本発明の一実施の形態に係る車両用バッテリパックは、バッテリモジュールを内蔵したバッテリケースと、バッテリモジュールからの電力を変換する第1電装部品と、バッテリモジュールと第1電装部品とを電気的に接続する第2電装部品と、バッテリケース、第1電装部品および第2電装部品を収容するハウジングと、を備えた車両用バッテリパックであって、第1電装部品および第2電装部品は、ハウジング内のバッテリケースの車幅方向の側方に形成される空間内に車両前方側と車両後方側に並べて配置され、かつ、導電部材を介して互いに電気的に接続され、第1電装部品は、導電部材の一端部が接続される第1接続部を有し、第2電装部品は、導電部材の他端部が接続される第2接続部を有し、第1接続部と第2接続部との高さ位置が異なるように第1接続部と第2接続部とが配置され、導電部材は、第2接続部から第1接続部に向かって高くなるように傾斜する傾斜部を有することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用バッテリパックは、電装部品を衝撃から保護することができる。
以下、本発明の実施例に係る車両用バッテリパックについて、図面を用いて説明する。図1から図8おいて、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用バッテリパックの上下前後左右方向とし、車両の前後方向に対して直交する方向が左右方向、車両用バッテリパックの高さ方向が上下方向である。
図1から図8は、本発明の一実施例に係る車両用バッテリパックを示す図である。図1において、車両用バッテリパック10は、車両1の車体2の後部のリヤフロアパネル2Aに形成された窪み部2Bに収容されている。なお、リヤフロアパネル2Aは、車体2の側面を構成するサイドパネル2Cと車体の後面を構成するリヤパネル2Dとによって荷室を形成している。
図4において、車両用バッテリパック10は、バッテリモジュール11を内蔵したバッテリケース20を備えている。図5において、車両用バッテリパック10は、バッテリモジュール11(図4参照)からの電力を変換する第1電装部品としてのインバータ13と、バッテリモジュール11とインバータ13とを電気的に接続する第2電装部品としての切換部14と、冷却ファン12と、を備えている。また、図6、図8に示すように、車両用バッテリパック10は、この冷却ファン12に接続されるダクト50を備えている。
図5において、車両用バッテリパック10はハウジング30を備えており、このハウジング30には、バッテリケース20(図4参照)、インバータ13、切換部14およびダクト50(図6参照)が収容されている。
図4、図8において、バッテリモジュール11は、バッテリケース20内で車幅方向に並べて4つ設けられている。各バッテリモジュール11は、複数のセルを電気的に接続した組電池からなる。バッテリケース20は、ハウジング30における車幅方向の中央部から右側の領域に配置されている。したがって、ハウジング30におけるバッテリケース20の左側の領域、つまりバッテリケース20の車幅方向の側方の領域には、インバータ13および切換部14を配置する空間が形成される。
冷却ファン12は、ハウジング30の左後ろの端部の上面に配置されており、ハウジング30の外部から取り込んだ空気をダクト50に供給する。ダクト50は、冷却ファン12と接続される上流側ダクト51と、この上流側ダクト51の下部に連結された分岐ダクト53(図8参照)と、この分岐ダクト53から分岐してインバータ13に向かって前方に延びる電装部品冷却ダクト60と、分岐ダクト53から分岐してバッテリケース20の後面に沿って右方に延びるバッテリ冷却ダクト70とを有している。なお、図8において、電装部品冷却ダクト60とバッテリ冷却ダクト70とが交差している部分が分岐ダクト53であり、分岐ダクト53の境界を破線で表わしている。
冷却ファン12から上流側ダクト51に供給された空気は、その下方の分岐ダクト53に流れ込み、分岐ダクト53から電装部品冷却ダクト60とバッテリ冷却ダクト70とに分岐して流れる。分岐ダクト53から電装部品冷却ダクト60に流れ込んだ空気はインバータ13に供給され、インバータ13を冷却する。分岐ダクト53からバッテリ冷却ダクト70に流れ込んだ空気はバッテリケース20の後面からバッテリケース20の内部に供給され、バッテリモジュール11を冷却する。
図5において、インバータ13および切換部14は、ハウジング30のバッテリケース20の車幅方向の側方に形成される空間内に車両前方側と車両後方側に並べて配置されている。インバータ13は切換部14の前方に配置されている。また、インバータ13および切換部14は、バスバー15を介して互いに電気的に接続されている。バスバー15は、銅等からなる導電性の平板を車両前後方向に延びる形状に形成したものからなる。バスバー15は本発明における導電部材を構成している。
インバータ13は、バスバー15の一端部が接続される第1接続部13Aを有し、切換部14は、バスバー15の他端部が接続される第2接続部14Aを有している。第1接続部13Aと第2接続部14Aとの高さ位置が異なるように第1接続部13Aと第2接続部14Aとが配置されている。バスバー15は、第2接続部14Aから第1接続部13Aに向かって高くなるように傾斜する傾斜部15Aを有している。
図7において、第1接続部13Aは、第2接続部14Aに対して車幅方向でバッテリケース20とは反対側に配置されている。言い換えると、第1接続部13Aはバッテリケース20から離れて配置されており、第2接続部14Aはバッテリケース20に近づいて配置されている。また、この図7の平面視において、バスバー15は、第2接続部14Aから第1接続部13Aにかけて湾曲する湾曲部15Bを有している。
図5において、インバータ13および切換部14は、バッテリケース20の上面よりも低い位置に配置されている。インバータ13は切換部14の前方に配置され、インバータ13の後部側底面が切換部14の前部側上面よりも高い位置に配置されている。
図2において、ハウジング30の底面30Aは、インバータ13と上下方向に重なる領域である第1底面部30Bと、切換部14と上下方向に重なる領域である第2底面部30Cを有している。図3において、第1底面部30Bは、インバータ13側に近づくように第2底面部30Cよりも上方に膨出する膨出部30Dを有している。インバータ13は、膨出部30Dの上面にブラケット41を介して支持されている。
図1において、ハウジング30の上面の後端部には冷却ファン12が設けられている。図5において、インバータ13と冷却ファン12とが高さ方向で異なる位置に配置されている。言い換えれば、インバータ13は冷却ファン12よりも低い位置に配置されている。
図6、図7、図8において、車両用バッテリパック10は、冷却ファン12と接続されるダクト50を備えている。ダクト50の電装部品冷却ダクト60は、インバータ13と切換部14との間で車幅方向に延びる車幅方向延伸部62を有している。また、ダクト50は、車両前後方向に伸びる前後方向延伸部61を有している。この前後方向延伸部61は、図7に示すように、インバータ13と車両前後方向に対向する対向部61Aと、車幅方向でインバータ13の側端よりも外側に配置される外側部61Bとを有している。前後方向延伸部61の後端部は、分岐ダクト53(図8参照)と連続しており、前後方向延伸部61の前端部は、車幅方向延伸部62と連続している。これにより、分岐ダクト53から前後方向延伸部61に流れ込んだ空気は、前後方向延伸部61の前端部で左方に向きを変更して車幅方向延伸部62に流れ込み、インバータ13に供給される。
図4において、ブラケット41はインバータ13の下方に配置されている。インバータ13の下面には、ブラケット41と隙間を隔てて放熱部材13Bが設けられている。図7において、ブラケット41は、車両前後方向で切換部14と対向しており、インバータ13と切換部14との間隔よりも、ブラケット41と切換部14との間隔が狭く設定されている。なお、図7に示すように、インバータ13の右端部には、インバータ13の右端部を支持するブラケット40が設けられている。
以上説明したように、本実施例では、インバータ13および切換部14は、ハウジング30のバッテリケース20の車幅方向の側方に形成される空間内に車両前方側と車両後方側に並べて配置され、かつ、バスバー15を介して互いに電気的に接続されている。また、インバータ13は、バスバー15の一端部が接続される第1接続部13Aを有し、切換部14は、バスバー15の他端部が接続される第2接続部14Aを有している。第1接続部13Aと第2接続部14Aとの高さ位置が異なるように第1接続部13Aと第2接続部14Aとが配置されている。バスバー15は、第2接続部14Aから第1接続部13Aに向かって高くなるように傾斜する傾斜部15Aを有している。
これにより、車両後方から車両後部に配置される車両用バッテリパック10に車両の後突時の外力が作用し、ハウジング30内に配置されるバッテリケース20が車両前方に移動した場合であっても、インバータ13および切換部14がバッテリケース20と過剰に干渉することを防止でき、インバータ13および切換部14を保護することができる。
また、車両後方から車両用バッテリパック10のインバータ13側に外力F(図7参照)が加わって、切換部14が前方へ移動することよってインバータ13へ荷重が作用する状況下において、バスバー15に設けた傾斜部15Aによってバスバー15に車両用バッテリパック10の側面視で生じる比較的大きな曲げモーメント(第1曲げモーメント)を作用させることができ、バスバー15を、図5に破線で示すように、容易に塑性変形させることができる。
そして、第1曲げモーメントがバスバー15に作用することにより、バスバー15で荷重を吸収させることができるため、切換部14に加わる荷重、および切換部14からインバータ13に加わる荷重を緩和できる。この結果、電装部品である切換部14およびインバータ13を衝撃から保護することができる。
また、本実施例では、第1接続部13Aは、第2接続部14Aに対して車幅方向でバッテリケース20とは反対側に配置され、平面視において、バスバー15は、第2接続部14Aから第1接続部13Aにかけて湾曲する湾曲部15Bを有する。
これにより、車両後方からハウジング30内の切換部14に外力が加わると、車両用バッテリパック10の平面視でバスバー15に生じる曲げモーメント(第2曲げモーメント)を作用させることができる。バスバー15に第2曲げモーメントが作用すると、バスバー15は、図7に破線で示すように、その第1接続部13A側がバッテリケース20から離れる方向に塑性変形し、この塑性変形により衝撃を吸収することができる。このため、切換部14およびインバータ13に加わる荷重を緩和させることができ、インバータ13および切換部14を保護することができる。
また、第1接続部13Aを第2接続部14Aに対してバッテリケース20とは反対側(バッテリパックの車幅方向外側)に配置したため、切換部14がインバータ13側に侵入しようとした場合、バスバー15を所定の態様で塑性変形させることにより、インバータ13を剛性の高いバッテリケース20から遠ざける方向(左方)に移動させることができ、インバータ13がバッテリケース20に干渉することを防止でき、インバータ13を保護できる。
また、本実施例では、インバータ13および切換部14は、バッテリケース20の上面よりも低い位置に配置され、インバータ13が切換部14の前方に配置され、インバータ13の後部側底面が切換部14の前部側上面よりも高い位置に配置されている。
これにより、切換部14がインバータ13側に侵入した場合であっても、切換部14の前部側上面がインバータ13の後部側底面の下方に入り込むため、切換部14とインバータ13とが側面同士で強く干渉することを防止できる。
また、インバータ13および切換部14は、バッテリケース20の上面よりも低い位置に配置されているため、バッテリケース20で発生した熱がハウジング30内の上部に滞留した場合であっても、インバータ13および切換部14をバッテリケース20からの発熱から遠ざけることができる、インバータ13および切換部14を熱から保護できる。
また、本実施例では、ハウジング30の底面は、インバータ13と上下方向に重なる領域である第1底面部30Bと、切換部14と上下方向に重なる領域である第2底面部30Cを有している。第1底面部30Bは、インバータ13側に近づくように第2底面部30Cよりも上方に膨出する膨出部30Dを有している。インバータ13は、膨出部30Dの上面にブラケット41を介して支持されている。
このように、第1底面部30Bに第2底面部30Cよりも上方に膨出する膨出部30Dを設けたため、ブラケット41の上下方向の長さ寸法を大きくすることなく、インバータ13を切換部14よりも高い位置に確実に配置できる。
また、切換部14からインバータ13に荷重が作用する場合であっても、膨出部30Dとブラケット41とによってインバータ13を安定して保持でき、バスバー15を容易に塑性変形させることができ、切換部14がインバータ13側へ浸入することを防止できる。
また、本実施例では、ハウジング30の上面の後端部に冷却ファン12が設けられ、インバータ13と冷却ファン12とが高さ方向で異なる位置に配置されている。
このように、インバータ13と冷却ファン12とが高さ方向で異なる位置に配置されているので、車両の後突時に冷却ファン12が車両前方へ移動した場合であっても、冷却ファン12がインバータ13に干渉することを防止でき、インバータ13を保護できる。
また、本実施例では、車両用バッテリパック10は、冷却ファン12と接続されるダクト50を備え、ダクト50は、インバータ13と切換部14との間で車幅方向に延びる車幅方向延伸部62を有する。
これにより、後突時に切換部14が前方へ移動した場合であっても、前方への荷重および衝撃が車幅方向延伸部62の変形によって吸収されるので、切換部14からインバータ13に伝わる荷重および衝撃を緩和でき、インバータ13を保護できる。また、切換部14が車幅方向延伸部62に接触した場合であっても、切換部14からインバータ13側に伝わる衝撃を緩和できる。
また、本実施例では、ダクト50は、車両前後方向に伸びる前後方向延伸部61を有し、前後方向延伸部61は、インバータ13と車両前後方向に対向する対向部61Aと、車幅方向でインバータ13の側端よりも外側に配置される外側部61Bとを有する。
これにより、車両の後突時の後方からの荷重により、前後方向延伸部61が前方に移動した場合であっても、前後方向延伸部61の外側部61Bはインバータ13と直接接触しないため、前方への荷重の一部を回転方向の力に変換して逃がすことができ、前方への荷重の全てがインバータ13へ直接作用することを防止できる。
また、本実施例では、インバータ13の下方にブラケット41が配置され、インバータ13の下面に、ブラケット41と隙間を隔てて放熱部材13Bが設けられている。また、ブラケット41は、車両前後方向で切換部14と対向し、インバータ13と切換部14との間隔よりも、ブラケット41と切換部14との間隔が狭く設定されている。
これにより、車両の後突時に切換部14が前方に移動した場合であっても、切換部14がインバータ13より先にブラケット41に接触するので、切換部14からインバータ13に荷重が直接作用することを防止でき、インバータ13を保護することができる。
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。