前記包装容器における樹脂シートは、一般的なPTPに用いられる樹脂シートと同様に、ポケット部から被包装物を押し出すことができる材質から構成されていればよい。樹脂シートとしては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂からなる厚み60~400μmのシート材等を採用することができる。
樹脂シートには、周囲よりも陥没している複数のポケット部が設けられている。ポケット部は、平面視において、医薬品の錠剤やカプセル等の被収容物の形状に合致する形状を有している。
樹脂シート上には、接着剤層が設けられている。接着剤層は、単一の接着剤からなる単層構造を有していてもよく、複数の接着剤が層状に積層されてなる多層構造を有していてもよい。
接着剤層には、熱溶着が可能な接着剤の中から樹脂シートの材質に応じて選択された接着剤を使用することができる。例えば、樹脂シートがポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル系樹脂から構成されている場合、接着剤層には、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリスチレン系接着剤、変性エチレン系接着剤等の接着剤を使用することができる。また、樹脂シートがポリプロピレン系樹脂から構成されている場合、接着剤層には、ポリオレフィン系接着剤等の接着剤を使用することができる。これらの接着剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
接着剤層の一部は、蓋材のアルミニウム箔上に配置されたインキ層に接している。また、接着剤層の残部は、蓋材におけるインキ層以外の部分に接している。例えば、アルミニウム箔が、その内表面、つまり、接着剤層側の面にインキ層以外の層を有しない場合には、接着剤層の残部はアルミニウム箔に接している。また、例えば、アルミニウム箔が、その内表面に後述する第2インキ層等の、インキ層以外の層を有している場合には、接着剤層の残部は、これらの層に接している。
インキ層を有しない部分における蓋材と樹脂シートの剥離強度は、インキ層を有する部分における蓋材と樹脂シートとの剥離強度よりも高い。これにより、蓋材と樹脂シートとが接着された状態を長期間に亘って維持することができる。かかる作用効果をより高める観点から、インキ層を有しない部分における蓋材と樹脂シートの剥離強度は、7N/15mm以上である。インキ層を有しない部分における蓋材と樹脂シートの剥離強度は、10N/15mm以上であることがより好ましく、12N/15mm以上であることがさらに好ましい。
前記包装容器は、ポケット部の周囲を全周に亘って取り囲み、接着剤層とアルミニウム箔との間にインキ層を有しない環状接着部を有していることが好ましい。即ち、ポケット部の周囲の全周が接着剤層を介してアルミニウム箔に直接的に接着されているか、または、接着剤層とインキ層以外の層とを介してアルミニウム箔に間接的に接着されていることが好ましい。この場合には、何らかの理由によってインキ層と接着剤層との界面が自然に剥離した際に、環状接着部の存在により、接着剤層の剥離がポケット部まで進展することを防止することができる。その結果、ポケット部が外部空間に連通することをより効果的に抑制し、被包装物の品質をより長期間に亘って維持することができる。
環状接着部は、1か所のポケット部を取り囲むように設けられていてもよいし、2か所以上のポケット部を取り囲むように設けられていてもよい。例えば、環状接着部は、個々のポケット部を取り囲むように配置することができる。また、環状接着部は、互いに隣り合う2か所以上のポケット部を取り囲むように配置されていてもよいし、包装容器に設けられた全てのポケット部を取り囲むように配置されていてもよい。
樹脂シート上には、複数のポケット部の開口面を覆うように蓋材が配置されている。蓋材は、接着剤層を介して蓋材に接着されている。蓋材は、アルミニウム箔を有している。アルミニウム箔としては、例えば、1000系アルミニウム、3000系アルミニウム合金、8000系アルミニウム合金からなる厚み10~30μmのアルミニウム箔を使用することができる。また、前記アルミニウム箔は、硬質材であってもよく、軟質材であってもよい。
アルミニウム箔の内表面、つまり、樹脂シート側の面の一部には、少なくともインキ層が配置されている。インキ層は、蓋材を樹脂シートから引きはがした際に、接着剤層との界面において界面剥離を起こすように構成されている。これにより、包装容器を製造する際に、蓋材と樹脂シートとの接着作業における加熱温度を変更した場合においても、インキ層を有する部分における蓋材の剥離強度を概ね同等の値とすることができる。これに対し、インキ層を有しない部分においては、蓋材と樹脂シートとの接着作業における加熱温度が高くなるほど蓋材の剥離強度を高くすることができる。従って、前記包装容器は、蓋材と樹脂シートとの接着作業における加熱温度という単純な制御因子によって、樹脂シートから蓋材を剥離する際の平均的な剥離強度を容易に調整することができる。
インキ層を有する部分における蓋材と樹脂シートの剥離強度、つまり、インキ層と接着剤層との界面の剥離強度は、0.1~7N/15mmの範囲内であることが好ましく、0.5~6.5N/15mmの範囲内であることがより好ましく、2.0~6.0N/15mmの範囲内であることがさらに好ましい。この場合には、蓋材を樹脂シートから容易に引き剥がすことを可能としつつ、シート状容器と蓋材とが接着された状態を長期間に亘って維持することができる。更に、この場合には、樹脂シートから蓋材を剥離する際の平均的な剥離強度をより容易に調整することができる。
インキ層には、例えばポリオレフィン系塗料、塩化ビニル系塗料、酢酸ビニル系塗料、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系塗料、硝化綿系塗料、ポリアミド系塗料、塩化ゴム系塗料、アクリルメラミン系塗料、エポキシメラミン系塗料、ウレタン系塗料等の塗料を採用することができる。これらの塗料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
かかる観点から、例えば、樹脂シートが塩化ビニル系樹脂から構成されている場合には、接着剤層に塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体及びポリエステルのうち少なくとも1種の樹脂が含まれており、インキ層に、マレイン酸変性ポリプロピレン、硝化綿樹脂、メラミン樹脂、ブチラール樹脂及びエポキシ樹脂のうち少なくとも1種の樹脂が含まれていることが好ましい。
インキ層の形状、個数及び配置は種々の態様をとり得る。例えば、インキ層は、包装容器の積層方向から視た平面視において、円形、環状、四角形、直線あるいは曲線等の種々の形状を採り得る。また、インキ層の数は、1か所であってもよいし、複数個所であってもよい。インキ層が複数個所存在する場合には、隣り合うインキ層の間隔を一定にするなどの規則的な配置としてもよいし、無秩序に配置することもできる。
また、インキ層は、包装容器の積層方向から見た平面視において均一に配置されていてもよいし、偏って配置されていてもよい。インキ層を偏って配置する場合には、例えば、一部のインキ層の間隔を他のインキ層の間隔よりも広くする、あるいは、一部のインキ層を他のインキ層よりも広くする等の態様を採用することができる。
アルミニウム箔の内表面におけるインキ層の面積比率は、例えば20~95%とすることができる。インキ層の面積比率が大きくなると、樹脂シートから蓋材が自然に分離しやすくなり、隙間が生じやすくなる。一方、インキ層の面積比率が小さくなると、蓋材の平均的な剥離強度が上昇し、蓋材を引き剥がすことが難しくなるおそれがある。
従って、インキ層の面積比率を20~95%とすることにより、蓋材を引き剥がすことを可能としつつ、樹脂シートと蓋材とが接着された状態を長期間に亘って維持することができる。樹脂シートと蓋材とが接着された状態をより長期間に亘って維持する観点からは、インキ層の面積比率を20~70%とすることが好ましく、25~65%とすることがより好ましく、30~60%とすることが更に好ましい。
アルミニウム箔の内表面には、前記インキ層以外の層が設けられていてもよい。例えば、アルミニウム箔の内表面には、接着剤層に含まれる樹脂と同一の樹脂を含む第2インキ層が設けられていてもよい。かかる第2インキ層は、接着剤層との相溶性に優れているため、第2インキ層は、樹脂シートから蓋材を引き剥がす際に接着剤層との間で界面破壊を起こしにくい。それ故、この場合にも、第2インキ層を有しない場合と同様の作用効果を奏することができる。第2インキ層は、前記インキ層とは異なる位置に設けることができる。
また、アルミニウム箔の内表面には、上述した接着剤層及びインキ層の機能が損なわれない範囲において、白着色層、着色層、文字印刷層、柄印刷層等の、被包装物に関する情報の表示のための層や、アンカーコート層、オーバーコート層等の、上述した白着色層等の保護のための層が設けられていてもよい。これらの層は、前記インキ層とは異なる位置に設けられていてもよいし、インキ層とアルミニウム箔との間に設けられていてもよい。
アルミニウム箔の外表面、即ち樹脂シートに接着された面と反対側の面には、白着色層、着色層、文字印刷層、柄印刷層等の、被包装物に関する情報を表示する層や、アンカーコート層、オーバーコート層等の、上述した白着色層等を保護する層が設けられていてもよい。
また、アルミニウム箔の外表面上には、樹脂からなる支持フィルムが設けられていてもよい。この場合には、支持フィルムを有さない場合に比べて蓋材の引張強さをより強くすることができる。それ故、樹脂シートから蓋材を引き剥がす作業において、蓋材が千切れることをより確実に抑制することができる。
更に、この場合には、支持フィルムを有さない場合に比べて蓋材の突刺し強さをより強くすることができる。それ故、幼児が誤ってポケット部から被包装物を押し出すことを抑制するチャイルドレジスタンス機能と呼ばれる機能を前記包装容器に付与することができる。
支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリカーボネート等の、比較的耐熱性の高い樹脂からなる厚み2~16μmのフィルムを採用することができる。支持フィルムとアルミニウム箔とを接着する方法としては、例えば、ドライラミネート法やウェットラミネート法等の公知の接着方法を採用することができる。
蓋材は、直径1.0mmの半球状の先端を有する試験ツールが50mm/分の速度で押し込まれた際に、3.0~5.0Nの突刺し強さを有していることが好ましい。蓋材の突刺し強さを前記特定の範囲とすることにより、ポケット部を押し込んだ際に、幼児にとって蓋材を破断させることが難しくなる。それ故、幼児が誤ってポケット部から被包装物を押し出すことをより確実に抑制することができる。
前記包装容器は、他の方向に比べて蓋材を容易に剥離することができるイージーピール方向を有しており、接着剤層及びインキ層は、イージーピール方向に沿って延設されていてもよい。この場合には、蓋材を引き剥がす際にインキ層が接着剤層よりも先にシート状ケースから剥離する。その結果、蓋材がイージーピール方向、即ちインキ層の延設方向に沿って剥がれるように、蓋材の引き剥がし方向を誘導することができる。
(実施態様1)
前記包装容器の第1の態様を、図を用いて説明する。図1及び図2に示すように、包装容器1は、被包装物5が収容される複数のポケット部21を備えた樹脂シート2と、樹脂シート2上に積層された接着剤層3と、接着剤層3上に配置され、接着剤層3を介して樹脂シート2に積層された蓋材4と、を有している。蓋材4は、アルミニウム箔41と、アルミニウム箔41上に配置され、接着剤層3との間の一部に介在するインキ層42と、を有している。また、包装容器1は、蓋材4を樹脂シート2から引きはがした際に、接着剤層3とインキ層42との界面が界面破壊を起こすように構成されている。
図1に示すように、本態様の包装容器1は、その積層方向から視た平面視において、略長方形状を呈している。包装容器1は、一般的なPTPと同様に、ポケット部21を押し込むことにより、蓋材4を破断させつつ被包装物5をポケット部21から押し出すことができるように構成されている。包装容器1は、更に図4に示すように、樹脂シート2から蓋材4を引き剥がし、複数の被包装物5を一括してポケット部21から取り出すことができるようにも構成されている。
本態様の樹脂シート2は、ポリ塩化ビニルから構成されており、250μmの厚みを有している。図2及び図3に示すように、樹脂シート2の内表面におけるポケット部21以外の部分は、接着剤層3を介して蓋材4に接着されている。また、図2に示すように、ポケット部21の開口面211は蓋材4に覆われている。
図3に示すように、接着剤層3は、蓋材4のアルミニウム箔41及びインキ層42に接している。本態様の接着剤層3は、具体的には、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体と、ポリエステルとを含むポリ塩化ビニル用の接着剤から構成されている。
本態様の蓋材4は、アルミニウム箔41と、アルミニウム箔41の内表面411の一部に配置されたインキ層42と、アルミニウム箔41の外表面412に印刷された印刷層43と、印刷層43を覆うオーバーコート層44と、を有している。なお、便宜上、図2へのインキ層42、印刷層43及びオーバーコート層44の記載は省略した。
図3に示すように、アルミニウム箔41は、マット面が内表面411となり、ブライト面が外表面412となるように配置されている。本態様のアルミニウム箔41は、具体的には、1N30の硬質材からなり、20μmの厚みを有している。
アルミニウム箔41の内表面411には、複数個所のインキ層42が配置されている。本態様のインキ層42は、具体的には、ポリオレフィンとしてのマレイン酸変性ポリプロピレンを含むポリオレフィン系塗料から構成されている。
図1に示すように、インキ層42は、包装容器1の長手方向に延在する直線状を呈しており、包装容器1の幅方向、つまり、長手方向に直交する方向に間隔をあけて並んでいる。また、インキ層42は、アルミニウム箔41の周縁部を除く部分に配置されている。アルミニウム箔41の内表面におけるインキ層42を有しない部分は、接着剤層3に直接接着されている。
インキ層42を前述のごとく配置することにより、アルミニウム箔41の周縁部に、ポケット部21の周囲を全周に亘って取り囲み、接着剤層3とアルミニウム箔41との間にインキ層42を有しない環状接着部311を形成することができる。即ち、本態様の包装容器1においては、全てのポケット部21を取り囲むように環状接着部311が設けられており、環状接着部311においては、樹脂シート2とアルミニウム箔41とが接着剤層3を介して直接的に接着されている。
図3に示すように、印刷層43は、アルミニウム箔41の外表面412上に積層されている。印刷層43は、例えば、白着色層、着色層、文字印刷層、柄印刷層等の、被包装物5に関する情報の表示のための層として構成することができる。また、印刷層43は、これらの層のうち1種の層から構成されていてもよいし、複数の層から構成されていてもよい。
印刷層43に用いる塗料は特に限定されることはなく、例えば、塩化ビニル系塗料、酢酸ビニル系塗料、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系塗料、ポリオレフィン系塗料、硝化綿系塗料、ポリアミド系塗料、塩化ゴム系塗料、アクリルメラミン系塗料、エポキシメラミン系塗料、ウレタン系塗料等の塗料を採用することができる。本態様の印刷層43は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を含む塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系塗料から構成されている。
オーバーコート層44は、印刷層43を保護する機能を有する。オーバーコート層44を構成するコート剤としては、例えば、硝化綿系コート剤、エポキシ系コート剤、アクリル系コート剤等の、比較的耐熱性の高いコート剤を使用することができる。本態様のオーバーコート層44は、硝化綿樹脂、メラミン樹脂及びブチラール樹脂を含むコート剤から構成されている。
図4に示すように、本態様の蓋材4を樹脂シート2から引き剥がした場合、インキ層42を有しない部分においては、接着剤層3とアルミニウム箔41との界面で蓋材4が樹脂シート2から分離する。また、インキ層42を有する部分においては、接着剤層3とインキ層42との界面で蓋材4が樹脂シート2から分離する。
より詳細に説明すると、図3に示すように、インキ層42を有しない部分においては、蓋材4のアルミニウム箔41と樹脂シート2との間に接着剤層3のみが介在している。そのため、インキ層42を有しない部分には、樹脂シート2と接着剤層3との界面、及び、接着剤層3とアルミニウム箔41との界面の2つの界面が存在している。
そして、本態様のように、接着剤層3に塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とポリエステルとを含む接着剤を採用した場合には、樹脂シート2と接着剤層3との間の剥離強度よりも接着剤層3とアルミニウム箔41との間の剥離強度の方が小さくなる。そのため、樹脂シート2から蓋材4を引き剥がした場合、インキ層42を有しない部分においては、接着剤層3とアルミニウム箔41との界面で蓋材4が樹脂シート2から分離する(図4参照)。
また、図3に示すように、インキ層42を有する部分においては、樹脂シート2とアルミニウム箔41との間に接着剤層3及びインキ層42が介在している。そのため、インキ層42を有する部分には、樹脂シート2と接着剤層3との界面、接着剤層3とインキ層42との界面、及び、インキ層42とアルミニウム箔41との界面の3つの界面が存在している。
そして、接着剤層3とインキ層42とを本態様の組み合わせとした場合には、前記3つの界面のうち、接着剤層3とインキ層42との界面の剥離強度が最も弱くなる。そのため、樹脂シート2から蓋材4を引き剥がした場合、インキ層42を有する部分においては、接着剤層3とインキ層42との界面で蓋材4が樹脂シート2から分離する(図4参照)。
本態様の包装容器1は、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、予め準備したアルミニウム箔41の外表面412に塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系塗料を塗布する。塗料の塗布量は、例えば、0.1~10g/m2の範囲で適宜設定することができる。乾燥オーブンを用いてこの塗料を乾燥させ、外表面412上に印刷層43を形成する。
次に、印刷層43上にコート剤を塗布する。コート剤の塗布量は、0.1~10g/m2の範囲で適宜設定することができる。乾燥オーブンを用いてコート剤を乾燥させ、印刷層43上にオーバーコート層44を形成する。
その後、アルミニウム箔41の内表面411に、ポリオレフィン系塗料を図1に示すような縞状に塗布する。この塗料の塗布量は、0.1~10g/m2の範囲で適宜設定することができる。乾燥オーブンを用いてこの塗料を乾燥させ、内表面411の一部にインキ層42を形成する。
次いで、内表面411上に接着剤を塗布し、内表面411とインキ層42とを接着剤で被覆する。接着剤の塗布量は、例えば、1~10g/m2の範囲で適宜設定することができる。その後、乾燥オーブンを用いて接着剤を乾燥させ、接着剤層3を形成する。
その後、別途準備した樹脂シート2を蓋材4の接着剤層3に重ね合わせ、熱溶着を行うことにより、包装容器1を得ることができる。
次に、本態様の作用効果を説明する。包装容器1は、樹脂シート2と、この樹脂シート2に接着剤層3を介して接着された蓋材4とを有している。また、蓋材4は、アルミニウム箔41と、アルミニウム箔41の一部に配置され、接着剤層3との間に介在するインキ層42とを有しており、蓋材4を樹脂シート2から引きはがした際に、接着剤層3とインキ層42との界面が界面破壊を起こすように構成されている。
そのため、包装容器1における蓋材4の平均的な剥離強度、即ち使用者が樹脂シート2から蓋材4を引き剥がして被包装物5を取り出す際の剥離のしやすさに相当する剥離強度は、インキ層42を有しない部分における剥離強度とインキ層42を有する部分における剥離強度との中間の値となる。これにより、樹脂シート2から蓋材4を引き剥がす作業を可能としつつ、インキ層42を有しない部分における剥離強度をより強くすることができる。
また、蓋材4と接着剤層3との間の一部のみにインキ層42を設けることにより、インキ層42を有しない部分において蓋材4と樹脂シート2とが接着された状態を長期間に亘って維持することができる。それ故、包装容器1は、樹脂シート2からの蓋材4の自然な分離を長期間に亘って抑制することができる。更に、例えばインキ層42を有する部分において何らかの理由によって樹脂シート2から蓋材4が自然に分離した場合においても、インキ層42を有しない部分において蓋材4と樹脂シート2との接着を維持することができる。これにより、蓋材4が樹脂シート2から完全に分離することを抑制することができる。
以上の結果、包装容器1は、蓋材4を樹脂シート2から引き剥がすことを可能としつつ、樹脂シート2からの蓋材4の自然な分離を抑制することができる。また、何らかの原因で蓋材4の一部が自然に分離した場合にも、蓋材4と樹脂シート2の間の隙間の拡大を抑制することができる。その結果、ポケット部21が外部空間に連通することを抑制し、被包装物5の品質を長期間に亘って維持することができる。
更に、包装容器1は、蓋材4を樹脂シート2から引き剥がした際に、接着剤層3とインキ層42との界面が界面破壊を起こすように構成されている。これにより、包装容器1を製造する際に、蓋材4と樹脂シート2との接着作業における加熱温度を変更した場合においても、インキ層42を有する部分における蓋材4の剥離強度を概ね同等の値とすることができる。これに対し、インキ層42を有しない部分においては、蓋材4と樹脂シート2との接着作業における加熱温度が高くなるほど蓋材4の剥離強度を高くすることができる。従って、包装容器1は、蓋材4と樹脂シート2との接着作業における加熱温度という単純な制御因子によって、樹脂シート2から蓋材4を剥離する際の平均的な剥離強度を容易に調整することができる。
インキ層42には、接着剤層3に含まれる樹脂とは異なる樹脂が含まれている。これにより、蓋材4を引き剥がした際に、インキ層42と接着剤層3との界面にいて界面破壊をより確実に起こすことができる。
包装容器1は、ポケット部21の周囲を全周に亘って取り囲み、接着剤層3とアルミニウム箔41との間にインキ層42を有しない環状接着部311を有している。そのため、何らかの理由によってインキ層42と接着剤層3との界面が自然に剥離した際に、環状接着部311の存在により、接着剤層3の剥離がポケット部21まで進展することを防止することができる。その結果、ポケット部21が外部空間に連通することをより効果的に抑制し、被包装物5の品質をより長期間に亘って維持することができる。
インキ層42は、包装容器1の周縁部よりも内側において包装容器1の長手方向に延設されている。そのため、蓋材4を樹脂シート2から引き剥がす際に、包装容器1の長手方向に沿って引き剥がすことにより、幅方向に沿って引き剥がす場合よりも小さな力で蓋材4を引き剥がすことができる。このように、本態様の包装容器は、長手方向がイージーピール方向となり、長手方向に沿って蓋材4を引き剥がすように、蓋材4を引き剥がす方向を誘導することができる。
(実施態様2)
前記包装容器の第2の態様を、図5を用いて説明する。図5に示すように、包装容器102は、アルミニウム箔41と支持フィルム46とが積層された蓋材402を有していてもよい。なお、本態様以降において用いる符号のうち、既出の態様において用いた符号と同一のものは、特に説明のない限り、既出の態様における構成要素等と同様の構成要素等を表す。
図5に示すように、本態様の蓋材402は、アルミニウム箔41と、樹脂からなり、アルミニウム箔41上に設けられた支持フィルム46とを有している。支持フィルム46とアルミニウム箔41との間には、アルミニウム箔41上に積層された印刷層43と、印刷層43と支持フィルム46との間に介在するラミネート層45とが設けられている。
本態様のアルミニウム箔41は、1N30の硬質材からなり、20μmの厚みを有している。本態様の印刷層43には、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を含む塗料が使用されている。ラミネート層45は、ポリエステル-ポリウレタン樹脂を含むドライラミネート用の接着剤から構成されている。支持フィルム46は、ポリエチレンテレフタレートから構成されており、3.5μmの厚みを有している。その他は実施態様1と同様である。
本態様の包装容器102は、例えば、以下の方法により作製することができる、まず、予め準備したアルミニウム箔41の外表面412に、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を含む塗料を塗布し、この塗料を乾燥オーブンで乾燥させることにより印刷層43を形成する。
次に、印刷層43上に、ポリエステル-ポリウレタン樹脂を含むドライラミネート用の接着剤を塗布し、ラミネート層45を形成する。この接着剤の塗布量は、例えば、1~10g/m2の範囲で適宜設定することができる。
次いで、ドライラミネート法により、ラミネート層45上に支持フィルム46を貼り合わせる。
その後、実施態様1と同様に、アルミニウム箔41の内表面411上にインキ層42及び接着剤層3を順次積層することにより、包装容器102を得ることができる。
本態様の蓋材402は、樹脂からなり、アルミニウム箔41上に設けられた支持フィルム46を有している。そのため、支持フィルム46を有さない場合に比べて蓋材402の引張強さをより強くすることができる。それ故、樹脂シート2から蓋材402を引き剥がす作業において、蓋材402が千切れることをより確実に抑制することができる。
また、包装容器102は、支持フィルム46を有さない場合に比べて蓋材402の突刺し強さをより強くすることができる。それ故、チャイルドレジスタンス機能、即ち幼児が誤ってポケット部21から被包装物5を押し出すことを抑制する機能を包装容器102に付与することができる。その他、本態様の包装容器102は、実施態様1と同様の作用効果を奏する。
(実験例)
本例では、接着剤層3に含まれる樹脂と、インキ層42に含まれる樹脂との組み合わせを種々変更した場合の剥離の態様を評価する。本例において使用する接着剤層3及びインキ層42は、表1に示す通りである。
本例において作製した試験材の作製方法を以下に説明する。
まず、1N30の硬質材からなり、20μmの厚みを有するアルミニウム箔41を準備する。このアルミニウム箔41の外表面412に、塗布量が1.5g/m2となるように硝化綿、メラミン樹脂及びブチラール樹脂を含むコート剤を塗布する。その後、乾燥オーブンを用いてコート剤を乾燥させ、アルミニウム箔41上に直接オーバーコート層44を形成する。
次に、アルミニウム箔41の内表面411上に、塗布量が1.0g/m2となるように塗料を塗布する。その後、乾燥オーブンを用いて塗料を乾燥させ、内表面411上にインキ層42を形成する。
その後、インキ層42上に、塗布量が3.5g/m2となるように接着剤を塗布する。その後、乾燥オーブンを用いて接着剤を乾燥させ、インキ層42上に接着剤層3を形成する。
本例においては、接着剤層3に含まれる樹脂とインキ層42に含まれる樹脂とを表2に示すように組み合わせることにより、試験材S1~S6を準備する。
次に、ポリ塩化ビニルからなる厚み250μmの樹脂シート及びポリプロピレンからなる厚み300μmの樹脂シートを準備する。これらの樹脂シートと試験材S1~S6とを表2に示す組み合わせで重ね合わせ、熱溶着により両者を接着する。熱溶着には株式会社安田精機製作所製No.212YSSヒートシーラーを使用する。熱溶着時の加熱温度は表2に示す温度とし、圧力は0.1MPaとし、加圧時間は1秒とする。
熱溶着によって得られた積層体から幅15mmの短冊状試験片を採取する。この短冊状試験片を用い、以下の手順で試験材の剥離強度を測定する。なお、剥離強度の測定には、例えば、万能試験機(株式会社島津製作所製オートグラフ(登録商標)AG-X)を使用することができる。
まず、図6に示すように、短冊状試験片100の樹脂シート200における長手方向の両端201(201a、201b)を治具61に固定する。この短冊状試験片100の長手方向の一端201aから試験材400を引き剥がし、クロスヘッド62に固定する。そして、クロスヘッド62を長手方向と平行な方向に移動させ、剥離角度が180°となるように試験材400を引き剥がす(矢印621)。クロスヘッド62の移動速度は200mm/分とする。
クロスヘッド62を移動させている間、クロスヘッド62に加わる荷重をロードセルにより測定し、得られた荷重の平均値を樹脂シート200からの試験材400の剥離強度(N/15mm)とする。以上の測定を各試験材400について3回ずつ実施し、3回の測定により得られた剥離強度の平均値を表2に示す。また、表2の「剥離位置」には、150℃のシール温度で熱溶着を行った積層体において、試験材400と樹脂シート200との剥離が起こった位置を記載した。
また、図7に、各試験材における剥離強度の平均値を縦軸にプロットし、熱溶着時の加熱温度を横軸にプロットしたグラフを示す。
表1及び表2に示すように、試験材S1~S3におけるインキ層42に含まれる樹脂は、接着剤層3に含まれる樹脂とは異なっている。表2に示すように、これらの試験材においては、インキ層42と接着剤層3との界面において界面破壊が起こり、蓋材4がインキ層42と接着剤層3との界面で樹脂シート200から剥離する。また、図7に示したグラフによれば、これらの試験材は、シール温度を変更した場合にも概ね同等の剥離強度を示すことが理解できる。
一方、表1及び表2に示すように、試験材S4~S6におけるインキ層42には、接着剤層3に含まれる樹脂と同一の樹脂が含まれている。表2に示すように、これらの試験材における剥離の態様は、アルミニウム箔41とインキ層42との界面における界面破壊や、アルミニウム箔41とインキ層42との界面における界面破壊と、接着剤層3の凝集破壊とが混在した態様となる。また、図7に示したグラフによれば、試験材S4及び試験材S5については、少なくとも100℃~150℃の範囲において、シール温度を高くするほど剥離強度が高くなる傾向を示すことが理解できる。また、試験材S6については、150℃以上の範囲において樹脂シート200との剥離強度が十分に高くなることが理解できる。
これらの結果から、アルミニウム箔41の内表面411の一部にインキ層42を設けるとともに、蓋材4を樹脂シート2から引き剥がした際に、接着剤層3とインキ層42との界面が界面破壊を起こすように構成することにより、インキ層42を有する部分の剥離強度を、インキ層42を有しない部分よりも弱くできることが理解できる。
また、図7に示すように、接着剤層3とインキ層42とを、両者の界面が界面破壊を起こすように構成することにより、蓋材4と樹脂シート2との接着作業における加熱温度を変更した場合においても、インキ層42を有する部分における蓋材4の剥離強度を概ね同等の値とすることができる。これに対し、インキ層42を有しない部分においては、蓋材4と樹脂シート2との接着作業における加熱温度を高くすることにより、蓋材4の剥離強度を高くすることができる。
本発明に係る包装容器は、上述した実施態様及び実験例の態様に限定されるものではなく、その趣旨を損なわない範囲において適宜構成を変更することができる。例えば、実施態様1~2においては、蓋材4の引き剥がし方向を包装容器1の長手方向に誘導するインキ層42の配置の例を示したが、インキ層42との配置はこれに限られるものではない。
例えば図8に示すように、インキ層42とは、包装容器1の長手方向に対して傾いた方向に延設されていてもよい。この場合には、インキ層42の延設方向がイージーピール方向となり、蓋材4の引き剥がし方向をイージーピール方向に誘導することができる。
また、インキ層42の配置の態様は、例えば、円形を呈する多数のインキ層42が等間隔に配置された態様(図9参照)や、インキ層42が格子状に配置された態様(図10参照)、ポケット部21の周縁部から若干離れた位置にインキ層42を設け、ポケット部21の周縁部に環状接着部311を形成する態様(図11参照)とすることができる。また、インキ層42は、例えば図12に示すように、包装容器1の長手方向における一方の端部に偏って配置された態様としてもよい。また、図13に示すように、ポケット部21の周縁部から若干離れた位置に環状接着部311を配置してもよい。
包装容器1における樹脂シート2には、樹脂シート2を小片に分割するための分割線22が設けられていてもよい。分割線22は、例えば、樹脂シート2を貫通して形成されたミシン目であってもよいし、樹脂シート2の厚み方向に入れられたノッチであってもよい。樹脂シート2が分割線22を有する場合には、例えば、図14に示すように、インキ層42が分割線22と重ならないように配置してもよいし、図15に示すように、分割線22と重なるようにインキ層42を配置するとともに、当該インキ層42の両側にインキ層を有しない部分を配置してもよい。
分割線22がミシン目である場合には、例えば図16に示すように、分割線22上に、ポケット部21の近傍において幅が太くなり、ポケット部21から離れるほど幅が細くなるように、インキ層42を有しない部分を設けることもできる。
また、環状接着部311は、例えば図16及び図17に示すように、包装容器1の外周縁部の全周に亘って配置されていてもよい。樹脂シート2が分割線22を有する場合には、環状接着部311を分割線22上または分割線22の両側に加えて包装容器1の外周縁部の全周にも配置することにより、分割後の包装容器1の各小片において、ポケット部21の外周全体に環状接着部311を配置することができる。その結果、包装容器1を小片に分割した後においても樹脂シート2と蓋材4との接着を維持することができる。
また、図18及び図19に示すように、包装容器1の長手方向における中央部の分割線22a上にインキ層42を配置し、他の分割線22b上にインキ層42を有しない部分を配置することもできる。
また、図8、図9、図11及び図12~図19に示した態様は、1か所以上のポケット部21において、環状接着部311が各ポケット部21の周囲に全周に亘って配置されている。そのため、当該ポケット部21が外部空間に連通することをより効果的に抑制し、被包装物5の品質をより長期間に亘って維持することができる。
更に、上述した実施態様1~2や図8~図12に示した態様における接着剤層3とインキ層42とを入れ替えた態様とすることも可能である。