JP7276319B2 - 複合材料の製造方法 - Google Patents
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Description
近年、繊維状炭素ナノ構造体の優れた特性を活かし、ゴムと繊維状炭素ナノ構造体とを複合化することで、加工性や強度といったゴムの特性と、補強性などの繊維状炭素ナノ構造体の特性とを併せ持つ複合材料を提供する技術の開発が進められている。
ここで、本発明の複合材料は、ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体と、任意の粒子状フィラーとを含む複合材料を製造する際に用いられる。そして、本発明の複合材料の製造方法を用いて製造した複合材料は、高温条件下での引張強度に優れている。そのため、例えば、シート材、シール材などの、高温条件下での高い引張強度が求められる各種用途に用いられる。
本発明の複合材料の製造方法は、ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体と、任意の粒子状フィラーとを含む複合混合物を混練して、予備混練物を得る予備混練工程と、予備混練工程後に、更に、予備混練物を混練する本混練工程とを含み、予備混練工程における混練温度は、本混練工程における混練工程よりも高い。また、本発明の複合材料の製造方法は、任意に、上記予備混練工程の前に、ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体と、任意の粒子状フィラーとを含む複合混合物を調製する調製工程を更に含んでいてもよい。
ここで、本発明の製造方法によって得られる複合材料が、高温条件下において引張強度に優れる理由は、明らかではないが、次のように推察される。即ち、本混練工程よりも高温で行われる予備混練工程では、混練の際の熱によってゴムが繊維状炭素ナノ構造体と繊維状炭素ナノ構造体との間の隙間に侵入し易くなることで、繊維状炭素ナノ構造体が解繊して分散し易くなる。そのため、予備混練工程の後に本混練工程を実施することで、繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散するためと推察される。
調製工程は、本発明の複合材料の製造方法に任意に含まれ得る工程である。そして、調製工程では、ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体と、任意の粒子状フィラーとを含む複合混合物を調製する。
予備混練工程で混練する、ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体と、任意の粒子状フィラーとを含む複合混合物は、例えば、下記(1)または(2)の方法により得ることができる。
(1)ゴムと、このゴムに対する貧溶媒と、繊維状炭素ナノ構造体と、任意の粒子状フィラーとを含む組成物を分散処理して分散物を得る手順と、得られた分散物から貧溶媒を除去する手順と、を含む方法
(2)ゴムと、このゴムを溶解し得る良溶媒と、繊維状炭素ナノ構造体と、任意の粒子状フィラーとを含む組成物を分散処理して分散物を得る手順と、得られた分散物から良溶媒を除去する手順と、を含む方法
ここで、ゴムとしては、特に限定されず、公知のゴムを用いることができるが、ゴムは、フッ素ゴム、ニトリルゴムおよび水素化ニトリルゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。このようなゴムを使用することで、耐油性、耐老化性などに優れる複合材料を得ることができる。なお、これらのゴムは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
そして、フッ素ゴムとしては、例えば、四フッ化エチレン-プロピレン系ゴム(FEPM)、フッ化ビニリデン系ゴム(FKM)、四フッ化エチレン-パーフルオロメチルビニルエーテル系ゴム(FFKM)、テトラフルオロエチレン系ゴム(TFE)などが挙げられる。これらの中でも、四フッ化エチレン-プロピレン系ゴム(FEPM)、フッ化ビニリデン系ゴム(FKM)が好ましい。
また、ニトリルゴムとしては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル変性アクリロニトリルブタジエン(XNBR)、アクリロニトリルブタジエンイソプレンゴム(NBIR)などが挙げられる。これらの中でも、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)が好ましい。
更に、水素化ニトリルゴムとしては、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)などが挙げられる。
そして、ゴムは、本発明の予備混練工程の混練温度におけるせん断速度0.1(1/s)の条件下での複素粘度(η*)が200,000Pa・s以下であることが好ましく、70,000Pa・s以下であることがより好ましく、65,000Pa・s以下であることが更に好ましく、40,000以下であることが特に好ましい。ゴムの複素粘度が上記上限値以下であれば、高温条件下における引張強度により優れた複合材料を効率的に得ることができる。なお、ゴムの複素粘度は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、導電性を有する繊維状炭素ナノ構造体を用いることができる。具体的には、繊維状炭素ナノ構造体としては、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)等の円筒形状の炭素ナノ構造体や、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成されてなる炭素ナノ構造体等の非円筒形状の炭素ナノ構造体を用いることができる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
そして、繊維状炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。カーボンナノチューブの層数が少ないほど、混合液中に含まれる繊維状炭素ナノ構造体の量が少ない場合であっても、引張強度に優れた複合材料を効率的に製造することができる。
なお、本発明において、「繊維状炭素ナノ構造体の平均直径」は、透過型電子顕微鏡(TEM)画像上で、例えば、20本の繊維状炭素ナノ構造体について直径(外径)を測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。
なお、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)および標準偏差(σ)は、繊維状炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られた繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
なお、本発明において、「繊維状炭素ナノ構造体」の平均長さは、走査型電子顕微鏡(SEM)画像上で、例えば、20本の繊維状炭素ナノ構造体について長さを測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、BET比表面積が600m2/g以上であることが好ましく、800m2/g以上であることがより好ましく、2500m2/g以下であることが好ましく、1200m2/g以下であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積上記範囲内であれば、高温条件下における引張強度により優れた複合材料を提供することができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着
比表面積を指す。
(1)全表面への窒素分子の単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程
なお、「屈曲点の位置」は、前述した(1)の過程の近似直線Aと、前述した(3)の過程の近似直線Bとの交点である。
ここで、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積S1および内部比表面積S2は、そのt-プロットから求めることができる。具体的には、まず、(1)の過程の近似直線の傾きから全比表面積S1を、(3)の過程の近似直線の傾きから外部比表面積S3を、それぞれ求めることができる。そして、全比表面積S1から外部比表面積S3を差し引くことにより、内部比表面積S2を算出することができる。
そして、スーパーグロース法により製造された繊維状炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTに加え、例えば、非円筒形状の炭素ナノ構造体等の他の炭素ナノ構造体を含んでいてもよい。
また、本発明において複合混合物が任意に含み得る粒子状フィラーとしては、特に限定されることない。そして、粒子状フィラーの材料として、例えば非炭素フィラーを用いることができ、中でも、タルク(Mg3Si4O10(OH)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化亜鉛(ZnO)などを用いることが好ましく、タルクを用いることがより好ましい。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本発明において、「粒子状」には、球状、楕円形状、多角形状、鱗片状などが含まれるものとする。
ここで、粒子状フィラーの平均粒径は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、10μm以下であることが好ましく、8.5μm以下であることがより好ましく、また、5μm以下としてもよい。粒子状フィラーの平均粒径が上記範囲内であることにより、高温条件下における引張強度に優れた複合材料を得ることができる。なお、粒子状フィラーが真球状でない場合には、粒子状フィラーの長径を粒子状フィラーの粒径とする。
また、粒子状フィラーの平均粒径は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
更に、粒子状フィラーのモース硬度は、0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることが更に好ましい。粒子状フィラーのモース硬度が上記下限値以上であれば、粒子状フィラーの損傷を防止して、引張強度が向上した複合材料を得ることができる。また、粒子状フィラーのモース硬度が上記上限値以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体の損傷を防止して、引張強度が向上した複合材料を提供することができる。
ここで、粒子状フィラーのモース硬度は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
そして、複合混合物の調製において、上述した(1)の方法を採用する場合、用いる貧溶媒としては、水やシクロヘキサンなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で、または、2種類以上を組み合わせて用いることができる。ここで、貧溶媒とは、温度30℃におけるゴムの溶解度が10g/100g以下の溶媒をいう。具体的には、例えばゴムとしてFEPMを用いた場合には、貧溶媒として、シクロヘキサンや、水、アルコール類(イソプロピルアルコール、メタノール等)、ケトン類(メチルエチルケトン、アセトン等)等を挙げることができる。また、ゴムとしてFKMを用いた場合には、貧溶媒として、シクロヘキサンや、水等を挙げることができる。ゴムとしてNBRを用いた場合には、貧溶媒として、シクロヘキサンや、水、アルコール類(イソプロピルアルコール、メタノール等)等を挙げることができる。
また、複合混合物の調製において、上述した(2)の方法を採用する場合、用いる良溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)やメチルエチルケトン(MEK)などが挙げられる。これらは、1種類を単独で、または、2種類以上を組み合わせて用いることができる。ここで、良溶媒とは、温度30℃におけるゴムの溶解度が90g/100g以上の溶媒をいう。具体的には、例えばゴムとしてFEPMを用いた場合には、良溶媒として、THF等を挙げることができる。また、ゴムとしてFKMを用いた場合には、良溶媒として、MEK等を挙げることができる。ゴムとしてNBRを用いた場合には、良溶媒として、MEK等を挙げることができる。
そして、複合混合物中の繊維状炭素ナノ構造体の含有量に対するゴムの含有量の比は、質量比(ゴム/繊維状炭素ナノ構造体)で5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、15以上であることが更に好ましく、120以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、30以下であることが更に好ましい。複合混合物中のゴムと繊維状炭素ナノ構造体との含有割合が上記範囲内であれば、高温条件下における引張強度が高められた複合材料を得ることができる。
また、複合混合物中の粒子状フィラーの含有量に対するゴムの含有量の比は、質量比(ゴム/粒子状フィラー)で5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、15以上であることが更に好ましく、120以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、30以下であることが更に好ましい。複合混合物中のゴムと粒子状フィラーとの含有割合が上記範囲内であれば、高温条件下における引張強度がより高められた複合材料を得ることができる。
更に、複合混合物中の粒子状フィラーの含有量に対する繊維状炭素ナノ構造体の含有量の比は、質量比(繊維状炭素ナノ構造体/粒子状フィラー)で0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.4以上であることが更に好ましく、0.6以上であることが特に好ましく、12以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、2以下であることが更に好ましく、1以下であることが特に好ましい。複合混合物中の繊維状炭素ナノ構造体と粒子状フィラーとの含有割合が上記範囲内であれば、高温条件下における引張強度が更に高められた複合材料を得ることができる。
また、複合混合物中のゴムの固形分は、複合混合物(100質量%)中、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることが更に好ましく、20質量%以下であることが好ましく、16質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることが更に好ましい。複合混合物中のゴムの固形分の濃度が上記下限値以上であれば、後に分散処理する際に、各成分を効率的に分散させることができる。一方、複合混合物中のゴムの固形分の濃度が上記上限値以下であれば、後に溶媒を除去する際に、溶媒の除去が容易になる。
その際、ゴムの塊と粒子状フィラーとを含む混合物の粉砕は、粉砕して得られるゴムが、好ましくは平均粒径が1mm以下、より好ましくは0.5mm以下のゴムの粒子となるまで粉砕することが好ましい。粉砕によってゴムを平均粒径が1mm以下のゴムの粒子とすることで、複合材料中でのゴムの分散性をより高めることができる。
そして、複合混合物の調製において、上述した(1)の方法を用いる場合には、ゴムと、ゴムに対する貧溶媒と、繊維状炭素ナノ構造体と、任意の粒子状フィラーとを含む組成物を分散処理して分散物を得る。
また、複合混合物の調製において、上述した(2)の方法を用いる場合には、ゴムと、ゴムを溶解し得る良溶媒と、繊維状炭素ナノ構造体と、任意の粒子状フィラーとを含む組成物を分散処理して分散物を得る。
メディアレス高速せん断機としては、高速撹拌機、ホモジナイザーおよびインラインミキサーなどの、分散メディアを使用せずに湿式で高速せん断力を用いて分散処理をすることが可能な既知のメディアレス分散機を用いることができる。メディアレス高速せん断機を用いることにより、ジェットミル等の高圧型の高速せん断機に比べ、一度に多量の混合液を短時間で分散処理することができる。
ここで、湿式分散処理において上記複合混合物にかかる圧力、即ち、メディアレス高速せん断機へ上記複合混合物を供給してから湿式分散処理の終了までの間に混合液にかかる圧力は、ゲージ圧で5MPa以下であることが好ましく、4MPa以下であることがより好ましい。そして、混合液の分散処理は無加圧下で行うことが更に好ましい。複合混合物にかかる圧力を上記上限値以下とすれば、繊維状炭素ナノ構造体や粒子状フィラーに損傷が発生するのを抑制することができる。
そして、複合混合物の調製において、上述した(1)の方法を用いる場合には、分散処理によって得られた分散物から貧溶媒を除去する。
また、複合混合物の調製において、上述した(2)の方法を用いる場合には、分散処理によって得られた分散物から良溶媒を除去する。
これにより、(1)および(2)のいずれの方法を用いた場合でも、ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体と、任意の粒子状フィラーを含む複合混合物を得ることができる。
そして、本発明の複合材料の製造方法において、予備混練工程では、ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体と、任意の粒子状フィラーとを含む複合混合物を混練する。この際、混練温度は、後工程である本混練工程における混練温度よりも高いことを必要とする。
なお、予備混練工程で用いる複合混合物は、ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体と、任意の粒子状フィラーとを含んでいればよく、複合混合物の調製方法は上述した調製方法に限定されるものではない。したがって、市販のゴム粒子と、繊維状炭素ナノ構造体と、任意の粒子状フィラーとを用いて複合混合物を調製し、予備混練工程を実施してもよいし、上述した調製方法によって得られた複合混合物を用いて予備混練工程を実施してもよい。なお、予備混練工程で用いる複合混合物中に含まれる各成分は、上述した複合混合物の調製方法において複合混合物中に含まれていたものとすることができ、それらの好適な存在比は、上述した複合混合物中の各成分の好適な存在比と同じである。
そして、予備混練工程における混練温度は、後工程としての本混練工程における混練温度よりも高いことが必要である。そして、予備混練工程における混練温度は、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが更に好ましく、200℃以上であることが最も好ましく、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることが更に好ましい。予備混練工程における混練温度が上記下限値以上であれば、ゴムと、粒子状フィラーと、繊維状炭素ナノ構造体とを十分に混練することができる。一方、予備混練工程における混練温度が上記上限値以下であれば、ゴムの分解や劣化を抑制することができる。
また、予備混練工程における混練時間は、特に限定されることはなく、例えば1分以上60分以下とすることができる。
更に、予備混練工程における予備混練方法は、特に限定されることなく、ニーダー;ホバードミキサー、バンバリミキサー、ハイスピードミキサーなどのミキサー;二軸混練機械;ロール;等の既知の混練装置を用いて行うことができる。
そして、本混練工程では、予備混練工程の後に、更に、予備混練工程によって得られた予備混練物を、予備混練工程における混練温度よりも低い温度で混練する。
ここで、本混練工程における混練温度は、予備混練工程における混練温度よりも低いことが必要である。そして、本混練工程における混練温度は、60℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることが更に好ましく、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。本混練工程における混練温度が上記範囲内であれば、ゴムと、粒子状フィラーと、繊維状炭素ナノ構造体とを十分に混練することができる。
[混練時間]
そして、本混練工程における混練時間は、特に限定されることなく、例えば1分以上60分以下とすることができる。
また、本混練工程における本混練方法は、特に限定されることなく、予備混練工程において例示した既知の混練装置を用いて行うことができる。本発明によれば、本混練工程を経た後に、高温条件下における引張強度に優れた複合材料を得ることができる。
なお、得られた複合材料に任意のゴム用配合剤として、例えば、架橋剤、補強材、酸化防止剤などを更に含有させて混練し、成形加工および架橋を行って所望の成形体を得ることもできる。ここで、混練、成形加工および架橋は、公知の方法および装置を用いて行うことができる。なお、本混練工程は予備混練工程よりも低い混練温度で実施するため、例えば、架橋剤を添加する場合であっても、繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させつつ、架橋することができる。
実施例におけるフィラーの平均粒径およびモース硬度、各実施例および各比較例におけるゴムの複素粘度、CNTに対するゴムの比、フィラーに対するCNTの比、および、フィラーに対するCNTの比、ならびに各実施例および各比較例で作製したゴムシートの引張強度は、以下の方法を使用して測定した。
実施例および比較例で使用したフィラーの平均粒径は、沈降法によって測定した。具体的には、JIS R1619に従った遠心沈降法によって粒子径分布を測定した。そして得られた粒子径分布におけるメディアン径をフィラーの平均粒径とした。
実施例および比較例で使用したフィラーのモース硬度は、モース硬度計によって測定した。ここで、モース硬度計は鉱物の「ひっかき硬度」を測定するために用いられる器具であり、硬度の異なる10種の標準鉱物により成り立っている。本実施例および比較例では、フィラーのモース硬度を測定するために、モース硬度計の標準鉱物を用いてフィラーの表面をひっかき、表面にひっかき傷がつくか否かを確かめた。そして、フィラーの表面に傷がつかなかった場合は、更に硬度の高い標準鉱物を使用して、フィラーの表面に傷がつくまでひっかき操作を繰り返した。そして、フィラーの表面に傷がついた場合には、その傷がついたフィラーでモース硬度計の標準鉱物の表面をひっかき、フィラーおよび標準鉱物の双方にひっかき傷がついたときの標準鉱物の硬度を、フィラーの硬度とした。
レオメータとして、粘弾性測定装置(アルファテクノロジーズ社製、製品名「ラバープロセスアナライザー RPA-2000」、)を用いて、予備混練工程の混練温度におけるせん断速度0.1(1/s)の条件下で、ゴムの複素粘度(η*)を測定した。結果を表1に示す。
実施例および比較例で使用したゴム、フィラーおよびCNTの量を用いて、CNTに対するゴムの比、フィラーに対するCNTの比、および、フィラーに対するCNTの比を求めた。結果を表1に示す。
得られたゴムシートを、ダンベル試験片状(JIS3号)に打ち抜き、試験片を作製した。引張試験機(ストログラフVG、東洋精機社製)を用い、JIS K6251:2010に準拠して、試験温度230℃、200℃または120℃、試験湿度50%、引張速度500±50mm/minの条件下で引張試験を行い、引張強度(試験片を切断するまで引っ張ったときに記録される最大の引張力を試験片の初期断面積で除した値)を測定した。引張強度の値が大きい程、高温条件下における引張強度に優れる。
フッ素ゴムとしてのFKM(フッ化ビニリデン系ゴム、ケマーズ社製、製品名「バイトン GBL600S」の塊100質量部と、フィラーとしてのタルク(竹原化学工業社製、製品名「TTタルク」、組成:Mg3Si4O10(OH)2、平均粒径:8.5μm、モース硬度:1)5質量部とを凍結粉砕機(粉体技研社製、液体窒素冷却)に投入して、平均粒径が400μm程度のFKM粒子が得られるまで粉砕して、FKMとタルクとを含む粉砕混合物を得た。
次いで、0.9Lのガラス瓶に、得られた粉砕混合物55g(105質量部)と、FKMの貧溶媒としてのイオン交換水495gと、繊維状炭素ナノ構造体としてのカーボンナノチューブ(ゼオンナノテクノロジー社製、製品名「ZEONANO SG101」、SGCNT、比重:1.7、平均直径:3.5nm、平均長さ:400μm、BET比表面積:1050m2/g、G/D比:2.1、t-プロットは上に凸)2.2g(4質量部)とを投入し、これらを混合した。
そして、メディアレスせん断機(プライミクス社製、撹拌羽「ネオミクサー(登録商標)」ロータ/ステータ、最少クリアランス0.5mm)を用いて、温度40℃、回転数17000rpm(翼周速度:24m/秒)で、30分間分散処理を行い、FKMと、タルクと、イオン交換水と、カーボンナノチューブとを含むスラリー状の混合液(混合液中のゴム固形分濃度:10質量%)を得た。なお、この分散処理は、必要量のスラリーが得られるまで繰り返した。
それから、得られたスラリーを風乾させて、貧溶媒としてのイオン交換水を除去した。その後、真空乾燥機(ヤマト科学社製)を用いて、温度80℃で12時間真空乾燥することで、FKMと、タルクと、カーボンナノチューブとを含む複合混合物を得た。
次いで、得られた複合混合物87.4gを、高温混練機であるラボプラストミル(東洋精機製作所社製、製品名「10C100」、容量:60ml、50rpm)を用いて、混練温度100℃で3分間、混練した(予備混練工程)。
更に、予備混練物(FKM 100質量部/タルク 5質量部/CNT 4質量部)109質量部に、架橋助剤としての酸化亜鉛(亜鉛華二種)3質量部と、第一架橋剤としてのトリアリルイソシアヌレート(日本化成社製、製品名「TAIC(登録商標)」)3質量部と、第二架橋剤としての2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(日油社製、製品名「パーヘキサ25B‐40」)2質量部とを加えた後、これらを水冷しながら混練温度5℃で、ロールを用いて混練し(本混練工程)、一次加硫(160℃、15分)および二次加硫(232℃、2時間)の処理を施して、厚さ2mmのゴムシートを得た。
得られたゴムシートを用いて、試験温度を200℃として引張強度試験を行った。結果を表1に示す。
予備混練工程における混練温度を150℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、ゴムシートを得た。そして、得られたゴムシートを用いて、試験温度を200℃として引張強度試験を行った。結果を表1に示す。
予備混練工程における混練温度を200℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、ゴムシートを得た。そして、得られたゴムシートを用いて、試験温度を200℃として引張強度試験を行った。結果を表1に示す。
予備混練工程における混練温度を230℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、ゴムシートを得た。そして、得られたゴムシートを用いて、試験温度を200℃として引張強度試験を行った。結果を表1に示す。
FKMに替えて、FEPM(四フッ化エチレン-プロピレン系ゴム、AGC社製、製品名「アフラス100S」、シクロヘキサンに対する不溶分100%)を用いた。また、繊維状炭素ナノ構造体としてのカーボンナノチューブの添加量が3質量部になるように、投入するカーボンナノチューブの量を変更した。更に、貧溶媒としてのイオン交換水に替えてシクロヘキサン495gを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして複合混合物を得た。そして、予備混練工程における混練温度を230℃に変更した以外は実施例1と同様にして予備混練工程を行った。
更に、予備混練物(FEPM 100質量部/タルク 5質量部/CNT 3質量部)108質量部に、カーボンブラック(カンカーブ社製、製品名「サ―マックス(登録商標)MT」5質量部と、第一架橋剤としてのトリアリルイソシアヌレート(日本化成社製、製品名「TAIC(登録商標)」)5質量部と、第二架橋剤としての有機過酸化物である1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製、製品名「ペロキシモンF-40」)2.5質量部と、ステアリン酸Ca1質量部とを加えた後、これらを水冷しながら混練温度5℃で、ロールを用いて混練し(本混練工程)、一次加硫(170℃、20分)および二次加硫(200℃、4時間)の処理を施して、厚さ2mmのゴムシートを得た。
得られたゴムシートを用いて、試験温度を230℃として引張強度を測定した。結果を表1に示す。
FKMの塊に替えて、NBR(ニトリルゴム、日本ゼオン社製、製品名「Nipol(登録商標)DN3350」、シクロヘキサンに対する不溶分100%)の塊を用いた。また、繊維状炭素ナノ構造体としてのカーボンナノチューブの添加量が10質量部になるように、投入するカーボンナノチューブの量を変更した。更に、貧溶媒としてのイオン交換水に替えてシクロヘキサン495gを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして複合混合物を得て、予備混練工程を行った。
更に、予備混練物(NBR 100質量部/タルク 5質量部/CNT 10質量部)115質量部に、架橋助剤としての酸化亜鉛(亜鉛華二種)5質量部と、ステアリン酸1質量部と、加硫剤としての硫黄(S#325)0.5質量部と、第一加硫促進剤としてのテトラメチルチウラムジスルフィド(大内新興化学工業社製、製品名「ノクセラーTT」)1.5質量部と、第二加硫促進剤としてのN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製、製品名「ノクセラーCZG」)1.5質量部とを加えた後、これらを混練温度50℃で、ロールを用いて混練し(本混練工程)、加硫(160℃、10分)処理を施して、厚さ2mmのゴムシートを得た。
得られたゴムシートを用いて、試験温度を120℃として引張強度を測定した。結果を表1に示す。
予備混練工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ2mmのゴムシートを得た。得られたゴムシートを用いて、試験温度を200℃として引張強度試験を行った。結果を表1に示す。
予備混練工程を行わなかったこと以外は、実施例5と同様にして、厚さ2mmのゴムシートを得た。得られたゴムシートを用いて、試験温度を230℃として引張強度試験を行った。結果を表1に示す。
予備混練工程を行わなかったこと以外は、実施例6と同様にして、厚さ2mmのゴムシートを得た。得られたゴムシートを用いて、試験温度を120℃として引張強度試験を行った。結果を表1に示す。
一方、比較例1では、予備混練工程を行わなかったために、得られたゴムシートの引張強度は、同じ種類のゴムを用いて得られた実施例1~4のゴムシートの引張強度よりも低下していることがわかる。
更に、比較例2では、予備混練工程を行わなかったために、得られたゴムシートの引張強度は、同じ種類のゴムを用いて得られた実施例5のゴムシートの引張強度よりも低下していることがわかる。
更に、比較例3では、予備混練工程を行わなかったために、得られたゴムシートの引張強度は、同じ種類のゴムを用いて得られた実施例6のゴムシートの引張強度よりも低下していることが分かる。
Claims (8)
- ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体とを含む複合混合物を混練して、予備混練物を得る予備混練工程と、
前記予備混練工程後に、更に、前記予備混練物を混練する本混練工程とを含み、
前記予備混練工程における混練温度は、前記本混練工程における混練温度よりも高く、
前記複合混合物は、
前記ゴムと、該ゴムに対する貧溶媒と、前記繊維状炭素ナノ構造体と、を含む組成物を分散処理して分散物を得る手順と、
得られた前記分散物から前記貧溶媒を除去する手順と、を経て得られ、
前記本混練工程における前記混練温度は60℃以下である、複合材料の製造方法。 - ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体とを含む複合混合物を混練して、予備混練物を得る予備混練工程と、
前記予備混練工程後に、更に、前記予備混練物を混練する本混練工程とを含み、
前記予備混練工程における混練温度は、前記本混練工程における混練温度よりも高く、
前記複合混合物は、
前記ゴムと、該ゴムを溶解し得る良溶媒と、前記繊維状炭素ナノ構造体と、を含む組成物を分散処理して分散物を得る手順と、
得られた前記分散物から前記良溶媒を除去する手順と、を経て得られ、
前記本混練工程における前記混練温度は60℃以下である、複合材料の製造方法。 - 前記複合混合物は、粒子状フィラーを含有する、請求項1または2に記載の複合材料の製造方法。
- 前記ゴムは、前記予備混練工程の混練温度におけるせん断速度0.1(1/s)条件下での複素粘度が、200,000Pa・s以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
- 前記予備混練工程の混練温度が80℃以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
- 前記ゴムは、フッ素ゴム、ニトリルゴム及び水素化ニトリルゴムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
- 前記繊維状炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
- 前記繊維状炭素ナノ構造体は、BET比表面積が600m2/g以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
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