JP7372577B2 - ボックス柱 - Google Patents

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Description

本発明は、ボックス柱(BOX柱)に関する。
大型の建築物の鉄骨として、溶接組立箱形断面柱(いわゆる四面ボックス柱)が用いられている。四面ボックス柱とは、4枚の厚鋼板を断面が正方形または長方形となるように溶接(角溶接)して柱幹とし、強い応力を受ける部分には、中空となっている柱の内部に、補強部材(ダイアフラム)として、さらに別の厚鋼板を竹の節状に取り付けることによって製造される柱部材である。
近年、建築物の更なる大型化が進んでおり、四面ボックス柱の高強度化、厚手化が求められている。一方で、鋼板が厚手化すると、小入熱溶接では生産効率が低下する。そのため、建造効率化の観点からは、そのダイアフラム溶接や角溶接にはエレクトロスラグ溶接やサブマージアーク溶接などの高能率な大入熱溶接の適用が求められる。
地震時の破壊に対する安全性向上の観点から、ボックス柱には、低降伏比や優れた靭性も求められる。しかしながら、従来、高強度厚鋼板に上述の大入熱溶接を適用した場合、HAZにおいて良好な靱性を確保することは困難であった。
例えば、非特許文献1及び非特許文献2には、引張強度780MPa級厚鋼板におけるエレクトロスラグ溶接部のHAZ靱性が示されている。しかしながら、非特許文献1の図6によれば、溶融線(Fusion Line、FL)、FLから1mm(HAZ1)、FLから3mm(HAZ3)、FLから5mm(HAZ5)をノッチ位置とした場合のシャルピー吸収エネルギーの平均値は40J以下である。また、非特許文献2の図3及び図5によれば、FLをノッチ位置とした場合のシャルピー吸収エネルギーの平均値は50J以下である。
大入熱溶接HAZ(大入熱溶接を適用して形成されたHAZ)では、溶接入熱によって高温に加熱された際にオーステナイト(γ)が粒成長する。また、高強度鋼板は合金元素を多く含むので、大入熱溶接HAZでは、冷却後は旧γ粒径が粗大化したベイナイト主体の組織となる。その結果、大入熱溶接HAZの靭性が低下する。
このような結晶粒の粗大化に起因する靭性の低下を抑制するために、例えば、特許文献1~3には、溶接入熱によって加熱されたオーステナイト(γ)の粒界をピン止めする微細な粒子を厚鋼板(母材)に生成させる技術が提案されている。特許文献1~3で提案されている技術は、Mgを含む微細な粒子のピン止め効果によって、溶接入熱によって加熱されたオーステナイト(加熱γ)の粒成長を抑制するものである。
しかしながら、特許文献1~3の技術では、オーステナイトの粒成長を抑制することはできるものの、その他の靭性低下の要因に対しては、対策が十分ではなかった。
特許文献4には、大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高強度厚鋼板が開示され、エレクトロスラグ溶接(溶接入熱量≧400kJ/cm)により作製した板厚65mmの溶接継手において、0℃でのボンド部のシャルピー吸収エネルギーが70Jであることが開示されている。特許文献4では、Si、Mn、P量の適正化によりMAを低減可能であることが開示されている。しかしながら、大入熱HAZを著しく脆化させるMAの生成を抑制するには対策が不十分であり、65mm超の板厚で十分な大入熱HAZの靭性が得られることは示されていない。
日本国特開2006-28627号公報 日本国特開平11-236645号公報 日本国特開平10-298708号公報 日本国特開2017-155333号公報
Kazushige TOKUNO et al, 780-N/mm2 Class High Tensile Strength Steel Plate with Large-Heat-Input-Weldability and Low-Weld-Cracking-Susceptibility for Architectural Construction、NIPPON STEEL THECHNICAL REPORT No.75 November 1997, p.43~50 廣田実、他5名、「オンライン製造プロセスによる建築構造用低降伏比780N/mm2級鋼材 その3 大入熱溶接部継手特性」、日本建築学会学術講演梗概集、2012年、No.1017
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであり、高強度厚鋼板を用いて形成されたボックス柱であって、大入熱溶接HAZの靭性に優れるボックス柱を提供することを課題とする。
本発明では、大入熱溶接によって形成された溶接熱影響部(Heat Affected Zone、HAZ)を大入熱溶接HAZ又は大入熱HAZという場合がある。
本発明者らが検討した結果、高強度厚鋼板の大入熱溶接HAZ靱性が劣化する主な原因は、(1)合金元素の含有量の増加に起因する脆化相(Martensite - Austenite constituent、MA)の形成、及び(2)HAZの結晶粒の粗大化であることが分かった。
そこで、本発明者らは、高強度鋼板の大入熱HAZを著しく脆化させるMAの生成を抑制するという視点から、鋼板(母材)の高強度化と大入熱溶接HAZの靭性の確保とを両立させるために検討を行った。その結果、MAの生成は、鋼板に含まれるMnやNiなどの合金元素が局所的に濃化して形成されるミクロ偏析部に起因することがわかった。具体的には、ミクロ偏析部が溶接熱影響によって加熱され、冷却されると、相変態によって金属組織の一部がMAとなって靭性の低下の原因となることが分かった。本発明者らがさらに検討を行った結果、鋼成分(化学組成)において、Mn含有量とNi含有量との比であるMn/Niを0.80以下に制御することが、ミクロ偏析に起因するMAの生成の抑制に有効であるという知見を得た。
また、上述の方法でMAの生成を抑制した上で、Ti、Mg、Bを活用し、炭素当量CEWESを制御して、旧γの粗大化及びHAZの結晶粒粗大化を抑制することによって、母材の強度及び大入熱溶接HAZの靭性の確保の両立が可能となる、という新たな知見を得た。
本発明は上記の知見に鑑みてなされた。本発明の要旨は以下の通りである。
[1]本発明の一態様に係るボックス柱は、第1の鋼板からなるスキンプレートで構成される箱形断面柱の内部に、第2の鋼板からなるダイアフラムが溶接部を介して固定されたボックス柱であって、前記第1の鋼板が、化学組成として、質量%で、C :0.03%以上、0.18%以下、Mn:0.3%以上、1.4%未満、Ni:1.0%以上、7.0%以下、Al:0.005%以上、0.20%以下、B :0%以上、0.0050%以下、Ti:0%以上、0.035%以下、Cu:0%以上、2.0%以下、Cr:0%以上、2.0%以下、Mo:0%以上、2.0%以下、W :0%以上、1.0%以下、Co:0%以上、1.0%以下、Nb:0%以上、0.10%以下、V :0%以上、0.10%以下、Ca:0%以上、0.005%以下、Mg:0%以上、0.005%以下、REM:0%以上、0.005%以下、Zr:0%以上、0.005%以下、Si:0.15%以下、P :0.015%以下、S :0.005%以下、O :0.0060%以下、N :0.0100%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、Mn及びNiの含有量の比であるMn/Niが0.80以下であり、下記(1)式で計算される炭素当量CEWESが0.430%以上、0.900%以下であり、前記第1の鋼板の引張強度が780MPa以上、930MPa以下であり、降伏強度が630MPa以上、750MPa以下であり、降伏比が85%以下であり、前記第1の鋼板の板厚が、40mm以上、120mm以下であり、前記溶接部がエレクトロスラグ溶接部であって、前記溶接部のHAZにおいて、0℃でのシャルピー吸収エネルギーの平均が27J以上である。
CEWES=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14・・・(1)
ここで、(1)式中の、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、Vは各元素の含有量[質量%]であり、含有しない元素の項には0を代入する。
[2]上記[1]に記載のボックス柱は、前記第1の鋼板の、前記溶接部のミクロ組織において、EBSDによって測定される平均結晶粒径が250μm以下であって、MAの面積率が3.0%以下であってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載のボックス柱は、前記シャルピー吸収エネルギーの平均が70J以上であってもよい。

本発明の上記態様によれば、高強度厚鋼板を用いて形成されたボックス柱であって、大入熱溶接HAZの靭性に優れるボックス柱を提供することができる。
エレクトロスラグ溶接T字継手におけるシャルピー試験片の採取要領を示す図である。 エレクトロスラグ溶接T字継手におけるシャルピー試験片の採取要領を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係るボックス柱(本実施形態に係るボックス柱)について説明する。
本実施形態に係るボックス柱は、第1の鋼板からなるスキンプレートで構成される箱形断面柱(柱幹)の内部に、第2の鋼板からなるダイアフラムが溶接部を介して固定されたボックス柱である。
また、第1の鋼板は、後述するように、所定の化学組成を有し、所定の板厚かつ、所定の機械的特性を有する。
本実施形態におけるボックス柱において、溶接部とは、溶接によって一旦溶融して凝固した部分(溶接金属部)及び溶接によって溶融はしなかったものの、溶接の熱影響を受け組織が変化した部分(熱影響部:HAZ)を指し、母材部とは、溶接の熱影響を受けていない(溶接前と組織が変化していない)部分(溶接部を除く部分)を指す。
<第1の鋼板>
(化学組成)
第1の鋼板の化学組成(母材部の化学組成)について説明する。
以下、化学組成に関する%は、断りがない限り質量%である。
C :0.03%以上、0.18%以下
Cは、鋼の焼入れ性を高めて高強度化に寄与する元素である。この効果を得るため、C含有量は0.03%以上とする。
一方、セメンタイトの過度な生成を防止して靱性を確保するという観点から、C含有量は0.18%以下とする。C含有量は、好ましくは0.17%以下であり、より好ましくは0.16%以下である。
Mn:0.3%以上、1.4%未満
Mnは、鋼の焼入れ性を高めて高強度化に寄与する元素である。この効果を得るため、Mn含有量は0.3%以上とする。
一方、Mn含有量が過度に増加すると、大入熱HAZのMAが増加し、靱性が著しく劣化する。そのため、Mn含有量は1.4%未満とする。Mn含有量は、好ましくは1.3%以下であり、より好ましくは1.2%以下であり、さらに好ましくは1.1%以下である。
Ni:1.0%以上、7.0%以下
Niは、鋼の焼入れ性を高めて高強度化に寄与する元素であり、同時に、大入熱HAZの靱性を高める元素でもある。強度および靭性を確保するという観点から、Ni含有量は1.0%以上とする。Ni含有量は、好ましくは1.2%以上であり、より好ましくは1.4%以上であり、さらに好ましくは1.5%以上である。
一方、Niは高価な元素であり、製造コストの上昇を抑制するという観点から、Ni含有量は7.0%以下とする。
Mn及びNiの含有量の比であるMn/Ni:0.80以下
Mn及びNiはともに鋼の高強度化に寄与する元素であるが、大入熱HAZにおいて、MnはNiに比べてMAの生成を促進しやすい。そのため、Mn含有量はNi含有量よりも少ないことが好ましい。大入熱HAZの高強度化を図りつつ靱性を確保するという観点から、本実施形態に係るボックス柱が備える第1の鋼板において、鋼中のMn含有量をNi含有量で除した比であるMn/Niは0.80以下とする。Mn/Niは、好ましくは0.70以下であり、より好ましくは0.60以下である。Mn/Niは、Mn含有量の下限をNi含有量の上限で除した比を下限としてもよく、すなわち、0.17以上であってもよい。Mn/Niは0.20以上であってもよい。
Al:0.005%以上、0.20%以下
Alは、脱酸元素として重要である。また、Alは、Bを添加する際は、AlNを形成してNを固定することで、BNの析出を抑制して、鋼の焼入れ性に有効な固溶Bを確保するために含有させる、重要な元素である。この効果を発揮させるため、本実施形態においてAl含有量は0.005%以上とする。好ましくは0.01%以上である。
一方、Al含有量が過剰になると、破壊起点となり靭性を低下させる粗大なアルミ系酸化物が生成する。このような粗大なアルミ系酸化物の生成を抑制するという観点から、Al含有量は0.20%以下とする。Al含有量は、好ましくは0.18%以下であり、より好ましくは0.16%以下であり、さらに好ましくは0.15%以下である。
Si:0.30%以下
Siは、脱酸や強度確保のために鋼に含有される場合があるが、MAの生成を促進させる元素でもある。本発明者らが、MAに及ぼすSiの有害性について検討した結果、大入熱HAZのミクロ偏析部におけるMA生成にSiが極めて大きな影響を及ぼすことを確認した。したがって、大入熱HAZの靭性を確保するため、Si含有量は0.30%以下とする。Si含有量は、好ましくは0.25%以下であり、より好ましくは0.20%以下であり、さらに好ましくは0.15%以下である。Si含有量の下限は特に限定されないので0%でもよいが、製造コストの観点からSi含有量は0.01%以上としてもよい。
本実施形態に係るボックス柱の第1の鋼板の化学組成は、上記の元素を含み、残部が鉄(Fe)及び不純物であってもよいが、強度や靭性を向上させるため、必要に応じて、Feの一部に替えて、下記に示す選択元素、B、Ti、Cu、Cr、Mo、W、Co、Nb、V、Ca、Mg、REM、Zrからなる群から選択される1種又は2種以上、を含有させてもよい。しかしながら、これらの元素は、必ずしも含む必要がないので、下限は0%である。また、これらの元素が、原料やスクラップ等から不純物として鋼板に混入したとしても、後述する範囲であれば、顕著な悪影響はない。
B :0%以上、0.0050%以下
Bは、微量の含有であっても鋼の焼入れ性を顕著に向上させる元素であり、炭素当量CEWESを制限しつつ、鋼の焼入れ性を確保する場合に有効な元素である。上記効果を得るために、B含有量を0.0003%以上としてもよい。
一方、B含有量が過剰であると、大入熱HAZの靱性や溶接性が劣化する。そのため、含有させる場合でも、B含有量は0.0050%以下とする。
Ti:0%以上、0.035%以下
Tiは、母材の強度上昇や細粒化に有効な元素である。Ti含有量は0%であってもよいが、上記効果を得るため、Ti含有量を0.005%以上としてもよい。
一方、Ti含有量が過剰であると、粗大なTiNが靱性に悪影響を及ぼすことが懸念される。そのため、含有させる場合でも、Ti含有量は0.035%以下とする。
Cu:0%以上、2.0%以下
Cuは、溶接性やHAZの靱性に対する悪影響が小さく、母材の強度や靱性を向上させる元素でもある。Cu含有量は0%であってもよいが、上記効果を得るため、Cu含有量を0.1%以上としてもよい。
一方、Cu含有量が過剰になると、鋼板の熱間圧延時におけるCuクラックが発生したり、大入熱HAZの靱性や溶接性が劣化したりする。そのため、含有させる場合でも、Cu含有量は2.0%以下とする。
Cr:0%以上、2.0%以下
Crは、母材の強度を向上させる元素である。Cr含有量は0%であってもよいが、上記効果を得るため、Cr含有量を0.1%以上としてもよい。
一方、Cr含有量が過剰になると、大入熱HAZの靱性や溶接性が劣化する。そのため、含有させる場合でも、Cr含有量は2.0%以下とする。
Mo:0%以上、2.0%以下
Moは、母材の強度及び靱性を向上させる元素である。Mo含有量は0%であってもよいが、上記効果を得るため、Mo含有量を0.1%以上としてもよい。
一方、Mo含有量が過剰になると、大入熱HAZの靱性や溶接性が劣化したり、合金コストが上昇したりする。そのため、含有させる場合でも、Mo含有量は2.0%以下とする。
W :0%以上、1.0%以下
Wは、母材の強度及び靱性を向上させる元素である。W含有量は0%であってもよいが、上記効果を得るため、W含有量を0.1%以上としてもよい。
一方、W含有量が過剰になると、大入熱HAZの靱性や溶接性が劣化したり、合金コストが上昇したりする。そのため、含有させる場合でも、W含有量は1.0%以下とする。W含有量は、好ましくは0.5%以下である。
Co:0%以上、1.0%以下
Coは、溶接性やHAZの靱性に対する悪影響が小さく、母材の強度や靱性を向上させる元素である。Co含有量は0%であってもよいが、上記効果を得るため、Co含有量を0.1%以上としてもよい。
一方で、Co含有量が過剰になると、上記効果が飽和する上、合金コストが上昇する。そのため、含有させる場合でも、Co含有量は1.0%以下とする。Co含有量は、好ましくは0.5%以下である。
Nb:0%以上、0.10%以下
Nbは、母材の強度、靱性を向上させる元素でもある。Nb含有量は0%であってもよいが、上記効果を得るため、Nb含有量を0.005%以上、または0.01%以上としてもよい。
一方、Nb含有量が過剰になると、大入熱HAZの靱性や溶接性が劣化する。そのため、含有させる場合でも、Nb含有量は0.10%以下とする。Nb含有量は、好ましくは0.05%以下であり、より好ましくは0.03%以下である。
V :0%以上、0.10%以下
Vは、鋼の母材部の強度を向上させる元素である。V含有量は0%であってもよいが、上記効果を得るため、V含有量を0.005%以上、または0.01%以上としてもよい。
一方、V含有量が過剰になると、大入熱HAZの靱性や溶接性が劣化する。そのため、含有させる場合でもV含有量は0.10%以下とする。V含有量は、好ましくは0.08%以下であり、より好ましくは0.06%以下である。
Ca:0%以上、0.005%以下
Caは、酸化物や硫化物、酸硫化物を形成して粗大介在物の生成を抑制し、母材及びHAZの靱性を高める元素である。Ca含有量は0%であってもよいが、上記効果を得るため、Ca含有量を0.0001%以上または0.001%以上としてもよい。
一方、Ca含有量が過剰になると、脆性破壊の発生起点として作用する恐れがあるCa系介在物が増加する。そのため、含有させる場合でも、Ca含有量は0.005%以下とする。Ca含有量は、好ましくは0.004%以下である。
Mg:0%以上、0.005%以下
Mgは、Caと同様に酸化物や硫化物、酸硫化物を形成して粗大介在物の生成を抑制し、母材及びHAZの靱性を高める元素である。Mg含有量は0%であってもよいが、上記効果を得るため、Mg含有量を0.0001%以上または0.001%以上としてもよい。
一方、Mg含有量が過剰になると、脆性破壊の発生起点として作用する恐れがあるMg系介在物が増加する。そのため、含有させる場合でも、Mg含有量は0.005%以下とする。Mg含有量は、好ましくは0.003%以下である。
REM:0%以上、0.005%以下
REMは、CaやMgと同様に、酸化物、硫化物、酸硫化物を形成して粗大介在物の生成を抑制し、母材及びHAZの靱性を高める元素である。REM含有量は0%であってもよいが、上記効果を得るため、REM含有量を0.0001%以上または0.001%以上としてもよい。
一方、REM含有量が過剰になると、脆性破壊の発生起点として作用する恐れがあるREM系介在物が増加する。そのため、含有させる場合でも、REM含有量は0.005%以下とする。REM含有量は、好ましくは0.003%以下である。
REM(希土類元素)とは、Sc、Yの2元素と、La、CeやNdなどのランタノイド15元素との総称を意味する。本実施形態でいうREMとは、これら希土類元素から選択される1種以上で構成されるものであり、以下に説明するREM含有量とは、希土類元素の含有量の合計量である。
Zr:0%以上、0.005%以下
Zrは、CaやMgやREMと同様に、酸化物、硫化物、酸硫化物を形成して粗大介在物の生成を抑制し、母材及びHAZの靱性を高める元素である。Zr含有量は0%であってもよいが、上記効果を得るため、Zr含有量を0.0001%以上としてもよい。
一方、Zr含有量が過剰になると、脆性破壊の発生起点として作用する恐れがあるZr系介在物が増加する。そのため、含有させる場合でも、Zr含有量を0.005%以下とする。Zr含有量は、好ましくは0.003%以下である。
本実施形態に係るボックス柱の第1の鋼板の化学組成の残部は、鉄(Fe)及び不純物である。不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料やその他の要因により混入する成分であって、本実施形態に係るボックス柱の特性に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
ただし、不純物のうち、特にP、S、O、Nについては後述のように含有量の上限が制限される。
P :0.015%以下
Pは、靭性に有害な不純物である。P含有量は、大入熱HAZの靱性を安定的に確保するために制限する必要があり、本実施形態では、0.015%以下である。P含有量は、好ましくは0.010%以下であり、より好ましくは0.008%以下である。P含有量の下限は限定されないが、製造コストの観点から、P含有量は0.001%以上であってもよい。また、Pは、靭性に有害な不純物であるが、大入熱HAZの焼入れ性を高めて、結晶粒径を細粒化させ、大入熱HAZの靭性を向上させる効果がある。該効果を得る観点から、P含有量を0.003%以上としてもよい。
S :0.005%以下
Sは、不純物であり、多量に含有すると粗大な介在物を形成して靭性を低下させる場合がある。したがって、大入熱HAZの靱性を安定的に確保するために、S含有量は0.005%以下に制限する。S含有量の下限は特に限定されず0%でもよいが、製造コストの観点からS含有量は0.0001%以上または0.001%以上であってもよい。
O :0.0060%以下
Oは、不純物であり、酸化物を形成する元素である。OとAlとが結合して生成する粗大なアルミ系酸化物が大入熱HAZのミクロ偏析部に重畳して存在すると、破壊起点として作用し、靭性が極めて低くなる。そのため、O含有量は0.0060%以下とする。O含有量は少ない方が望ましく、0%であってもよいが、製造コストの観点から、本実施形態では、O含有量は0.0001%以上であってもよい。
N :0.0100%以下
Nは、窒化物を形成する元素である。N含有量が過剰になるとBNが生成して焼入れ性向上に寄与する固溶B量が大幅に低下したり、粗大な窒化物が形成されて靭性が低下する。粗大な窒化物の形成の抑制、及び、BNの形成を抑制して焼入れ性を確保するという観点から、N含有量は0.0100%以下とする。N含有量は、好ましくは0.0080%以下であり、より好ましくは0.0060%以下である。
N含有量は少ないほうが望ましいが、製造コストの観点から、N含有量は0.0001%以上であってもよく、0.0020%以上であってもよい。
炭素当量CEWESが0.430%以上、0.900%以下
本実施形態に係るボックス柱の第1の鋼板では、各元素の含有量を上記の通りに制御した上で、さらに、炭素当量CEWESを0.430%以上、0.900%以下とする。炭素当量CEWESは、鋼板(母材)の強度及びHAZの硬さに影響を及ぼす焼入れ性の指標である。第1の鋼板の強度を確保するために、本実施形態では、炭素当量CEWESは0.430%以上とする。炭素当量CEWESは、好ましくは0.440%以上であり、より好ましくは0.450%以上、さらに好ましくは0.500%以上である。
一方、炭素当量CEWESが0.900%を超えると大入熱HAZがマルテンサイトとなり、大入熱HAZの靱性が低下する。そのため、CEWESは0.900%以下とする。炭素当量CEWESは、好ましくは0.800%以下であり、より好ましくは0.700%以下である。
炭素当量CEWESは、合金元素の含有量を用いて下記の(1)式で計算される。
CEWES=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14・・・(1)
ここで、(1)式中の、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、Vは各元素の含有量[質量%]であり、含有しない元素の項には0を代入する。
(ミクロ組織)
本実施形態に係るボックス柱の第1の鋼板の溶接部では、EBSDによって測定される平均粒径が250μm以下であることが好ましい。
上記平均粒径が、250μm以下であることで、第1の鋼板の溶接部の靭性が向上する。
第1の鋼板の溶接部の平均粒径は、TiNのピンニング効果による結晶粒成長の抑制や、CEWESの調整による焼入れ性の調整等によって達成することができる。
溶接部の平均結晶粒径は、エレクトロスラグ溶接継手のL断面において、FLからHAZ側0.5mmまでの範囲(FL~FL+0.5mmの範囲)を、EBSD(電子線後方散乱回折装置)を用いて結晶方位を測定し、結晶粒界を15°大角粒界(結晶方位差が15°以上の大角粒界)と定義したとき、円相当直径1.0μm超の結晶粒の中で、円相当直径が上位0.2%以内の結晶粒の円相当直径を平均した値とする。その際、測定エリアは0.5mm×0.5mm、測定ピッチは最大で1.0μmとする。
また、本実施形態に係るボックス柱の溶接部では、靭性確保の点から、MAの面積率が小さい方が好ましく、MAの面積率が3.0%以下であることが好ましい。
MA以外の組織については限定されないが、強度、靭性を確保する点から、ベイナイト組織主体で一部にフェライトやマルテンサイトが存在する混合組織であることが好ましい。
MA面積率は、Mn/Niの調整等によって達成することができる。
MA(Martensite-Austenite Constituent)の面積率は、平均結晶粒径を測定した試料と同じ断面で、レペラーエッチングによってMAを現出させ、倍率500倍の光学顕微鏡像を撮影した後、画像解析などの手法により求める。面積率を測定する方法として、例えば、撮影した光学顕微鏡像を画像処理により、白く見える部分とそれ以外の部分とを分離し、白く見える部分の面積率をMAの面積率として測定する方法がある。
(機械的特性、板厚)
引張強度:780MPa以上、930MPa以下
降伏強度:630MPa以上、750MPa以下
降伏比:85%以下
板厚:40mm以上、120mm以下
建築物の大型化、建造の高能率化、安全性の向上に伴い、溶接構造物用の厚鋼板及びその厚鋼板を用いて製造されるボックス柱に対する要求が高度化している。本実施形態に係るボックス柱では、これらの要求に応えるため、第1の鋼板において、板厚は40mm以上、120mm以下、降伏強度は630MPa以上、750MPa以下、引張強度は780MPa以上、930MPa以下とする。また、耐震性の観点から、本実施形態に係るボックス柱の第1の鋼板の降伏比は85%以下とする。降伏比の下限は限定されないが、例えば、降伏比は70%以上であってもよい。
第1の鋼板の機械的特性は、鋼板の表面から板厚の1/4の位置から採取したJIS4号の引張試験片を準備し、この2本の試験片に対し、JIS Z 2241:2011に準拠して、引張試験を行うことで得られる。降伏強度YS(0.2%降伏強度)及び引張強度TSは、それぞれ、2本の試験片の平均値である。YR(降伏比)は、TSに対するYSの割合であり、百分率、すなわち、100×(YS/TS)で表される。YR(降伏比)の単位は%である。
<第2の鋼板>
補強部材であるダイアフラムとして箱形断面柱(柱幹)の内部に固定される第2の鋼板については限定しないが、通常はYP440クラスの鋼板が用いられ、板厚が、40mm~70mm、TSが440~600MPaであることが好ましい。
<溶接部>
本実施形態に係るボックス柱では、建造の高能率化の観点から、少なくとも第1の鋼板(スキンプレート)と第2の鋼板(ダイアフラム)との溶接については、大入熱溶接であるエレクトロスラグ溶接(ESW)を適用することを前提とする。
すなわち、第1の鋼板と第2の鋼板とは、エレクトロスラグ溶接によって形成された溶接部(エレクトロスラグ溶接部)を介して接合されている。
本実施形態に係るボックス柱では、建造物の安全性の観点から、エレクトロスラグ溶接部のHAZにおけるシャルピー吸収エネルギー(試験温度:0℃)の平均値が27J以上である。
好ましくは、エレクトロスラグ溶接部のHAZにおけるシャルピー吸収エネルギー(試験温度:0℃)の平均値が70J以上である
ボックス柱において、エレクトロスラグ溶接を適用しない場合は、スキンプレートにエレクトロスラグ溶接に特徴的なスタート部とクレータ部の始終端処理が存在せず、ダイアフラム付近のスキンプレートに柱と柱を接合したときの溶接線が存在する。すなわち、エレクトロスラグ溶接を適用したかどうか(溶接部がエレクトロスラグ溶接部であるかどうか)は、スキンプレート表面の溶接線によって判断することができる。
また、溶接部のHAZにおけるシャルピー吸収エネルギーは、以下の方法で測定する。
ボックス柱において、図1A、図1Bに示すように、第2の鋼板(ダイアフラム2)は第1の鋼板(スキンプレート1)に対し溶接部を介して垂直方向に固定され、T字状の継手となる。そのため、試験片4は、第2の鋼板の板厚中心線に沿って溶接金属部3から溶融線(FL)を超えて第1の鋼板側のHAZを通過して第1の鋼板の内部側に至る部位から採取される。ノッチの位置は、HAZの中で最も靭性が低くなりやすい、FLの位置とし、3本の試験片を採取する。例えばノッチ位置をFLの位置とする場合、図1Aに示すように、試験片4とスキンプレート1とが直行する方向で採取する、または、図1Bに示すように、試験片4がスキンプレート1に対して斜めになるように試験片を採取してもよい。すなわち、図1Bのようにスキンプレート1の表面から板厚方向に6mmの線とFLとの交点がノッチの中央となるように試験片を採取してもよい。
シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242:2018に準拠し、試験温度は0℃で行う。必要に応じて、-20℃で試験を行ってもよい。吸収エネルギー(KV2(0℃))は、測定された3本の試験片の吸収エネルギーの平均値(相加平均)とする。
<製造方法>
次に本実施形態に係るボックス柱の製造方法について説明する。
本実施形態に係るボックス柱は、
(I)溶接に供する第1の鋼板と第2の鋼板とを準備する工程(準備工程)と、
(II)第1の鋼板と第2の鋼板とをボックス柱に組み立てる工程(組立工程)と、を含む。
以下、各工程について説明する。
(I)準備工程
まず、ボックス柱のスキンプレートとなる第1の鋼板と、ダイアフラムとなる第2の鋼板とを準備する。
第1の鋼板は、上述した化学組成、機械的特性を有していれば、限定されないが、例えば、以下の製造方法によって製造された鋼板を用いることができる。
(第1の鋼板の好ましい製造方法)
上述した化学組成から構成され、連続鋳造法によって製造された厚み200mm以上の鋼片を製造する。この鋼片は、一旦、400℃以下に冷却された後、900℃以上、1250℃以下の温度域に加熱され、熱間圧延を施されて、板厚が40mm以上、120mm以下の鋼板が製造される。鋼板は、必要に応じて各種の熱処理が施される。
連続鋳造後の鋼片は、400℃以下に冷却されずにホットチャージで加熱炉に装入されると、鋳造時に生成した粗大なγ組織が加熱後の鋼片にも残存し、鋼板の組織が十分に微細化せず低温靱性が劣化する場合がある。そのため、連続鋳造後の鋼片は、一旦、400℃以下まで冷却されることが好ましい。
鋼片の加熱温度は、鋳造後の鋼片に析出したBNを溶体化し、熱間圧延におけるTiNの形成を促進するために、好ましくは900℃以上である。加熱された鋼片中のNは、熱間圧延時にTiNを形成し、BNの生成が抑制される。その結果、鋼板において、鋼の焼入れ性を向上させる固溶B及び粒成長を抑制するTiNが十分に確保される。
一方、鋼片の加熱温度は、γ粒の粗大化を抑制して、熱間圧延後の金属組織を微細化させて、低温靱性の劣化を抑制するという観点から、1250℃以下であることが好ましい。加熱温度は、より好ましくは1200℃以下である。
熱間圧延後の鋼板は、直接焼入れ、または一旦空冷された後に、γ単相域への再加熱とこれに続く焼入れ(γ再加熱焼入れ)が施される。
熱間圧延後に直接焼入れする場合は、熱間圧延の終了温度(仕上げ温度)は、オーステナイト(γ)単相域、すなわちフェライト変態が開始するAr変態点以上であることが好ましい。このとき、熱間圧延終了時に鋼板の表層部の温度がオーステナイト(γ)/フェライト(α)の二相域であっても、板厚方向中心部の温度がγ単相域であれば問題はない。熱間圧延の終了温度は、750℃以上であってもよい。熱間圧延の終了温度は、金属組織の微細化とういう観点から、好ましくは900℃以下である。本実施形態においては、Ar変態点は以下の(4)式によって求めることができる。
Ar変態点=868-396×C+24.6×Si-68.1×Mn-36.1×Ni-20.7×Cu-24.8×Cr+29.1×Mo … (4)
ここで、上記(4)式中のC、Si、Mn、Ni、Cu、Cr、Moは質量%で表した各元素の鋼板中の含有量であり、含有しない元素の項には0を代入する。
熱間圧延後に直接焼入れする場合は、熱間圧延をγ単相域で終え、鋼板の材質を調整するために、引き続き、水冷が施される。
一方、熱間圧延後に空冷される場合、鋼板は、γ単相域への再加熱とこれに続く焼入れ(γ再加熱焼入れ)が施される。
熱間圧延後、直接焼入れまたはγ再加熱焼入れが施された鋼板は、材質を調整するために、各種の熱処理が施される。具体的には、これらの焼入れ処理(直接焼入れまたはγ再加熱焼入れ)が施された鋼板は、降伏比を低下させるために、オーステナイト(γ)とフェライト(α)とが共存する二相域への再加熱とこれに続く焼入れ(二相域焼入れ)が施される。
ここで、二相域とはAc変態点以上Ac変態点未満であり、Ac変態点及びAc変態点は、それぞれ、以下の(5)式及び(6)式によって求めることができる。
Ac変態点=750.8-26.6×C+17.6×Si-11.6×Mn-22.9×Cu-23.0×Ni+24.1×Cr+22.5×Mo-39.7×V-5.7×Ti+232.4×Nb-169.4×Al-894.7×B … (5)
Ac変態点=910-203×√C+44.7×Si-30×Mn-400×Al-15.2×Ni+104×V+31.5×Mo+13.1×W+11×Cr+20×Cu-700×P-400×Ti … (6)
ここで、上記(5)式及び(6)式中のC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Ti、Nb、Al、B、W、Pは、質量%で表した各元素の鋼板中の含有量であり、含有しない元素の項には0を代入する。
さらに、鋼板の強度、降伏比、靱性を最終的に調整するために、鋼板は、焼戻しが施されてもよい。焼戻しを行う場合、焼戻し温度は350℃以上、600℃以下であることが好ましい。
ここで、上述した熱間圧延の仕上げ温度、γ再加熱焼入れ温度、二相域焼入れ温度、および焼戻し温度はすべて、板厚方向中心部での温度を指す。板厚方向中心部の温度は、放射温度計で測定した鋼板表面の温度から、伝熱計算によって求めることができる。
以上の製法(直接焼入れまたはγ再加熱焼入れ+二相域焼入れ+焼戻しを含む製法)によって第1の鋼板を製造することができる。
第2の鋼板の製造方法については限定されず、公知の製造方法で製造された鋼板を用いることができる。または、第2の鋼板として、第1の鋼板と同じ製造方法で製造された鋼板を用いることもできる。
(II)組立工程
組立工程では、第1の鋼板がスキンプレート、第2の鋼板がダイアフラムとなるように溶接によってボックス柱を組み立てる。溶接や組立の方法は、公知の条件を採用すればよいが、少なくとも、第1の鋼板と第2の鋼板との溶接は、エレクトロスラグ溶接とする。それ以外の部分の溶接は、被覆アーク溶接、炭酸ガスシールドアーク溶接、サブマージアーク溶接を用いてもよい。
例えば、ダイアフラムをスキンプレートの柱フランジにエレクトロスラグ溶接によって溶接し、スキンプレートが箱形の4面となるように、柱フランジと柱ウェブとを溶接する(角溶接)、その後、ダイアフラムとスキンプレート(柱フランジと柱ウェブ)とをエレクトロスラグ溶接によって製造することで、効率よく四面ボックス柱を製造することができる。溶接に際しては適切な溶接材料、溶接条件を選択して行うことができるが、溶接材料は原則として、溶接施工条件などに応じ、JIS規格品若しくは国土交通大臣認定品から選定することが好ましい。
また、スキンプレートとダイアフラムとの強度が異なる異種継手においては、低強度側の規格値を満足する溶接材料を使用することができる。
ボックス柱の製造方法に関して、その他の事項については、建築鉄骨工事に共通な事項および標準仕様書を参照することができる。例えば日本建築学会の建築工事標準仕様書 JASS6鉄骨工事、鉄骨工事技術指針・工場製作編、鉄骨工事技術指針・工事現場施工編などが挙げられる。
ボックス柱の組立に用いる第1の鋼板と、第2の鋼板とを準備した。
スキンプレートとして用いる第1の鋼板として、表1A~表1Dに示す化学組成、板厚及び機械的特性を有する鋼1-1~鋼2-14の鋼板を準備した。また、ダイアフラムとして用いる第2の鋼板として、表2に示す化学組成及び板厚を有する公知の440MPa級の鋼A~鋼Dを準備した。
第1の鋼板の機械的特性は、上述の要領でJIS Z 2241:2011に準拠して、引張試験を行って評価した。
また、鋼1-1~鋼2-14は、以下の方法で製造した。
連続鋳造法によって製造された厚み200~300mmの鋼片を、一旦、400℃以下に冷却した後、900℃以上、1250℃以下の温度域に加熱し、熱間圧延によって40~120mmの板厚の鋼板とした。一部の鋼板については、Ar変態点以上の温度から直接焼入れを行った。また、直接焼入れを行わなかった鋼板については、一旦空冷した後に、γ単相域への再加熱とこれに続く焼入れ(γ再加熱焼入れ)を実施した。
熱間圧延後、直接焼入れまたはγ再加熱焼入れが施された鋼板に対し、二相域への再加熱とこれに続く焼入れ(二相域焼入れ)を実施した。さらに、二相域焼入れ後の鋼板に対し350℃以上、600℃以下で焼戻しを実施した。
Figure 0007372577000001
Figure 0007372577000002
Figure 0007372577000003
Figure 0007372577000004
Figure 0007372577000005
続いて、第1の鋼板がスキンプレート、第2の鋼板がダイアフラムとなるように溶接によってボックス柱を組み立てた。組み立てに際しては、ダイアフラムをスキンプレートの柱フランジにエレクトロスラグ溶接によって溶接し、スキンプレートが箱型の4面となるように、柱フランジと柱ウェブとを炭酸ガスシールドアーク溶接によって溶接し(角溶接)、その後、ダイアフラムとスキンプレート(柱フランジと柱ウェブ)とをエレクトロスラグ溶接して、1000mm×1000mm(断面)×13000mm(長さ)の四面ボックス柱を得た。
溶接に際し、エレクトロスラグ溶接については、JIS規格品若しくは国土交通大臣認定品の溶接材料を用いて、それぞれの板厚に応じて、電流を380A、電圧を52Vとし、速度を変化させることで、溶接入熱が55~130kJ/mmとなるように実施した。
得られたボックス柱の第1の鋼板(スキンプレート)と第2の鋼板(ダイアフラム)との継手部分から、溶接線と垂直な面が観察できるように試料を採取し、FLからHAZ側0.5mmまでの範囲(FL~FL+0.5mmの範囲)を、EBSDを用いて結晶方位を測定し、結晶粒界を15°大角粒界と定義したときの円相当直径が1μm超の結晶粒の中で、円相当直径が上位0.2%以内の結晶粒の円相当直径を求め、こられを平均して平均結晶粒径とした。
また、同じ断面でレペラーエッチングによってMAを現出させ、倍率500倍の光学顕微鏡像を撮影した後、画像解析によってMAの面積率を求めた。
結果を表3に示す。
また、ノッチの位置が、FLの位置となるように、図1Aの位置から3本の試験片を採取し、シャルピー衝撃試験を、試験温度は0℃として、JIS Z 2242:2018に準拠して行い、測定された3本の試験片の吸収エネルギーの平均値(相加平均)を、0℃でのHAZ靭性とした。
結果を表3に示す。
Figure 0007372577000006
表1A~表3に示すように、スキンプレートとして、鋼1-1~鋼1-16を用いたBOX柱No.1~16では、エレクトロスラグ溶接部のHAZ靭性(シャルピー吸収エネルギーの平均値)が27J以上であった。
これに対し、比較例であるBOX柱No.17~30では、HAZ靭性に劣っていた。
本発明のボックス柱は、第1の鋼板の降伏強度が630MPa以上、引張強度が780MPa以上であり、降伏比が85%以下であり、板厚が40~120mmであり、かつ、エレクトロスラグ溶接部のHAZにおけるシャルピー吸収エネルギー(試験温度0℃)の平均値が27J以上となる。そのため、本発明のボックス柱は建築鉄骨に好適であり、本発明のボックス柱の適用によって、建築物の高層化や大スパン化の進行を促進させることができ、さらに建設効率と耐震安全性を高めることができる。
1 スキンプレート
2 ダイアフラム
3 溶接金属部
4 試験片
5 当金

Claims (3)

  1. 第1の鋼板からなるスキンプレートで構成される箱形断面柱の内部に、第2の鋼板からなるダイアフラムが溶接部を介して固定されたボックス柱であって、
    前記第1の鋼板が、化学組成として、質量%で、
    C :0.03%以上、0.18%以下、
    Mn:0.3%以上、1.4%未満、
    Ni:1.0%以上、7.0%以下、
    Al:0.005%以上、0.20%以下、
    B :0%以上、0.0050%以下、
    Ti:0%以上、0.035%以下、
    Cu:0%以上、2.0%以下、
    Cr:0%以上、2.0%以下、
    Mo:0%以上、2.0%以下、
    W :0%以上、1.0%以下、
    Co:0%以上、1.0%以下、
    Nb:0%以上、0.10%以下、
    V :0%以上、0.10%以下、
    Ca:0%以上、0.005%以下、
    Mg:0%以上、0.005%以下、
    REM:0%以上、0.005%以下、
    Zr:0%以上、0.005%以下、
    Si:0.15%以下、
    P :0.015%以下、
    S :0.005%以下、
    O :0.0060%以下、
    N :0.0100%以下
    を含有し、
    残部がFe及び不純物からなり、
    Mn及びNiの含有量の比であるMn/Niが0.80以下であり、
    下記(1)式で計算される炭素当量CEWESが0.430%以上、0.900%以下であり、
    前記第1の鋼板の引張強度が780MPa以上、930MPa以下であり、降伏強度が630MPa以上、750MPa以下であり、降伏比が85%以下であり、
    前記第1の鋼板の板厚が、40mm以上、120mm以下であり、
    前記溶接部がエレクトロスラグ溶接部であって、前記溶接部のHAZにおいて、0℃でのシャルピー吸収エネルギーの平均が27J以上である、
    ことを特徴とするボックス柱。
    CEWES=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14・・・(1)
    ここで、(1)式中の、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、Vは各元素の質量%での含有量であり、含有しない元素の項には0を代入する。
  2. 前記第1の鋼板の、前記溶接部のミクロ組織において、
    EBSDによって測定される平均結晶粒径が250μm以下であって、
    MAの面積率が3.0%以下である、
    請求項1に記載のボックス柱。
  3. 前記シャルピー吸収エネルギーの平均が70J以上である、
    請求項1または2に記載のボックス柱。
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