi相〕が含まれていてもよい。
〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕
〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とは、Al相と、Zn相と金属間化合物MgZn相との三元共晶組織であり、この三元共晶組織を形成しているAl相は例えばAl-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当する。
この高温でのAl″相は、常温では通常は微細なAl相と微細なZn相とに分離して現れる。該三元共晶組織中のZn相は少量のAlを固溶し、場合によってはさらに少量のMgを固溶したZn固溶体である。該三元共晶組織中のMgZn相は、Zn-Mgの二元系平衡状態図のZn:約84質量%の付近に存在する金属間化合物相である。
状態図で見る限りそれぞれの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。しかしながら、その量は通常の分析では明確に区別できないため、この3つの相からなる三元共晶組織を本明細書では〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕と表す。
〔Al相〕
〔Al相〕とは、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、これは例えばAl-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当する。この高温でのAl″相は、めっき浴のAlやMg濃度に応じて、固溶するZn量やMg量が相違する。この高温でのAl″相は、常温では通常は微細なAl相と微細なZn相とに分離するが、常温で見られる島状の形状は高温でのAl″相の形状に起因すると考えられる。
状態図で見る限りこの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。しかしながら、通常の分析では明確に区別できないため、この高温でのAl″相に由来し且つ形状的にはAl″相の形状に起因する相を本明細書では〔Al相〕と呼ぶ。
〔Al相〕は〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を形成しているAl相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。
〔Zn相〕
〔Zn相〕とは、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlや少量のMgを固溶していることがある。状態図で見る限り、この相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。
〔Zn相〕は、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を形成しているZn相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。本実施形態に係る溶融めっき層には、製造条件により〔Zn相〕が含まれる場合が有るが、〔Zn相〕に起因する耐食性への影響はほとんど見られなかった。そのため、溶融めっき層に〔Zn相〕が含まれても、特に問題は無い。
〔MgZn相〕
〔MgZn相〕とは、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlを固溶していることがある。状態図で見る限り、この相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。
〔MgZn相〕と〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を形成しているMgZn相とは、顕微鏡観察において明瞭に区別できる。本実施形態に係る溶融めっき層には、製造条件により〔MgZn相〕が含まれない場合も有るが、ほとんどの製造条件では溶融めっき層中に含まれる。
〔MgSi相〕
〔MgSi相〕とは、Siを添加しためっき層の凝固組織中に、明瞭な境界を持って島状に見える相である。状態図で見る限り、〔MgSi相〕にはZn、Al、その他の添加元素は固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。〔MgSi相〕は、溶融めっき層中では顕微鏡観察において明瞭に他の相と区別できる。
本実施形態の溶融めっき層は、鋼板がめっき浴に浸漬された後に引き上げられ、その後、鋼板表面に付着した溶融金属が凝固することにより形成される。このとき、最初に、〔Al相〕が形成され、その後、溶融金属の温度低下に伴い、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が形成される。溶融めっき層の化学成分(つまり、めっき浴の化学成分)によっては、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔MgSi相〕、〔MgZn相〕または〔Zn相〕が形成される場合もある。
次に、溶融めっき層のパターン部及び非パターン部について説明する。
本実施形態の溶融めっき層の表面には、所定の形状となるように配置されたパターン部と、非パターン部とが形成されている。パターン部の美観を確保する観点から、パターン部は所定の形状となるように配置されることが好ましい 。また、パターン部の視認性を確保する観点から、パターン部のサイズは大きいほど好ましい。例えば、パターン部が、人工的な形状を有することが好ましい。パターン部は、意図的な形状に配置されていることが好ましい。パターン部は、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていることが好ましい。例えば、溶融めっき層の表面には、パターン部からなる文字列、数字列、記号、マーク、線図、デザイン画あるいはこれらの組合せ等が現される。パターン部における直線部や曲線部はそれぞれ1mm以上の長さであることが好ましい。これらのような形状を示すことでパターン部は、意図的に形成されたと言える。パターン部における直線部や曲線部は、後述するような目視で認識できる程度の幅を有し、かつそれぞれ1mm以上の長さであることが好ましい。パターン部におけるドット部は円相当直径1mm以上10mm未満であることが好ましく、複数のドット部は、規則正しく配列されることが更に好ましい。また、パターン部が、図形、数字、記号、若しくは文字である場合には、これらの形状が後述するような目視で認識できることが好ましい。このような寸法及び形状を示すことで更に意図的に形成されたと言える。また、非パターン部は、パターン部以外の領域である。また、パターン部の形状は、ドット抜けのように一部が欠けていても、全体として認識できれば許容される。また、非パターン部は、パターン部の境界を縁取るような形状であってもよい。
溶融めっき層表面に、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状が配置されている場合に、これらの領域をパターン部とし、それ以外の領域を非パターン部とすることができる。この形状は、後述する製造方法によって意図的若しくは人工的に形成された形状であり、自然に形成されたものではない。通常の溶融めっき層の外観を知る当業者であれば、人為的形状を有するパターン部と非パターン部とを容易に区別することができる。
パターン部は、肉眼による目視、あるいは拡大鏡または顕微鏡を用いて目視でパターン部の存在を判別可能な程度の大きさに形成されるとよい。また、非パターン部は、溶融めっき層(溶融めっき層の表面)の大部分を占める領域であり、パターン部は、非パターン部内において所定の形状に配置されている。具体的には、パターン部は、非パターン部内おいて、直線部、曲線部、図形、ドット部、図形、数字、記号、若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されている。パターン部の形状を意図的に調整することによって、溶融めっき層の表面に、直線部、曲線部、図形、ドット部、図形、数字、記号、若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状が現される。例えば、溶融めっき層の表面には、パターン部からなる文字列、数字列、記号、マーク、線図、デザイン画あるいはこれらの組合せ等が現される。この形状は、後述する製造方法によって意図的若しくは人工的に形成された形状であり、自然に形成されたものではない。通常の溶融めっき層の外観を知る当業者であれば、人為的形状を有するパターン部と非パターン部とを容易に区別することができる。特に、少なくとも一辺1mm(このサイズは1mmより小さくても、大きくてもよい)の正方形を内包可能なサイズであり、且つ人為的形状を有する領域は、パターン部として容易に特定することができる。
なお、パターン部の視認性を向上させる観点から、パターン部が溶融めっき層の表面に占める面積率が、非パターン部よりも大幅に小さいことが好ましい。例えば、パターン部が溶融めっき層の表面に占める面積率が、30%以下、25%以下、20%以下、又は15%以下であることが好ましい。
パターン部は、その表面の金属光沢が高い領域である。また、非パターン部は、その表面の金属光沢が低く、白色若しくは灰色を示す領域であって、Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板にみられる梨肌外観を示す領域である。このため、パターン部と非パターン部は、肉眼で識別可能である。
さらには、パターン部と非パターン部は、顕微鏡下で識別可能であってもよい。具体的には、パターン部で構成される形状は50倍以下の視野で識別可能であればよい。50倍以下の視野であれば、パターン部と非パターン部は、その表面状態の違いにより、識別可能である。
パターン部と非パターン部は、好ましくは20倍以下、さらに好ましくは10倍以下、より好ましくは5倍以下で識別可能である。
パターン部と非パターン部は、下記(a)、(b)、(c)のいずれかをさらに満たしてもよい。
(a)パターン部は、溶融めっき層の表面における〔Al相〕の露出割合が30面積%以下の領域であり、非パターン部は、溶融めっき層の表面における〔Al相〕の露出割合が30面積%超の領域である。
(b)パターン部は、算術平均面粗さSaが1.0μm以下の領域であり、非パターン部は、算術平均面粗さSaが1.0μm超の領域である。
(c)鋼板表面の法線方向に対して入射角度0°~90°未満の範囲の入射光に対する、法線方向へのパターン部の反射光および法線方向への非パターン部の反射光の関係が、下記式(1)および式(2)を満足する。
|IPH-IBH|/|IPM-IBM|<1.0 …(1)
|IPL-IBL|/|IPM-IBM|<1.0 …(2)
但し、式(1)~(2)において、IPH:入射角度0°~35°未満の入射光に対する、法線方向へのパターン部の反射強度、IBH:入射角度0°~35°未満の入射光に対する、法線方向への非パターン部の反射強度、IPM:入射角度35°~80°の入射光に対する、法線方向へのパターン部の反射強度、IBM:入射角度35°~80°の入射光に対する、法線方向への非パターン部の反射強度、IPL:入射角度80°超~90°未満の入射光に対する、法線方向へのパターン部の反射強度、IBL:入射角度80°超~90°未満の入射光に対する、法線方向への非パターン部の反射強度、である。
溶融めっき層には、少なくとも〔Al相〕及び〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が存在するが、パターン部では〔Al相〕が溶融めっき層の厚み方向の鋼板側に偏在し、一方、厚み方向の表面側では、〔Al相〕が比較的少なく、〔Al相〕以外の組織または相が多く存在する。このため、パターン部では、溶融めっき相の表面における〔Al相〕の露出割合が30面積%以下になる。
また、パターン部の表面には、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が比較的多く存在するが、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕は溶融めっき層の凝固時に比較的平坦な表面を形成するようになるため、パターン部の算術平均面粗さSaが1.0μm以下の範囲になる。
このようにパターン部では、〔Al相〕の露出割合が30面積%以下であるか、または、算術平均面粗さSaが1.0μm以下と比較的小さいため、金属光沢を呈すると推測される。
一方、溶融めっき層には、少なくとも〔Al相〕及び〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が存在するが、非パターン部では〔Al相〕が溶融めっき層の厚み方向の鋼板側に偏在することなく、厚み方向全体に比較的広く分布する。このため、非パターン部では、溶融めっき相の表面における〔Al相〕の露出割合が30面積%超になる。
また、このように、非パターン部では、第一領域に比べて〔Al相〕の露出面積が大きい。〔Al相〕は、溶融めっき層の凝固時の初期に形成する相であり、デンドライト状に晶出する。デンドライト状に晶出した〔Al相〕が溶融めっき層の表面に比較的多く存在するため、非パターン部の算術平均面粗さSaが1.0μm超の範囲になる。
このように、非パターン部では、〔Al相〕の露出割合が30面積%超であるか、または、算術平均面粗さSaが1.0μm超と比較的大きいため、非パターン部に入射した光が拡散反射し、白色乃至灰色を呈するようになると推測される。
〔Al相〕の露出割合は、次のような方法で測定する。まず、溶融めっき層の表面を、100倍の走査型電子顕微鏡で撮影し、走査型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線元素分析装置(EDS)で元素分布を測定する面分析を行う。例えば、パターン部を撮影した1mm視野の画像を5枚、非パターン部を撮影した1mm視野の画像を5枚それぞれ用意する。それぞれの画像に対して、市販の画像解析ソフトを用いて溶融めっき層表面に露出した〔Al相〕の面積を測定する。〔Al相〕は、面分析におけるAl濃化領域と、反射電子像による〔Al相〕の形態観察とを併用することで求めることができる。〔Al相〕の存在形態は、デンドライト状に存在している場合が多い。パターン部及び非パターン部のそれぞれにおいて、5枚の画像における〔Al相〕の露出面積の平均値を求める。そして、〔Al相〕の露出面積の平均値を観察視野の全面積で除することにより、観察視野における〔Al相〕の平均露出面積率(%)をパターン部と非パターン部とのそれぞれで求める。このようにして求めた〔Al相〕の平均露出面積率(%)を〔Al相〕の露出割合とする。なお、例えば撮影した視野を1mm視野よりも小さいサイズにして、評価してもよい。1mmよりも小さい視野の場合は、その合計の面積が5mmであればよい。
算術平均面粗さSaは、次の方法で測定する。3Dレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製)を用いて、20倍の標準レンズを装着した状態で、測定間隔50μmで高さZを測定する。測定点数は縦方向10点×横10点とする100点とすることが好ましい。測定点数を100点とし、得られた高さZ100点を高さZ1~高さZ100とした場合は、下記の式を用いてSaを算出する。Zaveは高さZ100点の平均とする。Sa=1/100×Σ[x=1→100](|高さZx-Zave|)
溶融めっき層の凝固時に生成する〔Al相〕は、通常は溶融めっき層の厚み方向全体に晶出する。しかし、予め鋼板表面に凝固核となる物質を配置すると、凝固核が配置された領域では、鋼板表面に付着した溶融金属が凝固する際に、鋼板表面の凝固核を核にして、多数の〔Al相〕が晶出する。生成した〔Al相〕は、比較的鋼板に近い側に形成する。また、凝固核が存在する領域では、〔Al相〕が比較的高密度に生成するため、〔Al相〕自体が粗大化せず、微細なままとなる。このため、凝固核が配置された領域では〔Al相〕が溶融めっき層の表面側まで成長せず、〔Al相〕の露出割合が小さくなる。
このように、鋼板表面において凝固核が存在する領域が、溶融めっき層の上述したパターン部になりやすくなり、凝固核が存在しない領域が、溶融めっき層の非パターン部になりにくくなる。また、パターン部は上述のようなメカニズムで形成されるため、パターン部の母材鋼板と溶融めっき層との界面に、凝固核に由来する元素濃化領域が存在する。より具体的には、パターン部の鋼板と溶融めっき層との界面に、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、Ni、C、Ti、Zr、Mo、W、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上の元素Mを含有する元素濃化領域が存在する。
元素濃化領域には、パターン部に存在する溶融めっき層に対して元素Mが2倍以上に濃化するか、または、元素Mが偏在している領域である。ここで、元素Mが偏在しているとは、元素濃化領域に凝固核に由来する元素Mが存在し、元素濃化領域以外のパターン部からは元素Mが検出されない状態をいう。
溶融めっき層の形成プロセスにおいて、溶融めっき層に凝固核の一部が拡散する場合がある。このような拡散が起きた場合、凝固核を構成する元素Mが溶融めっき層にも含まれる。この場合、溶融めっき層に含まれる元素Mに対して、元素濃化領域に含まれる元素Mは、2倍以上の濃度を有するものとなる。
一方、溶融めっき層の形成プロセスにおいて、溶融めっき層に凝固核がほとんど拡散しない場合もある。この場合、凝固核を構成する元素Mは溶融めっき層に含まれず、元素濃化領域にのみに含まれるようになる。すなわち、元素濃化領域は、パターン部の溶融めっき層に対して元素Mが偏在した領域になる。
溶融めっき層に含まれる元素Mに対して、元素濃化領域に含まれる元素Mが2倍以上の濃度を有するものとされる。元素濃化領域に含まれる元素Mの濃度がパターン部の溶融めっき層に対して2倍未満になると、凝固核の機能が発揮されず、パターン部を形成することが困難になる。
パターン部の溶融めっき層および元素濃化領域に含まれる元素Mの平均濃度は、0.0010~2質量%である。平均濃度が0.0010質量%未満では、凝固核の機能が発揮されず、パターン部を形成することが困難になる。一方、平均濃度が2質量%を超えると、パターン部の形性能は十分だが、凝固核の過剰な存在によってパターン部における溶融めっき層と鋼板との密着性が低下し、パターン部における溶融めっき層が剥離するおそれがある。よって、パターン部の溶融めっき層および元素濃化領域に含まれる元素Mの平均濃度は、0.0010~2質量%の範囲がよい。好ましい下限値は0.1質量%であり、好ましい上限値は1.00質量%である。
一方、非パターン部は、凝固核が存在しない領域であるため、非パターン部の鋼板と溶融めっき層との界面には、上記の元素Mはほとんど存在しないか(すなわち検出限界以下であるか)、存在したとしてもごく微量である。よって、パターン部の界面における元素Mの濃度、すなわち、元素濃化領域における元素Mの濃度は、非パターン部の界面における元素Mの濃度の少なくとも1.5倍以上になる。好ましくは倍以上、より好ましくは倍以上である。また、非パターン部の鋼板と溶融めっき層との界面において、元素Mが検出限界以下の場合は、元素Mの濃度の倍率は算出不可となる。
パターン部および非パターン部における鋼板と溶融めっき層との界面における上述の元素の存在及び濃度比を確認するには、溶融めっき鋼板の板厚方向の断面を露出させ、断面に現れた溶融めっき層と鋼板との界面を電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)により、元素分布を測定する面分析を行うことで確認することができる。また、後述する界面合金層の存在についても、同様の方法によって、界面合金層の存在を確認することができる。界面合金層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)の反射電子像を観察することで確認することができる。
以上のように、鋼板を溶融めっき浴に浸漬する前に、鋼板表面に、直線部、曲線部、図形、数字、記号及び文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状で凝固核を配置することにより、溶融めっき層にこれらの形状を有するパターン部を形成することができる。
次に、界面合金層について説明する。本実施形態の溶融めっき鋼板には、溶融めっき層と鋼板との間に界面合金層が存在する。界面合金層は、パターン部の形成領域および非パターン部の形成領域の両方に存在する。パターン部における溶融めっき層と鋼板との界面には、元素濃化領域と界面合金層とが存在する。本実施形態の溶融めっき鋼板には、元素濃化領域を有するパターン部にも界面合金層が形成されることで、パターン部における溶融めっき層の密着性が、非パターン部における溶融めっき層の密着性と同等になる。これにより、溶融めっき層のパターン部が剥離するおそれがなく、溶融めっき鋼板の耐食性を溶融めっき層の全面に渡って向上する。
界面合金層には、少なくともFeおよびAlが含有される。また、溶融めっき層にSiが含有される場合は、界面合金層には、少なくともFe、SiおよびAlが含有される。
界面合金層は、母材鋼板表面(具体的には、母材鋼板と溶融めっき層との間)に形成されており、組織としてAlFe相が主相の層である。一般に、界面合金層は、地鉄(鋼板)およびめっき浴の相互の原子拡散によって形成する。製法として溶融めっき法を用いた場合、Alを含有する溶融めっき層には、FeおよびAlを含む界面合金層が形成され易い。めっき浴中に一定濃度以上のAlが含有されることから、AlFe相が最も多く形成する。しかし、原子拡散には時間がかかり、また、地鉄に近い部分では、Fe濃度が高くなる部分もある。そのため、界面合金層は、部分的には、AlFe相、AlFe相などが少量含まれる場合もある。また、めっき浴中にZnも一定濃度含まれることから、Al-Fe系合金相にはZnも少量含有される。
溶融めっき層中にSiが含有される場合は、界面合金層中にSiが取り込まれ易く、Al-Fe系合金相に固溶するか、Al-Fe-Si金属間化合物相が形成されることがある。Al-Fe-Si系金属間化合物相の一例として、α、β、q1,q2相等が存在する。そのため、界面合金層は、これらAl-Fe-Si系金属間化合物相等が検出されることがある。
本実施形態においては、非パターン部の形成予定領域の鋼板表面に凝固核が配置されないため、非パターン部においては、地鉄(母材鋼板)およびめっき浴の相互の原子拡散が進みやすく、界面合金層が容易に形成される。一方、パターン部の形成予定領域の鋼板表面には凝固核が配置されるため、パターン部においては、地鉄(母材鋼板)およびめっき浴の相互の原子拡散が進まず、界面合金層が全く形成されないか、あるいは、形成されたとしてもその厚みが検出されない程度の非常に薄いものとなる。このため、本実施形態では、特にパターン部において界面合金層の成長を促進させるために、溶融めっき工程後に再加熱処理を行う必要がある。
界面合金層の厚みは、パターン部および非パターン部のそれぞれにおいて、10~500nmの範囲とすることが好ましく、10~100nmの範囲とすることがより好ましい。これにより、パターン部および非パターン部の密着性をより高めることができる。
図1には、パターン部1及び非パターン部2の断面模式図を示す。非パターン部2には、鋼板3とめっき層4の間に界面合金層5が存在する。パターン部1には、鋼板3とめっき層4の間に界面合金層5および濃化領域6が存在する。パターン部1においては、界面合金層5の中に元素濃化領域6が固溶することなく独立した状態で存在していると考えられる。しかしながら、それぞれが微細な構造を有しているために、EPMA等の断面分析によっても判別が困難である。EPMA等による断面の元素マッピングでは、界面合金層5と濃化領域6とが同一箇所に存在しているかのような元素マッピング像が得られる。
本実施形態に係る溶融めっき鋼板は、溶融めっき層の表面に化成処理皮膜層や塗膜層を有してもよい。ここで、化成処理皮膜層や塗膜層の種類は特に限定されず、公知の化成処理皮膜層や塗膜層を用いることができる。
化成処理被膜の一例として、樹脂及び界面活性剤のうちの少なくともいずれかで被覆されたフタロシアニン顔料を含有する化成処理被膜を例示できる。このような化成処理被膜が設けられた溶融めっき層は、フタロシアニン顔料によって着色されることによりめっき層表面に好ましい意匠性を付与でき、また、パターン部の視認性がより高められる。更には、化成処理被膜の耐食性や耐候性等を向上できる。
次に、本実施形態のZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板の製造方法を説明する。
まず、熱間圧延鋼板を製造し、必要に応じて熱延板焼鈍を行う。酸洗後、冷間圧延を行い、冷延板とする。冷延板を脱脂、水洗した後、焼鈍(冷延板焼鈍)し、焼鈍後の冷延板を溶融めっき浴に浸漬させて溶融めっき層を形成する。
ここで、冷間圧延から溶融めっき浴に浸漬させるまでの間において、鋼板表面に凝固核を付着させて、直線部、曲線部、図形、数字、記号及び文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状のパターン部を形成する。凝固核の付着は、冷間圧延と冷延板焼鈍との間、冷延板焼鈍と溶融めっき浴への浸漬との間、または、冷延板焼鈍の最終焼鈍の直前のいずれかの段階で実施する。凝固核は溶液分散の状態で付着させても、蒸着で付着させても良い。
凝固核を形成する成分(以下、凝固核形成成分と呼称する場合がある)としては、めっき層が凝固する過程において、凝固核を形成する成分であれば特に限定されない。凝固核形成成分としては、例えば、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、Ni、Ti、Zr、Mo、W、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上、もしくは上述の元素のいずれか1種又は2種以上を含む化合物等が挙げられる。上記成分は、1または2以上を組み合わせて用いてもよい。鋼板表面に凝固核を付着させる方法の例としては、凝固核形成成分そのものの他、合金箔や樹脂、界面活性剤、インキ、油等に凝固核形成成分を含有させて鋼板表面に付着させる方法が挙げられる。これらの凝固核形成成分は、固体そのものであってもよいし、水や有機溶剤に溶解または分散していてもよい。或いは、顔料または染料としてインキに含まれていてもよい。
凝固核を鋼板表面に付着させる方法として、例えば、凝固核形成成分を含む材料を鋼板表面に転写する、塗布する、吹き付ける等の方法を例示できる。例えば、ホットスタンプやコールドスタンプ等を用いた箔転写法、各種の版を用いた印刷法(グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、シルク印刷等)、インクジェット法、インクリボン等を用いた熱転写法など、一般的な印刷法を用いることができる。
合金箔を用いた転写方法の一例として、凝固核形成成分を含有する合金箔を鋼板表面に接着させつつ、加熱されたシリコンロールを合金箔に押し付けて鋼板表面に転写させる方法が挙げられる。
版を用いた印刷方法の一例として、印刷パターンを周面に形成したゴムロールまたはゴムスタンプに、凝固核となる成分を含有するインキまたは界面活性剤を付着させつつ、ゴムロールまたはゴムスタンプを鋼板表面に押し付けてインキまたは界面活性剤を転写させる方法が挙げられる。この方法であれば、連続して通板する鋼板に対して、効率よく凝固核形成成分を鋼板表面に付着させることができる。
凝固核の付着量は、例えば、50mg/m以上5000mg/m以下の範囲が好ましい。付着量が50mg/m未満の場合には、第一領域が肉眼で識別可能な程度に形成されなくなる可能性があるため好ましくない。一方、付着量が5000mg/m超の場合には、溶融めっき層の密着性が低下するおそれがあるため好ましくない。
次に、パターン部を表面に形成した鋼板を、溶融めっき浴に浸漬させる。溶融めっき浴は、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物を含むことが好ましい。また、溶融めっき浴は、Si:0.0001~2.0質量%を含有してもよい。更に、溶融めっき浴は、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~1質量%含有してもよい。
なお、溶融めっき層の組成は、次のような方法で測定できる。まず、めっきを浸食しない塗膜剥離剤(例えば、三彩化工社製ネオリバーSP-751)で表層塗膜を除去した後に、インヒビター(例えば、スギムラ化学工業社製ヒビロン)入りの塩酸で溶融めっき層を溶解し、得られた溶液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析に供することで求めることができる。
溶融めっき浴の温度は、400~500℃の範囲が好ましい。溶融めっき浴の温度がこの範囲であれば、所望の溶融めっき層を形成できるためである。
また、溶融めっき層の付着量は、溶融めっき浴から引き上げられた鋼板に対してガスワイピング等の手段で調整すればよい。溶融めっき層の付着量は、鋼板両面の合計の付着量が30~600g/mの範囲になるように調整することが好ましい。付着量が30g/m未満の場合、Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板の耐食性が低下するので好ましくない。付着量が600g/m超の場合、鋼板に付着した溶融金属の垂れが発生して、溶融めっき層の表面を平滑にすることができなくなるため好ましくない。
溶融めっき層の付着量を調整した後、再加熱処理を行い、その後に鋼板を冷却する。再加熱処理は、パターン部の界面合金層が10nm以上、非パターン部の界面合金層が500nm以下となる条件で行う。具体的な再加熱処理の条件は、めっき組成によって異なるが、例えばワイピング直後における溶融状態のめっき層の表面温度Twに対して、(Tw+15)℃~(Tw+50)℃の温度範囲内に1~10秒間滞留するようにするとよい。再加熱処理後の冷却条件は、例えば、3℃/秒以上30℃/秒未満、好ましくは3~25℃/秒の冷却速度で300~340℃の範囲になるまで冷却する条件とするとよい。なお、再加熱温度が低すぎるか、再加熱時間が短いと、パターン部に十分な厚みの界面合金層を形成できず、パターン部における溶融めっき層の密着性が向上しない。また、再加熱温度が高過ぎるか、再加熱時間が長すぎると、パターン部において溶融めっき層へのFeの拡散が過剰になって溶融めっき層の合金化が進み、パターン部による意匠の発現が起こりにくくなる。
鋼板に付着した溶融金属の冷却は、溶融めっき浴から鋼板を引き上げた後に開始される。溶融めっき浴の組成にもよるが、例えば、430℃付近から〔Al相〕が晶出し始める。次いで、370℃付近から〔MgZn〕が晶出し始め、340℃付近から〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が晶出し、凝固が完了する。
このとき、鋼板表面に凝固核が付着した領域では、凝固核を核として〔Al相〕が晶出し始め、〔Al相〕は鋼板と溶融金属との界面付近に多く晶出する。凝固核によって〔Al相〕が比較的高密度に生成するため、〔Al相〕自体が粗大化せず、微細なままとなる。このため、〔Al相〕が溶融めっき層の表面側まで成長せず、〔Al相〕の露出割合が比較的少なくなる。このようにして、鋼板表面において凝固核が存在する領域が、溶融めっき層のパターン部になると推測される。
一方、鋼板表面に凝固核が付着していない領域では、〔Al相〕が溶融金属の厚み方向全体に晶出する。つまり、〔Al相〕の晶出する密度が比較的低いため、〔Al相〕の晶出が阻害されない。これにより、〔Al相〕が粗大化する。このため、〔Al相〕が溶融めっき層の表面側まで成長するので、溶融めっき層の表面における〔Al相〕の露出割合が比較的多くなる。
このようなメカニズムにより、鋼板表面において凝固核が存在しない領域が、溶融めっき層の非パターン部になると推測される。
溶融めっき層の表面に化成処理層を形成する場合には、溶融めっき層を形成した後の溶融めっき鋼板に対して、化成処理を行う。化成処理の種類は特に限定されず、公知の化成処理を用いることができる。
また、溶融めっき層の表面や化成処理層の表面に塗膜層を形成する場合には、溶融めっき層を形成した後、又は、化成処理層を形成した後の溶融めっき鋼板に対して、塗装処理を行う。塗装処理の種類は特に限定されず、公知の塗装処理を用いることができる。
化成処理の一例として、樹脂及び界面活性剤のうちの少なくともいずれかで被覆されたフタロシアニン顔料を含有する化成処理剤による化成処理を例示できる。化成処理剤として具体的には、シラノール基及びアルコキシシリル基のうち少なくともいずれかを有する、ポリウレタン樹脂粒子及びエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子と、酸化ケイ素粒子と、有機チタン化合物と、前記のフタロシアニン顔料と、を有し、フタロシアニン顔料の含有量が、ポリウレタン樹脂粒子とエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子との合計100質量部に対して、0.01~10質量部であり、フタロシアニン顔料の一次粒子径が0.01~1.0μmである水性被覆剤を用いることができる。このような化成処理がされた溶融めっき層は、フタロシアニン顔料によって着色されることによりめっき層表面に好ましい意匠性を付与でき、更に、形成される化成処理被膜の耐食性や耐候性等を向上できる。
本実施形態によれば、耐食性に優れ、また文字やデザインが現されたパターン部の耐久性が高く、更に、パターン部における溶融めっき層の密着性に優れた溶融めっき鋼板を提供することができる。
特に本実施形態では、鋼板表面に凝固核を任意のパターンになるように付着させることで、パターン部の範囲を意図的に決定することができ、直線部、曲線部、図形、数字、記号及び文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるようにパターン部を配置できる。これにより、溶融めっき層の表面に、塗装や研削を行うことなく様々な意匠を施すことが出来、鋼板の識別性やデザイン性等を高めることができる。また、パターン部に元素濃化領域とともに界面合金層を形成することで、パターン部の溶融めっき層の密着性を、非パターン部の溶融めっき層の密着性と同程度まで高めることができる。
また、本実施形態によれば、溶融めっき層の表面に、印刷や塗装を行うことなく、様々な意匠、商標、その他の識別マークを表すことができ、鋼板の出所の識別性やデザイン性等を高めることができる。また、パターン部によって、工程管理や在庫管理などに必要な情報や需要者が求める任意の情報を、溶融めっき鋼板に付与することもできる。これにより、溶融めっき鋼板の生産性の向上にも寄与することができる。
次に、本発明の実施例を説明する。
(No.1~71)
まず、冷間圧延後の鋼板を脱脂、水洗した。50mm間隔の碁盤目状パターンが転写された形状をもつゴム版に、表1に示す凝固核形成成分を含むインキを付着させた。ここで、基盤目状パターンは、線状に形成され、線幅は10mmとした。このゴム版を水洗後の鋼板に押し付けることで、凝固核形成成分を含むインキを50mm間隔の碁盤目状に鋼板表面に付着させた。その後、鋼板に対して冷延板焼鈍を行った。冷延板焼鈍後の鋼板を400~500℃の溶融めっき浴に浸漬し、溶融めっき層を鋼板表面に形成した。その後、ワイピングノズルによる付着量の制御を行い、再加熱処理を行い、さらに冷却を行った。再加熱処理は、ワイピング後の鋼板に対して表2A及び表2Bに記載の再加熱温度に加熱し、当該温度で滞留させ、表2A及び表2Bに記載の平均冷却速度で300~340℃の範囲になるまで冷却した。これにより、表3A~表4Bに示すNo.1~71のZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板を製造した。
(No.72)
ワイピングノズルによるめっき層の付着量の制御を行った後に、再加熱を行うことなく、冷却した以外は上記と同様にして、Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板を製造した。この結果をNo.72として表3B及び表4Bに示す。
(No.73)
ゴム版によるインキの転写を行わないこと以外は上記と同様にして、Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板を製造した。その後、溶融めっき層の表面にインクジェット法により50mm間隔の碁盤目状パターンを印刷した。この結果をNo.73として表3B及び表4Bに示す。
(No.74)
ゴム版によるインキの転写を行わないこと以外は上記と同様にして、Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板を製造した。その後、溶融めっき層の表面を研削して、50mm間隔の碁盤目状パターンを形成した。この結果をNo.74として表3B及び表4Bに示す。
[〔Al相〕の露出割合の評価方法]
溶融めっき層の表面を、100倍の走査型電子顕微鏡で撮影し、走査型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線元素分析装置(EDS)で元素分布を測定する面分析を行った。パターン部を撮影した1mm視野の画像を5枚、非パターン部を撮影した1mm視野の画像を5枚それぞれ用意した。それぞれの画像に対して、市販の画像解析ソフトを用いて溶融めっき層表面に露出した〔Al相〕の面積を測定した。〔Al相〕は、面分析におけるAl濃化領域と、反射電子像による〔Al相〕の形態観察とを併用することで求めた。パターン部及び非パターン部のそれぞれにおいて、5枚の画像における〔Al相〕の露出面積の平均値を求めた。そして、〔Al相〕の露出面積の平均値を観察視野の全面積で除することにより、観察視野における〔Al相〕の平均露出面積率(%)をパターン部と非パターン部とのそれぞれで求めた。このようにして求めた〔Al相〕の平均露出面積率(%)を〔Al相〕の露出割合とした。
[算術平均面粗さSaの測定方法]
溶融めっき層の表面に0.5mm間隔で仮想格子線を描き、仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、各領域の算術平均面粗さSaを測定した。算術平均面粗さSaが1μm以上の領域が非パターン部となり、算術平均面粗さSaが1μm未満の領域がパターン部となる。算術平均面粗さSaの測定は、3Dレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製)を用いて行った。本実施例では、20倍の標準レンズを用いて、仮想格子線によって区画される複数の領域においてそれぞれ、測定間隔50μmで領域内の高さAを測定した。格子上に測定した場合は領域内には100点の測定点が得られた。得られた高さA100点を高さZ~高さZ100としたとき、下記の式を用いてSaを算出した。Aaveは高さA100点の平均とした。
Sa=1/100×Σ[x=1→100](|高さZ-Zave|)
なお、算術平均面粗さSaを測定した箇所はAl相の露出割合を測定した箇所とは異なる箇所とした。これは、パターン部、非パターン部のいずれについても同様とした。
[元素濃化領域および界面合金層]
溶融めっき鋼板の板厚方向の断面を露出させ、断面に現れた溶融めっき層と鋼板との界面を電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)により、元素分布を測定する面分析を行い、元素濃化領域および界面合金層を確認するとともに、元素Mの濃度、濃化倍率を測定した。界面合金層の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)の反射電子像から測定した。
[意匠性]
実施例及び比較例に係る試験板に対して、碁盤目状パターンが視認可能かどうかを以下の判定基準に基づいて評価した。評価は、試験板製造直後と、6ヶ月間屋外暴露した経時状態のものとに対して行った。初期状態、経時状態とも、AまたはBを合格とした。初期状態または経時状態の少なくとも一方がCである場合は不合格とした。
A:5m先からでも碁盤目を視認できる。
B:5m先からは碁盤目を視認できないが、2m先からの視認性は高い。
C:2m先から碁盤目を視認できない。
[耐食性]
150×70mmに切断した試験板に対して、JASO-M609に準拠した腐食促進試験CCTを30サイクル行った。その後、錆の発生状況に基づいて、下記のように耐食性を評価した。AまたはBを合格とした。
A:錆の発生がなく、美麗な意匠外観を維持している。
B:錆の発生により、意匠外観がやや損なわれている。
C:錆の発生により、外観品位が著しく低下している。
[めっき密着性]
150×70mmに切断した試験板に対して、碁盤目状パターンを形成した部分に対して2T曲げを行い、下記の判定基準に基づいてめっき密着性を評価した。AまたはBを合格とした。
A:テープ剥離してもめっきが脱離しない。B:テープ剥離するとめっきが脱離するが、テープ剥離しないとめっきは脱離しない。C:テープ剥離しなくてもめっきが脱離する。
表2A~表4Bに示すように、No.1~61は、製造条件が好ましい条件を満足しており、溶融めっき層の平均組成が発明範囲を満足し、溶融めっき層には、パターン部と、非パターン部とが形成されており、パターン部における母材鋼板と溶融めっき層との界面に元素Mを含有する元素濃化領域と、FeおよびAlを含有する界面合金層とが存在しており、溶融めっき層および元素濃化領域に含まれる元素Mの平均濃度が0.0010~2質量%であり、元素濃化領域には、パターン部に存在する溶融めっき層に対して元素Mが2倍以上に濃化するか、あるいは、元素Mが偏在していた。これにより、No.1~61は、意匠性、耐食性およびめっき密着性に優れたものとなった。また、No.1~61のパターン部及び非パターン部の界面合金層には、FeおよびAlが含まれていた。また、めっき層にSiを含有する場合は、パターン部及び非パターン部の界面合金層にFe、AlおよびSiが含まれていた。
No.62は、溶融めっき層の平均組成のうちAl含有量が不足した。このため、溶融めっき層の耐食性が不十分になった。
No.63は、溶融めっき層の平均組成のうちAl含有量が過剰になった。このため、溶融めっき層の耐食性が不十分になった。
No.64は、溶融めっき層の平均組成のうちMg含有量が不足した。このため、溶融めっき層の耐食性が不十分になった。
No.65は、溶融めっき層の平均組成のうちMg含有量が過剰になった。このため、めっき浴中にドロスが発生し、また、溶融めっき層の耐食性が不十分になった。
No.66は、再加熱処理における滞留時間が好ましい上限を超えたため、めっき層内部にて凝固核として添加したM元素の拡散が起こり、めっき層の均質化が進行した結果、意匠性が低下した。
No.67は、再加熱処理における加熱温度が好ましい下限を下回ったため、パターン部に界面合金層が形成されず、密着性が低下した。
No.68は、再加熱処理における滞留時間が好ましい下限を下回ったため、パターン部に界面合金層が形成されず、密着性が低下した。
No.69は、再加熱処理における加熱時間が好ましい上限を超えたため、めっき層内部にて凝固核として添加したM元素の拡散が起こり、密着性が低下した。
No.70は、再加熱処理における平均冷却速度が好ましい下限を下回ったため、めっき層内部にて凝固核として添加したM元素の拡散が起こり、めっき層の均質化が進行した結果、意匠性が低下した。
No.71は、再加熱処理における平均冷却速度が好ましい上限を超えたため、冷却時の冷却ガスの吹き付けによりめっき層表面が粗面化し、意匠性が低下した。
No.72は、再加熱処理を行わなかったため、パターン部に界面合金層が形成されず、密着性が低下した。
No.73は、印刷によってパターン部を形成したため、時間経過によって意匠性が低下した。
No.74は、研削によってパターン部を形成したため、パターン部におけるめっき厚が低下し、耐食性が低下した。
Figure 0007410448000001
Figure 0007410448000002
Figure 0007410448000003
Figure 0007410448000004
Figure 0007410448000005
Figure 0007410448000006
Figure 0007410448000007
更に、No.57~59の溶融めっき鋼板の表面に化成処理膜を形成して、意匠性を確認した。化成処理膜は、フタロシアニン顔料を含有する化成処理剤による化成処理を行うことにより形成した。化成処理剤としては、シラノール基及びアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂粒子及びエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子と、酸化ケイ素粒子と、有機チタン化合物と、Cuフタロシアニンと、を有し、Cuフタロシアニン顔料の含有量が、ポリウレタン樹脂粒子とエチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂粒子との合計100質量部に対して、0.01~10質量部であり、Cuフタロシアニンの一次粒子径が0.01~1.0μmである水性被覆剤を用いた。
化成処理膜を形成したNo.57~59の溶融めっき鋼板に対して、意匠性の評価を行ったところ、試験板製造直後と、6ヶ月間屋外暴露した経時状態のものにおいて、いずれも評価がAとなり、Cuフタロシアニンを含有する化成処理膜を設けたことにより、意匠性がより向上した。
1…パターン部、2…非パターン部、3…鋼板、4…溶融めっき層、5…界面合金層、6…元素濃化領域。

Claims (9)

  1. 鋼板と、前記鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、
    前記溶融めっき層は、平均組成で、Al:4~22質量%、Mg:1.0~10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、
    前記溶融めっき層に、パターン部と、非パターン部とがあり、
    前記パターン部における前記鋼板と前記溶融めっき層との界面に、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、Ni、Ti、Zr、Mo、W、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上の元素Mを含有する元素濃化領域と、FeおよびAlを含有する界面合金層と、が存在し、
    前記パターン部に存在する溶融めっき層と前記元素濃化領域とに含まれる前記元素Mの平均濃度が0.0010~2質量%であり、
    前記元素濃化領域には、前記パターン部に存在する溶融めっき層に対して前記元素Mが2倍以上に濃化するか、または、前記元素Mが偏在している、溶融めっき鋼板。
  2. 前記非パターン部の前記鋼板と前記溶融めっき層との界面に、FeおよびAlを含む界面合金層がある、請求項1に記載の溶融めっき鋼板。
  3. 前記パターン部の前記界面における前記元素Mの濃度が、前記非パターン部の前記界面における前記元素Mの濃度の1.5倍以上である、請求項1または請求項2に記載の溶融めっき鋼板。
  4. 前記パターン部が、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の溶融めっき鋼板。
  5. 前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Si:0.0001~2質量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶融めっき鋼板。
  6. 前記パターン部に形成される前記界面合金層に、更にSiが含有される、請求項5に記載の溶融めっき鋼板。
  7. 前記非パターン部に形成される前記界面合金層に、更にSiが含有される、請求項5に記載の溶融めっき鋼板。
  8. 前記元素濃化領域を除く前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.0001~1質量%含有することを特徴とする請求項1、2、4、5、6、7の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
  9. 前記溶融めっき層の付着量が鋼板両面合計で30~600g/mであることを特徴とする請求項1に記載の溶融めっき鋼板。
JP2023561141A 2022-06-10 2023-06-09 溶融めっき鋼板 Active JP7410448B1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022094362 2022-06-10
JP2022094362 2022-06-10
PCT/JP2023/021565 WO2023238938A1 (ja) 2022-06-10 2023-06-09 溶融めっき鋼板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2023238938A1 JPWO2023238938A1 (ja) 2023-12-14
JP7410448B1 true JP7410448B1 (ja) 2024-01-10

Family

ID=89118453

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023561141A Active JP7410448B1 (ja) 2022-06-10 2023-06-09 溶融めっき鋼板

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JP7410448B1 (ja)
TW (1) TW202407117A (ja)
WO (1) WO2023238938A1 (ja)

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013047812A1 (ja) 2011-09-30 2013-04-04 新日鐵住金株式会社 高強度溶融亜鉛めっき鋼板
JP2014015675A (ja) 2012-06-15 2014-01-30 Jfe Steel Corp 高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および高強度溶融亜鉛めっき鋼板
JP2014208902A (ja) 2013-03-27 2014-11-06 日新製鋼株式会社 めっき密着性に優れた溶融亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法
WO2019230894A1 (ja) 2018-05-30 2019-12-05 日本製鉄株式会社 Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板及びその製造方法
WO2021112519A1 (ko) 2019-12-06 2021-06-10 주식회사 포스코 굽힘 가공성 및 내식성이 우수한 용융아연도금강판 및 이의 제조방법
WO2022085386A1 (ja) 2020-10-21 2022-04-28 日本製鉄株式会社 めっき鋼材

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013047812A1 (ja) 2011-09-30 2013-04-04 新日鐵住金株式会社 高強度溶融亜鉛めっき鋼板
JP2014015675A (ja) 2012-06-15 2014-01-30 Jfe Steel Corp 高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および高強度溶融亜鉛めっき鋼板
JP2014208902A (ja) 2013-03-27 2014-11-06 日新製鋼株式会社 めっき密着性に優れた溶融亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法
WO2019230894A1 (ja) 2018-05-30 2019-12-05 日本製鉄株式会社 Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板及びその製造方法
WO2021112519A1 (ko) 2019-12-06 2021-06-10 주식회사 포스코 굽힘 가공성 및 내식성이 우수한 용융아연도금강판 및 이의 제조방법
WO2022085386A1 (ja) 2020-10-21 2022-04-28 日本製鉄株式会社 めっき鋼材

Also Published As

Publication number Publication date
WO2023238938A1 (ja) 2023-12-14
JPWO2023238938A1 (ja) 2023-12-14
TW202407117A (zh) 2024-02-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6648871B1 (ja) Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板及びその製造方法
JP7381865B2 (ja) Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板
CA2780445C (en) Hot-dipped steel and method of producing same
JP4874328B2 (ja) 高耐食性溶融Zn系めっき鋼材
JP7328543B2 (ja) 溶融めっき鋼板
CN101558182A (zh) 热镀Zn-Al系合金钢板及其制造方法
JP7381864B2 (ja) Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板
WO2020261723A1 (ja) めっき鋼材
JP7328542B2 (ja) 溶融めっき鋼板
JP7410448B1 (ja) 溶融めっき鋼板
KR102658299B1 (ko) Zn-Al-Mg계 용융 도금 강판
JP7328541B2 (ja) 溶融めっき鋼板
JP7339531B2 (ja) 溶融めっき鋼板
WO2021106259A1 (ja) 溶融めっき鋼板
JP7486011B2 (ja) 溶融めっき鋼板
JP7440819B1 (ja) 溶融めっき鋼板
WO2023238934A1 (ja) Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板
JP2022124269A (ja) 溶融めっき鋼板
JP2024061121A (ja) 表面処理鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20231004

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20231004

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20231121

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20231204

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7410448

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151