JP7149930B2 - パンの品質改良剤及び/又は品質改良組成物 - Google Patents

パンの品質改良剤及び/又は品質改良組成物 Download PDF

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Description

特許法第30条第2項適用 ウェブサイト(2016年9月27日、http://www.nagasechemtex.co.jp/news/2016/160927.html)、ウェブサイト(2016年9月27日、https://www.hayashibara.co.jp/data/965/press_tp/)、ウェブサイト(2016年9月27日、http://www.nagase.co.jp/assetfiles/news/20160927.pdf)、月刊フードケミカル3月号(2017年3月1日、第3巻、第383号、第40~42頁、株式会社食品化学新聞社)、食品と開発2月号(2017年2月1日、第52巻、第2号、第62~64頁、UBMメディア株式会社)、記者会見(2016年9月27日、長瀬産業株式会社 東京本社西館2F)
本発明は、パンの品質改良剤及び/又は品質改良組成物に関する。
パン業界においては、パンを貯蔵した際に起こる老化現象は大きな問題点の一つであり、老化現象を防止または遅延する試みがなされている。従来、パンの老化防止のために、生地の調製段階で酵素、乳化剤、オリゴ糖、および糖アルコール等の食品添加物が添加されている。しかしながら、酵素以外の食品添加物を添加して製造されたパンは、食品中の食品添加物として天然物を重視する近年の需要を満たすものではない(特許文献1)。
一方、産業用酵素の国内市場は、約260億円と推定され、その中で食品用酵素は、約60%を占める。パンの市場においては、改良剤の一つとして天然物である酵素への注目度が高まっており、アミラーゼ、ヘミセルラーゼをはじめ、多くの製パン用酵素が開発されている。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼ(G4生成酵素)は、澱粉の非還元末端からマルトテトラオース単位でオリゴ糖を切り出すエキソ型のアミラーゼであり、澱粉糖化工業においてマルトオリゴ糖を製造する酵素として用いられている。パンの品質改良剤として、エキソマルトテトラオヒドロラーゼは焼成後のパンの弾力、しなやかさの改善、および固化現象の防止などの作用を有することが知られている。バシルス・サーキュランス(Bacillus circulans)やシュードモナス・サッカロフィリア(Pseudomonas saccharophilia)由来のエキソマルトテトラオヒドロラーゼが知られている(特許文献1~3)。
特開平11-266773号公報 特開平11-178499号公報 特表2007-526752号公報
従来の酵素を含有する食品改良剤は、外観、食感、風味の改善が充分ではない。本発明は酵素の作用により、パンの品質を改良することを課題とする。
本発明者らは、酵素がパンの外観、食感、風味や糖組成にもたらす影響を研究した結果、エキソマルトテトラオヒドロラーゼがパンの品質を改良できることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを含む、パンの品質改良剤に関する。
前記品質改良が焼き色の改善であることが好ましい。
前記品質改良が食感の改善であることが好ましい。
前記品質改良が風味の改善であることが好ましい。
品質改良剤が、パン生地中にマルトースを主成分とする糖質が生成するよう設計されたものであることが好ましい。
マルトースを主成分とする糖質が、エキソマルトテトラオヒドロラーゼの作用により生成したマルトテトラオースが、アミラーゼにより分解されて生じたものであることが好ましい。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼが、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来であることが好ましい。
また、本発明は、前記品質改良剤を含む、パンの品質改良組成物に関する。
また、本発明は、パン生地材料に前記組成物を添加することにより、マルトースを増加させる工程を含む、パンの製造方法に関する。
また、本発明は、前記製造方法により製造されたパンに関する。
また、本発明は、マルトースを主成分とする糖質を含むパンに関する。
本発明のパンの品質改良剤は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを含むが、パンにおけるマルトース量を増加させる。そのため、焼成後のパンにおけるボリュームアップ効果、老化防止効果(焼成後のパンの弾力、しなやかさの改善、および固化現象の防止または柔らかさの持続の維持)に加え、パンの焼き色の鮮明化、発酵促進、食感の改善(くちゃつき感の低減、もちもち感の改善、口どけ感の改善)、その他しっとり感の改善、風味の改善(甘い味、香り)といった効果を奏する。
品質改良組成物がパンの比容積に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの比容積に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの硬さに及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの硬さに及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの付着性に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの付着性に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの凝集性に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの凝集性に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンのもろさに及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンのもろさに及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの弾力性に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの弾力性に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの咀嚼性に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの咀嚼性に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの糖組成に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの全糖量に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの各糖量に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの食味・香りに及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの食味・香りに及ぼす効果を示す。 品質改良組成物を用いて製造されたパンの外観を示す。 品質改良組成物を用いて製造されたパンの外観を示す。 品質改良組成物を用いて製造されたパンの外観を示す。 品質改良組成物を用いて製造されたパンの外観を示す。 品質改良組成物がパンの比容積に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの硬さに及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの硬さに及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの食味に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの糖組成に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの全糖量に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの焼き色に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの比容積に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの硬さに及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの糖含量に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの食味に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物を用いて製造されたクロワッサンの外観を示す。 品質改良組成物がパンの比容積に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの硬さに及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの食味に及ぼす効果を示す。 中種法での製造途中のパン生地の外観を示す。 品質改良組成物がパンの比容積に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの硬さに及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの硬さに及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの糖組成に及ぼす効果を示す。 品質改良組成物がパンの食味に及ぼす効果を示す。
(1)品質改良剤
本発明のパンの品質改良剤は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを含む。エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、澱粉をエキソ型で加水分解する酵素であり、4分子のグルコースからなるマルトテトラオースを生成する酵素として知られている。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、微生物由来、動物由来、植物由来のものが挙げられる。微生物としてはシュードモナス属、バシラス属が挙げられる。シュードモナス属の微生物としてはシュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・サッカロフィリア(Pseudomonas saccharophilia)、シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)が挙げられる。バシラス属の微生物としてはバシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バシラス エスピー(Bacillus sp.)が挙げられる。動物としては哺乳類、爬虫類が挙げられる。哺乳類としては、ブタ、ウサギ、ウシ、ウマ、イノシシ、ヒツジ、ネズミ、ハムスターが挙げられる。爬虫類としてはヘビが挙げられる。植物としてはシロイヌナズナ、ピーナツ、キャベツが挙げられる。これらの中でも、微生物由来であることが好ましく、シュードモナス属由来であることがより好ましく、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来であることがさらに好ましい。また、エキソマルトテトラオヒドロラーゼとしては、起源となる微生物、動物、または植物から抽出したもの、微生物細胞で大量生産させたもののいずれを用いてもよい。また、遺伝子組み換え型エキソマルトテトラオヒドロラーゼを用いることもできるが、非遺伝子組み換え(Non-GMO)品であることが好ましい。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、以下の(A)、(B)、または(C)のポリペプチドであることが好ましい。
(A)配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(B)配列番号1に示すアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を示し、澱粉をエキソ型で加水分解してマルトテトラオースを生成する活性を有するポリペプチド;
(C)配列番号1に示すアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換および/または付加したアミノ酸配列からなり、澱粉をエキソ型で加水分解してマルトテトラオースを生成する活性を有するポリペプチド。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼと、配列番号1に示すアミノ酸配列との配列同一性は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、98%以上がさらにより好ましく、99%以上が特に好ましく、100%が最も好ましい。アミノ酸配列の配列同一性は、配列番号1に示すアミノ酸配列と、評価対象のアミノ酸配列とを比較し、両方の配列でアミノ酸が一致した位置の数を総アミノ酸数で除して100を乗じた値で表される。
欠失、挿入、置換および/または付加されるアミノ酸の個数は、82個以下が好ましく、54個以下がより好ましく、27個以下がさらに好ましく、10個以下がさらにより好ましく、5個以下が特に好ましい。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、以下の(a)、(b)、(c)または(d)のDNAによりコードされるポリペプチドであることが好ましい。
(a)配列番号2に示す塩基配列を含むDNA;
(b)配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、澱粉をエキソ型で加水分解してマルトテトラオースを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(c)配列番号2に示す塩基配列と85%以上の配列同一性を示し、澱粉をエキソ型で加水分解してマルトテトラオースを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(d)配列番号2に示す塩基配列において、1または複数個の塩基が欠失、挿入、置換および/または付加した塩基配列からなり、澱粉をエキソ型で加水分解してマルトテトラオースを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
配列番号2に示した塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、澱粉をエキソ型で加水分解してマルトテトラオースを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNAは、配列番号2に示した塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAをプローブとして、ストリンジェントな条件下にコロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、あるいはサザンハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAで、かつ澱粉をエキソ型で加水分解してマルトテトラオースを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNAである。
ハイブリダイゼーションは、公知の方法により行うことができる。ストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAとは、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7~1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃の条件下でフィルターを洗浄して得られるDNAをあげることができる。65℃で0.5倍濃度のSSC溶液で洗浄して得られるDNAであることが好ましく、65℃で0.2倍濃度のSSC溶液で洗浄して得られるDNAであることがより好ましく、65℃で0.1倍濃度のSSC溶液で洗浄して得られるDNAであることがさらに好ましい。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼをコードするDNAと、配列番号2に示す塩基配列との配列同一性は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、98%以上がさらにより好ましいく、99%以上が特に好ましく、100%が最も好ましい。
塩基配列の配列同一性は、配列番号2に示した塩基配列と評価したい塩基配列とを比較し、両方の配列で塩基が一致した位置の数を比較総塩基数で除して、さらに100を乗じた値で表される。
配列番号2に示した塩基配列において、1または複数個の塩基が欠失、挿入、置換および/または付加した塩基配列からなり、澱粉をエキソ型で加水分解してマルトテトラオースを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNAは、公知の遺伝子改変方法に準じて調製することができる。
欠失、挿入、置換および/または付加される塩基の数は、246個以下が好ましく、164個以下がより好ましく、82個以下がさらに好ましく、32個以下がさらにより好ましく、16個以下が特に好ましい。
なお、配列番号1に示すアミノ酸配列、および配列番号2に示す塩基配列は、それぞれ、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)MO-19株が有するエキソマルトテトラオヒドロラーゼのアミノ酸配列、およびその遺伝子の塩基配列である。
酵素タンパク質であるエキソマルトテトラオヒドロラーゼをパン生地に添加すると、加熱する工程で生地温度が上がり、生地内に含まれるエキソマルトテトラオヒドロラーゼは熱変性して働きを失う。エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、卵や他の原材料に含まれるタンパク質と同様に体内で消化吸収される。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、天然に存在する生物から調製することが可能である。天然に存在する微生物からエキソマルトテトラオヒドロラーゼを製造する場合、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを生産する微生物を培養する工程、培養液から微生物菌体を分離する工程、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを精製する工程を含む方法により製造できる。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼを生産する微生物を培養する工程では、該微生物が利用し得る栄養源を含む培地で該微生物を培養する。培地の形態としては、エキソマルトテトラオヒドロラーゼの生産を促進する限り、液体状であってもよく、固体状であってもよい。大量培養には、培地の調製が容易であり、かつ撹拌可能のため高い菌濃度にまで培養が可能であるという点から液体培地が好ましい。
栄養源としては、例えば、炭素源、窒素源、および無機塩類が挙げられる。炭素源としては、例えば、グルコース、グリセリン、デキストリン、スターチ、糖蜜、および動植物油が挙げられる。窒素源としては、例えば、大豆粉、コーンスチープリカー、綿実かす、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、硫酸アンモニウム、硝酸ソーダ、および尿素が挙げられる。無機塩類としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、およびリン酸が挙げられる。培養法としては、静置培養、振盪培養、通気攪拌培養のいずれでもよいが、大量培養のためには、空気および栄養源を効率的に菌体に供給することができるという点で通気攪拌培養が好ましい。
培養温度は10℃~60℃が好ましく、20℃~40℃がより好ましい。培地のpHはpH5~pH9が好ましい。培養時間は、例えば1日間~7日間であり、当業者が通常用いる方法により培養液のモニタリングを行い、培養液中に含まれるエキソマルトテトラオヒドロラーゼの量が最大になったときに培養を停止することができる。
培養液から微生物菌体を分離する工程では、例えば、遠心分離、ろ過、または減圧蒸留により、培養液から微生物菌体を分離できる。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼを含む液からエキソマルトテトラオヒドロラーゼを分離および精製する工程では、例えば、排分子量60000以下のろ過膜を用いた限外ろ過または精密ろ過、硫安またはエタノールを用いた分画、クロマトグラフィーによる精製などの公知の手段を目的のエキソマルトテトラオヒドロラーゼの精製度に応じて適宜組み合わせて用いることができる。
品質改良剤中のエキソマルトテトラオヒドロラーゼの含有量は限定されないが、品質改良剤全体重量1gあたり、0.5U~750000U、好ましくは1U~720000U、より好ましくは5U~700000U、さらに好ましくは10U~100000U、さらにより好ましくは100U~10000U、最も好ましくは6000U~8000Uの割合でエキソマルトテトラオヒドロラーゼを含有する。ここで、エキソマルトテトラオヒドロラーゼの活性は、酵素を基質澱粉に作用させ、生成した還元糖の還元力をソモギー・ネルソン変法により定量することにより、測定できる。酵素活性の単位は、1分間に1μmolのグルコースに相当する還元力を生成する酵素量を1Uとする。
本発明のパンの品質改良剤は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼのみで構成されていてもよいし、エキソマルトテトラオヒドロラーゼ以外に、本発明の効果を阻害しない程度において、酵素製剤が通常含有し得る他の成分を含有していてもよい。このような成分として、賦形剤、pH調整剤、保存料が挙げられる。
賦形剤としては、当業者が適宜選択し、必要に応じて複数種を組み合わせて用いることができる。賦形剤の例としては、例えば、デキストリンやトレハロースが挙げられるがこれに限定されない。
pH調整剤としては、例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)、酢酸、デヒドロ酢酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、およびアジピン酸、ならびにこれらの有機酸のナトリウム(Na)塩、カルシウム(Ca)塩、およびカリウム(K)塩ならびに炭酸、リン酸、およびピロリン酸、ならびにこれらの無機酸のNa塩およびK塩が挙げられる。
なお、アスコルビン酸(ビタミンC)は、pH調整に加えてパンのボリュームアップにも貢献する。すなわち、アスコルビン酸は酸素と接触し、パン生地中で酸化される。酸化型アスコルビン酸は小麦粉のグルテンに作用してパン生地を引き締め、パン生地のべたつきを防止する。また、パン生地が引き締められる結果、COを保持しやすくなり、パンのボリュームアップが促進される。
パンの品質改良剤に含有されるエキソマルトテトラオヒドロラーゼ以外の成分の含有量は特に限定されないが、例えばアスコルビン酸ナトリウム等のpH調整剤を添加する場合には、パンの原材料である小麦粉に対し0.1~100ppmとなる量が好ましく、5~60ppmとなる量がより好ましく、10~50ppmとなる量がより好ましく、20~40ppmとなる量が最も好ましい。
保存料としては、例えば、プロピオン酸、プロピオン酸塩、亜硫酸塩、安息香酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸塩などが挙げられる。塩としては、ナトリウム(Na)塩、カルシウム(Ca)塩、およびカリウム(K)塩などが挙げられる。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼとそれ以外の成分を混合してパンの品質改良剤を製造する場合は、上記の活性値になるように、エキソマルトテトラオヒドロラーゼと賦型剤を混合機にて混合する。混合機としては、容器回転型、容器固定型、複合型等が挙げられ、目的の活性値や量、賦型剤の種類に応じて適宜選択できる。
後述するように、本発明においてエキソマルトテトラオヒドロラーゼはマルトテトラオースを生成し、マルトテトラオースが小麦粉原料中に含まれるアミラーゼにより分解されてマルトースを生じる。したがって、品質改良剤はパン生地中にマルトースを主成分とする糖質が生成するよう設計されたものであることが好ましい。また、マルトースを主成分とする糖質は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼの作用により生成したマルトテトラオースが、アミラーゼにより分解されて生じたものであることが好ましい。
(2)品質改良組成物
本発明のパンの品質改良組成物は、前記品質改良剤を含むことを特徴とする。品質改良組成物は、前記品質改良剤に加えて、食品に許容される他の成分を含んでいてもよい。
本発明のパンの品質改良組成物に含まれ得る、エキソマルトテトラオヒドロラーゼ以外の成分としては、例えば、酵素、増粘多糖類、乳化剤、乳化剤と重合リン酸塩との混合物、乳製品、エキス類、糖質、甘味料、発酵風味料、卵、無機塩類などが挙げられる。本発明のパンの品質改良組成物に含有される他の成分の含有量は特に限定されず、当業者によって任意の量が選択され得る。
酵素としては、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、マルトジェニックアミラーゼ、グルカン1,4-α-マルトトリオヒドロラーゼ、グルカン1,4-α-マルトヘキサオヒドロラーゼ、ヘミセルラーゼ、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼ、グルコースオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、ぺルオキシダーゼ、カタラーゼ、グルタチオンデヒドロゲナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、トランスグルタミナーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、β-グルカナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、キチナーゼなどが挙げられる。
増粘多糖類としては、例えば、加工澱粉、ガム類、アルギン酸、アルギン酸誘導体、ペクチン、カラギーナン、カードラン、プルラン、ゼラチン、セルロース誘導体、寒天、タマリンド、サイリウム、グルコマンナンなどが挙げられる。
乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、サポニンなどが挙げられる。
乳製品としては、例えば、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、ホエイ粉、カゼイン、チーズ、ヨーグルト、練乳、発酵乳、クリームなどが挙げられる。
エキス類としては、例えば、酵母エキス、モルトエキスなどが挙げられる。
糖質としては、例えば、グルコース、果糖などの単糖;砂糖、マルトース、イソマルトース、トレハロース、ラクトース、ラクツロース、セロビオースなどの二糖;マルトトリオース以上のマルトオリゴ糖、ラフィノース、パノース、スタキオース、グルコオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ゲンチオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、ラクトスクロースなどの直鎖もしくは分岐オリゴ糖;異性化糖、水あめ、粉あめ、はちみつなどの糖混合物;澱粉、加工澱粉、デキストリン、水酸化ヘミセルロースなどの多糖;還元水あめ、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、パラチニット、エリスリトール、オリゴ糖還元物などの糖アルコールなどが挙げられる。二糖類、オリゴ糖類、澱粉、加工澱粉類、デキストリンは賦形剤としても用いられる。
甘味料としては、例えば、ステビア、アスパルテーム、グリチルリチン、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテームなどが挙げられる。
無機塩類としては、例えば、食塩、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、重合リン酸塩などが挙げられる。
本発明のパンの品質改良組成物の形状は特に限定されず、粉末状、顆粒状、液体状、ペースト状、固形状が挙げられる。粉末状の場合、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを水もしくは糖液などの溶媒に溶解した後、必要に応じてデキストリンなどの賦形剤を配合した後、乾燥させて粉末状としたものであってもよい。
パンの品質改良組成物における品質改良剤の含有量は0.1~10%が好ましく、1~5%がより好ましく、2~3%がさらに好ましい。なお、「%」は特に断らない限り重量/重量%を意味する。
(3)品質改良の内容
本発明のパンの品質改良組成物をパンの材料に配合すると、焼成されたパンの品質を改良できる。品質改良としては、焼き色の改善、食感の改善、風味の改善が挙げられる。
パンの焼き色の改善として、具体的には焼き色の鮮明化が挙げられる。焼き色は、パンの色差を測定することにより評価できる。
食感の改善として、具体的にはくちゃつき感の低減、もちもち感の改善、口どけ感の改善が挙げられる。くちゃつき感は、パンの付着性の測定、官能試験により評価できる。もちもち感は、パンの弾力性の測定、官能試験により評価できる。口どけ感は、パンの凝集性、もろさ、咀嚼性の測定、官能試験により評価できる。
風味の改善として、具体的には甘味の改善、香りの改善が挙げられる。風味は官能試験により評価できる。
その他の品質改良として、パンのボリュームアップ、老化防止、発酵促進が挙げられる。ボリュームアップは、パンの比容積の測定により評価できる。老化防止は、パンの弾力の改善、しなやかさの改善、および固化現象の防止により達成される。老化防止は、パンの比容積、硬さ、凝集性、もろさ、弾力性、咀嚼性の測定、官能試験により評価できる。発酵促進は、比容積の測定により評価できる。以下、各評価項目を説明する。
比容積:本発明のパンの品質改良組成物は小麦粉の澱粉に作用してマルトース等のオリゴ糖を生成する。これにより、パン酵母の発酵を促進し、焼成されたパンの比容積を増大する。比容積の増大はボリュームアップ効果や老化防止効果につながる。
比容積は、パンの体積(cm)および重量(g)を測定し、比容積(cm/g)を算出することにより求められる。体積および重量はレーザー体積計を用いて測定できる。本発明のパンの品質改良組成物を添加して製造されたパンの比容積は、本発明のパンの品質改良組成物を添加しない以外は同じ条件で製造されたパンに対して、1.04倍以上が好ましく、1.08倍以上がより好ましく、1.1倍以上がさらに好ましく、1.15倍以上がさらにより好ましい。
色差:本発明のパンの品質改良組成物を添加して製造されたパンは、マルトースの量が増加し、色素が増大する。パンの焼き色は、パン内に含まれる糖類がメイラード反応とカラメル化反応により呈色することにより生じる。メイラード反応は糖類の中でもフルクトースが最も起こりすく、フルクトース、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロースの順である。本発明のパンの品質改良組成物に含まれるエキソマルトテトラオヒドロラーゼはマルトテトラオースを生成し、マルトテトラオースが小麦粉原料中に含まれるアミラーゼにより分解されてマルトースを生じる。マルトース量の増加により、焼き色が鮮明になる。焼き色は、パンにおける重要な要素の一つである。
色差は、L*a*b*表色系における座標L*、a*、b*の差であるΔL*、Δa*、Δb*によって定義される二つの試料(色刺激)の間の色の差を意味する。本発明のパンの品質改良組成物を添加して製造されたパンは、本発明のパンの品質改良組成物を添加しない以外は同じ条件で製造されたパンに対して、同じ部位の色差が3.5以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましく、5.0以上であることがさらに好ましく、7.0以上であることがさらにより好ましい。
硬さ:本発明のパンの品質改良組成物は澱粉を適度に分解し、澱粉の再結晶化を抑える。また、マルトース量の増加により、保湿性が高くなる。その結果、パンの柔らかさを維持し、老化を防止する。硬さは、パンにレオメーターのプランジャーで負荷を加えた際の最大試験力(N)により測定できる。本発明のパンの品質改良組成物を添加して製造されたパンは、本発明のパンの品質改良組成物を添加しない以外は同じ条件で製造されたパンに対して、同じ部位の硬さが0.93倍以下が好ましく、0.85倍以下がより好ましく、0.8倍以下がさらに好ましく、0.73倍以下がさらにより好ましい。
付着性:本発明のパンの品質改良組成物は澱粉を適度に分解し、過度な糊化を抑える。また、マルトース量の増加により、保湿性が高くなる。その結果、パンの付着性を低減し、くちゃつき感を低減する。
凝集性:一般的に、パンの品質改良剤を使用すると凝集性が高まると言われているが、本発明のパンの品質改良組成物は凝集性の増加を抑制する。したがって、本発明のパンの品質改良組成物はパンの老化を防止し、口どけ感を改善させる。
もろさ:本発明のパンの品質改良組成物は澱粉を適度に分解し、澱粉の再結晶化を抑える。また、マルトース量の増加により、保湿性が高くなる。その結果、パンのもろさの増大に貢献し、パンの老化を防止し、口どけ感を改善させる。もろさは、レオメーターのブランジャーで角食パンのクラム部分に負荷を加えることで得られた数値(N)として測定される。本発明のパンの品質改良組成物を添加して製造されたパンは、本発明のパンの品質改良組成物を添加しない以外は同じ条件で製造されたパンに対して、同じ部位のもろさが0.86倍以下が好ましく、0.8倍以下がより好ましく、0.75倍以下がさらに好ましい。
弾力性:本発明のパンの品質改良組成物は澱粉を適度に分解し、過度な糊化を抑えてパンの弾力性を維持する。その結果、パンの老化を防止し、もちもち感を改善させる。
咀嚼性:本発明のパンの品質改良組成物は澱粉を適度に分解し、澱粉の再結晶化を抑え、咀嚼性を改善する。また、マルトース量の増加により、保湿性が高くなる。その結果、パンの老化を防止し、口どけ感を改善させる。咀嚼性は、硬さ(N)×弾力性×凝集性で表され、これらの数値はレオメーターを用いて測定できる。本発明のパンの品質改良組成物を添加して製造されたパンの咀嚼性は、本発明のパンの品質改良組成物を添加しない以外は同じ条件で製造されたパンに対して、0.8倍以下が好ましく、0.75倍以下がより好ましい。
糖組成:従来の方法で製造したパンでは、糖質の主成分はフルクトースである。これに対し、本発明では、エキソマルトテトラオヒドロラーゼがマルトテトラオースを生成し、マルトテトラオースが小麦粉原料中に含まれるアミラーゼにより分解されてマルトースを生じる。ここで、糖質の主成分とは、パンの糖組成において最大比率を占める成分をいう。マルトース量の増加により比容積、色差、食感、および風味が改善する。
パンの糖組成におけるマルトースの比率は、マルトースが主成分であれば特に限定されず、使用する原料によって異なるが、15~80%が好ましく、20~60%がより好ましく、25~40%がさらに好ましく、30~40%がさらにより好ましい。
焼成されたパン、およびパン生地の糖組成は、常法により以下の方法により測定できる。例えば、パン生地の糖組成を測定する場合、パン生地から水により抽出される成分をHPLCを用いて分析する。パン生地からの水による抽出方法、およびHPLCによる分析条件は以下の通りである。
(パン生地からの水による抽出方法)
(1)冷凍生地を部分解凍する。
(2)50mLのビーカーに、冷凍生地あるいは焼成後生地10gと、30mM HCl 30g(フランスパンの場合、40g)を混合する。
(3)(2)の混合物をスターラーにて90分間~2時間混合し、抽出する。
(4)全量を50mLの遠沈管に移し、8000rpmで30分間、遠心分離する。
(5)上清をエッペンチューブに計りとり、14000rpmで30~60分間、遠心分離する。
(6)上清をフィルターろ過し、HPLCにより分析する。
(HPLCによる分析条件)
カラム:Xbridge Amide 4.6×150mm
移動相:77%アセトン水溶液+0.05%トリエチルアミン(v/v)、pH10.3
カラム温度:85℃
流速:0.5mL/分
検出器:RI
最大圧力:40MPa
許容pH:pH2~11
糖量:本発明のパンの品質改良組成物を添加して製造されたパンではマルトース量が増大し、全糖量も増大する。そのため、焼き色、食感、風味が改善する。
パン全体に対するマルトースの含有量は、使用する原料によって異なるが、0.6~20%が好ましく、1~10%がより好ましく、1.2~5%がさらに好ましい。また、パン全体に対する全糖の含有量は、使用する原料によって異なるが、4~25%が好ましく、4~16%がより好ましく、4~7%がさらに好ましい。
本発明のパンの品質改良組成物を添加して製造されたパンのマルトース含有量は、本発明のパンの品質改良組成物を添加しない以外は同じ条件で製造されたパンに対して、1.5倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましく、2.5倍以上がさらに好ましく、2.8倍以上がさらにより好ましい。
パンの糖量 は、糖量をアンスロン・硫酸法などの常法により以下の方法により測定される。糖量をアンスロン・硫酸法で測定する場合、その測定方法は以下の通りである。
(1)蒸留水50mLに硫酸150mLを冷却しながら混合し、アンスロン0.4gを溶解して0.2%アンスロン溶液を作成する。
(2)糖液サンプルを蒸留水で希釈する。
(3)冷却したアンスロン溶液2mLに、糖液0.4mLを添加混合する。
(4)沸騰水浴中で10分間加熱後、冷却する。
(5)620nmでの吸光度を測定し、標準品により作製した検量線により希釈液中の糖濃度を求め、上記(2)の希釈倍率に基づき糖量を求める。
食感:本発明のパンの品質改良組成物を添加して製造されたパンではマルトースの含有量が多い。マルトースは保湿性を高めるため、食感を改善できる。食感の改善として、くちゃつき感の低減、もちもち感の改善、口どけ感の改善が挙げられる。また、マルトースはグルコースとは風味が異なるので風味を改善できる。改善される風味として、しっとり感、甘さ、香りが挙げられる。
匂い:本発明のパンの品質改良組成物は発酵促進力に優れており、この組成物を添加したパン生地は焼成中に強いアルコール臭を漂わせる。一方、この組成物を添加して製造されたパンはマルトースを主成分として多くの糖を含むため甘い匂いが強く、アルコール臭はマスキングされる。よって、焼成後のパンでは、アルコール臭は抑えられる一方、甘い匂いを発する。
(4)パンの製造方法
本発明のパンの製造方法は、パン生地材料に前記組成物を添加することにより、焼成後のパンにおけるマルトースを増加させる工程を含む。パン生地材料に前記組成物を添加し、生地を発酵処理する際に、エキソマルトテトラオヒドロラーゼの活性により生地材料中の澱粉が分解されてマルトテトラオースを生じ、マルトテトラオースが小麦粉原料中に含まれるアミラーゼにより分解されてマルトースが増加する。マルトースの増加により焼成後のパンの品質を改良できる。マルトースの増加はパン生地材料における増加であってもよく、焼成後のパンにおける増加であってもよい。
パン生地の材料としては、小麦粉(薄力粉、中力粉、強力粉、全粒粉、グラハム粉など)、イースト(例えば、生イースト、ドライイースト、インスタントドライイーストなど)、糖分(例えば、上白糖、グラニュー糖、三温糖、黒糖などの砂糖、異性化糖、粉飴、水あめ、糖アルコール、オリゴ糖、トレハロースなど)、食塩、乳成分(例えば、牛乳、クリーム、全粉乳、脱脂粉乳、乳タンパク質、濃縮乳など)、油脂(例えば、ショートニング、マーガリン、バター、液状油、乳化油脂など)、水、卵(全卵、卵黄、卵白、乾燥卵、凍結卵など)、ベーキングパウダーなどが挙げられる。
さらに、風味や味、食感に変化をつけるために、小麦粉以外の穀物粉(例えば、米粉、ライ麦粉、コーンスターチ、大豆粉など)、牛乳、生クリーム、ヨーグルト、クリームチーズ、サワークリーム等の乳製品、チョコレート類、ココアパウダー、コーヒー、抹茶、紅茶等の粉末材料、シナモン、バニラビーンズ等のスパイス・ハーブ類、果汁、フルーツ、ナッツ、アルコール、香料などを加えてもよい。
本発明のパンの品質改良組成物をパン生地材料に添加する方法は特に限定されない。本発明の品質改良組成物は、パン製造の混捏工程の前、間または後のいずれにおいても、添加もしくは配合することができる。パン生地材料と品質改良組成物とが混捏されることが好ましい。この場合、品質改良組成物は、混捏前または間のいずれで添加してもよい。ここで、「混捏」(ミキシング)とは、パン生地材料と本発明の品質改良組成物とを混合して捏ねることをいう。混捏は、通常のパンの製造において用いられる条件で行うことができる。
品質改良組成物はパン生地材料のいずれかに直接加えてもよく、水などの液体に予め溶解させておいてパン生地材料に加えてもよい。また、品質改良組成物は、パン生地材料の全体に加えて混合してもよいし、パン生地材料の一部分、例えば小麦粉に加えて混合した後に、その他のパン生地材料を加えて混合してもよい。例えば、本発明の品質改良組成物が粉末状の場合、粉体原料と粉末混合(好ましくは混合して篩がけする)してもよい。本発明の品質改良組成物は、必要に応じて食塩もしくは糖と共に水に溶解(粉末状の場合)もしくは希釈(液状の場合)させてもよい。本発明の品質改良組成物は、必要に応じてマーガリンなどの油脂に予め配合もしくは分散溶解させてから、使用してもよい。
パン生地の製造および焼成は、通常の方法で行うことができる。パン生地の製造法としては、中種法(スポンジ法)、直捏(ストレート)法、冷蔵法、冷凍法、液種法(水種法)、サワー種法、酒種法、ホップ種法、中麺法(浸漬法)、チョリーウッド法、連続製パン法が挙げられる。
中種法では、小麦粉の一部または全部を先に発酵させて中種を製造し、その後、残りの小麦粉や材料を加えて本捏を行う。中種法において、パンの品質改良組成物を中種材料、または本捏材料どちらに配合しても効果を発揮するが、中種材料に配合することが好ましい。本発明では、発酵時にマルトテトラオヒドロラーゼが機能するので、パン生地の製造方法の中では酵素の反応時間が長い中種法が好ましい。
例えば、中種法では、パンは、次のようにして製造することができる。中種材料を混捏し、例えば、25℃~35℃で2時間~5時間発酵(中種発酵)させる。これを、本捏材料と混捏し、得られたパン生地を通常、15℃~35℃で10分~40分間放置する(フロアタイム)。次いで、所望のパンの形状に合わせて生地を適宜分割し、例えば、15℃~35℃で10分~30分間放置する(ベンチタイム)。これを成型し、例えば、25℃~45℃で適当な大きさに生地が膨張するまで最終発酵させた後、160℃~250℃で10分~60分間焼成してパンを製造することができる。
ストレート法では、最初からすべての材料を混合し、発酵させて生地を製造する。ストレート法の場合には、パンの品質改良組成物を他の材料とともに最初から配合することが好ましい。
例えば、ストレート法では、パンは次のようにして製造することができる。パン生地材料に本発明の品質改良組成物を加えて混捏し、パン生地を得る。得られた生地を、例えば、25℃~40℃で30分~120分間発酵させる(一次発酵)。次いで、必要に応じて、所望のパンの形状に合わせてパン生地を適宜分割し、これを成型し、例えば、25℃~45℃で適当な大きさに生地が膨張するまで(例えば、30分~150分)さらに発酵させる。発酵後、160℃~250℃で10分~60分間加熱(例えば、焼成)してパンを製造することができる。
冷蔵法では、中種法、およびストレート法と同様の方法で生地を製造する。その後の各工程のいずれかの段階で一度冷蔵保管を行うことが特徴である。なお、中種を製造する場合は、中種を冷蔵することもある。冷蔵法において、中種法と同様の方法で生地を製造する場合、パンの品質改良組成物を中種材料、または本捏材料どちらに配合しても本発明の効果を達成できるが、中種材料に配合することが好ましい。ストレート法と同様に生地を製造する場合、パンの品質改良組成物を他の材料とともに最初から配合することが好ましい。
冷凍法では、中種法、及びストレート法と同様の方法で生地を製造する。その後の各工程のいずれかの段階で一度冷凍保管を行うことが特徴である。冷凍法において、中種法と同様の方法で生地を製造する場合、パンの品質改良組成物を中種材料、または本捏材料どちらに配合しても本発明の効果を達成できるが、中種材料に配合することが好ましい。ストレート法と同様の方法で生地を製造する場合、パンの品質改良組成物を他の材料とともに最初から配合することが好ましい。
冷凍処理は、パン生地を-80℃~-10℃の温度条件下に保持することにより行うことができる。温度条件は、一定であってもよいが、適宜変化させることもできる。温度条件を変化させる場合、例えば-40℃~-30℃の温度で1時間~3時間程度保持した後に-20℃~-10℃の温度で数日~数ヶ月保持する条件を用いることもできるが、これに限定されない。冷凍処理の時間は、パンの種類および大きさにより、また所望の保存期間に応じて適宜調節することができる。
パン生地を冷凍処理に付した場合、その後に解凍処理を施して製造するのが好ましい。解凍処理は、パン生地が完全に解凍されるまで例えば15℃~30℃の温度に保持することにより行うことができる。
液種法では、あらかじめ液体中でパン酵母の発酵生成物を製造することが特徴であり、中種法と同様の方法で生地を製造する。液種法において、パンの品質改良組成物を中種材料、または本捏材料どちらに配合しても本発明の効果を達成できるが、中種材料に配合することが好ましい。
その他の製法においては、原料や工程が上述した方法と一部異なることがあるが、いずれの方法においても、発酵種を製造する際に品質改良組成物を配合すれば本発明の効果を達成できる。
発酵は、パン生地材料中のイーストが炭酸ガスや代謝産物を生成することをいい、その結果パン生地が膨張し、また、風味が改善される。パンの製造において、混捏後に得られたパン生地に発酵処理を施すことが好ましい。本明細書において、発酵処理とは、発酵が進行する条件下に積極的に付すことを意味する。
パン生地の発酵処理時の温度は、通常の製パン法において用いられる条件であれば特に限定されず、パンの種類によって適宜選択できるが、0~45℃が好ましく、25~45℃がより好ましく、35~38℃がさらに好ましい。
パン生地の発酵処理時の湿度は、通常の製パン法において用いられる条件であれば特に限定されず、パンの種類によって適宜選択できるが、50~95%が好ましく、70~95%がより好ましく、80~90%がさらに好ましい。
パン生地の発酵処理の時間は、通常の製パン法において用いられる条件であれば特に限定されず、パンの種類によって適宜選択できるが、0~20時間が好ましく、0~4時間がより好ましく、50~100分がさらに好ましい。ここで発酵時間とは、成形後の最終発酵の時間のことである。
パン生地中の品質改良組成物の含有量は、その際の製パン法に用いられる条件に応じて適宜選択できる。例えば、50~400ppm(222~1776U/kg強力粉)が好ましく、100~300ppm(444~1332U/kg強力粉)がより好ましく、150~250ppm(666~1110U/kg強力粉)がさらに好ましい。ここで、1Uとは、前述のエキソマルトテトラオヒドロラーゼの活性を表す単位である。
パン生地の加熱方法としては、焼成加熱、蒸し加熱が挙げられる。パン生地の加熱温度は、通常の製パン法において用いられる条件であれば特に限定されず、パンの種類に応じて適宜選択できるが、焼成加熱の場合には170~250℃が好ましく、190~220℃がより好ましい。蒸し加熱の場合には、100~140℃が好ましく、115~125℃がより好ましい。
パン生地の加熱時間は、通常製パン法において用いられる条件であれば特に限定されず、パンの種類に応じて適宜選択できるが、10~70分が好ましく、15~60分がより好ましく、20~50分がさらに好ましく、20~40分がさらにより好ましい。
パンは、さらにフィリングを詰めたり、表面にスプレッドを塗ったりすることもできる。このようなフィリングまたはスプレッドとしては、例えば、カスタードクリーム、チョコクリーム、ジャム類、餡、惣菜類(カレー、焼きそば、ツナ、卵、ポテトなど)が挙げられる。
本発明の品質改良剤の適用対象となるパンとしては、例えば、食パン、健康パン、菓子パン(アンパン、ジャムパン、クリームパン等)、ロールパン、フランスパン、蒸しパン、調理パン、コッペパン、フルーツブレッド、コーンブレッド、バターロール、バンズ、サンドイッチ、クロワッサン、デニッシュペーストリー、乾パン、ベーグル、プレッツェルが挙げられる。このうち、アンパン、ジャムパン、クリームパン等の菓子パンや、バターロールは、バラエティパンと総称される。
また、本発明は、パン生地材料に前記品質改良組成物を添加する工程を含む、パンの品質改良方法に関する。パンの品質改良組成物をパン生地材料に添加する方法は特に限定されない。品質改良組成物は、パン製造の混捏工程の前、間または後のいずれにおいても、パン生地材料に添加もしくは配合することができる。パン生地材料と品質改良組成物とが混捏されることが好ましく、この場合、品質改良組成物は、混捏前または間のいずれで添加してもよい。
また、本発明は、パン生地材料にマルトースを添加することなく、焼成されたパンのマルトース含有量を0.6~20%に調整する工程を含む、パンのマルトース含有量の調整方法に関する。マルトースの含有量は、使用する原料によって異なるが、0.6~20%が好ましく、1~10%がより好ましく、1.2~5%がさらに好ましい。この方法により、パン生地材料にマルトースを添加することなく、マルトース含有量を調整でき、その結果、パンの品質を改良できる。パンの品質改良の内容は、パンの品質改良剤について前述した通りである。
また、本発明は、前記調整方法に用いるためのマルトース含有量調整剤、および、前記調整剤を含むマルトース含有量調整組成物に関する。
マルトース含有量調整剤はエキソマルトテトラオヒドロラーゼ、および、酵素製剤が通常含有し得る他の成分を含んでいてもよい。当該他の成分としては、パンの品質改良剤について前述した成分を用いることができる。
マルトース含有量調整組成物は、マルトース含有量調整剤、および、食品に許容される他の成分を含んでいてもよい。当該他の成分としては、パンの品質改良組成物について前述した成分を用いることができる。
また、本発明は、前述したパンの品質改良方法、パン生地材料のマルトース含有量の調整方法を経て製造されたパンに関する。また、本発明は、マルトースを主成分とする糖質を含むパンに関する。パンの製造方法および種類は、前述した通りである。
(実施例1)
エキソマルトテトラオヒドロラーゼ(酵素原末)と食品素材(デキストリン)を、エキソマルトテトラオヒドロラーゼ約3%、食品素材約97%となるように混合した後、粉砕することにより、粉末状のパンの品質改良組成物を製造した。
(実施例2および比較例1~3)
実施例1のパンの品質組成物を用いて、中種法によるレシピで食パンの製造を行った(実施例2)。また、実施例1のパンの品質改良組成物に代えて、酵素なし(比較例1)、マルトジェニックアミラーゼ(Bakezyme MA10000、DSM社)(比較例2)、α-アミラーゼ(Bakezyme P500、DSM社)(比較例3)を用いる条件でパンの製造を行った。
原料配合量を表1に示す。
Figure 0007149930000001
なお、表1において各成分の含有量は、本捏原料を混合後の最終的なパン種に含まれる小麦粉を100重量部としたときの重量部を示す。また、品質改良組成物(エキソマルトテトラオヒドロラーゼとデキストリンの混合物)の含有量は、実施例2では200ppm、マルトジェニックアミラーゼ(比較例2)では50ppm、α-アミラーゼ(比較例3)では5ppmとした。
表1の中種原料を混合し、表2の工程により中種を製造した。
Figure 0007149930000002
製造された中種に、表1の本捏原料を混合し、表3の工程によりパンを焼成した。
Figure 0007149930000003
焼成したパンは、温度20℃、湿度30%の下で、密閉した容器内で1日保存した。その後、パンの比容積、色差、硬さ、付着性、凝集性、もろさ、弾力性、咀嚼性、糖組成、全糖量を測定した。また、官能試験(食味)による評価(n=6)を行った。
(1)比容積
比容積は、単位質量の物質が占める容積を意味する。パンの体積(cm)および重量(g)をレーザー体積計を用いて測定し、比容積(cm/g)を算出した。さらに、同一生地から4個の山型パンが得られるため、それらの平均値を算出した。レーザー体積計として3D Laser Volume Measurement Selnac-WinVM2100(ASTEX社製)を使用した。結果を図1Aに示す。
実施例2のパンは比較例1~2のパンよりも比容積がかなり大きく、比較例3のパンと同程度の比容積であった。これは、エキソマルトテトラオヒドロラーゼが小麦粉の澱粉に作用してマルトテトラオースを生成し、マルトテトラオースが小麦粉原料中に含まれるアミラーゼ等により分解されてマルトース等のオリゴ糖を生成し、パン酵母の発酵を促進したからと考えられる。比容積の増大はボリュームアップや老化防止につながる。
(2)色差
同一生地から4個の山型パンが得られるため、各パンの表面中心(1点)の焼き色を色差計にて測定し、酵素未添加を対照として、それらの平均値を色差とした。色差計として、Color meter ZE6000(日本電色工業株式会社製)を使用した。色差は、L*a*b表色系における座標L*、a*、b*の差であるΔL*、Δa*、Δb*によって定義される二つの試料(色刺激)の間の色の差を意味する。得られた数字が大きいほど色差は大きいため、コントロール(酵素無添加区)を0とした際の各酵素添加区との色差を求めた。結果を表4に示す。
Figure 0007149930000004
実施例2は比較例1~3より色差が大きかった。これは、実施例2のパンに含まれるマルトース量が、比較例1~3のパンより多いからと考えられる。パンの焼き色は、パン内に含まれる糖類がメイラード反応とカラメル化反応により呈色することにより生じる。メイラード反応は糖類の中でもフルクトースが最も起こりすく、フルクトース、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロースの順である。実施例2ではエキソマルトテトラオヒドロラーゼによりマルトテトラオースが生成され、マルトテトラオースが原料中に含まれるアミラーゼにより分解されてマルトースを生じたと考えられる。実施例2のパンは、フルクトースやグルコースの含有量の点では比較例1~3のパンと大きな差はないことから、マルトース量の違いにより、焼き色が鮮明になったと考えられる。
(3)硬さ
硬さは、ブランジャーで負荷を加えた際の、その最大試験力(N)を意味する。レオメーターを用い、角食パンのクラム部分に負荷を加えることで得られた最大試験力(N)から硬さを算出した。角食パンを3cm幅でスライスし、クラム部分から3cm四方の断片を4つ切り取り、それらを測定に用いて平均値を硬さ(N)とした。レオメーターとしてSUN RHEO METER CR-500DX(株式会社サン科学製)を使用した。このレオメーターにパンのクラム部分をセットすると、パンに上方向から2回、力が加えられ、力の大きさや物体が沈んだ高さなどが応力記録図とテクスチャープロファイルに出力される。レオメーターによる応力記録図とテクスチャープロファイルは、(RHEO DATA ANALKYZER(株式会社サン科学製))の取扱説明書を参照した。
結果を図2Aに示す。
実施例2のパンは比較例1のパンよりもかなり柔らかく、比較例2~3のパンと同等以上の柔らかさであった。これは、澱粉が適度に分解されることで、澱粉の再結晶化が抑えられるからと考えられる。パンの柔らかさ(硬化抑制)は、老化防止につながる。
(4)付着性
付着性は、食品を手で触れたり、食して歯・舌・口腔に付着して、引き離そうとする力(N)を意味する。レオメーターを用い、ブランジャーで角食パンのクラム部分に負荷を加えることで得られた数値から付着性を求めた。角食パンを3cm幅でスライスし、クラム部分から3cm四方の断片を4つ切り取り、それらを測定に用いて平均値を付着性(N)とした。レオメーターとしてSUN RHEO METER CR-500DX(株式会社サン科学製)を使用した。結果を図3Aに示す。
実施例2のパンは比較例2~3のパンよりも付着性が低く、比較例1のパンと同等以下の付着性であった。これは、澱粉が適度に分解されることで、澱粉の過度な糊化が抑えられるからと考えられる。パンの付着性の低減は、くちゃつき感の低減につながる。
(5)凝集性
食品に負荷を与えるとその食物は変形したり破損したりするが、凝集性は、負荷を連続で2回加えた際の、1回目と2回目の負荷面積(エネルギー)の比を意味する。レオメーターを用い、ブランジャーで角食パンのクラム部分に負荷を加えることで得られた数値から凝集性を求めた。角食パンを3cm幅でスライスし、クラム部分から3cm四方の断片を4つ切り取り、それらを測定に用いて平均値を凝集性(N)とした。レオメーターとしてSUN RHEO METER CR-500DX(株式会社サン科学製)を使用した。結果を図4Aに示す。
実施例2のパンは比較例1~3のパンとほぼ同等の凝集性を示した。一般的に、パンの品質改良組成物を使用すると凝集性が高まるといわれているが、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを使用した実施例2のパンは凝集性が高まることはなかった。パンの凝集性の維持は、パンの老化防止および口どけ感の改善につながる。
(6)もろさ
もろさは、食物が口の中で壊れる力(N)を意味する。レオメーターを用い、ブランジャーで角食パンのクラム部分に負荷を加えることで得られた数値からもろさを求めた。角食パンを3cm幅でスライスし、クラム部分から3cm四方の断片を4つ切り取り、それらを測定に用いて平均値をもろさ(N)とした。レオメーターとしてSUN RHEO METER CR-500DX(株式会社サン科学製)を使用した。結果を図5Aに示す。
実施例2のパンは比較例1のパンよりもかなりもろく、比較例2~3のパンと同等以上のもろさがみられた。これは、澱粉が適度に分解されることで、澱粉の再結晶化が抑えられるからと考えられる。パンのもろさは、老化防止および口どけ感の改善につながる。
(7)弾力性
弾力性は、ブランジャーで食物に連続2回の負荷を加えた際の、1回目の「くぼみ変位」に対する2回目の「くぼみ変位」の比を意味する。レオメーターを用い、ブランジャーで角食パンのクラム部分に負荷を加えることで得られた数値から弾力性を求めた。角食パンを3cm幅でスライスし、クラム部分から3cm四方の断片を4つ切り取り、それらを測定に用いて平均値を弾力性とした。レオメーターとしてSUN RHEO METER CR-500DX(株式会社サン科学製)を使用した。結果を図6Aに示す。
実施例2のパンは比較例1~3のパンより高い弾力性を示した。これは、澱粉が適度に分解されることで、過度な糊化が抑えられたからと考えられる。パンの弾力性は、老化防止およびもちもち感の改善につながる。
(8)咀嚼性
咀嚼性は、固形食品を飲み込める状態にまで咀嚼するのに必要なエネルギーを意味する。硬さ(N)×弾力性×凝集性で表す。角食パンを3cm幅でスライスし、クラム部分から3cm四方の断片を4つ切り取り、それらの硬さ、弾力性、凝集性を上述のように測定して咀嚼性を算出し、さらに平均値を求めた。レオメーターとしてSUN RHEO METER CR-500DX(株式会社サン科学製)を使用した。結果を図7Aに示す。
実施例2のパンは比較例1のパンよりも咀嚼性が低く、比較例2~3のパンと同等以下の咀嚼性を示した。これは、澱粉が適度に分解されることで、澱粉の再結晶化が抑えられたからと考えられる。パンの咀嚼性の低下は、老化防止および口どけ感の改善につながる。
(9)糖組成
糖組成は下記(i)~(vi)の方法により測定した。
(i)パンクラム(レオメーター測定後の3cmキューブ4個)を粉砕
(ii)50mLビーカーにパン粉を5g計りとり、イオン交換水を30g添加
(iii)室温にて、60分間撹拌(6連スターラーメモリ5、No6は6)
(iv)全量を50mL遠沈管に入れ、遠心分離(8000rpm×10分)
(v)上清2mLをエッペンチューブに入れ、遠心分離(14000rpm×15分)
(vi)上清をHPLC分析に供する
HPLC分析によりグリセリン、フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース(G2)、ラクトース、マルトトリオース(G3)、マルトテトラオース(G4)、マルトペンタオース(G5)の含有量を測定し、各成分の割合(%)を算出した。結果を図8に示す。
比較例1~3のパンでは、フルクトースが糖質の主成分であった。これに対し、実施例2のパンでは、マルトースが糖質の主成分であった。実施例2のパンについての比容積、色差、硬さ、付着性、凝集性、もろさ、弾力性、咀嚼性に関する前述の結果も、マルトースが糖質の主成分であることに起因すると考えられる。
(10)全糖量
上記(9)(v)で得られた上清をアンスロン・硫酸法で測定した。ここで、パンクラム中の水分量を40%とし、水抽出した際の水量は30gとした。結果を図9に示す。図9において、縦軸はパンクラム中の全糖量の割合(単位:%)を表す。また、糖組成および全糖量から、個別の糖量を算出した。結果を図10に示す。図10において、縦軸はパンクラム中の個別の糖量の割合(単位:%)を表す。
実施例2のパンでは比較例1~3と比較して全糖量が多かった。また、実施例2のパンでは比較例1~3と比較してマルトースが多いことも確認された。これらは焼き色、風味の改善および食感の改善につながる。
(11)官能試験
焼成後1日経過時のパンのクラム部分について、6人の評価者の食味による官能試験を行った。評価は1~5の5段階で行い、酵素無添加を3とした。ここで、「やわらかい」とは、パンを咀嚼することが容易か否かを表す。1が硬く、5が柔らかい。「しっとり感」とは、パンを咀嚼する際に、パンに保湿性があるか否かを表す。1がパサパサしており、5がしっとりしている。「もちもち感(弾力性)」とは、パンを咀嚼する際に、パンに弾力性があるか否かを表す。1がパリパリしており、5がもちもちしている。「発酵臭(アルコール)」とは、パン自体およびパンを咀嚼する際にアルコール臭がするか否かを表す。1がアルコール臭がせず、5がアルコール臭がする。「原料臭(小麦の香り)」とは、パン自体およびパンを咀嚼する際に小麦臭がするか否かを表す。1が小麦臭がし、5が小麦臭がしない。「甘さ」とは、パンに甘みがあるか否かを表す。1が甘くなく、5が甘い。「酸味」とは、パンに酸味があるか否かを表す。1が酸味がなく、5が酸味がある。結果を図11Aに示す。
実施例2のパンは、やわらかさ、しっとり感、甘さの評価が高かった。実施例2のパンはマルトースを多く含んでおり、マルトースはグルコースとは異なる風味を呈するため、比較例1~3よりも風味の良いパンができたと考えられる。実施例2のパンは、もちもち感、発酵臭、原料臭、酸味は比較例1~3とほぼ同等であった。
(12)外観
パンの外観を図12Aおよび図12Bに示す。図12Aおよび図12Bではそれぞれ、左から、比較例1(酵素無添加)、実施例2、比較例2(マルトジェニックアミラーゼ)、比較例3(α-アミラーゼ)のパンである。
実施例2のパンの高さは比較例1~2のパンよりも高く、比較例3のパンと同程度の高さであった。これは、エキソマルトテトラオヒドロラーゼが小麦粉の澱粉に作用してマルトース等のオリゴ糖を生成し、パン酵母の発酵を促進したからと考えられる。
(実施例3および比較例4~5)
実施例1のパンの品質改良組成物を用いて、中種法によるレシピでパンの製造を行った(実施例3)。品質改良組成物の含有量は、実施例2と同じ含有量とした。また、実施例1のパンの品質改良組成物に代えて、酵素なし(比較例4)、遺伝子組み換え品であるG4生成酵素(シュードモナス・サッカロフィリア(Pseudomonas saccharophilia)由来、HPLG4、ダニスコ社)(比較例5)を用いる条件でパンの製造を行った。原料配合量、中種工程の条件、および本捏工程の条件は表1~3に示した通りである。なお、品質改良組成物の含有量は、G4生成酵素(比較例5)では9.1ppmとした。
実施例2と同じ条件で、焼成後のパンの、比容積(図1B)、色差(表5)、硬さ(図2B)、付着性(図3B)、凝集性(図4B)、もろさ(図5B)、弾力性(図6B)、咀嚼性(図7B)、糖組成(図8)、全糖量(図9)、個別糖量(図10)を測定した。また、官能試験(n=6)(図11B)、外観評価(図13A~B)、匂いの評価を行った。
(1)比容積
図1Bにおいて、実施例3のパンは比較例4~5のパンよりも比容積が大きく、実施例2と同様の結果であった。
(2)色差
色差の測定結果を表5に示す。
Figure 0007149930000005
表5において、実施例3のパンは比較例4~5のパンよりも色差が大きく、実施例2と同様の結果であった。
(3)硬さ
図2Bにおいて、実施例3のパンは比較例4~5のパンよりも柔らかく、実施例2と同様の結果であった。
(4)付着性
図3Bにおいて、実施例3のパンは比較例4~5のパンよりも付着性が低く、実施例2と同様の結果であった。
(5)凝集性
図4Bにおいて、実施例3のパンは比較例4~5のパンとほぼ同等の凝集性を示し、実施例2と同様の結果であった。
(6)もろさ
図5Bにおいて、実施例3のパンは比較例4のパンよりもかなりもろく、比較例5のパンとほぼ同等の凝集性を示し、実施例2と同様の結果であった。
(7)弾力性
図6Bにおいて、実施例3のパンは比較例4~5のパンより高い弾力性を示し、実施例2と同様の結果であった。
(8)咀嚼性
図7Bにおいて、実施例3のパンは比較例4のパンよりも咀嚼性が低く、比較例5のパンと同等の咀嚼性を示し、実施例2と同様の結果であった。
(9)糖組成
図8において、比較例5のパンでは、フルクトースが糖質の主成分であった。
(10)糖量
図9において、比較例5のパンでは、全糖量が比較例2~3と同等以下であった。図10において、比較例5のパンでは、フルクトース量が比較例2~3と同等であり、マルトース量も比較例2~3と同等以下であった。
(11)官能試験
図11Bにおいて、実施例3のパンでは、やわらかさ、しっとり感、甘さの評価が高く、比較例5のパンと同等、比較例4よりも風味の良いパンができたと考えられる。実施例3のパンは、もちもち感、発酵臭、原料臭、酸味は比較例4、5とほぼ同等であった。
(12)外観
パンの外観を図13Aおよび図13Bに示す。図13Aおよび図13Bではそれぞれ、左から、比較例4(酵素無添加)、実施例3、比較例5(G4生成酵素)のパンである。実施例3のパンの高さは比較例4~5のパンより高く、実施例2と同様の結果であった。
(13)匂い
焼成中のパンの匂い(n=4)は、次の手順で評価した。すなわち、二次発酵終了後のパン生地を、蓋の上部から匂いを嗅げるように改造した100mLのメディウム瓶に入れ、このメディウム瓶をインキュベーターに入れた。インキュベーター内の温度を120℃から180℃まで加温しながら30分間焼成し、その際の匂いを確認した。その結果、比較例5では、比較例4よりも甘く香ばしい香りが感じられたが、実施例3では、甘く香ばしい香りが比較例5よりさらに強く感じられた。
(実施例4および比較例6)
実施例1のパンの品質改良組成物を用いて、バラエティパンの製造を行った(実施例4)。また、実施例1のパンの品質改良組成物に代えて、酵素を用いない条件でバラエティパンの製造を行った(比較例6)。原料配合量、およびバラエティパンの製造工程を表6~7に示す。
Figure 0007149930000006
表6における数値は、品質改良組成物を除き、強力粉100重量部に対する重量部を表す。実施例4において品質改良組成物の含有量は強力粉に対し200ppmとした。
Figure 0007149930000007
製造したバラエティパンは、密閉した容器内で1~6日保存した。その後、パンの比容積、硬さ、糖組成、全糖量を測定した。また、官能試験(食味)による評価を行った。
(1)比容積
焼成直後と、焼成1日後(温度20℃、湿度30%で保存)のバラエティパンの比容積を実施例2と同じ方法で測定した。その結果を図14Aに示す。焼成直後、および焼成1日後において、実施例4のバラエティパンは比較例6に対し比容積が増大した。
(2)硬さ
焼成1~6日後(温度20℃、湿度30%で保存)のバラエティパンの硬さを実施例2と同じ方法で測定した。その結果を図14Bに示す。焼成1日後、焼成3日後、および焼成6日後のいずれにおいても、実施例4のバラエティパンは比較例6に対し硬さ(g/cm)が小さく、老化しにくいことが確認された。
また、焼成後、温度4℃で3日間保存した後のバラエティパンの硬さを実施例2と同じ方法で測定した。その結果を、20℃で保存した場合の結果と合わせて図14Cに示す。4℃で保存した場合、比較例6のバラエティパンは老化が大きく進行し、硬くなるが、実施例4のバラエティパンは4℃で保存した場合でも老化の進行が抑制されていた。両方の保存温度において、実施例4のバラエティパンは比較例6に対し硬さが小さく、老化しにくいことが確認された。
(3)官能試験
焼成後1日経過後の実施例4のバラエティパンについて、6人の評価者による、食味による官能試験を行った。評価は5段階で行い、比較例6を3とした。ここで、「柔らかさ」は、パンを咀嚼することが容易か否かを表す。1が硬く、5が柔らかい。「しっとり感」は、パンを咀嚼する際に、パンに保湿性があるか否かを表す。1がパサパサしており、5がしっとりしている。「凝集性」は、パンを咀嚼する際に、団子様の塊を形成しやすいか否かを表す。1が凝集性が高く、5が凝集性が低い。「口どけ」は、パンを咀嚼する際に、溶けるような口当たり、あるいは滑らかさがあるか否かを表す。1が口どけが悪く、5が口どけがよい。「甘み」は、パンに甘みがあるか否かを表す。1が甘くなく、5が甘い。
結果を図14Dに示す。実施例4のバラエティパンは、柔らかさ、しっとり感、凝集性、くちどけ、甘みのいずれの点においても、比較例6よりも良好な食味を呈した。
(4)糖含量
糖含量は実施例2と同じ方法で測定した。結果を図14Eに示す。実施例4のバラエティパンは、比較例6と同等のフルクトース、グルコース、スクロース、ラクトースを含んでいた。一方、実施例4のバラエティパンのマルトース(G2)含有量は、比較例6に対し約3倍に増大していた。
(5)全糖量
全糖量は実施例2と同じ方法で測定した。結果を図14Fに示す。図14Fにおいて、縦軸はバラエティパン中の全糖の割合(%)を表す。実施例4のバラエティパンでは比較例6に対して全糖量が増加していた。
(6)焼き色
パンの外観を図14Gに示す。実施例4のバラエティパンは比較例6よりも焼き色が濃厚になった。これは糖含量が増大したことによると考えられる。
バラエティパンは油脂やタンパク質を多量に含むため、一般的には酵素の働きが阻害されやすいが、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを含む品質改善剤は、バラエティパンに対しても比容積の増大、老化防止、食味改善、焼き色改善、マルトース含量増大の効果を示した。
(実施例5および比較例7~9)
実施例1のパンの品質改良組成物を用いて、フランスパンの製造を行った(実施例5)。また、実施例1のパンの品質改良組成物に代えて、モルトシロップ0.3重量%(比較例7)、モルトシロップ0.6重量%(比較例8)を含むか、または酵素なし(比較例9)の条件でフランスパンの製造を行った。原料配合量、およびフランスパンの製造工程を表8~9に示す。
Figure 0007149930000008
表8における数値は、品質改良組成物を除き、強力粉100重量部に対する重量部を表す。実施例5において品質改良組成物の含有量は強力粉に対し200ppmとした。
Figure 0007149930000009
製造したフランスパンは、密閉した容器内で温度20℃、湿度30%の条件で1~7日保存した。その後、パンの比容積、硬さ、糖組成を測定した。また、官能試験(食味)による評価を行った。
(1)比容積
フランスパンの比容積を実施例2と同じ方法で測定した。その結果を図15Aに示す。実施例5のフランスパンは比較例7に対し比容積が増大した。比較例8~9のフランスパンは、ボリュームアップ効果を有するモルトシロップを含むため比較例7に対し比容積が増大したが、実施例5のフランスパンはモルトシロップを含まないにもかかわらず比較例8を上回り、比較例9と同等の比容積を示した。
(2)硬さ
焼成1~7日後のフランスパンの硬さを実施例2と同じ方法で測定した。その結果を図15Bに示す。焼成1日後、焼成4日後、および焼成7日後のいずれにおいても、実施例5のフランスパンは比較例7~9に対し硬さ(g/cm)が小さく、老化しにくいことが確認された。
(3)糖含量
糖含量を実施例2と同じ方法で測定した。結果を図15Cに示す。実施例5のバラエティパンのマルトース(G2)含有量は比較例7~8に対し大きく増大し、モルトシロップを0.6重量%含む比較例9と同等量であった。また、実施例5のフランスパンは、比較例7~9に対してフルクトース、グルコースの含有量が増大していた。
(4)官能試験
焼成後1日経過した後の実施例5のフランスパンについて、6人の評価者による、食味による官能試験を行った。評価は5段階で行い、比較例7の評価を3とした。ここで、「柔らかさ」は、パンを咀嚼することが容易か否かを表す。1が硬く、5が柔らかい。「噛み切り」は、パンの噛み切りが容易か否かを表す。1が噛み切りが容易ではなく、5が噛み切りが容易である。「しっとり感」は、パンを咀嚼する際に、パンに保湿性があるか否かを表す。1がパサパサしており、5がしっとりしている。「キメの細かさ」は、パンを咀嚼する際に、目視でキメの細かさを表す。1がキメが細かくなく、5がキメが細かい。結果を図15Dに示す。実施例5のバラエティパンは、柔らかさ、噛み切り、しっとり感、キメの細かさのいずれの点においても、比較例7~8より良好な食味を呈した。実施例5のバラエティパンは、比較例9と同じ食味を呈した。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼを含む品質改善剤は、フランスパンに対しても比容積の増大、老化防止、食味改善、マルトース含量増大の効果を示した。また、フランスパンは原料として小麦粉、塩、イースト、水のみを含み、糖を含まないために発酵促進や生地のうまみを引き出す目的でモルトシロップが添加されることが多いが、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを添加するとモルトシロップを添加しなくてもフランスパンの品質を改善できた。
(実施例6および比較例10)
実施例1のパンの品質改良組成物を用いて、クロワッサンの製造を行った(実施例6)。また、実施例1のパンの品質改良組成物を使用せず、酵素なしの条件でフランスパンの製造を行った(比較例10)。原料配合量、およびクロワッサンの製造工程を表10~11に示す。
Figure 0007149930000010
表10における数値は、品質改良組成物を除き、強力粉(リスドォル)100重量部に対する重量部を表す。実施例6において品質改良組成物の含有量は強力粉に対し200ppmとした。
Figure 0007149930000011
製造したクロワッサンは、密閉した容器内で温度20℃、湿度30%の条件で1日保存し、外観を観察した。外観を図16に示す。実施例6のクロワッサンは焼成後の大きさが比較例10より大きく、焼き色も比較例10より濃厚であった。
クロワッサンは油脂やタンパク質を多量に含むため、一般的には酵素の働きが阻害されやすいが、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを含む品質改善剤は、クロワッサンに対して焼成サイズの増加、焼き色改善の効果を示した。
(実施例7~10および比較例11~12)
実施例1のパンの品質改良組成物を用いてストレート法で食パンの製造を行った(実施例7~10)。また、実施例1のパンの品質改良組成物を用いずにストレート法で食パンの製造を行った(比較例11~12)。原料配合量、および食パンの製造工程を表12~13に示す。
Figure 0007149930000012
表12における数値は、品質改良組成物とアスコルビン酸Naを除き、強力粉100重量部に対する重量部を表す。
Figure 0007149930000013
製造した食パンは、密閉した容器内で温度20℃、湿度30%の条件で1~6日保存した。その後、パンの比容積、高さ、硬さを測定した。また、官能試験(食味)による評価を行った。
(1)比容積
食パンの比容積を実施例2と同じ方法で測定した。また、食パンの底面からトップの高さを測定した。その結果を図17Aに示す。実施例7~8の食パンは比較例11に対し比容積および高さが増大した。ビタミンCを添加した比較例12の食パンは比較例11より比容積および高さが増大するが、ビタミンCおよび品質改良組成物を含む実施例9~10の食パンは、比較例12よりもさらに比容積および高さが増大し、その効果は品質改良組成物の添加量に依存していた。
(2)硬さ
焼成1日、3日、6日後の食パンの硬さを実施例2と同じ方法で測定した。その結果を図17Bに示す。焼成1日後、焼成3日後、および焼成6日後のいずれにおいても、実施例7~8の食パンは比較例11より硬さ(g/cm)が小さく、老化しにくいことが確認された。また、ビタミンCを添加した比較例12の食パンは比較例11より老化が抑えられるが、ビタミンCおよび品質改良組成物を含む実施例9~10の食パンは、比較例12よりもさらに老化が抑えられ、その効果は品質改良組成物の添加量に依存していた。
(3)官能試験
焼成後1日経過後の食パンについて、6人の評価者の食味による官能試験を行った。評価は5段階で行い、比較例11を3とした。ここで、「柔らかさ」は、パンを咀嚼することが容易か否かを表す。1が硬く、5が柔らかい。「しっとり感」は、パンを咀嚼する際に、パンに保湿性があるか否かを表す。1がパサパサしており、5がしっとりしている。「口どけ」は、パンを咀嚼する際に、溶けるような口当たり、あるいは滑らかさがあるか否かを表す。1が口どけが悪く、5が口どけがよい。結果を表14および図17Cに示す。
Figure 0007149930000014
実施例7~8の食パンは、柔らかさ、しっとり感、口どけいずれの点においても、比較例11よりも良好な食味を呈し、その効果は品質改良組成物の添加量に依存していた。また、ビタミンCを添加した場合にも、実施例9~10の食パンは比較例12より良好な食味を呈した。
(実施例11~14および比較例13~14)
実施例1のパンの品質改良組成物を用いて中種法で食パンの製造を行った(実施例11~14)。また、実施例1のパンの品質改良組成物を用いずに中種法で食パンの製造を行った(比較例13~14)。原料配合量、および食パンの製造工程を表15~16に示す。
Figure 0007149930000015
表15における数値は、品質改良組成物とアスコルビン酸Naを除き、中種で使用する強力粉と本捏で添加される強力粉の合計量を100重量部としたときの重量部を表す。
Figure 0007149930000016
中種法の生地分割後の成形の段階でのパン生地の外観を図18Aに示す。品質改良組成物とともにビタミンCを併用することで、パン種のベタツキ感が軽減された。この効果は、食パン中種法の生地に限らず、他製法で作られたパン生地においても確認された。
製造した食パンは、密閉した容器内で温度20℃、湿度30%の条件で1~7日保存した。その後、パンの比容積、硬さ、糖含量を測定した。また、官能試験(食味)による評価を行った。
(1)比容積
食パンの比容積を実施例2と同じ方法で測定した。その結果を図18Bに示す。ビタミンCを添加した比較例14の食パンは比較例13に対し比容積が増大した。品質改良組成物とビタミンCを併用した実施例11~14では比容積はさらに増大し、その増大効果は品質改良組成物の添加量に依存的であった。
(2)硬さ
焼成1日後の食パンの硬さを実施例2と同じ方法で測定した。その結果を図18Cに示す。ビタミンCを添加した比較例14の食パンは比較例13より硬さ(g/cm)が小さく、老化しにくいことが確認された。品質改良組成物とビタミンCを併用した実施例11~14では老化が更に抑制され、その効果は品質改良組成物の添加量に依存的であった。
また、焼成6日後または7日後の食パンの硬さを実施例2と同じ方法で測定した。その結果を図18Dに示す。品質改良組成物とビタミンCの併用によるパンの老化防止効果は、焼成6~7日後にも維持されていた。
(3)糖含量
焼成1日後の食パンの糖含量を実施例2と同じ方法で測定した。結果を図18Eに示す。比較例13~14において、ビタミンの有無は食パンの糖組成に影響しなかった。含む実施例11~14の食パンは、品質改良組成物の含有量に依存してマルトース含量が大きく増大した。
(4)官能試験
焼成後1日経過後の食パンについて、6人の評価者の食味による官能試験を行った。なお、比較例14、実施例11~14のパンとして、アスコルビン酸ナトリウムを40ppm含有するパンを用いた。評価は5段階で行い、比較例13を3とした。ここで、「柔らかさ」は、パンを咀嚼することが容易か否かを表す。1が硬く、5が柔らかい。「噛み切り」は、パンの噛み切りが容易か否かを表す。1が噛み切りが容易ではなく、5が噛み切りが容易である。「口どけ」は、パンを咀嚼する際に、溶けるような口当たり、あるいは滑らかさがあるか否かを表す。1が口どけが悪く、5が口どけがよい。結果を表17および図18Fに示す。
Figure 0007149930000017
ビタミンCを添加した比較例14の食パンは比較例13に対して食感が同等以上に改善されるが、品質改良組成物とビタミンCを併用した実施例11~14では柔らかさ、噛み切り、口どけのいずれも、比較例13~14より大きく改善し、その効果は品質改良組成物の添加量に依存的であった。
<エキソマルトテトラオヒドロラーゼの総合評価>
エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、マルトジェニックアミラーゼ、α-アミラーゼと比較して、パンの焼き色、食感(くちゃつき感、もちもち感、口どけ感)、および風味を顕著に改善できた。さらに、エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、非遺伝子組み換え品であるにもかかわらず、遺伝子組み換え品であるG4生成酵素よりもパンの焼き色、食感、および風味を改善できた。エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、ボリュームアップ、老化防止、発酵促進の点でも、従来の品質改良組成物より優れていた。
以上の評価結果に基づき、パンの品質改良組成物がパンにもたらす効果を総合評価した。実施例の評価項目と総合評価項目との関連を表18に示す。
Figure 0007149930000018
総合評価は下記の基準により行った。
◎:酵素無添加と比較し、効果が顕著で著しい
○:酵素無添加と比較し、効果がある
△:酵素無添加と比較し、効果がわずかにある
×:酵素無添加と比較し、効果がない、または悪い
総合評価結果を表19に示す。
Figure 0007149930000019

Claims (7)

  1. 天然型のエキソマルトテトラオヒドロラーゼを含む、パンの品質改良剤であって、
    前記品質改良が焼き色の改善、または風味の改善である、パンの品質改良剤。
  2. パン生地中にマルトースを主成分とする糖質が生成するよう設計された、請求項に記載の品質改良剤。
  3. マルトースを主成分とする糖質が、エキソマルトテトラオヒドロラーゼの作用により生成したマルトテトラオースが、アミラーゼにより分解されて生じたものである、
    請求項1または2に記載の品質改良剤。
  4. エキソマルトテトラオヒドロラーゼが、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来である、請求項1~のいずれかに記載の品質改良剤。
  5. 請求項1~のいずれかに記載の品質改良剤を含む、パンの品質改良組成物。
  6. パン生地材料に請求項に記載の組成物を添加することにより、マルトースを増加させる工程を含む、パンの製造方法。
  7. 請求項5に記載の組成物を含むことにより発酵前と比較してマルトースが増加した、
    マルトースを主成分とする糖質を含むパン。
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