JP7206925B2 - 圧電組成物および圧電素子 - Google Patents

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Description

本発明は、圧電組成物、および、当該圧電組成物を有する圧電素子に関する。
圧電組成物は、結晶内の電荷の偏りに起因する自発分極に基づき、外部から応力を受けることにより表面に電荷が発生する効果(圧電効果)と、外部から電界が印加されることにより歪みを発生する効果(逆圧電効果)と、を有している。
このような機械エネルギーと電気エネルギーとを相互に変換できる圧電組成物を適用した圧電素子は各種分野で幅広く用いられている。たとえば、逆圧電効果を利用する圧電素子としてのアクチュエータは、印加電圧に比例して、微少な変位が精度よく得られ、かつ応答速度が速いため、たとえば、光学系部品の駆動用素子、HDDのヘッド駆動用素子、インクジェットプリンタのヘッド駆動用素子、燃料噴射弁駆動用素子に用いられている。
また、圧電効果を利用して、微少な力や変形量を読み取るためのセンサとしても利用されている。さらに、圧電組成物は優れた応答性を有することから、交流電界を印加することで、圧電組成物自身または圧電組成物と接合関係にある弾性体を励振して共振を起こさせることも可能であり、圧電トランス、超音波モータなどとしても利用されている。
一般的に、圧電組成物は多結晶体で構成されており、焼成後の強誘電体組成物に分極処理を施すことにより得られる。焼成後の強誘電体組成物では、各結晶における自発分極の向きがランダムであり、強誘電体組成物全体としては、電荷の偏りは生じておらず、圧電効果および逆圧電効果を示さない。そこで、焼成後の強誘電体組成物に抗電界以上の直流電界を印加することで、自発分極の向きを一定の方向に揃える分極処理と呼ばれる操作を行う。分極処理後の強誘電体組成物は圧電組成物としての性質を発現できる。
圧電組成物としては、ジルコン酸鉛(PbZrO)とチタン酸鉛(PbTiO)とからなる鉛系圧電組成物が多く使用されている。しかしながら、鉛系圧電組成物には、融点の低い酸化鉛(PbO)が60~70重量%程度含まれており、焼成時に酸化鉛が揮発しやすい。そのため、環境負荷の観点から、圧電組成物の無鉛化が極めて重要な課題となっている。
鉛を全く含有しない圧電組成物としては、ビスマス層状強誘電体等が知られている。しかしながら、ビスマス層状強誘電体は、結晶異方性が大きいためにホットフォージング法により印加されたせん断応力を利用して自発分極を配向させる必要があり、生産性の点で問題がある。
一方、最近では環境配慮型の新たな圧電組成物として、ニオブ酸アルカリ金属系の化合物について研究が進められている。このニオブ酸アルカリ金属系の化合物に対して新たな特性を付与するために、添加成分を添加することが行われている。たとえば、特許文献1には、ニオブ酸アルカリ金属系の化合物に酸化銅が添加された圧電組成物が開示されている。また、非特許文献1には、ニオブ酸アルカリ金属系の化合物に酸化ゲルマニウムが添加された圧電組成物が開示されている。
特許4398635号公報
圧電組成物を有する圧電素子が搭載される機器の高性能化、小型化を実現するには、圧電素子の性能を維持したまま、圧電素子のサイズを小さくする必要がある。この場合、圧電組成物のサイズも小さくする必要があるが、圧電組成物のサイズが小さくなると、圧電組成物の機械的強度は低下してしまう。機械的強度が低下してしまうと、圧電組成物の加工時に不良品が発生する恐れがある。したがって、圧電組成物には良好な機械的強度を有することが求められる。
また、圧電素子が搭載される機器は様々な環境で使用されるため、圧電素子には過酷な環境に対して高い信頼性を有していることが求められる。過酷な環境としては、たとえば、高温高湿条件が例示される。
しかしながら、特許文献1に開示されているニオブ酸アルカリ金属系の化合物は、焼成時にアルカリ金属元素が揮発し、焼成後の圧電組成物の内部に空隙、欠陥等が生じやすく、機械的強度が低いという問題があった。ところが、特許文献1では、機械的強度については何ら評価されていない。さらに、特許文献1に開示されている焼成後の圧電組成物の内部に生じた空隙、欠陥等を通じて水分等が侵入しやすく、信頼性も低いと考えられる。
また、非特許文献1に開示されているニオブ酸アルカリ金属系の化合物は低温焼結が可能であることは記載されているものの、機械的品質係数Qm等の圧電特性は低く、機械的強度および信頼性は何ら評価されていない。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、機械的強度と圧電特性とを両立でき、しかも高い信頼性を有する圧電組成物と、その圧電組成物を備える圧電素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の態様は、
[1]組成式KNbOで表され、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物と、銅と、ゲルマニウムと、を含む圧電組成物であって、
組成式中のmが、0.970≦m≦0.999である関係を満足し、
複合酸化物1モルに対して、銅が銅元素換算でxモル%含有され、ゲルマニウムがゲルマニウム元素換算でyモル%含有されており、
xが、0.100≦x≦1.000である関係を満足し、
yが、0.000<y≦1.500である関係を満足することを特徴とする圧電組成物である。
[2]mが、0.991≦m≦0.999である関係を満足することを特徴とする[1]に記載の圧電組成物である。
[3]組成式KNbOで表され、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物と、銅と、ゲルマニウムと、を含む圧電組成物であって、
圧電組成物が、ペロブスカイト構造を有する結晶粒子と、粒界とから構成され、
粒界に、ゲルマニウムが含まれていることを特徴とする圧電組成物である。
[4]粒界に、カリウム、ニオブおよび銅からなる群から選ばれる1つ以上の元素が含まれていることを特徴とする[3]に記載の圧電組成物である。
[5][1]から[4]のいずれかに記載の圧電組成物を含む圧電素子である。
本発明に係る圧電組成物が上記の特徴を有することにより、機械的強度と圧電特性とを両立でき、しかも高い信頼性を有する圧電組成物と、その圧電組成物を備える圧電素子を提供することができる。
図1は、本実施形態に係る圧電素子の一例の模式的な斜視図である。 図2は、本実施形態に係る圧電素子の他の例の模式的な断面図である。 図3は、本発明の実施例に係る圧電組成物の試料断面のSTEM像である。 図4は、図3に示す点1から5におけるEDS点分析結果を示す図である。
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、以下の順序で詳細に説明する。
1.圧電素子
1.1 圧電組成物
2.圧電素子の製造方法
3.本実施形態における効果
4.変形例
(1.圧電素子)
まず、本実施形態に係る圧電組成物が適用された圧電素子について説明する。圧電素子としては、本実施形態に係る圧電組成物が適用可能な素子であれば特に制限されない。本実施形態では、たとえば、圧電トランス、薄膜センサ、圧電超音波モータが例示される。
図1に示す圧電素子5は、板状の圧電体部1と、圧電体部1の両主面である一対の対向面1a、1bに形成された一対の電極2、3とを備えている。圧電体部1は本実施形態に係る圧電組成物から構成されており、圧電組成物の詳細は後述する。また、電極2、3に含有される導電材は特に限定されず、所望の特性、用途等に応じて任意に設定することができる。本実施形態では、金(Au)、銀(Ag)およびパラジウム(Pd)等が例示される。
圧電体部1は、図1では直方体形状を有しているが、圧電体部1の形状は特に制限されず、所望の特性、用途等に応じて任意に設定することができる。また、圧電体部1の寸法も特に制限されず、所望の特性、用途等に応じて任意に設定することができる。
圧電体部1は、所定の方向に分極されている。たとえば、図1に示す圧電素子5においては、圧電体部1の厚み方向、すなわち電極2、3が対向する方向に分極されている。電極2、3には、たとえば、図示しないワイヤ等を介して図示しない外部電源が電気的に接続されており、電極2、3を介して、圧電体部1に所定の電圧が印加される。電圧が印加されると、圧電体部1において、逆圧電効果により電気エネルギーが機械エネルギーに変換され、圧電体部1が所定の方向に振動することができる。
(1.1 圧電組成物)
本実施形態に係る圧電組成物は、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有する複合酸化物を主成分として含有している。また、本実施形態に係る圧電組成物は、上記の複合酸化物に加えて、銅(Cu)およびゲルマニウム(Ge)を含有している。本実施形態では、主成分は、圧電組成物100mol%中、90mol%以上を占める成分である。
ペロブスカイト構造において、イオン半径の大きい元素、たとえば、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素等はABOのAサイトを占める傾向にあり、イオン半径の小さい元素、たとえば、遷移金属元素等はABOのBサイトを占める傾向にある。そして、Bサイト元素と酸素とから構成されるBO酸素八面体が互いの頂点を共有した三次元ネットワークを構成しており、このネットワークの空隙にAサイト元素が充填されることによりペロブスカイト構造が形成される。
本実施形態では、一般式ABOは、組成式KNbOで表すことができる。すなわち、Aサイト元素が、カリウム(K)であり、Bサイト元素がニオブ(Nb)である。
上記の組成式中「m」は、Bサイト元素の総原子数に対するAサイト元素の総原子数の比、いわゆるA/B比を示している。すなわち、Nbの原子数に対するKの原子数の比である。本実施形態では、「m」は、0.970≦m≦0.999である関係を満足する。
すなわち、Bサイト元素(Nb)をAサイト元素(K)よりも過剰に存在させることにより、良好な機械的強度を得ることができる。なお、「m」が上記の範囲よりも大きい場合には、得られる圧電組成物が高い潮解性を示すため、強度が著しく低く、加工に耐えることができない傾向にある。一方、「m」が上記の範囲よりも小さい場合には、得られる圧電組成物の密度が低くなり、機械的強度が低下する傾向にある。
「m」は、0.970以上であることが好ましく、0.991以上であることがより好ましい。一方、「m」は、0.999以下であることが好ましい。
本実施形態に係る圧電組成物において、上記の複合酸化物1モル(100モル%)に対するCu元素換算でのCuの含有量をxモル%とすると、「x」は、0.100≦x≦1.000である関係を満足する。
Cuが上記の範囲内で含有されていれば、その存在形態は特に制限されず、Cuは、複合酸化物を構成する結晶粒子の粒内に固溶してもよいし、粒界に存在してもよい。粒界に存在する場合には、他の元素と化合物を形成していてもよい。ただし、上記のKNbOから構成される結晶相を有する結晶粒子が多く存在することが好ましく、上記以外の異相として存在することは好ましくない。
Cuが粒内および/または粒界に存在することにより結晶粒子間の結合力が強くなり、圧電組成物の機械的強度を高めることができる。また、Cuの含有量は、上述した「m」と関係しており、Cuの含有量と「m」の範囲とを上述した範囲とすることにより、Cuが結晶粒子内に固溶または粒界に留まることが可能となりCuを含む異相が形成されにくくなる。その結果、結晶粒子間の結合力をより高めることができる。
また、Cuを含有させることにより、機械的品質係数Qmを向上させることができる。しかしながら、Cuの含有量が多すぎると、圧電組成物の分極処理時の電圧印加に起因するリーク電流が生じて、十分な分極が行われない場合がある。この場合には、分極が不十分となり、自発分極の向きを所定の方向に揃えることにより発揮される圧電特性は逆に低下してしまう。そこで、本実施形態では、Cuを上記の範囲内で含有させることと「m」の範囲を上述した範囲にすることで、リーク電流の発生の主原因である異相を抑制することが可能となり、結果として十分な分極処理を行うことができる。したがって、Qm向上の効果が得られるため、Qmを向上させることができる。
「x」は、0.200以上であることが好ましく、0.600以上であることがより好ましい。
本実施形態に係る圧電組成物において、上記の複合酸化物1モル(100モル%)に対するGe元素換算でのGeの含有量をyモル%とすると、「y」は、0.000<y≦1.500である関係を満足する。
Geが上記の範囲内で含有されていれば、ニオブ酸カリウム化合物特有の潮解性の発現を抑制し、高温高湿環境下においてもニオブ酸カリウム化合物系の圧電組成物は高い信頼性を発揮することができる。しかしながら、Geの含有量が多すぎると、Ge由来の異相が形成されやすくなり、圧電組成物の機械的強度が低下する傾向にある。
「y」は0.100以上であることが好ましく、1.000以上であることがより好ましい。
また、本実施形態に係る圧電組成物は、ペロブスカイト構造を有する結晶粒子、すなわち、複合酸化物から構成される結晶粒子と、粒界と、から構成されている。
本実施形態では、Geは主に粒界に含まれている。Geが粒界に含まれることにより、圧電組成物の潮解性を抑制できると考えられる。したがって、結晶粒子の粒内へのGeの固溶量は少ないことが好ましく、Geは結晶粒子の粒内に固溶していないことがより好ましい。
本発明者らは、ニオブ酸カリウム化合物の潮解現象は、ニオブ酸カリウム化合物に含まれるカリウムが空気中の水分と水和反応した結果、その部分が脆弱となり、結晶粒子間の結合力を弱めることに起因すると推測している。
本実施形態では、粒界にゲルマニウムが含まれることにより、カリウムが水和反応しやすい形態から水和反応しにくい形態に転換することが容易となり、潮解現象に基づく機械的強度の劣化を抑制できる。
本実施形態に係る圧電組成物は、上述した成分以外にその他の成分を含有してもよい。たとえば、上述したNbおよびCuを除く遷移金属元素(長周期型周期表における3族~11族の元素)、アルカリ土類金属元素、長周期型周期表における12族元素および長周期型周期表における13族の金属元素の内の少なくとも1種を含有していてもよい。これによりQm以外の他の圧電特性、とりわけ電気機械結合係数(k)を向上させることができるからである。
具体的には、希土類元素を除く遷移金属元素としては、たとえば、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)が例示される。希土類元素としては、たとえば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)が例示される。
アルカリ土類金属元素としては、たとえば、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)が例示される。12族元素としては、たとえば、亜鉛(Zn)が例示される。13族の金属元素としては、たとえば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)が例示される。
なお、本実施形態にかかる圧電組成物は、不純物として鉛(Pb)を含んでいてもよいが、その含有量は圧電組成物100質量%中1質量%以下であることが好ましく、Pbを含まないことがより好ましい。低公害化、対環境性および生態学的観点から、焼成時におけるPbの揮発を最小限に抑制することができ、さらに、本実施形態に係る圧電組成物を含む圧電素子を搭載する電子機器が市場に流通し廃棄された後における環境中へのPbの放出を最小限に抑制することができるためである。
本実施形態に係る圧電組成物を構成する結晶粒子の平均結晶粒径は、圧電特性の発揮、機械的強度の観点から制御すればよい。本実施形態では、平均結晶粒径は、たとえば、0.5μm~20μmであることが好ましい。
(2.圧電素子の製造方法)
次に、圧電素子の製造方法の一例について以下に説明する。
まず、圧電組成物の出発原料を準備する。複合酸化物の出発原料としては、Kを含む化合物、Nbを含む化合物を用いることができる。Kを含む化合物としては、たとえば、炭酸塩、炭酸水素化合物が例示される。Nbを含む化合物としては、たとえば、酸化物が例示される。
銅の出発原料としては、銅単体でもよいし、銅を含む化合物でもよい。本実施形態では、銅を含む酸化物であることが好ましい。また、ゲルマニウムの出発原料としては、銅と同様に、ゲルマニウム単体でもよいし、ゲルマニウムを含む化合物でもよい。本実施形態では、ゲルマニウムを含む酸化物であることが好ましい。
準備した複合酸化物の出発原料を、所定の割合に秤量した後、たとえば、ボールミルを用いて、5~20時間混合を行う。混合する方法としては湿式混合でもよいし、乾式混合でもよい。湿式混合の場合、混合粉を乾燥する。続いて、混合粉または混合粉を成形して得られる成形体を、大気中において750~1050℃、1~20時間の条件で熱処理(仮焼成)を行い、複合酸化物の仮焼き粉末を得る。
得られた仮焼き粉末を構成する複合酸化物は、一般式KNbOで示されるペロブスカイト構造を有している。
得られた仮焼き粉末が凝集している場合には、たとえば、ボールミルを用いて、所定時間仮焼き粉末の粉砕を行い、粉砕粉とすることが好ましい。仮焼き粉末または粉砕粉に、所定の割合に秤量した銅の出発原料およびゲルマニウムの出発原料を添加して、たとえば、ボールミルを用いて、5~20時間混合を行い、圧電組成物の混合粉を得る。混合する方法としては湿式混合でもよいし、乾式混合でもよい。湿式混合の場合、混合粉を乾燥して、圧電組成物の混合粉を得る。
圧電組成物の混合粉を成形する方法は特に制限されず、所望の形状、寸法等に応じて適宜選択すればよい。プレス成形を行う場合には、圧電組成物の混合粉に、所定のバインダと、必要に応じて添加物とを添加し、所定の形状に成形して成形体を得る。また、圧電組成物の混合粉に所定のバインダ等を添加し造粒して得られる造粒粉を用いて成形体を得てもよい。必要に応じて、得られた成形体に対し、CIP等によりさらなる加圧処理を行ってもよい。
得られた成形体に脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、保持温度を好ましくは400℃~800℃、温度保持時間を好ましくは2時間~8時間とする。
続いて、脱バインダ処理後の成形体を焼成する。焼成条件としては、保持温度を好ましくは950℃~1060℃、温度保持時間を好ましくは2時間~4時間、昇温および降温速度は、好ましくは50℃/時間~300℃/時間程度とし、雰囲気を好ましくは酸素含有雰囲気とする。
得られた焼結体としての圧電組成物を必要に応じて研磨し、電極ペーストを塗布して焼き付けて電極を形成する。電極を形成する方法は特に制限されず、蒸着、スパッタリング等で電極を形成してもよい。
所定の温度のオイル中で2kV/mm~5kV/mmの電界を5分間~1時間程度印加することにより、電極を形成した焼結体を分極処理する。分極処理を行った後に、自発分極が所定の方向に揃えられた圧電組成物が得られる。
分極処理後の圧電組成物を、必要に応じて所定の寸法に加工し、板状の圧電体部1を形成する。次に、この圧電体部1に電極2、3を蒸着等により形成することにより、図1に示した圧電素子が得られる。
(3.本実施形態における効果)
本実施形態では、圧電組成物に主成分として含まれる複合酸化物として、ペロブスカイト構造を有するニオブ酸カリウムを採用し、さらに、圧電組成物に銅(Cu)およびゲルマニウム(Ge)を上記の範囲内で含有させている。
上記の範囲内で含有されたCuは、複合酸化物に対して過剰に含まれないので、複合酸化物を構成する結晶粒子とは異なる異相が形成されにくい。すなわち、Cuは、複合酸化物を構成する結晶粒子の内部に固溶している、または、結晶粒子間に形成される粒界に存在している。Cuがこのような形態で存在することにより、結晶粒子間の結合力が強くなり、その結果、圧電組成物としての機械的強度が向上する。
焼成後の圧電組成物は、たとえば、分極処理、圧電素子の製造時に加工される場合がある。圧電組成物が良好な機械的強度を有していなければ、加工中に圧電組成物の強度不足に起因する欠け、割れ等が生じて不良品が発生する問題が生じてしまう。このような不良品が発生すると、歩留まりが低下し高い生産性を実現できない。また、圧電組成物には、機械エネルギーおよび電気エネルギーが繰り返し印加されるので、これらに対して耐えうる強度を有する必要がある。本実施形態に係る圧電組成物は、良好な機械的強度を有しているので、加工性が良好であり、歩留まりを高めて圧電素子の生産効率を高めることができる。さらには、本実施形態に係る圧電組成物は、繰り返し印加される機械エネルギーおよび電気エネルギーに耐えうる十分な強度を有している。
また、Cuが機械的品質係数Qmを向上させるという効果を有しているものの、その含有量が多くなると、圧電組成物の分極処理時におけるリーク電流が増加して、分極処理が不十分となり、逆にQmが低下してしまうという問題がある。そこで、本実施形態では、Cuの含有量とともに、複合酸化物の「m」を制御することにより、異相の発生を抑制し、十分な分極処理が行えるCuの含有量の範囲を大きくして、高いQmを実現することができる。
上記の範囲内で含有されたGeは、圧電組成物の機械的強度および圧電特性を維持しつつ、高温高湿環境下における信頼性を高めることができる。
また、Geが粒界に含まれることにより、水和反応しやすいカリウムは水和反応しにくい形態に容易に転換する。その結果、潮解現象による圧電組成物の劣化が抑制され、高温高湿環境下における信頼性を高めることができる。
(4.変形例)
上述した実施形態では、圧電体部が単層である圧電素子について説明したが、圧電体部が積層された構成を有する圧電素子であってもよい。また、これらが組み合わされた構成を有する圧電素子であってもよい。
圧電体部が積層された構成を有する圧電素子としては、たとえば、図2に示す圧電素子50が例示される。この圧電素子50は、本実施形態に係る圧電組成物よりなる複数の圧電層11と複数の内部電極12とを交互に積層した積層体10を備える。この積層体10の両端部には、積層体10の内部で交互に配置された内部電極層12と各々導通する一対の端子電極21、22が形成してある。
圧電層11の1層あたりの厚み(層間厚み)は特に限定されず、所望の特性や用途等に応じて任意に設定することができる。通常は、層間厚みは1μm~100μm程度が好ましい。圧電層11の積層数は特に限定されず、所望の特性や用途等に応じて任意に設定することができる。
図2に示す圧電素子50を製造する方法としては、公知の方法を用いればよく、たとえば、図2に示す積層体10となるグリーンチップを作製し、これを焼成して積層体10を得た後、積層体10に端子電極を印刷又は転写して焼成することにより製造される。グリーンチップを製造する方法としては、たとえば、ペーストを用いた通常の印刷法、シート法が例示される。印刷法およびシート法では、上述した圧電組成物の原料粉と、バインダを溶剤中に溶解したビヒクルと、を混合して塗料化したペーストを用いてグリーンチップを形成する。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず、圧電組成物の主成分である複合酸化物(KNbO)の出発原料として、炭酸水素カリウム(KHCO)の粉末と酸化ニオブ(Nb)の粉末とを準備した。また、圧電組成物に含まれる含有成分としての銅(Cu)およびゲルマニウム(Ge)の出発原料として、酸化銅(CuO)および酸化ゲルマニウム(GeO)の粉末を準備した。
準備した出発原料を、焼成後の圧電組成物(焼結体)が表1に示す組成を有するように秤量した。秤量したKHCOおよびNbの各粉末を、ボールミルにより16時間混合したのち120℃において乾燥して混合粉を得た。得られた混合粉をプレス成形して、1000℃で4時間仮焼し複合酸化物の仮焼成体を得た。続いて、この仮焼成体をボールミルにより16時間粉砕し、粉砕粉を得た。
得られた粉砕粉に対し、秤量したCuOおよびGeOの各粉末を添加して、ボールミルにより16時間混合したのち120℃において乾燥して圧電組成物の原料粉を得た。得られた圧電組成物の原料粉にバインダとしてのPVAを加えて公知の方法により造粒した。次に、得られた造粒粉をプレス成形機により196MPaの荷重を加えてプレス成形し、平板状の成形体を得た。
こうして得られた平板状の成形体に550℃、2時間の条件で脱バインダ処理を施した。脱バインダ処理後の成形体を、大気雰囲気下で1050℃、2時間の条件で焼成し、圧電組成物(焼結体)を得た。
得られた焼結体を研磨して厚さ1.0mmの平行平板状とし、その平行平板状の焼結体の両面に銀ペーストを印刷後、800℃にて焼き付けを実施し対向銀電極を設け、電子情報技術産業協会規格のJEITA EM-4501Mに従いダイシングソーで、焼結体を長さ12mm、幅3mmに切断し、分極前試料を得た。最後に、150℃のシリコンオイル中で分極前試料に対して3kV/mmの電界を5分間印加し、圧電組成物の分極処理を行い、圧電組成物の試料(実施例1~18および比較例1~8)を得た。
得られた試料について、機械的強度および機械的品質係数Qmを以下のようにして測定した。
両面ラップ盤とダイシングソーとにより、圧電組成物(焼結体)を研磨および切断して、長さ7.2mm、幅2.5mm、厚さ0.32mmに加工し、機械的強度測定用試料を得た。INSTRON社製5543により、支点間距離5mmの3点曲げによって機械的強度測定用試料が破壊した時の最大荷重(N)を各試料20個ずつ測定し、機械的強度を算出した。本実施例では、実用上の加工性を考慮して、機械的強度が70MPa以上である試料を良好であると判断した。結果を表1に示す。
Qmは、4194A IMPEDANCE/GAIN-PHASE ANALYZER(HEWLETT PACKARD製)により測定した。本実施例では、Qmが200以上である試料を良好であると判断した。結果を表1に示す。
なお、表1の機械的品質係数Qmの欄において、「-」と表されている場合、圧電組成物の分極処理が十分に行えなかったか分極処理中に絶縁破壊が生じたため、所定の圧電特性が得られず、Qmが測定できなかったことを示す。
さらに、機械的強度およびQmを測定した後の試料について、高温高湿環境下に曝す試験を行った後に、上記の機械的強度およびQmを測定し、試料の信頼性を評価した。具体的には、機械的強度およびQmを測定した後の試料を、室温に保たれた恒温槽に投入し、恒温槽内を、狙いの温度が85℃(±2℃の誤差まで許容)、狙いの相対湿度が85%RH(±2%の誤差まで許容)である環境とした。この環境を1000時間維持した後、当該試料を恒温槽から取り出し、上記と同様にして、機械的強度およびQmを測定した。得られた測定値から、以下に示す式により、機械的強度およびQmの劣化率を算出した。本実施例では、機械的強度が70MPa以上、かつ両方の劣化率が10%以下である試料を表1において「A」と表記し、機械的強度が70MPa未満、かつ劣化率の両方が10%以下である試料を表1において「B」と表記し、機械的強度が70MPa未満、かつ劣化率の少なくとも一方が10%超である試料、または、少なくとも一方の劣化率が測定不能である試料を表1において「C」と表記した。結果を表1に示す。
機械的強度の劣化率(%)=(高温高湿試験前の機械的強度-高温高湿試験後の機械的強度)×100/高温高湿試験前の機械的強度
Qmの劣化率(%)=(高温高湿試験前のQm-高温高湿試験後のQm)×100/高温高湿試験前のQm
また、試料の断面をSTEM-EDS分析したところ、比較例5および7の試料を除き、Geが二粒子間粒界または粒界三重点に存在していることが確認できた。
実施例7の試料の断面のSTEM像を図3に示す。また、図3に示すSTEM像においてEDS点分析した結果を図4に示す。EDS点分析は、図3に示す点1から5において行った。点1から3は二粒子粒界上の分析点であり、点4および5は結晶粒子上の分析点である。
Figure 0007206925000001
表1より、組成式KNbOで表される複合酸化物において、「m」を上記の範囲とし、当該複合酸化物に対する銅およびゲルマニウムの含有量を上記の範囲内とすることにより、良好な機械的強度が得られ、Qmを向上させ、かつ高い信頼性が得られることが確認できた。特に、ゲルマニウムが含有されていない比較例5および7は、劣化率が大きくなることが確認できた。
図3および4より、ゲルマニウムは主に粒界に含有されており、結晶粒子内はほとんど含有されていないことが確認できた。
本発明に係る圧電組成物は、良好な機械的強度と良好なQmとを両立でき、しかも高い信頼性を有しているので、種々の分野における圧電素子に好適に用いることができる。
5… 圧電素子
1… 圧電体部
2,3… 電極
50… 圧電素子
10… 積層体
11… 圧電層
12… 内部電極層
21,22… 端子電極

Claims (5)

  1. 組成式KmNbO3で表され、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物と、銅と、ゲルマニウムと、を含む圧電組成物であって、
    組成式中のmが、0.970≦m≦0.999である関係を満足し、
    前記複合酸化物1モルに対して、前記銅が、銅元素換算で、xモル%含有され、前記ゲルマニウムが、ゲルマニウム元素換算で、yモル%含有されており、
    前記xが、0.100≦x≦1.000である関係を満足し、
    前記yが、0.000<y≦1.500である関係を満足することを特徴とする圧電組成物。
  2. 前記mが、0.991≦m≦0.999である関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の圧電組成物。
  3. 組成式KmNbO3で表され、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物と、銅と、ゲルマニウムと、を含む圧電組成物であって、
    組成式中のmが、0.970≦m≦0.999である関係を満足し、
    前記圧電組成物が、ペロブスカイト構造を有する結晶粒子と、粒界とから構成され、
    前記粒界に、前記ゲルマニウムが含まれていることを特徴とする圧電組成物。
  4. 前記粒界に、カリウム、ニオブおよび銅からなる群から選ばれる1つ以上の元素が含まれていることを特徴とする請求項3に記載の圧電組成物。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の圧電組成物を含む圧電素子。
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