JP2016117945A - 圧延h形鋼及びその製造方法、並びに圧延h形鋼のフランジ溶接継手 - Google Patents
圧延h形鋼及びその製造方法、並びに圧延h形鋼のフランジ溶接継手 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2016117945A JP2016117945A JP2015216945A JP2015216945A JP2016117945A JP 2016117945 A JP2016117945 A JP 2016117945A JP 2015216945 A JP2015216945 A JP 2015216945A JP 2015216945 A JP2015216945 A JP 2015216945A JP 2016117945 A JP2016117945 A JP 2016117945A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- less
- rolled
- section steel
- ferrite
- groove
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Images
Landscapes
- Butt Welding And Welding Of Specific Article (AREA)
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Abstract
Description
しかし、これらの方法では、加速冷却を行うため、水冷装置の性能や設備導入のコストが問題になる場合がある。
例えば特許文献6では、開先肩位置を基準にして2つのビードの積層位置を寸法で規定し、これによって開先肩部側の溶接熱影響部(HAZ)の靭性を改善する技術が提案されている。また、特許文献7では、開先周辺に冷間で予歪みを付与した後に溶接することで熱影響部で生成するγ粒を微細化して溶接熱影響部の靭性を改善する技術が提案されている。
また、特許文献7に記載された溶接構造物では、開先周辺に冷間で予歪みを与えておく必要があるため工程が煩雑になり、このような工程を付加することは回避することが望ましい。
本発明は、Vの窒化物ではなく、炭化物による析出強化を利用して高強度化を図り、C及びMnによるパーライトの硬化とフェライトの過剰な微細化の抑制によって低降伏比化を図った圧延H形鋼である。そして、本発明の圧延H形鋼は、高温で熱間圧延を行った後、空冷する製造方法によって得られる。
本発明の要旨は以下のとおりである。
C:0.10〜0.25%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:0.70〜1.80%、
V:0.06〜0.20%、
N:0.001〜0.004%、
Ti:0.003〜0.015%
を含有し、
Nb:0.010%以下、
Al:0.06%以下、
O:0.0035%以下
に制限し、
Ti/N:3.0〜15.0
を満足し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
下記(式1)によって求められるCeqが0.420以下であり、
金属組織がフェライト・パーライトからなり、
フェライト粒径が15.0〜50.0μmであり、
下記(式2)によって求められるフェライト/パーライト硬さ比が0.60以下であることを特徴とする圧延H形鋼。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(式1)
フェライト/パーライト硬さ比=(フェライト硬さ)/(パーライト硬さ)・・・(式2)
(式1)のC、Si、Mn、Cr、Mo、V、Niは、各元素の含有量[質量%]であり、元素を含有しない場合は0として計算する。
Cu:0.30%以下、
Ni:0.20%以下、
Mo:0.30%以下、
Cr:0.05%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]に記載の圧延H形鋼。
[3]、更に、質量%で、
REM:0.010%以下、
Ca:0.0050%以下
の一方又は双方を含有することを特徴とする上記[1]または[2]に記載の圧延H形鋼。
[5]本発明は、上記[1]〜[3]の何れか1項に記載された圧延H形鋼のフランジ溶接継手であって、前記圧延H形鋼のフランジ溶接継手の溶接金属は、互いに溶接接合される部材の片側のみに設けられる開先が前記圧延H形鋼のフランジ端部に設けられ、この開先部に多層盛り溶接されて形成されており、前記多層盛り溶接の最終層の第一溶接ビードが前記開先の肩部側に形成され、順次開先背側に向けて溶接盛りしてなる最終層が形成されており、前記溶接金属に隣接する圧延H形鋼側の熱影響部は、フランジ表面部で母材側に膨出することなくほぼ開先面に沿って形成されていることを特徴とする圧延H形鋼のフランジ溶接継手。
[6]前記開先が、レ形開先、K形開先、J形開先及び両面J形開先のいずれかであることを特徴とする上記[5]に記載の圧延H形鋼のフランジ溶接継手。
[7]前記フランジ溶接継手が、突合せ継手、T継手及び角継手のいずれかであることを特徴とする上記[5]又は[6]に記載の圧延H形鋼のフランジ溶接継手。
まず、本発明の圧延H形鋼の成分組成について説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
Cは、鋼の強化に有効な元素である。本発明では、硬質相であるパーライトの生成によって引張強度を高めるために、C含有量の下限値を0.10%以上とする。好ましくはC含有量を0.13%以上、より好ましくは0.15%以上とする。一方、C含有量が0.25%を超えると溶接熱影響部の硬度が上昇し、靱性が低下する。したがって、C含有量の上限を0.25%以下とする。好ましくはC含有量を0.22%以下、より好ましくは0.20%以下とする。
Siは、脱酸元素であり、また、強度の上昇にも寄与する元素である。引張強度を上昇させるために、本発明では、Si含有量の下限を0.05%以上とする。好ましくはSi含有量を0.10%以上、より好ましくは0.15%以上とする。一方、Si含有量が0.50%を超えると、溶接部では島状マルテンサイトが生成し、靭性を低下させるため、上限を0.50%以下とする。溶接熱影響部の靱性の低下を抑制するには、Si含有量の上限を0.45%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.40%以下とする。
Mnは、高強度化に寄与する元素である。引張強度を上昇させるために、本発明では、Mnを0.70%以上含有する。Mn含有量の下限は、好ましくは0.80%以上、より好ましくは1.00%以上、更に好ましくは1.20%以上とする。一方、Mn含有量が1.80%を超えると、母材及び溶接熱影響部の靱性、割れ性などを損なう。したがって、Mn含有量の上限を1.80%以下とする。Mn含有量の上限は、好ましくは、1.70%以下、より好ましくは1.60%以下とする。
Vは、炭化物を生成する元素であり、析出強化によりフェライト・パーライトの強度を向上させる重要な元素である。特に本発明において、Vは降伏強度の過剰な上昇を抑制し、かつ引張強度の向上に顕著に寄与するため、0.06%以上を添加する。V含有量が不足すると、相対的に降伏強度が高くなり、降伏比が上昇することがある。Vは、好ましくは、0.09%以上、より好ましくは0.12%以上含有する。一方、0.20%を超えてVを添加すると、析出硬化によって靭性が低下するため、上限を0.20%以下とする。V含有量の上限は、好ましくは0.18%以下、より好ましくは0.15%以下とする。また、後述するように、粒内フェライトによる結晶粒径の微細化に寄与するVNの生成を抑制するため、N含有量を制限し、Tiを添加することが必要である。
Nは、窒化物を形成する元素である。VNの生成によるフェライト粒径の微細化を抑制するため、N含有量の上限を0.004%以下とし、好ましくは0.004%未満、より好ましくは0.003%以下とする。N含有量の下限値は少ないほど好ましいが、0.001%未満とすることが困難であるため、0.001%以上とする。
Tiは、VNよりも高温で析出するTiNを生成する元素である。後述するように、本発明では、VNの生成を防止するため、N含有量の3倍以上のTiを添加する。また、TiNは、溶接熱影響部の粒径の粗大化を抑制し、溶接部の靱性の向上にも寄与する。Ti含有量は、N含有量の下限値を0.001%未満とすることが困難であるため、0.003%以上とする。一方、Tiを過剰に添加すると溶接部の靱性が低下するため、Ti含有量の上限を0.015%以下とする。Ti含有量の上限は、好ましくは0.013%以下、より好ましくは0.010%以下とする。
本発明では、VNの生成を防止するため、Ti/Nを3.0以上とし、N含有量の3.0倍以上のTiを添加する。これは、TiNの生成によって、Nを固定するため、TiとNの含有量を原子%でほぼ同等にするという観点から、質量数がNの約3倍であるTiの含有量を、質量%でNの含有量の3.0倍以上とするものである。また、Ti/Nが3.0未満であると、Nの影響によって溶接性が損なわれ、溶接熱影響部の粒径の粗大化の抑制に寄与するTiNの析出が不十分になり、溶接部の靱性が低下する場合がある。Ti/Nの上限は、N含有量の下限値(0.001%)と、Ti含有量の上限値(0.015%)から15.0以下する。
Nbは、強度及び靭性を高める元素であるが、析出強化やフェライト粒径の微細化によって降伏強度を上昇させ、YRを大きくさせてしまう。このため、本発明では、Nb含有量を0.010%以下に制限する。好ましくはNb含有量を0.005%以下とする。Nbは含有しなくてもよいが、強度及び靭性を高めるためにNbを含有する場合、その含有量は0.002%以上であることが好ましく、0.003%以上であることがより好ましい。
Alは、脱酸元素であり、0.01%以上を添加することが好ましい。しかし、Alを0.06%を超えて添加すると、粗大な介在物の形成によって靭性が低下するため、0.06%以下に制限する。Al含有量は、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.04%以下とする。
Oは、不純物である。酸化物の生成を抑制して靭性を確保するため、O含有量の上限を0.0035%以下に制限する。HAZ靭性を向上させるには、O含有量を0.0015以下にすることが好ましい。O量を0.0005%未満にしようとすると、製造コストが高くなるため、O量は0.0005%以上が好ましい。
Ceqは、焼入れ性の指標であり、下記(式1)で求めることができる。Ceqは、強度を確保するために高めることが好ましい。しかし、Cepが0.420を超えると、特に溶接部の靱性が低下するとともに溶接時に割れが生じる。このため、Cepは0.420以下とし、0.400以下とすることが好ましい。Ceqの下限は特に限定しないが、必須的に含まれるC、Mn、Si、Vの含有量の下限値から0.910となる。
ここで、C、Si、Mn、Cr、Mo、V、Niは、各元素の含有量[質量%]であり、元素を含有しない場合は0として計算する。
Cuは、強度の向上に寄与する元素であり、0.01%以上を添加することが好ましい。Cuは、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上を添加する。
一方、0.30%を超えるCuを添加すると、溶接熱影響部の強度が過剰に上昇し、靭性が低下することがある。このため、Cu含有量の上限を0.30以下%とすることが好ましい。より好ましくはCu含有量の上限を0.20%以下とする。
Niは、強度及び靭性を高めるために有効な元素であり、0.01%以上を添加することが好ましい。Niは、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上を添加する。一方、0.20%を超えるNiを添加すると、溶接熱影響部の強度が過剰に上昇し、靭性が低下することがあるため、上限を0.20以下%とすることが好ましい。
また、Niは高価な元素であり、合金コストの上昇を抑制するため、更に好ましくは上限を0.15%以下とする。
Moは、強度の向上に寄与する元素である。しかし、0.30%を超えてMoを添加すると、Mo炭化物(Mo2C)を析出し、溶接熱影響部の靱性を劣化させることがあるため、0.30%以下に制限することが好ましい。Mo含有量の上限は、0.25%以下がより好ましい。Mo含有量の下限は、0.01%以上が好ましい。
Crも強度の向上に寄与する元素である。しかし、0.05%を超えてCrを添加すると、炭化物を生成し、靭性を損なうことがあるため、Cr含有量の上限を0.05%以下に制限することが好ましい。Cr含有量のより好ましい上限は0.03%以下である。Cr含有量の下限は0.01%以上が好ましい。
(Ca:0.0050%以下)
REM及びCaは、脱酸元素であり、硫化物の形態の制御にも寄与するため、添加してもよい。しかし、REM、Caの酸化物は溶鋼中で容易に浮上するため、鋼中に含有されるREMの上限は0.010%以下、Caの上限は0.0050%以下である。REM及びCaは、0.0005%以上を添加することが好ましい。
本発明の圧延H形鋼は、熱間圧延後、空冷して製造されるため、金属組織は、フェライト・パーライトとなる。フェライト・パーライト以外に、マルテンサイトとオーステナイトとの混成物(Martensite-Austenite Constituent、MA)が生成することがあるが、面積率で5%未満である。本発明の圧延H形鋼の金属組織は、フェライト・パーライトからなり、フェライト・パーライトの面積率は95%以上である。
フェライト粒径は、特に、降伏強度に影響する。フェライト粒径が微細化すると、降伏強度が高くなり、降伏比を低下させるため、下限を15.0μm以上とし、18.0μm以上であることが好ましい。フェライト粒径は大きいほど降伏比が低下するので好ましいが、50.0μmを超えることはないため、50.0μm以下とする。フェライト粒径は、40.0μm以下であってもよい。
フェライト/パーライト硬さ比は、フェライトの硬さをパーライトの硬さで除した比、即ち、(フェライト硬さ)/(パーライト硬さ)である。フェライトの硬さ、パーライトの硬さは、それぞれ、ビッカース硬さであり、金属組織を観察しながら、JIS Z 2244のマイクロビッカース硬さ試験に準拠して測定する。YRを低減させるためには、降伏強度に寄与するフェライトの硬さの上昇を抑制し、引張強度に寄与するパーライトの硬さを向上させることが必要である。本発明ではYR≦0.80とするために、フェライト/パーライト硬さ比を0.60以下とし、好ましくは0.50以下とする。
図3に示すH形鋼の金属組織の観察および機械試験は、H形鋼の幅方向断面におけるフランジの板厚(tf)の外側から1/4の位置((1/4)tf)かつフランジ幅(F)の外側から1/6の位置((1/6)F)から試料を採取して行う。
フランジの機械的性質はフランジ幅方向、厚み方向で変動する。図3の(1/4)tfかつ(1/6)Fの位置において、金属組織および機械特性を評価するのは、(1/6)Fの位置が圧延時に最も温度の低いフランジ先端とフランジ中央の中間近くであり、かつJIS、EN、ASTMなどで強度試験の規格部位とされることもある位置であるため、(1/4)tfかつ(1/6)Fの位置がH形鋼の平均的な組織及び材質を示すと判断したためである。
製鋼工程では、上述のように、溶鋼の化学成分を調整した後、鋳造し、鋼片を得る。鋳造は、生産性の観点から、連続鋳造が好ましい。また、鋼片の厚みは、生産性の観点から、200mm以上とすることが好ましく、偏析の低減や、熱間圧延における加熱温度の均質性などを考慮すると、350mm以下が好ましい。
鋼片の加熱温度は、1100〜1350℃とする。加熱温度が1100℃未満であると、圧延温度が低くなり、高温で仕上圧延を行っても、フェライトの硬さが上昇して、フェライト/パーライト硬さ比が高くなり、YRが上昇する。Vなど、析出物を形成する元素を十分に固溶させるため、鋼片の加熱温度の下限を1150℃以上とすることが好ましい。特に、板厚が薄い場合は、累積圧下率が大きくなるため、1200℃以上に加熱することが好ましい。一方、加熱温度が1350℃を超えると、素材である鋼片の表面の酸化物が溶融して加熱炉内が損傷することがある。加熱温度は、鋼片の表面の酸化促進に起因する歩留まりの低下を抑制するために、1300℃以下であることが好ましい。
熱間圧延は、常法で行えばよいが、鋼片を加熱した後、オーステナイト未再結晶域での圧延を行わないことが好ましい。オーステナイト未再結晶域での圧延を行うと、フェライトの核生成頻度が増加し、結晶粒径が微細化して降伏点が高くなり、YRが上昇する。圧延H形鋼の形状精度等を考慮すれば、熱間圧延の仕上温度は、フェライト変態の開始温度であるAr3以上とすることが好ましい。本発明では、熱間圧延の仕上温度は、フェライト粒径の過剰な微細化を抑制するために800℃以上とする。熱間圧延の仕上温度は、YRを低下させるために、830℃以上であることが好ましい。
なお、鋼片の厚みと製品の厚みに応じて、熱間圧延の前に粗圧延を行っても良い。本発明では、熱間圧延後の冷却は、水冷装置2aを用いず、空冷する。
図5は本発明の実施形態による圧延H形鋼のフランジ溶接継手を断面図で示す説明図である。図5(a)は、圧延H形鋼のフランジ溶接継手をなす多層盛り突合せ溶接継手10(以下単に「溶接継手10」と記載することがある)を断面で表した図である。図5に示すように、溶接継手10は、被溶接材としての開先背側母材11と開先肩側母材12を溶接金属14を介して接合し、裏面に裏当て金13を有している。
ここで、本発明の圧延H形鋼のフランジ溶接継手10を含む具体的な構造物は特に限定されることはなく、例えば建物の柱及び梁による構造物等を挙げることができる。この場合、例えばフランジ溶接継手10をなす多層盛り突合せ溶接は梁端部と通しダイヤフラム端面との接合、又は梁端部と柱表面との接合に用いられている。以下、本実施形態による溶接継手10の各構成について説明する。ただし、裏当て金13は周知の構成であるから説明を省略する。
また、開先肩側母材12は、上述した本発明の圧延H形鋼であり、開先角度で傾斜した開先面12aを有している。開先角度は例えば30〜45度程度であるが、開先角度は任意に設定できる。開先形状はJIS Z 3001で定義されるレ形開先、K形開先、J形開先及び両面J形開先のいずれであってもよい。このような開先形状に形成された開先肩側母材12の開先部と開先背側母材11とが、JIS Z 3001で定義される突合せ継手、T継手、または角継手となるように配置され、この部位における開先背側母材11と開先肩側母材12との間隙(開先部)に多層盛り溶接によって溶接金属14が形成される。溶接金属14は、さらに次のような特徴を有している。
さらに、溶接金属14は、最も外側に配置される層(最終層)のビードについて、図5(a)、(b)に示すように、最終層の1パス目の第一溶接ビード14aを開先肩側母材12の開先肩部Bの領域に最初に配置される。そして、開先肩側の第一溶接ビード14aに続いて開先背側母材11の開先背側に向けて第二溶接ビード14b、第三溶接ビード14cを順次配置し、開先背側母材11の開先背側が最終パスとなるような順に多層盛りで積層する。このような最終層のパス順については、溶接金属部の外観目視観察でも確認できるが、断面マクロ試験によればより確実に確認できて好ましい。
また、本実施形態による溶接金属14では、第二溶接ビード14bの第一溶接ビード14aとの止端部をDとし、この止端部Dと第一溶接ビード14aの止端部Cとの距離をbとすると、距離bが15mm以下であれば、第一溶接ビード14aのHAZ(溶接熱影響部)15が第二溶接ビード14bによって確実に焼き戻され、これによる靭性改善効果を効率的に得ることができて好ましい。
特に本発明による圧延H形鋼を開先肩側母材12として用いると、バナジウムを含むために上述した距離aや距離bの範囲外であってもHAZ(溶接熱影響部)15の焼き戻しによる靭性改善効果を得られる。
表1および表2に示す成分組成を有する鋼を溶製し、連続鋳造により、厚みが240〜300mmの鋼片を製造した。鋼の溶製は転炉で行い、一次脱酸し、合金を添加して成分を調整し、必要に応じて真空脱ガス処理を行った。
得られた鋼片を加熱し、表3および表4に示す加熱温度に加熱し、粗圧延機2を用いて粗圧延を行った。続いて、中間ユニバーサル圧延機1と、その前後に設けたパス間の水冷装置2aとを用いて、フランジ外側面のスプレー冷却とリバース圧延を行った。その後、表3および表4に示す仕上温度で仕上げ圧延を行って、熱間圧延を終了し、空冷し、H形鋼を製造した。表1および表2に示した成分は、製造後のH形鋼から採取した試料を化学分析して求めた。
なお、この箇所の特性を求めたのは、図3に示すフランジ幅(F)の外側から1/6の位置((1/6)F)が、H形鋼の平均的な機械特性を示すと判断したためである。
更に、JIS Z 3158に準拠したy形溶接割れ試験方法によって溶接性を評価した(割れの有無)。
更に、JIS Z 2244のマイクロビッカース硬さ試験に準拠し、フェライトの硬さ及びパーライトの硬さを測定し、フェライト/パーライト硬さ比、即ち、(フェライト硬さ)/(パーライト硬さ)を求めた。
結果を表3および表4に示す。
y割れ試験は、y形溶接割れ試験方法による溶接性の評価であり、割れの有無を示している。機械特性の目標値は、常温の降伏点(YP)又は0.2%耐力が385MPa以上、引張強度(TS)が550MPa以上、かつTS/YPで計算される降伏比(YR)が0.80以下、伸びが14.0%以上であり、母材および溶接部のシャルピー吸収エネルギー(衝撃値)が70J/cm2以上である。
No.20、22、24及び26は、それぞれ、C、Si、Mn及びVが不足し、強度が低下した例である。
No.21、23、28、29及び32は、C、Si、Cu、Ni及びTiの含有量が過剰であり、No.35はCeqが大きいため、溶接部の靱性が低下した例である。
No.27はV含有量が多く、母材及び溶接部の靱性が低下した例であり、No.25はMn含有量が多く、母材及び溶接部の靱性が低下し、溶接性(割れの有無)も低下している。
No.31はAl含有量が多く、No.33はO含有量が過剰であるため、母材の靱性が低下している。
No.34はN含有量が多く、結晶粒径が微細になり、YRが上昇し、溶接性も低下した例である。
No.36は仕上温度を低くした例であり、結晶粒が微細化し、YRが上昇した例である。
No.37は加熱温度を低くした例であり、フェライト/パーライト硬さ比が大きく、YRが上昇している。
No.38はNに対してTiの添加量が不足しており、VNにより結晶粒径が微細化してYRが上昇し、Nの影響によって溶接性も低下した例である。
作製した2種の溶接継手を用いて図7に示す位置のフルサイズシャルピー衝撃試験片を採取した。なお、パス間温度はいずれの試験でも各層の溶接において、最大温度で350℃以下となるように溶接を行った。また、入熱についても各層の溶接を14J/cm〜41J/cmで行っている。また、開先は、ルートギャップを7mm、開先角度を35度、及び開先幅を35mmとしている。シャルピー衝撃試験片の形態及び試験はJIS Z 2242に準じている。ここではノッチ最深部のうち試験片厚さ方向(図7の上下方向)の中央(図7の符号Aの位置)がフュージョンライン(FL)16上にある試験片、同様に当該中央がフュージョンライン16から母材表面に平行に母材側に距離0.5mm移動した位置にある試験片(FL+0.5mm)、及び、当該中央がフュージョンライン16から母材表面に平行に母材側に距離1.0mm移動した位置にある試験片(FL+1.0mm)をそれぞれ作製して試験をした。
表5に試験材の化学成分を示し、表6に衝撃試験結果を示す。表6に示す試験結果からわかるように、全ての試験部位において各実施例のシャルピー吸収エネルギーが比較例よりも増加しており、靱性に関する改善が見られた。
2a 水冷装置
3 仕上圧延機
10 フランジ溶接継手、(多層盛り突合せ)溶接継手
11 開先背側母材
12 開先肩側母材
12a 開先面
13 裏当て金
14 溶接金属
14a 最終層の第一溶接ビード
14b 最終層の第二溶接ビード
14c 最終層の第三溶接ビード
15 熱影響部
16 フュージョンライン
Claims (7)
- 質量%で、
C:0.10〜0.25%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:0.70〜1.80%、
V:0.06〜0.20%、
N:0.001〜0.004%、
Ti:0.003〜0.015%
を含有し、
Nb:0.010%以下、
Al:0.06%以下、
O:0.0035%以下
に制限し、
Ti/N:3.0〜15.0
を満足し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
下記の式1によって求められるCeqが0.420以下であり、
金属組織がフェライト・パーライトからなり、
フェライト粒径が15.0〜50.0μmであり、
下記の式2によって求められるフェライト/パーライト硬さ比が0.60以下であることを特徴とする圧延H形鋼。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(式1)、
フェライト/パーライト硬さ比=(フェライト硬さ)/(パーライト硬さ)・・・(式2)。
但し、(式1)のC、Si、Mn、Cr、Mo、V、Niは、各元素の含有量[質量%]であり、元素を含有しない場合は0として計算する。 - 更に、質量%で、
Cu:0.30%以下、
Ni:0.20%以下、
Mo:0.30%以下、
Cr:0.05%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の圧延H形鋼。 - 更に、質量%で、
REM:0.010%以下、
Ca:0.0050%以下
の一方又は双方を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の圧延H形鋼。 - 請求項1〜3の何れか1項に記載の圧延H形鋼の製造方法であって、請求項1〜3の何れか1項に記載の成分からなる鋼片を1100〜1350℃に加熱し、仕上げ温度800℃以上で熱間圧延した後、空冷することを特徴とする圧延H形鋼の製造方法。
- 請求項1〜3の何れか1項に記載された圧延H形鋼のフランジ溶接継手であって、
該圧延H形鋼のフランジ溶接継手の溶接金属は、互いに溶接接合される部材の片側のみに設けられる開先が前記圧延H形鋼のフランジ端部に設けられ、この開先部に多層盛り溶接されて形成されており、
前記多層盛り溶接の最終層の第一溶接ビードが前記開先の肩部側に形成され、順次開先背側に向けて溶接盛りしてなる最終層が形成されており、
前記溶接金属に隣接する圧延H形鋼側の熱影響部は、フランジ表面部で母材側に膨出することなくほぼ開先面に沿って形成されていることを特徴とする圧延H形鋼のフランジ溶接継手。 - 前記開先が、レ形開先、K形開先、J形開先及び両面J形開先のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の圧延H形鋼のフランジ溶接継手。
- 前記フランジ溶接継手が、突合せ継手、T継手及び角継手のいずれかであることを特徴とする請求項5又は6に記載の圧延H形鋼のフランジ溶接継手。
Applications Claiming Priority (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014224111 | 2014-11-04 | ||
JP2014224111 | 2014-11-04 | ||
JP2014259128 | 2014-12-22 | ||
JP2014259128 | 2014-12-22 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2016117945A true JP2016117945A (ja) | 2016-06-30 |
JP6631170B2 JP6631170B2 (ja) | 2020-01-15 |
Family
ID=56243809
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015216945A Active JP6631170B2 (ja) | 2014-11-04 | 2015-11-04 | 圧延h形鋼及びその製造方法、並びに圧延h形鋼のフランジ溶接継手 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6631170B2 (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018117228A1 (ja) * | 2016-12-21 | 2018-06-28 | 新日鐵住金株式会社 | H形鋼及びその製造方法 |
JP6421907B1 (ja) * | 2018-03-23 | 2018-11-14 | 新日鐵住金株式会社 | 圧延h形鋼及びその製造方法 |
CN114318154A (zh) * | 2021-12-29 | 2022-04-12 | 本钢板材股份有限公司 | 一种高洁净度焊丝钢l-s3及其制备方法 |
-
2015
- 2015-11-04 JP JP2015216945A patent/JP6631170B2/ja active Active
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018117228A1 (ja) * | 2016-12-21 | 2018-06-28 | 新日鐵住金株式会社 | H形鋼及びその製造方法 |
JP6468408B2 (ja) * | 2016-12-21 | 2019-02-13 | 新日鐵住金株式会社 | H形鋼及びその製造方法 |
JPWO2018117228A1 (ja) * | 2016-12-21 | 2019-04-04 | 新日鐵住金株式会社 | H形鋼及びその製造方法 |
JP6421907B1 (ja) * | 2018-03-23 | 2018-11-14 | 新日鐵住金株式会社 | 圧延h形鋼及びその製造方法 |
WO2019180957A1 (ja) * | 2018-03-23 | 2019-09-26 | 日本製鉄株式会社 | 圧延h形鋼及びその製造方法 |
KR20190111920A (ko) | 2018-03-23 | 2019-10-02 | 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 | 압연 h형강 및 그 제조 방법 |
EP3572547A4 (en) * | 2018-03-23 | 2020-07-29 | Nippon Steel Corporation | H-SHAPED ROLLED STEEL AND ITS MANUFACTURING PROCESS |
CN114318154A (zh) * | 2021-12-29 | 2022-04-12 | 本钢板材股份有限公司 | 一种高洁净度焊丝钢l-s3及其制备方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP6631170B2 (ja) | 2020-01-15 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP3042976B1 (en) | Steel sheet for thick-walled high-strength line pipe having exceptional corrosion resistance, crush resistance properties, and low-temperature ductility, and line pipe | |
JP6435122B2 (ja) | 冷間プレス成形角形鋼管用厚鋼板、冷間プレス成形角形鋼管、及び溶接方法 | |
JP6665525B2 (ja) | 低温用h形鋼及びその製造方法 | |
JP6354572B2 (ja) | 低温用h形鋼及びその製造方法 | |
JP2008261046A (ja) | 溶接性および塑性変形能に優れた高張力鋼材、並びに冷間成形鋼管 | |
JP5760519B2 (ja) | 靭性に優れる圧延h形鋼およびその製造方法 | |
JP6645107B2 (ja) | H形鋼及びその製造方法 | |
JP2006089789A (ja) | 音響異方性が小さく、溶接性に優れた低降伏比高張力鋼板およびその製造方法 | |
JP7262288B2 (ja) | 母材と溶接熱影響部の靭性に優れかつ音響異方性の小さい高強度低降伏比厚鋼板およびその製造方法 | |
WO2014175122A1 (ja) | H形鋼及びその製造方法 | |
JP2005264208A (ja) | 耐震性に優れた低降伏比h形鋼およびその製造方法 | |
JP5347827B2 (ja) | 音響異方性に優れた高降伏点490MPa級溶接構造用鋼およびその製造方法 | |
JP6631170B2 (ja) | 圧延h形鋼及びその製造方法、並びに圧延h形鋼のフランジ溶接継手 | |
JPWO2014156175A1 (ja) | 厚肉鋼管用鋼板、その製造方法、および厚肉高強度鋼管 | |
JP6390813B2 (ja) | 低温用h形鋼及びその製造方法 | |
JP6354571B2 (ja) | 圧延h形鋼及びその製造方法 | |
JP6589503B2 (ja) | H形鋼及びその製造方法 | |
JP6421638B2 (ja) | 低温用h形鋼及びその製造方法 | |
JP6421907B1 (ja) | 圧延h形鋼及びその製造方法 | |
JP2007277629A (ja) | 極厚鋼材及びその製造方法 | |
JP6662156B2 (ja) | 低温用h形鋼及びその製造方法 | |
JP2004269905A (ja) | フィレット部の靭性の高い高パス間温度多層盛り溶接用h形鋼及びその製造方法 | |
EP2644731B1 (en) | Electron-beam welded joint, steel material for electron-beam welding, and manufacturing method therefor | |
JP7372577B2 (ja) | ボックス柱 | |
TWI733497B (zh) | 箱型柱 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20180704 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20181019 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20190410 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20190423 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20190613 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20191112 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20191125 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 6631170 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |