以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
図1Aに示すように、本発明の第1実施形態に係るコイル装置(チップ部品)としてのインダクタ2は、略直方体形状(略六面体)からなる素子本体4を有する。なお、本発明に係るコイル装置としては、インダクタ2に限定されるものではなく、その他のコイル装置であってもよい。
素子本体4は、上面4aと、上面4aとはZ軸方向に反対側にある底面(実装面となる主面)4bと、4つの側面4c~4fとを有する。素子本体4の寸法は、特に限定されないが、たとえば素子本体4の縦(X軸)寸法は、好ましくは1.2~6.5mmであり、横(Y軸)寸法は、好ましくは0.6~6.5mmであり、高さ(Z軸)寸法は、好ましくは0.5~5.0mmである。
素子本体4は、コイル状に巻回してある導体としてのワイヤ6を内部に有する。本実施形態では、ワイヤ6は、たとえば絶縁被覆で覆われた銅線からなる丸線で構成してある。絶縁被覆としては、エポキシ変性アクリル樹脂などが用いられる。ワイヤ6は、素子本体4の内部において、1巻以上(図示の例では、5×5巻)にコイル状に巻回してあり、コイル部6αを構成している。
本実施形態では、コイル部6αは、一般的なノーマルワイズにより巻回してある空芯コイルで構成されるが、ワイヤ6をα巻きにより巻回してある空芯コイル、あるいはエッジワイズにより巻回してある空芯コイルでもよい。ワイヤ6の一端には第1リード部6aが形成してあり、他端には第2リード部6bが形成してある。
図1Aおよび図1Bに示すように、本実施形態における素子本体4は、第1コア部材41と、第2コア部材42と、第3コア部材43とを有し、これら3つのコア部材41,42,43を組み合わせることにより構成される。
図1Aに示すように、第1コア部材41は、支持部41aと、巻芯部41bと、切り欠き部41cと、段差部41dとを有する。支持部41aは、X軸方向に沿って素子本体4の側面4e側に突出する第1鍔部41a1と、X軸方向に沿って素子本体4の側面4f側に突出する第2鍔部41a2と、Y軸方向に沿って素子本体4の側面4c側に突出する第3鍔部41a3と、Y軸方向に沿って素子本体4の側面4d側に突出する第4鍔部41a4とが形成してある。
図1Bに示すように、支持部41aは、本体部41a5を有する。本体部41a5は、支持部41aの略中心部に形成してあり、第1鍔部41a1~第4鍔部41a4に囲まれた部分である。
図1Aおよび図1Bに示すように、第1鍔部41a1~第4鍔部41a4および本体部41a5には、コイル部6αの下端部と支持部41aのZ軸上表面とが接触するように、コイル部6αを設置(固定)することが可能となっている。鍔部41a1,41a2は、鍔部41a3,41a4に比べて、厚みが薄くなるように形成してある。
巻芯部41bは、支持部41aのZ軸上表面に形成してあり、支持部41a(より正確には、本体部41a5)に一体形成してある。巻芯部41bは、上方に向かって突出する形状(凸部)からなり、支持部41a上に配置してあるコイル部6αの内側に挿入されている。すなわち、巻芯部41bは、コイル部6αの内側に位置するように構成してある。本実施形態では、予めワイヤ6を巻回してあるコイル部6αを巻芯部41bに固定しているが、ワイヤ6を巻芯部41bに巻回することで、コイル部6αを巻芯部41bに固定してもよい。
図1Bに示すように、本実施形態では、巻芯部41bの外周面41b2は、素子本体4の底面から離れる方向(底面4bから上面4aに向かう方向)に向けて径が小さくなるテーパ面である。そのため、コイル部6αを巻芯部41bに設置したときに、巻芯部41bの外周面と、コイル部6αの内周面との間には、断面において略三角形状からなる隙間Gが形成され、この隙間Gの内部に第3コア部材43が充填される。
そのため、コイル部6αを巻芯部41bに設置したときに、素子本体4のZ軸方向略中央付近の層では、コイル部6αは、その内周側の第3コア部材43と、その外周側の第3コア部材43とにより挟まれることになる。
本実施形態では、巻芯部41bは、第2コア部材42を内部に収容するための凹部41b1を有し、凹部41b1(巻芯部41b)の内部に第2コア部材42を収容することが可能となっている。凹部41b1は、その深さが第2コア部材42の高さよりも小さくなるように形成してある。そのため、第2コア部材42を凹部41b1の内部に収容すると、第2コア部材42の一部が、凹部41b1の外部にはみ出す。すなわち、巻芯部41bの上端と第2コア部材42の上端とは、面一になってはおらず、段差部が形成してある。なお、凹部41b1の深さは、第2コア部材42を凹部41b1の内部に収容したときに、第2コア部材42が素子本体4の上面4aから飛び出さない程度に設定してある。
巻芯部41bの外周面と内周面との間の幅(筒状の巻芯部41bの厚み)Wは、好ましくは0.1~10mmであり、より好ましくは0.1~6mmである。厚みWを上記所定範囲内に設定することにより、コイル部6αと、凹部41b1の内部に収容してある第2コア部材42との間の絶縁距離を十分に確保することができる。また、凹部41b1のX軸方向幅(あるいは、Y軸方向幅)を十分に確保し、凹部41b1の容積を十分に確保することが可能となり、十分なX軸方向幅(あるいは、Y軸方向幅)を有する第2コア部材42を凹部41b1の内部に収容することができる。
また、第2部材42の上端から素子本体4の上面4aまでの長さL1は、好ましくは0.03~10mmであり、より好ましくは0.06~6mmである。また、第2部材42の下端から、素子本体4の底面4bまでの長さL2は、好ましくは0.03~10mmであり、より好ましくは0.06~6mmである。
長さL1,L2を上記所定範囲内に設定することにより、凹部41b1のZ軸方向高さを十分に確保し、凹部41b1の容積を十分に確保することが可能となり、十分なZ軸方向高さを有する第2コア部材42を凹部41b1の内部に収容することができる。なお、図示の例では、長さL1を長さL2よりも大きくしてあるが、長さL2を長さL1よりも大きくしてもよい。このような構成とすることにより、第2部材42が素子本体4の外部に露出することを有効に防止することができる。あるいは、長さL1と長さL2とを等しくしてもよい。
図1Aに示すように、第1コア部材41には、切り欠き部41cが形成してある。切り欠き部41cは、素子本体4の側面4cと側面4eの交差部付近に形成してある第1切り欠き部41c1と、素子本体4の側面4cと側面4fの交差部付近に形成してある第2切り欠き部41c2と、素子本体4の側面4dと側面4eの交差部付近に形成してある第3切り欠き部41c3と、素子本体4の側面4dと側面4fの交差部付近に形成してある第4切り欠き部(図示略)とを有する。図示の例では、全ての切り欠き部が、略正方形状に切り欠かれているが、他の形状に切り欠かれていてもよく、あるいは表裏面を貫通する貫通孔でもよい。
本実施形態では、第1切り欠き部41c1および第2切り欠き部41c2には、コイル部6αから引き出されたリード部6a,6bが通過する。すなわち、第1切り欠き部41c1および第2切り欠き部41c2は、主として、リード部6a,6bが通過するための通路として利用される。ただし、これらの第1切り欠き部41c1および第2切り欠き部41c2は、他の切り欠き部と共に、後述するように、第3コア部材43を構成する成形材料が、第1コア部材41の表面から裏面に流動する際の通路としても機能する。
段差部41dは、コイル部6を支持する表面とは反対側に位置する支持部6の底面、すなわち第1コア部材41の底面に形成してある。段差部41dは、素子本体4の側面4e側に形成してある第1段差部41d1と、素子本体4の側面4f側に形成してある第2段差部41d2とを有する。第1段差部41d1は、第1鍔部41a1の下方に形成してあり、第2段差部41d2は、第2鍔部41a2の下方に形成してある。上述したように、鍔部41a1,41a2は、鍔部41a3,41a4に比べて、厚みが薄くなるように形成してあるため、鍔部41a1,41a2のZ軸方向の下方には、段差部41d1,41d2が形成される。
段差部41d1,41d2は、鍔部41a1,41a2に、Y軸方向に沿って形成してある。図示の例では、段差部41d1,41d2は、ワイヤ6a,6bの直径の3~5倍程度のX軸方向幅を有する。
図1Bに示すように、段差部41d1,41d2の段差の高さは、リード部6a,6bの外径よりも小さい。そのため、段差部41d1,41d2にコイル部6αのリード部6a,6bを配置すると、リード部6a,6bの外周の一部は、段差部41d1,41d2の内側に収容され、残りの外周の一部は段差部41d1,41d2の外側にはみ出し、本体部41a5(支持部41a)の底面よりも下方に位置する。なお、リード部6a,6bは、外周面の一部が鍔部41a1,41a2の下面に当接した状態で、段差部41d1,41d2に配置される。
図1Aに示すように、コイル部6αから引き出されたリード部6a,6bは、各々略平行に、Y軸方向に沿って延び、素子本体4の側面4cの近傍まで引き出される。また、リード部6a,6bは、素子本体4の側面4cの近傍において、Z軸方向に屈曲して、素子本体4の底面4bの近傍まで引き出される。そして、リード部6a,6bは、素子本体4の底面4bの近傍において、切り欠き部41c1,41c2を通過した後、Y軸方向に屈曲し、段差部41d1,41d2に沿って延び、段差部41d1,41d2の側面4d側のY軸方向端部まで引き出される。
このように、コイル部6のリード部6a,6bは、切り欠き部41c1,41c2を通過すると、支持部41aの上でコイル部6αから引き出された方向とは反対方向(略180°だけ反転)に向かって、鍔部41a1,41a2の下面の段差部41d1,41d2内に引き出される。
図1Aに示す第2コア部材42は、略楕円柱形状からなるが、その形状は特に限定されるものではない。第2コア部材42の形状は、たとえば、Z軸方向からみたときに、円形や正方形、あるいは長方形等であってもよい。また、図1Bに示すように、第2コア部材42は、その外周面が凹部41b1の内周面と当接するように、凹部41b1の内部に収容してあるが、第2コア部材42の外周面と凹部41b1の内周面との間には、多少の隙間が形成してあってもよい。
第2コア部材42は、その周囲を第1コア部材41の巻芯部41bで覆われるとともに、間接的に第3コア部材43で覆われおり、第1コア部材41と第3コア部材43とで二重にシールドされている。
第3コア部材43は、巻芯部41bの内部に第2コア部材42が収容してある第1コア部材41を、コイル部6αとともに覆っている。そのため、コイル部6αは、その上方に配置された第3コア部材43と、その下方に配置された第1コア部材41とによって、挟まれることになる。
第3コア部材43は、支持部41aの上方を覆うとともに、切り欠き部41cおよび段差部41d1,41d2の内部に充填してある。なお、第3コア部材43は、支持部41aの底面4bは覆っていない。
第3コア部材43は、本体部41a5(支持部41a)の底面と略面一となるように、段差部41d1,41d2の内部に充填してある。そのため、本実施形態では、コイル部6αのリード部6a,6bの一部が、第3コア部材43の底面4bから突出する。
したがって、本実施形態では、リード部6a,6bの外周面の一部が露出部として素子本体4の第3コア部材43の底面から露出し、残りの一部が埋設部として素子本体4の第3コア部材43の内部に埋設される。
素子本体4のZ軸方向略中央付近の層では、X軸(あるいは、Y軸)に沿って、最も内側に第2コア部材42が配置してあり、その外側に第1コア部材41の巻芯部41bが配置してあり、その外側に第3コア部材43が配置してある。そのため、素子本体4のZ軸方向略中央付近の層では、X軸一方側からX軸他方側(あるいは、Y軸一方側からY軸他方側)に向かって、第3コア部材43、第1コア部材41、第2コア部材42、第1コア部材41、第3コア部材43が、この順番で配置される。
また、素子本体4の第1コア部材41および第3コア部材43は、磁性材料と合成樹脂等が含まれていることが好ましい。磁性材料としては、たとえばフェライト粒子または金属磁性体粒子を含む。フェライト粒子としては、Ni-Zn系フェライト、Mn-Zn系フェライトなどが例示される。金属磁性体粒子としては、特に限定されないが、たとえばFe-Ni合金粉、Fe-Si合金粉、Fe-Si-Cr合金粉、Fe-Co合金粉、Fe-Si-Al合金粉、アモルファス鉄などが例示される。
合成樹脂等としては、特に限定されないが、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、その他の合成樹脂、あるいはその他の非磁性材料などが例示される。なお、第3コア部材43については、成形性を向上させる観点から、樹脂を多く含んでいることが好ましい。
本実施形態では、第1コア部材41の比透磁率をμ1、第2コア部材42の比透磁率をμ2、第3コア部材43の比透磁率をμ3としたときに、各コア部材41,42,43を構成する材料は、μ2>μ1およびμ2>μ3となるように選択することが好ましい。μ1とμ3とは同じでも異なっていてもよい。
第1コア部材41の比透磁率μ1は特に限定されないが、たとえば1~20000である。第2コア部材42は、第1コア部材41よりも比透磁率が高い材料で構成され、たとえば金属磁性体からなる柱状体、樹脂を含まない金属磁性体の焼結体、樹脂を含む金属磁性体などで構成される。なお、第2コア部材42に含まれる金属磁性粉には絶縁被膜を施さなくてもよい。第1コア部材41および第3コア部材43については、これらを構成する金属磁性粉に絶縁被膜が施されていることが好ましい。
図1Aおよび図1Hに示すように、素子本体4の底面4bのX軸方向一端側(側面4e側)には、第1コア部材41および第3コア部材43に跨がるように、第1端子電極8aが形成してある。また、底面4bのX軸方向他端側(側面4f側)には、第1コア部材41および第3コア部材43に跨がるように、第2端子電極8bが形成してある。
本実施形態では、第1端子電極8aは、素子本体4の側面4c~4eに跨がることなく、底面4bにのみ形成してもよい。第1端子電極8aは、Y軸方向に細長い形状を有し、底面4bの側面4c側のY軸方向一端から、側面4d側のY軸方向他端までを覆っている。図1Bに示すように、第1端子電極8aは、底面4bから露出した第1リード部6aの外周面の一部(露出部)を覆っており、第1リード部6aに電気的に接続されている。
同様に、第2端子電極8bは、素子本体4の側面4c,4d,4fに跨がることなく、底面4bにのみ形成してもよい。第2端子電極8bは、Y軸方向に細長い形状を有し、底面4bの側面4c側のY軸方向一端から、側面4d側のY軸方向他端までを覆っている。第2端子電極8bは、底面4bから露出した第2リード部6bの外周面の一部(露出部)を覆っており、第2リード部6bに電気的に接続されている。
端子電極8a,8bは、たとえば下地電極膜とメッキ膜との積層電極膜で構成され、下地電極膜としては、Sn,Ag,Ni,Cuなどの金属またはこれらの合金を含む導電ペースト膜で構成してあり、その下地電極膜の上に、メッキ膜が形成してあっても良い。この場合、下地電極膜の形成後、乾燥処理あるいは熱処理を行い、その後メッキ膜の形成を行う。メッキ膜としては、たとえばSn,Au,Ni,Pt,Ag,Pdなどの金属またはこれらの合金が例示される。なお、端子電極8a,8bをスパッタリングにより形成してもよい。端子電極8a,8bの厚みは、好ましくは3~100μmである。
次に、本実施形態のインダクタ2の製造方法について説明する。本実施形態の方法では、まず、上述した第1コア部材41に対応する図2A(a)に示す第1コア部材成形体410と、第2コア部材42と、図2B(a)に示す空芯コイル状に巻回してある複数(本実施形態では16個)のコイル部6αとを準備する。
図2A(a)に示すように、第1コア部材成形体410は、上述した第1コア部材41を複数(本実施形態では16個)連結させたような構成を有する。第1コア部材成形体410は、圧粉成形や射出成形、あるいは削り出し加工などによって得ることができ、成形密度が高く、透磁率が高い材料で構成することができる。
第1コア部材成形体410は、支持部410aと、複数(本実施形態では16個)の巻芯部410bと、支持部410aの外周に形成してある複数(本実施形態では16個)の切り欠き部410cと、複数(本実施形態では20個)の段差部410dとに加えて、支持部410aの内部に形成してある複数(本実施形態では9個)の貫通孔410eを有する。各巻芯部410bには、第2コア部材42を内部に収容するための凹部410b1が形成してある。
支持部410aは、上述した支持部41aを連結させたような構成を有する。切り欠き部410cおよび貫通孔41eは、後述するように、第3コア部材430を構成する樹脂が流動するための通路として利用される。図2A(b)に示す段差部410dは、主としてコイル部6αのリード部6a,6bを配置するために利用される。
図2A(a)に示す各巻芯部410bは、X軸方向に隣り合う巻芯部410b間の間隔と、Y軸方向に隣り合う巻芯部410b間の間隔とが略同一となるように格子状に配置してある。また、各貫通孔410eは、X軸方向に隣り合う貫通孔410e間の間隔と、Y軸方向に隣り合う貫通孔410e間の間隔とが略同一となるように格子状に配置してある。
次に、図2B(a)に示すように、第2コア部材42を、巻芯部410bの凹部410b1の内部に収容する(第2コア部材設置工程)。
次に、コイル部6αを、リード部6a,6bが底面に配置されるように第1コア部材成形体410に備える(コイル設置工程)。より詳細には、図2B(a)および図2B(b)に示すように、コイル部6αを、巻芯部410bがコイル部6αの内部に位置するように、第1コア部材成形体410の支持部410aに格子状に配置する。なお、巻芯部410bにワイヤ6を巻回することにより、コイル部6αを第1コア部材成形体410の支持部410aに備えてもよい。
次に、コイル部6αのリード部6a,6bを、各々略平行となるように向きを揃え、Y軸方向に沿って所定距離だけ引き出すとともに、Z軸方向に屈曲させ、Z軸方向に沿って所定距離だけ引き出す。さらに、リード部6a,6bを、Y軸方向に屈曲させ、Y軸方向に沿って所定距離だけ引き出し、段差部410dに配置する。この結果、リード部6a,6bの一部は、支持部410aの底面よりも下方にはみ出す。
次に、図2Cに示すように、リード部6a,6bの外周面の一部が露出するように(図2D参照)、第1コア部材成形体410を第3コア部材430で覆い、第1コア部材成形体410、第2コア部材42および第3コア部材成形体430からなる基板400を形成する(基板形成工程)。第3コア部材430を成形するための方法としては、特に限定されないが、たとえば金型の内部に第1コア部材成形体410を配置して成形するインサート射出成形が用いられる。この成形によれば、切り欠き部410cあるいは貫通孔410eを通じて、第3コア部材430を構成する成形材料が成形体410の表面から裏面に流動し、段差部410dの内部にまで行き渡らせることができる。
第3コア部材430を構成する材料としては、成形時に流動性のある材料が用いられ、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂をバインダーとした複合磁性材料が用いられる。成形金型の材料は、特に限定されるものではなく、成形時の圧力に耐え得るものであれば、プラスチックや金属など適宜選択してよい。
次に、図2D(a)および図2D(b)に示すように、X軸方向に延びる切断予定線10A、およびY軸方向に延びる切断予定線10Bに沿って、基板400を切断し、基板400を16個に個片化する(切断工程)。これにより、図1Aに示すような内部に単一のコイル部6αが埋設してある素子本体4を得る。基板400の切断方法としては、特に限定されず、ダイシングソーやワイヤソーなどの切断具、またはレーザなどを用いてもよい。なお、切断容易性の観点では、切断面が鋭利であるダイシングソーを用いることが好ましい。
次に、図1Hに示すように、ワイヤ6が埋設してある素子本体4の底面4bに、端子電極8a,8bをペースト法および/またはメッキ法により形成し、必要に応じて乾燥処理あるいは熱処理を施す(端子電極形成工程)。なお、スパッタリング、あるいは銀ペーストを用いて、スクリーン印刷により端子電極8a,8bの形成を行うことが好ましい。これらの方法では、端子電極8a,8bを薄く形成することができるからである。
端子電極形成工程では、素子本体4の側面4cから側面4dまでを覆い、素子本体4の底面4b(第2コア部材42の底面)から露出している各ワイヤ6のリード部6a,6bの外周面の一部に接続されるように、端子電極8a,8bを素子本体4の底面4aに形成する。
なお、図1Aに示す例では、端子電極8a,8bは、素子本体4の底面4bと側面4cの交差部から、素子本体4の底面4bと側面4dの交差部までを連続的に覆っているが、断続的に覆っていてもよい。また、端子電極形成工程あるいは切断工程を行う前に、予めリード部6a,6bの被膜を除去してもよい。被膜除去は、機械研磨やブラスト、あるいはレーザなどの熱によって行うことができる。
なお、上記製造方法では、複数のコイル部6αが内部に埋設してある基板400(成形体)を得た後、切断工程、端子電極形成工程の順に各工程を行ったが、端子電極形成工程の後に、切断工程を行ってもよい。
すなわち、図2D(a)および図2D(b)において、第3コア部材成型体430の底面から露出したリード部6a,6bの外周面の一部に接続させるように、端子電極パターンを基板400(第1コア部材成形体410および第3コア部材成形体430)の底面にY軸方向に沿って形成した後(端子電極形成工程)、基板400を切断し(切断工程)、素子本体4を形成してもよい。以上のような製造方法によれば、端子電極8a,8bが形成してある素子本体4を有するインダクタ2の生産効率を向上させることができる。
また、上記製造方法において、予め第1コア部材成形体410に切断工程を行っておき、切断した第1コア部材成形体410の各々について、第2コア部材設置工程、コイル設置工程、基板形成工程および端子電極形成工程を行ってもよい。
本実施形態に係るインダクタ2では、たとえば第2コア部材42を金属磁性体のような透磁率の高い材料で構成することにより、素子本体4の実効的な透磁率を高めることができる。また、第2コア部材42を透磁率の高い金属磁性体などで構成できることから、第1コア部材41と第3コア部材43とを錆びにくい磁性材料で構成することができる。
また、本実施形態に係るインダクタ2では、第2コア部材42が第1コア部材41の巻芯部41bの内部に収容してあるため、第2コア部材42がコイル部6αから隔てられるとともに、第1コア部材41に第2コア部材42が固定されて位置決めされる。そのため、たとえば金属磁性体で構成された第2コア部材42とコイル部6αとの間で接触が生じにくくなり、ショート不良の発生を防止することができる。また、第2コア部材42が位置ずれしにくくなり、第2コア部材42が素子本体4の外部に露出するおそれが少なく、たとえば金属磁性体で構成された第2コア部材42の表面が錆びることを防止することができる。
このように、本実施形態では、ショート不良や錆の発生を防止しつつ、素子本体4の実効的な透磁率を高めることが可能であり、インダクタンス値などの磁気特性に優れたインダクタ2を提供することができる。
また、本実施形態に係るインダクタ2では、第1コア部材41、第2コア部材42および第3コア部材43の3つのコア部材41,42,43により素子本体4が構成される。そのため、各コア部材41,42,43を構成する材料を適宜選択することにより、インダクタ2の磁気特性の制御が容易になるとともに、種々の磁気特性を有するインダクタ2を構成することができる。
また、本実施形態では、巻芯部41bは、第2コア部材42を内部に収容するための凹部41b1を有する。このような構成としたため、第2コア部材42を凹部41b1の内部に収容し、第1コア部材41に第2コア部材42を固定することが容易となる。そのため、第2コア部材42の位置ずれを防止し、インダクタ2の磁気特性を効果的に高めることができる。
また、本実施形態では、第2コア部材42は、その一部が凹部41b1の外部にはみ出すように、凹部41b1の内部に収容してある。このような構成としたため、第2コア部材42が凹部41b1の外部にはみ出た分だけ、第1コア部材41と、第2コア部材42と、第3コア部材43との間の接触面積が増加し、各コア部材41,42,43の接合性が良くなる。したがって、第1コア部材41と、第2コア部材42と、第3コア部材43とを強固に結合することが可能となり、第2コア部材42が第3コア部材43から剥離することを防止し、インダクタ2の磁気特性を効果的に高めることができる。
また、本実施形態では、巻芯部41bの外周面は、素子本体4の底面から離れる方向に向けて径が小さくなるテーパ面である。このような構成としたため、たとえば巻芯部41bの形状を円筒形状とした場合に比べて、巻芯部41bの外周面の表面積が大きくなり、巻芯部41b(第1コア部材41)と第3コア部材43との間の接触面積が増加する。そのため、第1コア部材41と第3コア部材43とを強固に結合することが可能となり、第3コア部材43が第1コア部材41から剥離することを防止し、インダクタ2の磁気特性を効果的に高めることができる。
また、空芯コイルからなるコイル部6αを第1コア部材41の巻芯部41bに取り付ける際には、巻芯部41bの先端部から基端部に向かってコイル部6αをはめ込みやすくなる。したがって、インダクタ2の製造時において、コイル部6αの取付を容易に行うことができる。
また、本実施形態では、第1コア部材41は、巻芯部41bが表面に形成してある支持部41aを有し、コイル部6αは、支持部41bに設置される。このような構成としたため、第1コア部材41にコイル部6αが固定されて位置決めされ、コイル部6αが位置ずれしにくくなる。また、巻芯部41bの内部に第2コア部材42が収容してある第1コア部材41を、第3コア部材43で覆うときに、コイル部6αの変形を防止することが可能となる。このように、上記構成とすることにより、コイル部6αの位置ずれや変形等を防止して、インダクタ2の磁気特性を高めることができる。
また、本実施形態では、第1コア部材41、第2コア部材42および第3コア部材43の各々が磁性体を含んでいる。このような構成としたため、磁性体の種類に応じて、素子本体4のインダクタンス値などの磁気特性を制御することができる。
また、本実施形態に係るインダクタ2の製造方法は、巻芯部41bを有する第1コア部材41を配置する工程と、巻芯部41bの内部に第2コア部材42を収容する工程と、コイル状に巻回してあるワイヤ6からなるコイル部6αを巻芯部41bに取り付ける工程と巻芯部41bの内部に第2コア部材42が収容してある第1コア部材41を、コイル部6αとともに第3コア部材43で覆う工程とを有する。
そのため、本実施形態に係る製造方法では、巻芯部41bを有する第1コア部材41と、巻芯部41bの内部に収容される第2コア部材42と、第1コア部材41をコイル部6αとともに覆う第3コア部材43とを有する本実施形態のインダクタ2を容易に形成することができる。したがって、本実施形態では、ショート不良や錆の発生を防止しつつ、素子本体4の実効的な透磁率を高め、インダクタンス値などの磁気特性に優れたインダクタ2を提供することができる。
第2実施形態
図1Cに示す第2実施形態に係るインダクタ2Aは、以下に示す以外は、第1実施形態に係るインダクタ2と同様な構成を有し、同様な作用効果を奏する。また、図1Cに示すインダクタ2Aにおける各部材は、図1Bに示す第1実施形態に係るインダクタ2における各部材に対応し、対応する部材には、同一符号を付してあり、その説明は一部省略する。
図1Cに示すように、インダクタ2Aは、第2コア部材42Aを有する。第2コア部材42Aは、複数のシート状(板状)の磁性金属板421の積層体により構成される。金属板421の厚みは特に限定されるものではないが、好ましくは0.05~1.0mmである。
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果が得られる。加えて、磁性金属板421を用いることでインダクタ2Aの磁気特性が向上する。
なお、図1Cでは、磁性金属板421をZ軸方向に積層した場合について例示しているが、磁性金属板421の積層方向はこれに限定されるものではない。たとえば、図1Gに示すように、YZ平面に平行な板面を有し、かつ、X軸方向に所定の厚みとZ軸方向に所定の高さとを有する複数の磁性金属板421をX軸方向に積層(配列)してもよい。あるいは、XZ平面に平行な板面を有し、かつ、Y軸方向に所定の厚みとZ軸方向に所定の高さとを有する複数の磁性金属板421をY軸方向に積層(配列)してもよい。
第3実施形態
図1Dに示す第3実施形態に係るインダクタ2Bは、以下に示す以外は、第1実施形態に係るインダクタ2と同様な構成を有し、同様な作用効果を奏する。また、図1Dに示すインダクタ2Bにおける各部材は、図1Bに示す第1実施形態に係るインダクタ2における各部材に対応し、対応する部材には、同一符号を付してあり、その説明は一部省略する。
図1Dに示すように、インダクタ2Bは、第2コア部材42Bを有する。第2コア部材42Bは、球状の磁性金属球(例えば、鉄球)からなる球体422の集合体により構成される。凹部41b1の内部に収容する球体422の数は、特に限定されず、1個以上であればよい。球体422は、必ずしも凹部41b1の内部に整然と配列してある必要はなく、同図に示すようにランダムに配置してあってもよい。また、球体422の形状は、必ずしも真球状である必要はなく、楕円球状であってもよい。
本実施形態でも、第2実施形態と同様の効果が得られる。加えて、より効果的に渦電流損を小さくすることができる。
また、凹部41b1の内部に複数の球体422を収容した場合、複数の球体422間に形成される隙間により、第2コア部材42Bは間隙構造を具備することになる。そのため、巻芯部41bの内部に球体422が収容してある第1コア部材41を第3コア部材43で覆うと、凹部41b1の内部に形成された隙間に、第3コア部材43が充填され、第2コア部材42Bと第3コア部材43との混合体からなるコア部材が得られる。そのため、第2コア部材42Bと第3コア部材43との間で、剥離が生じることを効果的に防止し、インダクタ2の磁気特性を効果的に高めることができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえば上記各実施形態では、ワイヤ6の巻回形状を楕円螺旋状としたが、たとえば円形らせん状、あるいは角形らせん状、同心円状であってもよい。
ワイヤ6としては、エナメル被覆の銅線または銀線を用いてもよい。また、絶縁被覆ワイヤに限定されず、絶縁被覆されていないワイヤであってもよい。また、ワイヤの種類としては、丸線に限定されず、図1Eに示すような平角線(平角ワイヤ)、四角線、あるいはリッツ線であってもよい。さらに、ワイヤの芯線の材質としては、銅および銀に限らず、これらを含む合金、あるいはその他の金属または合金であってもよい。
なお、図1Eに示す例では、平角線からなるワイヤ6はエッジワイズ巻きされているが、図1Fに示すように、ノーマルワイズ(フラットワイズ)巻きされていてもよい。この場合、ワイヤ6は、図1Eに示す例とは異なり、エッジが素子本体4の上面4aおよび底面4bを向いた状態で、第2コア部材42の周囲に巻回されることになる。ワイヤ6は、所定回数だけ巻回された後、エッジが素子本体4の側面4e,4fを向くように捻られつつ、素子本体4の側面4c側に向かってY軸方向に沿って引き出される。ワイヤ6(リード端6a,6b)は、エッジが素子本体4の側面4e,4fを向くまで略90度捻られると、Z軸方向に屈曲し、素子本体4の底面4bに向かってZ軸方向に沿って引き出されるとともに、Y軸方向に屈曲して、素子本体4の側面4dに向かってY軸方向に沿って引き出される。
また、図3Aに示すように、平角線からなるワイヤ6をα巻きしたコイル部6αを形成してもよい。この場合、上述した端子電極形成工程において、素子本体4の側面4e,4fから露出しているワイヤ6のリード部6a,6bの端面(継線部)6a1,6b1に接続されるように、端子電極8a,8bを素子本体4の側面4e,4fに形成すればよい。
また、この平角線からなるワイヤ6のリード部6a,6bに対して、図3Bに示すように、所定量(所定角度)だけ捻りを加えてもよい。この場合、リード部6a,6bの端面6a1,6b1は、その長手方向が図3Aに示す例とは所定角度(図示の例では、略90度)だけ傾いた状態で、素子本体4の側面4e,4fに接続されることになる。すなわち、図3Aに示す例では、リード部6a,6bの端面6a1,6b1の長手方向は、素子本体4の底面4bに対して略垂直方向を向いていたが、図3Bに示す例では、リード部6a,6bの端面6a1,6b1の長手方向は、素子本体4の底面4bに対して略水平方向を向く。ワイヤ6のリード部6a,6bのうち、その延在方向に対して平行に延びる面(側面)は、素子本体4の側面4cからは露出していない。
なお、図3Bに示す例では、ワイヤ6のリード部6a,6bは、その端面6a1,6b1が図3Aに示す例に比べて略90度だけ傾斜するように捻られているが、その傾斜角度は90度よりも大きくてもよく、あるいは90度よりも小さくてもよい。
なお、ワイヤ6としては、絶縁被膜付きワイヤが好ましく用いられる。素子本体4を構成する主成分に金属磁性体粉が分散されていたとしても、ワイヤ芯線と素子本体4の金属磁性体粉末とが短絡するおそれが少なく、耐電圧特性が向上すると共に、インダクタンスの劣化防止にも寄与するからである。
上記各実施形態において、第1コア部材41、第2コア部材42および第3コア部材43のすべてが磁性体を含んでいる必要はなく、第1コア部材41、第2コア部材42および第3コア部材43の少なくとも1つが非磁性体を含んでいてもよい。
上記各実施形態において、たとえば第3コア部材430をシート状の部材で構成してもよい。この場合、コイル設置工程を経た第1コア部材成形体410の上からシート状の部材で構成された第3コア部材430を被せ、これらを加圧成形することにより、第1コア部材成形体410、第2コア部材42および第3コア部材430からなる基板400を形成することができる(基板形成工程)。
上記各実施形態において、第2コア部材42を非磁性材料のみで構成してもよい。第2コア部材42を非磁性材料で構成することにより、インダクタ2の分布容量を調整し、インダクタンス値などの磁気特性を制御することができる。
上記各実施形態では、凹部41b1の形状は、Z軸方向上方から見て楕円形状であったが、凹部41b1の形状はこれに限定されるものではない。たとえば、Z軸方向上方から見て円形、四角形、長方形、その他の多角形であってもよい。