JP7249728B2 - ビールテイスト飲料の香味向上方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、発酵原料の麦芽比率が50質量%未満であり、総ポリフェノール含有量が130~170ppmであり、リナロール含有量が0.5~3ppbであることを特徴とする、発酵麦芽飲料、が記載されている。
(1)ビールテイスト飲料のエグ味を抑制しつつビールらしい味の厚みを付与する香味向上方法であって、前記ビールテイスト飲料は、苦味料が添加されて製造されたアルコール発酵飲料であって、前記苦味料はホップエキス又はホップペレットであり、前記ビールテイスト飲料の総ポリフェノール量を74~188ppmとし、アセトアルデヒドの含有量を1.0~2.0ppmとするビールテイスト飲料の香味向上方法。
(2)前記ビールテイスト飲料の麦芽の使用比率が50%以上である前記1に記載のビールテイスト飲料の香味向上方法。
(3)前記ビールテイスト飲料のアルコール度数が4%以上である前記1または前記2に記載のビールテイスト飲料の香味向上方法。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、総ポリフェノール量が所定範囲内であり、アセトアルデヒドの含有量が所定値以下となる飲料である。
そして、ビールテイスト飲料には、アルコール度数が1%(「容量/容量%」や「v/v%」などとも表される)未満のもの(ビールテイストノンアルコール飲料やノンアルコールビールテイスト飲料などとも呼ばれている)と、アルコール度数が1%以上のもの(ビールテイストアルコール飲料などと呼ばれている)と、がある。
ポリフェノールとは、芳香族炭化水素の2個以上の水素がヒドロキシル基で置換された化合物をいう。ポリフェノールとしては、例えば、フラボノール、イソフラボン、タンニン、カテキン、ケルセチン、アントシアニンなどが挙げられる。総ポリフェノール量とは、ビールテイスト飲料に含まれるこれらポリフェノールの総量をいう。
また、総ポリフェノール量は、50ppm以上であり、100ppm以上であるのが好ましい。総ポリフェノール量が所定値以上であることにより、ビールらしい味の厚みを付与できるとともに、ビールテイスト飲料として好ましい香味とすることができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の総ポリフェノール量は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)の8.19総ポリフェノールに記載されている方法によって測定することができる。
アセトアルデヒドとは、エタナールとも呼ばれ、特徴的な刺激臭を発する無色透明の液体として知られている。
本発明において、アセトアルデヒドは、ビールテイスト飲料の香味の中でも特にエグ味に大きな影響を与える。
また、アセトアルデヒドの含有量は、0.5ppm以上が好ましく、1.0ppm以上がより好ましい。アセトアルデヒドの含有量が所定値以上であることにより、ビールらしい味の厚みをより大きくすることができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアセトアルデヒドの含有量は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)の8.22低沸点香気成分に記載されている方法によって測定することができる。
麦芽とは、大麦、小麦、ライ麦、燕麦などを所定の条件で発芽させたものをいう。麦芽は、発芽させた状態又はこれを適宜の大きさに粉砕等した状態で用いることができる。なお、麦芽は、ビールテイスト飲料の呈味(例えば、うまみ)と香りに大きな影響を与えるとともに、アルコール発酵させる場合は、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源となる。本発明においては、ビールテイスト飲料として好ましい呈味や香りなどを得る観点から大麦の麦芽を用いるのが好ましい。
ここで、麦芽の使用比率とは、水及び苦味料(例えば、ホップ)を除く原料における麦芽の使用比率をいう。また、ビールとは、アルコール度数が20%未満の酒類であって、麦芽、ホップ及び水を原料として発酵させたもの、又は、麦芽、ホップ、水及び麦その他の酒税法施行令で定める物品を原料として発酵させたもの(その原料中当該酒税法施行令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の百分の五十を超えないものに限る)、つまり、発酵原料の麦芽比率(麦芽使用比率)が、67%以上のものである。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は4%(「容量/容量%」や「v/v%」などとも表される)以上とするのが好ましい。ビールテイスト飲料に含まれるアルコールは、麦芽などの原料を発酵させて得られたものだけでなく、飲用者の嗜好やアルコール度数の調整など必要に応じて飲用アルコールを添加することができる。添加する飲用アルコールの種類、製法、原料などは特に限定されない。例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカなどの各種スピリッツ、原料用アルコールなどから選択されたいずれか1種又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
なお、本明細書においてスピリッツとは、蒸留酒であるスピリッツを指し、酒税法上のスピリッツとは異なる場合もある。原料を発酵させて得られたアルコールの濃度が高い場合は、所望のアルコール度数となるように水や炭酸ガス含有水などで希釈することができる。飲用者の嗜好や飲み易さなどの観点からビールテイスト飲料のアルコール度数は5%以上とするのが好ましい。同様の観点からビールテイスト飲料のアルコール度数は8%以下とするのが好ましく、7%以下とするのがより好ましい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料において、苦味料としては、例えば、ホップ及びホップ加工品などを用いることができる。
なお、ホップの添加方法としては、例えば、ケトルホッピング、レイトホッピング、ドライホッピングを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ここで、ケトルホッピングとは、発酵前液(麦汁)の昇温中又は煮沸初期にホップを投入することをいい、レイトホッピングとは、煮沸の終了間際にホップを投入することをいう。また、ドライホッピングとは、発酵工程開始以降にホップを投入することをいう。
なお、総ポリフェノール量をより低減させたい場合は、苦味料に占めるホップエキスの使用比率は50~100%とするのがより好ましい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、非発泡性であってもよいが、発泡性であるのが好ましい。このようにすると、ビールテイスト飲料の爽快さと切れを向上させることができる。発泡性とする場合はガス圧を1.8kg/cm2(20℃)以上とするのが好ましく、2.0kg/cm2以上(20℃)とするのがより好ましい。このようにすると、ビールテイスト飲料の爽快さと切れを向上させることができる。なお、発泡性とする場合のガスは炭酸ガスを用いるのが好ましい。発酵させて製造したビールテイスト飲料のガス圧が1.8kg/cm2未満であるときはカーボネーションを行ったり、炭酸ガス含有水を添加したりすることによってガス圧を1.8kg/cm2以上とすることができる。
本発明に係るビールテイスト飲料のガス圧は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)の8.21ガス圧に記載されている方法によって測定することができる。
甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。
高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。
酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。
酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。
塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。
食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
着色料としては、例えば、カラメル色素、アントシアニン、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素などを用いることができる。
なお、前記した添加剤は、一般に市販されているものを使用することができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にビールテイスト飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
次に、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、発酵前工程S1と、発酵工程S2と、発酵後工程S3と、を含む。なお、前記した添加剤はこれらのうちのいずれの工程においても添加することができる。
発酵前工程S1は、麦芽を含む発酵前液を調製する工程である。発酵前工程S1において調製される発酵前液は、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源となる麦芽及び麦芽以外の原料を含む溶液であれば特に限られない。窒素源及び炭素源は、酵母が資化可能なものであれば特に限られない。酵母が資化可能な窒素源とは、例えば、麦芽及び麦芽以外の原料に含まれるアミノ酸及びペプチドのうちの少なくとも一つである。酵母が資化可能な炭素源とは、例えば、麦芽及び麦芽以外の原料に含まれる糖類である。これらの原料については既に詳述しているのでその説明を省略する。また、苦味価を所定値以上にするのに有効なホップを添加する場合はこの工程で発酵前液に添加するのが好ましい。
発酵工程S2は、発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う工程である。本実施形態においては、例えば、まず、予め温度が所定の範囲内(例えば、0~40℃の範囲)に調製された無菌状態の発酵前液に酵母を添加して発酵液を調製する。
また、この発酵工程S2における酵母添加率、発酵開始時の発酵液のpH、発酵時間、発酵温度等を調整し、発酵工程を安定化することによって、ビールテイスト飲料のアセトアルデヒドの含有量を低下させることができ、例えば、2ppm以下とすることができる。
また、発酵後液に含まれるエタノールの濃度(アルコール度数)は、発酵時間を短くしたり、発酵温度を低くしたりするなど、発酵条件を適宜調節することにより、例えば、1~20%とすることができる。
発酵後工程S3は、発酵後液に所定の処理を施して最終的にビールテイスト飲料を得る工程である。発酵後工程S3としては、例えば、発酵工程S2により得られた発酵後液のろ過(いわゆる一次ろ過)が挙げられる。この一次ろ過により、発酵後液から不溶性の固形分や酵母を除去することができる。また、発酵後工程S3においては、さらに発酵後液の精密ろ過(いわゆる二次ろ過)を行ってもよい。二次ろ過により、発酵後液から雑菌や、残存する酵母を除去することができる。本発明においては、精密ろ過に代えて発酵後液を熱処理することで殺菌を行うことが可能であるが、飲用者の嗜好や製造時の熱効率などを考慮してこのような熱処理は行わないことが好ましい。発酵後工程S3における一次ろ過、二次ろ過及び熱処理は、ビールテイスト飲料を製造する際に使用される一般的な設備で行うことができる。
本発明においては、PVPP処理とホップエキスの使用はいずれか一方のみを行ってもよく、両者を併用してもよい。なお、本発明においてはビールテイスト飲料中の総ポリフェノール量を前記した所定値以下とすることができればよく、これらの手法に限定されるものではない。
さらに、製造したビールテイスト飲料が非発泡性であったり、発泡性が十分でなかったりした場合であって、これに十分な発泡性を付与したい場合は、この発酵後工程S3で炭酸ガス含有水を添加したり、カーボネーションを行うことにより所望のガス圧とすることができる。
また、発酵後工程S3には、前記した容器に充填する工程も含まれる。
次に、本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法について説明する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法は、ビールテイスト飲料の総ポリフェノール量が所定範囲内、アセトアルデヒドの含有量が所定値以下となるように調製する。
評価用サンプルを調製するため、4種のサンプル調製用発酵液A、B、C、Dを以下のようにして製造した。
まず、サンプル調製用発酵液の麦芽は全て大麦麦芽とした。なお、サンプル調製用発酵液の原料(水及び苦味料を除く)における麦芽の使用比率は全て100%であり、そのうちLOXレス麦芽使用比率は50%とした。また、サンプル調製用発酵液A、Bについては、苦味料としてホップエキス100%を使用し、サンプル調製用発酵液C、Dについては、苦味料としてホップペレット100%を使用した。これらの原料を用い、ビールを製造する際に通常適用する温度条件等で発酵前液を製造した。次いで、ビールを製造する際に通常適用する温度条件等で発酵前液をアルコール発酵させて発酵液を製造した(熟成期間20日以上)。
そして、サンプル調製用発酵液A、Cについては、発酵液をPVPPで処理(ろ過)して、サンプル調製用発酵液B、Dについては、発酵液を通常のろ過助剤(SiO2)を用いて処理(ろ過)して、サンプル調製用発酵液A~Dを製造した。
前記したようにして製造したサンプル調製用発酵液A~Dを必要に応じて希釈し、さらに、適宜、アセトアルデヒド(高田香料株式会社製)を添加して、表1、2に示すサンプルを製造した。
訓練された専門のパネル3名が前記の方法により製造した各サンプルを試飲し、下記評価基準に則って「ビールらしい味の厚み」、「エグ味」、「総合評価」について、1~5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
5点:ビールらしい味の厚みが非常に厚い。
4点:ビールらしい味の厚みがかなり厚い。
3点:ビールらしい味の厚みがある。
2点:ビールらしい味の厚みがわずかにある。
1点:ビールらしい味の厚みがない。
5点:エグ味が全く感じられない。
4点:エグ味がほとんど感じられない。
3点:エグ味が少し感じられる。
2点:エグ味が感じられる。
1点:エグ味が強く感じられる。
5点:ビールテイスト飲料として非常に好適な香味である。
4点:ビールテイスト飲料としてかなり好適な香味である。
3点:ビールテイスト飲料として好適な香味である。
2点:ビールテイスト飲料として不適な香味である。
1点:ビールテイスト飲料としてかなり不適な香味である。
サンプルA-1~A-5は、総ポリフェノール量を固定して、アセトアルデヒドの含有量を変化させた場合の結果である。
これらの結果を確認すると明らかなように、サンプルA-1~A-3は、総ポリフェノール量が所定範囲内であり、アセトアルデヒドの含有量が所定値以下となっていることから、エグ味が抑制されていることが確認できた。また、サンプルA-1~A-3は、ビールらしい味の厚み、及び、総合評価も好ましい結果となった。
一方、サンプルA-4、A-5は、アセトアルデヒドの含有量が多かったことから、エグ味が十分には抑制されず、総合評価もあまり良くない結果となった。
これらの結果を確認すると明らかなように、サンプルB-1~B-7は、総ポリフェノール量が所定範囲内であり、アセトアルデヒドの含有量が所定値以下となっていることから、エグ味が抑制されていることが確認できた。
S2 発酵工程
S3 発酵後工程
Claims (3)
- ビールテイスト飲料のエグ味を抑制しつつビールらしい味の厚みを付与する香味向上方法であって、
前記ビールテイスト飲料は、苦味料が添加されて製造されたアルコール発酵飲料であって、前記苦味料はホップエキス又はホップペレットであり、
前記ビールテイスト飲料の総ポリフェノール量を74~188ppmとし、アセトアルデヒドの含有量を1.0~2.0ppmとするビールテイスト飲料の香味向上方法。 - 前記ビールテイスト飲料の麦芽の使用比率が50%以上である請求項1に記載のビールテイスト飲料の香味向上方法。
- 前記ビールテイスト飲料のアルコール度数が4%以上である請求項1または請求項2に記載のビールテイスト飲料の香味向上方法。
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