JP7422081B2 - 油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は油脂組成物、それを含むドウおよびベーカリー製品に関する。
穀粉と水を含む材料を捏ねて作られる塊状になった生地であるドウ(Dough)を加熱して得られるパン、クッキーおよびパイなどのベーカリー製品は、ドウを調製する際に、ショートニングおよびマーガリン等の油脂組成物を配合することで、ベーカリー製品の食感および風味を豊かなものにすることが知られている。
この油脂組成物には、ベーカリー製品の食感および老化等を改良する目的で、種々の添加剤を配合することが提案されている。例えば、化工澱粉を添加した油脂組成物をドウ原料に使用すると、ベーカリー製品の老化を抑制し、ソフトな食感を長持ちさせることが知られている(特許文献1から7参照)。
特開2017-029005号公報 特開2013-102745号公報 特開2002-272361号公報 特開平11-289980号公報 特開平9-94052号公報 特開平8-224057号公報 特開平9-233993号公報
しかし、従来の油脂組成物では、ベーカリー製品の老化を抑制する効果は認められるものの、油脂組成物をドウ原料と混合する際に、ドウが柔らかくべたついたものとなり、手やミキサーボウルなどに付着して扱いが困難となり、作業性が低下するという問題があった。ドウのべたつきを抑制するために、強力粉等の小麦粉を手粉としてドウに振り掛けるが、手粉を多く使用すると、ベーカリー製品の食感が固くなったり、膨らみにくくなったりすることがある。
このような状況下、ベーカリー製品の老化を抑制し、良好な食感が得られるだけでなく、油脂組成物をドウ原料と混合する際にドウのべたつきを抑えて作業性を改善しうる油脂組成物の提供が望まれている。
本発明は以下に示す油脂組成物、ドウ、ベーカリー製品およびこれらの製造方法、さらにはドウのべたつきを抑制する方法を提供しようとするものである。
[1]アルファー化澱粉および食用油脂を含む油脂組成物であって、
前記アルファー化澱粉の含有量が、前記油脂組成物の全質量に対して、22質量%以上50質量%未満の範囲であり、
前記食用油脂の含有量が、前記油脂組成物の全質量に対して、50質量%超78質量%以下の範囲であり、
前記油脂組成物中の水分(前記アルファー化澱粉中の水分を除く)の含有量の上限が1質量%である、前記油脂組成物。
[2]前記アルファー化澱粉が、1)および2)をアルファー化処理してなる澱粉から選ばれる1種または2種以上である、[1]に記載の油脂組成物。
1)トウモロコシ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、小麦澱粉および米澱粉からなる群から選ばれる未加工澱粉
2)前記未加工澱粉にヒドロキシプロピル化、アセチル化、架橋、酸化および酸処理からなる群から選ばれる1種または2種以上の加工処理が施されてなる加工澱粉。
[3]前記加工澱粉が、前記未加工澱粉に架橋処理を含む加工処理が施されてなる加工澱粉である、[2]に記載の油脂組成物。
[4]レシチンを前記油脂組成物の全質量に対して0.01質量%以上2質量%以下含有し、前記アルファー化澱粉の含有量が、前記油脂組成物の全質量に対して、22質量%以上49.99質量%未満の範囲であり、前記食用油脂の含有量が、前記油脂組成物の全質量に対して、50質量%超77.99質量%以下の範囲である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の油脂組成物。
[5]ベーカリー製品用である、[1]から[4]のいずれか一項に記載の油脂組成物。
[6][1]から[5]のいずれか一項に記載の油脂組成物を含むドウ。
[7][6]に記載のドウを加熱して得られるベーカリー製品。
[8]パン類である、[7]に記載のベーカリー製品。
[9][1]から[5]のいずれか一項に記載の油脂組成物の製造方法であって、
A)前記食用油脂を含む流動状の油相を準備する工程;および
B)工程Aで準備した前記油相中に前記アルファー化澱粉を添加して混合する工程
を含む、前記製造方法。
[10][7]または[8]に記載のベーカリー製品の製造方法であって、
a)[1]から[5]のいずれか一項に記載の油脂組成物を準備する工程;
b)工程aで準備した前記油脂組成物を含むドウ原料を混合して前記ドウを製造する工程;
および
c)工程bで得られた前記ドウを加熱する工程
を含む、前記製造方法。
[11]ドウのべたつきを抑制する方法であって、ドウ原料に、[1]から[5]のいずれか一項に記載の油脂組成物を混合することを含む、前記方法。
本発明は、油脂組成物、特にベーカリー製品に好適に用いられる油脂組成物を提供する。また本発明は、該油脂組成物を含むドウ、ベーカリー製品およびこれらの製造方法、さらにはドウのべたつきを抑制する方法を提供する。
本発明の好ましい態様によれば、本発明の油脂組成物を用いることにより、ドウのべたつきを抑えることでドウが扱い易くなり、作業性を改善することができる。また本発明の好ましい態様によれば、良好な食感のベーカリー製品を得ることができる。
以下、本発明の油脂組成物、ドウ、ベーカリー製品およびこれらの製造方法、さらにはドウのべたつきを抑制する方法について説明する。ここで、ドウ(Dough)とは、穀粉と水を含む材料を捏ねて作られる塊状になった生地を意味する。
1.油脂組成物
本発明の油脂組成物は、アルファー化澱粉および食用油脂を含む油脂組成物であって、
前記アルファー化澱粉の含有量が、前記油脂組成物の全質量に対して、22質量%以上50質量%未満の範囲であり、
前記食用油脂の含有量が、前記油脂組成物の全質量に対して、50質量%超78質量%以下の範囲であり、
前記油脂組成物中の水分(前記アルファー化澱粉中の水分を除く)の含有量が0質量%以上1質量%以下であることを特徴とする。
本発明の油脂組成物は、アルファー化澱粉および食用油脂の配合量、さらには油脂組成物中の水分量を上記特定の範囲に調整することで、ドウのべたつきを抑制し、ドウ調製時の作業性を改善しようとするものである。
本発明に用いられるアルファー化澱粉とは、アルファー化処理してなる澱粉である。前記アルファー化澱粉は、1)および2)をアルファー化処理してなる澱粉から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
1)トウモロコシ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、小麦澱粉および米澱粉からなる群から選ばれる未加工澱粉
2)前記未加工澱粉にモノエステル化、エーテル化、架橋、酸化、酸処理、アルカリ処理および酵素処理からなる群から選ばれる1種又は2種以上の加工処理が施されてなる加工澱粉
ここで「アルファー化処理」とは、未加工澱粉および加工澱粉から選ばれる澱粉と水とを混合した澱粉スラリーを加熱糊化して、更に乾燥させる処理をいう。必要に応じて、乾燥させる処理後に粉砕処理を行ってもよい。具体的には、上記アルファー化処理のうち加熱糊化は、オンレーター、ジェットクッカー、エクストルーダー等の機械を使用した方法を、乾燥はドラムドライヤー、スプレードライヤー、送風乾燥機等の機械を使用した方法を、それぞれ選択することが可能である。また、ドラムドライヤーを用いる場合は、澱粉スラリーを直接ドラムに塗布することで、加熱糊化と乾燥を一体で行うことも可能である。乾燥処理後のアルファー化澱粉は、通常2質量%以上10質量%以下の水分を含んでいる。
前記未加工澱粉としては、例えば植物由来の澱粉が挙げられる。前記未加工澱粉の由来となる植物の具体例として、レギュラートウモロコシ(デントコーン)、もちトウモロコシ(ワキシーコーン)、高アミローストウモロコシ、うるち米、もち米、小麦、甘藷、馬鈴薯、キャッサバ、サゴヤシ等が挙げられ、好ましくは、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシ、うるち米、もち米、小麦、馬鈴薯およびキャッサバが挙げられ、より好ましくは、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシ、もち米、馬鈴薯およびキャッサバが挙げられ、さらに好ましくは、レギュラートウモロコシ、馬鈴薯およびキャッサバが挙げられる。
前記加工澱粉の例としては、前記未加工澱粉に、アセチル化、リン酸モノエステル化等のモノエステル化;リン酸架橋、アジピン酸架橋等の架橋;ヒドロキシプロピル化等のエーテル化;酸化;酸処理;アルカリ処理;酵素処理等の加工処理を1種または2種以上施されてなる澱粉が挙げられ、好ましくは、モノエステル化、架橋、エーテル化、酸化および酸処理の加工処理を1種または2種以上施されてなる澱粉、より好ましくは、モノエステル化、架橋およびエーテル化の加工処理を1種または2種以上施されてなる澱粉、さらに好ましくは、ヒドロキシプロピル化、アセチル化、架橋、酸化および酸処理からなる群から選ばれる1種又は2種以上の加工処理が施されてなる加工澱粉が挙げられ、より好ましくは、リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉またはヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、さらにより好ましくは、リン酸架橋澱粉またはアセチル化リン酸架橋澱粉が挙げられる。
本発明の油脂組成物の目的および用途等に応じて前記澱粉の種類および組合せを適宜選択することができる。
本発明の油脂組成物において、アルファー化澱粉の含有量は、前記油脂組成物の全質量に対して、22質量%以上の範囲であり、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上の範囲である。また、アルファー化澱粉の含有量は、前記油脂組成物の全質量に対して、50質量%未満の範囲であり、より好ましくは49.99質量%未満、さらに好ましくは49.9質量%未満、さらにより好ましくは49.6質量%未満、殊更好ましくは49.5質量%未満、特に好ましくは48質量%以下、最も好ましくは45質量%以下の範囲である。アルファー化澱粉の含有量が上記範囲内であると、ドウのべたつきを抑制する効果が得られ易い。また、得られるベーカリー製品の食感を良好なものとする効果が得られ易い。
本発明に用いられる食用油脂は、食用として用いられている油脂であれば特に制限されない。前記食用油脂に用いられる原料油脂としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂;魚油、豚脂、牛脂、乳脂等の動物油脂;中鎖脂肪酸トリグリセリド、およびこれらに、エステル交換、水素添加、分別からなる群から選ばれる1または2以上の加工がなされた加工油脂からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
前記食用油脂の固体脂含量は、20℃において、3%以上30%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以上25%以下、さらに好ましくは7%以上20%以下である。また、前記食用油脂の固体脂含量は、35℃において、0%以上12%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以上10%以下、さらに好ましくは4%以上8%以下である。食用油脂の固体脂含量は、AOCS Official Method Cd 16b-93 に記載のMethod Iの方法に従って測定できる。
前記食用油脂は極度硬化油脂を含有することが好ましく、パーム極度硬化油脂および菜種極度硬化油脂からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することがより好ましく、パーム極度硬化油脂およびハイエルシン菜種極度硬化油脂からなる群から選ばれる1種または2種を含有することがさらに好ましい。また、前記極度硬化油脂を食用油脂の全質量に対して、1質量%以上10質量%以下含有することが好ましく、より好ましくは2質量%以上9質量%以下含有する。
前記食用油脂は10℃における固体脂含量が0%以上5%以下の原料油脂を含有することが好ましい。10℃における固体脂含量が0%以上5%以下の原料油脂としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。加工油脂が上記固体脂含量の範囲であった場合は、10℃における固体脂含量が0%以上5%以下の原料油脂とみなす。前記食用油脂は大豆油、菜種油、コーン油からなる群から選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましく挙げられる。また、10℃における固体脂含量が0%以上5%以下の原料油脂を食用油脂の全質量に対して、40質量%以上98質量%以下含有することが好ましく、より好ましくは45質量%以上96質量%以下、さらに好ましくは50質量%以上93質量%以下含有する。
本発明の油脂組成物において、食用油脂の含有量は、油脂組成物の全質量に対して、50質量%超の範囲であり、好ましくは55質量%以上の範囲である。また、食用油脂の含有量は、油脂組成物の全質量に対して、78質量%以下の範囲であり、好ましくは77.99質量%以下、より好ましくは77.9質量%以下、さらに好ましくは77.6質量%以下、さらにより好ましくは77.5質量%以下、殊更好ましくは70質量%以下、特に好ましくは65質量%以下の範囲である。食用油脂の含有量が上記範囲内であると、得られるベーカリー製品の食感を向上させる効果が得られ易い。
本発明の油脂組成物において、食用油脂とアルファー化澱粉の合計含有量は、油脂組成物の全質量に対して、好ましくは90質量%以上100質量%以下の範囲であり、より好ましくは95質量%以上99.99質量%以下、さらに好ましくは98質量%以上99.9質量%以下、さらにより好ましくは98.5質量%以上99.6質量%以下、特に好ましくは99質量%以上99.5質量%以下の範囲である。食用油脂とアルファー化澱粉の合計含有量が上記範囲内であると、ドウのべたつきを抑制する効果が得られ易い。
本発明の油脂組成物には、アルファー化澱粉および食用油脂に加えて、必要に応じて、レシチンを含有してもよい。
レシチンは、フォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジン酸等を含むリン脂質混合物である。
本発明に用いられるレシチンとしては、大豆、米、ヒマワリ種子、卵黄、乳脂肪等から得られるレシチンまたはそれらの酵素分解物が好ましく挙げられ、大豆から得られるレシチンがより好ましく挙げられる。また、本発明に用いられるレシチンは精製レシチン、クルードレシチンのいずれでもよいが、アセトン不溶物含量が50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。レシチンのアセトン不溶物含量は、食品添加物公定書解説書(第5版、D-1054頁)により測定されるアセトン可溶物含量から算出することができる。本発明の油脂組成物がレシチンを含有することにより、食用油脂とアルファー化澱粉が均一に混合し易くなる。
本発明の油脂組成物において、レシチンの含有量は、前記油脂組成物の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上2質量%以下の範囲であり、より好ましくは0.1質量%以上2質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以上1.5質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以上1質量%以下の範囲である。レシチンの含有量が上記範囲内であると、食用油脂とアルファー化澱粉が均一に混合し易くなる。
また、本発明の油脂組成物において、食用油脂とレシチンの合計含有量は、50.01質量%超78質量%以下が好ましく、より好ましくは50.4質量%超78質量%以下、さらに好ましくは50.5質量%超69質量%以下、さらにより好ましくは51質量%以上69質量%以下、特に好ましくは55質量%以上66質量%以下である。食用油脂とレシチンの合計含有量が上記の範囲内であると、食用油脂とアルファー化澱粉が均一に混合し易くなり、ドウのべたつきを抑制することができる。
本発明の油脂組成物には、本発明の目的および効果を阻害しない範囲であれば、他の成分、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤;着色料;香料等を含有してもよい。
本発明の油脂組成物において、油脂組成物中の水分(アルファー化澱粉中の水分を除く)の含有量の上限は1質量%であり、好ましくは0.5質量%、より好ましくは0.3質量%、さらに好ましくは0.1質量%である。また、油脂組成物中の水分(アルファー化澱粉中の水分を除く)の含有量の下限は、前記上限以下であれば特に制限はないが、0質量%であることが好ましい。油脂組成物中の水分量を上記の範囲内にすることで、前記油脂組成物を調製する際に、食用油脂とアルファー化澱粉が均一に混合し易くなり、ドウのべたつきを抑制することができ、ミキシングボウルなどの混合容器から取り出す際や、分割および成型時のドウの扱いが容易になる。
本発明の好ましい態様によれば、油脂組成物をドウ原料と混合する際にドウのべたつきを抑えることができ、特にベーカリー製品がパン類の場合、ベーカリー製品の良好な食感を長持ちさせる効果をより高めることができる。
本発明の油脂組成物は、ベーカリー製品用の油脂組成物として好適に用いられる。ここで「ベーカリー製品」とは、ドウ(Dough)を加熱してなるものであれば特に制限されなく、例えば、パン類、ケーキドーナツ類、ビスケット・クッキー類、クラッカー類、パイ類、ケーキ類等が含まれる。本発明の油脂組成物は、これらベーカリー製品のドウを調製する際の油脂組成物として好適に用いられる。
本発明の油脂組成物は、
A)前記食用油脂を含む流動状の油相を準備する工程;および
B)工程Aで準備した前記油相中に前記アルファー化澱粉を添加して混合する工程
を含む方法により製造することができる。
まず、工程Aにおいて、食用油脂を含む流動状の油相、好ましくは液状の油相を準備する。食用油脂が固形状の場合は適切な温度、例えば45℃以上80℃以下に加温することで流動状の油相を得ることができる。食用油脂が常温で流動状の場合はそのまま油相として用いてもよいし、油相をより安定な状態に維持するため、必要に応じて適切な温度、例えば45℃以上80℃以下に加温して用いてもよい。また、均一な油脂組成物が得られ易いため、工程Aは前記食用油脂と前記レシチンとを含む流動状の油相を準備する工程であることが好ましい。
次に、工程Bにおいて、工程Aで準備した油相中にアルファー化澱粉を添加して混合する。油相中にアルファー化澱粉を添加して混合する際は、均一に混合するため、必要に応じて加温、例えば45℃以上80℃以下の温度にするなどして油相を安定な状態に維持することが好ましい。
本発明の油脂組成物の製造において、ドウのべたつきを抑制しやすくするため、水を添加する工程を含まないことが好ましい。
上記のようにして、食用油脂中にアルファー化澱粉および必要に応じてレシチンを含む任意成分が均一に混合された本発明の油脂組成物を得ることができる。
2.ドウおよびドウのべたつき抑制方法
ドウは、穀物を挽いて粉にした穀粉と、水を含むドウ原料を捏ねて作られる塊状の生地であるが、一般的に、小麦粉を主体とする材料に水を加えてこねることでグルテンが形成されて粘弾性を有するドウが得られる。また、米粉や大豆粉等の小麦粉以外の穀粉とグルテンとを併用して、ドウを得ることも可能である。本発明のドウは、前記油脂組成物を含むことを特徴とする。
ドウ原料としては、前記油脂組成物、小麦粉、米粉、ライ麦粉、大麦粉、大豆粉等の穀粉および水のほか、膨張剤、塩、乳化剤、糖類、卵、イースト等を含んでいてもよい。
小麦粉としては、ベーカリー製品に用いられるものであれば特に制限されなく、例えば、強力粉、中力粉、薄力粉およびこれらの組合せを使用できるが、強力粉を用いることが好ましい。
米粉としては、ベーカリー製品に用いられるものであれば特に制限されなく、例えば、うるち米粉を使用できる。
大豆粉としては、ベーカリー製品に用いられるものであれば特に制限されなく、例えば、全脂大豆粉、脱脂大豆粉及びこれらの組合せを使用できる。
水としては、ベーカリー製品に用いられるものであれば特に制限されなく、天然水や水道水が挙げられる。また、牛乳や豆乳、果汁などの水含有液体を使用してもよい。
膨張剤としては、ベーカリー製品に用いられるものであれば特に制限されなく、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸ナトリウムアルミニウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、リン酸一カルシウムおよびこれらの組合せを使用できる。
乳化剤としては、本発明の目的および効果を阻害しない範囲であれば、例えば、レシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルおよびこれらの組合せを使用できる。
糖類としては、ベーカリー製品に用いられるものであれば特に制限されなく、グルコース、フルクトース、異性化糖等の単糖類、砂糖、マルトースおよびトレハロースなどの二糖類、オリゴ糖、還元澱粉分解物、蜂蜜、糖蜜、メープルシロップおよびこれらの組合せを使用できる。
上記の他、ドウ原料として、酵素、乳製品、油脂類、香辛料、酒類、香料、風味改善剤、甘味料、食物繊維、活性グルテン、増粘多糖類、ココアパウダー、野菜粉末等を含んでいてもよい。
ドウ原料の成分およびその配合量は、目的とするベーカリー製品に応じて適宜選択すればよい。
ドウに含まれる油脂組成物の含有量は、ドウの全質量に対して、1質量%以上25質量%以下が好ましく、より好ましくは1.5質量%以上12質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上10質量%以下である。油脂組成物の含有量が上記の範囲内であると、ドウを加熱して得られるベーカリー製品の食感を良好なものとすることができる。
本発明のドウは、前記油脂組成物以外のドウ原料に油脂組成物を加えて、ミキシングボウルなどの混合容器内で混合することで製造することができる。得られたドウは、必要に応じて適当なサイズに分割し成型してもよい。
本発明の好ましい態様によれば、ドウ原料に、本発明の油脂組成物を混合することで、ドウのべたつきを抑制することができる。すなわち、本発明は、ドウ原料に、本発明の油脂組成物を混合することを含むドウのべたつきを抑制する方法をも提供するものである。
本発明の好ましい態様によれば、ドウのべたつきを抑制しながら作業性よく、ドウを加熱して得られるベーカリー製品の食感を良好なものとすることができる。
3.ベーカリー製品
本発明のベーカリー製品は、前記ドウを加熱して得られるものであれば特に制限されない。ここで「加熱」とは、例えば、100℃以上300℃以下で熱することを指し、通常のベイキングの他に、フライ、蒸し上げ等の処理も含まれる。また、ドウには、他の材料、例えばフィリング材およびトッピング材などが添加されていてもよく、ドウをこれらの他の材料と共に加熱して、本発明のベーカリー製品を得てもよい。
本発明のベーカリー製品としては、例えば、食パン、ロールパン、デーニッシュ、クロワッサン、イーストドーナツ、揚げパン、蒸しパン、中華まん、ピザ、菓子パン、ブリオッシュ、バンズ等のパン類、ケーキドーナツ類、ビスケット・クッキー類、クラッカー類、パイ類、ケーキ類等が挙げられ、中でも、パン類が好ましい。本発明の好ましい態様によれば、食感がソフトでぱさつきが抑えられており、口どけも良く、良好な食感を有するベーカリー製品が得られる。また、本発明の好ましい態様によれば、ベーカリー製品がパン類などの場合は良好な食感を長持ちさせることができる。
本発明のベーカリー製品は、
a)本発明の油脂組成物を準備する工程;
b)工程aで準備した前記油脂組成物を含むドウ原料を混合してドウを製造する工程;および
c)工程bで得られた前記ドウを加熱する工程
を含む方法により製造することができる。
工程aについては、油脂組成物の製造方法において述べたとおりであり、
A)前記食用油脂を含む流動状の油相を準備する工程;および
B)工程Aで準備した前記油相中に前記アルファー化澱粉を添加して混合する工程
を含む方法により油脂組成物を準備することができる。
工程bでは、工程aで準備した油脂組成物を油脂組成物以外のドウ原料と混合してドウを製造する。混合方法は、特に制限されず、油脂組成物を含むドウ原料を全て加えてから混合してもよいが、油脂組成物を除くドウ原料を予め混合し塊状になってから、油脂組成物を加えて更に混合し、油脂組成物とその他のドウ原料を均一に混ぜ合わせることが好ましい。
混合は、手で行ってもよく、機械で行ってもよい。
混合時間および混合温度は、目的とするベーカリー製品に応じて適宜選択すればよい。混合時間は、例えば1分以上30分以下であり、混合温度は、例えば0℃以上40℃以下である。
また、ドウは、必要に応じて適当なサイズに分割し成型して発酵させてもよい。
工程cでは、工程bで得られたドウを加熱する。加熱温度は、目的とするベーカリー製品に応じて適宜選択すればよく、特に制限されないが、例えば100℃以上300℃以下である。ここで「加熱」とは、前述したとおり、通常のベイキングの他に、フライ、蒸し上げ、電子レンジ加熱等、およびそれらの組み合わせの処理も含まれる。
ドウには、加熱前に、他の材料、例えばフィリング材およびトッピング材などが添加されていてもよく、ドウをこれらの他の材料と共に加熱して、本発明のベーカリー製品としてもよい。あるいは、加熱後に、これらフィリング材およびトッピング材などの他の材料と組み合わせて本発明のベーカリー製品としてもよい。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
(1)油脂組成物の調製
表1の組成で油脂組成物を調製し、調製時の混合の容易さを評価した。
Figure 0007422081000001
表1中の成分は下記のとおりである。
食用油脂1:コーン油(10℃における固体脂含量:0%、株式会社J-オイルミルズ製)50質量%、ハイエルシン菜種極度硬化油(10℃における固体脂含量:5%超、横関油脂工業株式会社製)3質量%およびエステル交換油脂(10℃における固体脂含量:5%超、下記の製造方法で得られたエステル交換油脂)47質量%を含む油脂(水分0.1質量%未満、20℃における固体脂含量:19.3%、35℃における固体脂含量:7.9%)
食用油脂2:菜種油(10℃における固体脂含量:0%、株式会社J-オイルミルズ製)93質量%およびパーム極度硬化油(10℃における固体脂含量:5%超、横関油脂工業株式会社製)7質量%を含む油脂(水分0.1質量%未満、20℃における固体脂含量:7.2%、35℃における固体脂含量:4.8%)
エステル交換油脂:パームステアリン(ヨウ素価35、株式会社J-オイルミルズ製)75質量%、パーム油(株式会社J-オイルミルズ製)10質量%、大豆油(株式会社J-オイルミルズ製)15質量%を60℃で溶解混合した混合油に、混合油100質量部に対してナトリウムメトキシドを1.5質量部添加した。得られた混合物を、26hPaの圧力下、80℃で60分攪拌した後、水洗、脱色および脱臭を行い、エステル交換油脂を得た。
レシチン:レシチンFA(大豆由来、アセトン不溶物含量:60質量%以上、株式会社J-オイルミルズ製)
GT-α:アルファー化アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)
B-α:アルファー化リン酸架橋馬鈴薯澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)
CB-10:アルファー化レギュラートウモロコシ澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)
油脂組成物は、下記のようにして調製した。
<実施例1~4、6、7、比較例3>
食用油脂を攪拌機付きタンクに添加し、70℃まで加温して攪拌溶解させた。
次に、上記溶解した食用油脂にレシチンを添加して攪拌溶解させ、油相を調製した。
続いて、上記油相を攪拌しながらアルファー化澱粉を添加し、均一に分散するまで攪拌を続けた。
-2℃/分~-1℃/分で40℃まで攪拌しながら冷却し、アルファー化澱粉を含む油脂組成物を得た。
油脂組成物をカップに充填し、20℃にて静置後、実験に使用した。
<実施例5>
食用油脂を攪拌機付きタンクに添加し、70℃まで加温して攪拌溶解させ、油相を調製した。
続いて、上記油相を攪拌しながらアルファー化澱粉を添加し、均一に分散するまで攪拌を続けた。
-2℃/分~-1℃/分で40℃まで攪拌しながら冷却し、アルファー化澱粉を含む油脂組成物を得た。
油脂組成物をカップに充填し、20℃にて静置後、実験に使用した。
<比較例1>
食用油脂を攪拌付きタンクに添加し、70℃まで加温して攪拌溶解させた。
次に、上記溶解した食用油脂にレシチンを添加して攪拌溶解させ、油相を調製した。
-2℃/分~-1℃/分で40℃まで攪拌しながら冷却し、油脂組成物を得た。
油脂組成物をカップに充填し、20℃にて静置後、実験に使用した。
<比較例2>
食用油脂を攪拌機付きタンクに添加し、70℃まで加温して攪拌溶解させた。
次に、上記溶解した食用油脂にレシチンを添加して攪拌溶解させ、油相を調製した。
続いて、上記油相を攪拌しながらアルファー化澱粉を添加し、均一に分散するまで攪拌を続け、さらに、水を少しずつ添加し、アルファー化澱粉を徐々に吸水膨潤させた。
-2℃/分~-1℃/分で40℃まで攪拌しながら冷却し、アルファー化澱粉を含む油脂組成物を得た。
油脂組成物をカップに充填し、20℃にて静置後、実験に使用した。
油脂組成物の調製時の混合の容易さの評価基準は下記のとおりとした。
3:アルファー化澱粉と食用油脂とを容易に均一混合できる。
2:アルファー化澱粉と食用油脂とを、時間はかかるが均一混合できる。
1:アルファー化澱粉と食用油脂とを、時間をかけても均一混合できない。
表1の結果に示されるとおり、本発明の油脂組成物は均一に混合することができる。他方、水分含量が本発明で規定する範囲を超えた比較例2では、アルファー化澱粉がゲル化し、食用油脂と均一に混合することができなかった。
(2)ベーカリー製品(パン)の製造
表2(表2-1~2-3)の組成でドウを調製し、作業中のべたつき具合を評価した。また、ドウを発酵、分割および成型後に焼成してパン(バンズ)を製造し、2日後(D+2)および4日後(D+4)のパンの食感を評価した。
Figure 0007422081000002
Figure 0007422081000003
Figure 0007422081000004
表2中の成分は下記のとおりである。
製パン改良剤:商品名「マックスパワー」(株式会社J-オイルミルズ製)
ショートニング1:商品名「ファシエ」(株式会社J-オイルミルズ製)
ドウの調製、発酵、分割、成型および焼成は、下記のようにして行った。
<実施例1-1~7-1、比較例1-1~4-1>
表2の配合に従い、ショートニングおよび油脂組成物以外のドウ原料をミキシングボウルに投入し、フックで低速2分、中速4分混捏し、さらにショートニングおよび油脂組成物を投入し、低速2分、中速6分混捏した。
捏ね上げ温度28℃のドウを27℃で60分発酵させた後、ガス抜きし、その後さらに27℃で30分発酵させ、1次発酵ドウを調製した。
得られた1次発酵ドウを50gに分割し、次いでベンチタイムを20分取った後、バンズの形に成型した。
次に、38℃、相対湿度85%のホイロに50分入れて、最終発酵を行った。
最終発酵後のドウを、上段200℃、下段200℃に設定したオーブンに入れて、10分焼成し、パン(バンズ)を得た。焼成したパンは、室温(20℃)で放冷した後、ポリエチレン製袋に入れてヒートシーラーで密閉し、室温(20℃)で保管した。
作業中のドウのべたつき具合の評価は、作業者が下記の評価基準に従っておこなった。結果を表2に示す。
3:ドウ表面がべたついておらず、手粉を使用しなくても分割、成型が可能である。
2:一般的なドウのべたつき具合であり、分割、成型に手粉を必要とする。
1:ドウがべたべたとくっつき、分割、成型に手粉を通常より多めに必要とする。
パンの食感(食感のソフトさ、ぱさつきのなさ、および口どけの良さ)については、専門パネラー4人により、表3に示す評価基準に従って4段階評価を行い、平均点を評価値とした。結果を表2に示す。
Figure 0007422081000005
表2の結果に示されるとおり、本発明の油脂組成物を配合した実施例1-1から7-1では、ドウがべたつきにくく、手粉をしなくても扱い易いため、作業性が改善される。また、パンの製造後、時間が経過しても良好な食感が維持させられる。
他方、アルファー化澱粉を含まない油脂組成物を配合した比較例1-1の場合、ドウのべたつきは手粉を使用することにより改善できるが、パンの良好な食感を長持ちさせられなかった。
また、水分含量が本発明で規定する範囲を超えた油脂組成物を配合した比較例2-1の場合、ドウがべたついて扱いにくいだけではなく、ドウ中に油脂組成物中のゲル状のアルファー化澱粉が均一に混合できず、作業性が悪かった。また、得られたパンは、アルファー化澱粉が固化してしまい、不均一なパンとなった。固化したアルファー化澱粉は他のクラムよりも硬く、食感が悪いパンとなった。
アルファー化澱粉含量が本発明で規定する範囲を下回る油脂組成物を配合した比較例3-1の場合、ドウのべたつきは手粉を使用することにより改善できるが、良好な食感を長持ちさせられなかった。
アルファー化澱粉を単独で配合した比較例4-1の場合は、パンの良好な食感を長持ち効果はやや認められるものの、ドウがべたついて扱いにくく、作業性が悪かった。
(3)パンの硬さ評価
テクスチャーアナライザーを用いて表5に記載のパン(バンズ)の硬さを測定し評価した。
<測定方法>
バンズの底を5mm厚でカット後、カット面からさらに20mm厚にカットした。
さらにこれを縦横50mmにカットし、厚さ20mm、縦横50mmの正四角柱の試料を調製した。
台上に試料を置き、試料中央にプローブが当たる様に位置調整し、テクスチャーアナライザーにて50%圧縮時の最大応力を測定した。
測定は3回行い、その平均値を求め、製造から2日後(D+2)から4日後(D+4)のパンの硬さ上昇率((D+4)/(D+2))を算出した。
測定条件は表4に示したとおりである。
Figure 0007422081000006
結果を表5に示す。
Figure 0007422081000007
表5に示されるとおり、本発明の油脂組成物を配合して得られた実施例のパンは、比較例のパンと比べて、パンの硬さが上昇しにくく、パンの老化が抑制されていることがわかる。
(4)ベーカリー製品(イーストドーナツ)の製造
表6の組成でドウを調製し、作業中のべたつき具合を評価した。また、ドウを発酵、分割および成型後に油ちょうしてイーストドーナツを製造し、2日後(D+2)のイーストドーナツの食感を評価した。
Figure 0007422081000008
表6中の成分は、薄力粉をのぞき、表2に記載のものと同じものを使用した。
<実施例2-4、比較例1-2>
ドウ原料をミキシングボウルに投入し、フックで低速4分、中速8分で混捏した。
捏ね上げ温度28℃のドウを27℃で60分発酵させた後、ガス抜きし、その後さらに27℃で30分発酵させ、1次発酵ドウを調製した。
得られた1次発酵ドウを50gに分割し、次いでベンチタイムを20分取った後、バンズの形に成型した。
次に、38℃、相対湿度85%のホイロに50分入れて、最終発酵を行った。
最終発酵後のドウを、180℃に加熱したフライ油(FryUp 201、株式会社J-オイルミルズ製)に投入し、3分揚げてからひっくり返し、さらに3分揚げてから、油切りしイーストドーナツを得た。揚げたイーストドーナツは、室温(20℃)で放冷した後、ポリエチレン製袋に入れてヒートシーラーで密閉し、室温(20℃)で保管した。
作業中のドウのべたつき具合の評価は、作業者が下記の評価基準に従っておこなった。結果を表6に示す。
3:ドウ表面がべたついておらず、手粉を使用しなくても分割、成型が可能である。
2:一般的なドウのべたつき具合であり、分割、成型に手粉を必要とする。
1:ドウがべたべたとくっつき、分割、成型に手粉を通常より多めに必要とする。
イーストドーナツの食感(食感のソフトさ、ぱさつきのなさ、および口どけの良さ)については、専門パネラー4人により、比較例1-1を比較例1-2に読み替えた以外は表3に示す評価基準に従って4段階評価を行い、平均点を評価値とした。結果を表6に示す。
表6の結果に示されるとおり、本発明の油脂組成物を配合した実施例2-4では、ドウがべたつきにくく、手粉をしなくても扱い易いため、作業性が改善される。また、イーストドーナツの製造後、時間が経過しても良好な食感が維持されていた。
他方、アルファー化澱粉を含まない油脂組成物を配合した比較例1-2の場合、ドウのべたつきは抑えるために手粉を必要とした。
(5)ベーカリー製品(クッキー)の製造
表7の組成でドウを調製し、作業中のべたつき具合を評価した。ドウを分割および成型後に焼成してクッキーを製造した。
Figure 0007422081000009
表7中の成分は、表6に記載のものと同じものを使用した。
<実施例2-5、比較例1-3>
ドウ原料のうち、ショートニング1と油脂組成物をミキシングボウルに入れて、ビータを取り付けたミキサーにて中速で1分30秒混捏した。篩った上白糖を更に投入し、中速で1分30秒混捏した。水を更に加えて、中速で1分30秒混捏した。穀粉を更に加えて、低速で30秒混捏し、ドウを得た。ドウをミキシングボウルから取り出し、280gに分割し、直径約4cmの棒状に成形した。成形したドウをクッキングペーパーで包み、5℃の冷蔵庫で1時間冷やした。冷蔵庫から取り出し、クッキングペーパーを剥がしたドウを包丁で1cm厚に切り出し、180℃に設定したオーブンで15分焼成した。焼成したクッキーは、室温(20℃)で放冷した。
本発明の油脂組成物を配合した実施例2-5では、ドウがべたつかず、包んだクッキングペーパーにもくっつくことがなかった。焼成後のクッキーはサクサクしており、違和感なく食することができた。他方、アルファー化澱粉を含まない油脂組成物を配合した比較例1-3の場合、ドウがべたつき、包んだクッキングペーパーにドウがくっつき、剥がしにくかった。

Claims (8)

  1. アルファー化澱粉および食用油脂を含む油脂組成物であって、
    前記アルファー化澱粉の含有量が、前記油脂組成物の全質量に対して、22質量%以上50質量%未満の範囲であり、
    前記食用油脂の含有量が、前記油脂組成物の全質量に対して、50質量%超78質量%以下の範囲であり、
    前記油脂組成物中の水分(前記アルファー化澱粉中の水分を除く)の含有量の上限が1質量%であり、前記アルファー化澱粉中の水分の含有量の上限が10質量%である、前記油脂組成物。
  2. 前記アルファー化澱粉が、1)および2)をアルファー化処理してなる澱粉から選ばれる1種または2種以上である、請求項1に記載の油脂組成物。
    1)トウモロコシ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、小麦澱粉および米澱粉からなる群から選ばれる未加工澱粉
    2)前記未加工澱粉にヒドロキシプロピル化、アセチル化、架橋、酸化および酸処理からなる群から選ばれる1種または2種以上の加工処理が施されてなる加工澱粉。
  3. 前記加工澱粉が、前記未加工澱粉に架橋処理を含む加工処理が施されてなる加工澱粉である、請求項2に記載の油脂組成物。
  4. レシチンを前記油脂組成物の全質量に対して0.01質量%以上2質量%以下含有し、
    前記アルファー化澱粉の含有量が、前記油脂組成物の全質量に対して、22質量%以上49.99質量%未満の範囲であり、
    前記食用油脂の含有量が、前記油脂組成物の全質量に対して、50質量%超77.99質量%以下の範囲である、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の油脂組成物。
  5. ベーカリー製品用である、請求項1から4のいずれか一項に記載の油脂組成物。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の油脂組成物の製造方法であって、
    A)前記食用油脂を含む流動状の油相を準備する工程;および
    B)工程Aで準備した前記油相中に前記アルファー化澱粉を添加して混合する工程
    を含む、前記製造方法。
  7. ーカリー製品の製造方法であって、
    a)請求項1から5のいずれか一項に記載の油脂組成物を準備する工程;
    b)工程aで準備した前記油脂組成物を含むドウ原料を混合してウを製造する工程;
    および
    c)工程bで得られた前記ドウを加熱する工程
    を含む、前記製造方法。
  8. ドウのべたつきを抑制する方法であって、ドウ原料に、請求項1から5のいずれか一項に記載の油脂組成物を混合することを含む、前記方法。
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