以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。まず、図1を参照して、画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置1は、電子写真方式のモノクロレーザプリンタである。なお、本発明は、プリンタのほか、複写機、ファクシミリ、あるいは、これらのいずれか2つ又は3つの機能を備える複合機であってもよい。また、モノクロ画像形成装置に限らず、カラー画像形成装置であってもよい。
図1に示すように、画像形成装置1には、画像を形成する画像形成部2と、記録媒体としての用紙Pを供給する記録媒体供給部3と、供給された用紙Pに画像を転写する転写部4と、用紙Pに転写された画像を定着する定着装置5と、画像が定着された用紙Pを装置外に排出する排出部6と、が設けられている。
画像形成部2は、ドラム状の感光体7と、感光体7の表面を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ8と、感光体7の表面を露光して潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置9と、感光体7の表面にトナー(現像剤)を供給して潜像を可視画像化する現像手段としての現像ローラ10と、感光体7の表面をクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニングブレード11と、を備えている。
印刷動作開始の指示があると、画像形成部2において、感光体7が回転を開始し、帯電ローラ8によって感光体7の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置9が感光体7の表面を露光することで、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像ローラ10からトナーが供給され、感光体7上にトナー画像が形成される。
感光体7上に形成されたトナー画像は、転写部4に配置された転写ローラ15と感光体7との間の転写ニップにおいて用紙Pに転写される。この用紙Pは、記録媒体供給部3から供給されたものである。記録媒体供給部3では、給紙カセット12に収容されている用紙Pが給紙ローラ13によって1枚ずつ送り出される。送り出された用紙Pは、タイミングローラ対14によって感光体7上のトナー画像とタイミングを合わせて転写ニップへ搬送される。そして、転写ニップにおいて、感光体7上のトナー画像が用紙Pに転写される。また、トナー画像の転写が行われた後、感光体7上に残留するトナーは、クリーニングブレード11によって除去される。
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置5へ搬送される。そして、定着装置5において、用紙Pが定着ベルト21と加圧ローラ22との間を通過する際に加熱及び加圧されることで、トナー画像が用紙Pに定着される。その後、用紙Pは、排出部6に搬送され、排紙ローラ対16によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
次に、図2~図6に基づき、本発明の第1実施形態に係る定着装置の構成について詳しく説明する。
図2は、定着装置の側面断面図、図3は、定着装置の斜視断面図、図4は、定着装置の正面断面図である。また、図5は、定着ベルトを支持するベルト支持部材の斜視図、図6は、ベルト支持部材の変形例を示す斜視図である。
図2に示すように、定着装置5は、定着ベルト21と、加圧ローラ22と、ハロゲンヒータ23と、ニップ形成部材24と、ステー25と、反射部材26と、ガイド部材27と、温度センサ28と、を備えている。
定着ベルト21は、用紙Pに未定着画像Tを定着させる筒状の定着部材であり、用紙Pの未定着画像担持面側に配置される。本実施形態では、定着ベルト21が、ニッケルやSUS等の金属材料やポリイミドなどの樹脂材料で形成された内周側の基材と、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などで形成された外周側の離型層と、を有する無端状のベルト(フィルムも含む。)で構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡シリコーンゴム、あるいはフッ素ゴムなどのゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。この弾性層の厚さを100μm程度にすれば、未定着画像(未定着トナー)を押し潰して定着させるときに弾性層の弾性変形により、ベルト表面の微小な凹凸を吸収でき、光沢ムラの発生を回避できる。また、本実施形態では、定着ベルト21の低熱容量化の観点から、定着ベルト21として、薄肉で小径のベルトを採用している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、離型層のそれぞれの厚さを、20~50μm、10~50μmの範囲に設定し、定着ベルト21全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト21が弾性層を有する場合は、弾性層の厚さを、100~300μmに設定するとよい。さらに低熱容量化を図るには、定着ベルト21全体としての厚さが0.2mm以下であることが望ましく、0.16mm以下がより望ましい。また、本実施形態では、定着ベルト21の直径が、20~40mmに設定されている。定着ベルト21の直径は、30mm以下であることが望ましい。
加圧ローラ22は、定着ベルト21の外周面に対向するように配置された対向部材である。本実施形態では、加圧ローラ22が、芯金と、芯金の表面に設けられた発泡性シリコーンゴムやフッ素ゴムなどから成る弾性層と、弾性層の表面に設けられたPFAやPTFEなどから成る離型層と、で構成されている。また、本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。中空ローラの場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータなどの加熱部材を配置することも可能である。また、加圧ローラ22の弾性層は、ソリッドゴムでもよいが、内部に加熱部材が配置されていない場合は、弾性層にスポンジゴムを用いて加圧ローラ22の断熱性を高めることが望ましい。これにより、定着ベルト21の熱が加圧ローラ22に奪われにくくなり、定着ベルト21の熱効率が向上する。
また、加圧ローラ22は、画像形成装置本体に設けられた駆動源によって図2中の矢印Aで示す方向に回転駆動するように構成されている。一方、定着ベルト21は、加圧ローラ22が回転駆動することにより、これに伴って図2中の矢印B方向に従動回転する。定着ベルト21と加圧ローラ22との間(ニップ部N)に未定着画像Tが転写された用紙Pが搬送されると、回転する定着ベルト21と加圧ローラ22とによって用紙Pが搬送されニップ部Nを通過する。このとき、用紙Pに対して熱と圧力が付与されることで、未定着画像Tが用紙Pに定着される。
また、加圧ローラ22と定着ベルト21は、互いに接近離間するように構成されている。万が一、ニップ部Nに用紙が詰まった場合は、加圧ローラ22と定着ベルト21を互いに離間させ、ニップ部Nを開放することで、詰まった用紙のジャム処理などのメンテナンス作業を行うことが可能である。加圧ローラ22と定着ベルト21とは、いずれか一方に対して他方を動かして接近離間させるように構成されていてもよいし、両方を動かすことで接近離間させる構成であってもよい。
ハロゲンヒータ23は、定着ベルト21の内側に配置され、赤外線光を放射することで、定着ベルト21やニップ形成部材24を輻射熱により加熱する加熱部材である。加熱部材として、ハロゲンヒータ23以外に、カーボンヒータやセラミックヒータなどを用いることも可能である。
ニップ形成部材24は、加圧ローラ22との間で定着ベルト21を挟んでニップ部Nを形成するものである。詳しくは、ニップ形成部材24は、定着ベルト21の内側でベルト幅方向に渡って長手状に配置されており、定着ベルト21の内周面に接触する平板状のニップ形成部24aと、ニップ形成部24aのベルト回転方向Bの両端部から加圧ローラ22側とは反対側に屈曲する一対の屈曲部24bと、を有している。加圧ローラ22がバネなどの加圧手段によってニップ形成部材24側に加圧されることで、加圧ローラ22と定着ベルト21とが接触し、これらの間にニップ部Nが形成される。
ニップ形成部24の定着ベルト21側のニップ形成面24cは、定着ベルト21の内周面に対して直接接触している。このため、定着ベルト21が回転したとき、定着ベルト21はニップ形成面24cに対して摺動する。ニップ形成面24cの耐摩耗性や摺動性を向上させるために、ニップ形成面24cにアルマイト処理やフッ素樹脂系材料を塗布してもよい。さらに、経時的な摺動性の確保のために、ニップ形成面24cにフッ素系グリース等の潤滑剤を塗布してもよい。本実施形態では、ニップ形成面24cが、平坦面状となっているが、凹形状やその他の形状であってもよい。例えば、ニップ形成面24cが加圧ローラ22側とは反対側へ凹んだ凹形状である場合は、ニップ部Nの出口部が加圧ローラ22寄りになり、定着ベルト21に対する用紙の分離性が向上する。
また、ニップ形成部材24は、ステー25よりも熱伝導率が大きい材料で形成されている。例えば、ニップ形成部材24の材料として、銅(熱伝導率:398W/mk)やアルミニウム(熱伝導率:236W/mk)などが好ましい。このように、ニップ形成部材24が熱伝導率の大きい材料で形成されていることで、ハロゲンヒータ23からの輻射熱はニップ形成部材24によって吸収され定着ベルト21へ効率良く伝達される。例えば、ニップ形成部材24の厚みを1mm以下に設定することで、ニップ形成部材24から定着ベルト21への熱伝達時間を短くすることができ、定着装置5の立ち上がり速度を速めることができる。反対に、ニップ形成部材24の厚みを1mmより大きく5mm以下に設定した場合は、ニップ形成部材24の蓄熱性を高めることが可能である。
ステー25は、加圧ローラ22の加圧力に抗してニップ形成部材24を支持する支持部材である。本実施形態では、平板状の一対のステー25がハロゲンヒータ23を挟んで両側に配置されている。各ステー25は、ニップ形成部材24と同様、定着ベルト21の内側でベルト幅方向に渡って長手状に配置され、ニップ形成部材24のベルト回転方向Bの両端部側に接触することで、ニップ形成部材24を支持している。このように、ニップ形成部材24が各ステー25によって支持されていることで、ニップ形成部材24の加圧方向への撓みが抑制され、長手方向に渡って均一な幅のニップ部Nが得られる。ステー25は、その剛性を確保するため、SUSやSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。また、ステー25の厚さは、好ましくは2mm以下で、より好ましくは1.2~1.6mmである。
反射部材26は、定着ベルト21の内側でハロゲンヒータ23と対向するように配置されており、ハロゲンヒータ23から放射される輻射熱(赤外線光)をニップ形成部材24側及び上方の定着ベルト21の内周面へ反射するものである。本実施形態では、一対の反射部材26が、ステー25と同様、ハロゲンヒータ23を挟んで両側に配置されている。各反射部材26は、凸曲面状に形成された反射部26aと、反射部26aの両端部に設けられた一対の屈曲部26bと、を有している。各屈曲部26bは、ステー25のニップN側の端面25a及びこれとは反対側の端面25bのそれぞれに対して係合している。これにより、反射部材26はステー25によって支持されている。
反射部26aは、ハロゲンヒータ23に対向する位置又はその近傍で最も突出するような凸曲面状に形成されている。このため、反射部26aに照射された赤外線光は、反射部26aによって図2における上方と下方とに振り分けて反射される。上方へ反射された赤外線光は、ステー25同士及び反射部材26同士の間に形成された上方の開口部を通って定着ベルト21に照射される。一方、下方へ反射された赤外線光は、ステー25同士及び反射部材26同士の間に形成された下方の開口部を通ってニップ形成部材24に照射される。また、ハロゲンヒータ23から発せられた赤外線光の一部は、反射部26aによって反射されることなく、ステー25及び反射部材26間に形成された上下の開口部を通って定着ベルト21又はニップ形成部材24へ直接照射される。このように、ハロゲンヒータ23から発せられた赤外線光は、定着ベルト21又はニップ形成部材24に対して、反射部材26によって反射されて照射される、あるいは直接照射されるため、定着ベルト21及びニップ形成部材24は反射光と直接照射光とによって効果的に加熱される。
また、反射部材26によって赤外線光が図2における上方と下方とに振り分けられることで、反射部材26間での赤外線光の反射回数を少なくすることができ、反射を繰り返すことによる赤外線光の熱エネルギーの減衰を抑制できる。また、反射部材26自体が加熱されるのも抑制できるので、ハロゲンヒータ23を長時間続けて使用しても、反射部材26が高温になり変色すること伴う反射率の低下を回避でき、高い加熱効率を維持することが可能である。
また、反射部材26は、ハロゲンヒータ23とステー25との間に介在していることで、ハロゲンヒータ23からステー25への赤外線光の照射を遮断する機能も兼ねる。これにより、ステー25が加熱されることによる無駄な熱エネルギーの消費が抑制される。さらに、本実施形態では、反射部26aが凸曲面状に形成されていることで、ステー25と反射部26aとの間に空気層(隙間)が介在しており、この空気層の断熱効果によってステー25への熱伝達がより一層抑制される。
反射部材26の特にハロゲンヒータ23側の面は、反射率を高くするような鏡面処理や表面処理がなされている。本実施形態では、反射率を分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製の紫外可視赤外分光光度計UH4150)を用いて測定し、測定時の入射角は5°である。一般的に、ハロゲンヒータは用途により色温度が異なるが、定着装置の加熱用としては色温度が2500K程度のものが用いられている。反射部材26の反射率は、発光強度の高いハロゲンヒータ23の波長、具体的には900~1600nmの波長、より好ましくは1000~1300nmの波長に対して70%以上であるのがよい。
また、反射部材26の反射と断熱の機能を、ステー25に持たせてもよい。例えば、ステー25の内面(ハロゲンヒータ23側の面)に断熱処理又は鏡面処理を施すことで、ステー25が反射部材26の機能を兼ねるように構成することができる。この場合、ステー25とは別体の反射部材26を省略することが可能である。また、ステー25を鏡面処理した場合のステー25の反射率も、上記反射部材26と同等の反射率であることが望ましい。
ガイド部材27は、回転する定着ベルト21の内周面に接触し、定着ベルト21をガイドするものである。本実施形態では、ガイド部材27が、ニップ部Nに対してベルト回転方向Bの上流側と下流側の両方に設けられている。ガイド部材27は、ステー25などに固定される取付部27aと、定着ベルト21の内周面に接触する曲面状のガイド部27bと、を有している。図3に示すように、ガイド部27bの定着ベルト21側の面(ガイド面)には、ベルト幅方向に渡って複数のリブ(突起)27cが等間隔に設けられている。この複数のリブ27cを有するガイド面に沿って定着ベルト21がガイドされることで、定着ベルト21は大きな変形を伴うことなく円滑に回転することができる。
温度センサ28は、定着ベルト21の外周面に対向して配置され、定着ベルト21の温度を検知するものである。本実施形態では、温度センサ28を、定着ベルト21に対してベルト幅方向の中央部と一端部側との2箇所に配置している。温度センサ28によって定着ベルト21の表面温度が検知され、その検知結果に基づいてハロゲンヒータ23の出力制御が行われることで、定着ベルト21の温度が所望の温度(定着温度)となるように制御される。また、温度センサ28は、接触型又は非接触型のいずれでもよい。温度センサ28としては、例えばサーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、NCセンサなど、公知の温度センサを適用可能である。
図4に示すように、定着ベルト21の両端部には、それぞれ筒状のベルト支持部材30が挿入されている。このように、定着ベルト21の両端部にベルト支持部材30が挿入されていることで、定着ベルト21は、非回転時においては基本的に定着ベルト21に対して周方向の張力は生じない、いわゆるフリーベルト方式で支持されている。
図3~図5に示すように、ベルト支持部材30は、定着ベルト21の内側に挿入されて定着ベルト21を支持するC字状の支持部30aと、定着ベルト21の端面に接触して定着ベルト21の幅方向移動(片寄り)を規制するフランジ状の規制部30bと、を有している。また、支持部30aは、図6に示す例のように、全周に渡って連続する筒状であってもよい。各ベルト支持部材30は、定着装置5を構成するフレーム部材である一対の側板31(図4参照)に固定されている。また、ベルト支持部材30には、開口部30c(図5参照)が設けられており、この開口部30cを通してハロゲンヒータ23やステー25の両端部が各側板31に支持されている。ハロゲンヒータ23やステー25は、ベルト支持部材30に支持されてもよい。
上述のように、本実施形態においては、ハロゲンヒータ23から直接照射される赤外線光と反射部材26によって反射された赤外線光とにより、ニップ形成部材24と定着ベルト21との両方が加熱される。これにより、ニップ部Nにおいては、ニップ形成部材24と定着ベルト20とが加熱されることによる熱が両方から付与されるため、ニップ部Nを効率良く加熱することが可能である。
ところで、斯かる構成の定着装置5において、さらに熱効率を向上させる対策としては、例えば、ステー25や反射部材26などの構造体の高さ(ニップ形成部材24からの高さ)を低くし、定着ベルト21に対して赤外線光が直接照射される範囲(直接加熱領域)を広げることが考えられる。しかしながら、ステー25の高さを低くすると、加圧ローラ22からの加圧力に対するステー25の剛性が低下するため、ニップ形成部材24の撓みが大きくなり、均一な幅及び均一な圧力のニップ部Nが得られにくくなる虞がある。従って、ステー25や反射部材26などの高さを単に低くすればよいと言うわけではない。
そこで、本発明の実施形態に係る定着装置5においては、ステー25の剛性を確保しつつ、定着ベルト21の直接加熱領域を広く確保するため、以下に説明するような構成を採用している。
すなわち、図7に示すように、本実施形態においては、定着ベルト21の直接加熱領域を広く確保するため、ステー25同士及び反射部材26同士を、ニップ部N側とは反対側(図の上側)に向かってそれぞれの間隔が徐々に大きくなるように互いに傾斜させている。すなわち、ステー25のハロゲンヒータ23を挟んで用紙搬送方向の上流側及び下流側に配置される対向面250同士の間隔、及び、反射部材26のハロゲンヒータ23を挟んで用紙搬送方向の上流側及び下流側に配置される対向面260同士の間隔が、それぞれニップ部Nとは反対側に向かって大きくなっている。これにより、図7に示す、定着ベルト21の幅方向と交差する断面において、一方のステー25の図の上端面25bから他方のステー25の図の上端面25bまでの幅βが、一方のステー25の図の下端面25aから他方のステー25の図の下端面25aまでの幅αよりも大きくなるようにしている(α<β)。また、これと同様の関係が、一対の反射部材26においても成立している。
このように、本発明の実施形態に係る定着装置5においては、各ステー25及び各反射部材26が互いに傾斜して配置され、それぞれの間隔が図7の上側に向かって大きくなるように構成されていることで、ステー25間及び反射部材26間の図の上側の開口部の幅W1が、図26に示すような一対のステー25が互いに平行に配置された例に比べて大きくなる(W1>W3)。これにより、ハロゲンヒータ23から定着ベルト21に対して赤外線光が直接照射される範囲(直接加熱領域)を広く確保することができるようになり、定着ベルト21の熱効率を向上させることができる。また、定着ベルト21の直接加熱領域が広くなることで、ハロゲンヒータ23の点灯制御(発熱制御)に対する定着ベルト21の熱応答性も向上させることができる。
また、本発明の実施形態に係る定着装置5においては、ステー25同士及び反射部材26同士の各間隔が図7の上側に向かって大きくなるようにしていることで、反対に、ステー25間及び反射部材26間の図7の下側の開口部の幅W2が、図26に示す例に比べて小さくなる(W2<W4)。このため、本発明の実施形態に係る定着装置5においては、図7に示すように、ニップ形成部材24の通紙方向(記録媒体通過方向)の幅γを小さくすることができる。なお、このニップ形成部材24の通紙方向の幅γは、ニップ形成部材24の通紙方向の上流側先端から下流側先端までの幅である。このように、ニップ形成部材24の通紙方向の幅γを小さくできることで、ニップ形成部材24が撓みにくくなるため、加圧ローラ22からの加圧力に対するニップ形成部材24の剛性が高まり、均一な幅及び圧力のニップ部Nが得られるようになる。また、ニップ形成部材24の通紙方向の幅γが小さくなることで、定着装置5の小型化も図れるようになる。
なお、図7における各ステー25の下端面25aは、ニップ形成部材24を支持するために、ニップ形成部材24の通紙方向の幅γよりも狭い範囲内に配置される必要がある。すなわち、図7に示す、定着ベルト21の幅方向と交差する断面において、一方のステー25の下端面25aから他方のステー25の下端面25aまでの幅αは、ニップ形成部材24の通紙方向の幅γよりも小さく設定されている。よって、本実施形態においては、一方の下端面25aから他方の下端面25aまでの幅α、一方の上端面25bから他方の上端面25bまでの幅β、及び、ニップ形成部材24の通紙方向の幅γは、α<γ<βの関係に設定されている。なお、この関係は、ニップ形成部材24と各反射部材26との間においても同様に成立している。
また、本発明の実施形態に係る定着装置5においては、各ステー25が図7の下端面25aから上端面25bに向かって直線状に伸びていることで、図27に示すような断面L字型のステー25に比べて、ステー25の高さH1を大きく確保しやすくなる(H1>H2)。すなわち、図27に示す例の場合は、ステー25が断面L字型に形成されていることで、ニップ形成部材24に対するステー25の接触部分の幅G2が大きくなる分、ニップ形成部材24が図の左右方向に大きくなり、その結果、定着ベルト21が上下方向に少しつぶれた円形になるため、定着ベルト21内でステー25の高さH2を確保しにくい。これに対して、図7に示す本発明の実施形態の場合は、直線状のステー25を互いに傾斜させて配置していることで、ステー25がニップ形成部材24に接触する幅G1を小さくすることができ、ニップ形成部材24の図の左右方向への広がりを抑制できるので、ステー25の高さH1を確保しやすくなる。
以上のように、本発明の実施形態に係る定着装置5においては、直線状に形成された一対のステー25を互いに傾斜させて配置するレイアウトを採用することで、ステー25の高さH1を十分に確保しながら、定着ベルト21の直接加熱領域も大きく確保することができるようになる。すなわち、本発明によれば、定着ベルト21内の限られたスペースにステー25を有効に配置することで、熱効率の向上と、ステー25の剛性の確保との、両方を実現することができる。これにより、小型でありながら、定着性や省エネ性に優れる定着装置を提供できるようになる。
また、本発明の実施形態に係る定着装置5においては、図27に示すような断面L字型のステー25を有する例とは異なり、ニップ形成部材24に対するステー25の接触幅G1を小さくすることができるので、ニップ部N側の開口部の幅W2を広く確保することができるようになる(W2>W5)。このため、ニップ形成部材24の直接加熱領域も広くなり、熱効率が一層向上する。
また、ステー25が直線状であることで、ステー25の曲げ加工を行う必要がないので、製造コストの低減も図れる。ステー25を曲げ加工する場合は、ステー25の厚さをあまり大きくすることはできない(例えば3mm以上の厚さは確保しにくい)加工上の制約があるが、本実施形態においては、ステー25を曲げ加工しなくてもよいため、ステー25の厚さを厚くすることができ、剛性を向上させることが可能である。
また、ステー25が直線状であることで、ステー25に沿って配置される反射部材26の形状の簡素化も図れる。これにより、少ない反射回数で赤外線光を定着ベルト21又はニップ形成部材24へ照射することができるようになり、反射に伴う赤外線光の減衰が抑制されるので、効果的に加熱できるようになる。また、反射部材26同士が斜めに傾斜して配置されていることで、加熱効率(反射光率)が向上する。すなわち、反射部材26が、ニップ形成部材24に対して平行な方向又は垂直な方向には配置されておらず、ニップ形成部材24に対して傾斜するように配置されていることで、ハロゲンヒータ23に向かって反射される赤外線光の量を少なくすることができ、加熱効率(反射光率)を向上させることが可能である。
なお、ステー25の形状は、必ずしも直線状でなくてもよい。一対のステー25は、そのニップ部N側からこれとは反対側に向かって互いの間隔が大きくなるように互いに傾斜していれば、多少湾曲して形成されていても構わない。例えば、図8に示す例のように、ステー25は、反射部材26の曲率に倣った曲線状であってもよい。また、図9に示す例のように、ステー25は、角度の異なる複数の直線部251,252を組み合わせた形状であってもよい。
また、図7における各ステー25の下端面25aは、ニップ形成部材24を安定して支持するため、ニップ形成部材24と平行に配置されていることが望ましい。すなわち、各ステー25の下端面25aがニップ形成部材24と平行に配置されることで、ステー25とニップ形成部材24との接触面積が増え、ニップ形成部材24の姿勢を安定させることができる。
また、各ステー25の下端面25aは、加圧ローラ22の加圧方向E(図7参照)に対して垂直に配置されていることが望ましい。このようにすることで、加圧ローラ22の加圧力を各ステー25の下端面25aによって確実に受け止めることができるようになり、ニップ形成部材24の変形を高度に抑制できるようになる。なお、本発明で言う「加圧ローラ22の加圧方向E」とは、ニップ形成部材24が加圧ローラ22から受ける加圧力の主な方向であり、具体的には、図7に示す、定着ベルト21の幅方向と交差する断面において、ニップ部Nの幅方向中央M(あるいは定着ベルト21の中心)と加圧ローラ22の中心Oとを通る直線Kと平行な方向と定義する。
図10に示すように、各ステー25は、側板31に設けられた孔部32内に挿入されることで位置決めされる。この場合、加圧ローラ22の加圧力は、各ステー25に対して図10の下方から上方に向かって作用するため、加圧力は主に孔部32の図の上側の面32aによって受けられる。そのため、加圧力を受ける孔部32の面32aと、これに接触するステー25の図の上端面25bとは、互いに平行に配置されることが望ましい。このようにすることで、これらの接触面積を大きく確保することができるようになり、側板31によってステー25を安定して支持することができるようになる。
また、加圧力を受ける孔部32の面32aと、これに接触するステー25の上端面25bとを、加圧ローラ22の加圧方向Eに対して垂直に配置することで、加圧ローラ22の加圧力を側板31によって確実に受け止めることができるようになり、ステー25の変形を抑制できるようになる。また、ステー25の上端面25bをニップ形成部材24と平行にすれば、これらの寸法管理も行いやすくなる。
また、一対のステー25は、加圧ローラ22の加圧方向Eに向かって互いの間隔が広くなるように配置されていることで、ニップ形成部材24を安定して支持することができる。すなわち、各ステー25の支持点同士の間隔が、加圧方向Eの上流側よりも下流側において広くなっているので、ニップ形成部材24はぐらつくことなく安定して支持される。
なお、ステー25は、その長手方向全体に渡って同じ断面形状で連続して形成されている場合に限らず、図11に示す例のように、その長手方向の端部側にて段差部あるいは切欠き部を有する形状に形成されていてもよい。この場合、段差部を境界に高さの異なるステー25の各上端面25b1,25b2同士は、必ずしも平行な端面である必要はなく、側板31の孔部32内に挿入される高さの低い上端面25b1以外(高さの高い上端面25b2)は板材を切断したままの端面でもよい。また、ステー25は、側板31の孔部26に挿入されて位置決めされる以外に、例えば、上記ベルト支持部材30などに設けられた孔部に挿入されて位置決めされる構成であってもよい。
以下、上述の実施形態(第1実施形態)とは異なる実施形態について説明する。主に異なる部分について説明し、それ以外の部分は基本的に上述の実施形態と同様であるので説明を省略する。
図12は、本発明の第2実施形態に係る定着装置の側面断面図である。
上述の実施形態では、ハロゲンヒータ23が1本のみ設けられているのに対して、図12に示す第2実施形態では、ハロゲンヒータ23が上下方向に2本並べて設けられている。このように、ハロゲンヒータ23を2本設けることで、ハロゲンヒータ23ごとに加熱範囲や用途を分けることができる。例えば、2本のハロゲンヒータ23のうちの一方をベルト幅方向の中央部側を加熱するヒータとし、他方をベルト幅方向の端部側を加熱するヒータとすることで、加熱範囲を異ならせることができる。また、図12における上側のハロゲンヒータ23を主に定着ベルト21を直接加熱する用途として用い、下側のハロゲンヒータ23を主にニップ形成部材24を加熱する用途として用いてもよい。
図13は、本発明の第3実施形態に係る定着装置の側面断面図である。
上述の実施形態では、ステー25と反射部材26とがそれぞれの端部側で直接的に接触しているのに対して、図13に示す第3実施形態では、ステー25と反射部材26との間に、ステー25や反射部材26よりも熱伝導率の低い低熱伝導部材33を介在させている。すなわち、ステー25と反射部材26とは、低熱伝導部材33を介して間接的に接触している。このように、ステー25と反射部材26とが低熱伝導部材33を介して接触していることで、反射部材26からステー25への熱伝達が抑制され、無駄な熱エネルギーの消費をより一層低減できるようになる。
図14は、本発明の第4実施形態に係る定着装置の側面断面図である。
上述の実施形態では、一対のステー25が、ハロゲンヒータ23の中心Qと加圧ローラ22の中心Oとを通る直線U(図7参照)に対して、互いに線対称となるように配置されているのに対して、図14に示す第4実施形態では、一対のステー25が互いに非線対称に配置されている。具体的には、図14において、左側(ニップ出口側)のステー25がニップ形成部材24に対して傾斜して配置されているのに対して、右側(ニップ入口側)のステー25はニップ形成部材24に対してほぼ直交するように配置されている。さらに、図14における右側のステー25は、同図の左側のステー25よりも図の上下方向の長さ(ニップ部N側の端面25aからこれとは反対側の端面25bまでの長さ)が短く形成されている。なお、ここでいう端面とは、少なくとも用紙が通過する領域における端面を意味する。
このような非線対称に配置された一対のステー25を備える構成においても、各ステー25が、図14の上側(ニップ部Nとは反対側)に向かって互いの間隔が大きくなるように互いに傾斜して配置されていることで、上述の実施形態と同様の効果を奏することとが可能である。
図15は、本発明の第5実施形態に係る定着装置の側面断面図である。
図15に示す第5実施形態では、各ステー25及び各反射部材26のハロゲンヒータ23に近い部分に、それぞれ貫通孔25c,26cを設け、これらの貫通孔25c,26cを通してハロゲンヒータ23からの赤外線光が定着ベルト21に直接照射されるようにしている。このような貫通孔25c,26cを有しない実施形態(例えば図7に示す実施形態)においては、ハロゲンヒータ23から照射された光の一部がハロゲンヒータ23に近い位置で反射されると、その反射光は定着ベルト21やニップ形成部材24に照射されずハロゲンヒータ23へ照射される。あるいは、反射回数が多くなって、定着ベルト21又はニップ形成部材24に赤外線光が照射されたとしても、熱エネルギーが減衰するため、加熱効率が低下してしまう。このように、貫通孔25c,26cを有しない実施形態においては、一部の赤外線光が定着ベルト21又はニップ形成部材24を加熱するエネルギーとして有効活用できない場合がある。これに対して、図15に示す第5実施形態では、各ステー25及び各反射部材26のハロゲンヒータ23に近い部分にそれぞれ貫通孔25c,26cが設けられていることで、貫通孔25c,26cを通して赤外線光を定着ベルト21に直接照射することができるようになり、熱効率を向上させることができる。
また、図15に示すように、ステー25の貫通孔25cの径(幅)d1は、反射部材26の貫通孔26cの径(幅)d2よりも大きく設定されていることが好ましい。ハロゲンヒータ23から放射される赤外線光は、ハロゲンヒータ23から遠ざかるにつれて広がる傾向にあるため、ステー25の貫通孔25cの径d1が反射部材26の貫通孔26cの径d2と同じか又は小さいと、反射部材26の貫通孔26cを通過した赤外線光の一部が、ステー25の貫通孔25cの縁に当たって遮られる。そのため、図15に示すように、ステー25の貫通孔25cの径d1を、反射部材26の貫通孔26cの径d2よりも大きくすることで、ステー25の貫通孔25cの縁への赤外線光の照射を回避することができるようになる。これにより、定着ベルト21に直接照射される赤外線光の量を多くすることができると共に、ステー25への無駄な熱エネルギーの消費を低減できるようになる。
また、図16に示す例のように、貫通孔25c,26cの形状を楕円状にしてもよい。この場合、各貫通孔25c,26cは、加圧ローラ22の加圧方向Eに対して交差する方向に長くなるように形成されることが望ましい。このようにすることで、ステー25及び反射部材26の加圧方向Eの断面係数を確保でき、強度を維持しやすくなる。
また、図17の左側の例に示すように、貫通孔25c,26cを長方形状に形成してもよい。しかしながら、長方形状の貫通孔25c、26cにおいて、楕円状の貫通孔25c,26cと同じ開口幅を確保しようとすると、特に貫通孔25c,26cの長手方向の端部側で貫通孔25c,26cの加圧方向Eの開口幅が大きくなるため(h1>h2)、開口幅をある程度確保しつつ、さらに強度の確保も実現するには、長方形状よりも楕円状である方が望ましい。
図18は、図15における上方又は下方から、ステー25、反射部材26及びハロゲンヒータ23を見た断面図である。
図18に示す例では、ハロゲンヒータ23を挟んで互いに反対側に配置された各貫通孔25c,26cが、ベルト幅方向(図の上下方向)において互いにずらされた位置に設けられている。このように、図18において、右側の各貫通孔25c,26cと左側の各貫通孔25c,26cとをずらして設けることで、一方側の各貫通孔25c,26cを通して赤外線光が照射される領域と、他方側の各貫通孔25c,26cを通して赤外線光が照射される領域とが、ベルト幅方向において重ならないようにすることができる。これにより、定着ベルト21に対して赤外線光が直接照射されない領域を、ベルト幅方向に渡って無くす、又は少なくすることができ、定着ベルト21をほぼ均一に加熱することができるようになり、温度ムラによる定着不良を防止できるようになる。
図19は、本発明の第6実施形態に係るステーの斜視図である。
図19に示す第6実施形態のように、一対のステー25を一体に構成してもよい。図19に示す例では、ステー25が、互いに傾斜して配置された一対の側壁部41と、各側壁部41の長手方向両端部を連結する底壁部42と、で構成されている。このように、一対のステー25を一体に構成することで、2つのステー25を個別に位置決めしたり組付けたりする必要がなくなり、組立性やメンテナンス性が向上する。また、図19に示す例では、一端部側の底壁部42と他端部側の底壁部42との間に開口部40が形成されており、この開口部40を通してハロゲンヒータ23からの赤外線光が定着ベルト21に直接照射される。この開口部40の幅Yは、最大通紙幅Wmaxよりも大きく設定されていることが望ましい。なお、本明細書でいう「最大通紙幅(最大記録媒体通過幅)」とは、用紙(記録媒体)の位置ずれやスキューがない状態で用紙が理想的に搬送された場合に用紙が通過する幅領域を意味する。
図20~図22は、本発明の第7実施形態に係るニップ形成部材24を示す図である。
図20に示すように、本発明の第7実施形態では、ニップ形成部材24(ニップ形成部24a)のハロゲンヒータ側の受光面24dに、受光面24dに対して傾斜する複数の傾斜面24eが設けられている。各傾斜面24eは、ニップ形成部材24の長手方向両端部側であって、最大通紙幅Wmaxの外側の領域に設けられている。
各傾斜面24eは、ベルト幅方向中央側(図20及び図21中の矢印J方向)を向くように傾斜している。このように、各傾斜面24eがベルト幅方向中央側を向くように傾斜していることで、図22に示すように、ハロゲンヒータ23から放射された赤外線光Rは傾斜面24eによってベルト幅方向中央側へ向かって反射される。そして、その反射光は、反射部材26によってさらに反射されることで、最大通紙幅Wmaxの内側の領域に照射される。
このように、第7実施形態に係る構成によれば、最大通紙幅Wmaxの外側に放射された赤外線光(輻射熱)の一部を傾斜面24eによって反射することで、最大通紙幅Wmaxの内側の領域を加熱する熱エネルギーとして使用することができ、熱エネルギー効率を向上させることができる。特に、本実施形態に係る定着装置5のように、ハロゲンヒータ23の発熱部(発熱長)23aが最大通紙幅Wmaxよりも長く形成されている場合は(図22参照)、最大通紙幅Wmaxの外側で放射される赤外線光の量が多くなるため、その一部を傾斜面24eによってベルト幅方向中央側に反射し、最大通紙幅Wmaxの内側を加熱する熱エネルギーとして積極的に利用することで、熱エネルギー効率の向上が期待できる。
また、傾斜面24eによって赤外線光を反射することで、最大通紙幅Wmaxの外側の領域ではニップ形成部材24によって吸収される熱量が減少する。これにより、連続通紙時などの最大通紙幅Wmaxの外側における過剰な温度上昇を抑制することができるようになり、定着装置の故障の虞が低減する。また、温度上昇したときに印刷速度を低下させるなどの対応も不要になり、生産性(定着速度)を向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、図20に示すように、ニップ形成部材24における最大通紙幅Wmaxの内側の受光面24dに対して黒色塗装をし、最大通紙幅Wmaxの内側での熱の吸収率を向上させている。一方、最大通紙幅Wmaxの外側の領域においては、受光面24d及び傾斜面24eに対して黒色塗装を行わず、反射率を大きくしている。
また、ニップ形成部材24における最大通紙幅Wmaxの内側の受光面24dに対して、例えばスプレーなどの塗布方式で微粒子(黒色塗料)を塗布し、最大通紙幅Wmaxの外側よりも内側で受光面24dの表面粗さが大きくなるようにしてもよい。この場合も、最大通紙幅Wmaxの外側に比べて内側での受光面24dの熱吸収率が向上するので、熱エネルギー効率が向上する。最大通紙幅Wmaxの内側における受光面24dの表面粗さRaは、0.5以上であることが望ましい。
傾斜面24eは、ニップ形成部材24に対して別体で構成することもできるが、製造コストの観点からすると、傾斜面24eをニップ形成部材24に対して一体に形成することが望ましい。本実施形態では、プレスによる絞り加工で、傾斜面24eを一体に形成している。絞り加工によって傾斜面24eを形成する場合は、絞り加工の深さZ(図22に示す傾斜面24eの高さ)を0.5mm~2mm程度にすることが望ましい。
また、絞り加工の深さZを一定にし、絞り加工の長さL(図22に示す傾斜面24eのベルト幅方向の長さ)を変更することで、傾斜面24eの傾斜角度θの大きさを適宜調整することが可能である。例えば、図23に示す例のように、ベルト幅方向の外側(図の左側)に配置された傾斜面24eの傾斜角度θ1を、ベルト幅方向の内側(図の右側)に配置された傾斜面24eの傾斜角度θ2よりも大きくすることで、ベルト幅方向の外側に配置された傾斜面24eの反射角度を大きくすることができるので、外側の赤外線光Rを最大通紙幅Wの内側の領域に向けて反射しやすくなる。
また、絞り加工によって傾斜面24eを形成した場合、図22又は図23に示すように、傾斜面24eが形成された面の裏側の面(ニップ形成面24c)に凹部24fが形成される。このように形成された凹部24f内に、グリースなどの潤滑剤を貯留してもよい。その場合、潤滑剤が凹部24f内で保持されることで、潤滑剤をニップ形成部材24と定着ベルト21との間で長期に亘って介在させることができるようになり、ニップ形成部材24や定着ベルト21の長寿命化やメンテナンス周期の延伸を図ることができる。
さらに、図24に示す例のように、凹部24fを、その長手方向がベルト回転方向Bの下流側に向かってベルト幅方向中央部側を向くように傾斜させてもよい。この場合、定着ベルト21の回転に伴って、凹部24f内に貯留されている潤滑剤が凹部24fの長手方向に沿って図24中の矢印D方向に移動するので、潤滑剤をベルト幅方向中央側へ積極的に供給することができるようになる。また、ベルト幅方向外側への潤滑剤の流出を抑制することができるので、潤滑剤をニップ形成部材24と定着ベルト21との間で長期に亘って介在させることができるようになる。
また、図20に示すように、傾斜面24eが互いに近接するように複数設けられている場合、傾斜面24e同士の間は、傾斜面24eが形成されない平坦面24gとしておくことが望ましい。このようにすることで、傾斜面24eの裏側の凹部24f同士の間も平坦面24hとなるので(図22参照)、この平坦面24hによって定着ベルト21を支持することができる。これにより、凹部24fが設けられた箇所での定着ベルト21の変形を抑制することができ、定着ベルト21の座屈破壊(キンク)などの損傷を防止できるようになる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
上述の実施形態では、一対のステー25がハロゲンヒータ23を挟んで互いに両側に配置されているが、ハロゲンヒータ23はステー25同士の間よりも図7における上方に飛び出た位置に配置されていてもよい。すなわち、本発明は、一対のステー25がハロゲンヒータ23の中心Qと加圧ローラ22の中心Oとを通る直線U(図7参照)を挟んで互いに両側に配置されていれば、一対のステー25がハロゲンヒータ23を挟むような位置に配置されていない構成においても適用可能である。また、本発明は、反射部材26を備えない定着装置にも適用可能である。すなわち、本発明において、ニップ部側からこれとは反対側に向かって互いの間隔が大きくなるように互いに傾斜して配置される2つの構造体は、ステー25と反射部材26との両方、又はこれらのうちのいずれか一方、あるいはステー25や反射部材26以外の部材であってもよい。
また、本発明に係る定着装置は、図1に示すような用紙を水平方向に搬送する定着装置5に限らない。定着装置5の設置方向は、適宜変更可能である。例えば、図25に示すような用紙を垂直方向に搬送する定着装置5にも本発明は適用可能である。