JP7280263B2 - 水性塗料組成物 - Google Patents
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Description
本発明は、低温での造膜性が良好で、防食性、硬度及び耐水性にも優れる水性塗料組成物に関する。また、前記水性塗料組成物の硬化塗膜を有する塗装物品にも関する。
近年、地球環境保護及び安全衛生上の観点から、溶剤系塗料から水系塗料への転換が進められており、金属基材等の防食塗料分野においても水性防食塗料の開発が行われている。
水性塗料においてはエマルション塗料が主流であり、エマルション塗料は溶剤系塗料と比べると溶剤の含有量は格段に少ないが、造膜性向上のために、水性といえども造膜助剤として、相当量の溶剤を塗料中に含んでいるのが実情である。
造膜助剤(溶剤)を使用することなく造膜性を向上する手法として、エマルション樹脂を軟質化する方法があるが、得られる塗膜の硬度が低下して、防食性等の塗膜性能も低下する。
特許文献1には、重合物のガラス転移温度が-30℃以下となる第1のエチレン性不飽和化合物成分(A)と、重合物のガラス転移温度が30℃以上となる第2のエチレン性不飽和化合物成分(B)とを、水性媒体中で特定の重合条件によりパワーフィード重合することを特徴とする水性エマルションの製造方法が開示されている。該製造方法により得られた水性エマルションは造膜助剤などの溶剤を使用せずに良好な低温成膜性を有し、得られた樹脂皮膜の表面のタックが少なく、かつ優れた耐久性を有することが記載されている。
しかしながら、該製造方法により得られた水性エマルションは、低温成膜性及びタック性の向上は認められるものの、得られる塗膜の硬度が不十分であり、改善が望まれる。
本発明は上記事情を勘案してなされたものであり、低温での造膜性が良好で、かつ防食性、硬度及び耐水性にも優れる水性塗料組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、少なくとも1層のグラジエントポリマー層を含み、シェル部が特定範囲の酸価であるコアシェル型アクリル樹脂粒子を含有する水性塗料組成物によれば、上記目的を達成できることを見出した。
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
(1)少なくとも1層のグラジエントポリマー層を含むコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)を含有し、
前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)のシェル部の酸価が20~100mgKOH/gの範囲内である水性塗料組成物。
(1)少なくとも1層のグラジエントポリマー層を含むコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)を含有し、
前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)のシェル部の酸価が20~100mgKOH/gの範囲内である水性塗料組成物。
(2)前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)のガラス転移温度が-10℃以上である前記(1)に記載の水性塗料組成物。
(3)前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の全共重合成分の80重量%以上が、溶解性パラメーター値が9.5以下の重合性不飽和モノマーである前記(1)又は(2)に記載の水性塗料組成物。
基材と、前記基材上に前記(1)~(3)のいずれか一に記載の水性塗料組成物の硬化塗膜とを有する塗装物品。
前記基材が金属基材である前記(4)に記載の塗装物品。
本発明の水性塗料組成物は、上記特徴を有することにより、低温での造膜性が良好で、かつ防食性、硬度及び耐水性にも優れる塗膜を形成することができる。
以下、本発明の水性塗料組成物について、さらに詳細に説明する。なお、本明細書において、‘質量%’と‘重量%’、‘質量部’と‘重量部’とは、それぞれ同義である。
本発明に係る水性塗料組成物は、少なくとも1層のグラジエントポリマー層を含むコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)を含有し、該コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)のシェル部の酸価が20~100mgKOH/gの範囲内であることを特徴とするものである。
本実施形態において、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の「シェル部」は樹脂粒子の最外層に存在する重合体層を意味し、「コア部」は上記シェル部を除く樹脂粒子内層の重合体層を意味し、「コアシェル型構造」は上記コア部とシェル部を有する構造を意味するものである。
上記コアシェル型構造は、通常、コア部がシェル部に完全に被覆された層構造が一般的であるが、コア部とシェル部の質量比率等によっては、シェル部のモノマー量が層構造を形成せしめるのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コア部の一部をシェル部が被覆した構造であってもよい。
また、上記コアシェル型構造における多層構造の概念は、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)においてコア部に多層構造が形成される場合にも同様に当てはまるものとする。
本実施形態において、グラジエントポリマー層とは、組成が連続的に変化する(組成勾配を有する)層構造を有するポリマー層を意味するものである。
より具体的には、例えばモノマーA(又はモノマー混合物A)からモノマーB(又はモノマー混合物B)へとモノマー(又はモノマー混合物)組成が連続的に変化した、組成勾配を有するポリマー層を意味するものである。
上記グラジエントポリマー層は一般に、パワーフィード重合とよばれる公知の重合方法により得ることができる。具体的には、例えば2種類のモノマーA(モノマー混合物A)とモノマーB(モノマー混合物B)とを重合反応する場合には、モノマーB(モノマー混合物B)を、モノマーA(モノマー混合物A)を収容する容器内に滴下しながら、モノマーA(モノマー混合物A)を反応容器に導入して重合反応を行うことによりグラジエントポリマー層を得ることができる。
上記パワーフィード重合において、合成条件(モノマーA(モノマー混合物A)とモノマーB(モノマー混合物B)との混合開始のタイミング、モノマーB(モノマー混合物B)をモノマーA(モノマー混合物A)を収容する容器内に滴下する速度とモノマーA(モノマー混合物A)を反応容器に導入する速度の設定等)により、所望の組成勾配を有するグラジエントポリマー層を得ることができる。
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は上記グラジエントポリマー層を少なくとも1層有するものであり、該グラジエントポリマー層はコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)中の任意の層とすることができる。
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、通常、重合性不飽和モノマーを共重合成分とする共重合体(I)であるコア部と重合性不飽和モノマーを共重合成分とする共重合体(II)であるシェル部とからなるアクリル樹脂粒子である。重合性不飽和モノマーは重合性不飽和基を有するモノマーを意味する。
本明細書において、重合性不飽和基とは、ラジカル重合し得る不飽和基を意味する。重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基等を挙げることができる。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル又はメタクリロイル」を意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
重合性不飽和モノマーとしては、重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを挙げることができる。
重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等のトリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物、該モノエステル化物のε-カプロラクトン変性体、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ-ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
これらのモノマーは、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)に要求される性能に応じて、1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等を挙げることができる。これらのモノマーは、1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーは、共重合体に架橋構造を付与する機能を有する。重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを使用する場合、その使用割合は、共重合体の架橋の程度に応じて適宜決定し得るが、通常、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの総量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、また、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、重合性不飽和モノマー混合物を乳化重合してコア部共重合体(I)のエマルションを得た後、このエマルション中に、重合性不飽和モノマー混合物を添加し、さらに乳化重合させてシェル部共重合体(II)を調製することにより得ることができる。
コア部共重合体(I)のエマルションを調製する乳化重合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、乳化剤の存在下で、重合開始剤を使用して重合性不飽和モノマー混合物を乳化重合することにより行うことができる。
上記乳化剤としてはアニオン性乳化剤及びノニオン性乳化剤を好適に使用することができる。
該アニオン性乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等のナトリウム塩やアンモニウム塩を挙げることができる。また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等を挙げることができる。
また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基とを有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤;1分子中にアニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤を使用することもできる。
上記反応性アニオン性乳化剤としては、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩、該スルホン酸化合物のアンモニウム塩等を挙げることができる。
上記乳化剤の使用量は、使用される全モノマーの総量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、また、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2-メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4、4’-アゾビス(4-シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)、アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独で又は2種以上組合せて使用することができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用して、レドックス開始剤とすることもできる。
上記重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全モノマーの総量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、また、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量等に応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含有させることもできるし、或いは重合時に一括して添加することもできるし、又は滴下することもできる。
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は上記で得られるコア部共重合体(I)のエマルションに、重合性不飽和モノマー混合物を添加し、さらに重合させてシェル部共重合体(II)を形成することによって得ることができる。
上記シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物は、必要に応じて、前記重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、乳化剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが好ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物の重合方法としては、例えば、該モノマー混合物又はその乳化物を、一括で又は徐々に滴下して、上記コア部共重合体(I)のエマルションに、添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法を挙げることができる。
かくして得られるコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、共重合体(I)をコア部とし、共重合体(II)をシェル部とする複層構造を有する。
また、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、上記コア部共重合体(I)を得る工程とシェル部共重合体(II)を得る工程の間に、他の樹脂層を形成せしめる重合性不飽和モノマー(1種または2種以上の混合物)を供給して乳化重合を行なう工程を追加することによって、3層またはそれ以上の層からなるアクリル樹脂粒子とすることもできる。
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、少なくとも1層のグラジエントポリマー層を含む樹脂粒子であるが、該グラジエントポリマー層は上記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)中の任意の層とすることができる。
グラジエントポリマー層とする樹脂層は前記したパワーフィード重合等により調製することができる。
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)中のグラジエントポリマー層の比率は、得られる塗膜の防食性及び硬度の観点から、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の全共重合成分の総量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、また、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
該比率を90質量%以下とすることにより、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)中のグラジエントポリマー層以外の層が一定以上存在し、硬質モノマー成分の存在によって一定以上の硬度を維持することができる。また、10質量%以上とすることにより、造膜性に優れ、良好な防食性が得られる。
該比率を90質量%以下とすることにより、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)中のグラジエントポリマー層以外の層が一定以上存在し、硬質モノマー成分の存在によって一定以上の硬度を維持することができる。また、10質量%以上とすることにより、造膜性に優れ、良好な防食性が得られる。
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、粒子の分散安定性と塗膜の親水性の観点からシェル部(シェル部共重合体(II)(最外層))の酸価が20mgKOH/g以上が好ましく、25mgKOH/g以上がより好ましく、30mgKOH/g以上がさらに好ましく、また、100mgKOH/g以下が好ましく、80mgKOH/g以下がより好ましく、60mgKOH/g以下がさらに好ましい。
シェル部の酸価を20mgKOH/g以上とすることにより、粒子の分散安定性が良好となり、また、100mgKOH/g以下とすることにより、塗膜の親水性が高くなりすぎて防食性や耐水性が不良となるのを防ぐことができる。
シェル部共重合体(II)に酸価を付与するためのモノマーとしては、中和剤が揮発し、成膜した後に親水性が大きく低下し、耐水性や防食性に有利になるとの観点から、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、特に、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を好適に使用することができる。
本明細書において酸価(mgKOH/g)は、試料1g(樹脂の場合は固形分1g)に含まれる酸基の量を水酸化カリウムに換算したときの水酸化カリウムのmg数で表したものである。水酸化カリウムの分子量は56.1とする。
酸価の測定は、JIS K-5601-2-1(1999)に準拠して行う。試料をトルエン/エタノール=2/1(体積比)の混合溶剤で溶解し、フェノールフタレインを指示薬として水酸化カリウム溶液で滴定し、下記式により算出する。
酸価(mgKOH/g)=56.1×V×C/m
V:滴定量(ml)、C:滴定液の濃度(mol/l)、m:試料の固形分重量(g)
V:滴定量(ml)、C:滴定液の濃度(mol/l)、m:試料の固形分重量(g)
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)のガラス転移温度(Tg)は、塗膜硬度の観点から、-10℃以上が好ましく、-5℃以上がより好ましく、0℃以上がさらに好ましい。
ガラス転移温度(Tg)を-10℃以上とすることにより、得られる塗膜硬度の低下を防ぎ、耐跡付き性を維持することができる。
ガラス転移温度(Tg)を-10℃以上とすることにより、得られる塗膜硬度の低下を防ぎ、耐跡付き性を維持することができる。
なお本明細書において、樹脂が2種以上のモノマーからなる共重合体である場合には、当該共重合体のガラス転移温度(Tg、℃)は、下記式によって算出することができる。
1/Tg(K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・(Wn/Tn)
Tg(℃)=Tg(K)-273
各式中、nは使用されたモノマーの種類数(自然数)を表し、W1~Wnは共重合に使用されたn種のモノマーのそれぞれの重量%、T1~Tnはn種の単量体のホモポリマーのそれぞれのTg(K)を表わす。なお、T1~Tnは、Polymer Hand Book(Second Edition,J.Brandup・E.H.Immergut編)III-139~179頁に記載された値を用いることができる。
1/Tg(K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・(Wn/Tn)
Tg(℃)=Tg(K)-273
各式中、nは使用されたモノマーの種類数(自然数)を表し、W1~Wnは共重合に使用されたn種のモノマーのそれぞれの重量%、T1~Tnはn種の単量体のホモポリマーのそれぞれのTg(K)を表わす。なお、T1~Tnは、Polymer Hand Book(Second Edition,J.Brandup・E.H.Immergut編)III-139~179頁に記載された値を用いることができる。
また、モノマーのホモポリマーのTgが明確でない場合のガラス転移温度(℃)は、実測により静的ガラス転移温度として求めることもできる。この場合、例えば示差走査熱量計「DSC-220U」(セイコーインスツルメント社製)を用いて、試料を測定カップに採り、真空吸引して完全に溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で-20℃~+200℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側の最初のベースラインの変化点を静的ガラス転移温度とする。
また、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、全共重合成分(コア部共重合体(I)及びシェル部共重合体(II)を構成する全重合性不飽和モノマー)の80質量%以上が、溶解性パラメーター値(SP値)が9.5以下の重合性不飽和モノマーであることが、得られる塗膜の防食性及び耐水性の観点から好ましい。溶解性パラメーター値(SP値)が9.5以下である重合性不飽和モノマーは、全共重合成分の90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
本明細書において、溶解性パラメーター値(SP値)は、Polymer Engineering and Science,14,No.2,p.147(1974)に記載された、下記のFedors式により算出される値である。
SP=√{Σ(Δe1)/Σ(Δv1)}
(式中、Δe1は各単位官能基当たりの凝集エネルギー、Δv1は各単位官能基当たりの分子容を示す。)なお、共重合体又は2種以上の樹脂の混合物であるブレンド物のSP値は、単量体ユニット又はブレンド物の各成分のSP値に質量分率を乗じたものを合計した値とした。
(式中、Δe1は各単位官能基当たりの凝集エネルギー、Δv1は各単位官能基当たりの分子容を示す。)なお、共重合体又は2種以上の樹脂の混合物であるブレンド物のSP値は、単量体ユニット又はブレンド物の各成分のSP値に質量分率を乗じたものを合計した値とした。
また、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)は、得られる塗膜の防食性、耐水性及び硬度の観点から重量平均分子量が40000以上であることが好ましい。
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いて測定した保持時間を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。
具体的には、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC-8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」を1本、「TSKgel G3000HXL」を2本、及び「TSKgel G2000HXL」を1本(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することで、重量平均分子量を求めることができる。
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の平均粒子径は、50nm以上が好ましく、60nm以上がより好ましく、70nm以上がさらに好ましく、また、500nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、300nm以下がさらに好ましい。
平均粒子径を50nm以上とすることにより、粘度が高くなりすぎず、ハンドリングが良好となる。また、平均粒子径を500nm以下とすることにより、分散安定性が良好となる。
平均粒子径はレーザー光散乱等の一般的な測定手段を用いて測定することができる。
本明細書において、樹脂粒子の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を使用することができる。
コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の機械的安定性を向上させるために、該アクリル樹脂粒子が有するカルボキシル基等の酸基を中和剤により中和することができる。該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水等を挙げることができる。これらの中和剤は、中和後のコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の水分散液のpHが6.5~9.0程度となるような量で好適に使用することができる。
水性塗料組成物には、コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)以外の樹脂粒子も必要に応じて使用することができる。具体的には、例えば、アクリル樹脂、アクリル/スチレン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/アクリル樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン樹脂、スチレン/ブタジエン樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シリコン樹脂、及びフッ素樹脂等、また、これらの樹脂を変性したもの、例えば、カーボネート変性ウレタン樹脂、アクリル樹脂変性エポキシ樹脂、アルキド変性エポキシ樹脂、ポリブタジエン変性エポキシ樹脂、(ポリ)アミン変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂等の樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる樹脂粒子を挙げることができる。これらの樹脂粒子はいわゆるゴムであってもよい。ただし、前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)を除く。
上記樹脂粒子は、複数の樹脂からなる樹脂粒子である場合、複数の樹脂をブレンドした後に樹脂粒子としてもよく、複数種の樹脂粒子のブレンドであってもよい。これらの樹脂粒子は、通常、エマルションの形態で水性塗料組成物中に配合することができる。
水性塗料組成物は、塗料の貯蔵安定性の観点から、pHが5.0以上が好ましく、6.0以上がより好ましく、また、10.0以下が好ましく、9.0以下がより好ましい。
また、水性塗料組成物は、必要に応じて、架橋剤、硬化触媒、着色顔料等の顔料、充填剤、骨材、分散剤、湿潤剤、増粘剤、レオロジーコントロール剤、表面調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、沈降防止剤、凍結防止剤、皮張り防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機溶剤等を含有することもできる。
水性塗料組成物は、必要に応じて下地処理した各種基材上、好ましくは金属基材上に塗装して硬化した硬化塗膜とすることが好ましい。塗装は、従来公知の方法、例えばローラー塗装、スプレー塗装、刷毛塗装、カーテン塗装、シャワー塗装、浸漬塗装等の方法によって直接1回又は2回以上塗装して塗膜を形成することができる。
基材を金属基材とした場合、当該金属基材上に本実施形態に係る水性塗料組成物を塗装、効果して硬化塗膜を形成することにより、低温での造膜性が良好で、防食性にも優れる塗装物品を得ることができる。
水性塗料組成物の塗膜は、省エネルギー等の観点から常温で硬化させることが好ましい。なお、生産効率向上等の観点から、強制乾燥や加熱硬化させることもできる。
また、水性塗料組成物を塗装、硬化して得られる硬化塗膜の膜厚は、形成される硬化塗膜の防食性、耐水性及び硬度等の観点から、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、25μm以上がさらに好ましく、また、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましい。
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより限定されない。各例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づくものである。なお、表中の空欄は、その成分が含まれていないことを表す。
<コアシェル型アクリル樹脂粒子の製造>
製造例1
撹拌機、温度計、還流凝縮機を備えた重合装置中に、表1に示す量の仕込みの脱イオン水(DIW)及びNewcol(登録商標)707SF(商品名、日本乳化剤社製、アニオン性界面活性剤、固形分30質量%)を入れ、窒素置換を十分に行った後、昇温した。約100rpmで撹拌しながら内温を82℃に保ち、表1に示される(A1)成分をホモミキサーを用いて乳化したもの(以下、(A1)成分乳化物という。(A2)成分、(B1)成分及び(B2)成分についても同様に表記する。)、及び開始剤1水溶液(表1中、VA-057は商品名、富士フィルム和光純薬社製、2-2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンジアミン]四水塩)を滴下開始し、重合させた。
滴下速度は、(A1)成分乳化物は約146.0部/時間、開始剤1水溶液は約6.6部/時間とした。(A1)成分乳化物が滴下終了すると同時に、表1に示す(A2)成分乳化物を滴下し始めた。これと同時に表1に示す(B1)成分乳化物を(A2)成分乳化物に滴下した。(B1)成分乳化物の滴下速度は、(A2)成分乳化物の滴下終了と同時に滴下が終了する速度、すなわち本製造例では約73.0部/時間とした。その後(B2)成分乳化物を約146.0部/時間で滴下した。
滴下終了後、82℃で0.5時間反応させ、開始剤2水溶液を約3.3部/時間で滴下した。滴下終了後、82℃で1.5時間反応させ、その後25℃に冷却した。最後に表1に示す中和剤を添加し、固形分質量濃度40.0%のコアシェル型アクリル樹脂粒子(A-1)(シェル部酸価34mgKOH/g、コア層(=均一層/グラジエントポリマー層)/シェル層の質量比率は、75(=25/50)/25)のエマルションを得た。
製造例1
撹拌機、温度計、還流凝縮機を備えた重合装置中に、表1に示す量の仕込みの脱イオン水(DIW)及びNewcol(登録商標)707SF(商品名、日本乳化剤社製、アニオン性界面活性剤、固形分30質量%)を入れ、窒素置換を十分に行った後、昇温した。約100rpmで撹拌しながら内温を82℃に保ち、表1に示される(A1)成分をホモミキサーを用いて乳化したもの(以下、(A1)成分乳化物という。(A2)成分、(B1)成分及び(B2)成分についても同様に表記する。)、及び開始剤1水溶液(表1中、VA-057は商品名、富士フィルム和光純薬社製、2-2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンジアミン]四水塩)を滴下開始し、重合させた。
滴下速度は、(A1)成分乳化物は約146.0部/時間、開始剤1水溶液は約6.6部/時間とした。(A1)成分乳化物が滴下終了すると同時に、表1に示す(A2)成分乳化物を滴下し始めた。これと同時に表1に示す(B1)成分乳化物を(A2)成分乳化物に滴下した。(B1)成分乳化物の滴下速度は、(A2)成分乳化物の滴下終了と同時に滴下が終了する速度、すなわち本製造例では約73.0部/時間とした。その後(B2)成分乳化物を約146.0部/時間で滴下した。
滴下終了後、82℃で0.5時間反応させ、開始剤2水溶液を約3.3部/時間で滴下した。滴下終了後、82℃で1.5時間反応させ、その後25℃に冷却した。最後に表1に示す中和剤を添加し、固形分質量濃度40.0%のコアシェル型アクリル樹脂粒子(A-1)(シェル部酸価34mgKOH/g、コア層(=均一層/グラジエントポリマー層)/シェル層の質量比率は、75(=25/50)/25)のエマルションを得た。
上記エマルションは、粘度(B型粘度計にて測定、60rpm、20℃)680mPa・s、pH9.2(pHメーターにて測定)、平均粒子径105nmであった。
製造例2~10
製造例1において、配合組成を表1に示すものへと変更する以外は、製造例1と同様にして、各コアシェル型アクリル樹脂粒子(A-2)~(A-10)(すべて、コア層(=均一層/グラジエントポリマー層)/シェル層の質量比率は75(=25/50)/25)を得た。コアシェル型アクリル樹脂粒子(A-9)及び(A-10)は、比較例用のアクリル樹脂粒子である。
製造例1において、配合組成を表1に示すものへと変更する以外は、製造例1と同様にして、各コアシェル型アクリル樹脂粒子(A-2)~(A-10)(すべて、コア層(=均一層/グラジエントポリマー層)/シェル層の質量比率は75(=25/50)/25)を得た。コアシェル型アクリル樹脂粒子(A-9)及び(A-10)は、比較例用のアクリル樹脂粒子である。
製造例11(比較例用)
撹拌機、温度計、還流凝縮機を備えた重合装置中に、表1に示す量の仕込みの脱イオン水及びNewcol707SFを入れ、窒素置換を十分に行った後、昇温した。約100rpmで撹拌しながら内温を82℃に保ち、表1に示される(A1)成分をホモミキサーを用いて乳化したもの、及び開始剤1水溶液を滴下開始し、重合させた。滴下速度は、(A1)成分乳化物は約146.0部/時間、開始剤1水溶液は約6.6部/時間とした。(A1)成分乳化物を滴下終了すると同時に、表1に示す(B1)成分乳化物を滴下し始め、約146.0部/時間で滴下した。滴下終了後、82℃で0.5時間反応させ、開始剤2水溶液を約3.3部/時間で滴下した。滴下終了後、82℃で1.5時間反応させ、その後25℃に冷却した。最後に表1に示す中和剤を添加し、固形分質量濃度40.0%のコアシェル型アクリル樹脂粒子(A-11)(シェル部酸価34mgKOH/g、コア層(=均一層/グラジエントポリマー層)/シェル層の質量比率は、50(=50/0)/50(グラジエントポリマー層がない))のエマルションを得た。
撹拌機、温度計、還流凝縮機を備えた重合装置中に、表1に示す量の仕込みの脱イオン水及びNewcol707SFを入れ、窒素置換を十分に行った後、昇温した。約100rpmで撹拌しながら内温を82℃に保ち、表1に示される(A1)成分をホモミキサーを用いて乳化したもの、及び開始剤1水溶液を滴下開始し、重合させた。滴下速度は、(A1)成分乳化物は約146.0部/時間、開始剤1水溶液は約6.6部/時間とした。(A1)成分乳化物を滴下終了すると同時に、表1に示す(B1)成分乳化物を滴下し始め、約146.0部/時間で滴下した。滴下終了後、82℃で0.5時間反応させ、開始剤2水溶液を約3.3部/時間で滴下した。滴下終了後、82℃で1.5時間反応させ、その後25℃に冷却した。最後に表1に示す中和剤を添加し、固形分質量濃度40.0%のコアシェル型アクリル樹脂粒子(A-11)(シェル部酸価34mgKOH/g、コア層(=均一層/グラジエントポリマー層)/シェル層の質量比率は、50(=50/0)/50(グラジエントポリマー層がない))のエマルションを得た。
上記エマルションは、粘度(B型粘度計にて測定、60rpm、20℃)620mPa・s、pH9.2(pHメーターにて測定)、平均粒子径110nmであった。
製造例12(比較例用)
撹拌機、温度計、還流凝縮機を備えた重合装置中に、表1に示す量の仕込みの脱イオン水及びNewcol707SFを入れ、窒素置換を十分に行った後、昇温した。約100rpmで撹拌しながら内温を82℃に保ち、表1に示される(A1)成分をホモミキサーを用いて乳化したもの、及び開始剤1水溶液を3時間かけて滴下し、重合させた。滴下終了後、82℃で0.5時間反応させ、開始剤2水溶液を0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、82℃で1.5時間反応させ、その後25℃に冷却した。最後に表1に示す中和剤を添加し、固形分質量濃度40.0%のコアシェル型アクリル樹脂粒子(A-12)(シェル部酸価34mgKOH/g、単層均一組成粒子)のエマルションを得た。
撹拌機、温度計、還流凝縮機を備えた重合装置中に、表1に示す量の仕込みの脱イオン水及びNewcol707SFを入れ、窒素置換を十分に行った後、昇温した。約100rpmで撹拌しながら内温を82℃に保ち、表1に示される(A1)成分をホモミキサーを用いて乳化したもの、及び開始剤1水溶液を3時間かけて滴下し、重合させた。滴下終了後、82℃で0.5時間反応させ、開始剤2水溶液を0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、82℃で1.5時間反応させ、その後25℃に冷却した。最後に表1に示す中和剤を添加し、固形分質量濃度40.0%のコアシェル型アクリル樹脂粒子(A-12)(シェル部酸価34mgKOH/g、単層均一組成粒子)のエマルションを得た。
上記エマルションは、粘度(B型粘度計にて測定、60rpm、20℃)520mPa・s、pH9.2(pHメーターにて測定)、平均粒子径108nmであった。
<水性塗料組成物の製造>
実施例1
DISPERBYK(登録商標)-190(商品名、BYK社製、顔料分散剤、固形分40%)3部(固形分1.2部)、BYK(登録商標)-024(商品名、BYK社製、消泡剤、固形分100%)0.4部、JR-603(商品名、テイカ社製、酸化チタン、固形分100%)35部、スーパーSS(商品名、丸尾カルシウム社製、炭酸カルシウム、固形分100%)15部、脱イオン水25部及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル2部を混合しガラスビーズを添加後、ペイントシェーカーで60分間分散し、顔料ペースト(P1)(固形分64.2%)を得た。
実施例1
DISPERBYK(登録商標)-190(商品名、BYK社製、顔料分散剤、固形分40%)3部(固形分1.2部)、BYK(登録商標)-024(商品名、BYK社製、消泡剤、固形分100%)0.4部、JR-603(商品名、テイカ社製、酸化チタン、固形分100%)35部、スーパーSS(商品名、丸尾カルシウム社製、炭酸カルシウム、固形分100%)15部、脱イオン水25部及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル2部を混合しガラスビーズを添加後、ペイントシェーカーで60分間分散し、顔料ペースト(P1)(固形分64.2%)を得た。
ガラスビーズを除去後、得られた顔料ペースト(P1)80部(固形分51.4部)に製造例1で得られたコアシェル型アクリル樹脂粒子(A-1)のエマルション250部(固形分100部)、BYK-348(商品名、BYK社製、表面調整剤、固形分100%)0.5部、SNシックナー660T(商品名、サンノプコ社製、増粘剤、固形分20%)2.5部(固形分0.5部)及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル10部を混合攪拌することにより、pH8.2、塗料固形分44.5質量%の水性塗料組成物No.1を得た。
実施例2~8及び比較例1~4
実施例1において、配合組成を表2に示すものへと変更する以外は、実施例1と同様にして、各水性塗料組成物No.2~No.12を得た。
実施例1において、配合組成を表2に示すものへと変更する以外は、実施例1と同様にして、各水性塗料組成物No.2~No.12を得た。
なお、表2には各水性塗料組成物のコアシェル型アクリル樹脂粒子(A-1)~(A-12)のガラス転移温度(Tg、℃)及び全共重合成分中の溶解性パラメーター値が9.5以下の重合性不飽和モノマーの比率(質量%)(SP値9.5以下モノマー比率(質量%))も併せて示した。
<試験板の作製>
研磨及び脱脂を行った70mm×150mm×0.8mmの冷間圧延鋼板(基材)上に、上記の実施例1~8及び比較例1~4で得た各水性塗料組成物No.1~No.12を、エアスプレーを用いて、硬化塗膜の厚さが40μmとなるようにそれぞれ塗装した。次に、23℃、65%RHで7日間放置して鋼板上に硬化塗膜が形成された各試験板を得た。
研磨及び脱脂を行った70mm×150mm×0.8mmの冷間圧延鋼板(基材)上に、上記の実施例1~8及び比較例1~4で得た各水性塗料組成物No.1~No.12を、エアスプレーを用いて、硬化塗膜の厚さが40μmとなるようにそれぞれ塗装した。次に、23℃、65%RHで7日間放置して鋼板上に硬化塗膜が形成された各試験板を得た。
<試験板の評価>
得られた各試験板について、下記の各試験を行った。評価結果を表2に併せて示す。
得られた各試験板について、下記の各試験を行った。評価結果を表2に併せて示す。
防食性:各試験板について、基材に達するように塗膜にナイフでクロスカット傷を入れ、JIS K 5600-7-1(1999)「耐中性塩水噴霧性」に準拠して、120時間耐塩水噴霧試験を行った。ナイフ傷からの錆及びフクレの幅によって以下の基準で評価した。錆及びフクレの最大幅が小さいほど防食性が優れ、評価がA~Cであれば、防食性が良好である。
A:錆、フクレの最大幅が、カット部から1mm未満(片側)
B:錆、フクレの最大幅が、カット部から1mm以上2mm未満(片側)
C:錆、フクレの最大幅が、カット部から2mm以上3mm未満(片側)
D:錆、フクレの最大幅が、カット部から3mm以上5mm未満(片側)
E:錆、フクレの最大幅が、カット部から5mm以上(片側)
B:錆、フクレの最大幅が、カット部から1mm以上2mm未満(片側)
C:錆、フクレの最大幅が、カット部から2mm以上3mm未満(片側)
D:錆、フクレの最大幅が、カット部から3mm以上5mm未満(片側)
E:錆、フクレの最大幅が、カット部から5mm以上(片側)
耐水性:各試験板を23℃の脱イオン水に48時間浸漬し、塗面を以下の基準で評価した。評価が◎又は○であれば、耐水性が良好である。
◎:良好で問題ない。
○:ややツヤビケが見られるが実用レベルである。
△:フクレ、ツヤビケのいずれかが認められる。
×:フクレ、ツヤビケのいずれかが著しく認められる。
◎:良好で問題ない。
○:ややツヤビケが見られるが実用レベルである。
△:フクレ、ツヤビケのいずれかが認められる。
×:フクレ、ツヤビケのいずれかが著しく認められる。
光沢:各試験板について、JIS K 5600-4-7(1999)「鏡面光沢度」に準拠して、塗面の鏡面光沢度(60°)を測定した。塗面の鏡面光沢度(60°)が70以上であれば、光沢が良好である。
鉛筆硬度:各試験板について、JIS K 5600-5-4(1999)「引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠して、塗面の鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度は硬い方から順にF、HB、B、2Bであり、B以上の硬度であれば、硬度が良好である。
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2018年7月27日出願の日本特許出願(特願2018-141479)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明によれば、低温での造膜性が良好で、かつ防食性、硬度及び耐水性等の塗膜性能にも優れる水性塗料組成物を提供することができる。
Claims (5)
- 少なくとも1層のグラジエントポリマー層を含むコアシェル型アクリル樹脂粒子(A)を含有し、
前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)のシェル部の酸価が20~100mgKOH/gの範囲内である水性塗料組成物。 - 前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)のガラス転移温度が-10℃以上である請求項1に記載の水性塗料組成物。
- 前記コアシェル型アクリル樹脂粒子(A)の全共重合成分の80重量%以上が、溶解性パラメーター値が9.5以下の重合性不飽和モノマーである請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
- 基材と、前記基材上に請求項1~3のいずれか一項に記載の水性塗料組成物の硬化塗膜とを有する塗装物品。
- 前記基材が金属基材である請求項4に記載の塗装物品。
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