JP7216319B2 - 炭素材料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素材料の製造方法に関する。
炭素材料の1種である炭素繊維の製造方法としては、従来から、ポリアクリロニトリル(PAN)を紡糸して得られる炭素繊維前駆体に耐炎化処理を施した後、炭化処理を施す方法が主として採用されている。しかしながら、この方法に用いられるPANは、炭素繊維の製造過程の耐炎化処理や炭化処理において、シアン化水素等の有害なガスが発生するという問題に加え、質量が大きく減少するため、その炭化収率は約50%と低く、炭素繊維の製造コストが高くなるという問題があった。
そこで、炭素繊維の炭化収率を向上させる技術として、PANをヨウ素ガスと酸素ガスとを含むガスと接触せしめて不炎化体とした後、不活性ガス雰囲気下で焼成する方法が提案されている(特開2002-160912号公報(特許文献1))。しかしながら、この方法では、PANよりも高価なヨウ素ガスを多量に使用するため、結果的には炭素繊維の製造コストが十分に低減しないという問題があった。また、PANは、その化学構造に窒素原子が含まれているため、炭素含有率が約68%と低く、このことも炭化収率が低くなる要因の1つであった。
一方、PAN系炭素繊維前駆体の耐炎化処理におけるPANの環化反応は大きな発熱を伴うものであるが、従来のPAN系炭素繊維前駆体の耐炎化処理は酸化性ガス雰囲気下で行われており、容易に除熱できないため、PAN系炭素繊維前駆体の処理量を極めて少なく抑え、かつ200℃から300℃まで徐々に温度を上げながら長時間かけて処理する必要があった。このため、従来のPAN系炭素繊維前駆体の耐炎化処理方法は十分に効率的な方法とは言えなかった。
そこで、炭素材料の新たな製造方法として、化学構造に窒素原子を含まないジエン系重合体を分子内環化させることによって得られる環構造含有重合体、例えば、3,4-ポリイソプレンを有機溶媒中で分子内環化させることによって得られるイソプレン系環化物に、炭化処理を施す方法が提案されている(特開2018-87312号公報(特許文献2))。この方法によれば、炭素材料を効率的に製造することができるものの、炭化収率は必ずしも十分なものではなかった。
特開2002-160912号公報 特開2018-87312号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、炭素材料を高い炭化収率で得ることが可能な炭素材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ジエン系共重合体を分子内環化させることによって得られる環構造含有重合体に酸化性雰囲気下で耐炎化処理を施すことによって、結晶性の高い炭素材料が得られることを見出した。しかしながら、300℃以下の温度で耐炎化処理を行った場合には、耐炎化処理を行わなかった場合に比べて、炭化収率が低下することを本発明者らは見出した。
そこで、本発明者らは、更に鋭意研究を重ねた結果、所定の温度で耐炎化処理を行うことによって、結晶性の高い炭素材料を高い炭化収率で得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の炭素材料の製造方法は、下記式(1)~(10):
Figure 0007216319000001
〔式中、R~R13はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1~20の有機基のうちのいずれかを表す。〕
で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含む環化率が80%以上の環構造含有重合体からなる炭素材料前駆体に、酸化性雰囲気下、330~450℃の温度で4分間~2時間の耐炎化処理を施し、次いで、炭化処理を施すことを特徴とする方法である。
このような本発明の炭素材料の製造方法においては、前記環構造含有重合体が、下記式(11)~(14):
Figure 0007216319000002
〔式中、R21~R32はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1~20の有機基のうちのいずれかを表し、a、b、c及びdはそれぞれ独立に0以上の整数である。〕
で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
また、本発明の炭素材料の製造方法においては、下記式(15)~(18):
Figure 0007216319000003
〔式中、R41~R44はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1~20の有機基のうちのいずれかを表す。〕
で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含むジエン系重合体を分子内環化させて前記環構造含有重合体を得ることが好ましい。
本発明によれば、結晶性の高い炭素材料を高い炭化収率で製造することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の炭素材料の製造方法は、下記式(1)~(10):
Figure 0007216319000004
〔式中、R~R13はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1~20の有機基のうちのいずれかを表す。〕
で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含む環構造含有重合体からなる炭素材料前駆体に、酸化性雰囲気下、320~450℃の温度で耐炎化処理を施し、次いで、炭化処理を施すことによって、炭素材料を得る方法である。
本発明においては、前記式(1)~(10)で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含む環構造含有重合体を炭素材料前駆体として使用する。このような環構造含有重合体を用いることによって、結晶性の高い炭素材料を高い炭化収率で得ることができる。また、前記式(1)~(10)で表される構造単位のうち、炭素材料前駆体の耐熱性、防炎性及び炭化収率が更に高くなるという観点から、前記式(1)~(9)で表される構造単位が好ましい。
前記式(1)~(10)中のR~R13は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1~20の有機基のうちのいずれかを表し、中でも、炭素材料前駆体の調製時の収率が向上し、また、炭素材料前駆体の耐熱性が更に高くなるという観点から、水素原子及び炭素数1~10の有機基のうちのいずれかであることが好ましく、水素原子及び炭素数1~6の有機基のうちのいずれかであることがより好ましく、紡糸等の成形加工時の溶媒への溶解性の向上及びゲル生成の抑制という観点から、炭素数1~6の有機基のうちのいずれかであることが更に好ましい。また、前記有機基としては、炭化収率が高くなるという観点から、炭化水素基が好ましい。
本発明に用いられる炭素材料前駆体においては、炭化収率が高くなるという観点から、炭素材料前駆体中の全ての構造単位に対して、前記式(1)~(10)で表される構造単位が1mol%以上であることが好ましく、10mol%以上であることがより好ましく、20mol%以上であることが更に好ましく、50mol%以上であることが特に好ましく、70mol%以上であることが最も好ましい。
また、前記炭素材料前駆体においては、炭化収率が更に高くなるという観点から、前記環構造含有重合体が、下記式(11)~(14):
Figure 0007216319000005
〔式中、R21~R32はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1~20の有機基のうちのいずれかを表し、a、b、c及びdはそれぞれ独立に0以上の整数である。〕
で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
前記式(11)で表される構造単位は、前記式(5)で表される構造単位と前記式(1)で表される構造単位と前記式(8)で表される構造単位とが結合して形成されるものであり、前記式(12)で表される構造単位は、前記式(6)で表される構造単位と前記式(2)で表される構造単位と前記式(9)で表される構造単位とが結合して形成されるものであり、前記式(13)で表される構造単位は、前記式(5)で表される構造単位と前記式(7)で表される構造単位と前記式(8)で表される構造単位とが結合して形成されるものであり、前記式(14)で表される構造単位は、前記式(1)で表される構造単位と前記式(4)で表される構造単位と前記式(9)で表される構造単位とが結合して形成されるものである。
前記式(11)~(14)で表される構造単位のうち、炭化収率が更に高くなり、また、紡糸性に優れた炭素材料前駆体が得られるという観点から、前記式(11)~(13)で表される構造単位が好ましい。
前記式(11)~(14)中のR21~R32は、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1~20の有機基のうちのいずれかを表し、中でも、炭素材料前駆体の調製時の収率が向上し、また、炭素材料前駆体の耐熱性が更に高くなるという観点から、水素原子及び炭素数1~10の有機基のうちのいずれかであることが好ましく、水素原子及び炭素数1~6の有機基のうちのいずれかであることがより好ましく、紡糸等の成形加工時の溶媒への溶解性の向上及びゲル生成の抑制という観点から、炭素数1~6の有機基のうちのいずれかであることが更に好ましい。また、前記有機基としては、炭化収率が高くなるという観点から、炭化水素基が好ましい。
また、前記式(11)~(14)中のa、b、c及びdはそれぞれ独立に0以上の整数であれば特に制限はなく、a、b、c、d=0及びa、b、c、d>0のいずれでもよいが、炭化収率が更に高くなるという観点から、a、b、c、dは1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。また、その上限としては特に制限はないが、50以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。なお、a、b、c及びdの値は、13C-NMRスペクトルにおけるピークの積分値の比から求めることができる。例えば、前記式(11)において、R21~R23がメチル基の場合、13C-NMRスペクトルのσ=約120ppm~約130ppmの範囲に観察される4置換オレフィンの炭素原子に由来するピークの積分値とσ=約15ppm~約25ppmの範囲に観察される前記メチル基の炭素原子に由来するピークの積分値との比からaの値を求めることができる。
前記炭素材料前駆体においては、炭化収率が更に高くなるという観点から、炭素材料前駆体中の全ての構造単位に対して、前記式(11)~(14)で表される構造単位が、1mol%以上であることが好ましく、10mol%以上であることがより好ましく、20mol%以上であることが更に好ましく、50mol%以上であることが特に好ましく、70mol%以上であることが最も好ましい。
また、前記炭素材料前駆体においては、紡糸性、製膜性等の成形性の観点から、ゲル量が炭素材料前駆体全体の50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
前記炭素材料前駆体の形状としては特に制限はなく、例えば、繊維状、フィルム状、粒子状等が挙げられ、目的とする炭素材料の形状に合わせて適宜所望の形状に成形することができる。炭素材料前駆体の成形方法としては特に制限はなく、従来公知の成形方法を採用することができ、例えば、繊維状に成形する場合には、溶液紡糸法、溶融紡糸法、ゲル紡糸法、液晶紡糸法等の従来公知の紡糸方法を適宜採用することができる。溶液紡糸法としては、湿式紡糸法、乾式紡糸法、乾湿式紡糸法、エレクトロスピニング法等の従来公知の溶液紡糸法を適宜採用することができる。また、溶液紡糸条件としては特に制限はなく、使用する溶媒の種類等に応じて適宜設定することができる。さらに、得られた繊維状の炭素材料前駆体は、従来公知の繊維延伸法により所望の直径に延伸することができる。
このような炭素材料前駆体を構成する環構造含有重合体は、例えば、ジエン系重合体を分子内環化させることによって調製することができる。このようなジエン系重合体としては、例えば、下記式(15)~(18):
Figure 0007216319000006
〔式中、R41~R44はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1~20の有機基のうちのいずれかを表す。〕
で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。以下、前記式(15)で表される構造単位を「3,4-構造単位」、前記式(16)で表される構造単位を「トランス-1,4-構造単位」、前記式(17)で表される構造単位を「シス-1,4-構造単位」、前記式(18)で表される構造単位を「1,2-構造単位」と略す。
前記式(15)~(18)で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含むジエン系重合体としては、炭素材料前駆体の環化率及び炭化収率が高くなるという観点から、前記3,4-構造単位を、全構造単位に対して40mol%以上(より好ましくは60mol%以上、特に好ましくは80mol%以上)含有するものが好ましい。
また、前記ジエン系重合体としては、天然ゴム等の重合以外の方法で得られたものを用いることも可能であるが、炭化収率が確実に高くなるという観点から、共役ジエン系単量体の単独重合体、共役ジエン系単量体とその他の重合性単量体との共重合体、及びこれらの混合物等の共役ジエン系単量体を用いて重合したものを用いることが好ましい。
前記共役ジエン系単量体としては特に制限はないが、下記式(19):
Figure 0007216319000007
で表されるものが好ましい。
前記式(19)中のR51は、水素原子及び炭素数1~20の有機基のうちのいずれかを表し、中でも、炭素材料前駆体の環化率が向上し、耐熱性及び炭化収率が更に高くなるという観点から、水素原子及び炭素数1~10の有機基のうちのいずれかであることが好ましく、水素原子及び炭素数1~6の有機基のうちのいずれかであることがより好ましく、紡糸等の成形加工時の溶媒への溶解性の向上及びゲル生成の抑制という観点から、炭素数1~6の有機基のうちのいずれかであることが更に好ましい。また、前記有機基としては、炭化収率が高くなるという観点から、炭化水素基が好ましい。
前記式(19)で表される共役ジエン系単量体として具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-プロピル-1,3-ブタジエン、2-ブチル-1,3-ブタジエン、2-ペンチル-1,3-ブタジエン、2-ヘキシル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、2-メトキシ-1,3-ブタジエン、ミルセン等が挙げられる。
また、本発明においては、1-ペンチル-1,3-ブタジエン、1-ヘキシル-1,3-ブタジエン、1-ヘプチル-1,3-ブタジエン、1-オクチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-ヘキシロキシ‐1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン等の前記式(19)で表される共役ジエン系単量体以外のその他の共役ジエン系単量体も用いることができる。
前記その他の重合性単量体として、前記共役ジエン系単量体と共重合し得るものであれば特に制限はないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、o-クロルスチレン、m-クロルスチレン、p-クロルスチレン、p-ブロモスチレン、2-メチル-1,4-ジクロルスチレン、2,4-ジブロモスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、1-ブテン等の鎖状オレフィン系単量体;シクロペンテン、2-ノルボルネン等の環状オレフィン系単量体;1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等の非共役ジエン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ジエチル等のα,β-不飽和カルボン酸エステル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の窒素含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸無水物;塩化ビニル;ビニルアルコール等が挙げられる。
前記ジエン系重合体における前記共役ジエン系単量体に由来する構成単位(共役ジエン系単量体単位)の含有量としては本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はないが、炭素材料前駆体の環化率及び炭化収率が高くなるという観点から、40mol%以上が好ましく、60mol%以上がより好ましく、80mol%以上が特に好ましい。
このようなジエン系重合体の調製方法としては特に制限はなく、例えば、チタン等の触媒成分を含有する遷移金属系重合触媒(例えば、チーグラー系重合触媒)、有機リチウム系重合触媒(例えば、アルキルリチウム重合触媒)、ラジカル重合触媒等を用いる従来公知の重合方法を採用することができるが、得られるジエン系重合体において前記式(15)で表される構造単位(3,4-構造単位)の含有量が多くなるという観点から、遷移金属系重合触媒を用いる重合方法が好ましく、さらに、3,4-構造単位の含有量が多くなり、かつ製造コストが低減されるという観点から、遷移金属系重合触媒とアルミノキサン等の有機アルミニウム化合物等の助触媒を併用した重合方法がより好ましい。
また、ジエン系重合体として1,2-ポリブタジエンを調製する方法としては、特開2009-235191号公報に記載の方法を採用することができる。具体的には、コバルト化合物(好ましくは、炭素数4以上の有機酸とコバルトとの有機酸塩)とアルミノオキサンとを含有する触媒の存在下でブタジエンを重合させることによってシンジオタクチック1,2-ポリブタジエンを調製することができる。
このようなジエン系重合体の調製方法においては、必要に応じて水及び/又は有機溶媒を用いることができる。前記有機溶媒としては特に制限はないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエチレン等のハロゲン系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、クロロフェノール、フェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、スルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトン、1,5-ジメチル-2-ピロリドン等の含酸素系溶媒;アセトニトリル等の含窒素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ネオペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
ジエン系重合体の調製方法における重合温度としては、得られるジエン系重合体において前記3,4-構造単位の含有量が多くなるという観点から、-100~150℃が好ましく、-50~50℃がより好ましい。また、重合時間としては、1分間~48時間が好ましく、10分間~24時間がより好ましい。
前記炭素材料前駆体を構成する環構造含有重合体(ジエン系重合体環化物)は、このようなジエン系重合体を分子内環化させることによって調製することができる。下記の反応式はジエン系重合体の分子内環化反応の一例である。
Figure 0007216319000008
前記式中のR51は、水素原子及び炭素数1~20の有機基のうちのいずれかを表す。例えば、R51が水素原子の場合には、ジエン系重合体は1,2-ポリブタジエンであり、R51がメチル基の場合には、ジエン系重合体は3.4-ポリイソプレンである。
ジエン系重合体の分子内環化反応は、共役ジエン系単量体単位同士又は共役ジエン系単量体単位とその他の重合性単量体単位との間で進行する。このような分子内環化反応としては重合反応やディールス・アルダー反応等が挙げられ、通常、環化触媒が用いられる。前記環化触媒としては、ルイス酸やブレンステッド酸等の酸触媒が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素等の水素酸;硫酸、酢酸、過塩素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、フルオロメタンスルホン酸、ジフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のオキソ酸及びこれらの無水物又はアルキルエステル;三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素等のハロゲン化ホウ素;燐モリブデン酸、燐タングステン酸等のヘテロポリ酸;四塩化スズ、塩化鉄、四塩化チタン、塩化アルミニウム、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムモノクロリド、五塩化アンチモン、六塩化タングステン、臭化アルミニウム等の金属ハロゲン化物;シリカ、アルミナ、ゼオライト、酸性白土、タングステン酸ジルコニア等の固体酸;トリフェニルボラン、トリス(4-フルオロフェニル)ボラン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等のボラン化合物;トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルシリリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルシリリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のボレート化合物が挙げられる。これらの環化触媒は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの環化触媒の中でも、炭素材料前駆体の環化率が高くなるという観点から、オキソ酸、金属ハロゲン化物が好ましく、また、炭素材料前駆体の溶媒への溶解性や溶融加工性が向上するという観点から、スルホン酸化合物が好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸がより好ましい。
また、このような分子内環化反応は溶媒の非存在下で行うことも可能であるが、溶媒(水及び/又は有機溶媒)中で行うことが好ましい。前記有機溶媒としては特に制限はないが、前記ジエン系重合体の調製方法において例示したものが挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
ジエン系重合体の分子内環化反応を水及び/又は有機溶媒中で行う場合における反応温度としては、-100~300℃が好ましく、-25~150℃がより好ましい。また、反応時間としては、1分間~48時間が好ましく、5分間~24時間がより好ましい。
また、前記ジエン系重合体環化物の調製方法においては、ジエン系重合体の分子内環化反応を水及び/又は有機溶媒中で行うことが好ましいが、従来のPAN系炭素材料前駆体の場合と異なり、環化時の急激な発熱が起こらないため、水及び/又は有機溶媒中での液相反応ではなく、耐炎炉等の加熱装置を用いて空気中や不活性ガス中で加熱して分子内環化反応を行うことも可能である。この場合の反応温度の下限としては100℃以上が好ましく、上限としては300℃以下が好ましい。また、反応時間としては、1分間~5時間が好ましく、1~30分間がより好ましい。
前記環構造含有重合体の調製方法においては、このようなジエン系重合体の分子内環化反応によって生成したジエン系重合体環化物の過度のゲル化を防止するために、フェノール系、アミン系、スルフィド系、ホスファイト系等の老化防止剤を添加することが好ましい。前記老化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールが挙げられる。
また、前記環構造含有重合体の調製方法においては、生成したジエン系重合体環化物を加熱したり、酸化剤(脱水素化剤)で処理したりすることによって、ジエン系重合体環化物内の水素を脱離させることができ、例えば、前記式(1)で表される構造単位の水素を脱離させることによって、前記(2)~(4)及び(7)で表される構造単位が形成される。前記脱水素化剤としては、例えば、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノンやテトラクロロ-1,4-ベンゾキノン(別名:クロラニル)等のキノン系物質、ニトロベンゼン等のニトロ系物質、過酸化水素や過酸化カリウム等の過酸化物、過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩類などが挙げられる。
このようにして得られる炭素材料前駆体の環化率(ジエン系重合体のオレフィン性二重結合が環化した割合)としては、炭素材料前駆体の耐熱性及び炭化収率が高くなるという観点から、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましく、50%以上が特に好ましく、80%以上がとりわけ好ましく、90%以上が最も好ましい。
このような調製方法によって得られる環構造含有重合体としては特に制限はないが、前記式(1)~(10)で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含むものが好ましく、前記式(11)~(14)で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含むものがより好ましい。
本発明に用いられる炭素材料前駆体は、溶融又は溶媒(水及び/又は有機溶媒)と混合して溶液の状態として使用することが可能であり、これにより、溶融成形(溶融紡糸等)又は溶液成形(溶液紡糸等)等によって成形加工することができる。
本発明に用いられる炭素材料前駆体の溶液は、前記環構造含有重合体からなる炭素材料前駆体と溶媒とを含有するものであり、炭素材料前駆体の少なくとも一部、好ましくは全部が溶媒に溶解したものである。このような炭素材料前駆体の溶液は、例えば、溶液紡糸法により炭素材料前駆体を繊維状に成形する場合等に好適に用いることができる。
このような炭素材料前駆体の溶液は、炭素材料前駆体と溶媒とを混合することによって製造することができるが、炭素材料前駆体の調製工程で得られる炭素材料前駆体と有機溶媒とを含有する溶液や、炭素材料前駆体の後処理工程等で得られる炭素材料前駆体と溶媒とを含有する溶液等をそのまま、前記炭素材料前駆体の溶液として使用することができる。
前記炭素材料前駆体の溶液に含まれる溶媒としては特に制限はないが、例えば、有機溶媒及び水が挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。前記有機溶媒としては特に制限はないが、前記ジエン系重合体の調製方法において例示したものが挙げられる。これらの有機溶媒も1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
本発明の炭素材料の製造方法においては、このような炭素材料前駆体に、酸化性雰囲気下(例えば、空気中)、所定の温度で耐炎化処理を施す。これにより、炭素材料前駆体において部分酸化と脱水素反応による芳香族化が進行し、耐炎化物が形成される。
本発明の炭素材料の製造方法において、このような耐炎化処理の温度は320~450℃である。耐炎化処理の温度が前記下限未満になると、炭化収率及び炭素材料の結晶性が低下し、前記上限を超えると、炭化収率が低下する。また、炭素材料の結晶性及び炭化収率が向上するという観点から、耐炎化処理の温度としては330~430℃が好ましく、340℃~420℃がより好ましく、350~410℃が更に好ましい。耐炎化処理の時間としては特に制限はないが、炭素材料の結晶性及び炭化収率が向上するとともに、生産効率も高くなるという観点から、30秒間~24時間が好ましく、1分間~18時間がより好ましく、1分間~18時間が更に好ましく、3分間~6時間が特に好ましく、4分間~2時間がとりわけ好ましく、5分間~1時間が最も好ましい。
なお、このようにして得られる炭素材料前駆体の耐炎化物は、後述する炭化処理によって、結晶性の高い炭素材料を高い炭化収率で形成することを可能にするものであることに加えて、耐炎性、難燃性、耐熱性、耐腐食性、耐摩耗性にも優れていることから、耐炎ポリマーとして耐炎繊維や耐炎フィルム等として使用することができる。このような耐炎繊維や耐炎フィルムは、例えば、航空機等の移動体の防炎断熱材やブレーキパッド、車両の内装材や各種部品、消火用防護衣、炉前作業衣、溶接用スパッタシート、電気機器の延焼防止材等に使用することができる。
次に、本発明の炭素材料の製造方法においては、このようにして形成された炭素材料前駆体の耐炎化物に、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等)雰囲気下で炭化処理を施す。これにより、結晶性の高い(すなわち、グラファイト構造の含有率が高い)炭素材料が形成される。特に、前記範囲の温度で耐炎化処理を施すことによって形成された炭素材料前駆体の耐炎化物に炭化処理を施すことによって、結晶性の高い炭素材料を高い炭化収率で得ることができる。
このような炭化処理の温度としては、水素原子が除去される温度であれば特に制限はないが、500℃以上が好ましく、600℃以上がより好ましく、700℃以上が更に好ましく、800℃以上が特に好ましい。また、炭化処理温度の上限としては特に制限はないが、3000℃以下が好ましく、2500℃以下がより好ましく、2000℃以下が更に好ましく、1500℃以下が特に好ましい。本発明に用いられる前記環構造含有重合体からなる炭素材料前駆体及びその耐炎化物には窒素原子が含まれておらず、前記範囲の温度で炭化処理を施しても、窒素原子の脱離による重量減少が起こらないため、高い炭化収率で炭素材料を得ることができる。一方、従来の炭素材料前駆体であるポリアクリロニトリルには窒素原子が含まれており、前記範囲の温度で炭化処理を施すと、窒素原子の脱離による重量減少が起こるため、炭化収率が低下する。
このように本発明の製造方法によって得られる炭素材料は、結晶性が高いものであり、このため、優れた力学特性や電気伝導性を有している。具体的には、ラマンスペクトルにおいて、1590cm-1付近のグラファイト構造由来のGピークと1350cm-1付近のグラファイト構造の欠陥由来のDピークとの強度比(G/D)が0.8以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.9以上であることが特に好ましい。
また、このように本発明の製造方法によって得られる炭素材料は、ガラス状炭素、炭素繊維、炭素フィルム、カーボンナノファイバー、炭素繊維強化炭素材料等として使用することができ、特に、炭素繊維、炭素フィルム、カーボンナノファイバーとして有用である。また、前記炭素材料は、樹脂、金属、セラミックス、セルロース(ナノセルロースを含む)、リグニン等と混合して複合材料を形成することもできる。さらに、前記複合材料が樹脂複合材料、セルロース複合材料、リグニン複合材料の場合には、さらに炭化処理を施して炭素複合材料を形成することも可能である。また、前記炭素材料前駆体と樹脂、金属、セラミックス、セルロース(ナノセルロースを含む)、リグニン等とを混合して複合材料前駆体を形成し、この複合材料前駆体に本発明にかかる耐炎化処理と炭化処理とを施すことによって、前記炭素材料を含有する複合材料を形成することができる。さらに、前記炭素材料前駆体の耐炎化物と樹脂、金属、セラミックス、セルロース(ナノセルロースを含む)、リグニン等とを混合して複合材料前駆体を形成し、この複合材料前駆体に本発明にかかる炭化処理を施すことによって、前記炭素材料を含有する複合材料を形成することもできる。
前記複合材料に用いられる樹脂としては特に制限はなく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミド、熱硬化性シリコーン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、及びウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリスチレン、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル-スチレン)樹脂、MAS(メタクリル酸メチル-アクリロニトリル-スチレン)樹脂、MABS(メタクリル酸メチル-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、及びSBS(スチレン-ブタジエン-スチレン)樹脂等の芳香族ビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、これらの共重合体、及びアクリルゴム等のアクリル系樹脂;ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-アクリル酸メチル樹脂、及びアクリロニトリル-ブタジエン樹脂等のシアン化ビニル系樹脂;イミド基含有ビニル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、及びエチレンプロピレンゴム等のポリオレフィン系樹脂;酸又は酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂、エポキシ変性ポリオレフィン樹脂、酸又は酸無水物変性アクリル系エラストマー、エポキシ変性アクリルエラストマー、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4-シクロヘキサンジメチルテレフタレート等のポリエステル、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン及びポリフッ化ビニル等のフッ素系樹脂、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルアミド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、前記樹脂複合材料には、必要に応じて各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、粘度調整剤、着色剤、シランカップリング剤等の表面処理剤、タルク、モンモリロナイト等の粘土鉱物、雲母鉱物及びカオリン鉱物等の層状ケイ酸塩、ガラス繊維、炭素繊維、シリカや熱伝導性フィラー等の充填剤、エラストマー類等が挙げられる。前記熱伝導性フィラーとしては特に制限はないが、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、酸化亜鉛、グラファイト、炭素繊維や、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノプレートレット、グラフェン、数層グラフェン、ナノグラファイト(グラフェンナノリボン等)、ナノグラフェン、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノコイル、フラーレン、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化ホウ素ナノリボン、窒化ホウ素ナノドット、窒化ホウ素ナノシート等のナノフィラーが挙げられる。これらの添加剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、重合体の組成分析方法、環化率の算出方法、結晶性の評価方法、イソプレン系重合体の重合に使用した触媒の合成方法、イソプレン系重合体の重合方法、炭素材料前駆体の調製方法を以下に示す。
<重合体の組成分析方法>
重合体を重水素化クロロホルム(イソプレン系重合体及びその環化物の場合)又は重水素化トルエン(ブタジエン系重合体及びその環化物の場合)に溶解し、H-NMR測定(30℃、400MHz)及び13C-NMR測定(30℃、100MHz)を行った。得られたH-NMRスペクトルに基づいて、各構成単位の下記のプロトンのピークの積分値を求め、これらの比から重合体中の各構造単位のモル比を決定した。なお、H-NMRスペクトルにおいて、前記式(15)で表される構造単位(3,4-構造単位)のオレフィン性二重結合中の2個のプロトンのピークは約4.6ppmと約4.7ppmの位置に、前記式(16)で表される構造単位(トランス-1,4-構造単位)と前記式(17)で表される構造単位(シス-1,4-構造単位)のオレフィン性二重結合中のプロトンのピークは共に約5.1ppmの位置に、前記式(18)で表される構造単位(1,2-構造単位)のα―メチル基のプロトンのピークは約0.93ppmの位置に観察される。また、前記トランス-1,4-構造単位と前記シス-1,4-構造単位の比率は、13C-NMRスペクトルにおいて、前記トランス-1,4-構造単位のメチル基のカーボンのピークが約16ppmの位置に、前記シス-1,4-構造単位のメチル基のカーボンのピークが約23.5ppmの位置に観察されることから、これらのピークの積分値から求めることができる。なお、13C-NMRスペクトルにおいて、前記3,4-構造単位のメチル基のカーボンのピークは約18ppmの位置に観察される。
<環化率の算出方法>
前記重合体の組成分析方法において得られたジエン系重合体のH-NMRスペクトルから、前記式(15)で表される構造単位(3,4-構造単位)、前記式(16)で表される構造単位(トランス-1,4-構造単位)、前記式(17)で表される構造単位(シス-1,4-構造単位)及び前記式(18)で表される構造単位(1,2-構造単位)のオレフィン性二重結合中のプロトンのピークの積分値の合計(A)を求め、ジエン系重合体の全プロトンのピークの積分値(B)に対する割合(A/B)を算出した。
また、前記重合体の組成分析方法において得られた炭素材料前駆体を構成する重合体(ジエン系重合体環化物)のH-NMRスペクトルから、オレフィン性二重結合中のプロトンのピークの積分値(a)を求め、ジエン系重合体環化物の全プロトンのピークの積分値(b)に対する割合(a/b)を算出した。なお、ジエン系重合体環化物の環構造単位中に二重結合が存在する場合には、この二重結合中のプロトンのピークは約5.25ppmの位置に観察され、また、これら二重結合が共役系となる場合には、約5.8ppm~約7.2ppmの範囲においてピークが観察され、前記オレフィン性二重結合中のプロトンのピークと区別することができ、環構造単位の二重結合中のプロトンのピークの積分値はオレフィン性二重結合中のプロトンのピークの積分値(a)に含まれない。
これらのプロトンのピークの積分値の割合A/B及びa/bから、オレフィン性二重結合中のプロトンのピークの積分値の減少率を、下記式:
減少率[%]=[(A/B)-(a/b)]/(A/B)×100
に従って求め、これを環化率とした。
<結晶性の評価方法>
炭素材料のラマンスペクトルを、レーザーラマン分光分析装置(日本分光株式会社製「NSR-3300」)を用いて測定し、1590cm-1付近のグラファイト構造由来のGピークと1350cm-1付近のグラファイト構造の欠陥由来のDピークとの強度比(G/D)を求めた。なお、G/Dの値が大きいほど、結晶性が高いことを意味している。
(合成例1)
イソプレンの選択的3,4-付加重合を可能とする重合触媒として、下記反応式:
Figure 0007216319000009
に従って、FeClにトリ-tert-ブチル-テルピリジン(TBTP)を配位させたFeCl(TBTP)を合成した。すなわち、先ず、0.2gのFeClを50mlの無水テトラヒドロフラン(THF)に分散させた。次に、得られた分散液に0.5gのTBTPを添加し、室温で10時間撹拌した。得られた溶液を15時間静置して沈殿物を生成させ、THFで洗浄しながら吸引ろ過を行った。その後、得られた粉体を30℃で3日間真空乾燥させ、FeCl(TBTP)を得た(収率:93%)。
(重合例1)
Figure 0007216319000010
に従って、イソプレン系重合体(a-1)を重合した。すなわち、フラスコに、合成例1で得られた225.5mg(0.4mmol)のFeCl(TBTP)を入れ、さらに、窒素雰囲気下で2.75mlの無水トルエンを加えた。次に、2.516g(40mmol)の修飾メチルアルミノキサン(MMAO、[(CH0.95(C170.05AlO]を含む無水トルエン溶液(MMAO濃度:16.3質量%)17.25mlを滴下した。その後、8.0ml(80mmol)のイソプレンを滴下し、25℃で3時間重合を行った。重合後の溶液に20mlのトルエンを添加して希釈した。この溶液を395.9mgの2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)を含むメタノール500mlに滴下して沈殿物を生成させた。この沈殿物を395.9mgのBHTを含むメタノール500mlを用いて洗浄した。この洗浄操作を3回行って白色の固体を得た。得られた固体を室温で3日間真空乾燥させ、イソプレン系重合体(a-1)を得た(収率:99%)。
得られたイソプレン系重合体(a-1)の組成を前記方法に従って分析した。その結果、3,4-構造単位は74.4%、トランス-1,4-構造単位は5.6%、シス-1,4-構造単位は20.0%、1,2-構造単位は0.0%であった。
(重合例2)
重合温度を0℃に変更した以外は重合例1と同様にしてイソプレン系重合体(a-2)を調製した(収率:98%)。得られたイソプレン系重合体(a-2)の組成を前記方法に従って分析した。その結果、3,4-構造単位は85.0%、トランス-1,4-構造単位は0.0%、シス-1,4-構造単位は15.0%、1,2-構造単位は0.0%であった。
(調製例1)
重合例1で得られたイソプレン系重合体(a-1)2gを、窒素雰囲気下、90mlの無水トルエンに溶解させた。この溶液に0.02gのトリフルオロメタンスルホン酸を添加した後、窒素雰囲気下、室温で60分間撹拌した。得られた溶液に200mlの炭酸ナトリウム5%水溶液を添加して反応を停止させた。得られた溶液を、老化防止剤として1質量%の2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)を含む大過剰のメタノールに滴下して生成物を沈殿させた。この沈殿物を1質量%のBHTを含むメタノールで3回洗浄し、さらに、イオン交換水で3回洗浄した後、室温で2日間真空乾燥して炭素材料前駆体(b-1)を得た。
得られた炭素材料前駆体(b-1)の組成を前記方法に従って分析した。その結果、H-NMRスペクトルの約4.6ppmと約4.7ppmの位置に観察される、3,4-構造単位のオレフィン性二重結合中の2個プロトンのピークが減少しており、炭素材料前駆体(b-1)はイソプレン系重合体の分子内環化が進行した環構造含有重合体であることが確認された。前記方法に従って環化率を求めたところ、85%であった。
(調製例2)
イソプレン系重合体(a-1)の代わりに重合例2で得られたイソプレン系重合体(a-2)を2g用いた以外は調製例1と同様にして炭素材料前駆体(b-2)を得た。得られた炭素材料前駆体(b-2)の組成を前記方法に従って分析した。その結果、H-NMRスペクトルにおいて、3,4-構造単位のオレフィン性二重結合中の2個プロトンのピークがほぼ消失しており、炭素材料前駆体(b-2)は炭素材料前駆体(b-1)に比べて分子内環化が更に進行した環構造含有重合体であることが確認された。前記方法に従って環化率を求めたところ、97%であった。
(調製例3)
シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン(JSR株式会社製「RB810」、1,2-結合含有割合:90%、融点:71℃)2gを、窒素雰囲気下、40mlの無水トルエンに溶解させた。この溶液に0.02gのトリフルオロメタンスルホン酸を徐々に添加した後、窒素雰囲気下、室温で20分間撹拌した。得られた溶液に90mlの炭酸ナトリウム5%水溶液を添加して反応を停止させた。得られた溶液を、老化防止剤として1質量%の2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)を含む大過剰のメタノールに滴下して生成物を沈殿させた。この沈殿物を1質量%のBHTを含むメタノールで3回洗浄し、さらに、イオン交換水で3回洗浄した後、室温で2日間真空乾燥して炭素材料前駆体(b-3)を得た。
得られた炭素材料前駆体(b-3)の組成を前記方法に従って分析した。その結果、H-NMRスペクトルの約5ppmの位置に観察される、オレフィン性二重結合中の2個プロトンのピークが減少しており、炭素材料前駆体(b-3)はシンジオタクチック1,2-ポリブタジエンの分子内環化が進行した環構造含有重合体であることが確認された。前記方法に従って環化率を求めたところ、90%であった。
(調製例4)
1,2-結合含有割合が90%の前記シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン(JSR株式会社製「RB810」)の代わりに1,2-結合含有割合が94%のシンジオタクチック1,2-ポリブタジエン(JSR株式会社製「RB840」、融点:126℃)を2g用いた以外は調製例3と同様にして炭素材料前駆体(b-4)を得た。得られた炭素材料前駆体(b-4)の組成を前記方法に従って分析した。その結果、H-NMRスペクトルの約5ppmの位置に観察される、オレフィン性二重結合中の2個プロトンのピークが減少しており、炭素材料前駆体(b-3)はシンジオタクチック1,2-ポリブタジエンの分子内環化が進行した環構造含有重合体であることが確認された。前記方法に従って環化率を求めたところ、95%であった。
(実施例1)
調製例1で得られた炭素材料前駆体(b-1)に、熱重量分析装置(理学電機株式会社製「Thermo plus TG8120」)を用いて、空気流量500ml/分の空気雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温から350℃まで加熱し、さらに、この温度で30分間加熱して耐炎化処理を施した後、室温まで冷却して、炭素材料前駆体(b-1)の耐炎化物を得た。
次に、この炭素材料前駆体(b-1)の耐炎化物に、熱重量分析装置(理学電機株式会社製「Thermo plus TG8120」)を用いて、窒素気流下(500ml/分)、昇温速度20℃/分で室温から1000℃まで加熱して熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。耐炎化物に吸着した水の影響を除外するため、150℃における耐炎化物の質量を基準として、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を下記式:
炭化収率[%]=M1000/M150×100
〔M:1000℃において得られた炭素材料の質量、M150:150℃における炭素材料前駆体の質量〕
により求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(実施例2)
400℃で耐炎化処理を行った以外は実施例1と同様にして、炭素材料前駆体(b-1)の耐炎化物を得た。次に、この炭素材料前駆体(b-1)の耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(実施例3)
調製例2で得られた炭素材料前駆体(b-2)に330℃で耐炎化処理を施した以外は実施例1と同様にして、炭素材料前駆体(b-2)の耐炎化物を得た。次に、この炭素材料前駆体(b-2)の耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(実施例4)
350℃で耐炎化処理を行った以外は実施例3と同様にして、炭素材料前駆体(b-2)の耐炎化物を得た。次に、この炭素材料前駆体(b-2)の耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(実施例5)
400℃で耐炎化処理を行った以外は実施例3と同様にして、炭素材料前駆体(b-2)の耐炎化物を得た。次に、この炭素材料前駆体(b-2)の耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(実施例6)
調製例3で得られた炭素材料前駆体(b-3)に耐炎化処理を施した以外は実施例1と同様にして、炭素材料前駆体(b-3)の耐炎化物を得た。次に、この炭素材料前駆体(b-3)の耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(実施例7)
400℃で10分間耐炎化処理を行った以外は実施例6と同様にして、炭素材料前駆体(b-3)の耐炎化物を得た。次に、この炭素材料前駆体(b-3)の耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(実施例8)
400℃で耐炎化処理を行った以外は実施例6と同様にして、炭素材料前駆体(b-3)の耐炎化物を得た。次に、この炭素材料前駆体(b-3)の耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(実施例9)
調製例4で得られた炭素材料前駆体(b-4)に400℃で10分間耐炎化処理を施した以外は実施例1と同様にして、炭素材料前駆体(b-4)の耐炎化物を得た。次に、この炭素材料前駆体(b-4)の耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(比較例1)
調製例1で得られた炭素材料前駆体(b-1)に耐炎化処理を施さなかった以外は実施例1と同様にして、炭素材料前駆体(b-1)に、熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(比較例2)
調製例2で得られた炭素材料前駆体(b-2)に耐炎化処理を施さなかった以外は実施例1と同様にして、炭素材料前駆体(b-2)に、熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(比較例3)
250℃で耐炎化処理を行った以外は実施例1と同様にして、炭素材料前駆体(b-1)の耐炎化物を得た。次に、この炭素材料前駆体(b-1)の耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(比較例4)
300℃で耐炎化処理を行った以外は実施例1と同様にして、炭素材料前駆体(b-1)の耐炎化物を得た。次に、この炭素材料前駆体(b-1)の耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(比較例5)
300℃で耐炎化処理を行った以外は実施例3と同様にして、炭素材料前駆体(b-2)の耐炎化物を得た。次に、この炭素材料前駆体(b-2)の耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(比較例6)
250℃で耐炎化処理を行った以外は実施例6と同様にして、炭素材料前駆体(b-3)の耐炎化物を得た。次に、この炭素材料前駆体(b-3)の耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(比較例7)
300℃で耐炎化処理を行った以外は実施例6と同様にして、炭素材料前駆体(b-3)の耐炎化物を得た。次に、この炭素材料前駆体(b-3)の耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(比較例8)
炭素材料前駆体として重合例1で得られたイソプレン系重合体(a-1)を用い、耐炎化処理を施さなかった以外は実施例1と同様にして、イソプレン系重合体(a-1)に、熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(比較例9)
炭素材料前駆体として1,2-結合含有割合が90%の前記シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン(JSR株式会社製「RB810」)を用い、耐炎化処理を施さなかった以外は実施例1と同様にして、前記ポリブタジエンに、熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(比較例10)
炭素材料前駆体として1,2-結合含有割合が94%の前記シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン(JSR株式会社製「RB840」)を用い、耐炎化処理を施さなかった以外は実施例1と同様にして、前記ポリブタジエンに、熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(比較例11)
炭素材料前駆体として重合例1で得られたイソプレン系重合体(a-1)を用い、300℃で耐炎化処理を施した以外は実施例1と同様にして、イソプレン系重合体(a-1)の耐炎化物を得た。次に、このイソプレン系重合体(a-1)の耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(比較例12)
炭素材料前駆体として1,2-結合含有割合が90%の前記シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン(JSR株式会社製「RB810」)を用い、300℃で耐炎化処理を施した以外は実施例1と同様にして、前記ポリブタジエンの耐炎化物を得た。次に、このポリブタジエンの耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(比較例13)
炭素材料前駆体としてポリアクリロニトリル(PAN、アルドリッチ社製、商品コード:181315、重量平均分子量:15万)を用い、耐炎化処理を施さなかった以外は実施例1と同様にして、前記ポリアクリロニトリルに、熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
(比較例14)
炭素材料前駆体としてポリアクリロニトリル(PAN、アルドリッチ社製、商品コード:181315)を用い、300℃で耐炎化処理を施した以外は実施例1と同様にして、前記ポリアクリロニトリルの耐炎化物を得た。次に、このポリアクリロニトリルの耐炎化物に、実施例1と同様にして熱重量分析(TGA)を行いながら炭化処理を施して炭素材料を得た。実施例1と同様にして、1000℃において得られた炭素材料の炭化収率を求めた。その結果を表1に示す。また、得られた炭素材料のG/D値を前記方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
Figure 0007216319000011
表1に示したように、実施例1~2と比較例1との対比、実施例3~5と比較例2との対比から、炭素材料前駆体(b-1)又は(b-2)に所定の温度で耐炎化処理を施した場合(実施例1~2、実施例3~5)には、耐炎化処理を施さなかった場合(比較例1、比較例2)に比べて、結晶性の高い炭素材料が高い炭化収率で得られることがわかった。また、実施例1~2と実施例3~5との対比から、炭素材料前駆体の環化率の高いほど、高い炭化収率で炭素材料が得られることがわかった。
実施例1~2と比較例3~4との対比、実施例3~5と比較例5との対比、実施例6~8と比較例6~7との対比から、炭素材料前駆体(b-1)、(b-2)又は(b-3)に所定の温度及びそれ以下のいずれの温度で耐炎化処理を施した場合でも結晶性の高い炭素材料が得られるものの、所定の温度で耐炎化処理を施した場合(実施例1~2、実施例3~5、実施例6~8)には、所定の温度より低い温度で耐炎化処理を施した場合(比較例3~4、比較例5、比較例6~7)に比べて、炭化収率が高くなることがわかった。また、比較例3~4と比較例1との対比、比較例5と比較例2との対比から、所定の温度より低い温度で耐炎化処理を施した場合(比較例3~4、比較例5)には、耐炎化処理を施さなかった場合(比較例1、比較例2)に比べて、炭化収率が低くなることがわかった。
比較例8~12に示した結果から、環化していない重合体を炭素材料前駆体として用いた場合には、得られる炭素材料の結晶性は低く、炭化収率も極めて低くなることがわかった。また、比較例11と比較例8との対比、比較例12と比較例9との対比から、環化していない重合体を炭素材料前駆体として用いた場合には、炭化処理の前に耐炎化処理を施した場合(比較例11、比較例12)でも、耐炎化処理を施さなかった場合(比較例8、比較例9)に比べて、炭化収率はほとんど向上しないことがわかった。
一方、比較例13~14に示した結果から明らかなように、炭素材料前駆体としてポリアクリロニトリルを用いた場合には、結晶性の高い炭素材料が得られるものの、炭素材料前駆体(b-1)、(b-2)、(b-3)又は(b-4)を用いた場合(実施例1~9、比較例1~7)に比べて、炭化収率が低くなることがわかった。
以上説明したように、本発明によれば、ジエン系重合体の環化物を用いて、結晶性の高い炭素材料を高い炭化収率で得ることが可能となる。したがって、本発明の炭素材料の製造方法は、結晶性の高い炭素材料を低コストで効率的に製造する方法として有用である。

Claims (3)

  1. 下記式(1)~(10):
    Figure 0007216319000012
    〔式中、R~R13はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1~20の有機基のうちのいずれかを表す。〕
    で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含む環化率が80%以上の環構造含有重合体からなる炭素材料前駆体に、酸化性雰囲気下、330~450℃の温度で4分間~2時間の耐炎化処理を施し、次いで、炭化処理を施すことを特徴とする炭素材料の製造方法。
  2. 前記環構造含有重合体が、下記式(11)~(14):
    Figure 0007216319000013
    〔式中、R21~R32はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1~20の有機基のうちのいずれかを表し、a、b、c及びdはそれぞれ独立に0以上の整数である。〕
    で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の炭素材料の製造方法。
  3. 下記式(15)~(18):
    Figure 0007216319000014
    〔式中、R41~R44はそれぞれ独立に水素原子及び炭素数1~20の有機基のうちのいずれかを表す。〕
    で表される構造単位のうちの少なくとも1種を含むジエン系重合体を分子内環化させて前記環構造含有重合体を得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素材料の製造方法。
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