JP7151884B2 - 圧電セラミック電子部品 - Google Patents

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Description

本発明は、圧電セラミック電子部品に関する。
従来から、圧電材料を使用した超音波センサ、圧電ブザー、圧電アクチュエータ等の圧電セラミック電子部品が広く知られている。そして、小さい電圧でも大きな変位量の取得が可能な圧電セラミック電子部品の需要が高まってきている。
圧電材料としては、これまで、一般式Pb(Zr,Ti)Oで表されるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系化合物が用いられてきた。近年、非鉛系の圧電材料として、一般式(K,Na)NbOで表されるニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)系化合物が注目されている。
特許文献1には、内部電極と圧電セラミック層とが交互に積層されて焼結されてなる圧電セラミック素体を備え、該圧電セラミック素体の表面に外部電極が形成された圧電セラミック電子部品が開示されている。特許文献1に記載の圧電セラミック電子部品においては、上記内部電極が、Niを主成分とすると共に、上記圧電セラミック層が、一般式[100{(1-x)(K1-a-bNaLi)(Nb1-cTa)O-xM2M4O}+αMn+βM4](ただし、x、a、b、c、α、及びβは、それぞれ0.005≦x≦0.1、0≦a≦0.9、0≦b≦0.1、0≦a+b≦0.9、0≦c≦0.3、2≦α≦15、0.1≦β≦5.0である。)で表される圧電磁器組成物で形成されていることを特徴としている。
特許文献2には、圧電セラミック素体の表面に外部電極が形成された圧電セラミック電子部品が開示されている。特許文献2に記載の圧電セラミック電子部品において、上記圧電セラミック素体は、主成分がペロブスカイト型構造を有するニオブ酸アルカリ系化合物で形成され、副成分としてGaが含有されると共に、Nd及びDyのうちの少なくともいずれか一方の元素が含有され、かつ、上記圧電セラミック素体は、表層部領域と該表層部領域を除く表層部外領域とに区分され、上記表層部領域は、Nbに対するGaの含有モル比Ga/Nb、Nbに対するNdの含有モル比Nd/Nb、及びNbに対するDyの含有モル比Dy/Nbの総計が、上記表層部外領域よりも多いことを特徴としている。さらに、特許文献2には、上記セラミック素体は、副成分として、Mnを含有していることが好ましいと記載されている。
特許文献3には、第一電極層と、上記第一電極層に積層された第一酸化物層と、上記第一酸化物層に積層された第二酸化物層と、上記第二酸化物層に積層された圧電薄膜と、を備える圧電薄膜積層体が開示されている。特許文献3に記載の圧電薄膜積層体においては、上記第一酸化物層の電気抵抗率が、上記第二酸化物層の電気抵抗率よりも高く、上記第一酸化物層が、K、Na及びNbを含み、上記圧電薄膜が、(K,Na)NbOを含むことを特徴としている。
特許文献1及び2に記載の圧電セラミック電子部品では、焼成により圧電セラミック層又は圧電セラミック素体が形成されている。一方、特許文献3に記載の圧電薄膜積層体では、スパッタリング法、化学気相成長法等の薄膜形成方法により圧電薄膜が形成されている。
特開2014-139132号公報 特開2015-70136号公報 特開2018-93144号公報
特許文献1及び2に記載されているように、圧電セラミック層と内部電極となるべき導電層とを交互に積層し、共焼成して圧電セラミック電子部品を製造する場合には、内部電極の材料として使用されるNiが酸化することを防ぐため、還元雰囲気で共焼成する必要がある。
特許文献1によると、圧電材料であるニオブ酸カリウムナトリウム系化合物を還元雰囲気で焼成する場合、酸素空孔(以下、酸素欠陥という)が内部に形成されやすく、焼結不良を引き起こすとされている。この問題に対して、特許文献1及び2には、ニオブ酸カリウムナトリウム系化合物にMnを添加して、ニオブ酸カリウムナトリウム系化合物にMnを固溶させることにより、還元雰囲気での焼結性を向上させることが記載されている。
さらに、ニオブ酸カリウムナトリウム系化合物の内部に形成される酸素欠陥は、直流(DC)電圧あるいはバイアス交流(AC)電圧の印加により徐々に負極側に移動するため、絶縁抵抗の低下を引き起こすおそれがある。この問題に対しても、ニオブ酸カリウムナトリウム系化合物にMnを添加して、ニオブ酸カリウムナトリウム系化合物にMnを固溶させることにより、Mnが酸素欠陥と電気的な対を形成して酸素欠陥の移動を妨げるため、絶縁抵抗の低下を抑制することができると考えられる。
上記のとおり、圧電セラミック電子部品においては、ニオブ酸カリウムナトリウム系化合物に添加されるMnが重要な役割を担っている。ここで、特許文献3のように、薄膜形成方法により圧電薄膜を形成する場合には、各層に含まれる元素の濃度を調整することが可能である。これに対し、特許文献1及び2のように、焼成により圧電セラミック層を形成する場合には、焼成時にMn等の元素が拡散したり、また、KやNa等のアルカリ金属元素が揮発したりするため、圧電セラミック層に含まれる元素の濃度を制御することは困難である。したがって、セラミック焼結体を備える圧電セラミック電子部品においては、絶縁抵抗の低下を抑制する点で改善の余地があると言える。
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、セラミック焼結体から構成される圧電セラミック層を備え、長時間駆動させても絶縁抵抗の低下を抑制することが可能な圧電セラミック電子部品を提供することを目的とする。
本発明の圧電セラミック電子部品は、1層又は複数の圧電セラミック層を含む圧電セラミック素体と、上記圧電セラミック素体の表面又は内部に設けられた複数の電極と、を備える。上記圧電セラミック層は、ニオブ酸カリウムナトリウム系化合物及びMnを含有するセラミック焼結体から構成される。隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層を厚み方向に3等分して、一方の電極側から他方の電極側へ順に第1領域、第2領域及び第3領域とした場合、上記第1領域及び上記第3領域に含まれるMn濃度に比べて、上記第2領域に含まれるMn濃度が高い。
本発明によれば、セラミック焼結体から構成される圧電セラミック層を備え、長時間駆動させても絶縁抵抗の低下を抑制することが可能な圧電セラミック電子部品を提供することができる。
図1は、本発明の圧電セラミック電子部品の一実施形態である積層圧電アクチュエータの一例を模式的に示す断面図である。 図2は、本発明の圧電セラミック電子部品の一実施形態である積層圧電アクチュエータの斜視図である。 図3は、圧電セラミック層に含まれるMn濃度を評価する位置を説明するための第1の概略図である。 図4は、圧電セラミック層に含まれるMn濃度を評価する位置を説明するための第2の概略図である。 図5(a)は、Ni元素のマッピング像の一例であり、図5(b)は、Mn元素のマッピング像の一例である。 図6(a)、図6(b)、図6(c)及び図6(d)は、圧電セラミック層を第1領域、第2領域及び第3領域に分割する手順を説明するための概略図である。 図7(a)、図7(b)及び図7(c)は、D-SIMS分析の手順を説明するための概略図である。 図8は、積層圧電アクチュエータの製造工程で得られるセラミックグリーンシートを模式的に示す斜視図である。 図9(a)はNiマッピング像、図9(b)はMnマッピング像、図9(c)はLiマッピング像、図9(d)はMn濃度の分布を示すグラフ、図9(e)はLi濃度の分布を示すグラフである。 図10(a)はNiマッピング像、図10(b)はMnマッピング像、図10(c)はLiマッピング像、図10(d)はMn濃度の分布を示すグラフ、図10(e)はLi濃度の分布を示すグラフである。 図11は、試料3及び試料6におけるMn/Li濃度比の分布を示すグラフである。
以下、本発明の圧電セラミック電子部品について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
本発明の圧電セラミック電子部品は、1層又は複数の圧電セラミック層を含む圧電セラミック素体と、上記圧電セラミック素体の表面又は内部に設けられた複数の電極と、を備える。以下の説明において、圧電セラミック素体の表面に設けられた電極を外部電極といい、圧電セラミック素体の内部に設けられた電極を内部電極という。
以下に示す実施形態では、圧電セラミック電子部品は、電極として、複数の外部電極と複数の内部電極とを備える。本発明の圧電セラミック電子部品は、複数の内部電極を備えてもよく、1層の内部電極を備えてもよい。また、本発明の圧電セラミック電子部品は、内部電極を備えず、複数の外部電極のみを備えてもよい。本発明の圧電セラミック電子部品が内部電極を備えない場合、圧電セラミック素体は1層の圧電セラミック層を含む。
[圧電セラミック電子部品]
図1は、本発明の圧電セラミック電子部品の一実施形態である積層圧電アクチュエータの一例を模式的に示す断面図である。図2は、本発明の圧電セラミック電子部品の一実施形態である積層圧電アクチュエータの斜視図である。図1は、図2に示す積層圧電アクチュエータのI-I線断面図に対応する。
図1及び図2に示す積層圧電アクチュエータ10は、圧電セラミック層3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g及び3hを含む圧電セラミック素体1と、圧電セラミック素体1の表面に設けられた外部電極2a及び2bと、圧電セラミック素体1の内部に設けられた内部電極4a、4b、4c、4d、4e、4f及び4gと、を備える。図1及び図2では、外部電極2a及び2bは、圧電セラミック素体1の両端部に設けられている。外部電極2a及び2bは、例えば、Ag等の導電性材料から構成される。
図1に示すように、圧電セラミック素体1では、圧電セラミック層3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g及び3hと内部電極4a、4b、4c、4d、4e、4f及び4gとが交互に積層されている。圧電セラミック層3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g及び3hは、後述するセラミック焼結体から構成される。内部電極4a、4b、4c、4d、4e、4f及び4gは、例えば、Niを主成分とする導電性材料から構成される。
積層圧電アクチュエータ10においては、内部電極4a、4c、4e及び4gの一端が一方の外部電極2aと電気的に接続され、内部電極4b、4d及び4fの一端が他方の外部電極2bと電気的に接続されている。外部電極2aと外部電極2bとの間に電圧が印加されると、圧電縦効果により矢印Zで示す積層方向に変位する。
本発明の圧電セラミック電子部品において、圧電セラミック層は、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)系化合物及びMnを含有するセラミック焼結体から構成される。
KNN系化合物は、セラミック焼結体の主成分である。
本明細書において、「主成分」とは、セラミック焼結体中の存在割合(mol%)が最も大きい成分を意味し、望ましくは、存在割合が50mol%を超える成分を意味する。
KNN系化合物は、ペロブスカイト型構造を有し、一般式(K,Na)NbOで表される。KNN系化合物の組成は、特に限定されるものではない。KNN系化合物は、アルカリ金属元素として、Kを含有することが好ましく、Kに加えてNa及びLiの少なくとも一方を含有することがより好ましい。また、KNN系化合物は、上述したアルカリ金属元素に加えて他の元素を含有してもよく、例えば、Taを含有してもよい。
セラミック焼結体は、KNN系化合物を50mol%を超えて含有することが好ましく、90mol%以上含有することがより好ましい。一方、セラミック焼結体は、KNN系化合物を99mol%以下含有することが好ましく、85mol%以下含有してもよい。
Mnは、セラミック焼結体の副成分である。Mnは、上述したように、酸素欠陥と電気的な対を形成して酸素欠陥の移動を妨げ、絶縁抵抗の低下を抑制する役割を担っている。
セラミック焼結体は、Mnを2mol%以上含有することが好ましい。Mnは酸素欠陥の移動を妨げ、絶縁抵抗の低下を抑制するが、Mnの添加量が多いとセラミック焼結体中にMnを含む異相が形成される。この異相は圧電性を示さないため、異相が多いとセラミック焼結体全体の圧電性が低下する。そのため、セラミック焼結体は、Mnを15mol%以下含有することが好ましく、5mol%以下含有することがより好ましい。
セラミック焼結体は、圧電特性の改善等を目的として、他の成分を含有してもよい。例えば、セラミック焼結体は、KNN系化合物に加えて、一般式M2M4O(M2はBa、Ca及びSrからなる群より選択される少なくとも1種の2価元素を示し、M4はZr、Sn及びHfからなる群より選択される少なくとも1種の4価元素を示す。)で表される化合物を適量含有してもよい。これにより、圧電特性をさらに向上させることが可能となる。また、セラミック焼結体は、副成分として、Mn以外の元素を含有してもよい。
セラミック焼結体は、複数の結晶子から構成される。結晶子の粒径は、10μm以下であることが好ましい。一方、結晶子の粒径は、例えば、0.1μm以上である。
セラミック焼結体は、例えば、(K1-a-bNaLi)NbO(0≦a≦0.9、0≦b≦0.1)を90mol%以上、Mnを2mol%以上、15mol%以下含み、かつ、粒径10μm以下の結晶子から構成される。
本発明の圧電セラミック電子部品においては、隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層を厚み方向に3等分して、一方の電極側から他方の電極側へ順に第1領域、第2領域及び第3領域とした場合、第1領域及び第3領域に含まれるMn濃度に比べて、第2領域に含まれるMn濃度が高いことを特徴としている。
上述したように、KNN系化合物にMnを添加することにより、圧電セラミック層に含まれる酸素欠陥の移動を防止することができる。しかし、Mnの添加量が多くなるほどKNN系化合物が少なくなるため、圧電特性は低下する。本発明の圧電セラミック電子部品では、隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層中に、Mn濃度の高い領域が存在することで、高い圧電特性を維持したまま、圧電セラミック層に含まれる酸素欠陥の移動を防止することができる。特に、Mn濃度の高い領域が圧電セラミック層の中央付近に存在するため、圧電セラミック層への電界印加を妨げることなく、効果的に酸素欠陥の移動を防止して絶縁抵抗の低下を抑制することができる。その結果、DC駆動時における絶縁抵抗寿命を長くすることができる。
本発明の圧電セラミック電子部品において、隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層は、例えば、厚み方向に隣接する1組の内部電極に挟まれた圧電セラミック層である。隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層は、厚み方向に隣接する1組の内部電極と外部電極とに挟まれた圧電セラミック層であってもよい。あるいは、隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層は、厚み方向に隣接する1組の外部電極に挟まれた圧電セラミック層であってもよい。
本明細書において、「厚み方向に隣接する1組の内部電極に挟まれた圧電セラミック層」とは、圧電セラミック素体において、異なる外部電極に接続された内部電極のペアのうち、電極間隔が最も小さい内部電極のペア(以下、対向電極と表記する)に挟まれた圧電セラミック層を意味する。
図3は、圧電セラミック層に含まれるMn濃度を評価する位置を説明するための第1の概略図である。
図3に示すように、圧電セラミック素体の両端部に外部電極2a及び2bが設けられている場合、外部電極2aに接続された内部電極と外部電極2bに接続された内部電極のペアのうち、電極間隔が最も小さい内部電極のペアPに挟まれた圧電セラミック層に含まれるMn濃度を評価する。具体的には、内部電極に平行な面から見て、圧電セラミック素体の重心位置でMn濃度を評価することが望ましい。一方、どちらも同じ外部電極2a又は2bに接続された内部電極のペアPに挟まれた圧電セラミック層に含まれるMn濃度は評価の対象外である。
図4は、圧電セラミック層に含まれるMn濃度を評価する位置を説明するための第2の概略図である。
図4では、圧電セラミック素体の両端部に外部電極2a及び2bが設けられているとともに、圧電セラミック素体の両側部に外部電極2cが設けられている。図4においては、外部電極2a又は2bに接続された内部電極と外部電極2cに接続された内部電極のペアのうち、電極間隔が最も小さい内部電極のペアPに挟まれた圧電セラミック層に含まれるMn濃度を評価する。図4に示すように、圧電セラミック素体の重心位置で電極間隔が最も小さい内部電極のペアが対向していない場合、又は、圧電セラミック素体の重心位置で電極間隔が最も小さくならない場合には、内部電極が対向する領域の中で、内部電極の間隔が最も小さくなる位置を選んでMn濃度を評価してもよい。図3と同様に、どちらも同じ外部電極2a、2b又は2cに接続されている内部電極のペアPに挟まれた圧電セラミック層に含まれるMn濃度は評価の対象外である。
圧電セラミック層の各領域に含まれるMn濃度の分布は、以下のようにWDX(波長分散蛍光X線)により求められる。また、圧電セラミック層の各領域に含まれるMn濃度の分布は、後述するDynamic SIMS(D-SIMS)によっても求められる。
まず、圧電セラミック電子部品をウレタン樹脂等の樹脂に包埋し、積層方向の側面から研磨し、断面を露出させる。得られた断面において、WDXを用いて、上述した対向電極が1視野内に収まる倍率で、かつ、対向電極が視野の縦軸に略平行となるように視野を調整し、内部電極の主成分である金属元素、例えばNiを対象元素とする元素マッピング分析を行う。別途、Mnを対象元素とする元素マッピング分析を行う。視野の広さについては、視野の一辺の長さがセラミック焼結体の平均粒子径の10倍以上であることが望ましく、20倍以上であることがより望ましい。これは、KNN系化合物では異相が発生しやすく、1視野に含まれる粒子数が少ない場合、元素の分布状態を正しく把握できないためである。
図5(a)は、Ni元素のマッピング像の一例であり、図5(b)は、Mn元素のマッピング像の一例である。
図5(a)に示すNi元素のマッピング像から、Niが存在する領域が内部電極A及び内部電極Bであり、内部電極A及び内部電極Bに挟まれた領域が圧電セラミック層Cであることが確認できる。一方、図5(b)に示すMn元素のマッピング像から、圧電セラミック層Cの中央付近にMn濃度の高い領域が存在することが確認でき、また、内部電極A及び内部電極BにもMnが存在することが確認できる。
図6(a)、図6(b)、図6(c)及び図6(d)は、圧電セラミック層を第1領域、第2領域及び第3領域に分割する手順を説明するための概略図である。
図6(a)に示す内部電極の主成分である金属元素のマッピング像で得られる検出カウント情報から、視野内における上記金属元素の検出量のピーク値を読み取る。検出量のピーク値の1/2以上の検出量が得られる箇所を電極部、1/2未満の検出量が得られる箇所をセラミック部として識別する。
図6(a)に示す内部電極Aと圧電セラミック層Cとの界面、及び、内部電極Bと圧電セラミック層Cとの界面について、以下のように境界線を定義する。
図6(b)に示すように、まず、電極Aから電極Bに向かって視野の縦方向(図6(b)では横方向)に平行な直線Lを考える。直線L上における内部電極Aと圧電セラミック層Cとの界面をLcとして、視野左端から視野右端までの範囲(図6(b)では上端から下端)において、Lcの集合となる曲線を得る。なお、視野左端からある程度離れた直線L上において、内部電極Aと圧電セラミック層Cとの界面が存在しない場合には、Lcが途切れていても構わない。
次に、図6(c)に示すように、Lcの集合となる曲線に対し、Lcから視野の縦方向の距離の2乗和が最小となる直線を引く。この直線を内部電極Aと圧電セラミック層Cとの界面の境界線Xとする。同様に、内部電極Bと圧電セラミック層Cとの界面についても、境界線Yを設定する。
図6(d)に示すように、境界線Xから境界線Yまでを3等分する直線L及びLを引く。内部電極A側から内部電極B側へ順に、境界線Xと直線Lとの間の領域を第1領域R、直線Lと直線Lとの間の領域を第2領域R、直線Lと境界線Yとの間の領域を第3領域Rとする。
それぞれの領域について、Mn濃度を算出する。Mn濃度の算出は、マッピング分析結果の各ピクセルにおける蛍光X線の検出量を数値化し、それを領域ごとに平均値を出して求める。
第1領域に含まれるMn濃度をcm1、第2領域に含まれるMn濃度をcm2、第3領域に含まれるMn濃度をcm3としたとき、cm2/cm1の値とcm2/cm3の値は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。cm2/cm1の値、及び、cm2/cm3の値は、それぞれ、1.0より大きいことが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。一方、cm2/cm1の値、及び、cm2/cm3の値は、それぞれ、2.0以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましい。
本発明の圧電セラミック電子部品では、図5に示すように、隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層は、一方の電極側から他方の電極側へ順に、第1のMn低濃度層と、Mn高濃度層と、第2のMn低濃度層とから構成され、第1のMn低濃度層及び第2のMn低濃度層に含まれるMn濃度に比べて、Mn高濃度層に含まれるMn濃度が高いことが好ましい。すなわち、隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層は、その厚み方向において、Mn濃度の高い層が、Mn濃度の低い層で挟まれていることが好ましい。これにより、酸素欠陥の移動が確実に防止される。
図5に示すように、Mn高濃度層は、第1のMn低濃度層及び第2のMn低濃度層よりも厚いことが好ましい。第1のMn低濃度層の厚みは、第2のMn低濃度層の厚みと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本発明の圧電セラミック電子部品において、隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層には、Liが含まれていることが好ましい。圧電セラミック層にLiが含まれていると、還元雰囲気での焼結性が向上し、圧電セラミック層においてMn濃度が層状に分布しやすくなる。その結果、DC駆動時における絶縁抵抗寿命をさらに長くすることができる。
焼結性を向上させる観点から、隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層に含まれるLi濃度は、0.03重量%以上であることが好ましい。一方、Li濃度が高くなると、LiがMnと反応してLiMn(マンガン酸リチウム)が形成されやすくなるため、Mnによって酸素欠陥の移動を防止する効果が得られにくくなると考えられる。そのため、隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層に含まれるLi濃度は、0.06重量%以下であることが好ましい。
隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層には、Mn/Li濃度比がモル比で4以上となる偏析領域が存在することが好ましい。偏析領域では、Mn濃度に対してLi濃度が低いため、上述したマンガン酸リチウムが形成されにくくなり、Mnによって酸素欠陥の移動を防止する効果が十分に得られると考えられる。
偏析領域において、Mn/Li濃度比の上限は特に限定されないが、例えば、Mn/Li濃度比はモル比で15.0以下である。
Mn/Li濃度比がモル比で4以上となる偏析領域の厚みは、上記偏析領域が存在する圧電セラミック層の厚みに対して0.50倍以上であることが好ましく、0.55倍以上であることがより好ましい。一方、Mn/Li濃度比がモル比で4以上となる偏析領域の厚みは、上記偏析領域が存在する圧電セラミック層の厚みに対して1倍以下であり、0.90倍以下であることが好ましく、0.80倍以下であることがより好ましく、0.70倍以下であることがさらに好ましい。
なお、ここでの偏析領域の存在は以下のように定義する。圧電セラミック素体を厚み方向と長辺方向に平行な断面に切断・研磨し、この面において、圧電セラミック層と複数の内部電極または外部電極とが入り、かつ内部電極が視野の縦または横の軸に略平行となる視野で、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて観察する。この視野において、1組の内部電極または1組の外部電極あるいは1組の内部電極と外部電極とに挟まれ、かつ内部に電極を含まない圧電セラミック層の平均厚みをtμmとする。次に、縦横いずれも0.5t~2tμmの、正方形または矩形の範囲について、MnとLi、および電極に多く含有され、かつセラミック部にほとんど含まれない元素、例えばNiを対象として、元素分布をD-SIMSまたはTOF-SIMSあるいはWDXなどを用いて、縦横各辺を200pixel以上の解像度でマッピング分析する。得られた元素分布データについて、まず電極に多く含有され、セラミック部にほとんど含まれない元素について、視野内の各ピクセルにおける検出値の平均値を閾値として、この値より低い領域をセラミック部と判定する。続いて、この視野におけるMnとLiについて、電極部と略平行な方向については視野の一方の端から他方の端まで、電極部に略垂直な方向については1μmとなる矩形領域について、この矩形領域でのMnおよびLiの平均量をモル量として測定し、このMn/Liの濃度比率がモル比で4以上となる領域を偏析領域とする。
圧電セラミック層に含まれるLi濃度及びMn濃度の分布は、例えば、以下のようにD-SIMSにより求められる。
図7(a)、図7(b)及び図7(c)は、D-SIMS分析の手順を説明するための概略図である。図7(a)、図7(b)及び図7(c)には、概略図を示しており、実際のスパッタ領域の大きさとは異なる。
図7(a)に示す試料に対して、図7(b)に示すように、測定対象の圧電セラミック層Cの手前の内部電極Aの位置まで研磨しておく。図7(c)に示すように、D-SIMSで一次イオン(O イオン等)を用いたイオンスパッタにより試料を掘削しながら、その時に素子からはじき出される二次イオン(Liイオン、Mn2+イオン等)を質量分析器により検出する。これにより、イオンスパッタの加工深さに対する含有元素の量を分析する。スパッタ領域の大きさは60μm角とし、二次イオン検出対象範囲は12μm角とする。なお、内部電極間の距離が長く(例えば15μm以上)、イオンスパッタのみで掘削することが難しい場合、素子を複数の個片に分割して、内部電極に平行に研磨し、研磨位置からD-SIMS分析を行い、研磨量を考慮した上で分析結果を繋ぎ合わせてもよい。
(電極部とセラミック部の識別)
D-SIMSで検出されたNi量について、検出量のピーク値の1/2までの箇所を電極部、1/2未満の箇所をセラミック部として識別する。
(セラミック部に含まれるLi量及びMn量の算出)
Mn量及びLi量が既知の比較用セラミック試料を同時に分析し、D-SIMSでの検出量から検量線を作成し、測定した値から検出量を校正する。比較用セラミック試料はKNNを主成分とし、Mn及びLiを含む焼結体で、組成分布が均一であることが望ましい。比較用セラミック試料として、例えば(K0.45Na0.50Li0.05)(Nb0.95Mn0.05)Oとなる、内部電極を含まない焼結体を作製し、予めICPなどにより組成の絶対値を評価する。また、比較用セラミック試料の内部での組成分布が十分小さいことを、D-SIMSあるいは小片に分割してICPなどで組成の分布を分析することで確認しておくことが望ましい。
比較用セラミック試料について、D-SIMSでスパッタ領域の大きさを60μm角、二次イオン検出対象範囲を12μm角としてMn濃度及びLi濃度を測定し、その値をaとする。一方、同じ条件で作製した比較用セラミック試料を40℃以上に加熱した濃度1N以上の硝酸で十分に溶解し、ICPなどで分析し、その値をbとする。分析対象のセラミック試料における組成分布を計算する際、D-SIMSでの検出値xに対してb/aを掛けることで、D-SIMSでの検出値から組成の絶対量を算出する。
(Mn/Li濃度比がモル比で4以上となる偏析領域の占める割合の算出)
上記の方法で求めたMn量及びLi量から、それぞれのモル量を算出し、求めたモル量からMnとLiのモル比を算出する。このモル比が4以上となる領域を偏析領域とし、偏析領域が存在する圧電セラミック層の厚みに対する偏析領域の厚みの比率を算出する。
[圧電セラミック電子部品の製造方法]
以下、本発明の圧電セラミック電子部品の製造方法の一実施形態として、図1及び図2に示す積層圧電アクチュエータ10の製造方法の一例について説明する。
まず、セラミック素原料として、例えば、Kを含有したK化合物、Nbを含有したNb化合物、2価のMnを含有したMn化合物を用意する。必要に応じて、Naを含有したNa化合物、Liを含有したLi化合物などを用意する。化合物の形態は、酸化物、炭酸塩、水酸化物いずれであってもよい。
次に、上記セラミック素原料を所定量秤量した後、これら秤量物をPSZボール等の粉砕媒体が内有されたボールミルに投入し、エタノール等の溶媒下、十分に湿式粉砕し、混合物を得る。
得られた混合物を乾燥させた後、所定温度(例えば、800℃以上1000℃以下)で仮焼して合成し、仮焼物を得る。
得られた仮焼物を解砕した後、有機バインダ、分散剤を加え、純水等を溶媒としてボールミル中で湿式混合し、セラミックスラリーを得る。その後、ドクターブレード法等を使用して成形加工をすることによって、セラミックグリーンシートを作製する。
次いで、Ni等の導電性材料を主成分とした内部電極用導電性ペーストを使用し、上記セラミックグリーンシート上にスクリーン印刷によって所定形状の導電層を形成する。
図8は、積層圧電アクチュエータの製造工程で得られるセラミックグリーンシートを模式的に示す斜視図である。
図8に示すように、導電層5a、5b、5c、5d、5e、5f及び5gがそれぞれ形成されたセラミックグリーンシート6a、6b、6c、6d、6e、6f及び6gを積層した後、導電層が形成されていないセラミックグリーンシート7aで挟持し、圧着する。これにより、セラミックグリーンシート6a、6b、6c、6d、6e、6f及び6gと導電層5a、5b、5c、5d、5e、5f及び5gとが交互に積層されたセラミック積層体を作製する。
得られたセラミック積層体を所定寸法に切断してアルミナ製の焼成冶具に載置し、所定温度(例えば、250℃以上500℃以下)で脱バインダ処理を行った後、還元雰囲気下、所定温度(例えば、1000℃以上1160℃以下)で焼成し、内部電極4a、4b、4c、4d、4e、4f及び4gが埋設された圧電セラミック素体1を形成する。
Niを主成分とする導電層とKNN系化合物を主成分とするセラミックグリーンシートを共焼成するためには、還元雰囲気で焼成する必要がある。圧電セラミック層内でMn濃度が層状の分布を持つために、焼成炉の内容積に対して十分な還元雰囲気ガスを流入させ、かつ、被焼成体が十分に雰囲気ガスに触れることが重要である。そのため、被焼成体の下にスペーサーを入れて焼成を実施することが好ましい。また、焼成炉の内容積a(L)に対し、0.1a(L/min)以上のガスを導入することが好ましい。なお、ガスの酸素分圧は、Niが酸化しないように、NiとNiOの平衡酸素分圧又はそれより低い値に維持することが好ましい。
Liは焼結性を改善するために添加することが好ましいが、一方で、上述した偏析領域を形成するためには圧電セラミック層中のLi濃度を低下させる必要がある。Li濃度を調整する方法としては、例えば、セラミック素原料を調合するときの仕込み量を調整する方法や、還元雰囲気ガスのフロー条件を調整することで残存するLi量を調整する方法などが挙げられる。
次いで、圧電セラミック素体1の両端部にAg等の導電性材料からなる外部電極用導電性ペーストを塗布し、所定温度(例えば、750℃以上850℃以下)で焼付け処理を行って、外部電極2a及び2bを形成する。
その後、所定の分極処理を行うことにより、積層圧電アクチュエータ10が製造される。なお、外部電極2a及び2bは、圧電セラミック素体1との密着性が良好であればよく、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法等の薄膜形成方法で形成してもよい。
以下、本発明の圧電セラミック電子部品をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
(試料1)
セラミック素原料として、炭酸カリウムKCO、炭酸ナトリウムNaCO、炭酸リチウムLiCO、酸化ニオブNb、及び、炭酸マンガンMnCOを用意した。そして、(K1-a-bNaLi)NbO(0≦a≦0.9、0≦b≦0.1)となるように、上記セラミック素原料を秤量した。具体的には、KCO:15.03重量%、NaCO:13.68重量%、LiCO:1.12重量%、Nb:67.26重量%、MnCO:2.91重量%とした。秤量物をボールミルに投入し、エタノールを溶媒として混合撹拌し、スラリーを得た。得られたスラリーを乾燥した後、900℃で仮焼し、仮焼粉末を得た。
仮焼粉末をバインダ、分散剤、界面活性剤、及び、エタノールを主成分とする有機溶媒で分散し、仮焼原料入りスラリーを得た。得られた仮焼原料入りスラリーをキャリアフィルム上に塗布して乾燥することにより、仮焼原料を含むセラミックグリーンシートを作製した。
セラミックグリーンシートをカットし、Niを主成分とする内部電極用導電性ペーストを用いて導電層を印刷した上で積層、圧着し、積層圧着体を作製した。
積層圧着体をカットした後、アルミナ製の焼成冶具に載せて脱脂した。その後、酸素分圧を制御しながら焼成することで、Niを主成分とする内部電極を含む積層焼結体を作製した。なお、酸素分圧は、焼成中の各温度において、NiとNiOの平衡酸素分圧より低い酸素分圧になるように制御した。また、焼成温度は1100℃とした。本実施例では、焼成炉の内容積a(L)に対し、0.1a(L/min)以上の還元性混合ガスを導入することで焼成を実施した。焼成炉の内容積に対して十分な還元雰囲気ガスを流入させ、かつ、被焼成体が十分に雰囲気ガスに触れるように、被焼成体の下にスペーサーを入れて焼成を実施した。
(試料2~4)
試料1と同様の方法により、積層圧着体を作製した。試料2では、Liの仕込み量を試料1の0.25倍に変更し、それ以外は試料1と同じ条件として積層焼結体を作製した。試料3では、試料2の雰囲気ガスの流量を1.2倍に、試料4では、試料2の雰囲気ガスの流量を1.4倍に変更し、それ以外は試料2と同じ条件として積層焼結体を作製した。
(試料5)
セラミック素原料の仕込み組成からLiを除去することを除いて、試料1と同様の方法により積層焼結体を作製した。
(試料6)
試料1と同様の方法により、積層圧着体を作製した。積層圧着体を脱脂した後、焼成炉の内容積a(L)に対し、0.1a(L/min)未満となるようにガス流量を変更し、それ以外は試料1と同じ条件として積層焼結体を作製した。なお、酸素分圧は、NiとNiOの平衡酸素分圧より低い酸素分圧になるように制御した。
(WDXによるMn濃度の分布の分析)
試料1~6について、上述した方法に従って、WDXによりMn濃度の分布を求めた。分析対象元素をNi及びMnとして分析を行うことで、元素マッピング像を得た。WDXの測定条件を表1に示す。試料の角度については、観察する圧電セラミック層に隣接する内部電極が正方形のWDX観察視野の横方向の辺に略平行になるように調整した。
Figure 0007151884000001
(D-SIMSによるLi濃度及びMn濃度の分布の分析)
試料1~6について、上述した方法に従って、D-SIMSによりLi濃度及びMn濃度の分布を求めた。D-SIMS分析は、各試料を複数の個片に分割して行った。D-SIMSの測定条件を表2に示す。
Figure 0007151884000002
図9(a)、図9(b)、図9(c)、図9(d)及び図9(e)に、試料6のMn濃度及びLi濃度の分析結果を示す。図9(a)はNiマッピング像、図9(b)はMnマッピング像、図9(c)はLiマッピング像、図9(d)はMn濃度の分布を示すグラフ、図9(e)はLi濃度の分布を示すグラフである。
図10(a)、図10(b)、図10(c)、図10(d)及び図10(e)に、試料3のMn濃度及びLi濃度の分析結果を示す。図10(a)はNiマッピング像、図10(b)はMnマッピング像、図10(c)はLiマッピング像、図10(d)はMn濃度の分布を示すグラフ、図10(e)はLi濃度の分布を示すグラフである。
図9(a)~図9(e)、及び、図10(a)~図10(e)には、正確なD-SIMS分析を行うことが可能な深さである15μmまでの結果が示されている。なお、分析深さ15μmの位置は、圧電セラミック層の第2領域に該当し、具体的には、図6(d)に示す直線Lと直線Lとの間にある。
図11は、試料3及び試料6におけるMn/Li濃度比の分布を示すグラフである。
図11より、試料3においては、Mn/Li濃度比がモル比で4以上となる偏析領域が存在することが確認できる。
試料1~6について、圧電セラミック層の第1領域に含まれるMn濃度をcm1、第2領域に含まれるMn濃度をcm2、第3領域に含まれるMn濃度をcm3としたときのcm2/cm1の値、及び、cm2/cm3の値を表3に示す。表3にはさらに、圧電セラミック層に含まれるLi濃度、及び、圧電セラミック層内のMn/Li濃度比がモル比で4以上となる領域を偏析領域としたときの、圧電セラミック層の厚みに対する偏析領域の厚みの比率を示す。
なお、各領域に含まれるMn濃度及びLi濃度は次のように求めた。まず、標準サンプルに含有されるMnの重量分率をICPにより測定し、この濃度をcstandardとする。一方、TOF-SIMSで標準サンプルを測定したときの、Mnの検出値の平均値をIstandardとする。対象とする素子をTOF-SIMSで測定したときのMnの検出値をIsampleとしたとき、この領域のMnの濃度cをc=cstandard×Isample/Istandardとして求めた。
別途、試料1~6について、100℃で3.8kV/mmのDC電界を印加した場合の絶縁抵抗率ρ(Ω・cm)を測定し、logρ≦5に低下するまでの時間をDC負荷寿命とした。試料6のDC負荷寿命を1とした場合の相対値を表3に示す。さらに、試料1~6の密度を表3に示す。
Figure 0007151884000003
表3において、試料番号に*を付したものは、本発明の範囲外の比較例である。
試料1~5に示すように、圧電セラミック層の中央付近にMn濃度の高い領域を設けることで、試料6に比べてDC駆動時の寿命が長くなる。これは、Mn濃度の高い領域によって、酸素欠陥の移動を防止することができるためと考えられる。
試料1~4に示すように、圧電セラミック層にLiが含まれていると、試料5に比べて焼結密度が高くなり、DC駆動時の寿命が長くなる。圧電セラミック層にLiが含まれていると、焼結途中でLiがMnとともに移動することができるため、圧電セラミック層中にMn濃度の異なる層状の領域が形成されやすくなると考えられる。
試料2~4に示すように、圧電セラミック層に含まれるLi濃度が0.03重量%以上、0.06重量%以下であると、DC駆動時の寿命がさらに長くなる。これは、Mnの多くが圧電セラミック層に残留するためと考えられる。
試料3及び4に示すように、Mn/Li濃度比がモル比で4以上となる偏析領域の割合が大きいと、DC駆動時の寿命が大幅に長くなる。偏析領域の割合が大きいと、LiとMnが安定な化合物を形成することが妨げられるため、KNN系化合物に固溶するMn量を多くすることができると考えられる。
一方、試料6では、DC駆動時の寿命が短い。これは、Mn濃度が圧電セラミック層内で層状の構造を形成せず、酸素欠陥の移動を十分に防止できないためと考えられる。
1 圧電セラミック素体
2a、2b、2c 外部電極
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h 圧電セラミック層
4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g 内部電極
5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g 導電層
6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、7a セラミックグリーンシート
10 積層圧電アクチュエータ(圧電セラミック電子部品)
A、B 内部電極
C 圧電セラミック層
、P、P、P 内部電極のペア
第1領域
第2領域
第3領域

Claims (8)

  1. 1層又は複数の圧電セラミック層を含む圧電セラミック素体と、
    前記圧電セラミック素体の表面又は内部に設けられた複数の電極と、を備える圧電セラミック電子部品であって、
    前記圧電セラミック層は、ニオブ酸カリウムナトリウム系化合物及びMnを含有するセラミック焼結体から構成され、
    隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層を厚み方向に3等分して、一方の電極側から他方の電極側へ順に第1領域、第2領域及び第3領域とした場合、前記第1領域及び前記第3領域に含まれるMn濃度に比べて、前記第2領域に含まれるMn濃度が高い、圧電セラミック電子部品。
  2. 前記隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層は、一方の電極側から他方の電極側へ順に、第1のMn低濃度層と、Mn高濃度層と、第2のMn低濃度層とから構成され、
    前記第1のMn低濃度層及び前記第2のMn低濃度層に含まれるMn濃度に比べて、前記Mn高濃度層に含まれるMn濃度が高い、請求項1に記載の圧電セラミック電子部品。
  3. 前記隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層には、Liが含まれている、請求項1又は2に記載の圧電セラミック電子部品。
  4. 前記隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層に含まれるLi濃度は、0.03重量%以上、0.06重量%以下である、請求項3に記載の圧電セラミック電子部品。
  5. 前記隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層には、Mn/Li濃度比がモル比で4以上となる偏析領域が存在し、
    前記偏析領域の厚みは、前記偏析領域が存在する圧電セラミック層の厚みに対して0.50倍以上である、請求項3又は4に記載の圧電セラミック電子部品。
  6. 前記電極として、前記圧電セラミック素体の内部に設けられた複数の内部電極を備え、
    前記隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層は、前記厚み方向に隣接する1組の内部電極に挟まれた圧電セラミック層である、請求項1~5のいずれか1項に記載の圧電セラミック電子部品。
  7. 前記電極として、前記圧電セラミック素体の表面に設けられた複数の外部電極と、前記圧電セラミック素体の内部に設けられた1層又は複数の内部電極とを備え、
    前記隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層は、前記厚み方向に隣接する1組の内部電極と外部電極とに挟まれた圧電セラミック層である、請求項1~5のいずれか1項に記載の圧電セラミック電子部品。
  8. 前記電極として、前記圧電セラミック素体の表面に設けられた複数の外部電極を備え、
    前記隣接する電極に挟まれた圧電セラミック層は、前記厚み方向に隣接する1組の外部電極に挟まれた圧電セラミック層である、請求項1~5のいずれか1項に記載の圧電セラミック電子部品。
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