JP7239139B2 - 肝硬変の診断方法、非アルコール性脂肪肝炎及び肝細胞がんの合併症の診断方法並びに非アルコール性脂肪肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の診断方法 - Google Patents

肝硬変の診断方法、非アルコール性脂肪肝炎及び肝細胞がんの合併症の診断方法並びに非アルコール性脂肪肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の診断方法 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 平成30年3月20日、一般財団法人 日本消化器病学会 発行の「第104回日本消化器病学会総会抄録集{日本消化器病学会雑誌 第115巻臨時増刊号(総会)}、第A100頁」にて発表及び、平成30年4月19日、第104回日本消化器病学会総会〈京王プラザホテル(東京都新宿区西新宿2-2-1)〉 において発表
本発明は、肝硬変の診断方法、非アルコール性脂肪肝炎及び肝細胞がんの合併症の診断方法、非アルコール性脂肪肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の診断方法、並びに、肝線維化の重篤度判定方法に関するものである。
(慢性肝疾患及び肝硬変)
慢性肝疾患では、肝内炎症と肝細胞障害が持続し、それに伴い肝線維化が進展し、終末状態では肝硬変に至る(参照:非特許文献1)。肝硬変では、門脈圧亢進症による食道静脈瘤破裂など様々な重篤な合併症発症、さらに肝不全へ進行する。
また、肝硬変は、肝細胞癌発生の高危険状態である。これらのため、肝硬変では、生活の質の著しい低下、予後の悪化が大きな問題である。慢性肝疾患には、B型ウイルス肝炎、C型ウイルス肝炎、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎等がある。
(非アルコール性脂肪性肝疾患)
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:non alcoholic fatty liver disease)は、アルコールの飲酒歴がないにも関わらず、アルコール性肝炎類似の大滴性の脂肪沈着を呈する疾患である。NAFLDは、肥満やメタボリック症候群人口の増加に伴い、わが国のみならず世界中に多くの患者がいる。
NAFLDには、肝炎を伴わない単純性脂肪肝(SS:simple steatosis)と、炎症や肝細胞障害を伴い肝硬変へ進展する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:non alcoholic steatohepatitis)が含まれる。
(非アルコール性脂肪性肝炎)
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、進行性で肝硬変や肝癌の発生母地になり得、肝線維化が病態の進展と関連している。しかし、血清学的にNASHの診断や病態の進展を正確に評価できるマーカーはなく、病理学的な評価が最も正確であるとされている。
(先行技術)
以下の先行技術が知られている。
特許文献1では、「被験者の生体試料における、sCD40、HMGB1、sPLA2groupIIA及びsPLA2活性からなる群より選ばれる1以上の因子をマーカーとして測定する工程を含む、非アルコール性脂肪肝炎の検出を補助するための方法」を開示している。しかし、特許文献1に記載の非アルコール性脂肪性肝炎関連マーカーは、本発明の測定対象とは異なり、さらに非アルコール性脂肪性肝炎と単純性脂肪肝ではない健常者との比較により得られたものである。
WO2011/046204号公報
Amico,G.D.et al. Natural history and prognostic indicators of survival incirrhosis: Asystematic review of 118 studies.44, 217-231 (2006)
本発明者らは、肝硬変の診断方法、非アルコール性脂肪肝炎及び肝細胞がんの合併症の診断方法、非アルコール性脂肪肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の診断方法、又は、肝線維化の重篤度判定方法を開発することを課題とした。
本発明者らは、上記課題を解決するために、遺伝子発現解析から得られたAKR1B10が血清学的に肝硬変、非アルコール性脂肪性肝炎合併症の診断や肝線維化の進展の評価に有用であることを確認した。さらに、AKR1B10及びM2BPGiの組み合わせがNASH合併症の予測及び肝線維化の進展の評価に有用であることを確認した。これにより、本発明を完成した。
本発明は以下からなる。
1.生物学的試料中のAKR1B10のタンパク質濃度若しくは遺伝子の発現レベルを測定する工程を含む、肝硬変の診断方法又は診断補助方法。
2.さらに、M2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)を測定する工程を含む前項1に記載の方法。
3.前記生物学的試料が非アルコール性脂肪肝炎患者から単離された試料である前項1又は2に記載の方法。
4.前記生物学的試料が血清である前項1~3のいずれか1に記載の方法。
5.生物学的試料中のAKR1B10のタンパク質濃度若しくは遺伝子の発現レベル、及びM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)を測定する工程を含む、非アルコール性脂肪肝炎及び肝細胞がんの合併症の診断方法又は診断補助方法。

6.前記生物学的試料が非アルコール性脂肪肝炎患者から単離された試料である前項5に記載の方法。
7.前記生物学的試料が血清である前項5又は6に記載の方法。
8.生物学的試料中のAKR1B10のタンパク質濃度若しくは遺伝子の発現レベル、及び/又はM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)を測定する工程を含む、非アルコール性脂肪肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の診断方法又は診断補助方法。
9.前記生物学的試料が非アルコール性脂肪肝炎患者から単離された試料である前項8に記載の方法。
10.前記生物学的試料が血清である前項10又は11に記載の方法。
11.肝線維化の重篤度判定方法又は判定補助方法であって、(1)非アルコール性脂肪肝炎患者から単離された血清試料において、AKR1B10のタンパク質濃度若しくは遺伝子の発現レベル及び/又はM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)を測定すること、並びに(2)前記(1)において測定したタンパク質濃度若しくは遺伝子の発現レベルと、肝線維化のステージとを相関付けることを含む、方法。
12.前記(2)における、測定した遺タンパク質濃度若しくは遺伝子の発現レベルと肝線維化とを相関付けることが、測定したタンパク質濃度若しくは遺伝子の発現レベルとカットオフ値との比較により行われる、前項11に記載の方法。
13.抗AKR1B10抗体若しくは抗体フラグメント及び/又はM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)の検出試薬を含む、肝硬変診断薬。
14.抗AKR1B10抗体若しくは抗体フラグメント及びM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)の検出試薬を含む、非アルコール性脂肪肝炎及び肝細胞がんの合併症診断薬。
15.抗AKR1B10抗体若しくは抗体フラグメント及び/又はM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)の検出試薬を含む、非アルコール性脂肪肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症診断薬。
本発明は、肝硬変の診断方法、非アルコール性脂肪肝炎及び肝細胞がんの合併症の診断方法、非アルコール性脂肪肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の診断方法、並びに、肝線維化の重篤度判定方法を提供することができる。
肝線維化ステージごとのAKR1B10値。 肝線維化ステージ4のAKR1B10指標。 肝線維化ステージごとのM2BPGi値。 肝線維化ステージ4のM2BPGi指標。 食道胃静脈瘤合併の有無とAKR1B10指標。 肝線維化ステージ4のAKR1B10カットオフ値及びM2BPGiカットオフ値による比較。A(-)M(-)とA(+)M(+)は、それぞれAKR1B10及びM2BPGiの両方陰性群と両方陽性群を示す。 肝線維化ステージ4のAKR1B10及びM2BPGiの両方陽性群とM2BPGiの単独陽性群による比較。M(-)及びM(+)は、それぞれM2BPGiの単独陰性群及び単独陽性群を示す。 AKR1B10及びM2BPGiとNASH-HCC合併症との関連性評価1。 AKR1B10及びM2BPGiとNASH-食道胃静脈瘤合併症との関連性評価。 AKR1B10及びM2BPGiとNASH-HCC合併症との関連性評価2。グラフの横軸は、HCCと診断された日を0日目とした期間(日)(Interval from HCC diagnosis, Days)を示す。グラフの縦軸は、各群の0日目の生存者数を100%とした場合の各期間における生存率(Overall survival, %)を示す。グラフの下のPatients at riskは、0、500、1000、1500、2000、2500日目における追跡患者数を示す。
(本発明の測定対象)
本発明で使用する測定対象(マーカー)は、AKR1B10、又は、AKR1B10及びM2BPGiの組み合わせからなる。
(AKR1B10:Aldo-keto reductase family 1 member B10)
AKR1B10は、アルドケト還元酵素(aldo-keto reductase:AKR)スーパーファミリーの一員で、NADPH依存性還元酵素である。また、AKR1B10は、レチノイドやイソプレノイドなどの還元代謝を介してがん細胞増殖に関わり、酸化ストレス由来の脂質過酸化によって生じるカルボニル化合物の解毒(がん細胞の生存や抗がん剤耐性化)に関与している。また、AKR1B10は、最初に非小細胞肺がんでの高発現が報告されて以来、肝がん、胆管がん、子宮がんなど多くのがん種でAKR1B10が高発現していることが報告されている。
(M2BPGi:Mac-2 binding protein glycan isomer)
M2BPGi(Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体)は、肝臓、慢性B型肝炎等の繊維化マーカーとして研究されている。
M2BPGiは、M2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)の検出試薬により測定できる。M2BPGiの検出試薬は、市販の試薬を用いてもよく、例えばMac-2結合蛋白(M2BP)糖鎖修飾異性体キット(シスメックス株式会社)のHISCLTM M2BPGiTM試薬が挙げられる。
(本発明の測定対象)
本発明の測定対象(マーカー)は、被験者から得られた生体試料(生物学的試料)で検出、定量、及び/又は活性等を測定することができれば、遺伝子(DNA、cDNA、RNA、mRNAも含む)、タンパク質(その断片も含む)、該タンパク質活性のいずれも測定対象とすることができるが、好ましくはタンパク質濃度、RNA濃度、mRNA濃度、より好ましくはタンパク質濃度を測定対象とする。
(本発明の方法)
本発明は、以下の肝硬変若の診断方法又は診断補助方法、非アルコール性脂肪性肝炎合併症の診断方法又は診断補助方法、並びに肝線維化の重篤度判定方法を対象とする。
〇生物学的試料中のAKR1B10のタンパク質濃度若しくは遺伝子の発現レベルを測定する工程を含む、肝硬変の診断方法又は診断補助方法。
〇生物学的試料中のAKR1B10のタンパク質濃度若しくは遺伝子の発現レベル、及びM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)を測定する工程を含む、肝硬変の診断方法又は診断補助方法。
〇生物学的試料中のAKR1B10のタンパク質濃度若しくは遺伝子の発現レベル、及びM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)を測定する工程を含む、非アルコール性脂肪肝炎及び肝細胞がんの合併症の診断方法又は診断補助方法。
〇生物学的試料中のAKR1B10のタンパク質濃度若しくは遺伝子の発現レベル、及び/又はM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)を測定する工程を含む、非アルコール性脂肪肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の診断方法又は診断補助方法。
〇肝線維化の重篤度判定方法であって、(1)非アルコール性脂肪肝炎患者から単離された血清試料において、AKR1B10のタンパク質濃度若しくは遺伝子の発現レベル及び/又はM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)を測定すること、並びに(2)前記(1)において測定したタンパク質濃度若しくは遺伝子の発現レベルと、肝線維化のステージとを相関付けることを含む、方法。
M2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)を測定する工程における測定方法は、M2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)を測定することができれば、特に限定されないが、例えばM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)の検出試薬を用いて測定することができる。
肝線維化の重篤度とは、病理学的には、Brunt分類(Grading、Staging)、Matteoni分類、NAFLD activity scoreで評価することができ、好ましくはBrunt分類のStaging(ステージ1からステージ4)で評価することができる。
(非アルコール性脂肪性肝炎)
本発明において、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)とは、アルコールに起因しない肝臓に脂肪が蓄積することで起こる肝炎を対象とするが、単純性脂肪肝とは異なることを意味する。
(本発明の対象)
本発明の対象となる被験者は、哺乳類全般(ヒト、ネコ、イヌ、ウマを含む)を含み、さらに、健常者、非アルコール性脂肪性肝炎の患者、該肝炎の疑いがある人、該肝炎が将来発生する人、肝硬変の患者、肝硬変の疑いがある人、肝硬変が将来発生する人、非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症の患者、該合併症の疑いがある人、該合併症が将来発生する人、非アルコール性脂肪性肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の患者、該合併症の疑いがある人、該合併症が将来発生する人、脂肪肝の患者、脂肪肝の疑いがある人、脂肪肝が将来発生する人を含むが、好ましくは非アルコール性脂肪性肝炎の患者である。
(本発明の試料)
本発明の試料は、各測定対象(マーカー)となる遺伝子及び/又はタンパク質が含まれていれば特に限定されないが、好ましくは血液、血液成分、血液中の細胞外小胞、血清、より好ましくは血清である。
(タンパク質の測定・検出方法)
本発明の測定対象(マーカー)がタンパク質である場合、特に限定されないが、自体公知のタンパク質の測定方法(検出、定量、活性)を利用することができる。例えば、タンパク質に特異的に結合する抗体やアプタマー等を用いることができ、抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、2つのエピトープを同時に認識することができる二機能性抗体等を例示できる。これらの抗体は、慣用のプロトコルにより抗原を使用してとし作製することができる。また、アプタマーとは、タンパク質、アミノ酸等の分子に特異的に結合する核酸分子である。
上記タンパク質に特異的に結合する抗体を用いて、被検試料中に存在するポリペプチド又はタンパク質を測定、検出又は定量する場合、ELISA(Enzyme-LikedImmunosorbent Assay)法、免疫沈降法、電気化学発光法、RIA(radioimmunoassay)法、蛍光抗体法等の公知の免疫学的方法を用いることができるが、好ましくはELISA法を用いる。
(遺伝子の測定・検出方法)
本発明の測定対象(マーカー)が遺伝子である場合、遺伝子を測定・検出する方法としては、該遺伝子に特異的に結合するプローブ用の標識化ヌクレオチド、標識化cDNA又は標識化RNAを用いたノーザンブロット法、ドットブロット法、又はmRNAを直接測定する方法等を用いることができる。PCR法としては、リアルタイムPCR法、競合PCR法等も挙げることができる。
さらに、DNAマイクロアレイ、DNAチップ、又は抗体アレイ等が挙げられる。DNAマイクロアレイ又はDNAチップには該遺伝子のヌクレオチド又はcDNAが少なくとも1つ以上固定化されているものを用いる。なお、ヌクレオチド又はcDNAは、該遺伝子の一部に相当する部分でもよい。
(本発明のカットオフ値)
本発明は、「被験者由来生体試料の各測定対象(マーカー)のカットオフ値」を予め設定することができる。「被験者由来生体試料の各測定対象(マーカー)のカットオフ値」は、Brunt分類のStagingのステージ4を有する非アルコール性脂肪性肝炎患者由来生体試料中の各測定対象(マーカー)の平均値、Brunt分類のStagingのステージ1~3を有する非アルコール性脂肪性肝炎患者由来生体試料中の各測定対象(マーカー)の平均値、又は、健常者由来生体試料中の各測定対象(マーカー)の平均値から算出することができる。
Cut off(カットオフ)値の設定方法としては、Brunt分類のStagingのステージ4を有する非アルコール性脂肪性肝炎患者由来生体試料中の各測定対象(マーカー)の平均値、Brunt分類のStagingのステージ1~3を有する非アルコール性脂肪性肝炎患者由来生体試料中の各測定対象(マーカー)の平均値、及び/又は、健常者由来生体試料中の各測定対象(マーカー)の平均値から算出する。通常、予め設定したカットオフ値(さらには、標準偏差±70%以内、標準偏差±50%以内、標準偏差±30%以内、標準偏差±20%以内、又は標準偏差±50%以内)以上の場合には、陽性と判定できる。
また、別のカットオフ値の設定方法としては、非アルコール性脂肪性肝炎歴のある被験者及び/又は被験者において、被験者由来生体試料の各測定対象(マーカー)を測定して得られた値に基づき、市販の統計解析ソフトを使用してROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を作成し、最適な感度及び特異度を求める。例えば、一次スクリーニング等の目的では感度が高い方を優先し、精査目的では特異度が高くなるようなカットオフ値を設定することが可能である。
(肝硬変の指標)
本発明は、肝硬変を有する患者(Brunt分類のStagingのステージ4を有する非アルコール性脂肪性肝炎患者)と肝硬変を有さない人(特に、単純性脂肪肝、健常者、Brunt分類のStagingのステージ1~3を有する非アルコール性脂肪性肝炎患者等)を区別するために、予め設定した「被験者由来生体試料の各測定対象(マーカー)のカットオフ値」を肝硬変の指標とすることができる。
例えば、測定値が、予め設定した「被験者由来生体試料の各測定対象(マーカー)カットオフ値(さらには、標準偏差±70%以内、標準偏差±50%以内、標準偏差±30%以内、標準偏差±20%以内、又は標準偏差±50%以内)」以上の場合には、肝硬変が今後発症する、現在発症している、進行していること(可能性があること)又は発症後の予後が不良の可能性が高いことを判定できる。
肝硬変の指標となる血清AKR1B10のタンパク質濃度のカットオフ値(さらには、標準偏差±70%以内、標準偏差±50%以内、標準偏差±30%以内、標準偏差±20%以内、又は標準偏差±50%以内)は、特に限定されないが、例えば、0.50、0.80、1.00、1.10、1.20、1.30、1.40、1.50、2.00、2.50、またはそれらの間の任意の数値であってもよく、好ましくは1.30である。肝硬変の指標となる血清M2BPの糖鎖構造変化(血清M2BPGi)のカットオフ値は、特に限定されないが、例えば、1.50、2.00、2.80、2.90、3.00、3.11、3.20、3.30、4.00、5.00、またはそれらの間の任意の数値であってもよく、好ましくは3.11である。
(非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症の指標)
本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症を有する患者と該合併症を有さない人(特に、肝細胞がんを発症していない非アルコール性脂肪性肝炎患者、単純性脂肪肝、健常者等)を区別するために、予め設定した「被験者由来生体試料の各測定対象(マーカー)のカットオフ値」を非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症の指標とすることができる。
例えば、測定値が、予め設定した「被験者由来生体試料の各測定対象(マーカー)のカットオフ値」以上の場合には、非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症が今後発症する、現在発症している、進行していること(可能性があること)又は発症後の予後が不良の可能性が高いことを判定できる。
非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症の指標となる血清AKR1B10のタンパク質濃度のカットオフ値(さらには、標準偏差±70%以内、標準偏差±50%以内、標準偏差±30%以内、標準偏差±20%以内、又は標準偏差±50%以内)は、特に限定されないが、例えば、0.50、0.80、1.00、1.10、1.20、1.30、1.40、1.50、2.00、2.50、またはそれらの間の任意の数値であってもよく、好ましくは1.30である。非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症の指標となる血清M2BPの糖鎖構造変化(血清M2BPGi)のカットオフ値は、特に限定されないが、例えば、1.50、2.00、2.80、2.90、3.00、3.11、3.20、3.30、4.00、5.00、またはそれらの間の任意の数値であってもよく、好ましくは3.11である。
(非アルコール性脂肪性肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の指標)
本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症を有する患者と該合併症を有さない人(特に、食道胃静脈瘤を発症していない非アルコール性脂肪性肝炎患者、単純性脂肪肝、健常者等)を区別するために、予め設定した「被験者由来生体試料の各マーカーのカットオフ値」を非アルコール性脂肪性肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の指標とすることができる。
例えば、測定値が、予め設定した「被験者由来生体試料の各マーカーのカットオフ値」以上の場合には、非アルコール性脂肪性肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症が今後発症する、現在発症している、進行していること(可能性があること)又は発症後の予後が不良の可能性が高いことを判定できる。
非アルコール性脂肪性肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の指標となる血清AKR1B10のタンパク質濃度のカットオフ値(さらには、標準偏差±70%以内、標準偏差±50%以内、標準偏差±30%以内、標準偏差±20%以内、又は標準偏差±50%以内)は、特に限定されないが、例えば、0.50、0.80、1.00、1.10、1.20、1.30、1.40、1.50、2.00、2.50、またはそれらの間の任意の数値であってもよく、好ましくは1.30である。非アルコール性脂肪性肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の指標となる血清M2BPの糖鎖構造変化(血清M2BPGi)のカットオフ値は、特に限定されないが、例えば、1.50、2.00、2.80、2.90、3.00、3.11、3.20、3.30、4.00、5.00、またはそれらの間の任意の数値であってもよく、好ましくは3.11である。
(肝線維化の重篤度の指標)
本発明は、予め設定した「被験者由来生体試料の各測定対象(マーカー)のカットオフ値」を肝線維化の重篤度の指標とすることができる。
例えば、測定値が、予め設定した「被験者由来生体試料の各測定対象(マーカー)のカットオフ値」以上の場合には、肝線維化の重篤度、すなわち、Brunt分類(Grading、Staging)、Matteoni分類、NAFLD activity scoreで評価される分類、好ましくはBrunt分類のStagingで評価される分類が重篤であることを判定でき、より好ましくは、Brunt分類のStagingが今後ステージ4に至る、肝線維化が進行していること(可能性があること)又は現在ステージ4であることを判定できる。
また、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症、又は非アルコール性脂肪性肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の治療評価において、予め設定した「被験者由来生体試料の各マーカーのカットオフ値(さらには、標準偏差±70%以内、標準偏差±50%以内、標準偏差±30%以内、標準偏差±20%以内、又は標準偏差±50%以内)」以下の場合には、現在行っている治療方法が好ましい(効果がある、継続する、予後良好)と判定できる。
肝線維化の重篤度の指標となる血清AKR1B10のタンパク質濃度のカットオフ値は、特に限定されないが、Brunt分類のStagingのステージ4の指標を用いてもよく、例えば、Brunt分類のStagingのステージ4の数値及びそれ以外のステージ(ステージ1~3)の数値から算出され、0.50、0.80、1.00、1.10、1.20、1.30、1.40、1.50、2.00、2.50、またはそれらの間の任意の数値であってもよく、好ましくは1.30である。肝線維化の重篤度の指標の指標となる血清M2BPの糖鎖構造変化(血清M2BPGi)のカットオフ値は、特に限定されないが、Brunt分類のStagingのステージ4の指標を用いてもよく、例えば、Brunt分類のStagingのステージ4の数値及びそれ以外のステージ(ステージ1~3)の数値から算出され、1.50、2.00、2.80、2.90、3.00、3.11、3.20、3.30、4.00、5.00、またはそれらの間の任意の数値であってもよく、好ましくは3.11である。
Brunt分類のStagingのステージ1の指標となる血清AKR1B10のタンパク質濃度のカットオフ値は、ステージ1の数値及び隣接するステージ(ステージ2)内の数値から算出されてもよく、特に限定されないが、例えば、0、0002、またはそれらの間の任意の数値であってもよい。Brunt分類のStagingのステージ1の指標となる血清M2BPの糖鎖構造変化(血清M2BPGi)のカットオフ値は、ステージ1の数値及び隣接するステージ内の数値から算出されてもよく、特に限定されないが、例えば、0、0.860、またはそれらの間の任意の数値であってもよい。
Brunt分類のStagingのステージ2の指標となる血清AKR1B10のタンパク質濃度のカットオフ値は、ステージ2の数値及び隣接するステージ(ステージ1及び3)内の数値から算出されてもよく、特に限定されないが、例えば、0.002、0.003、またはそれらの間の任意の数値であってもよい。Brunt分類のStagingのステージ2の指標となる血清M2BPの糖鎖構造変化(血清M2BPGi)のカットオフ値は、ステージ2の数値及び隣接するステージ内の数値から算出されてもよく、特に限定されないが、例えば、0.860、2.870、またはそれらの間の任意の数値であってもよい。
Brunt分類のStagingのステージ3の指標となる血清AKR1B10のタンパク質濃度のカットオフ値は、ステージ3の数値及び隣接するステージ(ステージ2及び4)内の数値から算出されてもよく、特に限定されないが、例えば、0.003、1.300であってもよい。Brunt分類のStagingのステージ3の指標となる血清M2BPの糖鎖構造変化(血清M2BPGi)のカットオフ値は、ステージ3の数値及び隣接するステージ内の数値から算出されてもよく、特に限定されないが、例えば、2.870、4.300、またはそれらの間の任意の数値であってもよい。
本発明の肝硬変の診断方法又は診断補助方法は、例えば、以下の工程を有する。
(1)被験者から得られた生体試料中の各マーカーであるAKR1B10、又は、AKR1B10及びM2BPGiを測定する。
(2)各マーカーの測定値を、肝硬変の指標と比較する。
(3)各マーカーの測定値が該指標よりも高い場合には、肝硬変であると判定する。
なお、指標は、Brunt分類のStagingのステージ4を有する非アルコール性脂肪性肝炎患者由来生体試料中の各マーカーの平均値を採用することが好ましい。
本発明の非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症の診断方法又は診断補助方法は、例えば、以下の工程を有する。
(1)被験者から得られた生体試料中の各マーカーであるAKR1B10及びM2BPGiを測定する。
(2)各マーカーの測定値を、非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症の指標と比較する。
(3)各マーカーの測定値が該指標よりも高い場合には、非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症であると判定する。
なお、指標は、Brunt分類のStagingのステージ4を有する非アルコール性脂肪性肝炎患者由来生体試料中の各マーカーの平均値を採用することが好ましい。
本発明の非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症の予後の検査方法は、例えば、以下の工程を有する。
(1)被験者から得られた生体試料中の各マーカーであるAKR1B10及びM2BPGiを測定する。
(2)各マーカーの測定値を、非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症の指標と比較する。
(3)各マーカーの測定値が該指標よりも高い場合には、予後不良と判定する。
なお、指標は、Brunt分類のStagingのステージ4を有する非アルコール性脂肪性肝炎患者由来生体試料中の各マーカーの平均値を採用することが好ましい。
(予後)
本発明の「予後」とは、本発明の診断方法又は診断補助方法による診断後の生存率、好ましくは本発明の非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症の診断方法又は診断補助方法による診断後の生存率、より好ましくは本発明の非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症の診断方法又は診断補助方法による診断後の約500日、約1000日、約1500日、約2000日、約2500日、約3000日での生存率、さらに好ましくは本発明の非アルコール性脂肪性肝炎及び肝細胞がんの合併症の診断方法又は診断補助方法による診断後の約500日、約1000日、約1500日、約2000日、約2500日、約3000日での該合併症特異的生存率を意味する。
本発明の非アルコール性脂肪性肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の診断方法又は診断補助方法は、例えば、以下の工程を有する。
(1)被験者から得られた生体試料中の各マーカーであるAKR1B10、又は、AKR1B10及びM2BPGiを測定する。
(2)各マーカーの測定値を、非アルコール性脂肪性肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の指標と比較する。
(3)各マーカーの測定値が該指標よりも高い場合には、非アルコール性脂肪性肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症であると判定する。
なお、指標は、Brunt分類のStagingのステージ4を有する非アルコール性脂肪性肝炎患者由来生体試料中の各マーカーの平均値を採用することが好ましい。
本発明の肝線維化の重篤度判定方法は、例えば、以下の工程を有する。
(1)被験者から得られた生体試料中の各マーカーであるAKR1B10、又は、AKR1B10及びM2BPGiを測定する。
(2)各マーカーの測定値を、肝線維化の重篤度の指標と比較する。
(3)各マーカーの測定値が該指標よりも高い場合には、肝線維化が重篤(進行している)と判定する。
なお、指標は、Brunt分類のStagingのステージ4を有する非アルコール性脂肪性肝炎患者由来生体試料中の各マーカーの平均値を採用することが好ましい。
本発明の非アルコール性脂肪性肝炎の治療評価判定方法は、例えば、以下の工程を有する。
(1)非アルコール性脂肪性肝炎治療中の患者から得られた生体試料中の各マーカーであるAKR1B10、又は、AKR1B10及びM2BPGiを測定する。
(2)各マーカーの測定値を、非アルコール性脂肪性肝炎の治療評価の指標と比較する。
(3)各マーカーの測定値が該指標よりも低い場合には、治療が良好であると判定する。
なお、指標は、Brunt分類のStagingのステージ4を有する非アルコール性脂肪性肝炎患者由来生体試料中の各マーカーの平均値を採用することが好ましい。
(肝硬変診断薬)
本発明は、抗AKR1B10抗体若しくは抗体フラグメント及び/又はM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)の検出試薬を含む、肝硬変診断薬も対象とする。
(非アルコール性脂肪肝炎及び肝細胞がんの合併症診断薬)
本発明は、抗AKR1B10抗体若しくは抗体フラグメント及びM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)の検出試薬を含む、非アルコール性脂肪肝炎及び肝細胞がんの合併症診断薬も対象とする。
(非アルコール性脂肪肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症診断薬)
本発明は、抗AKR1B10抗体若しくは抗体フラグメント及び/又はM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)の検出試薬を含む、非アルコール性脂肪肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症診断薬も対象とする。
(肝線維化の重篤度判定キット)
本発明の肝線維化の重篤度判定キットは、抗AKR1B10抗体若しくは抗体フラグメント、又は、抗AKR1B10抗体若しくは抗体フラグメント及びM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)の検出試薬を含む。
(非アルコール性脂肪性肝炎の治療評価判定キット)
本発明の非アルコール性脂肪性肝炎の治療評価判定キットは、抗AKR1B10抗体若しくは抗体フラグメント、又は、抗AKR1B10抗体若しくは抗体フラグメント及びM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)の検出試薬を含む。
上記の抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、自体公知の方法、例えばケーラーとミルシュタインの方法(Kohler G、Milstein C. (1975) Continuous cultures of fusedcellssecretingantibody of predefined specificity. Nature 256、495-497.)にしたがって作製することもできる。
また、抗体フラグメントは、抗体の抗原認識機能を実質的に維持することができれば、どのような構造でもよく、例えば抗原認識部位(軽鎖可変領域配列、重鎖可変領域配列)を有することが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
(対象)
2006~2015年の10年間に肝生検検査を行い、組織学的に非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と診断された71症例を対象とした。対象患者の年齢(中央値)は69歳、BMIの中央値は27.8であった。血小板、AST/ALT、総ビリルビン、アルブミン、IV型コラーゲン7s及びP-III-P等の検査値を含む患者背景は表1に示す。
Figure 0007239139000001
(病理組織診断)
病理組織診断により組織学的線維化の程度について評価するため、Brunt分類による病期を判定した。
その結果、ステージ1が11例、ステージ2が12例、ステージ3が25例、及びステージ4が23例であった。また、NASHと診断されたときに肝細胞がん(HCC)を合併していたのは32例、静脈瘤合併は33例であった。
(血清AKR1B10及び血清M2BPGiのELISA測定)
対象の血清AKR1B10(ng/mL)及び血清M2BPGi(カットオフインデックス:C.O.I.)を公知のELISAで測定した。
肝線維化ステージごとのAKR1B10値をKruskal-Wallis検定により比較したところ、病期が進むほど上昇していて群間で有意差を認め、肝線維化が進展したステージ4群では特に高値であった(図1)。
ステージ4群におけるAKR1B10のROC曲線下面積によるカットオフ値は1.30、感度65%、特異度97%、AUCは0.842であった(図2)。
近年肝線維化マーカーとしてよく用いられているM2BPGiについてもKruskal-Wallis検定により評価を行ったところ、AKR1B10と同様、病期が進むほど高い傾向があった(図3)。ステージ4群の肝線維化進展例におけるROC曲線下面積によるカットオフ値は3.11、感度82%、特異度89%、AUCは0.922であった(図4)。
血清AKR1B10、血清M2BPGi、FIB-4 index、APRI、等の肝機能指標(主な血清検査値)は、表2の通りである。
以上より、血清AKR1B10は、NASH症例において肝線維化(ステージ)と相関しており、特にステージ4の症例において高値であった。すなわち、血清AKR1B10は、NASH患者において組織学的な病態の進展度と関連していた。血清M2BPGiについても、NASH症例において肝線維化の進展と相関していた。
Figure 0007239139000002
(AKR1B10と食道胃静脈瘤合併症との関連性評価)
AKR1B10による食道胃静脈瘤(Varix)の発生の予測について、AKR1B10と食道胃静脈瘤合併症との関連を調べた。
まず、肝線維化ステージごとの血清AKR1B10値を、食道胃静脈瘤合併33例と食道胃静脈瘤非合併30例の各サブグループで比較したところ、食道胃静脈瘤合併例におけるAKR1B10の中央値は0.55と、食道胃静脈瘤非合併例の中央値0.02と比べて有意に高かった(図5)。高値例では食道胃静脈瘤の合併を念頭に置く必要があると考えられた。ROC曲線下面積によるカットオフ値は0.17、感度60%、特異度83%であった。
(AKR1B10及びM2BPGiと肝線維化ステージ4との関連性評価)
2つの肝線維化マーカーAKR1B10及びM2BPGiを組み合わせた解析を検討した。
ステージ4の肝線維化進展例におけるROC曲線下面積によるAKR1B10のカットオフ値1.30及びM2BPGiのカットオフ値3.11で対象を陰性群と陽性群に区切り、Fisher検定によりAKR1B10及びM2BPGiの両方陰性群と両方陽性群を比較した。その結果、両方陽性群は両方陰性群と比較して、有意に肝線維化ステージ4の比率が高かった(図6)。
さらに、AKR1B10及びM2BPGiの両方陽性群は、M2BPGi単独陽性群と比較して、有意に肝線維化ステージ4の比率が高かった(図7)。M2BPGi単独陽性群は、肝線維化ステージ3でも高値の症例があった。
以上の結果から、AKR1B10及びM2BPGiを組み合わせることにより、M2BPGi単独の場合よりも、肝線維化ステージ4の診断能が高まることを確認できた。
(AKR1B10及びM2BPGiとNASH-HCC合併症との関連性評価1)
NASHとHCCの合併率についても、Fisher検定によりAKR1B10及びM2BPGiが両方陰性のグループと両方陽性のグループを比較した。その結果、AKR1B10及びM2BPGiの両方陽性群では、両方陰性群と比較して有意にNASH-HCC合併率が高く、2つのマーカーを組み合わせることでNASH-HCC合併症の予測に有用な評価指標となる可能性が示唆された(図8)。
(AKR1B10及びM2BPGiとNASH-食道胃静脈瘤合併症との関連性評価)
NASHと食道胃静脈瘤の合併率についても、Fisher検定によりAKR1B10及びM2BPGiの両方陰性のグループと両方陽性のグループを比較した。その結果、AKR1B10とM2BPGiの両方陽性群では、両方陰性群と比較して有意に合併率が高く、2つのマーカーを組み合わせることでNASH-食道胃静脈瘤合併症の予測に有用な評価指標となる可能性が示唆された(図9)。
(AKR1B10及びM2BPGiとNASH-HCC合併症との関連性評価2)
NASH-HCC合併症における約8年間の経過を観察し、AKR1B10及びM2BPGiが両方陰性のグループとそれ以外のグループの生存率(Overall survival)を比較した。その結果、AKR1B10とM2BPGiの両方陽性群(AKR1B10 high + WFA(+)- M2BP high)では、それ以外(Others)と比較して有意に予後が不良であり、2つのマーカーを組み合わせることでNASH-HCC合併症の予後の予測に有用な評価指標となる可能性が示唆された(図10)。
以上より、血清AKR1B10と血清M2BPGiを組み合わせて評価することで、肝線維化に加え、HCCや食道胃静脈瘤の合併を予測できる。血清AKR1B10及び血清M2BPGiの組合わせは、NASH-HCC合併症の予後が予測できる。
血清AKR1B10は、NASH-食道胃静脈瘤合併症に関して単独で一定の予測能があった。血清AKR1B10と血清M2BPGiを組み合わせることで、血清M2BPGi単独よりも優位に肝線維化進展を診断できる。さらに、血清AKR1B10及び血清M2BPGiの組合わせは、肝線維化進展のみならず肝細胞がん合併、食道胃静脈瘤合併を予測する有用なマーカーとなり得る。
本発明では、肝硬変の診断方法、非アルコール性脂肪肝炎及び肝細胞がんの合併症の診断方法、非アルコール性脂肪肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の診断方法、又は、肝線維化の重篤度判定方法を提供できる。

Claims (5)

  1. 非アルコール性脂肪肝炎患者から単離された血清中のAKR1B10のタンパク質濃度の発現レベル、及びM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)を測定する工程を含む、非アルコール性脂肪肝炎及び肝細胞がんの合併症の診断補助方法。
  2. 血清中のAKR1B10のタンパク質濃度の発現レベルを測定する工程を含む、非アルコール性脂肪肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症の診断補助方法。
  3. 肝線維化の重篤度判定補助方法であって、(1)非アルコール性脂肪肝炎患者から単離された血清試料において、AKR1B10のタンパク質濃度の発現レベル及び/又はM2BPの糖鎖構造変化(M2BPGi)を測定すること、並びに(2)前記(1)において測定したタンパク質濃度の発現レベルと、肝線維化のステージ4とを相関付けることを含む、方法。
  4. 前記(2)における、測定したタンパク質濃度の発現レベルと肝線維化とを相関付けることが、測定したタンパク質濃度の発現レベルとカットオフ値との比較により行われる、請求項3に記載の方法。
  5. 抗AKR1B10抗体若しくは抗体フラグメントの検出試薬を含む、請求項2に記載の方法で用いられる、非アルコール性脂肪肝炎及び食道胃静脈瘤の合併症診断薬。
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