JP7247101B2 - Steap-1に結合する抗体 - Google Patents

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Description

本発明は、概して、例えばT細胞を活性化させるための二重特異性抗原結合分子を含むSTEAP-1に結合する抗体に関する。加えて、本発明は、このような抗体をコードするポリヌクレオチドと、このようなポリヌクレオチドを含むベクター及び宿主細胞とに関する。本発明はさらに、この抗体を生成するための方法、及び疾患の治療にそれらを使用する方法に関する。
STEAP-1(prostate-1の六つの膜貫通上皮抗原)は、正常組織において前立腺細胞に優勢に発現される339のアミノ酸の細胞表面タンパク質である。STEAP-1タンパク質の発現は、前立腺がんの様々な状態にわたって高レベルに維持され、STEAP-1も、肺及び結腸といった他のヒトがんにおいて高度に過剰発現される。正常組織及びがん組織におけるSTEAP-1の発現プロファイルは、例えば免疫療法のための、治療標的としての使用の可能性を示すものであった。国際公開第2008/052187号には、抗STEAP-1抗体及びそのイムノコンジュゲートが報告されている。STEAP-1/CD3(scFv)二重特異性抗体は、国際公開第2014/165818号に記載されている。
前立腺、肺及び結腸における様々ながん及びがんの転移を治療するためのさらなる薬物に対する需要が存在している。この目的のために特に有用な薬物には、STEAP-1に結合する抗体、特に標的細胞上のSTEAP-1と、CD3といったT細胞上のT細胞活性化抗原とに結合する二重特異性抗体が含まれる。このような抗体がその標的の両方に同時結合することにより、標的細胞とT細胞の間に一時的な相互作用が生じ、いずれかの傷害性T細胞を活性化させ、続いて標的細胞を溶解させる。
治療目的のために、抗体が満たさなければならない重要な要件は、in vitro(薬物の貯蔵のため)及びin vivo(患者への投与後)両方での十分な安定性である。
アスパラギン脱アミド、アスパルテート異性化、スクシンイミド形成、及びトリプトファン酸化のような修飾は、組み換え抗体に関する典型的な分解であり、in vitroでの安定性及びin vivoでの生体機能の両方に影響しうる。
本発明は、二重特異性抗体を含む、STEAP-1に結合し、例えばスクシンイミド形成による分解に抵抗性であるが故に良好な安定性を示す新規のl抗体を提供する。提供される(二重特異性)抗体はさらに、良好な有効性及び生産性を、低い毒性及び好ましい薬物動態特性と組み合わせている。
本発明者らは、予期しなかった改善された特性を有する、STEAP-1に結合する新規の抗体を開発した。特に、この抗体は、例えばスクシンイミド形成による分解に抵抗性であり、したがって治療目的に必要とされるように特に安定である。さらに、本発明者らは、新規のSTEAP-1抗体を組み込んだ、STEAP-1とT細胞活性化抗原とに結合する二重特異性抗原結合分子を開発した。
したがって、第1の態様では、本発明はSTEAP-1に結合する抗体であって、質量分析により決定した場合に、pH7.4、37℃で4週間後に約5%未満のスクシンイミド分解を示す、及び/又はpH6.0、40℃で4週間後に約10%未満のスクシンイミド分解を示す抗体を提供する。
さらなる態様において、本発明により提供されるSTEAP-1に結合する抗体は、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。一実施態様において、VHは、配列番号11、配列番号12及び配列番号13の群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、抗体は、IgG、特にIgG抗体である。一実施態様において、抗体は完全長抗体である。別の実施態様では、抗体は、Fv分子、scFv分子、Fab分子、及びF(ab’)分子の群より選択される抗体断片である。一実施態様において、抗体は多重特異性抗体である。
本発明はまた、(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、第1の抗原がSTEAP-1であり、第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、第1の抗原結合部部分、並びに(b)第2の抗原に特異的に結合する第2の抗原結合部分を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。一実施態様において、第1の抗原結合部分のVHは、配列番号11、配列番号12及び配列番号13からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、第1の抗原結合部分のVLは、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、第2の抗原は、CD3、特にCD3εである。一実施態様において、第2の抗原結合部分は、配列番号15のHCDR1、配列番号16のHCDR2、及び配列番号17のHCDR3を含むVHと、配列番号18のLCDR1、配列番号19のLCDR2及び配列番号20のLCDR3を含むVLとを含む。一実施態様において、第2の抗原結合部分のVHは、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合部分のVLは、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。一実施態様において、第1及び/又は第2の抗原結合部分はFab分子である。一実施態様において、第2の抗原結合部分は、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが、又は定常ドメインCLとCH1が、特に可変ドメインVL及びVHが互いによって置き換えられているFab分子である。一実施態様において、第1の抗原結合部分は、定常ドメインにおいて、124位のアミノ酸が、独立してリジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸が、独立してリジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)(Kabatによる番号付け)によって置換されており、定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸が、独立してグルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)により置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸が、独立してグルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)により置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)Fab分子である。一実施態様では、第1の抗原結合部分と第2の抗原結合部分は、任意選択的にペプチドリンカーを介して、互いに融合している。一実施態様において、第1及び第2の抗原結合部分はそれぞれFab分子であり、(i)第2の抗原結合部分がFab重鎖のC末端において第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しているか、又は(ii)第1の抗原結合部分がFab重鎖のC末端において第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している。一実施態様において、二重特異性抗原結合分子は第3の抗原結合部分を含む。一実施態様において、第3の抗原部分は第1の抗原結合部分と同一である。一実施態様において、二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインを含む。一実施態様において、第1の、第2の、及び存在する場合は第3の抗原結合部分はそれぞれFab分子であり;(i)第2の抗原結合部分がFab重鎖のC末端において第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、且つ第1の抗原結合部分がFab重鎖のC末端においてFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しているか、又は(ii)第1の抗原結合部分がFab重鎖のC末端において第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、且つ第2の抗原結合部分がFab重鎖のC末端においてFcドメインの第1のサブユニットのN末端に結合しており;第3の抗原結合部分は、存在する場合は、Fab重鎖のC末端においてFcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している。一実施態様において、Fcドメインは、IgG、特にIgGのFcドメインである。一実施態様において、FcドメインはヒトFcドメインである。一実施態様において、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸残基が、大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより第1のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第2のサブユニットのCH3ドメイン内部の空洞内に配置可能な***が生成され、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸残基が、小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置換され、それにより第2のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第1のサブユニットのCH3ドメイン内部の***を収容可能な空洞が生成される。一実施態様において、Fcドメインは、Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低下させる一又は複数のアミノ酸置換を含む。
本発明の別の態様によれば、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子をコードする、一又は複数の単離されたポリヌクレオチドが提供される。本発明はさらに、本発明の単離されたポリヌクレオチド(複数可)を含む一又は複数の発現ベクター、及び本発明の単離されたポリヌクレオチド(複数可)又は発現ベクター(複数可)を含む宿主細胞を提供する。いくつかの実施態様では、宿主細胞は真核細胞、特に哺乳動物の細胞である。
別の態様では、STEAP-1に結合する抗体の生成方法が提供され、この方法は、a)本発明の宿主細胞を、抗体の発現に適した条件下で培養する工程、及びb)抗体を回収する工程を含む。本発明は、本発明の方法により生成されるSTEAP-1に結合する抗体も包含する。
本発明はさらに、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。
本発明には、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子及び薬学的組成物の使用方法も包含される。一態様において、本発明は、医薬としての使用のための、本発明による抗体、二重特異性抗原結合分子又は薬学的組成物を提供する。一態様においては、疾患の治療においける使用のための、本発明による抗体、二重特異性抗原結合分子又は薬学的組成物が提供される。特定の一実施態様において、疾患はがんである。
さらに、疾患の治療のための医薬の製造における本発明による抗体又は二重特異性抗原結合分子の使用;並びに薬学的に許容される形態の本発明による抗体又は二重特異性抗原結合分子を含む治療的有効量の組成物を個体に投与することを含む、前記個体における疾患の治療方法が提供される。特定の一実施態様において、疾患はがんである。上記実施態様のいずれにおいても、個体は好ましくは哺乳動物、特にヒトである。
本発明の二重特異性抗原結合分子の例示的構成を示している。(A、D)は、「1+1のCrossMab」分子を示しており、(B、E)は、別の順序でCrossfab及びFab成分を有する(「反転型」)「2+1のIgG Crossfab」分子を示しており、(C、F)は、「2+1のIgG Crossfab」分子を示している。黒い点:ヘテロダイマー化を促すFcドメイン内の任意選択的修飾。++、--:任意選択的にCH1及びCLドメインに導入された反対の電荷のアミノ酸。図示のCrossFab分子は、VH領域とVL領域の交換を含んでいるが、-CH1及びCLドメインに荷電修飾が導入されていない実施態様では-代替的にCH1とCLドメインの交換を含んでいる場合がある。 本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子(TCB)の例示的構造である。(G、K)は、別の順序でCrossfab及びFab成分を有する(「反転型」)「1+1のIgG Crossfab」分子を示しており、(H、L)は、「1+1のIgG Crossfab」分子を示しており、(I、M)は、二つのCrossFabを有する「2+1のIgG Crossfab」分子を示しており、(J、N)は、二つのCrossFabを有し、且つ別の順序でCrossfab及びFab成分を有する(「反転型」)「2+1のIgG Crossfab」分子を示している。黒い点:ヘテロダイマー化を促すFcドメイン内の任意選択的修飾。++、--:任意選択的にCH1及びCLドメインに導入された反対の電荷のアミノ酸。図示のCrossFab分子は、VH領域とVL領域の交換を含んでいるが、-CH1及びCLドメインに荷電修飾が導入されていない実施態様では-代替的にCH1とCLドメインの交換を含んでいる場合がある。 本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子(TCB)の例示的構造である。(O、S)は、「Fab-Crossfab」分子を示しており、(P、T)は、「Crossfab-Fab」分子を示しており、(Q、U)は、「(Fab)-Crossfab」分子を示しており、(R、V)は、「Crossfab-(Fab)」分子を示している。黒い点:ヘテロダイマー化を促すFcドメイン内の任意選択的修飾。++、--:任意選択的にCH1及びCLドメインに導入された反対の電荷のアミノ酸。図示のCrossFab分子は、VH領域とVL領域の交換を含んでいるが、-CH1及びCLドメインに荷電修飾が導入されていない実施態様では-代替的にCH1とCLドメインの交換を含んでいる場合がある。 本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子(TCB)の例示的構造である。(W、Y)は、「Fab-(Crossfab)」分子を示しており、(X、Z)は、「(Crossfab)-Fab」分子を示している。黒い点:ヘテロダイマー化を促すFcドメイン内の任意選択的修飾。++、--:任意選択的にCH1及びCLドメインに導入された反対の電荷のアミノ酸。図示のCrossFab分子は、VH領域とVL領域の交換を含んでいるが、-CH1及びCLドメインに荷電修飾が導入されていない実施態様では-代替的にCH1とCLドメインの交換を含んでいる場合がある。 実施例において調製されるT細胞二重特異性(TCB)抗体分子の例示である。試験されるTCB抗体分子はすべて、電荷修飾を有する「2+1 IgG CrossFab、反転型」として生成された(CD3バインダーにおけるVH/VL交換、STEAP1バインダーにおける電荷修飾、EE=147E、213E;RK=123R、124K)。 バンドルツズマブの可変ドメインの配列分析を示している。(A)配列中のホットスポット位置の予測である。(B)CDR領域及びバンドルツズマブの可変ドメイン配列中に予測されるホットスポットのアノテーションである。 異なるSTEAP-1 TCB抗体分子により誘導された、24時間(A)又は48時間(B)後のSTEAP-1発現LnCAP細胞のT細胞媒介性の溶解である(E:T=10:1、ヒトPBMCエフェクター細胞)。SDと共に3回分が示されている。 Jurkat-NFATレポーター細胞上のヒトCD3及びLnCAP(A)又は22Rv1細胞(B)上のヒトSTEAP-1に対する異なるSTEAP-1 TCB抗体分子の同時結合時の、発光により決定されたJurkat活性化を示している。STEAP-1-陰性CHO-K1細胞株がコントロールとして使用された(C)。SDと共に3回分が示されている。 ヒトSTEAP-1発現CHO-hSTEAP1細胞(A)及びCD3発現Jurkat NFAT細胞(B)に対するSTEAP-1 TCB抗体分子の結合を示している。
定義
本明細書の用語は、以下で特に定義されない限り、当技術分野で一般に使用されるように使用される。
本明細書において使用される用語「抗原結合分子」は、その最も広い意味において、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。抗原結合分子の例は、免疫グロブリン及び誘導体、例えば、その断片である。
用語「二重特異性」とは、抗原結合分子が少なくとも二つの異なる抗原決定基に特異的に結合することができることを意味する。一般的に、二重特異性抗原結合分子は、各々が異なる抗原決定基に特異的な二つの抗原結合部位を含む。特定の実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、二つの抗原決定基、特に二つの別個の細胞上に発現した二つの抗原決定基に同時に結合することができる。
本明細書において使用される用語「価」は、抗原結合分子内における特定数の抗原結合部位の存在を意味する。したがって、「抗原に対する一価の結合」という表現は、抗原結合分子内において、抗原に特異的な一つの(且つ一つを超えない)抗原結合部位の存在を意味する。
「抗原結合部位」は、抗原との相互作用を提供する抗原結合分子の部位、即ち、一又は複数のアミノ酸残基を指す。例えば、抗体の抗原結合部位は、相補性決定領域(CDR)由来のアミノ酸残基を含む。天然免疫グロブリン分子は、一般に二つの抗原結合部位を有し、Fab分子は一般に単一の抗原結合部位を有する。
本明細書で使用される「抗原結合部分」は、抗原決定基に特異的に結合するポリペプチド分子を指す。一実施態様では、抗原結合部分は、それが結合するエンティティ(例えば、第2の抗原結合部分)を標的部位へ、例えば抗原決定基を有する特定の型の腫瘍細胞へと方向付けることができる。別の実施態様では、抗原結合部分は、その標的抗原、例えばT細胞受容体複合抗原を通してシグナル伝達を活性化することができる。抗原結合部分には、抗体及びその断片が含まれる。これについては後述する。特定の抗原結合部分には、抗体重鎖可変領域及び抗体軽鎖可変領域を含む、抗体の抗原結合ドメインが含まれる。特定の実施態様では、抗原結合部分は、本明細書でさらに定義し、且つ当技術分野において既知であるように、抗体定常領域を含むことができる。有用な重鎖定常領域は、五つのアイソタイプ:α、δ、ε、γ、又はμのいずれかを含む。有用な軽鎖定常領域は、二つのアイソタイプ:κ及びλのいずれかを含む。
本明細書において使用される用語「抗原決定基」は、「抗原」及び「エピトープ」と同義であり、抗原結合部分が結合し、抗原結合部分-抗原複合体を形成するポリペプチド巨大分子上の部位(例えば、アミノ酸の連続的広がり又は非連続的アミノ酸の異なる領域から形成される立体配座構造)を指す。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞の表面に、ウイルス感染細胞の表面に、他の疾患細胞の表面に、免疫細胞の表面に、血清中に遊離した状態で、及び/又は細胞外基質(ECM)に見出すことができる。特に断らない限り、本明細書において抗原と呼ばれるタンパク質(例えばSTEAP-1、CD3)は、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来のタンパク質の任意の天然型を指す。特定の実施態様では、抗原はヒトタンパク質である。本明細書において特定のタンパク質が言及される場合、その用語は「完全長」の未処理のタンパク質と、細胞内でのプロセシングにより得られる任意の形態のタンパク質とを包含する。その用語はまた、天然に存在するタンパク質の変異体、例えば、スプライス変異体又は対立遺伝子変異体を包含する。抗原として有用な例示的ヒトタンパク質は、CD3、特にCD3のエプシロンサブユニット(ヒト配列についてUniProt no. P07766(バージョン185)、NCBI RefSeq no. NP_000724.1、配列番号24;又はカニクイザル[Macaca fascicularis]配列についてUniProt no. Q95LI5(バージョン69)、NCBI GenBank no. BAB71849.1、配列番号25参照)、又はSTEAP-1(prostate 1の六つの膜貫通上皮抗原:ヒト配列についてはUniProt no. Q9UHE8(バージョン137)、NCBI RefSeq no. NP_036581.1、配列番号23参照)である。特定の実施態様では、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、様々な種由来のCD3又はSTEAP-1抗原の中でも保存されたCD3又はSTEAP-1のエピトープに結合する。特定の実施態様では、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子はヒトSTEAP-1に結合する。
「特異的結合」とは、結合が、抗原について選択的であり、望ましくない相互作用又は非特異的相互作用とは区別可能であることを意味する。抗原結合部分の、特定の抗原決定基への結合能は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)又は当業者によく知られた他の技術、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、BIAcore計器上での解析)(Liljeblad et al., Glyco J 17, 323-329 (2000))、及び古典的結合アッセイ(Heeley, Endocr Res 28, 217-229 (2002))により測定することができる。一実施態様では、抗原結合部分の無関係なタンパク質への結合の程度は、例えばSPRによって測定した場合、抗原結合部分の抗原への結合の約10%未満である。特定の実施態様では、抗原に結合する抗原結合部分、又は抗原結合部分を含む抗原結合分子は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(K)を有する。
「親和性」は、分子(例えば、受容体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、リガンド)との間の非共有相互作用の総和の強度を指す。本明細書では、特に明記しない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗原結合部分と抗原、又は受容体とそのリガンド)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、通常、解離定数(K)によって表され、この解離定数(K)は、解離速度定数と会合速度定数(それぞれ、koff及びkon)の比である。したがって、等価な親和性は、速度定数の比が同じままである限り、異なる速度定数を含みうる。親和性は、本明細書に記載したものを含む、当技術分野で既知の十分に確立された方法によって測定することができる。親和性を測定するための特定の方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
例えばFc受容体への結合減少といった「結合減少」は、例えばSPRによって測定される、各相互作用に対する親和性の減少を指す。明確に示すために、用語はゼロ(又は分析方法の検出限界を下回る値)への親和性の減少、即ち相互作用の完全な消失も含む。逆に、「結合増大」は、各相互作用に対する親和性の増大を指す。
本明細書において使用される「T細胞活性化抗原」は、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の表面上に発現される抗原決定基を指し、抗原結合分子との相互作用時にT細胞の活性化を誘導することができる。具体的には、抗原結合分子とT細胞活性化抗原との相互作用は、T細胞受容体複合体のシグナル伝達カスケードを引き起こすことによりT細胞活性化を誘導することができる。特定の一実施態様では、T細胞活性化抗原は、CD3、特にCD3のエプシロンサブユニット(ヒト配列についてUniProt no. P07766(バージョン144)、NCBI RefSeq no. NP_000724.1、配列番号24を;カニクイザル[Macaca fascicularis]配列についてはUniProt no. Q95LI5(バージョン49)、NCBI GenBank no. BAB71849.1、配列番号25を参照)。
本明細書において使用される「T細胞活性化」は、活性化マーカーの増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞傷害性エフェクター分子放出、細胞傷害活性、及び発現から選択される、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の一又は複数の細胞応答を指す。T細胞活性化を測定するために適切なアッセイは、技術分野で既知であり、本明細書に記載される。
本明細書において使用される「標的細胞抗原」は、標的細胞、例えばがん細胞又は腫瘍間質の細胞といった腫瘍内細胞の表面に提示される抗原決定基を指す。特定の一実施態様では、標的細胞抗原は、STEAP-1、特にヒトSTEAP-1である。
本明細書において、Fab分子などに関して使用される用語「第1」、「第2」又は「第3」は、各種の部分が複数存在するときに区別を簡便にするために使用される。このような用語の使用は、明瞭に述べているのでない限り、二重特異性抗原結合分子の特定の順序又は方向を付与することを意図しているのではない。
「融合した」とは、複数の成分(例えば、Fab分子及びFcドメインのサブユニット)が、直接又は一又は複数のペプチドリンカーを介して、ペプチド結合により結合していることを意味する。
「Fab分子」は、免疫グロブリンの、重鎖(「Fab重鎖」)のVH及びCH1ドメインと、軽鎖(「Fab軽鎖」)のVL及びCLドメインとからなるタンパク質を指す。
「クロスオーバー」Fab分子(「Crossfab」とも呼ばれる)は、Fab重鎖とFab軽鎖の可変ドメイン又は定常ドメインが交換されている(即ち互いによって置き換えられている)Fab分子を意味し、即ちクロスオーバーFab分子は、軽鎖可変ドメインVL及び重鎖定常ドメイン1 CH1(NからC末端の方向に、VL-CH1)からなるペプチド鎖と、重鎖可変ドメインVH及び軽鎖定常ドメインCL(NからC末端の方向に、VH-CL)からなるペプチド鎖とを含む。明瞭には、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子において、重鎖定常ドメイン1 CH1を含むペプチド鎖を、本明細書では(クロスオーバー)Fab分子の「重鎖」と呼ぶ。逆に、Fab軽鎖とFab重鎖の定常ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子では、重鎖可変ドメインVHを含むペプチド鎖を、本明細書では(クロスオーバー)Fab分子の「重鎖」と呼ぶ。
これに対して、「従来の」Fab分子とは、その天然フォーマットにおけるFab分子、即ち重鎖の可変ドメイン及び定常ドメイン(NからC末端の方向に、VH-CH1)からなる重鎖と、軽鎖の可変ドメイン及び定常領域(NからC末端の方向に、VL-CL)からなる軽鎖を含むFab分子を意味する。
用語「免疫グロブリン分子」は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、ジスルフィド結合している二つの軽鎖と二つの重鎖からなる約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に、各重鎖は可変重鎖ドメイン又は重鎖可変領域とも呼ばれる可変ドメイン(VH)を有し、その後に重鎖定常ドメインとも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)が続いている。同様に、N末端からC末端に、各軽鎖は可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変領域とも呼ばれる可変ドメイン(VL)を有し、その後に軽鎖定常領域とも呼ばれる定常ドメイン(CL)ドメインが続いている。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)、又はμ(IgM)と呼ばれる五種類のうちの一つに割当てることができ、それらのいくつかはさらにサブタイプ、例えばγ(IgG)、γ(IgG)、γ(IgG)、γ(IgG)、α(IgA)及びα(IgA)に分けられる。免疫グロブリンの軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)とラムダ(λ)と呼ばれる、2つのタイプのいずれかに割り当てることができる。免疫グロブリンは、基本的に、免疫グロブリンのヒンジ領域を介して結合された二つのFab分子とFcドメインからなる。
本明細書における用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、種々の抗体構造を包含し、限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び、所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片を含む。
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、 即ち例えば、天然に生じる変異を含むか又はモノクローナル抗体調製物の製造時に発生し、一般的に少量で存在している可能性のある変異体抗体を除き、集団を構成する個々の抗体は同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の生成を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含む様々な技術によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのこれらの方法及びその他の例示的な方法は本明細書に記載されている。
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から分離されたものであり、即ちその自然環境には存在しないものである。特定のレベルの精製は必要でない。例えば、単離された抗体は、その天然又は自然の環境から除去することができる。宿主細胞に発現される、組み換えにより生成された抗体を、任意の適切な技術により分離、画分化、又は部分的若しくは実質的に精製された天然又は組み換え抗体のように、本発明のために単離することが考慮される。したがって、本発明の抗体及び二重特異性抗原結合分子は、単離される。いくつかの実施態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)法により決定されるように、95%又は99%を上回る純度に精製される。抗体純度の評価法の総説としては、例えばFlatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007)を参照のこと。
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「全抗体」は、本明細書中で互換的に使用され、天然型抗体構造と実質的に類似の構造を有する抗体を指す。
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部分を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子(例えばscFv)、及び単一ドメイン抗体が含まれる。特定の抗体断片の総説については、Hudson et al. Nat. Med. 9:129-134 (2003)を参照されたい。scFv断片の総説については、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp. 269-315 (1994)を参照;また、国際公開第93/16185号;及び米国特許第5571894号及び 第5587458号も参照。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、且つin vivo半減期を増加させたFab及びF(ab’)断片の議論については、米国特許第5869046号を参照のこと。ダイアボディは二価又は二重特異性でありうる二つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404097号;国際公開第1993/01161号;Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003);及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)を参照。トリアボディ及びテトラボディもHudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべて又は一部、或いは軽鎖可変ドメインのすべて又は一部を含む抗体断片である。特定の実施態様では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6248516号参照)。抗体断片は様々な技術で作成することができ、限定されないが、本明細書に記載されるように、インタクトな抗体のタンパク分解、並びに組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌又はファージ)による生産を含む。
用語「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部又は全部に結合し、且つ抗原の一部又は全部に相補的な領域を含む抗体の部分を指す。抗原結合ドメインは、例えば、一又は複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)により提供されうる。特に、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)及び抗体重鎖可変ドメイン(VH)を含む。
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然型抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は一般に、各々が四つの保存されたフレームワーク領域(FR)と三つの超可変領域(HVR)とを含む類似構造を有する。例えば、Kindt et al., Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照されたい。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分でありうる。可変領域配列に関連して本明細書において使用される場合、「Kabat番号付け」は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)によって規定された番号付けシステムを指す。
本明細書において使用される場合、重鎖及び軽鎖のすべての定常領域及びドメインのアミノ酸位置は、本明細書において「Kabatによる番号付け」又は「Kabat番号付け」と呼ばれる、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に記載されたKabat番号付けシステムに従って番号付けされる。具体的には、Kabat番号付けシステム(Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)の頁647~660参照)が、カッパ及びラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用され、Kabat EUインデックス番号付けシステム(661~723頁参照)が、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3)に使用され、この場合本明細書でこれはさらに「Kabat EUインデックスによる番号付け」と呼ぶことにより分類される。
本明細書で用いられる「超可変領域」又は「HVR」という用語は、配列が超可変である抗体可変ドメインの領域(「相補性決定領域」即ち「CDR」)及び/又は構造的に規定されるループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの領域及び/又は抗原接触残基(「抗原コンタクト(antigen contact)」を含有する抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般的に、抗体は、VHに三つ(H1、H2、H3)、及びVLに三つ(L1、L2、L3)の計六つのHVRを含む。本明細書において、例示的なHVRは:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)に生じる超可変ループ(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)に生じるCDR(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991));
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、及び93-101(H3)に生じる抗原コンタクト(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));及び
(d)HVRアミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)、及び94~102(H3)を含む、(a)、(b)、及び/又は(c)の組み合わせ
を含む。
特に断らない限り、可変ドメイン内のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では、上掲のKabat et al.に従って番号付けされる。
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に四つのFRのドメイン、即ちFR1、FR2、FR3、及びFR4で構成される。したがって、HVR及びFR配列は一般にVH(又はVL)に以下の順序で現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基、及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施態様において、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、HVR(例えば、CDR)のすべて又は実質的にすべてが、 非ヒト抗体のものに対応し、FRのすべて又は実質的にすべてが、ヒト抗体のものに対応する。このような可変ドメインを、本明細書では「ヒト化可変領域」と呼ぶ。ヒト化抗体は、場合によって、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含んでよい。いくつかの実施態様において、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化型」は、ヒト化を遂げた抗体を指す。本発明により包含される「ヒト化抗体」の他の形態は、特にC1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合に関して本発明による特性を産むように定常領域が追加的に修飾されているもの又は元の抗体から変更されているものである。
「ヒト抗体」は、ヒト又はヒト細胞により産生されるか、又はヒト抗体のレパートリーや他のヒト抗体をコードする配列を利用した非ヒト起源に由来する抗体のそれに対応するアミノ酸配列を有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。特定の実施態様では、ヒト抗体は、非ヒトトランスジェニック哺乳動物、例えばマウス、ラット、又はウサギから誘導される。特定の実施態様では、ヒト抗体は、ハイブリドーマ細胞株から誘導される。ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体断片も、本明細書においてヒト抗体又はヒト抗体の断片とみなされる。
抗体又は免疫グロブリンの「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体の五つの主要なクラス、即ちIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IGA、及びIgAに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
本明細書の用語「Fcドメイン」又は「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域と変異型Fc領域を含む。IgG重鎖のFc領域の境界はわずかに変化しうるが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226又はPro230から重鎖のカルボキシル末端まで延びると定義される。しかしながら、宿主細胞によって生成される抗体には、重鎖のC末端から、一又は複数の、特に一つ又は二つのアミノ酸の翻訳後切断が生じうる。したがって、完全長重鎖をコードする特異的な核酸分子の発現により、宿主細胞によって生成される抗体は、完全長重鎖を含みうるか、又は完全長重鎖の切断された変異体(本明細書では「切断された変異型重鎖」とも呼ぶ)を含みうる。これは、重鎖の最後の二のC末端アミノ酸がグリシン(G446)とリジン(K447、Kabat EUインデックスによる番号付け)である場合に当てはまる。したがって、Fc領域のC末端リジン(Lys447)、又はC末端グリシン(Gly446)とリジン(K447)は、存在してもしなくてもよい。Fcドメイン(又は本明細書において定義されるFcドメインのサブユニット)を含む重鎖のアミノ酸配列は、本明細書では、特に断らない限りC末端グリシン-リジンジペプチドを有さないものとして示される。本発明の一実施態様では、本発明による抗体又は二重特異性抗原結合分子に含まれる、本明細書に特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖は、追加のC末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。本発明の一実施態様では、本発明による抗体又は二重特異性抗原結合分子に含まれる、本明細書に特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖は、追加のC末端グリシン残基(G446、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。本明細書に記載される薬学的組成物といった本発明の組成物は、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子の集団を含む。抗体又は二重特異性抗原結合分子の集団は、完全長重鎖を有する分子と、切断された変異型重鎖とを含みうる。抗体又は二重特異性抗原結合分子の集団は、完全長重鎖を有する分子と切断された変異型重鎖を有する分子との混合物からなることができ、この場合抗体又は二重特異性抗原結合分子の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%が切断された変異型重鎖を有する。本発明の一実施態様では、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子の集団を含む組成物は、追加的なC末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447、KabatのEUインデックスによる番号付け)を有する本明細書に特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む抗体又は二重特異性抗原結合分子を含む。本発明の一実施態様では、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子の集団を含む組成物は、追加的なC末端グリシン残基(G446、KabatのEUインデックスによる番号付け)を有する本明細書に特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む抗体又は二重特異性抗原結合分子を含む。本発明の一実施態様では、このような組成物は、本明細書に特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む分子から構成される抗体又は二重特異性抗原結合分子の集団;追加のC末端グリシン残基(G446、KabatのEUインデックスによる番号付け)を有する、本明細書に特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む分子;及び追加のC末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447、KabatのEUインデックスによる番号付け)を有する本明細書に特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む分子を含む。本明細書に別途指定のない限り、Fc領域又は定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed. Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991(上記も参照).本明細書において使用されるFcドメインの「サブユニット」は、二量体Fcドメインを形成する二つのポリペプチドの一方、即ち、免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含み、安定な自己会合能を有するポリペプチドを指す。例えば、IgG Fcドメインのサブユニットは、IgG CH2及びIgG CH3定常ドメインを含む。
「Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促す修飾」とは、Fcドメインのサブユニットを含むポリペプチドの、同一のポリペプチドとの会合によるホモダイマーの形成を低減又は抑制する、ペプチド骨格の操作又はFcドメインサブユニットの翻訳後修飾である。本明細書において使用される会合を促す修飾には、特に、会合することが望ましい二つのFcドメインサブユニット(即ち、Fcドメインの第1及び第2のサブユニット)の各々に対して行われる別々の修飾が含まれ、これらの修飾は、二つのFcドメインサブユニットの会合を促進するために互いに相補的である。例えば、会合を促す修飾は、Fcドメインサブユニットの一方又は両方の構造又は電荷を変化させることにより、それらの会合を、それぞれ立体的に又は静電的に好ましいものにすることができる。このように、(ヘテロ)二量体化は、第1のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドと、第2のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドとの間で起こり、これらのポリペプチドは、サブユニットの各々に融合したさらなる成分(例えば、抗原結合部分)が同じでないという意味で非同一でありうる。いくつかの実施態様では、会合を促す修飾は、Fcドメイン内におけるアミノ酸変異、特にアミノ酸置換を含む。特定の実施態様では、会合を促す修飾は、Fcドメインの二つのサブユニットの各々における別々のアミノ酸変異、特にアミノ酸置換を含む。
用語「エフェクター機能」は、抗体のアイソタイプにより変わる、抗体のFc領域に起因しうる生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例には:C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);抗体依存性細胞貪食(ADCP);サイトカイン分泌;抗原提示細胞による免疫複合体媒介抗原取り込み;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;及びB細胞の活性化が含まれる。
本明細書において使用される「改変する、改変された、改変」などの用語は、ペプチド骨格のいずれかの操作、又は天然に存在するポリペプチド若しくは組み換えポリペプチド若しくはその断片の翻訳後修飾を含むと考慮される。改変には、アミノ酸配列、グリコシル化パターン、又は個々のアミノ酸の側鎖基の修飾と、このような手法の組合せが含まれる。
本明細書で使用される用語「アミノ酸変異」は、アミノ酸の置換、欠失、挿入、及び修飾を包含することを意図している。置換、欠失、挿入、及び修飾のあらゆる組み合わせは、最終的なコンストラクトが所望の特性、例えば、Fc受容体に対する結合の低減、又は別のペプチドとの会合の増大を保持することを前提に、最終的なコンストラクトに到達するために行うことができる。アミノ酸配列の欠失及び挿入には、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端の欠失、並びにアミノ酸の挿入が含まれる。特定のアミノ酸変異はアミノ酸の置換である。Fc領域の結合特性などを変更する目的で、非保存的アミノ酸置換、即ち、一のアミノ酸を、異なる構造及び/又は化学特性を有する別のアミノ酸で置換することは、特に好ましい。アミノ酸置換には、20の標準のアミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン、3-メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5-ヒドロキシリジン)の天然に存在するアミノ酸誘導体又は天然に存在しないアミノ酸による置き換えが含まれる。アミノ酸変異体は、当技術分野で周知の遺伝学的方法又は化学的方法を用いて生成することができる。遺伝学的方法は、部位特異的変異原性、PCR、遺伝子合成などを含みうる。遺伝学的改変以外の方法、例えば化学的修飾によるアミノ酸の側鎖基の変更方法も有用でありうると考えられる。本明細書では、同じアミノ酸変異を示すために、種々の表記が使用される。例えば、Fcドメインの329位におけるプロリンからグリシンへの置換は、329G、G329、G329、P329G、又はPro329Glyとして示される。
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした場合の、参照ポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、当分野の技術の範囲内にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、Clustal W、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェア又はFASTAプログラムパッケージのような公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、ここでの目的のために、%アミノ酸配列同一性の値は、FASTAパッケージバージョン36.3.8cのggsearchプログラムを使用して又はより最近のBLOSUM50比較行列を用いて生成される。FASTAプログラムパッケージは、W. R. Pearson and D. J. Lipman (1988), “Improved Tools for Biological sequence Analysis”, PNAS 85:2444-2448; W. R. Pearson (1996) “Effective protein sequence comparison” Meth. Enzymol. 266:227- 258; 及び Pearson et. al. (1997) Genomics 46:24-36によって作製され、http://fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/fasta_down.shtmlから公的に利用可能である。代替的に、http://fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/index.cgiにおいてアクセス可能な公的サーバを使用して、ggsearch(global protein:protein)プログラム及びデフォルトオプション(BLOSUM50;open:-10;ext:-2;Ktup=2)を用いて配列を比較し、確実にローカルアラインメントではなくグローバルアラインメントを実施することができる。パーセントアミノ酸同一性は、出力されるアラインメントヘッダに与えられる。
用語「ポリヌクレオチド」は、単離された核酸分子又はコンストラクト、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、ウイルス由来のRNA、又はプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、一般的なホスホジエステル結合又は非一般的結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に見られるようなアミド結合)を含みうる。用語「核酸分子」は、ポリヌクレオチド中に存在する、任意の一又は複数の核酸セグメント、例えばDNA又はRNA断片を指す。
「単離された」核酸分子又はポリヌクレオチドは、その天然環境から除去された目的の核酸分子、DNA又はRNAである。例えば、ベクターに含有されるポリペプチドをコードする組み換えポリヌクレオチドを、本発明の目的のために単離することが考慮される。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種宿主細胞内に維持される組み換えポリヌクレオチド、又は溶液中の精製された(部分的に又は実質的に)ポリヌクレオチドが含まれる。単離されたポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド分子を通常含む細胞に含まれるポリヌクレオチド分子を含むが、そのポリヌクレオチド分子は、染色体外又はその自然の染色体上の位置とは異なる染色***置に存在している。単離されたRNA分子は、in vivo又はin vitroの本発明のRNA転写物、並びにポジティブ及びネガティブな鎖形式、及び二重鎖形式を含む。本発明の単離されたポリヌクレオチド又は核酸は、さらに、合成により生成されたそのような分子を含む。加えて、ポリヌクレオチド又は核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、又は転写ターミネーターといった制御要素を含んでも含まなくてもよい。
「[例えば本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子]をコードする単離されたポリヌクレオチド(又は核酸)」は、抗体重鎖及び軽鎖(又はその断片)をコードする一又は複数のポリヌクレオチド分子を指し、これには、単一のベクター又は別々のベクター中のこのようなポリヌクレオチド分子(複数可)、及び宿主細胞中の一又は複数の位置に存在するこのような核酸分子(複数可)が含まれる。
用語「発現カセット」は、組み換えにより又は合成により、標的細胞内の特定の核酸の転写を許可する一連の特定の核酸要素を用いて生成されたポリヌクレオチドを指す。組み換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス、又は核酸断片中に取り込むことができる。典型的には、発現ベクターの組み換え発現カセット部分には、他の配列の中でも、転写される核酸配列及びプロモーターが含まれる。特定の実施態様では、発現カセットは、本発明の抗体若しくは二重特異性抗原結合分子、又はその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
用語「ベクター」又は「発現ベクター」は、標的細胞内においてそれが作動可能に結合する特定の遺伝子の発現を導入及び方向付けするために使用されるDNA分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、並びに導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。本発明の発現ベクターは、発現カセットを含む。発現ベクターは、大量の安定なmRNAの転写を可能にする。発現ベクターが細胞内部に入ると、遺伝子によってコードされるリボ核酸分子又はタンパク質が、細胞転写及び/又は翻訳機械により生成される。一実施態様では、本発明の発現ベクターは、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を含む発現カセットを含む。
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」は互換的に使用され、外因性の核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、それには、継代の数に関係なく、それに由来する一次形質転換細胞及び子孫が含まれる。子孫は親細胞と核酸含量が完全に同一でなくてもよく、突然変異を含んでいてもよい。本明細書には、最初に形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異型子孫が含まれる。宿主細胞は、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を生成するために使用することができるいずれかの種類の細胞系である。宿主細胞は、培養細胞、例えばいくつか例を挙げると、HEK細胞、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞、又はハイブリドーマ細胞といった哺乳動物の培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、及び植物細胞を含み、さらには、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、又は培養された植物若しくは動物組織内部に含まれる細胞を含む。
「活性化Fc受容体」は、抗体のFcドメインの結合に続いて、エフェクター機能を実行するように受容体保有細胞を刺激するシグナル伝達現象を生じさせるFc受容体である。ヒト活性化Fc受容体には、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)、及びFcαRI(CD89)が含まれる。
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、免疫エフェクター細胞により抗体でコートされた標的細胞の溶解を招く免疫機構である。標的細胞は、Fc領域を含む抗体又はその誘導体が通常Fc領域に対するN末端であるタンパク質部分を介して特異的に結合する細胞である。本明細書で使用される用語「ADCCの低下」は、標的細胞を囲む媒質中の所定の抗体濃度において、上記に定義したADCCの機構により所定の時間内に溶解する標的細胞の数、及び/又は、ADCCの機構により所定の時間内に所定の数の標的細胞を溶解させるために必要な、標的細胞を囲む媒質中の抗体濃度の上昇のいずれかと定義される。ADCCの低下は、同じ標準的な生成、精製、製剤化、及び貯蔵方法(当業者に既知の)を用いて、但し改変されていない、同じ型の宿主細胞により生成される同じ抗体により媒介されるADCCと相対的なものである。例えば、そのFcドメインにADCCを低下させるアミノ酸置換を含む抗体により媒介されるADCCの低下は、このアミノ酸置換をFcドメインに含まない同じ抗体によって媒介されるADCCと比較される。ADCCを測定するための適切なアッセイは、当技術分野でよく知られている(例えば、国際公開第2006/082515号又は同第2012/130831号参照)。
「有効量の」薬剤は、それが投与される細胞又は組織中に生理的変化をもたらすために必要な量を指す。
薬剤、例えば、薬学的組成物の「治療的有効量」とは、所望の治療的又予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での、有効な量を指す。治療的有効量の薬剤は、疾患の有害作用を、例えば、排除する、低下させる、遅延させる、最小化する、又は防止する。
「個体」又は「被験者」は、哺乳動物である。哺乳動物には、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれる。特に、個体又は対象はヒトである。
用語「薬学的組成物」は、その中に有効で含有される活性成分の生物学的活性を許容するような形態であって、組成物が投与される対象にとって許容できない毒性を有する他の成分を含まない調製物を指す。
「薬学的に許容される担体」は、対象に非毒性である、有効成分以外の薬学的組成物の成分を指す。薬学的に許容される担体には、限定されないが、バッファー、賦形剤、安定剤又は保存剤が含まれる。
本明細書で用いられる場合、「治療」(及びその文法上の変形)は、治療されている個体の疾患の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の過程において実行できる。治療の望ましい効果には、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。いくつかの実施態様では、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、疾患の発症を遅延させるか又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
用語「パッケージ挿入物」は、治療製品の商品包装に通例含まれる説明書を指すのに使用され、このような治療製品の使用に関する指示、使用法、用量、投与、併用療法、禁忌及び/又は注意事項についての情報を含む。
実施態様の詳細な説明
本発明は、STEAP-1、特にヒトSTEAP-1に結合し、例えばスクシンイミド形成による分解に抵抗性であり、したがって治療目的に必要であるように特に安定な抗体及び二重特異性抗原結合分子を提供する。加えて、この分子は、治療的用途にとって好ましい、例えば有効性及び/又は安全性、並びに生産性に関する他の特性も有する。
STEAP-1抗体
したがって、第1の態様では、本発明はSTEAP-1に結合する抗体を提供し、この抗体は、質量分析により決定して、pH7.4、37℃で4週間後に約5%未満のスクシンイミド分解を示す、及び/又はpH6.0、40℃で4週間後に約10%未満のスクシンイミド分解を示す。一実施態様において、抗体は、質量分析により決定して、pH7.4、37℃で4週間後に約3%未満のスクシンイミド分解、特に約1%未満のスクシンイミド分解を示す。一実施態様において、抗体は、質量分析により決定して、pH6.0、40℃で4週間後に約7.5%未満のスクシンイミド分解、特に約5%未満のスクシンイミド分解を示す。
さらなる態様において、本発明により提供されるSTEAP-1に結合する抗体は、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
特定の実施態様では、抗体は、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含むVHと、配列番号7のLCDR1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含むVLとを含む。
いくつかの実施態様において、抗体はヒト化抗体である。一実施態様において、VHは、ヒト化VHである及び/又はVLはヒト化VLである。一実施態様において、抗体は、上記実施態様のいずれかにおけるCDRを含み、さらにはアクセプターヒトフレームワーク、例えばヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
一実施態様において、VHは、配列番号11、配列番号12及び配列番号13からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
一実施態様において、抗体は、配列番号11、配列番号12及び配列番号13の群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVH配列と、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVL配列とを含む。
特定の実施態様では、少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH又はVL配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む抗体は、STEAP-1に対する結合能を保持する。特定の実施態様では、配列番号11、12又は13において合計で1から10のアミノ酸が置換、挿入及び/又は削除されている、及び/又は配列番号14において合計で1から10のアミノ酸が置換、挿入及び/又は削除されている。特定の実施態様では、置換、挿入、又は削除は、HVR外の(即ちFR内の)領域で生じる。任意選択的に、抗体は、その配列の翻訳後修飾を含めて、配列番号11、12又は13にVH配列を、及び/又は配列番号14にVL配列含む。
一実施態様において、抗体は、配列番号11、配列番号12及び配列番号13の群より選択されるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号14のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
一実施態様において、抗体は、配列番号11、配列番号12及び配列番号13の群より選択されるVH配列と、配列番号14のVL配列とを含む。
特定の実施態様では、抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を含むVHと配列番号14のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
特定の実施態様では、抗体は、配列番号13のVH配列と配列番号14のVL配列とを含む。
一実施態様において、抗体は、ヒト定常領域を含む。一実施態様において、抗体は、ヒト定常領域を含む免疫グロブリン分子、特にヒトCH1、CH2、CH3及び/又はCLドメインを含むIgGクラスの免疫グロブリン分子である。ヒト定常ドメインの例示的配列は、配列番号39及び40(それぞれヒトカッパ及びラムダのCLドメイン)、並びに配列番号41(ヒトIgG1重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)に与えられる。いくつかの実施態様では、抗体は、配列番号39又は配列番号40、特に配列番号39のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施態様では、抗体は、配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域は、本明細書に記載されるようにFcドメインにおけるアミノ酸変異を含みうる。
一実施態様において、抗体はモノクローナル抗体である。
一実施態様において、抗体は、IgG、特にIgG抗体である。一実施態様において、抗体は完全長抗体である。
一実施態様において、抗体は、Fcドメイン、特にIgG Fcドメイン、さらに詳細にはIgG1 Fcドメインを含む。一実施態様において、FcドメインはヒトFcドメインである。抗体のFcドメインは、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインに関して本明細書に記載される特徴のいずれかを、単独で又は組み合わせて含むことができる。
別の実施態様では、抗体は、Fv分子、scFv分子、Fab分子、及びF(ab’)分子の群より選択される抗体断片、特にFab分子である。別の実施態様では、抗体断片は、ダイアボディ、トリアボディ又はテトラボディである。
さらなる態様では、上記実施態様のいずれかによる抗体は、以下のセクションに記載される特徴のいずれかを、単独で又は組み合わせて含むことができる。
グリコシル化変異体
特定の実施態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を上昇又は低下させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、一又は複数 グリコシル化部位が作成又は除去されるようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成される。
抗体がFc領域を含む場合、それに結合するオリゴ糖を変えることができる。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合により一般に付着した分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えばWright et al. TIBTECH 15:26-32(1997)を参照。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐糖鎖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースを含む。いくつかの実施態様では、本発明の抗体におけるオリゴ糖の改変は一定の改善された特性を有する抗体変異型を生成するために行われる。
一実施態様において、抗体変異体は、非フコシル化オリゴ糖、即ちFc領域に(直接又は間接的に)付着したフコースを欠くオリゴ糖構造を有して提供される。このような非フコシル化オリゴ糖(「アフコシル化された」オリゴ糖とも呼ばれる)は特に、二分岐オリゴ糖構造の幹の第1のGlcNAcに結合したフコース残基を欠くN-結合型オリゴ糖である。一実施態様においては、天然抗体又は親抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加している抗体変異体が提供される。例えば、非フコシル化オリゴ糖の割合は、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、又は場合によっては約100%(即ちフコシル化オリゴ糖は存在しない)である。非フコシル化オリゴ糖のパーセンテージは、例えば、国際公開第2006/082515号に記載されているように、MALDI-TOF質量分析によって測定された、Asn297に付着しているすべてのオリゴ糖の合計(例えば複合構造、ハイブリッド構造及び高マンノース構造)に対する、フコース残基を欠くオリゴ糖の(平均)量である。Asn297とはFc領域内のおよそ297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体のわずかな配列変異に起因して、297位のおよそ±3アミノ酸上流又は下流に、即ち294位から300位に位置する場合もある。Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加したこのような抗体は、改善されたFcγRIIIa受容体結合及び/又は改善されたエフェクター機能、特に改善されたADCC機能を有しうる。例えば、米国特許公開第2003/0157108号;同第2004/0093621号を参照のこと。
低減したフコシル化を有する抗体を生成することのできる細胞株の例には、タンパク質フコシル化を欠くLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第2003/0157108号;及び国際公開第2004/056312号、特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87:614-622 (2004); Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006);及び国際公開第2003/085107号を参照)、又はGDP-フコース合成又は輸送タンパク質が低減又は消失した細胞(例えば、米国特許出願公開第2004259150号、同第2005031613号、同第2004132140号、同第2004110282号を参照)が含まれる。
さらなる実施態様では、二分されたオリゴ糖を有する抗体変異体、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている抗体変異体が提供される。このような抗体変異体は、上述のように、低下したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有しうる。このような抗体変異体の例は、例えば、Umana et al., Nat Biotechnol 17, 176-180 (1999); Ferrara et al., Biotechn Bioeng 93, 851-861 (2006);国際公開第99/5434号2;同第2004/065540、同第2003/011878号に記載されている。
Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を持つ抗体変異体も提供される。このような抗体変異体はCDC機能を改善させた可能性がある。このような抗体変異体の例は、例えば、国際公開第1997/30087号;同第1998/58964号;及び同第1999/22764号に記載されている。
システイン操作抗体変異体
特定の実施態様では、システイン操作抗体、例えば、抗体の一又は複数の残基がシステイン残基で置換されている「チオMab」を作製することが望ましい。特定の実施態様では、置換された残基は、抗体のアクセス可能な部位に生じる。それらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基は、それによって抗体のアクセス可能な部位に配置され、本明細書中でさらに記載されるように、イムノコンジュゲーを作成するために、例えば薬物部分又はリンカー-薬剤部分などの他の部分に抗体をコンジュゲートするために使用される。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7521541号、同第830930号、同第7855275号、同第9000130号、又は同第2016040856号に記載のように生成されうる。
抗体誘導体
特定の実施態様において、本明細書で提供される抗体は、当技術分野で知られ、容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むようにさらに改変することができる。抗体の誘導体化に適した部分は、限定しないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール並びにこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドはその水中での安定性のために製造上の利点を有しうる。ポリマーはいずれかの分子量のものであってよく、分枝鎖又は未分枝鎖であってよい。抗体に付着するポリマーの数は変化してもよく、一を超えるポリマーが付着する場合、それらは同じ分子でも異なる分子でもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、改善されるべき抗体の特定の特性又は機能、その抗体誘導体が限定条件の下での治療に使用されるかどうかを含めた(但し、これらに限定されない)考慮事項に基づいて決定することができる。
別の実施態様において、放射線への曝露によって選択的に加熱されてもよい非タンパク質部分と抗体とのコンジュゲートが提供される。一実施態様では、非タンパク質部分はカーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線は、任意の波長であって良いが、限定されないものの、通常の細胞に害を与えないが、抗体-非タンパク質部分の近位細胞が死滅させる温度に非タンパク質部分を加熱する波長が含まれる。
イムノコンジュゲート
本発明はまた、細胞傷害性剤、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク毒素、細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素的に活性の毒素、若しくはその断片)、又は放射性同位体といった一又は複数の治療剤にコンジュゲート(化学的に結合)した、本明細書に記載される抗STEAP-1抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、抗体が上述の治療剤の一又は複数にコンジュゲートしている抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。抗体は、典型的には、リンカーを用いて治療剤の一又は複数に接続される。治療剤及び治療薬並びにリンカーの例を含むADC技術の概要は、Pharmacol Review 68:3-19 (2016)に明記されている。
別の実施態様において、イムノコンジュゲートは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サポンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン、及びトリコテセン(tricothecenes)を含むがこれらに限定されない、酵素的に活性な毒素又はその断片にコンジュゲートしている、本明細書に記載の抗体を含む。
別の実施態様では、イムノコンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートして放射性コンジュゲートを形成する、本明細書に記載の抗体を含む。種々の放射性同位体が、放射性コンジュゲートの製造のために入手可能である。例には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が含まれる。検出のために用いられるとき、放射性コンジュゲートは、シンチグラフ検査用の放射性原子、例えばtc99m又はI123、又は核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、mriとしても知られる)のためのスピン標識、例えばここでもヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含む。
抗体と細胞傷害性剤とのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダート HCl)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えばビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン 2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitetta et al., Science 238:1098 (1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのための例示的キレート剤である。国際公開第94/11026号を参照。リンカーは、細胞内で細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Res.52:127-131 (1992);米国特許第5208020号)が使用されうる。
本明細書のイムノコンジュゲート又はADCは、限定しないが、(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)市販されている、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むがこれらに限定されない架橋試薬を用いて調製されたコンジュゲートを明確に意図している。
多重特異性抗体
特定の実施態様では、本明細書に提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも二つの異なる部位、即ち異なる抗原上の異なるエピトープ又は同じ抗原上の異なるエピトープに対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の実施態様では、多重特異性抗体は、三つ以上の結合特異性を有する。特定の実施態様では、結合特異性の一つはSTEAP-1に対するものであり、他の(二つ以上の)特異性は、他のいずれかの抗原に対するものである。特定の実施態様では、二重特異性抗体は、STEAP-1の二つ(以上)の異なるエピトープに結合することができる。多重特異性(例えば二重特異性)抗体はまた、STEAP-1を発現する細胞に対して細胞傷害性剤又は細胞を局在化させるために用いてもよい。多重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片として調製することができる。
多重特異性抗体を作製するための技術には、限定されないが、異なる特異性を有する二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組み換え共発現が含まれる(Milstein and Cuello, Nature305: 537 (1983))及び「ノブ・イン・ホール」エンジニアリング(例えば、米国特許第5731168号、及びAtwell et al., J. Mol. Biol. 270..26 (1997)参照)。多重特異抗体はまた、抗体のFc-ヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果を操作すること(例えば、国際公開第2009/089004号参照);二つ以上の抗体又は断片を架橋すること(例えば米国特許第4676980号、及びBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)を参照);二重特異性抗体を生成するためにロイシンジッパーを使用すること(例えば、Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)及び国際公開第2011/034605号を参照);軽鎖の誤対合の問題を回避するための共通軽鎖技術を使用すること(例えば国際公開第98/50431号を参照);二重特異性抗体断片を作製するため、「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照);単鎖Fv(sFv)ダイマーを使用すること(例えば、Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照);及び、例えば、Tutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991)に記載されているように、三重特異性抗体を調製することによって作製することができる。
例えば「オクトパス抗体」を含む三つ以上の抗原結合部位を有する操作抗体、又はDVD-Igも、本明細書に含まれる(例えば国際公開第2001/77342号及び同第2008/024715号参照)。三つ以上の抗原結合部位を有する多重特異性抗体の他の例は、国際公開第2010/115589号、同第2010/112193号、同第2010/136172号、同第2010/145792号、同第2013/026831号に見ることができる。二重特異性抗体又はその抗原結合断片には、STEAP-1と、別の異なる抗原、又はSTEAP-1の二つの異なるエピトープに結合する抗原結合部位を含む「二重作用性FAb」又は「DAF」も含まれる(例えば米国特許出願公開第2008/0069820号及び国際公開第2015/095539号参照)。
同じ抗原特異性の一又は複数の結合アーム内のドメイン交差、即ち、VH/VLドメイン(例えば、国際公開第2009/080252号及び同第2015/150447号参照)、CH1/CLドメイン(例えば、国際公開第2009/080253号参照)又は完全Fabアーム(例えば、国際公開第2009/080251号、同第2016/016299号、及びSchaefer et al, PNAS, 108 (2011) 1187-1191, 及びKlein at al., MAbs 8 (2016) 1010-20参照)を交換することによるドメイン交差を有する非対称形態の多重特異性抗体も提供されうる。非対称のFabアームは、荷電又は非荷電アミノ酸変異をドメイン接触面に導入して正確なFabペアリングを導くことにより操作することもできる。例えば、国際公開第2016/172485を参照のこと。
多重特異性抗体の種々のさらなる分子フォーマットが、当技術分野で既知であり、本明細書に含まれる(例えば、Spiess et al., Mol Immunol 67 (2015) 95-106参照)。
やはり本明細書に含まれる特定の種類の多重特異性抗体は、標的細胞を殺すためにT細胞を再標的化するための、T細胞受容体(TCR)複合体のインバリアントな活性化成分、例えばCD3と、標的細胞(例えば標的細胞)上の表面抗原とに同時結合するように設計された二重特異性抗体 である。したがって、特定の実施態様では、本明細書に提供される抗体は、多重特異性抗体、特に結合特異性の一方がSTEAP-1に対するものであり、他方がCD3に対するものである二重特異性抗体である。
この目的のために有用でありうる二重特異性抗体フォーマットの例には、限定されないが、二つのscFv分子が可動性リンカーにより融合しているいわゆる「BiTE」(二重特異性T細胞エンゲージャー)分子(例えば、国際公開第2004/106381号、同第2005/061547号、同第2007/042261号、及び同第2008/119567号、Nagorsen and Baeuerle, Exp Cell Res 317, 1255-1260 (2011));ダイアボディ(Holliger et al., Prot Eng 9, 299-305 (1996))及びその誘導体、例えばタンデムダイアボディ(「TandAb」;Kipriyanov et al., J Mol Biol 293, 41-56 (1999));ダイアボディフォーマットに基づくがさらなる安定化のためにC末端ジスルフィド架橋を特徴として有する「DART」(二重親和性再標的化)分子(Johnson et al., J Mol Biol 399, 436-449 (2010))、及び全ハイブリッドマウス/ラットIgG分子であるいわゆるトリオマブ(triomab)(Seimetz et al., Cancer Treat Rev 36, 458-467 (2010)に概説)が含まれる。本明細書に含まれる特定のT細胞二重特異性抗体フォーマットは、国際公開第2013/026833号、同第2013/026839号、国際公開第2016/020309号;Bacac et al., Oncoimmunology 5(8) (2016) e1203498に記載されている。
STEAP-1と第2の抗原とに結合する二重特異性抗原結合分子
本発明は、二重特異性抗原結合分子、即ち二つの異なる抗原決定基(第1及び第2の抗原)に特異的に結合することのできる少なくとも二つの抗原結合部分を含む抗原結合分子も提供する。
本発明の特定の実施態様によれば、二重特異性抗原結合分子に含まれる抗原結合部分はFab分子(即ちそれぞれ可変及び定常ドメインを含む重鎖及び軽鎖から構成される抗原結合ドメイン)である。一実施態様において、第1及び/又は第2の抗原結合部分はFab分子である。一実施態様では、前記Fab分子はヒト分子である。特定の実施態様では、前記Fab分子はヒト化分子である。また別の実施態様では、前記Fab分子はヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインを含む。
好ましくは、抗原結合部分の少なくとも一つはクロスオーバーFab分子である。このような修飾は、異なるFab分子由来の重鎖と軽鎖との誤対合を減少させ、それにより組み換え生成において本発明の二重特異性抗原結合分子の収率及び純度を向上させる。本発明の二重特異性抗原結合分に有用な特定のクロスオーバーFab分子では、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメイン(それぞれVL及びVH)が交換されている。しかしながら、このようなドメイン交換によっても、二重特異性抗原結合分子の調製は、誤対合した重鎖と軽鎖間のいわゆるBence Jones型相互作用に起因する特定の副生成物を含みうる(Schaefer et al, PNAS, 108 (2011) 11187-11191参照)。異なるFab分子由来の重鎖と軽鎖の誤対合をさらに減少させ、したがって所望の二重特異性抗原結合分子の純度及び収率を向上させるために、反対の電荷を有する荷電アミノ酸を、第1の抗原(STEAP-1)に結合するFab分子(複数可)、又は第2の抗原(例えばCD3といったT細胞活性化抗原)に結合するFab分子の、CH1及びCLドメインの特定のアミノ酸位置に導入することができる。これについては後述する。荷電修飾は、二重特異性抗原結合分子に含まれる従来のFab分子(複数可)(例えば図1A-C、G-Jに示すような)、又は二重特異性抗原結合分子に含まれるVH/VLクロスオーバーFab分子(複数可)(例えば図1D-F、K-Nに示すような)において行われる(但し両方で行われることはない)。特定の実施態様では、荷電修飾は、二重特異性抗原結合分子に含まれる従来のFab分子(複数可)(特定の実施態様において第1の抗原、即ちSTEAP-1に結合するもの)において行われる。
本発明による特定の実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第1の抗原(即ちSTEAP-1)と、第2の抗原(例えばT細胞活性化抗原、特にCD3)とに同時結合することができる。一実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、STEAP-1とT細胞活性化抗原に同時結合することにより、T細胞と標的細胞を架橋することができる。さらに詳細な実施態様では、このような同時結合は、標的細胞、特にSTEAP-1発現腫瘍細胞の溶解を引き起こす。一実施態様では、このような同時結合は、T細胞の活性化を引き起こす。他の実施態様では、このような同時結合は、活性化マーカーの増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞傷害性エフェクター分子放出、細胞傷害活性、及び発現の群から選択される、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の細胞応答を引き起こす。一実施態様では、STEAP-1への同時結合を含まない、T細胞活性化抗原、特にCD3に対する二重特異性抗原結合分子の結合は、T細胞の活性化を引き起こさない。
一実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、T細胞の細胞傷害活性を標的細胞へ再方向付けすることができる。特定の一実施態様では、前記再方向付けは、標的細胞によるMHC媒介性ペプチド抗原の提示及び/又はT細胞の特異性と無関係である。
特に、本発明の実施態様のいずれかによるT細胞は、細胞傷害性T細胞である。いくつかの実施態様では、T細胞はCD4又はCD8 T細胞、特にCD8 T細胞である。
第1の抗原結合部分
本発明の二重特異性抗原結合分子は、STEAP-1(第1の抗原)に結合する少なくとも一の抗原結合部分、特にFab分子を含む。特定の実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、STEAP-1に結合する二の抗原結合部分、特にFab分子を含む。このような特定の一実施態様では、これら抗原結合部分の各々は、同じ抗原決定基に結合する。さらに詳細な実施態様では、これら抗原結合部分のすべては同一であり、即ちそれらは、本明細書に記載されるようにCH1及びCLドメイン内に同じアミノ酸置換を含む(もしあれば)同じアミノ酸配列を含む。一実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、STEAP-1に結合する二を超えない抗原結合部分、特にFab分子を含む。
特定の実施態様では、STEAP-1に結合する抗原結合部分(複数可)は、従来のFab分子である。このような実施態様では、第2の抗原に結合する抗原結合部分(複数可)は、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、即ちFab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVLが、又は定常ドメインCH1とCLが交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。
代替的実施態様では、STEAP-1に結合する抗原結合部分(複数可)は、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、即ちFab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVLが、又は定常ドメインCH1とCLが交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。このような実施態様では、第2の抗原に結合する抗原結合部分(複数可)は、従来のFab分子である。
STEAP-1結合部分は、二重特異性抗原結合分子を標的部位へと、例えばSTEAP-1を発現する特殊な腫瘍細胞へと方向付けることができる。
科学的に明らかに不合理又は不可能でない限り、二重特異性抗原結合分子の第1の抗原結合部分は、STEAP-1に結合する抗体に関して本明細書に記載される特徴のいずれかを、単独で又は組み合わせて組み込むことができる。
したがって、一態様において、本発明は、(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、第1の抗原がSTEAP-1であり、第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、第1の抗原結合部部分、並びに(b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分とを含む、二重特異性抗原結合分子を提供する。
特定の実施態様では、第1の抗原結合部分は、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含むVHと、配列番号7のLCDR1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含むVLとを含む。
いくつかの実施態様では、第1の抗原結合部分はヒト化抗体(に由来するもの)である。一実施態様において、VHは、ヒト化VHである及び/又はVLはヒト化VLである。一実施態様において、第1の抗原結合部分は、上記実施態様のいずれかにおけるCDRを含み、さらにはアクセプターヒトフレームワーク、例えばヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
一実施態様において、第1の抗原結合部分のVHは、配列番号11、配列番号12及び配列番号13からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、第1の抗原結合部分のVLは、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
一実施態様において、第1の抗原結合部分は、配列番号11、配列番号12及び配列番号13の群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVH配列と、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVL配列とを含む。
一実施態様において、第1の抗原結合部分は、配列番号11、配列番号12及び配列番号13の群より選択されるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号14のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
一実施態様において、第1の抗原結合部分は、配列番号11、配列番号12及び配列番号13の群より選択されるVH配列と、配列番号14のVL配列とを含む。
特定の実施態様では、第1の抗原結合部分は、配列番号13のアミノ酸配列を含むVHと配列番号14のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
特定の実施態様では、第1の抗原結合部分は、配列番号13のVH配列と配列番号14のVL配列とを含む。
一実施態様において、第1の抗原結合部分は、ヒト定常領域を含む。一実施態様において、第1の抗原結合部分は、ヒト定常領域、特にヒトCH1及び/又はCLドメインを含むFab分子である。ヒト定常ドメインの例示的配列は、配列番号39及び40(それぞれヒトカッパ及びラムダのCLドメイン)、並びに配列番号41(ヒトIgG重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)に与えられる。いくつかの実施態様では、第1の抗原結合部分は、配列番号39又は配列番号40、特に配列番号39のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。特に、軽鎖定常領域は、本明細書の「電荷修飾」の項に記載されるアミノ酸変異を含みうる、及び/又はクロスオーバーFab分子においては、一又は複数の(特に二つの)N末端アミノ酸の欠失又は置換を含みうる。いくつかの実施態様では、第1の抗原結合部分は、配列番号41のアミノ酸配列に含まれるCH1ドメイン配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域(特にCH1ドメイン)は、本明細書の「電荷修飾」の項に記載されるアミノ酸変異を含みうる。
第2の抗原結合部分
本発明の二重特異性抗原結合分子は、第2の抗原(STEAP-1とは異なる)に結合する少なくとも一つの抗原結合部分、特にFab分子を含む。
特定の実施態様では、第2の抗原に結合する抗原結合部分は、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、即ちFab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVLが、又は定常ドメインCH1とCLが交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。このような実施態様では、第1の抗原(即ちSTEAP-1)に結合する抗原結合部分(複数可)は、好ましくは従来のFab分子である。二重特異性抗原結合分子に含まれるSTEAP-1に結合する複数の抗原結合部分、特にFab分子が存在する実施態様では、第2の抗原に結合する抗原結合部分は、好ましくはクロスオーバーFab分子であり、STEAP-1に結合する抗原結合部分は従来のFab分子である。
代替的な実施態様では、第2の抗原に結合する抗原結合部分は従来のFab分子である。このような実施態様では、第1の抗原(即ちSTEAP-1)に結合する抗原結合部分(複数可)は、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、即ちFab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVLが、又は定常ドメインCH1とCLが交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。二重特異性抗原結合分子に含まれる第2の抗原に結合する複数の抗原結合部分、特にFab分子が存在する実施態様では、STEAP-1に結合する抗原結合部分は、好ましくはクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原に結合する抗原結合部分は従来のFab分子である。
いくつかの実施態様では、第2の抗原はT細胞活性化抗原(「T細胞活性化抗原結合部分」又は「T細胞活性化抗原結合Fab分子」とも呼ばれる)。特定の一実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、T細胞活性化抗原に対する特異的結合能を有する一を超えない抗原結合部分を含む。一実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、T細胞活性化抗原に対する一価の結合を提供する。
特定の実施態様では、第2の抗原はCD3、特にヒトCD3(配列番号24)又はカニクイザルCD3(配列番号25)、最も詳細にはヒトCD3である。一実施態様において、第2の抗原結合部分は、ヒト及びカニクイザルのCD3に交差反応性(即ち、特異的に結合する)である。いくつかの実施態様では、第2の抗原は、CD3のエプシロンサブユニット(CD3エプシロン)である。
一実施態様において、第2の抗原結合部分は、配列番号15のHCDR1、配列番号16のHCDR2、及び配列番号17のHCDR3と、配列番号18のLCDR1、配列番号19のLCDR2及び配列番号20のLCDR3とを含む。
一実施態様において、第2の抗原結合部分は、配列番号15のHCDR1、配列番号16のHCDR2、及び配列番号17のHCDR3を含むVHと、配列番号18のLCDR1、配列番号19のLCDR2及び配列番号20のLCDR3を含むVLとを含む。
いくつかの実施態様では、第2の抗原結合部分はヒト化抗体(に由来するもの)である。一実施態様において、VHは、ヒト化VHである及び/又はVLはヒト化VLである。一実施態様において、第2の抗原結合部分は、上記実施態様のいずれかにおけるCDRを含み、さらにはアクセプターヒトフレームワーク、例えばヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
一実施態様において、第2の抗原結合部分は、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVH配列を含む。一実施態様において、第2の抗原結合部分は、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVL配列を含む。
一実施態様において、第2の抗原結合部分は、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVH配列と、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVL配列とを含む。
一実施態様において、第2の抗原結合部分のVHは、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合部分のVLは、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
一実施態様において、第2の抗原結合部分は、配列番号21のアミノ酸配列を含むVHと配列番号22のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
一実施態様において、第2の抗原結合部分は、配列番号21のVH配列と配列番号22のVL配列とを含む。
一実施態様において、第2の抗原結合部分は、ヒト定常領域を含む。一実施態様において、第2の抗原結合部分は、ヒト定常領域、特にヒトCH1及び/又はCLドメインを含むFab分子である。ヒト定常ドメインの例示的配列は、配列番号39及び40(それぞれヒトカッパ及びラムダのCLドメイン)、並びに配列番号41(ヒトIgG重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)に与えられる。いくつかの実施態様では、第2の抗原結合部分は、配列番号39又は配列番号40、特に配列番号39のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。特に、軽鎖定常領域は、本明細書の「電荷修飾」の項に記載されるアミノ酸変異を含みうる、及び/又はクロスオーバーFab分子においては、一又は複数の(特に二つの)N末端アミノ酸の欠失又は置換を含みうる。いくつかの実施態様では、第2の抗原結合部分は、配列番号41のアミノ酸配列に含まれるCH1ドメイン配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域(特にCH1ドメイン)は、本明細書の「電荷修飾」の項に記載されるアミノ酸変異を含みうる。
いくつかの実施態様では、第2の抗原結合部分は、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが、又は定常ドメインCLとCH1が、特に可変ドメインVLとVHが互いによって置き換えられているFab分子である(即ち、このような実施態様によれば、第2の抗原結合部分は、Fab軽鎖とFab重鎖の可変又は定常ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子である)。このような一実施態様では、第1の(及び存在する場合は第3の)抗原結合部分は従来のFab分子である。
一実施態様では、第2の抗原(例えばCD3のようなT細胞活性化抗原)に結合する一を超えない抗原結合部分が、二重特異性抗原結合分子中に存在する(即ち、二重特異性抗原結合分子は第2の抗原に対する一価の結合を提供する)。
荷電修飾
本発明の二重特異性抗原結合分子は、その中に含まれるFab分子に、特にそれらの結合アームの一つ(又は三つ以上の抗原結合Fab分子を含む分子の場合、二つ以上)にVH/VL交換を有するFabベースの二重/多重特異性抗原結合分子の生成において生じうる、マッチしない重鎖との軽鎖の誤対合(Bence-Jones型副生成物)を減少させるうえで有効なアミノ酸置換を含むことができる(PCT出願番号PCT/EP2015/150447、特にその実施例も参照されたい。この特許文献を、参照によりその全体を本明細書に包含する)。望ましくない副産物、特にそれらの結合アームの一つにVH/VLドメイン交換を有する二重特異性抗原結合分子に起こるBence Jones型副生成物と比較した場合の所望の二重特異性抗原結合分子の比率は、CH1及びCLドメイン中の特定のアミノ酸位置に反対の電荷を有する荷電アミノ酸を導入することに(本明細書では時に「荷電修飾」という)より改善することができる。
したがって、二重特異性抗原結合分子の第1及び第2の抗原結合部分の両方がFab分子であり、抗原結合部分の一方(特に第2の抗原結合部分)において、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが互いによって置き換えられているいくつかの実施態様では、
i)第1の抗原結合部分の定常ドメインCLでは、124位のアミノ酸が、正の電荷を有するアミノ酸によって置換されており(Kabatによる番号付け)、且つ第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1では、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸が、負の電荷を有するアミノ酸によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)か;又は
ii)b)による第2の抗原結合部分の定常ドメインCLでは、124位のアミノ酸が、正の電荷を有するアミノ酸によって置換されており(Kabatによる番号付け)、且つb)による第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1では、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸が、負の電荷を有するアミノ酸によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
二重特異性抗原結合分子は、i)及びii)に記載の修飾の両方を含むことはない。VH/VL交換を有する抗原結合部分の定常ドメインCLとCH1は、互いによって置き換えられない(即ち交換されないまま残る)。
具体的な一実施態様では,
i)第1の抗原結合部分の定常ドメインCLでは、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、且つ第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1では、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け);又は
ii)第2の抗原結合部分の定常ドメインCLでは、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、且つ第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1では、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
このような一実施態様では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLでは、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、且つ第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1では、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
さらなる一実施態様では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
特定の実施態様では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、且つ第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
さらに詳細な一実施態様では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、且つ第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
さらに詳細な実施態様では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸が、アルギニン(R)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、且つ第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
特定の実施態様では、上記実施態様によるアミノ酸置換が、第1の抗原結合部分の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1で行われる場合、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLはカッパアイソタイプのものである。
代替的に、上記実施態様によるアミノ酸置換は、第1の抗原結合部分の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1の代わりに、第2の抗原結合部分の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1で行われてもよい。このような特定の実施態様では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプである。
したがって、一実施態様において、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLでは、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、且つ第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1では、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
さらなる一実施態様では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
また別の実施態様では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、且つ第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一実施態様では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、且つ第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
別の実施態様では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸が、アルギニン(R)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、且つ第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
特定の一実施態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、
(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、第1の抗原がSTEAP-1であり、第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むFab分子である、第1の抗原結合部分、並びに
(b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが互いによって置き換えられている第2の抗原結合部分
を含み;
第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により置換されており(Kabatによる番号付け)(特定の一実施態様では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)により)、123位のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により置換されており(Kabatによる番号付け)(特定の一実施態様では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)により)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
二重特異性抗原結合分子のフォーマット
本発明による二重特異性抗原結合分子の成分は、様々な構成で互いに融合することができる。例示的構成を図1に示す。
特定の実施態様では、二重特異性抗原結合分子に含まれる抗原結合部分はFab分子である。このような実施態様では、第1、第2、第3(など)の抗原結合部分は、本明細書において、それぞれ第1、第2、第3(など)のFab分子と呼ばれことがある。
一実施態様において、二重特異性抗原結合分子の第1及び第2の抗原結合部分は、任意選択的にペプチドリンカーを介して、互いに融合している。特定の実施態様では、第1及び第2の抗原結合部分はそれぞれFab分子である。このような一実施態様では、第2の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端において第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している。別のこのような実施態様では、第1の抗原結合部分はFab重鎖のC末端において第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している。(i)第2の抗原結合部分がFab重鎖のC末端において第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しているか、又は(ii)第1の抗原結合部分がFab重鎖のC末端において第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している実施態様では、これに加えて、第1の抗原結合部分のFab軽鎖と第2の抗原結合部分のFab軽鎖とが、任意選択的にペプチドリンカーを介して、互いに融合していてよい。
STEAP-1のような標的細胞抗原に特異的に結合することができる単一の抗原結合部分(例えばFab分子)を有する二重特異性抗原結合分子(例えば、図1A、D、G、H、K、Lに示すような)は、特に高親和性抗原結合部分の結合に続いて標的細胞抗原の内部移行が予想される場合に有用である。このような場合、標的細胞抗原に特異的な一を超える抗原結合部分の存在は、標的細胞抗原の内部移行を亢進し、それによりその利用可能性を低下させる。
しかしながら、他の場合には、標的細胞抗原に特異的な二以上の抗原結合部分(例えばFab分子)を含む二重特異性抗原結合分子(図1B、1C、1E、1F、1I、1J、1M又は1Nに示される実施例参照)を有することは、例えば標的部位へのターゲティングを最適化するため、又は標的細胞抗原の架橋を可能にするために有利であろう。
したがって、特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第3の抗原結合部分を含む。
一実施態様において、第3の抗原結合部分は、第1の抗原、即ちSTEAP-1に結合する。一実施態様では、第3の抗原結合部分はFab分子である。
一実施態様において、第3の抗原部分は第1の抗原結合部分と同一である。
科学的に明らかに不合理又は不可能でない限り、二重特異性抗原結合分子の第3の抗原結合部分は、第1の抗原結合部分及び/又はSTEAP-1に結合する抗体に関して本明細書に記載される特徴のいずれかを、単独で又は組み合わせて組み込むことができる。
一実施態様において、第3の抗原結合部分は、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
特定の一実施態様では、第3の抗原結合部分は、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含むVHと、配列番号7のLCDR1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含むVLとを含む。
いくつかの実施態様では、第3の抗原結合部分はヒト化抗体(に由来するもの)である。一実施態様において、VHは、ヒト化VHである及び/又はVLはヒト化VLである。一実施態様において、第3の抗原結合部分は、上記実施態様のいずれかにおけるCDRを含み、さらにはアクセプターヒトフレームワーク、例えばヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
一実施態様において、第3の抗原結合部分のVHは、配列番号11、配列番号12及び配列番号13からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、第3の抗原結合部分のVLは、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
一実施態様において、第3の抗原結合部分は、配列番号11、配列番号12及び配列番号13の群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVH配列と、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVL配列とを含む。
一実施態様において、第3の抗原結合部分は、配列番号11、配列番号12及び配列番号13の群より選択されるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号14のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
一実施態様において、第3の抗原結合部分は、配列番号11、配列番号12及び配列番号13の群より選択されるVH配列と、配列番号14のVL配列とを含む。
特定の実施態様では、第3の抗原結合部分は、配列番号13のアミノ酸配列を含むVHと配列番号14のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
特定の実施態様では、第3の抗原結合部分は、配列番号13のVH配列と配列番号14のVL配列とを含む。
一実施態様において、第3の抗原結合部分は、ヒト定常領域を含む。一実施態様において、第3の抗原結合部分は、ヒト定常領域、特にヒトCH1及び/又はCLドメインを含むFab分子である。ヒト定常ドメインの例示的配列は、配列番号39及び40(それぞれヒトカッパ及びラムダのCLドメイン)、並びに配列番号41(ヒトIgG重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)に与えられる。いくつかの実施態様では、第3の抗原結合部分は、配列番号39又は配列番号40、特に配列番号39のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。特に、軽鎖定常領域は、本明細書の「電荷修飾」の項に記載されるアミノ酸変異を含みうる、及び/又はクロスオーバーFab分子においては、一又は複数の(特に二つの)N末端アミノ酸の欠失又は置換を含みうる。いくつかの実施態様では、第3の抗原結合部分は、配列番号41のアミノ酸配列に含まれるCH1ドメイン配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域(特にCH1ドメイン)は、本明細書の「電荷修飾」の項に記載されるアミノ酸変異を含みうる。
特定の実施態様では、第3及び第1の抗原結合部分はそれぞれFab分子であり、第3の抗原結合部分は第1の抗原結合部分と同一である。したがって、このような実施態様では、第1及び第3の抗原結合部分は、同じ重鎖及び軽鎖アミノ酸配列を含み、同じドメイン構成を有する(即ち、従来の又はクロスオーバー))。さらに、このような実施態様では、第3の抗原結合部分は、存在する場合、第1の抗原結合部分と同じアミノ酸置換を含む。例えば、本明細書に「電荷修飾」として記載されるアミノ酸置換は、第1の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分の各々の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1において行われる。代替的に、前記アミノ酸置換は、(特定の実施態様ではFab分子でもある)第2の抗原結合部分の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1において行われてもよいが、第1の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1では行われない。
第1の抗原結合部分と同様に、第3の抗原結合部分は特に従来のFab分子である。しかしながら、第1及び第3の抗原結合部分がクロスオーバーFab分子である(且つ第2の抗原結合部分が従来のFab分子である)実施態様も考慮される。したがって、特定の実施態様では、第1及び第3の抗原結合部分はそれぞれ従来のFab分子であり、第2の抗原結合部分は本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、即ち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVLが、又は定常ドメインCLとCH1が交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。一実施態様において、第1及び第3の抗原結合部分はそれぞれクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原結合部分は従来のFab分子である。
第3の抗原結合部分が存在する場合、特定の実施態様では、第1及び第3の抗原部分はSTEAP-1に結合し、第2の抗原結合部分は第2の抗原、特にT細胞活性化抗原、さらに詳細にはCD3、最も詳細にはCD3エプシロンに結合する。
特定の実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインを含む。Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットは、安定した会合をすることができる。
本発明による二重特異性抗原結合分子は、異なる構成を有することができる、即ち第1、第2の(及び任意選択的に第3の)抗原結合部分は、互いに、及びFcドメインに、異なる方法で融合していてよい。これらは互いに直接、又は、好ましくは一又は複数の適切なペプチドリンカーを介して、融合することができる。Fab分子の融合先がFcドメインのサブユニットのFab分子のN末端である場合、典型的には免疫グロブリンのヒンジ領域を介している。
いくつかの実施態様では、第1及び第2の抗原結合部分はそれぞれFab分子であり、第2の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端においてFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。このような実施態様では、第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端において第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端又はFcドメインのサブユニットの他方のN末端に融合している。特定のこのような実施態様では、前記第1の抗原結合部分は従来のFab分子であり、第2の抗原結合部分は本明細書に記載れるクロスオーバーFab分子、即ち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVLが、又は定常ドメインCLとCH1が交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。他のこのような実施態様では、前記第1のFab分子はクロスオーバーFab分子であり、第2のFab分子は従来のFab分子である。
一実施態様において、第1及び第2の抗原結合部分はそれぞれFab分子であり、第2の抗原結合部分はFab重鎖のC末端においてFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合しており、第1の抗原結合部分はFab重鎖のC末端において第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している。特定の実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、本質的に、第1及び第2のFab分子、第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン、並びに任意選択的に一又は複数のペプチドリンカーからなり、第1のFab分子はFab重鎖のC末端において第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端においてFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。このような構成は、図1G及び1Kに模式的に示されている(これら実施例における第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子である)。任意選択的に、第1のFab分子のFab軽鎖と第2のFab分子のFab軽鎖とは、さらに互いに融合していてよい。
別の実施態様では、第1及び第2の抗原結合部分はそれぞれFab分子であり、第1及び第2の抗原結合部分はそれぞれFab重鎖のC末端においてFcドメインのサブユニットの一つのN末端に融合している。特定の実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、本質的に、第1及び第2のFab分子、第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン、及び任意選択的に一又は複数のペプチドリンカーからなり、第1及び第2のFab分子はそれぞれ、Fab重鎖のC末端においてFcドメインのサブユニットのうちの一つのN末端に融合している。このような構成は、図1A及び1Dに模式的に示されている(これら実施例では第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合部分は従来のFab分子である)。第1及び第2のFab分子は、直接又はペプチドリンカーを介してFcドメインに融合することができる。特定の一実施態様では、第1及び第2のFab分子はそれぞれ、免疫グロブリンのヒンジ領域を介してFcドメインに融合している。特定の一実施態様では、免疫グロブリンのヒンジ領域は、特にFcドメインがIgGのFcドメインである場合、ヒトIgGヒンジ領域である。
いくつかの実施態様では、第1及び第2の抗原結合部分はそれぞれFab分子であり、第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端においてFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。このような実施態様では、第2の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端において第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端又は(上述のように)Fcドメインのサブユニットの他方のN末端に融合している。特定のこのような実施態様では、前記第1の抗原結合部分は従来のFab分子であり、第2の抗原結合部分は本明細書に記載れるクロスオーバーFab分子、即ち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVLが、又は定常ドメインCLとCH1が交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。他のこのような実施態様では、前記第1のFab分子はクロスオーバーFab分子であり、第2のFab分子は従来のFab分子である。
一実施態様において、第1及び第2の抗原結合部分はそれぞれFab分子であり、第1の抗原結合部分はFab重鎖のC末端においてFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合しており、第2の抗原結合部分はFab重鎖のC末端において第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している。特定の一実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、本質的に、第1及び第2のFab分子、第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン、並びに任意選択的に一又は複数のペプチドリンカーからなり、第2のFab分子はFab重鎖のC末端において第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端においてFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。このような構成は、図1H及び1Lに模式的に示されている(これら実施例では第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合部分は従来のFab分子である)。任意選択的に、第1のFab分子のFab軽鎖と第2のFab分子のFab軽鎖とは、さらに互いに融合していてよい。
いくつかの実施態様では、第3の抗原結合部分、特に第3のFab分子、が、Fab重鎖のC末端において、Fcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。特定のこのような実施態様では、前記第1及び第3のFab分子はそれぞれ従来のFab分子であり、第2のFab分子は本明細書に記載れるクロスオーバーFab分子、即ち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVLが、又は定常ドメインCLとCH1が交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。他のこのような実施態様では、前記第1及び第3のFab分子はそれぞれクロスオーバーFab分子であり、第2のFab分子は従来のFab分子である。
特定のこのような実施態様では、第2及び第3の抗原結合部分は、それぞれFab重鎖のC末端においてFcドメインのサブユニットの一つのN末端に融合しており、第1の抗原結合部分はFab重鎖のC末端において第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。特定の一実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、本質的に、第1、第2及び第3のFab分子、第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン、及び任意選択的に一又は複数のペプチドリンカーからなり、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端において第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端において、Fcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており、第3のFab分子はFab重鎖のC末端においてFcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している。このような構成は、図1B及び1E(これら実施例では第2の抗原結合部分はVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1及び第3の抗原結合部分は従来のFab分子である)と、図1J及び1N(これら実施例では第2の抗原結合部分は従来のFab分子であり、第1及び第3の抗原結合部分はVH/VLクロスオーバーFab分子である)に模式的に示されている。第2及び第3のFab分子は、直接又はペプチドリンカーを介してFcドメインに融合することができる。特定の一実施態様では、第2及び第3のFab分子はそれぞれ、免疫グロブリンのヒンジ領域を介してFcドメインに融合している。特定の一実施態様では、免疫グロブリンのヒンジ領域は、特にFcドメインがIgGのFcドメインである場合、ヒトIgGヒンジ領域である。任意選択的に、第1のFab分子のFab軽鎖と第2のFab分子のFab軽鎖とは、さらに互いに融合していてよい。
別のこのような実施態様では、第1及び第3の抗原結合部分は、それぞれFab重鎖のC末端においてFcドメインのサブユニットの一つのN末端に融合しており、第2の抗原結合部分はFab重鎖のC末端において第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している。特定の一実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、本質的に、第1、第2及び第3のFab分子、第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン、及び任意選択的に一又は複数のペプチドリンカーからなり、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端において第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端において、Fcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており、第3のFab分子はFab重鎖のC末端においてFcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している。このような構成は、図1C及び1F(これら実施例では第2の抗原結合部分はVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1及び第3の抗原結合部分は従来のFab分子である)、図1I及び1M(これら実施例では第2の抗原結合部分は従来のFab分子であり、第1及び第3の抗原結合部分はVH/VLクロスオーバーFab分子である)に模式的に示されている。第1及び第3のFab分子は、直接又はペプチドリンカーを介してFcドメインに融合することができる。特定の一実施態様では、第1及び第3のFab分子はそれぞれ、免疫グロブリンのヒンジ領域を介してFcドメインに融合している。特定の一実施態様では、免疫グロブリンのヒンジ領域は、特にFcドメインがIgGのFcドメインである場合、ヒトIgGヒンジ領域である。任意選択的に、第1のFab分子のFab軽鎖と第2のFab分子のFab軽鎖とは、さらに互いに融合していてよい。
Fab分子がFab重鎖のC末端において免疫グロブリンのヒンジ領域を介してFcドメインのサブユニットの各々のN末端に融合している二重特異性抗原結合分子の構成においては、二つのFab分子、ヒンジ領域及びFcドメインは、本質的に免疫グロブリン分子を形成する。特定の実施態様では、免疫グロブリン分子はIgGクラスの免疫グロブリンである。さらに特定の実施態様では、免疫グロブリンはIgGサブクラスの免疫グロブリンである。別の実施態様では、免疫グロブリンはIgGサブクラスの免疫グロブリンである。さらに詳細な実施態様では、免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンである。他の実施態様では、免疫グロブリンは、キメラ免疫グロブリン又はヒト化免疫グロブリンである。一実施態様において、免疫グロブリンはヒト定常領域、特にヒトFc領域を含む。
本発明の二重特異性抗原結合分子のいくつかでは、第1のFab分子のFab軽鎖と第2のFab分子のFab軽鎖は、任意選択的にペプチドリンカーを介して、互いに融合している。第1及び第2のFab分子の構成に応じて、第1のFab分子のFab軽鎖は、そのC末端において、第2のFab分子のFab軽鎖のN末端に融合しうるか、又は第2のFab分子のFab軽鎖は、そのC末端において、第1のFab分子のFab軽鎖のN末端に融合しうる。第1及び第2のFab分子のFab軽鎖の融合はさらに、マッチしないFab重鎖とFab軽鎖の誤対合を低減し、また本発明の二重特異性抗原結合分子のいくつかの発現に必要なプラスミドの数を低減する。
抗原結合部分は、Fcドメインに対して、又は互いに、直接又はペプチドリンカーを介して融合していてよく、一又は複数のアミノ酸、典型的には約2~20のアミノ酸を含む。ペプチドリンカーは当分野において既知であり、本願明細書に記載される。適切な非免疫原性ペプチドリンカーには、例えば、(GS)、(SG、(GS)又は(SGペプチドリンカーが含まれる。「n」は通常1から10、典型的には2から4の整数である。一実施態様では、前記ペプチドリンカーは、少なくとも5のアミノ酸長を、一実施態様では5から100、さらなる実施態様では10から50のアミノ酸長を有する。一実施態様では、前記ペプチドリンカーは、(GxS)又は(GxS)[式中、G=グリシン、S=セリン、(x=3、n=3、4、5又は6、m=0、1、2又は3)又は(x=4、n=2、3、4又は5、m=0、1、2又は3)]であり、一実施態様では、x=4、n=2又は3であり、さらなる実施態様ではx=4、n=2である。一実施態様では、前記ペプチドリンカーは(GS)である。第1及び第2のFab分子のFab軽鎖を互いに融合させるための特定の適切なペプチドリンカーは(GS)である。第1及び第2のFab分子のFab重鎖を接続するために適切な例示的ペプチドリンカーは、配列(D)-(GS)(配列番号37及び38)を含む。別の適切なこのようなリンカーは、配列(GS)を含む。加えて、リンカーは免疫グロブリンヒンジ領域(の一部)を含むことができる。特にFab分子は、FcドメインのサブユニットのN末端に融合している場合には、免疫グロブリンヒンジ領域又はその一部を介して、追加のペプチドリンカーを用いて又は用いずに、融合することができる。
特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち、第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含んでいる)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域がFcドメインのサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))と、第1のFab部分のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))とを含んでいる。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))と、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))とをさらに含む。特定の実施態様では、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合により、共有結合している。
特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられている)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域がFcドメインのサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-CH2-CH3(-CH4))と、第1のFab分子のFab重鎖がFcドメインのサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))とを含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))と、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))とをさらに含む。特定の実施態様では、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合により、共有結合している。
いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち、第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第1のFab分子のFab重鎖がFcドメインのサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(1)-CH1(1)-VH(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))を含む。他の実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第1のFab分子のFab重鎖が、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち、第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、Fcドメインのサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(1)-CH1(2)-VL(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))を含む。
これら実施態様のいくつかでは、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する、第2のFab分子のクロスオーバーFab軽鎖ポリペプチド(VH(2)-CL(2))と、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))とをさらに含む。これら実施態様のその他では、二重特異性抗原結合分子は、必要に応じて、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-VL(1)-CL(1))、又は第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドが第2のFab分子のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(1)-CL(1)-VH(2)-CL(2))をさらに含む。
これらの実施態様による二重特異性抗原結合分子はさらに、(i)Fcドメインのサブユニットポリペプチド(CH2-CH3(-CH4))、又は(ii)第3のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインのサブユニットと共有するポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-CH2-CH3(-CH4))と、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))とを含みうる。特定の実施態様では、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合により、共有結合している。
いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち、第2のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ端末ペプチド結合を共有し、第1のFab分子のFab重鎖がFcドメインのサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(1)-CL(1)-VH(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))を含む。他の実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第1のFab分子のFab重鎖が、第2のFab分子のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち、第2のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、Fcドメインのサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-VH(2)-CL(2)-CH2-CH3(-CH4))を含む。
これら実施態様のいくつかでは、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する第2のFab分子のクロスオーバーFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CH1(2))と、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))とをさらに含む。これら実施態様のその他では、二重特異性抗原結合分子は、必要に応じて、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VL(1)-CL(1))、又は第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドが第2のFab分子のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が 第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(1)-CL(1)-VH(2)-CL(2))をさらに含む。
これらの実施態様による二重特異性抗原結合分子はさらに、(i)Fcドメインのサブユニットポリペプチド(CH2-CH3(-CH4))、又は(ii)第3のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインのサブユニットと共有するポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-CH2-CH3(-CH4))と、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))とを含みうる。特定の実施態様では、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合により、共有結合している。
特定の実施態様では、二重特異性抗原結合分子はFcドメインを含まない。特定のこのような実施態様では、前記第1のFab分子と、存在する場合第3のFab分子は、各々が従来のFab分子であり、第2のFab分子は本明細書に記載れるクロスオーバーFab分子、即ち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVLが、又は定常ドメインCLとCH1が交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。他のこのような実施態様では、前記第1のFab分子と、存在する場合第3のFab分子は、各々がクロスオーバーFab分子であり、第2のFab分子は従来のFab分子である。
このような一実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、本質的に第1及び第2の抗原結合部分からなり、任意選択的に一又は複数のペプチドリンカーを含み、ここで第1及び第2の抗原結合部分は共にFab分子であり、第1の抗原結合部分はFab重鎖のC末端において第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している。このような構成は、図1O及び1Sに模式的に示されている(これら実施例では第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合部分は従来のFab分子である)。
別のこのような実施態様では、二重特異性抗原結合分子は本質的に第1及び第2の抗原結合部分からなり、任意選択的に一又は複数のペプチドリンカーを含み、ここで第1及び第2の抗原結合部分は共にFab分子であり、第2の抗原結合部分はFab重鎖のC末端において第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している。このような構成は、図1P及び1Tに模式的に示されている(これら実施例では第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合部分は従来のFab分子である)。
いくつかの実施態様では、第1のFab分子はFab重鎖のC末端において第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合し、二重特異性抗原結合分子は、第3の抗原結合部分、特に第3のFab分子をさらに含み、前記第3のFab分子はFab重鎖のC末端において第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合する。特定のこのような実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、本質的に、第1、第2、及び第3のFab分子から、及び任意選択的に一又は複数のペプチドリンカーからなり、第1のFab分子はFab重鎖のC末端において第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第3のFab分子はFab重鎖のC末端において第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。このような構成は、図1Q及び1U(これら実施例では、第2の抗原結合ドメインがVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1及び抗原結合部分の各々が従来のFab分子である)、又は図1X及び1Z(これら実施例では、第2の抗原結合ドメインが従来のFab分子であり、第1及び第3の抗原結合部分の各々がVH/VLクロスオーバーFab分子である)。
いくつかの実施態様では、第2のFab分子はFab重鎖のC末端において第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合し、二重特異性抗原結合分子は、第3の抗原結合部分、特に第3のFab分子をさらに含み、前記第3のFab分子はFab重鎖のN末端において第1のFab分子のFab重鎖のC末端に融合する。特定のこのような実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、本質的に、第1、第2、及び第3のFab分子から、及び任意選択的に一又は複数のペプチドリンカーからなり、第2のFab分子はFab重鎖のC末端において第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第3のFab分子はFab重鎖のN末端において第1のFab分子のFab重鎖のC末端に融合している。このような構成は、図1R及び1V(これら実施例では、第2の抗原結合ドメインがVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1及び抗原結合部分の各々が従来のFab分子である)、又は図1W及び1Y(これら実施例では、第2の抗原結合ドメインが従来のFab分子であり、第1及び第3の抗原結合部分の各々がVH/VLクロスオーバーFab分子である)。
特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第1のFab分子のFab重鎖が第2のFab分子のFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(即ち第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)ポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-VL(2)-CH1(2))を含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))と、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))とをさらに含む。
特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1))を含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))と、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))とをさらに含む。
特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち第2のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-VH(1)-CH1(1))を含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))と、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))とをさらに含む。
特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1))を含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))と、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))とをさらに含む。
特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab重鎖が第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第1のFab分子のFab重鎖が第2のFab分子のFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(即ち第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)ポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-VH(1)-CH1(1)-VL(2)-CH1(2))を含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))と、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))とをさらに含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab重鎖が第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第1のFab分子のFab重鎖が第2のFab分子のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(即ち第2のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)(VH(3)-CH1(3)-VH(1)-CH1(1)-VH(2)-CL(2)ポリペプチドを含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))と、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))とをさらに含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第1のFab分子のFab重鎖が第3のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1)-VH(3)-CH1(3))を含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))と、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))とをさらに含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち第2のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第1のFab分子のFab重鎖が第3のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-VH(1)-CH1(1)-VH(3)-CH1(3))を含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))と、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))とをさらに含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖が第1のFab分子のFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が第1のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち第1のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第1のFab分子のFab重鎖定常領域が第3のFab分子のFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が第3のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(即ち第3のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)ポリペプチド(VH(2)-CH1(1)-VL(2)-CH1(2)-VL(3)-CH1(3))を含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(1)-CL(1))と、第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))とをさらに含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が第3のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(3)-CL(3))をさらに含む。
特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖が第1のFab分子のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が第1のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち第1のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域が第3のFab分子のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が第3のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(即ち第3のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)(VH(2)-CH1(2)-VH(1)-CL(1)-VH(3)-CL(3))ポリペプチドを含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、第1のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(1)-CH1(1))と、第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))とをさらに含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が第3のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(VL(3)-CH1(3))ポリペプチドをさらに含む。
特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が第3のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち第3のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第3のFab分子のFab重鎖定常領域が第1のFab分子のFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が第1のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち第1のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第1のFab分子のFab重鎖定常領域が第2のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(3)-CH1(3)-VL(1)-CH1(1)-VH(2)-CH1(2))を含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(1)-CL(1))と、第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))とをさらに含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が第3のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(3)-CL(3))をさらに含む。
特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が第3のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち第3のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域が第1のFab分子のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が第1のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(即ち第1のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられているクロスオーバーFab重鎖を含む)、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域が第2のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(VH(3)-CL(3)-VH(1)-CL(1)-VH(2)-CH1(2))ポリペプチドを含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、第1のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(1)-CH1(1))と、第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))とをさらに含む。いくつかの実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が第3のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(VL(3)-CH1(3))ポリペプチドをさらに含む。
一実施態様において、本発明は、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、第1の抗原がSTEAP-1であり、第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むFab分子である、第1の抗原結合部分、
b)T細胞活性化抗原、特にCD3、さらに詳細にはCD3エプシロンである第2の抗原に結合する、第2の抗原結合部分であって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが、又は定常ドメインCLとCH1が互いによって置き換えられているFab分子である、第2の抗原結合部分;
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメイン;
を含む二重特異性抗原結合分子を提供し、
ここで、
(i)a)による第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端においてb)による第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しており、b)による第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端においてc)によるFcドメインのサブユニットの一つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)による第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端においてa)による第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しており、a)による第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端においてc)によるFcドメインのサブユニットの一つのN末端に融合している。
特定の実施態様では、本発明は、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、第1の抗原がSTEAP-1であり、第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むFab分子である、第1の抗原結合部分、
b)T細胞活性化抗原、特にCD3、さらに詳細にはCD3エプシロンである第2の抗原に結合する、第2の抗原結合部分であって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが、又は定常ドメインCLとCH1が互いによって置き換えられているFab分子である、第2の抗原結合部分;
c)第1の抗原に結合する、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分;並びに
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む二重特異性抗原結合分子を提供し、
ここで、
(i)a)による第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端においてb)による第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しており、b)による第2の抗原結合部分及びc)による第3の抗原結合部分の各々が、Fab重鎖のC末端においてd)によるFcドメインのサブユニットの一つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)による第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端においてa)による第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しており、a)による第1の抗原結合部分及びc)による第3の抗原結合部分の各々が、Fab重鎖のC末端においてd)によるFcドメインのサブユニットの一つのN末端に融合している。
別の実施態様では、本発明は、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、第1の抗原がSTEAP-1であり、第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むFab分子である、第1の抗原結合部分、
b)T細胞活性化抗原、特にCD3、さらに詳細にはCD3エプシロンである第2の抗原に結合する、第2の抗原結合部分であって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが、又は定常ドメインCLとCH1が互いによって置き換えられているFab分子である、第2の抗原結合部分;
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメイン;
を含む二重特異性抗原結合分子を提供し、
ここで、
(i)a)による第1の抗原結合部分及びb)による第2の抗原結合部分の各々が、Fab重鎖のC末端においてc)によるFcドメインのサブユニットの一つのN末端に融合している。
本発明による二重特異性抗原結合分子の様々な構成のすべてにおいて、本明細書に記載されるアミノ酸置換は、存在する場合、第1及び(存在する場合)第3の抗原結合部分/Fab分子のCH1及びCLドメイン、又は第2の抗原結合部分/Fab分子のCH1及びCLドメインに存在しうる。好ましくは、そのような置換は、第1及び(存在する場合)第3の抗原結合部分/Fab分子のCH1及びCLドメインに存在する。本発明の概念によれば、本発明に記載されるアミノ酸置換が第1(及び存在する場合第3)の抗原結合部分/Fab分子において行われる場合、そのようなアミノ酸置換はいずれも第2の抗原結合部分/Fab分子では行われない。逆に、本明細書に記載されるアミノ酸置換が第2の抗原結合部分/Fab分子で行われる場合、そのようなアミノ酸置換はいずれも第1(及び存在する場合第3)の抗原結合部分/Fab分子では行われない。アミノ酸置換は、特に、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVH1が互いによって置き換えられているFab分子を含む二重特異性抗原結合分子において行われる。
特に本明細書に記載されるアミノ酸置換が第1(及び存在する場合第3)の抗原結合部分/Fab分子において行われる、本発明による二重特異性抗原結合分子の特定の実施態様では、第1(及び存在する場合第3)のFab分子の定常ドメインCLはカッパアイソタイプである。特に本明細書に記載されるアミノ酸置換が第2の抗原結合部分/Fab分子で行われる、本発明による二重特異性抗原結合分子の他の実施態様では、第2の抗原結合部分/Fab分子の定常ドメインCLはカッパアイソタイプである。いくつかの実施態様では、第1(及び存在する場合第3)の抗原結合部分/Fab分子の定常ドメインCL及び第2の抗原結合部分/Fab分子の定常ドメインCLはカッパアイソタイプである。
一実施態様において、本発明は、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、第1の抗原がSTEAP-1であり、第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むFab分子である、第1の抗原結合部分、
b)T細胞活性化抗原、特にCD3、さらに詳細にはCD3エプシロンである第2の抗原に結合する、第2の抗原結合部分であって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが互いによって置き換えられているFab分子である、第2の抗原結合部分;
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメイン;
を含む二重特異性抗原結合分子を提供し、
a)による第1の抗原結合部分の定常ドメインCLでは、124位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸がリジン(K)又はアルギニン(R)によって置換されており(Kabatによる番号付け)(最も詳細にはアルギニン(R)によって)、且つa)による第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1では、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け);
ここで、
(i)a)による第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端においてb)による第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しており、b)による第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端においてc)によるFcドメインのサブユニットの一つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)による第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端においてa)による第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しており、a)による第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端においてc)によるFcドメインのサブユニットの一つのN末端に融合している。
特定の実施態様では、本発明は、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、第1の抗原がSTEAP-1であり、第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むFab分子である、第1の抗原結合部分、
b)T細胞活性化抗原、特にCD3、さらに詳細にはCD3エプシロンである第2の抗原に結合する、第2の抗原結合部分であって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが互いによって置き換えられているFab分子である、第2の抗原結合部分;
c)第1の抗原に結合する、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分;並びに
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメイン;
を含む二重特異性抗原結合分子を提供し、
a)による第1の抗原結合部分及びc)による第3の抗原結合部分の定常ドメインCLでは、124位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸がリジン(K)又はアルギニン(R)によって置換されており(Kabatによる番号付け)(最も詳細にはアルギニン(R)によって)、且つa)による第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1では、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け);
ここで、
(i)a)による第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端においてb)による第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しており、b)による第2の抗原結合部分及びc)による第3の抗原結合部分の各々が、Fab重鎖のC末端においてd)によるFcドメインのサブユニットの一つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)による第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端においてa)による第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しており、a)による第1の抗原結合部分及びc)による第3の抗原結合部分の各々が、Fab重鎖のC末端においてd)によるFcドメインのサブユニットの一つのN末端に融合している。
別の実施態様では、本発明は、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、第1の抗原がSTEAP-1であり、第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むFab分子である、第1の抗原結合部分、
b)T細胞活性化抗原、特にCD3、さらに詳細にはCD3エプシロンである第2の抗原に結合する、第2の抗原結合部分であって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが互いによって置き換えられているFab分子である、第2の抗原結合部分;
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメイン;
を含む二重特異性抗原結合分子を提供し、
a)による第1の抗原結合部分の定常ドメインCLでは、124位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸がリジン(K)又はアルギニン(R)によって置換されており(Kabatによる番号付け)(最も詳細にはアルギニン(R)によって)、且つa)による第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1では、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け);
(i)a)による第1の抗原結合部分及びb)による第2の抗原結合部分の各々が、Fab重鎖のC末端においてc)によるFcドメインのサブユニットの一つのN末端に融合している。
上記実施態様のいずれによっても、二重特異性抗原結合分子の成分(例えば、Fab分子、Fcドメイン)は、直接融合するか、又は、本明細書に記載されるか若しくは当技術分野で既知である様々なリンカー、特に一又は複数のアミノ酸、典型的には約2~20個のアミノ酸を含むペプチドリンカーを介して融合されうる。適切な非免疫原性ペプチドリンカーには、例えば、(G4S)n、(SG4)n、(G4S)n又はG4(SG4)nペプチドリンカーが含まれ、ここでnは通常1から10、典型的には2から4の整数である。
特定の実施態様では、本発明は、
a)STEAP-1である第1の抗原に結合する、第1及び第3の抗原結合部分であって;第1及び第2の抗原結合部分の各々が配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む(従来の)Fab分子である、第1及び第3の抗原結合部分;
b)CD3である第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが互いによって置き換えられているFab分子である第2の抗原結合部分;
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメイン;
を含む二重特異性抗原結合分子を提供し、
ここで、
a)による第1及び第3の抗原結合部分の定常ドメインCLでは、124位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸がリジン(K)又はアルギニン(R)によって置換されており(Kabatによる番号付け)(最も詳細にはアルギニン(R)によって)、且つa)による第1及び第3の抗原結合部分の定常ドメインCH1では、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け);
さらに、
a)による第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端においてb)による第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しており、b)による第2の抗原結合部分及びa)による第3の抗原結合部分の各々が、Fab重鎖のC末端においてc)によるFcドメインのサブユニットの一つのN末端に融合している。
本発明のこの態様による一実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、366位のスレオニン残基がトリプトファン残基で置き換えられ(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、407位のチロシン残基がバリン残基で置き換えられ(Y407V)、任意選択的に366位のスレオニン残基がセリン残基で置き換えられ(T366S)、368位のロイシン残基がアラニン残基で置き換えられる(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
本発明のこの態様によるさらなる実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいてさらに、354位のセリン残基がシステイン残基で置き換えられる(S354C)か、又は356位のグルタミン酸残基がシステイン残基で置き換えられ(E356C)(特に354位のセリン残基がシステイン残基で置き換えられる)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいてさらに、349位のチロシン残基がシステイン残基によって置き換えられる(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
本発明のこの態様によるまた別の実施態様では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの各々において、234位のロイシン残基がアラニン残基で置き換えられ(L234A)、235位のロイシン残基がアラニン残基で置き換えられ(L235A)、329位のプロリン残基がグリシン残基によって置き換えられる(P329G)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
本発明のこの態様によるまた別の実施態様では、FcドメインはヒトIgG1 Fcドメインである。
特定の具体的な実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号32の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号33の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号34の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号35の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。特に具体的な別の実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号32のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号33のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号34のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号35のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
別の具体的な実施様態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号28の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号29の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号34の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号35の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。別の具体的な実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号28のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号29のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号34のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号35のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
また別の具体的な実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号30の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号61の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号34の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号35の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。別の具体的な実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号30のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号31のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号34のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号35のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
Fcドメイン
特定の実施態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインを含む。二重特異性抗原結合分子に関連して本明細書に記載されるFcドメインの特徴は、本発明の抗体に含まれるFcドメインに等しく当てはまる。
二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、免疫グロブリン分子の重鎖ドメインを含む一対のポリペプチド鎖からなる。例えば、免疫グロブリンG(IgG)分子のFcドメインはダイマーであり、その各サブユニットはCH2及びCH3 IgG重鎖定常ドメインを含む。Fcドメインの二つのサブユニットは、互いに安定に会合することができる。一実施態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、一を超えないFcドメインを含む。
一実施態様において、二重特異性抗原結合分子のFcドメインはIgG Fcドメインである。特定の一実施態様では、FcドメインはIgGのFcドメインである。別の実施態様では、FcドメインはIgGのFcドメインである。さらに詳細な実施態様では、Fcドメインは、S228位(Kabat EUインデックス番号付け)にアミノ酸置換を、特にアミノ酸置換S228Pを含む、IgGのFcドメインである。このアミノ酸置換は、IgG抗体のin vivoでのFabアーム交換を低減する(Stubenrauch et al., Drug Metabolism and Disposition 38, 84-91(2010)参照)。さらなる特定の一実施態様では、FcドメインはヒトFcドメインである。さらに詳細な実施態様では、FcドメインはヒトIgG Fcドメインである。ヒトIgG Fc領域の例示的配列は、配列番号36に提示されている。
ヘテロ二量体化を促すFcドメインの修飾
本発明による二重特異性抗原結合分子は複数の異なる抗原結合部分を含み、これらはFcドメインの二つのサブユニットの一方又は他方に融合することができ、したがってFcドメインの二つのサブユニットは通常、二つの非同一なポリペプチド鎖に含まれている。これらポリペプチドの組み換え同時発現とそれに続く二量体化は、二つのポリペプチドの複数の可能な組み合わせをもたらす。したがって、組み換え生成における二重特異性抗原結合分子の収率及び純度を改善するために、二重特異性抗原結合分子のFcドメインに所望のポリペプチドの会合を促す修飾を導入することが有利であろう。
即ち、特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促す修飾を含んでいる。ヒトIgGのFcドメインの二つのサブユニット間においてタンパク質-タンパク質相互作用が最大である部位は、FcドメインのCH3ドメインである。したがって、一実施態様では、前記修飾はFcドメインのCH3ドメイン内で行われる。
ヘテロダイマー化を実施するために、FcドメインのCH3ドメインにおける修飾のための複数の手法が存在し、それらについては例えば国際公開第96/27011号、国際公開第98/050431号、EP1870459、国際公開第2007/110205号、国際公開第2007/147901号、国際公開第2009/089004号、国際公開第2010/129304号、国際公開第2011/90754号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2012058768号、国際公開第2013157954号、国際公開第2013096291号に詳細な記載がある。典型的には、そのような手法のすべてにおいて、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインは共に、各CH3ドメイン(又はそれを含む重鎖)がそれ自体ともはやホモダイマー化することがなく、相補的に改変された他のCH3ドメインとヘテロダイマー化するように、(よって第1と第2のCH3ドメインがヘテロダイマー化し、二つの第1のCH3ドメイン又は二つの第2のCH3ドメインの間にホモダイマーが形成されないように)共に相補的に改変される。重鎖ヘテロダイマー化の改善のためのこれら異なる手法は、重鎖/軽鎖誤対合及びBence Jones型副生成物を低減する二重特異性抗原結合分子における重鎖-軽鎖修飾(例えば、一の結合アームにおけるVHとVLの交換/置き換え、及びCH1/CL接触面における、反対の電荷を有する荷電アミノ酸の置換の導入)と組み合わせた異なる代替法として考慮される。
特定の一実施態様では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する前記修飾は、いわゆる「ノブイントゥホール(knob-into-hole)」修飾であり、Fcドメインの二つのサブユニットの一方に「ノブ」修飾を、Fcドメインの二つのサブユニットの他方に「ホール」修飾を、それぞれ含んでいる。
ノブイントゥホール技術は、例えば、米国特許第5731168号;同第7695936号;Ridgway et al., Prot Eng 9, 617-621 (1996) and Carter, J Immunol Meth 248, 7-15 (2001)に記載されている。通常、方法は、***がそれに対応する空洞内に位置できるように、第1のポリペプチドの接触面に***(「ノブ」)を、及び第2のポリペプチドの接触面に対応する空洞を、それぞれ導入することにより、ヘテロ二量体形成を促進し、且つホモ二量体形成を妨害することを含む。***は、第1のポリペプチドの接触面由来の小さなアミノ酸側鎖をそれよりも大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)で置き換えることにより構築される。***と同じか又は同様のサイズの相補的空洞は、大きなアミノ酸側鎖をそれよりも小さなもの(例えばアラニン又はスレオニン)で置き換えることにより、第2のポリペプチドの接触面に作り出される。
このように、特定の一実施態様では、二重特異性抗原結合分子のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基がそれよりも大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより、第1のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第2のサブユニットのCH3ドメイン内部の空洞内に配置可能な***が生成され、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基がそれよりも小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより、第2のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第1のサブユニットのCH3ドメイン内部の***を配置可能な空洞が生成される。
好ましくは、より大きな側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びトリプトファン(W)からなる群より選択される。
好ましくは、より小さな側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、及びバリン(V)からなる群より選択される。
***と空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を、例えば部位特異的突然変異誘発により、又はペプチド合成により、変化させることにより作り出すことができる。
特定の一実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニット(「ノブ」サブユニット)のCH3ドメインにおいて、366位のスレオニン残基がトリプトファン残基で置き換えられ(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニット(「ホール」サブユニット)のCH3ドメインにおいて、407位のチロシン残基がバリン残基で置き換えられる(Y407V)。一実施態様では、Fcドメインの第2のサブユニットにおいてさらに、366位のスレオニン残基がセリン残基で置き換えられ(T366S)、368位のロイシン残基がアラニン残基で置き換えられる(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
またさらなる実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいてさらに、354位のセリン残基がシステイン残基で置き換えられる(S354C)か、又は356位のグルタミン酸残基がシステイン残基で置き換えられ(E356C)(特に354位のセリン残基がシステイン残基で置き換えられる)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいてさらに、349位のチロシン残基がシステイン残基によって置き換えられる(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。これら二つのシステイン残基の導入により、Fcドメインの二つのサブユニット間にジスルフィド架橋が形成され、さらにダイマーを安定させる(Carter, J Immunol Methods 248, 7-15 (2001))。
特定の一実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S、L368A及びY407Vを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
特定の実施態様では、第2の抗原(例えばT細胞活性化抗原)に結合する抗原結合部分は、(任意選択的に、STEAP-1に結合する第1の抗原結合部分及び/又はペプチドリンカーを介して)Fcドメインの第1のサブユニット(「ノブ」修飾を含む)に融合する。理論に縛られることを望まないが、T細胞活性化抗原といった第2の抗原に結合する抗原結合部分の、Fcドメインのノブ含有サブユニットへの融合は、T細胞活性化抗原に結合する二つの抗原結合部分を含む抗原結合分子の生成を(さらに)最小化するであろう(ノブ含有ポリペプチドの立体的衝突)。
ヘテロダイマー化を実施するためのCH3修飾の他の技術が、本発明による代替法として考慮されており、例えば国際公開第96/27011号、国際公開第98/050431号、EP1870459、国際公開第2007/110205号、国際公開第2007/147901号、国際公開第2009/089004号、国際公開第2010/129304号、国際公開第2011/90754号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2012/058768号、国際公開第2013/157954号、国際公開第2013/096291号に記載されている。
一実施態様では、EP1870459に記載されたヘテロダイマー化手法が代替的に使用される。この手法は、Fcドメインの二つのサブユニット間のCH3/CH3ドメイン接触面内の特定のアミノ酸位置に反対の電荷を有する荷電アミノ酸の導入に基づいている。本発明の二重特異性抗原結合分子の一の好ましい実施態様は、(Fcドメインの)二つのCH3ドメインの一方におけるアミノ酸変異体R409D;K370E及びFcドメインのCH3ドメインの他方におけるアミノ酸変異体D399K;E357Kである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
別の実施態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン内にアミノ酸変異T366Wを、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメイン内にアミノ酸変異T366S、L368A、Y407Vを含み、さらにはFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン内にアミノ酸変異R409D;K370Eを、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメイン内にアミノ酸変異D399K;E357Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
別の実施態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸変異S354C、T366W、及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸変異Y349C、T366S、L368A、Y407Vを含むか、又は前記二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸変異Y349C、T366W及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸変異S354C、T366S、L368A、Y407Vと、さらにFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸変異R409D;K370E及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸変異D399K;E357Kを含む(すべてKabat EUインデックスによる番号付け)。
一実施態様では、国際公開第2013/157953号に記載されたヘテロダイマー化手法が代替的に使用される。一実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異T366Kを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異L351Dを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。さらなる実施態様では、第1のCH3ドメインはさらなるアミノ酸変異L351Kを含む。さらなる実施態様では、第2のCH3ドメインは、Y349E、Y349D及びL368Eより選択されるアミノ酸変異(好ましくはL368E)をさらに含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一実施態様では、国際公開第2012/058768号に記載されたヘテロダイマー化手法が代替的に使用される。一実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異T366A、K409Fを含む。さらなる一実施態様では、第2のCH3ドメインは、T411、D399、S400、F405、N390、又はK392の位置に、例えばa)T411N、T411R、T411Q、T411K、T411D、T411E又はT411W、b)D399R、D399W、D399Y又はD399K、c)S400E、S400D、S400R、又はS400K、d)F405I、F405M、F405T、F405S、F405V又はF405W、e)N390R、N390K又はN390D、f)K392V、K392M、K392R、K392L、K392F又はK392Eから選択される、さらなるアミノ酸変異を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。さらなる一実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異T366V、K409Fを含む。さらなる一実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異Y407Aを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異T366A、K409Fを含む。さらなる一実施態様では、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異K392E、T411E、D399R及びS400Rをさらに含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一実施態様では、例えば368及び409からなる群より選択される位置にアミノ酸修飾を用いる、国際公開第2011/143545号に記載されたヘテロダイマー化の手法が代替的に使用される(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一実施態様では、上述のノブイントゥホール技術をやはり使用する、国際公開第2011/090762号に記載されるヘテロダイマー化手法が代替的に使用される。一実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異T366Wを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異Y407Aを含む。一実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異T366Yを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異Y407Tを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一実施態様では、二重特異性抗原結合分子又はそのFcドメインはIgGサブクラスであり、国際公開第2010/129304号に記載されたヘテロダイマー化手法が代替的に使用される。
代替的な一実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促す修飾は、例えば、国際公開第2009/089004号に記載されているような静電ステアリング効果を媒介する修飾を含む。通常、この方法は、ホモ二量体形成が静電的に望ましくなくなり、ヘテロ二量体化が静電的に望ましくなるような、荷電アミノ酸残基による二つのFcドメインサブユニットの接触面における一又は複数のアミノ酸残基の置き換えを伴う。このような一実施態様では、第1のCH3ドメインは、負の電荷を有するアミノ酸(例えばグルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)、好ましくはK392D又はN392D)でのK392又はN392のアミノ酸置換を含み、第2のCH3ドメインは、正の電荷を有するアミノ酸(例えばリジン(K)又はアルギニン(R)、好ましくはD399K、E356K、D356K、又はE357K、さらに好ましくはD399K及びE356K)でのD399、E356、D356、又はE357アミノ酸の置換を含む。さらなる一実施態様では、第1のCH3ドメインは、負の電荷を有するアミノ酸(例えばグルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)、好ましくはK409D又はR409D)でのK409又はR409のアミノ酸置換をさらに含む。さらなる一実施態様では、第1のCH3ドメインは、負の電荷を有するアミノ酸(例えばグルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D))でのK439及び/又はK370のアミノ酸置換を、さらに又は代替的に含む(すべてKabat EUインデックスによる番号付け)。
またさらなる一実施態様では、国際公開第2007/147901号に記載されたヘテロダイマー化手法が代替的に使用される。一実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異K253E、D282K、及びK322Dを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異D239K、E240K、及びK292Dを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
さらに別の実施態様では、国際公開第2007/110205号に記載されたヘテロダイマー化手法を代替的に使用することができる。
一実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換K392D及びK409Dを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換D356K及びD399Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
Fc受容体の結合及び/又はエフェクター機能を低減するFcドメインの修飾
Fcドメインは、二重特異性抗原結合分子(又は抗体)に望ましい薬物動態特性を付与し、そのような特性には、標的組織中への良好な蓄積に貢献する長い血清半減期、及び望ましい組織-血液分布比が含まれる。しかしながら、同時に、Fcドメインは、好ましい抗原保有細胞ではなく、Fc受容体を発現する細胞への二重特異性抗原結合分子(又は抗体)の望ましくないターゲティングの原因となることがある。さらには、Fc受容体シグナル伝達経路の同時活性化はサイトカイン放出の原因となりえ、サイトカイン放出は、T細胞活性化特性(例えば、第2の抗原結合部分がT細胞活性化抗原に結合する二重特異性抗原結合分子の実施態様において)、及び二重特異性抗原結合分子の長い半減期と組み合わさって、サイトカイン受容体の過剰な活性化を招き、全身投与されると重い副作用性を引き起こす。T細胞以外の(Fc受容体保有)免疫細胞の活性化は、例えばNK細胞によるT細胞の破壊の可能性により、二重特異性抗原結合分子(特に第2の抗原結合部分がT細胞活性化抗原に結合する二重特異性抗原結合分子)の有効性をさらに低下させることすらある。
したがって、特定の実施態様では、本発明による二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、天然のIgGのFcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低下及び/又はエフェクター機能の低下を呈する。このような一実施態様では、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)は、天然のIgG Fcドメイン(又は天然のIgG Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)と比較して、50%未満、好ましくは20%未満、さらに好ましくは10%未満、及び最も好ましくは5%未満の、Fc受容体に対する結合親和性を呈する、及び/又は、天然のIgG Fcドメイン(又は天然のIgG Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)と比較して、50%未満、好ましくは20%未満、さらに好ましくは10%未満、及び最も好ましくは5%未満の、エフェクター機能を呈する。一実施態様では、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)は、Fc受容体に実質的に結合しない、及び/又はエフェクター機能を誘導しない。特定の一実施態様では、Fc受容体はFcγ受容体である。一実施態様では、Fc受容体はヒトFc受容体である。一実施態様では、Fc受容体は活性化Fc受容体である。特定の一実施態様では、Fc受容体は活性化ヒトFcγ受容体であり、具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIa、具体的にはヒトFcγRIIIaである。一実施態様では、エフェクター機能は、CDC、ADCC、ADCP、及びサイトカイン分泌の群から選択される一又は複数である。特定の一実施態様では、エフェクター機能はADCCである。一実施態様では、Fcドメインは、天然IgG Fcドメインと比較して実質的に同様の、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性を呈する。実質的に同様のFcRnに対する結合は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)が、天然IgG Fcドメイン(又は天然IgG Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)の約70%、特に約80%、さらには特に約90%を上回る、FcRnに対する結合親和性を呈するとき、達成される。
特定の実施態様では、Fcドメインは、非改変型Fcドメインと比較して小さな、Fc受容体に対する結合親和性及び/又はエフェクター機能を有するように改変される。特定の実施態様では、二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性及び/又はエフェクター機能を低下させる一又は複数のアミノ酸変異を含む。典型的には、同じ一又は複数のアミノ酸変異がFcドメインの二つのサブユニットの各々に存在する。一実施態様では、アミノ酸変異はFcドメインのFc受容体に対する結合親和性を低下させる。一実施態様では、アミノ酸変異は、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性を、少なくとも2分の1、少なくとも5分の1、又は少なくとも10分の1に低下させる。FcドメインのFc受容体に対する結合親和性を低下させる複数のアミノ酸変異が存在する実施態様では、これらアミノ酸変異の組合せにより、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性が、少なくとも10分の1、少なくとも20分の1、又は少なくとも50分の1まで低下する。一実施態様では、改変されたFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子は、非改変型Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子と比較して、20%未満、特に10%未満、さらには5%未満のFc受容体に対する結合親和性を呈する。特定の一実施態様では、Fc受容体はFcγ受容体である。いくつかの実施態様では、Fc受容体はヒトFc受容体である。いくつかの実施態様では、Fc受容体は活性化Fc受容体である。特定の一実施態様では、Fc受容体は活性化ヒトFcγ受容体であり、具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIa、具体的にはヒトFcγRIIIaである。好ましくは、これら受容体の各々への結合は低減する。いくつかの実施態様では、補体成分に対する結合親和性、特にC1qに対する結合親和性も低減する。一実施態様では、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性は低減しない。FcRnに対する実質的に同様の結合、即ち、前記受容体に対するFcドメインの結合親和性の保存は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)が、Fcドメインの非改変型形態(又はFcドメインの前記非改変型形態を含む二重特異性抗原結合分子)のFcRnに対する結合親和性の約70%を上回る親和性を呈するとき、達成される。Fcドメイン、又は前記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子は、このような親和性の約80%、及び場合によっては約90%を上回る親和性を呈しうる。特定の実施態様では、二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、非改変型Fcドメインと比較してエフェクター機能が低下するように改変される。エフェクター機能の低下は、限定しないが、補体依存性細胞傷害(CDC)の低減、抗体依存性T細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の低減、抗体依存性細胞貪食(ADCP)の低減、サイトカイン分泌の低減、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込みの低減、NK細胞に対する結合の低減、マクロファージに対する結合の低減、単球に対する結合の低減、多形核細胞に対する結合の低減、アポトーシスを誘導する直接的シグナル伝達の低減、標的結合抗体の架橋の低減、樹状細胞成熟の低減、又はT細胞プライミングの低減のうちの一又は複数を含むことができる。一実施態様では、エフェクター機能の低下は、CDCの低減、ADCCの低減、ADCPの低減、及びサイトカイン分泌の低減からなる群より選択される一又は複数である。特定の一実施態様では、エフェクター機能の低下はADCCの低減である。一実施態様では、低減したADCCは、非改変型Fcドメイン(又は非改変型Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)によって誘導されるADCCの20%未満である。
一実施態様では、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性及び/又はエフェクター機能を低下させるアミノ酸の変異は、アミノ酸置換である。一実施態様では、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331及びP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。具体的な実施態様では、Fcドメインは、L234、L235及びP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。いくつかの実施態様では、Fcドメインは、アミノ酸置換L234A及びL235Aを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。このような一実施態様では、FcドメインはIgGのFcドメイン、特にヒトIgGのFcドメインである。一実施態様では、FcドメインはP329の位置にアミノ酸置換を含む。具体的な実施態様では、アミノ酸置換はP329A又は P329G、特にP329Gである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。一実施態様では、Fcドメインは、P329の位置にアミノ酸置換を、E233、L234、L235、N297及びP331から選択される位置にさらなるアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。具体的な実施態様では、さらなるアミノ酸置換は、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sである。特定の実施態様では、Fcドメインは、P329、L234及びL235の位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。さらに詳細な実施態様では、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(「P329G LALA」、「PGLALA」又は「LALAPG」)を含む。具体的には、特定の実施態様において、Fcドメインの各サブユニットは、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックス番号付け)を含み、即ちFcドメインの第1及び第2のサブユニットの各々において、234位のロイシン残基はアラニン残基で置き換えられ(L234A)、235位のロイシン残基はアラニン残基で置き換えられ(L235A)、329位のプロリン残基はグリシン残基により置き換えられる(P329G)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
このような一実施態様では、FcドメインはIgGのFcドメイン、特にヒトIgGのFcドメインである。アミノ酸置換の「P329G LALA」の組み合わせは、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる国際公開第2012/130831号に記載のように、ヒトIgG FcドメインのFcγ受容体(並びに補体)結合をほぼ完全に無効にする。国際公開第2012/130831号には、このような変異Fcドメインを調製する方法、及びFc受容体結合又はエフェクター機能といったその特性を決定する方法も記載されている。
IgG抗体は、IgG抗体と比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低下及びエフェクター機能の低下を呈する。よって、いくつかの実施態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、IgGのFcドメイン、特にヒトIgGFcドメインである。一実施態様では、IgG Fcドメインは、S228位におけるアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換S228Pを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。Fc受容体に対するその結合親和性及び/又はそのエフェクター機能をさらに低下させるために、一実施態様では、IgG Fcドメインは、L235位におけるアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換L235Eを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。別の実施態様では、IgG Fcドメインは、P329位におけるアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換P329Gを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。特定の実施態様では、IgG Fcドメインは、S228、L235及びP329位におけるアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換S228P、L235E及びP329Gを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。このようなIgG Fcドメインの変異及びそれらのFcγ受容体結合特性は、国際公開第2012/130831号に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。
特定の実施態様では、天然のIgG Fcドメインと比較してFc受容体に対する結合親和性の低下及び/又はエフェクター機能の低下を呈するFcドメインは、アミノ酸置換L234A、L235A及び任意選択的にP329Gを含むヒトIgG Fcドメインであるか、又はアミノ酸置換S228P、L235E及び任意選択的にP329Gを含むヒトIgG Fcドメインである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
特定の実施態様ではFcドメインのNグリコシル化は排除されている。このような一実施態様では、FcドメインはN297位におけるアミノ酸置換、特にアラニン(N297A)又はアスパラギン酸(N297D)酸によりアスパラギンを置き換えるアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
本明細書及び国際公開第2012/130831号において記載されるFcドメインに加えて、Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能の低下を有するFcドメインは、Fcドメイン残基238、265、269、270、297、327及び329の一又は複数の置換を有するものも含む(米国特許第6737056号)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。そのようなFc変異体は、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc突然変異体を含め、アミノ酸位265、269、270、297、及び327のうちの二以上に置換を有するFc変異を含む(米国特許第7332581号)。
変異Fcドメインは、当技術分野で周知の遺伝学的又は化学的方法を用いたアミノ酸の削除、置換、挿入、又は修飾により調製することができる。遺伝学的方法は、コード化DNA配列の部位特異的突然変異、PCR、遺伝子合成などを含みうる。正確なヌクレオチドの変化は、例えば配列決定により検証することができる。
Fc受容体に対する結合は、例えばELISAにより、又はBIAcore器具(GE Healthcare)のような標準の器具類を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)により容易に決定することができ、このようなFc受容体は組み換え発現により得ることができる。代替的に、Fcドメイン、又はFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子のFc受容体に対する結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株、例えばFcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞を用いて評価してもよい。
Fcドメイン、又はFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子のエフェクター機能は、当技術分野で既知の方法により測定することができる。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの例が、米国特許第5500362号;Hellstrom et al. Proc Natl Acad Sci USA 83, 7059-7063 (1986)及びHellstrom et al., Proc Natl Acad Sci USA 82, 1499-1502 (1985);米国特許第5821337号;Bruggemann et al., J Exp Med 166, 1351-1361 (1987)に記載されている。或いは、非放射性アッセイ法を用いることができる(例えば、フローサイトメトリー用のACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA);及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,WI)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。或いは又は加えて、目的の分子のADCC活性は、Clynes et al., PNAS USA 95:652-656 (1998)に開示されるように、例えば動物モデルにおいて、in vivoで評価することができる。
いくつかの実施態様では、補体成分に対するFcドメインの結合、特にC1qに対する結合が低減する。したがって、エフェクター機能が低下するようにFcドメインが改変されているいくつかの実施態様では、前記エフェクター機能の低下はCDCの低下を含む。C1q結合アッセイが、Fcドメイン、又はFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子がC1qに結合できるかどうか、それによりCDC活性を有するかどうかを決定するために実行されうる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行うことができる(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996); Cragg, et al., Blood 101:1045-1052 (2003);及びCragg and Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照)。
FcRn結合、及びin vivoでのクリアランス/半減期の決定も、当分野で既知の方法を用いて行うことができる(例えば、Petkova, S.B. et al.、Int’l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006);国際公開第2013/120929号を参照)。
ポリヌクレオチド
本発明はさらに、本明細書に記載の抗体又は二重特異性抗原結合分子をコードする単離されたポリヌクレオチド又はその断片を提供する。いくつかの実施態様において、前記断片は抗原結合断片である。
本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドは、抗体又は二重特異性抗原結合分子全体をコードする単一のポリヌクレオチドとして、又は同時発現される複数(例えば、二以上)のポリヌクレオチドとして発現されうる。同時発現されるポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドは、例えばジスルフィド結合又は他の手段を介して会合し、機能性の抗体又は二重特異性抗原結合分子を形成することができる。例えば、抗体又は二重特異性抗原結合分子の軽鎖部分は、抗体又は二重特異性抗原結合分子の重鎖を含む抗体又は二重特異性抗原結合分子の部分とは別個のポリヌクレオチドによってコードされうる。同時発現されるとき、重鎖ポリペプチドは軽鎖ポリペプチドと会合して抗体又は二重特異性抗原結合分子を形成することができる。別の例では、二つのFcドメインサブユニットの一方び任意選択的に一又は複数のFab分子(の一部)を含む抗体又は二重特異性抗原結合分子の部分は、二つのFcドメインサブユニットの他方及び任意選択的にFab分子(の一部)を含む抗体又は二重特異性抗原結合分子の部分とは別のポリヌクレオチドによってコードされうる。同時発現されるとき、Fcドメインサブユニットは会合してFcドメインを形成する。
いくつかの実施態様では、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に記載される、本発明による抗体又は二重特異性抗原結合分子全体をコードする。他の実施態様では、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に記載される、本発明による抗体又は二重特異性抗原結合分子に含まれるポリペプチドをコードする。
特定の実施態様では、ポリヌクレオチド又は核酸はDNAである。他の実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)の形態の、RNAである。本発明のRNAは単鎖又は二本鎖である。
組み換え法
本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、例えば、固相ペプチド合成(例えばメリフィールド固体相合成)又は組み換え生成によって得ることができる。組み換え生成のために、例えば上述したように、抗体又は二重特異性抗原結合分子(断片)をコードする一又は複数のポリヌクレオチドが単離され、宿主細胞内でのさらなるクローニング及び/又は発現のために一又は複数のベクターに挿入される。このようなポリヌクレオチドは、一般的な手順を使用して容易に単離され配列決定されうる。一実施態様において、本発明のポリヌクレオチドの一又は複数を含むベクター、好ましくは発現ベクターが提供される。当業者によく知られている方法を使用して、適切な転写/翻訳制御シグナルとともに、抗体又は二重特異性抗原結合分子(断片)のコード配列を含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、in vitroでの組み換えDNA技術、合成技術及びin vivoでの組み換え/遺伝子組み換えを含む。例えば、Maniatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (1989);及びAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y (1989)に記載される技術を参照。発現ベクターはプラスミド、又はウイルスの一部とすることができるか、又は核酸断片でよい。発現ベクターは、抗体又は二重特異性抗原結合分子(断片)をコードするポリヌクレオチド(即ち、コード化領域)が、プロモーター及び/又は他の転写若しくは翻訳制御エレメントと作動可能に結合するようにクローニングされる発現カセットを含む。本発明で使用される場合、「コード化領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部である。「終止コドン」(TAG、TGA、又はTAA)はアミノ酸に翻訳されないが、存在する場合にはコード化領域の一部と考えられ、しかし、任意の隣接配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5’及び3’非翻訳領域などはコード化領域の一部ではない。二以上のコード化領域が、単一のポリヌクレオチドコンストラクト、例えば単一のベクター上に、又は別々のポリヌクレオチドコンストラクトの中、例えば別の(異なる)ベクター上に存在することができる。さらに、任意のベクターは、単一のコード化領域を含んでいてもよいし、二以上のコード化領域を含んでいてもよく、例えば本発明のベクターは、タンパク質分解性切断を介して、翻訳後又は翻訳と同時に最終タンパク質中に分離された一又は複数のポリペプチドをコードしてもよい。加えて、本発明のベクター、ポリヌクレオチド、又は核酸は、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子(断片)、又はその変異体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドに融合した又は融合していない異種コード化領域をコードしうる。異種コード化領域は、限定しないが、特殊化要素又はモチーフ、例えば分泌シグナルペプチド又は異種機能ドメインを含む。作動可能に結合とは、ポリペプチドなどの遺伝子産物のコード化領域が、一又は複数の調節配列の影響下又は制御下において遺伝子産物の発現を配置するように、同調節配列と結合するときである。(ポリペプチドコード化領域及びそれに結合するプロモーターのような)二つのDNA断片は、プロモーター機能の誘導が所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写をもたらす場合、及び二つのDNA断片間の連結の性質が、遺伝子産物の発現を導く発現調節配列の能力を妨げないか又は転写されるべきDNA鋳型の能力を妨げない場合、「作動可能に結合している」。したがって、プロモーター領域は、プロモーターがその核酸の転写をもたらすことができる場合に、ポリペプチドをコードする核酸に作動可能に結合されるといえる。プロモーターは所定の細胞においてのみDNAの実質的な転写を導く細胞特異的プロモーターであってもよい。プロモーターの他に他の転写制御エレメント、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサー、及び転写終結シグナルが、細胞特異的転写を導くポリヌクレオチドと作動可能に結合することができる。適切なプロモーター及び他の転写制御領域は本明細書に開示されている。種々の転写制御領域が当業者に知られている。これらには、限定されないが、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域、例えば、限定されないが、サイトメガロウイルス由来のプロモーター及びエンハンサーセグメント(例えばイントロン-Aと連動した即初期プロモーター)、サルウイルス40(例えば初期プロモーター)、及びレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルスなど)が含まれる。他の転写制御領域は、脊椎動物の遺伝子由来のもの、例えばアクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギ-βグロビン、並びに、真核細胞における遺伝子発現を制御することができる他の配列を含む。さらなる適切な転写制御領域は、組織特異的プロモーター及びエンハンサー並びに誘導性プロモーター(例えば、プロモーター誘導性テトラサイクリン)を含む。同様に、種々の翻訳制御エレメントが当業者に知られている。これらには、限定されないが、リボソーム結合部位、翻訳開始及び終結コドン、並びにウイルス系由来の要素(特に、配列内リボソーム進入部位、又はCITE配列とも呼ばれるIRES)が含まれる。発現カセットは、例えば、複製起点、及び/又はレトロウイルスの長い末端反復配列(LTR)又はアデノ随伴ウイルス(AAV)の末端反転型配列(ITR)などの染色体組み込み要素といった他の特徴を含んでいてもよい。
本発明のポリヌクレオチド及び核酸コード化領域は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指示する分泌ペプチド又はシグナルペプチドをコードするさらなるコード化領域と結合させることができる。例えば、抗体又は二重特異性抗原結合分子の分泌が望まれる場合、シグナル配列をコードするDNAが、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子又はその断片をコードする核酸の上流に配置されうる。シグナル仮説によると、哺乳類細胞によって分泌されるタンパク質はシグナルペプチド又は分泌リーダー配列を有し、これは粗面小胞体上で成長するタンパク質鎖の排出が開始されると成熟タンパク質から切断される。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドが通常、ポリペプチドの分泌型又は「成熟」型を生成するために翻訳されたポリペプチドから切断されるポリペプチドのN末端に融合されたシグナルペプチドを有することを認識している。特定の実施態様では、天然のシグナルペプチド、例えば免疫グロブリン重鎖又は軽鎖シグナルペプチドが使用されるか、又はそれに作動可能に結合しているポリペプチドの分泌を指示する能力を保持するその配列の機能的誘導体が使用される。或いは、異種哺乳動物シグナルペプチド、又はその機能的誘導体が使用されうる。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)又はマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列で置換されてもよい。
後の精製を容易にするために使用されうる(例えば、ヒスチジンタグ)又は抗体又は二重特異性抗原結合分子の標識化における補助のために使用されうる短タンパク質配列をコードするDNAは、抗体又は二重特異性抗原結合分子(断片)をコードするポリヌクレオチドの中又は末端に含まれうる。
さらなる実施態様では、本発明の一又は複数のポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。特定の実施態様では、本発明の一又は複数のベクターを含む宿主細胞が提供される。ポリヌクレオチド及びベクターは、ポリヌクレオチド及びベクターそれぞれに関連して本明細書に記載される特徴のいずれかを単独で又は組み合わせて組み込むことができる。そのような一実施態様において、宿主細胞は、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子(の一部)をコードする一又は複数のポリヌクレオチドを含む一又は複数のベクターを含む(例えばそのようなベクターで形質転換又はトランスフェクトされている)。本明細書で使用される用語「宿主細胞」は、本発明の抗体若しくは二重特異性抗原結合分子又はその断片を生成するように改変できるいずれかの種類の細胞系を指す。抗体又は二重特異性抗原結合分子の複製及び発現補助に適切な宿主細胞は当分野でよく知られている。このような細胞は特定の発現ベクターで適切にトランスフェクト又は形質導入することができ、大量のベクター含有細胞を、臨床利用のための十分な量の抗体又は二重特異性抗原結合分子を得るために、大規模発酵槽での播種用に増殖させることができる。適切な宿主細胞は、原核生物微生物、例えば大腸菌、又は様々な真核生物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞などを含む。例えば、特に、グリコシル化が必要でない場合には、ポリペプチドは細菌中で生成することができる。発現の後、ポリペプチドは可溶性画分において細菌細胞のペーストから単離することができ、さらに精製することができる。原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、菌類や酵母菌株を含むポリペプチドコード化ベクターのための適切なクローニング宿主又は発現宿主であり、そのグリコシル化経路は「ヒト化」されており、部分的又は完全なヒトのグリコシル化パターンを有するポリペプチドの生成をもたらす。Gerngross, Nat Biotech 22, 1409-1414 (2004),及びLi et al., Nat Biotech 24, 210-215 (2006)を参照。(グリコシル化)ポリペプチドの発現に適した宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物と脊椎動物)から派生している。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウイルス株が同定されており、これらは特にヨトウガ細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と併せて使用することができる。植物細胞培養を宿主として利用することもできる。例えば、米国特許第5959177号、第6040498号、第6420548号、第7125978号及び第6417429号(トランスジェニック植物における抗体生成に関するPLANTIBODIESTM技術を記載)を参照。脊椎動物細胞も宿主として用いることができる。例えば、懸濁液中で増殖するように適応された哺乳動物細胞株は有用でありうる。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)で形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓株(Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977)に記載された293細胞又は293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスのセルトリ細胞(例えば、Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980)に記載されるTM4細胞)、サル腎細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76)、ヒト子宮頚癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(HepG2)、マウス乳腺腫瘍細胞(MMT060562)、(例えばMather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982)に記載される)TRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、dhfr-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));及びYO、NS0、P3X63及びSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。タンパク質生成に適した特定の哺乳動物宿主細胞系の総説については、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003)を参照。宿主細胞は、培養細胞、例えばいくつか挙げると、哺乳動物の培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞及び植物細胞を含み、さらにはトランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物又は動物組織内部に含まれる細胞を含む。一実施態様において、宿主細胞は、真核生物細胞、好ましくは哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。
これらの系において外来遺伝子を発現する標準的な技術が当技術分野で知られている。抗体などの抗原結合ドメインの重鎖又は軽鎖を含むポリペプチドを発現する細胞は、発現された生成物が重鎖及び軽鎖の両方を有する抗体であるように、抗体鎖の他方も発現するように改変することができる。
一実施態様において、本発明による抗体又は二重特異性抗原結合分子を生成する方法が提供され、この方法は、抗体又は二重特異性抗原結合分子の発現に適した条件下で、本明細書に与えられるように、抗体又は二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養することと、任意選択的に宿主細胞(又は宿主細胞培地)から抗体又は二重特異性抗原結合分子を回収することとを含む。
本発明の二重特異性抗原結合分子(又は抗体)の成分は、遺伝的に互いに対して融合することができる。二重特異性抗原結合分子は、その成分が互いに直接的に、又はリンカー配列を介して間接的に融合するように、設計することができる。リンカーの組成及び長さは、当技術分野で周知の方法に従って決定することができ、有効性について試験することができる。二重特異性抗原結合分子の異なる成分間のリンカー配列の例は、本明細書に提供される。必要に応じて、融合の個々の成分を分離するための切断部位を取り込むために、追加的配列、例えばエンドペプチダーゼ認識配列も含めることができる。
本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は通常、少なくとも、抗原決定基に結合することのできる抗体可変領域を含む。可変領域は、天然に又は非天然に存在する抗体及びその断片の一部を形成することができ、且つそのような抗体及び断片から誘導することができる。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を生成する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Harlow and Lane, 「Antibodies, a laboratory manual」, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988参照)。非天然に存在する抗体は、固体相-ペプチド合成を使用して構築されるか、組み換え的に生成されるか(例えば米国特許第4186567号に記載のように)、又は例えば可変重鎖及び可変軽鎖を含むコンビナトリアルライブラリーのスクリーニング(例えばMcCaffertyの米国特許第5969108号を参照)によって得ることができる。
あらゆる動物種の抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン又は可変領域を、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子に用いることができる。本発明において有用な非限定的抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン又は可変領域は、マウス、霊長類、又はヒト起源のものでありうる。抗体又は二重特異性抗原結合分子がヒトでの使用を意図する場合、抗体の定常領域がヒトに由来する抗体のキメラ形態を使用することができる。ヒト化又は完全ヒト形態の抗体も、当分野でよく知られている方法に従って調製されうる(例えばWinterの米国特許第5565332号を参照)。ヒト化は、様々な方法によって達成することができ、それら方法には、限定されないが、(a)非ヒト(例えば、ドナー抗体)のCDRを、重要なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性又は抗体機能を維持するために重要であるもの)の保持を伴う又は伴わないヒト(例えば、レシピエント抗体)のフレームワーク領域及び定常領域の上に移植すること、(b)非ヒト特異性決定領域(SDR又はa-CDR;抗体-抗原相互作用に重要な残基)のみをヒトフレームワーク領域及び定常領域上に移植すること、又は(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置き換えによってヒト様切片で「覆い隠す(cloaking)」ことが含まれる。ヒト化抗体及びそれらの製造方法は、例えばAlmagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)にて総説されており、さらにRiechmann et al., Nature332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989)、米国特許第5821337号、第7527791号、第6982321号、及び第7087409号、Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005)(特異性決定領域(SDR)のグラフティングを記述)、Padlan, Mol. Immunol.28:489-498 (1991)(「リサーフェシング」を記述)、Dall’Acqua et al., Methods36:43-60 (2005)(「FRシャッフリング」を記述)、並びにOsbourn et al., Methods 36:61-68 (2005)及びKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000)(FRシャッフリングに対する「誘導選択」アプローチを記述)に記載されている。ヒト化に用いることのできるヒトフレームワーク領域には、限定されないが、「ベストフィット」法を用いて選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al., J. Immunol. 151:2296 (1993)を参照);軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);及びPresta et al., J. Immunol., 151:2623 (1993)を参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒトの生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)を参照);及びFRライブラリースクリーニング由来のフレームワーク領域(例えば、Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997)及び Rosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996)を参照)が含まれる。
ヒト抗体は、当技術分野において既知の様々な技術を用いて生成することができる。ヒト抗体は一般的にvan Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001) 及びLonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008)に記載されている。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してインタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を生成するように改変されたトランスジェニック動物に、免疫原を投与することによって調製することができる。このような動物は、典型的には内因性免疫グロブリン遺伝子座を置換するか、又は染色体外に存在するか若しくは動物の染色体にランダムに組み込まれているヒト免疫グロブリン遺伝子座のすべて又は一部を含む。このようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般的に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の総説については、Lonberg, Nat. Biotech.23:1117-1125 (2005)を参照。例えばXENOマウスTM技術を記載している米国特許第6075181号及び同第6150584号、HuMab(登録商標)技術を記載している米国特許第5770429号、K-M マウス(登録商標)技術を記載している米国特許第7041870号、及びVelociマウス(登録商標)技術を記載している米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい。このような動物により生成されるインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることにより、さらに改変されうる。
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の生成のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記述されている。(例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987); and Boerner et al., J. Immunol., 147: 86 (1991)を参照)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体は、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)にも記載されている。さらなる方法は、例えば、米国特許第7189826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載)及びNi, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)に記載されるものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005) 及びVollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)にも記載されている。
ヒト抗体は、本明細書に記載されるように、ヒト抗体ライブラリーからの単離によって生成されてもよい。
本発明に有用な抗体は、所望の活性(複数可)を有する抗体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる。コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするための方法は、例えば、Lerner et al. in Nature Reviews 16:498-508 (2016)に概説がある。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作成して所望の結合特性を有する抗体のそのようなライブラリーをスクリーニングするための種々の方法が、当技術分野で既知である。このような方法は、例えば、Frenzel et al. in mAbs8:1177-1194 (2016); Bazan et al. in Human Vaccines and Immunotherapeutics 8:1817-1828 (2012) 及びZhao et al. in Critical Reviews in Biotechnology36:276-289 (2016) 並びにHoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology178:1-37 (O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001) 及びMarks and Bradbury in Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003)に概説がある。
特定のファージディスプレイ法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により個別にクローニングし、ファージライブラリーにランダムに再結合させ、その後、Winter et al. in Annual Review of Immunology 12: 433-455 (1994)に記載されるように、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、通常、抗体断片を、単鎖Fv(scFv)断片、又はFab断片として表示する。免疫された起源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要性を伴うことなく免疫原に高親和性抗体を提供する。代替的に、Griffiths et al. in EMBO Journal 12: 725-734 (1993)に記載されるように、ナイーブなレパートリーを、いかなる免疫感作も無く、広範囲の非自己抗原及び自己抗原に対し、抗体の単一起源を提供するために、(例えば、ヒトから)クローニングすることができる。最後に、Hoogenboom and Winter in Journal of Molecular Biology 227: 381-388 (1992)によって記載されているように、幹細胞由来の再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを用いて可変性に富むCDR3領域をコードし、in vitroでの再配列を達成することにより、ナイーブライブラリーを合成的に作成することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーについて記載している特許公開には、例えば:米国特許第5750373号;同第7985840号;同第7785903号及び同第8679490号、並びに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2007/0117126号、同第2007/0237764号及び同第2007/0292936号が含まれる。コンビナトリアルライブラリーを一又は複数の所望の活性を有する抗体についてスクリーニングするための当技術分野で既知の方法のさらなる例には、リボソーム及びmRNAディスプレイ、並びに細菌、哺乳動物細胞、昆虫細胞又は酵母細胞での抗体のディスプレイ及び選択のための方法が含まれる。酵母表面ディスプレイのための方法は、例えば、Scholler et al. in Methods in Molecular Biology 503:135-56 (2012) 及びCherf et al. in Methods in Molecular biology1319:155-175 (2015) 、並びにZhao et al. in Methods in Molecular Biology889:73-84 (2012)に概説がある。リボソームディスプレイのための方法は、例えば、He et al. in Research25:5132-5134 (1997) 及びHanes et al. in PNAS 94:4937-4942 (1997)に記載されている。
本明細書で記載のように調製される抗体又は二重特異性抗原結合分子は、当分野で知られている技術、例えば高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどによって精製されうる。特定のタンパク質を精製するために使用される実際の条件は、一部には正味荷電、疎水性、親水性などの要因に依存し、当業者に明瞭であろう。アフィニティークロマトグラフィー精製では、抗体又は二重特異性抗原結合分子が結合する抗体、リガンド、受容体又は抗原が使用されうる。例えば、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子のアフィニティークロマトグラフィー精製では、プロテインA又はプロテインGを伴うマトリックスが使用されうる。逐次的なプロテインA又はGアフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーが、基本的に実施例に記載されるように抗体又は二重特異性抗原結合分子を単離するために使用されうる。抗体又は二重特異性抗原結合分子の純度は、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィーなどを含む様々な周知の分析方法のいずれかによって決定されうる。
アッセイ
本明細書で提供される抗体又は二重特異性抗原結合分子が、当技術分野で既知の様々なアッセイによって、その物理的/化学的性質及び/又は生物学的活性について同定、スクリーニング、又は特徴づけされる。
アフィニティーアッセイ
Fc受容体又は標的抗原に対する抗体又は二重特異性抗原結合分子の親和性は、例えば、BIAcore機器(GE Healthcare)などの標準器具と、組み換え発現により得られるような受容体又は標的タンパク質とを用いて表面プラズモン共鳴(SPR)により決定することができる。代替的に、異なる受容体又は標的抗原に対する抗体又は二重特異性抗原結合分子の結合は、特定の受容体又は標的抗原を発現する細胞株を用いて、例えばフローサイトメトリー(FACS)により、評価することができる。結合親和性を測定するための具体的な説明的且つ例示的な一実施態様は、以下で説明される。
一実施態様によれば、Kは、25 ℃でBIACORE(登録商標)T100マシン(GE Healthcare)を用いる表面プラズモン共鳴により測定される。
Fc部分とFc受容体との相互作用を分析するために、Hisタグを付した組み換えFc受容体を、CM5チップ上に固定化された抗ペンタHis抗体(Qiagen)により捕捉し、二重特異性コンストラクトを被分析物として使用する。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、GE Healthcare)を、供給業者の指示書に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗Penta-His抗体を、10mM酢酸ナトリウム(pH5.0)で40μg/mlに希釈した後、結合したタンパク質のおよそ6500反応単位(RU)を達成するために5μl/分の流速で注入する。リガンドの注入後、未反応群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。その後、Fc受容体を4又は10nMで60秒間捕捉する。反応速度測定のため、抗体又は二重特異性抗原結合分子の4倍の連続希釈物(500nM~4000nMの)を、25℃のHBS-EP(GE Healthcare、10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%のSurfactant P20、pH7.4)に流速30μl/分で120秒間注入する。
標的抗原に対する親和性を決定するため、抗体又は二重特異性抗原結合分子を、抗Penta-His抗体について記載したように、活性化されたCM5-センサーチップ表面上に固定化された抗ヒトFab特異性抗体(GE Healthcare)により捕捉する。結合したタンパク質の最終的な量は、約12000RUである。抗体又は二重特異性抗原結合分子は、300nMで90秒間捕捉される。標的抗原は、流速30μl/分且つ濃度範囲250~1000nMでフローセルに180秒間通過させる。解離を180秒間モニタする。
バルク屈折率の差異は、基準フローセルで取得される応答を差し引くことにより修正される。定常応答を使用して、ラングミュア結合等温線の非線形曲線適合により解離定数Kを得た。会合センサーグラム及び解離センサーグラムを同時にフィッティングすることによる単純な一対一ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)T100 Evaluation Softwareバージョン1.1.1)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(K)はkoff/kon比として算出される。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881(1999)を参照のこと。
活性のアッセイ
本発明の二重特異性抗原結合分子(又は抗体)の生物活性は、実施例に記載される様々なアッセイにより測定することができる。生物活性には、例えば、T細胞の増殖の誘導、T細胞中のシグナル伝達の誘導、T細胞中の活性マーカーの発現の誘導、T細胞によるサイトカイン分泌の誘導、腫瘍細胞などの標的細胞の溶解の誘導、及び腫瘍後退の誘導及び/又は生存率の改善が含まれる。
投与の組成、製剤、及び経路
さらなる態様において、本発明は、例えば下記の治療法のいずれかに使用される、本明細書で提供される抗体又は二重特異性抗原結合分子のいずれかを含む薬学的組成物を提供する。一実施態様では、薬学的組成物は、本明細書で提供される抗体又は二重特異性抗原結合分子のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の他の実施態様において、薬学的組成物は、本明細書で提供される抗体又は二重特異性抗原結合分子のいずれかと、少なくとも一の追加的治療剤を、例えば後述するように含む。
さらには、in vivoでの投与に適した形態の、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を生成する方法が提供され、この方法は、(a)本発明による抗体又は二重特異性抗原結合分子を得ること、及び(b)少なくとも一つの薬学的に許容される担体を用いて抗体又は二重特異性抗原結合分子を製剤化することであって、抗体又は二重特異性抗原結合分子の調製物が、in vivoでの投与のために製剤化される、製剤化することを含む。
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体中に溶解又は分散された抗体又は複数の抗体又は二重特異性抗原結合分子の治療的有効量を含む。「薬学的に許容される又は薬理学的に許容される」という表現は、用いられる用量及び濃度においてレシピエントに非毒性であり、即ち、例えばヒトなどの動物に必要に応じて投与されたとき、副作用、アレルギー反応、又は他の望ましくない応答を生じさせない分子的実態及び組成物を指す。抗体又は二重特異性抗原結合分子と、任意選択的に追加的な活性成分とを含む薬学的組成物の調製物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed.Mack Printing Company, 1990(参照により本明細書に包含される)によって例示されているように、本開示内容の見地から当業者には既知であろう。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与のために、調製物は、FDA Office of Biological Standards又は他の国の対応する官庁によって必要とされる無菌状態、発熱性、一般的安全性、及び純度の基準を満たさねばならない。好ましい組成物は、凍結乾燥製剤又は水溶液である。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」には、当技術者に既知のように、あらゆる溶媒、バッファー、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存料(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、抗酸化剤、タンパク質、薬物、薬物安定剤、ポリマー、ゲル、結合剤、賦形剤、分解剤、潤滑剤、甘味料、香料、染料、それらの類似物質及び組合せが含まれる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed.Mack Printing Company, 1990, pp. 1289-1329を参照(参照により本明細書に包含される)。いずれの一般的な担体も、活性成分と不適合でない限り、治療的又は薬学的組成物におけるその使用が考慮される。
本発明の抗体又は二重特性抗原結合分子(及び追加的な治療剤)は、非経口、肺内、及び鼻腔内、並びに局所治療のために望ましい場合は、病巣内投与を含む任意の適切な手段により投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与が含まれる。投薬は、その投与が短期間か又は長期であるかどうかに部分的に依存して、任意の適切な経路、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射により行うことができる。
非経口組成物には、注射による投与、例えば皮下、皮内、病巣内、静脈内、動脈内 筋肉内、髄腔内又は腹腔内への注射用に考案されたものが含まれる。注射の場合、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩水バッファーといった生理的に適合性のバッファー中において製剤化されうる。溶液は、懸濁化剤、安定剤、及び/又は分散剤といった製剤関連薬剤を含有することができる。代替的には、抗体又は二重特異性抗原結合分子は、使用前は、適切なビヒクル、例えば滅菌ピロゲンを含まない水を用いた組成に適した粉末形態であってもよい。無菌の注射可能な溶液は、必要量の本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を、必要に応じて以下に列挙する他の様々な成分を含む適切な溶媒中に取り込むことにより調製される。無菌状態は、例えば、滅菌濾過膜を通して濾過することにより、達成することができる。通常、分散液は、基本的な分散媒体及び/又は他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に、滅菌された様々な活性成分を取り込むことにより調製される。無菌の注射可能な溶液、懸濁液、又は乳濁液を調製するための無菌の粉末の場合、好ましい調製方法は、その直前の滅菌濾過された液体媒質から活性成分の粉末と任意の所望の追加的成分とを生む真空乾燥又は凍結乾燥技術である。液体媒質は、必要であれば適切にバッファーリングされなければならず、十分な食塩水又はグルコースを注射される前に、液体はまず希釈されて等張性にされる。組成物は、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌といった微生物の汚染作用から保護されなければならない。エンドトキシンの汚染は、安全レベル、例えばタンパク質1mgあたり0.5ng未満で最小限に保たれなければならない。薬学的に許容される適切な担体には、限定されないが;リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸のようなバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;マンノサッカライド、ジサッカライド、及びグルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。水性注射懸濁液には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストランなどの懸濁液の粘度を上昇させる化合物が含有されていてよい。任意選択的に、懸濁液は、適切な安定剤、又は化合物の溶解度を上昇させて高濃度の溶液の調製を可能にする薬剤も含有することができる。加えて、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒又はビヒクルには、ごま油のような脂肪油、又はエチルクリート若しくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、又はリポソームが含まれる。
活性成分は、例えばコアセルベーション技術又は界面重合法によって調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセルに、コロイド薬物送達システム(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)に、又はマクロエマルジョンに封入することができる。これらの技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th Ed. Mack Printing Company, 1990)に開示されている。持続放出性調製物が調製されてもよい。徐放性製剤の適切な例は、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリックスは、成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。特定の実施態様では、注射可能な組成物の吸収を、例えばモノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、又はそれらの組合せといった吸収を遅延させる薬剤を組成物に使用することにより持続させることができる。
上記の組成物に加えて、抗体又は二重特異性抗原結合分子は、デポー製剤として製剤化することもできる。このような長時間作用型の製剤は、植込(implantation)(例えば、皮下又は筋肉内)により、又は筋肉内注射により投与することができる。したがって、例えば、抗体又は二重特異性抗原結合分子は、適切なポリマー性又は疎水性物質(例えば、許容可能なオイル中の乳濁液としての)又はイオン交換樹脂を用いて、又は難溶性の誘導体として、例えば難溶性の塩として製剤化することができる。
本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を含む薬学的組成物は、一般的な混合、溶解、乳化、カプセル化、封入、又は凍結乾燥方法により製造することができる。薬学的組成物は、一又は複数の生理的に許容される担体、希釈材、賦形剤、又は薬学的に使用可能な調製物へのタンパク質の処理を容易にする補助剤を用いる一般的な方法で製剤化することができる。適当な製剤は、選択される投与経路によって決定する。
抗体又は二重特異性抗原結合分子は、遊離酸又は遊離塩基の、天然又は塩の形態の組成物に製剤化することができる。薬学的に許容される塩は、遊離酸又は遊離塩基の生物活性を実質的に保持する塩である。これらには、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物の遊離アミノ基で形成されたもの、又は例えば塩酸若しくはリン酸といった無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸若しくはマンデル酸といった有機酸で形成されたものが含まれる。また、遊離カルボキシル基で形成される塩は、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄といった無機塩基;又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、又はプロカインといった有機塩基から誘導することができる。薬学的塩は、対応する遊離塩基形態より、水性及び他のプロトン性溶媒に溶け易い。
治療的方法及び組成物
本明細書において提供されるいずれの抗体又は二重特異性抗原結合分子も、治療法に使用することができる。本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、例えばがんの治療において、免疫療法薬剤として使用されてもよい。
治療法において使用される場合、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、医学行動の規範に則って製剤化、投薬、及び投与される。この観点において考慮すべき要因は、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与日程及び医療従事者が知る他の要因を包含する。
一態様では、医薬としての使用のための本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子が提供される。さらなる態様では、疾患の治療において使用される本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子が提供される。特定の実施態様では、治療法において使用される本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子が提供される。一実施態様では、本発明は、それを必要とする個体の疾患の治療に使用される、本明細書に記載の抗体又は二重特異性抗原結合分子を提供する。特定の実施態様では、本発明は、治療的有効量の抗体又は二重特異性抗原結合分子を、疾患を有する個体に投与することを含む、個体の治療法において使用される抗体又は二重特異性抗原結合分子を提供する。特定の実施態様では、治療される疾患は増殖性疾患である。特定の一実施態様では、疾患はがんである。特定の実施態様では、方法はさらに、個体に対して少なくとも一つの追加の治療剤、例えば、治療される疾患ががんであれば抗がん剤の治療的有効量を投与することを含む。さらなる実施態様では、本発明は、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解の誘導に使用される、本明細書に記載の抗体又は二重特異性抗原結合分子を提供する。特定の実施態様では、本発明は、個体に対し、標的細胞の溶解を誘導するために抗体又は二重特異性抗原結合分子の有効量を投与することを含む、個体の標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導する方法に使用される抗体又は二重特異性抗原結合分子を提供する。上記実施態様のいずれかによる「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
さらなる態様では、本発明は、医薬の製造又は調製における本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子の使用を提供する。一実施態様では、医薬は、それを必要とする個体の疾患の治療を目的とするものである。さらなる実施態様において、本医薬は、疾患を有する個体に対し、治療的有効量の医薬を投与することを含む、疾患を治療する方法における使用を目的としている。特定の実施態様では、治療される疾患は増殖性疾患である。特定の一実施態様では、疾患はがんである。一実施態様では、方法はさらに、個体に対し、少なくとも一つの追加の治療剤、例えば、治療される疾患ががんであれば抗がん剤の治療的有効量を投与することを含む。さらなる実施態様では、医薬は、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導するためのものである。またさらなる実施態様では、医薬は、個体に対し、標的細胞の溶解を誘導するために医薬の有効量を投与することを含む、個体の標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導する方法における使用を目的とする。上記実施態様のいずれかによる「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトとすることができる。
さらなる態様において、本発明は、疾患を治療するための方法を提供する。一実施態様では、方法は、そのような疾患を有する個体に対し、治療的有効量の本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を投与することを含む。一実施態様では、薬学的に許容される形態の本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を含む組成物が、前記個体に対して投与される。特定の実施態様では、治療される疾患は増殖性疾患である。特定の一実施態様では、疾患はがんである。特定の実施態様では、方法はさらに、個体に対して少なくとも一つの追加の治療剤、例えば、治療される疾患ががんであれば抗がん剤の治療的有効量を投与することを含む。上記実施態様のいずれかによる「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトとすることができる。
さらなる態様では、本発明は、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導する方法を提供する。一実施態様では、方法は、T細胞、特に細胞傷害性T細胞の存在下において、標的細胞を、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子と接触させることを含む。さらなる態様において、個体の標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導する方法が提供される。このような一実施態様では、方法は、標的細胞の溶解を誘導するために、個体に対し、有効量の抗体又は二重特異性抗原結合分子を投与することを含む。一実施態様において、「個体」はヒトである。
特定の実施態様では、治療される疾患は増殖性疾患、特にがんである。がんの非限定的な例には、前立腺がん、脳のがん、頭部及び頸部のがん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頚がん、子宮内膜がん、食道がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、胃がん、前立腺がん、血液がん、皮膚がん、扁平上皮癌、骨のがん、及び腎臓がんが含まれる。本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を用いて治療されうる他の細胞増殖性疾患には、限定されないが、腹部、骨、***、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭部及び頸部、神経系(中枢及び末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部、及び泌尿生殖器系に位置する腫瘍が含まれる。前がん性の状態又は病変及びがん転移も含まれる。特定の実施態様では、がんは、腎臓がん、膀胱がん、皮膚がん、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、脳のがん、頭部及び頸部のがん、並びに前立腺がんからなる群より選択される。一実施態様において、がんは前立腺がんである。当業者は、多くの場合抗体又は二重特異性抗原結合分子は治癒をもたらさず、部分的恩恵を提供するだけであることを認識する。いくつかの実施態様では、いくつかの恩恵を有する生理的変化も治療的に有益と考えられる。したがって、いくつかの実施態様では、生理的変化をもたらす抗体又は二重特異性抗原結合分子の量は、「有効量」又は「治療的有効量」と考えられる。治療を必要とする被検体、患者、又は個体は、典型的には哺乳動物であり、具体的にはヒトである。
いくつかの実施態様では、有効量の本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子が細胞に投与される。他の実施態様では、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子の治療的有効量が、疾患の治療のために個体に投与される。
疾患の予防又は治療のために、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子の適切な投与量は(単独で使用されるか、或いは一又は複数の他の追加的治療剤との組み合わせで使用されるときの)、治療される疾患の種類、投与経路、患者の体重、抗体又は二重特異性抗原結合分子の種類、疾患の重症度及び経過、抗体又は二重特異性抗原結合分子が予防又は治療いずれの目的で投与されるか、直前又は同時に行われる治療的介入、患者の病歴及び抗体又は二重特異性抗原結合分子に対する応答、並びに主治医の裁量によって決定されるであろう。投与の責任を負う施術者は、いずれにしろ、組成物中の活性成分(複数可)の濃度及び個別の対象に適切な用量(複数可)を決定する。限定されないが、様々な時点にわたる、単一回又は複数回投与、ボーラス投与、パルス注入を含む様々な投与スケジュールが本明細書で考慮される。
抗体又は二重特異性抗原結合分子は、患者に対して、単回、又は一連の治療にわたって適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば一又は複数回の別個の投与によるか、連続注入によるかに関わらず、約1μg/kg~15mg/kg(例えば0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体又は二重特異性抗原結合分子が患者への投与のための初期候補用量となりうる。一つの典型的な一日あたり用量は、上記要因に応じて約1μg/kg~100mg/kg又はそれ以上の範囲である。数日間以上にわたる反復投与の場合には、状態に応じて、治療は疾患症状の望まれる抑制が起こるまで持続されるであろう。抗体又は二重特異性抗原結合分子の一つの例示的用量は、約0.005mg/kg~約10mg/kgであろう。他の非限定的実施例では、用量は、一回の投与につき、体重1kgあたり約1マイクログラム、体重1kgあたり約5マイクログラム、体重1kgあたり約10マイクログラム、体重1kgあたり約50マイクログラム、体重1kgあたり約100マイクログラム、体重1kgあたり約200マイクログラム、体重1kgあたり約350マイクログラム、体重1kgあたり約500マイクログラム、体重1kgあたり約1ミリグラム、体重1kgあたり約5ミリグラム、体重1kgあたり約10ミリグラム、体重1kgあたり約50ミリグラム、体重1kgあたり約100ミリグラム、体重1kgあたり約200ミリグラム、体重1kgあたり約350ミリグラム、体重1kgあたり約500ミリグラム、体重1kgあたり約1000mg以上及びそこで導かれるあらゆる範囲を含む。本明細書に列挙される数字から導かれる範囲の非限定的な例では、上記の数字に基づいて、体重1kgあたり約5mg~体重1kgあたり約100mg、体重1kgあたり約5マイクログラム~体重1kgあたり約500ミリグラムなどが投与されうる。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kg又は10mg/kgの一又は複数の用量(又はこれらのいずれかの組み合わせ)を患者に投与してよい。このような用量は断続的に、例えば毎週又は3週毎(例えば患者が約2~約20投与量、又は例えば約6投与量の抗体又は二重特異性抗原結合分子を受けるように)投与してよい。初期の高負荷用量の後、一又は複数の低用量を投与してよい。しかしながら、他の用量レジメンも有用でありうる。この治療法の進行は、従来の技術及びアッセイにより容易にモニタリングされる。
本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、通常、意図された目的を達成するために有効な量で使用される。疾患状態を治療又は予防するための使用のために、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子、又はその薬学的組成物は、治療的有効量で投与又は適用される。治療的有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示内容を踏まえると十分に当業者の能力の範囲内である。
全身投与の場合、治療的に有効な用量は、まずは細胞培養アッセイのようなin vitroアッセイに基づいて推定することができる。次いで用量を、細胞培養物において決定されるIC50を含む循環濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて製剤化することができる。このような情報は、ヒトにおいて有用な用量をさらに正確に決定するために使用することができる。
初期投与量は、in vivoデータ、例えば動物モデルから、当技術分野で周知の技術を用いて推定することもできる。当業者であれば、動物データに基づいて、ヒトへの投与を容易に最適化することができるであろう。
投与の量及び間隔は、治療効果を維持するために十分な抗体又は二重特異性抗原結合分子の血漿レベルを提供するために個別に調整される。注射による投与のための通常の患者への投与量は、約0.1~50mg/kg/日、典型的には約0.5~1mg/kg/日の範囲である。治療的に有効な血漿レベルは、毎日複数の用量を投与することにより達成することができる。血漿中のレベルは、例えばHPLCにより測定することができる。
局所投与又は選択的取り込みの場合、抗体又は二重特異性抗原結合分子の有効な局所濃度は血漿濃度に関連していなくともよい。当業者であれば、過度の実験をしなくとも、治療的に有効な局所投与量を最適化することができるであろう。
本明細書に記載される抗体又は二重特異性抗原結合分子の治療的に有効な用量は、通常、実質的な毒性なしで治療的恩恵を提供する。抗体又は二重特異性抗原結合分子の毒性及び治療効果は、細胞培養又は実験動物における標準の薬学的手順により決定することができる。細胞培養アッセイ及び動物の研究は、LD50(集団の50%を死に至らしめる用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するために使用することができる。毒性と治療効果との用量比が治療指数であり、比LD50/ED50と表現することができる。大きな治療指数を呈する抗体又は二重特異性抗原結合分子が好ましい。一実施態様では、本発明による抗体又は二重特異性抗原結合分子は高い治療指数を呈する。細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用に適した一定範囲の投与量の製剤化に使用することができる。投与量は、好ましくは、毒性を殆ど又は全く有さないED50を含む、一定範囲の循環濃度内にある。投与量は、種々の要因、例えば、用いられる投与形態、使用される投与経路、対象の状態などに応じてこの範囲内で変動しうる。正確な製剤、投与経路、及び用量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選択されうる(例えば、Fingl et al., 1975, in:ThePharmacological Basis of Therapeutics, Ch. 1, p. 1参照。この文献は参照により本明細書に包含される)。
本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を用いて治療される患者の主治医には、毒性、器官不全などにより、いつ及びどのようにして投与を終了、中断、又は調整するかが分かるであろう。逆に、主治医は、臨床応答が十分でなかった場合には(毒性なしで)、治療レベルを上げるように調整することも分かっているであろう。対象となる障害の管理において投与される用量の大きさは、治療される状態の重症度、投与経路などによって変動するであろう。例えば、状態の重症度は、部分的には標準の予後評価方法により評価される。さらに、用量及び恐らくは投薬回数も、個々の患者の年齢、体重、及び応答により変動するであろう。
その他の薬剤及び治療
本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、療法において、一又は複数の他の薬剤との組み合わせで投与されうる。例えば、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、少なくとも一の追加的治療剤と共投与される。用語「治療剤」は、そのような治療を必要とする個体の症状又は疾患を治療するために投与されるあらゆる薬剤を包含する。このような追加的な治療剤は、治療される特定の兆候に適したあらゆる活性成分、好ましくは、互いに打ち消し合うことのない相補的活性を有する活性成分を含む。特定の実施態様では、追加的治療剤は、免疫調節剤、細胞増殖抑制剤、細胞接着の阻害剤、細胞傷害性剤、細胞アポトーシスの活性剤、又はアポトーシス誘導因子に対する細胞の感受性を増大させる薬剤である。特定の実施態様では、追加的治療剤は、抗がん剤、例えば微小管破壊因子、抗代謝剤、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAインターカレーター、アルキル化剤、ホルモン療法、キナーゼ阻害剤、受容体アンタゴニスト、腫瘍細胞アポトーシスの活性化因子、又は抗血管新生剤である。
このような他の薬剤は、意図した目的に有効な量で組み合わされて適切に存在する。このような他の薬剤の有効量は、使用される抗体又は二重特異性抗原結合分子の量、障害又は治療の種類、及び上述した他の要因によって決まる。抗体又は二重特異性抗原結合分子は、一般的に、本明細書に記載されるものと同じ用量及び投与経路において、又は本明細書に記載された投与量の1%~99%で、又は経験的に/臨床的に妥当であると決定された任意の投与量で任意の経路により使用される。
上記のこうした併用療法は、併用投与(二以上の治療剤が、同一又は別々の組成物に含まれている)、及び本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子の投与が、追加の治療剤及び/又はアジュバントの投与の前、投与と同時、及び/又は投与の後に起こりうる分離投与を包含する。本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、放射線療法と組み合わせて使用してもよい。
製造品
本発明の別の態様では、上述した障害の治療、予防、及び/又は診断に有用な材料を含む製造品が提供される。製造品は、容器と容器上又は容器に付随するラベル又は添付文書を含む。好適な容器は、例としてボトル、バイアル、シリンジ、IV輸液バッグなどを含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されうる。容器は、状態の治療、予防、及び/又は診断に有効な、単独の又はその他の組成物と併用される化合物を収容し、無菌のアクセスポートを有することができる(例えば、容器は皮下注射針により穿孔可能なストッパーを有する静脈内溶液のバッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも一の活性な薬剤は、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子である。ラベル又は添付文書は、組成物が選択された状態の治療のために使用されることを示している。さらに、製造品は、(a)本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を含む組成物を中に含む第一の容器;及び(b)さらなる細胞傷害性又はその他の治療剤を含む組成物を中に含む第2の容器を含みうる。本発明の本実施態様における製造品は、組成物が特定の状態を治療するために使用できることを示す添付文書をさらに含んでいてもよい。代替的に又は追加的に、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液を含む第二(又は第三)の容器をさらに含んでもよい。製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的に及びユーザーの立場から望まれる他の材料をさらに含んでもよい。
診断及び検出のための方法と組成物
特定の実施態様では、本明細書において提供される抗STEAP-1抗体のいずれもが、生物学的試料中のSTEAP-1の存在を検出するために有用である。本明細書で使用する「検出」という用語は、定量的又は定性的検出を包含する。特定の実施態様では、生物学的サンプルは細胞又は組織、例えば前立腺組織を含む。
一実施態様では、診断又は検出方法に使用される抗STEAP-1抗体が提供される。さらなる態様では、生物学的試料中におけるSTEAP-1の存在を検出する方法が提供される。特定の実施態様では、方法は、生物学的試料を、抗STEAP-1抗体のSTEAP-1への結合を許容する条件下において本明細書に記載される抗STEAP-1抗体と接触させること、及び抗STEAP-1抗体とSTEAP-1の間に複合体が形成されたかどうかを検出することを含む。そのような方法は、in vitro法又はin vivo法である。一実施態様では、抗STEAP-1抗体は、抗STEAP-1抗体を用いた療法に適した対象を選択するために使用され、例えばSTEAP-1は患者の選択のためのバイオマーカーである。
本発明の抗体を用いて診断されうる例示的な障害には、がん、特に前立腺がんが含まれる。
特定の実施態様では、標識された抗STEAP-1抗体が提供される。標識は、限定されないが、(例えば、蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識、放射性標識などの)直接検出される標識又は部分、並びに、例えば、酵素反応又は分子間相互作用を介して間接的に検出される酵素又はリガンドのような部分が含まれる。このような標識の例には、限定されないが、ラジオアイソトープ32P、14C、125I、H、及び131I、フルオロフォア、例えば希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシェフェラーゼ、例えばホタルルシェフェラーゼ及び細菌ルシェフェラーゼ(米国特許第4737456号)、ルシェフェリン、2,3-ジヒドロフタルジネジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘテロサイクリックオキシダーゼ、例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼを、色素前駆体、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、又はマイクロペルオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピンラベル、バクテリオファージラベル、安定な遊離ラジカルなどを酸化するために過酸化水素を利用する酵素とカップリングさせたもの、などが含まれる。
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以下は本発明の方法及び組成物の実施例である。上記に提供された一般的な説明を前提として、他の様々な実施態様が実施されうる。
実施例1
コンストラクト及びツールの生成
組み換えDNA技術
標準的な方法を使用して、Sambrook, J. et al, Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory press, Cold spring Harbor, New York, 1989に記載されているようにDNAを操作した。分子生物学的試薬を、製造元の指示に従って使用した。
ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般情報は以下に与えられている:Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)。
遺伝子合成
所望の遺伝子セグメントは、必要に応じて、適切なテンプレートを用いてPCRによって生成するか、又は自動化された遺伝子合成による合成オリゴヌクレオチド及びPCR生成物からGeneart AG(Regensburg、Germany)で合成した。特異な制限エンドヌクレアーゼ切断部位に隣接する遺伝子セグメントを、標準のクローニング/シーケンシングベクター中にクローニングした。形質転換した細菌からプラスミドDNAを精製し、UV分光法により濃度を決定した。サブクローニングされた遺伝子断片のDNA配列を、DNA配列決定によって確認した。遺伝子セグメントは、それぞれの発現ベクター中へのサブクローニングを可能にする適切な制限部位を用いて設計された。すべてのコンストラクトは、真核細胞内の分泌のためにタンパク質を標的とするリーダーペプチドをコードする5’末端DNA配列を含むように設計された。
DNA配列決定
DNA配列は、二本鎖配列決定により決定された。
抗STEAP1/抗CD3T細胞二重特異性(TCB)抗体のクローニング
種々のSTEAP1特異性T細胞二重特異性(TCB)抗体変異体の生成のために、バンドルツズマブの可変ドメインを使用した。それぞれの発現プラスミドの生成のために、バンドルツズマブの可変領域配列(配列番号10及び14)又はその変異体を使用し、各レシピエント哺乳動物の発現ベクターに事前挿入されるそれぞれの定常領域を用いてインフレームでサブクローニングした。その結果得られる分子の模式図が図2に示される。
抗STEAP1/抗CD3T細胞二重特異性(TCB)抗体の調製
以下の分子が調製された。これらの模式図を図2に示す:
A.分子A:2+1 IgG CrossFab「反転型」(CD3バインダーC末端からSTEAP1バインダーへ)、電荷修飾あり(CD3バインダーにおけるVH/VL交換、STEAP1バインダーにおける電化修飾)(配列番号26、27、34及び35)
B.分子B:2+1 IgG CrossFab「反転型」(CD3バインダーC末端からSTEAP1バインダーへ)、電荷修飾あり(CD3バインダーにおけるVH/VL交換、STEAP1バインダーにおける電荷修飾;両方のSTEAP1結合部分におけるD100aE変異)(配列番号28、29、34及び35)
C.分子C:2+1 IgG CrossFab「反転型」(CD3バインダーC末端からSTEAP1バインダーへ)、電荷修飾あり(CD3バインダーにおけるVH/VL交換、STEAP1バインダーにおける電荷修飾;両方のSTEAP1結合部分におけるD100bE変異)(配列番号30、31、34及び35)
D.分子D:2+1 IgG CrossFab「反転型」(CD3バインダーC末端からSTEAP1バインダーへ)、電荷修飾あり(CD3バインダーにおけるVH/VL交換、STEAP1バインダーにおける電荷修飾;両方のSTEAP1結合部分におけるD100aE/D100bE変異)(配列番号32、33、34及び35)
上述の分子の発現は、キメラMPSVプロモーター又はCMVプロモーターによって駆動された。ポリアデニル化は、CDSの3’末端に位置する合成ポリAシグナル配列により駆動された。加えて、各ベクターは、常染色体複製のためのEBV OriP配列を含んでいた。
すべてのコンストラクトの生成のために、懸濁液中において増殖するHEK293-EBNA細胞を、トランスフェクション試薬としてポリエチレンイミンを用いて、それぞれの発現ベクターと共に共トランスフェクトした。したがって、すべての「2+1 IgG CrossFab」コンストラクトの生成のために、対応する発現ベクターを、1:2:1:1の比(「ベクター重鎖(VH-CH1-VL-CH1-CH2-CH3)」:「ベクター軽鎖(VL-CL)」:「ベクター重鎖(VH-CH1-CH2-CH3)」:「ベクター軽鎖(VH-CL)」で共トランスフェクトした。
HEK293 EBNA細胞を、6mMのL-グルタミン及び250mg/lのG418を含む無血清Excell培地において懸濁培養した。600mlのチューブスピンフラスコ(最大作業体積400mL)内での生成のために、6億個のHEK293 EBNA細胞をトランスフェクションの24時間前に播種した。トランスフェクションの前に、細胞を210×gにより5分間遠心分離し、予め温めた20mlのCD CHO培地により上清を置き換えた。発現ベクターを、DNAの量が最終的に400μgになるまで20mlのCD CHO培地中で混合した。1080μlのPEI溶液(2.7μg/ml)を加えた後、培地を15秒間ボルテックスし、その後室温で10分間インキュベートした。その後細胞を、DNA/PEI溶液と混合し、600mlのチューブスピンフラスコに移し、加湿した5%CO雰囲気のインキュベーター内において37℃で3時間インキュベートした。このインキュベーション工程の後、6mMのL-グルタミン、5g/LのPepsoy、及び1.0mMのVPAを含む360mlのExcell培地を加え、細胞を24時間培養した。トランスフェクションの一日後、7%のFeed 7を加える。7日間の培養後、上清を収集して20~30分間3600×gで遠心分離(Sigma 8K遠心分離)することによって精製し、溶液を滅菌濾過し(0.22μmのフィルター)、アジ化ナトリウムを最終濃度0.01% w/vになるまで加え、4℃に保持した。
すべての分子を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより、続いてサイズ排除クロマトグラフィー工程により、細胞培養上清から精製した。アフィニティークロマトグラフィーのために、上清を、25mlの20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム(pH7.5)により平衡化したHiTrap ProteinA HPカラム(CV=5mL、GE Healthcare)に充填した。結合していないタンパク質を、少なくとも10カラム容積の20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム(pH7.5)で洗浄することにより除去した。標的タンパク質を、6カラム容積の20mMクエン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、100mMグリシン(pH3.0)に溶出した。タンパク質溶液を、1/10容積の0.5 M リン酸ナトリウム(pH8.0)を加えることにより中和させた。ProteinAクロマトグラフィー後のインプロセス分析のために、単一の画分中の分子の純度及び分子量を、還元剤の非存在下においてSDS-PAGEにより分析し、Coomassie(InstantBlueTM、Expedeon)で染色した。NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲルシステム(4~12%のBis-Tris、,Invitrogen,USA)を、製造者の指示に従って使用した。標的タンパク質の選択された画分を、濃縮し、濾過した後、20mMのヒスチジン、140mMの塩化ナトリウム(pH6.0)、0.01%のTween20で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)に充填した。
精製されタンパク質試料のタンパク質濃度を、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光係数を用いる280nmにおける光学濃度(OD)により決定した。加えて、すべての分子の同一性を確認するために、それら分子の質量分析を実施した。
STEAP1発現CHO-K1細胞株の生成
完全長ヒトSTEAP1をコードする遺伝子を、哺乳動物の発現ベクター中にクローニングした。製造者のプロトコールに従って(Invitrogen、#15338100)Lipofectamine LTX Reagentを用いて、プラスミドをCHO-K1(ATCC CRL-9618)細胞中にトランスフェクトした。安定にトランスフェクトされたSTEAP1陽性CHO細胞を、10%のウシ胎児血清(Gibco、#16140063)及び1%のGlutaMAX Supplement(Gibco;#31331-028)を補ったDMEM/F-12培地(Gibco、#11320033)中に維持した。トランスフェクションの二日後、ピューロマイシン(Invivogen;#ant-pr-1)を6μg/mLに加え、細胞を複数継代にわたって培養した。最初の選択後、最も高いSTEAP1の細胞表面発現を有する細胞を、BD FACSAria IIセルソーター(BD Biosciences)によりソートし、培養して安定な細胞クローンを確立した。発現レベル及び安定性は、4週間の期間にわたって二次抗体としてバンドルツズマブ及びPerCPコンジュゲートFcガンマ特異性ヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch、#109-126-097)を用いたFACS解析により確認された。
実施例2
バンドルツズマブベースの配列変異体の生成及び特徴づけ
バンドルツズマブの配列分析
アスパラギン脱アミド、アスパルテート異性化、スクシンイミド形成、及びトリプトファン酸化のような修飾は、組み換え抗体に関する典型的な分解であり、in vitroでの安定性及びin vivoでの生体機能の両方に影響しうる。アスパルテート異性化、アスパラギン脱アミド又はスクシンイミド形成を生じやすい潜在的なアミノ酸配列パターンの存在をスクリーニングするために、バンドルツズマブCDR配列(Kabatによる配列番号1、2、3、7、8及び9)の計算解析を実施した。さらに、CDR領域を、酸化する可能性を有するトリプトファンの存在について分析した。図3に示すように、バンドルツズマブ配列の解析により、重鎖及び軽鎖両方の可変ドメインのCDR領域内の潜在的ホットスポットが明らかになった。
バンドルツズマブ配列(分子B-D)の変異体の生成
最小のイソ-アスパルテート及びスクシンイミド形成と、最適な安定性とを有する抗STEAP1抗体を調製するために、修飾されたHCDR3配列を有するバンドルツズマブ配列の複数の変異体を生成した。特に、100a位及び100b位(Kabat番号付け)におけるアスパルテート残基を、個別に又は組み合わせてグルタメートにより置き換え(配列番号4、5及び6)、その結果得られたプラスミド(配列番号28、29、34及び35(変異D100aE、分子B);配列番号30、31、34及び35(変異D100bE、分子C);配列番号32-35(変異D100aE/D100bE、分子D))は、それぞれのTCB抗体分子の発現のために生成された。
化学分解試験
導入された変異により、HCDR3に予測されるホットスポットが消滅し、安定性が上昇し、抗STEAP1抗体の結合力価の欠失が防止されることを確認するために、すべてのコンストラクト(分子A-D)を二つのアリコートに分割し、それぞれ20mMのHis/HisCl、140mMのNaCl(pH6.0)又はPBS(pH7.4)に再バファリングし、40℃(His/NaCl)又は37℃(PBS)でインキュベートした。加えて、コントロール試料を-80℃で貯蔵した。pH7.4でのインキュベーションは、血漿中の状況への分子の曝露を反映したものであり、in vivoでの分子の安定性についての結論を導くことができる。対照的に、低減したpH(ここではpH6)を有するバッファー製剤は、抗体ベースのコンストラクトの長期貯蔵により適しており、このような条件下でのストレス試験は、分子の貯蔵寿命を予測する。
28日間のインキュベーション期間の後、STEAP1結合部分の結合力価(相対活性濃度)について試料を分析及び比較した。この分析は、質量分析及び細胞ベースのELISAにより間接的に実施された。
質量分析によるストレス分子A-Dの特徴づけ
バンドルツズマブ及びその変異体のCDR内部における予測位置でのストレス誘導性のタンパク質分解を同定するために、分子A-Dの質量分析を実施した。80μgの参照試料及びストレスタンパク質試料を、124.5μlの100mM Tris、5.6M塩酸グアニジニウム、10mM TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(Pierce Protein Biology Products)(pH6.0)中で、37℃で1時間にわたり変性させ、還元した。バッファーを、0.5mLのZeba Spin Desalting Columns中に、20mM ヒスチジン クロリド、0.5mM TCEP(pH6.0)(Pierce Protein Biology Products)に交換した。タンパク質試料は、最終容積140μLにおいてタンパク質1μgにつき0.05μgのトリプシン(Promega)を加えた後、一晩37℃で消化させた。7μLの10%ギ酸(FA)溶液を加えることにより消化を止めた。
消化させた試料は使用まで-80℃で貯蔵した。nanoAcquity UPLC(Waters)及びOrbitrap Fusion質量分析計(Thermo Fisher Scientific)を用いたUHPLC-MS/MSにより分析を実施した。約2.4μgの消化した融合タンパク質を5μLで注入した。クロマトグラフ分離法を、流速60μL/分を用いるAcquity BEH300C18カラム(1×150mm、1.7μm、300Å(Waters))において逆相により実施した。移動相A及びBは、UPLCグレードの水及びアセトニトリル中にそれぞれ0.1%(v/v)のギ酸を含んでいた。50℃のカラム温度を使用し、90分間に1%から40%の移動相Bの勾配を適用した。Orbitrap Fusionを、データ依存モードで使用した。Essential MSの設定は:イオン化(スプレー電圧:3.6kV、イオン輸送管:250℃、ベーパライザー:100℃)、フルMS(AGC:2×105、分解能:12×104、m/zレンジ:300-2000、最大注入時間:100ms);MS/MS(AGC:1×104、最大注入時間:100ms、単離幅:2Da).正規化された衝突エネルギーは35%に設定された。
分子A-Dの予測されるホットスポット(N53(HCDR2)、N97(HCDR3)、D100a(HCDR3)及びW50(LCDR2)(Kabat番号付け))の脱アミド化、異性化及び酸化のレベルを定量化するためにペプチドマッピングを適用した。
HCDR3領域を担持するペプチドにおいて、いずれの条件においても、分子A-Dのいずれにおいても、N97位における脱アミドもスクシンイミド形成も検出されなかった(データは示さない)。しかしながら、pH6でのストレス曝露により、やはり予測されるホットスポットアスパルテート100aを担持する同じHCDR3ペプチドに異なるレベルのアスパルテート分解がもたらされた。四つの試験された分子それぞれのトリプシンペプチドには、40℃のHis/NaCl(pH6.0)中で4週間後に、異なるレベルのスクシンイミド及びイソアスパルテート形成が検出された(表1)。pH6.0でのストレス曝露の後、最も高い合計レベルは分子Aに検出された。分子BにおけるD100a→E100aの変異導入と、分子CにおけるD100b→E100bの変異導入は、スクシンイミドレベルを有意に低下させる。しかしながら、両変異の組み合わせ(D100aE/D100bE)(分子D)は、スクシンイミドレベルを3%へと強力に低下させ、これはこのような長期間のストレス曝露については無視できる量である。さらに、分子Dにイソアスパルテートは検出されなかった。この結果は、分子A中の両方のアスパルテート(D100a及びD100b)と分子C又はB中のアスパルテート(D100a又はD100b)のいずれか一つとが、ストレス後に見られるスクシンイミドとイソアスパルテートの合計レベルに寄与していることを示している。加えて、pH7.4でのストレス曝露後に、分子DのHCDR3にタンパク質分解はまったく検出されず、この新規に設計された配列変異体の一体性が確認された。
Figure 0007247101000008
STEAP1バインダーの重鎖(HCDR2)においてペプチドを担持するN53位の分析により、37℃のPBS(pH7.4)中では4週間後にすべてのコンストラクトにおいてN53脱アミドが少し増大するがことが明らかになったが、pH6では有意な増加が検出されなかった(表2)。W50(LCDR2)の酸化はすべての試料について2%未満であった(表3)。結果として、これら推定上のホットスポットに関して分子最適化は実施されなかった。
Figure 0007247101000009
Figure 0007247101000010
細胞ベースのELISAを用いたストレス後の結合力価の特徴づけ
pH7.4又は6.0で1-4週間のストレスによって生じる結合力価の低下を定量化するために、ヒトSTEAP1を安定に発現するCHO-K1細胞を用いる細胞ベースのELISAを採用した。この細胞ベースのELISAのために、96ウェルプレートの各ウェルに10000個の細胞を播種し、18時間37℃、5%COでインキュベートした。上清を、自動洗浄器(BIOTEK)を用いて除去し、増殖培地中の抗体コンストラクトの100μlの希釈系列(10pM-30nM)を各ウェルに加えた。4℃でのインキュベーションの1時間後、ウェルを空にし、PBS中0.05%のグルタルアルデヒド100μlを10分間RTで加えた。PBS/0.025%Tween20(PBST)での4回の洗浄後、ブロッキングバッファー(Roche)中において1:20000に希釈した100μlの抗ヒト-IgG-HRP(Jackson)を加え、プレートを1時間室温(RT)でインキュベートした。ウェルを、PBSTで6回洗浄し、1ウェルあたり100μlのTMBを用いてシグナルを生成し、50μlの1M HClを用いて10分後に反応を止め、450nmでの吸光度を測定した。データ(表4)は、ストレス試料の結合EC50を未処理の試料の同値で除したものに100を乗じた「%結合」で表している。
試験したすべてのTCB抗体が、分子あたり二つのSTEAP1結合部分を含むとして、STEAP1に対する一価の結合の親和性が40-60nMの範囲であるとことを考慮すると、二つの機能的STEAP1結合部分を有する分子のみがこのELISAにおいて検出されうると考えられる。対照的に、一つの機能的STEAP1結合部分のみを有する分子は、このプロトコールに記載される洗浄工程の間に洗い流されるはずである。したがって、スクシンイミドレベルが上昇した分子に関する結合損失の累積率は、HCDR3において検出されたタンパク質分解より高い(分子A-C)。
Figure 0007247101000011
バンドルツズマブベースのTCB抗体変異体の生化学的特徴づけ(分子A-D)
生化学的及び生物物理学的特性を特徴づけて比較するために、新規の抗STEAP-1抗体配列変異体を有するすべてのTCB(分子B-D)を分析し、バンドルツズマブ配列を担持するTCB抗体(分子A)と比較した。この結果を表5にまとめる。
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)
見掛け上の疎水性を、25mMのNa-ホスフェート、1.5Mの硫酸アンモニウム(pH7.0)で平衡化したHIC-Ether-5PW(Tosoh)カラムに20μgの試料を注入することにより決定した。0から100%の直線勾配のバッファーB(25mMのNa-ホスフェート、pH7.0)を用いて60分以内に溶出を実施した。保持時間を、既知の疎水性を有するタンパク質標準と比較した。
熱安定性
20mMのヒスチジン/ヒスチジンクロリド、140mMのNaCl(pH6.0)中、1mg/mLの濃度で試料を調製し、0.4μmフィルターを通じた遠心分離により、光学384ウェルプレートに移し、パラフィン油でカバーした。試料を0.05℃/分の速度で25℃から80℃に加熱する間に、流体力学半径を、DynaPro Plate Reader(Wyatt)で動的光散乱により繰り返し測定する。
FcRnアフィニティークロマトグラフィー
FcRnが発現し、精製され、記載されるようにビオチン化された(Schlothauer et al., MAbs (2013) 5(4), 576-86)。カップリングのために、調製された受容体をストレプトアビジン-セファロース(GE Healthcare)に加えた。その結果得られたFcRn-セファロースマトリックスを、カラムのハウジングに詰めた。カラムを20mMの2-(N-モルホリン)-エタンスルホン酸(MES)、140mMのNaCl(pH5.5)(溶出剤A)で0.5ml/分の流速で平衡化した。30μgの抗体試料を、溶出剤Aと1:1の容積比で希釈し、FcRnカラムに適用した。カラムを5カラム容積の溶出剤Aで洗浄し、続いて35カラム容積中20から100%の直線勾配の20mMのTris/HCl、140mMのNaCl(pH8.8)(溶出剤B)で溶出した。分析を、25℃のカラムオーブンで実施した。溶出プロファイルを、280nmでの吸光度を連続測定することにより監視した。保持時間を、既知の親和性を有するタンパク質標準と比較した。
ヘパリンアフィニティークロマトグラフィー
ヘパリン親和性を、50mMのTris(pH7.4)で平衡化したTSKgel Heparin-5PW(Tosoh)カラムに30-50μgの試料を注入することにより決定した。0から100%の直線勾配のバッファーB(50mM Tris、1MのNaCl、pH7.4mM)を用いて37分以内に溶出を実施した。保持時間を、既知の親和性を有するタンパク質標準と比較した。
新規の抗STEAP-1抗体配列変異体を有する試験されたTCB(分子B-D)のいずれにおいても、試験されたすべての生物物理学的及び生化学的特性に関して、バンドルツズマブ配列(分子A)を有する分子との間に有意な差は見られなかった(表5)。すべての試料は、ストレス時にわずかな凝集及び断片化を示すのみであり、このことは、pH6におけるストレスへの曝露後に観察された活性化の欠失(分子A-C)が、HCDR3領域内の同定された位置における化学的タンパク質分解に起因していることを示唆している。
Figure 0007247101000012
実施例3
STEAP-1 TCB抗体変異体の機能的特徴づけ
STEAP-1 TCB抗体変異体によって誘導されるT細胞媒介性の腫瘍溶解
異なるSTEAP-1 TCB抗体変異体(分子A-D)によって媒介されるT細胞殺傷を、STEAP-1発現LnCAP細胞において評価した。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をエフェクター細胞として使用し、前記殺傷を、二重特異性抗体と共に行ったインキュベーションの24時間目及び48時間目において検出した。付着した標的細胞を、トリプシン/EDTAを用いて収集し、洗浄し、平底96ウェルプレートを用いて30000細胞/ウェルの密度で播いた。細胞を一晩放置して付着させた。PBMCを、健常なヒトドナーから得られたヘパリン添加血液の濃縮リンパ球調製物のHistopaque密度遠心分離により調製した。新鮮血を滅菌PBSで希釈し、Histopaqueグラジエント上に重ねた(Sigma、H8889)。遠心分離(450×g、30分、室温)後、PBMCを含有する界面相上の血漿を棄て、PBMCを新しいfalconチューブに移し、その後50mlのPBSを満たした。混合物を遠心分離(400×g、10分間、室温)し、上清を棄て、滅菌PBSを用いてPBMCペレットを二度洗浄した(遠心分離工程:350×g、10分間)。その結果得られたPBMCの集団を自動カウントし(ViCell)、細胞インキュベーター内において、37℃、5% COで10%のFCS及び1%のL-アラニル-L-グルタミン(Biochrom、K0302)を含有するRPMI1640培地中に、さらなる使用まで(24時間以内)保管した。
殺傷アッセイのために、抗体を、示された濃度(0.01pM~1nMの範囲で3通り)で加えた。PBMCを標的細胞に、最終的なE:T比が10:1となるように加えた。標的細胞の死滅を、37℃、5% COでの24時間及び48時間のインキュベーションの後に、アポトーシス/壊死細胞による細胞上清中に放出されたLDHの定量化(LDH検出キット、Roche Applied Science、#11 644 793 001)により評価した。標的細胞の最大溶解(=100%)が、1% Triton X-100と共になされた標的細胞のインキュベーションにより達成された。最小溶解(=0%)は、二重特異性コンストラクトなしでエフェクター細胞と共にコインキュベートした標的細胞を指す。24時間後(図4A)及び48時間後(図4B)の結果は、細胞媒介性の腫瘍溶解が、試験された分子によりT同様に誘導されること、及び分子B-DにおけるSTEAP-1バインダーの修飾が、分子の殺傷力価に悪影響を与えないことを示している。
STEAP-1 TCB抗体変異体により誘導されるT細胞活性化(Jurkat-NFAT活性化アッセイ)
細胞上のCD3及びヒトSTEAP-1に同時結合すると、CD3媒介性のエフェクター細胞活性化を誘導するSTEAP-1 TCB抗体変異体の能力を、腫瘍抗原陽性標的細胞(LnCAP、22RV1)とJurkat-NFATレポーター細胞(CD3発現ヒト急性リンパ性白血病レポーター細胞株とNFATプロモーター;GloResponse Jurkat NFAT-RE-luc2P、Promega #CS176501)の共培養を用いて評価した。STEAP-1抗原(標的細胞に発現)及びCD3抗原(Jurkat-NFATレポーター細胞に発現)にTCB分子が同時結合すると、NFATプロモーターが活性化し、活性ホタルルシフェラーゼの発現を導く。発光シグナルの強度(ルシフェラーゼ基質の付加時に得られる)は、CD3活性化及びシグナル伝達の強度に比例している。
アッセイのために、ヒト腫瘍細胞を回収し、ViCellを用いて生存率を決定した。20000個の細胞/ウェルを、平底白壁96ウェルプレート(#655098、Greiner Bio-One)に蒔き、希釈した抗体又は培地(コントロール用)を加えた(2.6pM-200nMの範囲)。
その後、Jurkat-NFATレポーター細胞を回収し、ViCellを用いて生存率を評価した。細胞を細胞培地に再懸濁し、腫瘍細胞に加え、最終的なエフェクター対標的(E:T)比を5:1とし、最終容積をウェルあたり100μlとした。細胞を、加湿したインキュベーター内で6時間37℃でインキュベートした。インキュベーション時間の最後に、100μl/ウェルのONE-Glo溶液(Promega;各ウェルのONE-Gloとアッセイ培地の比1:1)をウェルに加え、10分間室温で暗所でインキュベートした。WALLAC Victor3 ELISAリーダー(PerkinElmer2030)を用いて、発光を、検出時間5秒/ウェルで検出した。
図5に示すように、評価されたすべてのSTEAP-1 TCB抗体分子はCD3を介してT細胞架橋を誘導し、その後STEAP1発現LnCAP(図5A)及び22Rv1(図5B)細胞にT細胞活性化を誘導している。STEAP1陰性CHO-K1細胞(図5C)にT細胞活性化は観察できない。
STEAP-1-及びCD3発現細胞に対するSTEAP-1 TCB抗体変異体の結合
STEAP-1 TCB抗体変異体(分子A-D)の結合を、STEAP-1発現CHO-hSTEAP1細胞(ヒトSTEAP-1を安定に発現するようにトランスフェクトされたハムスター卵巣由来の上皮細胞株)及びCD3発現Jurkat-NFAT レポーター細胞(Promega #CS176501)を用いて試験した。
簡潔には、Cell Dissociation Buffer(Gibco、#13151014)を用いて付着したCHO-hSTEAP1細胞を回収し、数え、生存率をチェックし、FACSバッファー(100μl PBS 0.1% BSA)中、2x10個の細胞/mlで再懸濁した。Jurkat懸濁細胞も回収し、数え、生存率をチェックした。100μlの細胞懸濁液(0.2x10個の細胞を含有)を、丸底96ウェルプレートにおいて30分間4℃で、漸増濃度のSTEAP-1 TCB抗体(31pM-1000nM)と共にインキュベートし、0.1%のBSAを含有する冷PBS(FACSバッファー)で二回洗浄し、4℃でさらに30分間、1:50に事前希釈したAlexa Fluor 647コンジュゲートAffiniPure F(ab’)2断片ヤギ-ヒトIgG Fcγ断片特異性二次抗体(Jackson Immuno Research Lab、Alexa Fluor 647 #109-606-008、FACSバッファー中で希釈)と共に再インキュベートし、冷PBS 0.1% BSAで二回洗浄した。
染色した細胞を、100μLの2%パラホルムアルデヒド含有FACSバッファー中に再懸濁し、4℃で30分間インキュベートして染色を固定した。最後に、細胞を4分間350×g及び4℃で遠心分離し、上清を棄て、細胞ペレットを200μlのFACSバッファーに再懸濁した。染色を、FACS Canto II(Software FACS Diva)を用いてFACSにより分析した。GraphPadPrism6を用いて結合曲線を得た(図6A、CHO-hSTEAP1細胞に対する結合;図6B、Jurkat細胞に対する結合)。
図6に示すように、評価されたすべてのSTEAP-1 TCB抗体分子は、ヒトSTEAP-1を発現するヒトCHO細胞(図6A)と、Jurkat NFAT細胞に発現されたヒトCD3(図6B)に対する濃度依存性の結合を示し、このことは、分子B-DにおけるSTEAP-1バインダーの修飾が、細胞上のSTEAP-1に対するそれらの結合に悪影響を与えないことを示唆するものである。
前述の発明は、理解を明確にする例示及び実施例によってある程度詳細に説明されているが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に引用されるすべての特許及び科学文献の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に包含される。

Claims (46)

  1. 配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、並びに配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、STEAP-1に結合する抗体。
  2. VHが、配列番号11、配列番号12及び配列番号13からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
  3. VHが、配列番号11、配列番号12及び配列番号13からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号14のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の抗体。
  4. IgG抗体である、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体。
  5. 前記IgG抗体がIgG抗体である、請求項4に記載の抗体。
  6. 完全長抗体である、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体。
  7. Fv分子、scFv分子、Fab分子、及びF(ab’)分子からなる群より選択される抗体断片である、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体。
  8. 多重特異性抗体である、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体。
  9. (a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、第1の抗原がSTEAP-1であり、第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、並びに配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなる群より選択されるHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号8のLCDR2及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、第1の抗原結合部分、並びに
    (b)第2の抗原に特異的に結合する第2の抗原結合部分
    を含む二重特異性抗原結合分子。
  10. 第1の抗原結合部分のVHが、配列番号11、配列番号12及び配列番号13からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、第1の抗原結合部分のVLが、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の二重特異性抗原結合分子。
  11. 第1の抗原結合部分のVHが、配列番号11、配列番号12及び配列番号13からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、第1の抗原結合部分のVLが、配列番号14のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の二重特異性抗原結合分子。
  12. 第2の抗原がCD3である、請求項9から11のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
  13. 第2の抗原がCD3εである、請求項9から12のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
  14. 第2の抗原結合部分が、配列番号15のHCDR1、配列番号16のHCDR2、及び配列番号17のHCDR3を含むVHと、配列番号18のLCDR1、配列番号19のLCDR2及び配列番号20のLCDR3を含むVLとを含む、請求項9から13のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
  15. 第2の抗原結合部分のVHが、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合部分のVLが、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の二重特異性抗原結合分子。
  16. 第2の抗原結合部分のVHが、配列番号21のアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合部分のVLが、配列番号22のアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の二重特異性抗原結合分子。
  17. 第1及び/又は第2の抗原結合部分がFab分子である、請求項9から16のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
  18. 第2の抗原結合部分は、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが、又は定常ドメインCLとCH1が、互いによって置き換えられているFab分子である、請求項9から17のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
  19. Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが互いによって置き換えられている、請求項18に記載の二重特異性抗原結合分子。
  20. 第1の抗原結合部分が、定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、独立してリジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸が、独立してリジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸が、独立してグルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)により置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸が、独立してグルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)Fab分子である、請求項9から19のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
  21. 第1及び第2の抗原結合部分が、互いに融合している、請求項9から20のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
  22. 第1及び第2の抗原結合部分が、ペプチドリンカーを介して互いに融合している、請求項21に記載の二重特異性抗原結合分子。
  23. 第1及び第2の抗原結合部分はそれぞれFab分子であり、(i)第2の抗原結合部分がFab重鎖のC末端において第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しているか、又は(ii)第1の抗原結合部分がFab重鎖のC末端において第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している、請求項9から22のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
  24. 第1の抗原に特異的に結合する第3の抗原結合部分を含む、請求項9から23のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
  25. 第3の抗原結合部分が第1の抗原結合部分と同一である、請求項24に記載の二重特異性抗原結合分子。
  26. 第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインを含む、請求項9から25のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
  27. 第1の、第2の、及び存在する場合は第3の抗原結合部分はそれぞれFab分子であり;
    (i)第2の抗原結合部分がFab重鎖のC末端において第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、且つ第1の抗原結合部分がFab重鎖のC末端においてFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しているか、又は(ii)第1の抗原結合部分がFab重鎖のC末端において第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、且つ第2の抗原結合部分がFab重鎖のC末端においてFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており;
    第3の抗原結合部分は、存在する場合は、Fab重鎖のC末端においてFcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している、
    請求項26に記載の二重特異性抗原結合分子。
  28. FcドメインがIgGのFcドメインである、請求項26又は27に記載の二重特異性抗原結合分子。
  29. FcドメインがIgGのFcドメインである、請求項28に記載の二重特異性抗原結合分子。
  30. FcドメインがヒトFcドメインである、請求項26から29のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
  31. Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸残基が、それよりも大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより第1のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第2のサブユニットのCH3ドメイン内部の空洞内に配置可能な***が生成され、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸残基が、それよりも小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置換され、それにより第2のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第1のサブユニットのCH3ドメイン内部の***を収容可能な空洞が生成される、請求項26から30のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
  32. Fcドメインが、Fc受容体への結合を低減する及び/又はエフェクター機能を低下させる一又は複数のアミノ酸置換を含んでいる、請求項26から31のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
  33. 請求項1から32のいずれか一項に記載の抗体又は二重特異性抗原結合分子をコードする単離されたポリヌクレオチド又は複数のポリヌクレオチド
  34. 請求項33に記載のポリヌクレオチド又は複数のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
  35. クターが発現ベクターである、請求項34に記載のベクター。
  36. 請求項33に記載のポリヌクレオチド又は複数のポリヌクレオチド又は請求項34又は35に記載のベクターを含む、宿主細胞。
  37. STEAP-1に結合する抗体又は二重特異性抗原結合分子の生成方法であって、請求項36に記載の宿主細胞を、抗体又は二重特異性抗原結合分子の発現に適した条件下で培養する工程を含む、方法。
  38. 抗体又は二重特異性抗原結合分子を回収する工程をさらに含む、請求項37に記載の方法。
  39. 請求項37又は38に記載の方法によって生成される、STEAP-1に結合する抗体又は二重特異性抗原結合分子。
  40. 請求項1から32のいずれか一項又は請求項39に記載の抗体又は二重特異性抗原結合分子と薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
  41. 医薬としての使用のための、請求項1から32のいずれか一項又は請求項39に記載の抗体又は二重特異性抗原結合分子、又は請求項40に記載の薬学的組成物。
  42. 疾患の治療における使用のための、請求項1から32のいずれか一項又は請求項39に記載の抗体又は二重特異性抗原結合分子、又は請求項40に記載の薬学的組成物。
  43. 疾患ががんである、請求項42に記載の、抗体、二重特異性抗原結合分子又は薬学的組成物。
  44. 疾患の治療のための医薬の製造における、請求項1から32のいずれか一項又は請求項39に記載の抗体又は二重特異性抗原結合分子の使用。
  45. 前記疾患ががんである、請求項44に記載の使用。
  46. がんを治療するための医薬であって、請求項1から32のいずれか一項又は請求項39に記載の抗体又は二重特異性抗原結合分子、又は請求項40に記載の薬学的組成物を含む、医薬。
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