JP7130143B2 - 推定装置および交流電動機の駆動装置 - Google Patents
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Description
本発明は、交流電動機の位置および速度のうち少なくとも一方を推定する推定装置および交流電動機の駆動装置に関する。
誘導機および同期機といった交流電動機の駆動には、回転子の位置を示す情報が用いられる。回転子の位置を示す情報を取得するために位置センサまたは速度センサを使用すると、製造コストの増加などの問題がある。そのため、交流電動機の駆動装置に関し、位置センサまたは速度センサなどを用いない位置センサレス制御に関する多くの検討がなされている。
また、交流電動機の駆動装置に関し、製造コストを低減するため、電流センサの個数削減についても多くの検討がなされており、安価な電流検出方式として1シャント電流検出方式が広く用いられている。1シャント電流検出方式は、インバータの直流母線に設けられる電流センサを用いて、交流電動機に流れる相電流を測定する方式である。直流母線に設けられる電流センサを用いて相電流を測定する方式は、電流センサとしてシャント抵抗が用いられることが多いため、1シャント電流検出方式と呼ばれるが、直流母線に設けられる電流センサとしてシャント抵抗以外を用いる場合も、一般に1シャント電流検出方式と呼ばれる。例えば、1シャント電流検出方式は、CT(Current Transformer)と呼ばれる変流器などのようにシャント抵抗とは異なる電流センサを用いた構成も知られている。
特許文献1には、位置センサレス制御と1シャント電流検出方式とを併用して交流電動機を駆動する技術が開示されている。1シャント電流検出方式では、各相の電流をキャリア信号の頂点で同時に検出できない。そこで、特許文献1に記載の技術では、第1のキャリア周期の後半と第1のキャリア周期に続く第2のキャリア周期の前半とで母線電流から得られる相電流を補間処理することで、第1のキャリア周期と第2のキャリア周期との境界のタイミングであるキャリア信号の頂点での相電流を算出する。特許文献1に記載の技術では、キャリア信号の頂点での相電流に基づいて電圧指令を生成し、生成した電圧指令に基づいて交流電動機の回転子の回転状態を示す情報を算出する。回転子の回転状態を示す情報は、回転子の位置および速度のうち少なくとも1つの情報である。
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、第1のキャリア周期の後半と第1のキャリア周期に続く第2のキャリア周期の前半とで各々検出される母線電流を用いる。インバータを構成する複数のスイッチング素子のオンおよびオフの切り替わりタイミングによっては、キャリア周期における前半と後半との両方で母線電流から3相の電流を得ることが難しい場合がある。そのため、特許文献1に記載の技術では、交流電動機の回転子の回転状態の算出に用いられる相電流の検出周期がキャリア周期の2倍以上になる。一般に、インバータのスイッチング損失はキャリア周波数の上昇とともに増加することから、交流電動機の駆動装置の冷却性能または電力効率の都合などによりキャリア周波数には上限が存在するのが一般的である。交流電動機の回転周波数がキャリア周波数に近づくと交流電動機の回転周波数に対して制御周期が長くなり、交流電動機が備える回転子の回転状態の推定精度を確保することが難しい場合がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、交流電動機の位置および速度のうち少なくとも一方の推定精度を向上させることができる推定装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の推定装置は、母線電流検出部と、相電流判定部と、時刻差算出部と、推定部と、を備える。母線電流検出部は、電圧指令に基づいて生成される複数のゲートパルス信号によって駆動される電圧形インバータの直流母線に流れる電流である母線電流の値を検出する。相電流判定部は、母線電流検出部によって検出される母線電流の値と、複数のゲートパルス信号の状態とに基づいて、電圧形インバータから交流電動機へ供給される複数の相電流の値を判定する判定処理を行う。時刻差算出部は、相電流判定部による前回の判定処理で用いられた母線電流の検出時刻として特定される第1の電流検出時刻と相電流判定部による今回の判定処理で用いられた母線電流の検出時刻として特定される第2の電流検出時刻との時刻差を算出する。推定部は、相電流判定部によって判定された複数の相電流の値と、時刻差算出部によって算出された時刻差とに基づいて、交流電動機の位置および速度のうち少なくとも一方を推定する。
本発明によれば、交流電動機の位置および速度のうち少なくとも一方の推定精度を向上させることができる、という効果を奏する。
以下に、本発明の実施の形態にかかる推定装置および交流電動機の駆動装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる推定装置を含む電動機システムの構成例を示す図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる電動機システム100は、交流電動機1と、交流電動機1を駆動する駆動装置2とを備える。
図1は、本発明の実施の形態1にかかる推定装置を含む電動機システムの構成例を示す図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる電動機システム100は、交流電動機1と、交流電動機1を駆動する駆動装置2とを備える。
交流電動機1は、回転子に永久磁石が設けられる永久磁石同期電動機であるが、回転子に界磁巻線が巻かれている巻線界磁式同期電動機であってもよく、回転子の突極性を利用して回転トルクを得るリラクタンス式同期電動機であってもよい。また、交流電動機1における永久磁石の配置は、埋め込み型の配置であってもよく表面型の配置であってもよい。また、ここでは、交流電動機1が3相の交流電動機である例を説明するが、交流電動機1は、3相以外の交流電動機であってもよい。例えば、交流電動機1は、2相の交流電動機であってもよく、5相の交流電動機であってもよい。
駆動装置2は、直流電源3から供給される直流電圧を交流電圧へ変換し、変換した交流電圧を交流電動機1へ出力する電圧形インバータ4と、電圧形インバータ4を制御して交流電動機1を駆動する制御装置5とを備える。電圧形インバータ4は、図1に示すように、主回路6と、ゲートドライバ7とを備える。
主回路6は、複数のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6を備える。主回路6において、スイッチング素子Q1,Q3,Q5は、高電位側の直流母線61に一端が接続され、スイッチング素子Q2,Q4,Q6は、低電位側の直流母線61に一端が接続される。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とは、互いの他端同士が接続され、U相のレグを構成する。スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4とは、互いの他端同士が接続され、V相のレグを構成する。スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6とは、互いの他端同士が接続され、W相のレグを構成する。
このように、電圧形インバータ4は、U相のレグと、V相のレグと、W相のレグとを含む3相ブリッジ回路を備える。電圧形インバータ4は、複数のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンとオフとの切り替えによって、任意の振幅および任意の周波数の交流電圧を出力することができる。以下において、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6の各々を区別せずに示す場合、スイッチング素子Qと記載する場合がある。
各スイッチング素子Qは、逆並列ダイオードが内蔵されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であるが、逆並列ダイオードが内蔵されたMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であってもよい。また、ここでは、電圧形インバータ4が、出力する電圧のレベルが2つである2レベルインバータである例を説明するが、電圧形インバータ4は、出力する電圧のレベルが3つ以上であるマルチレベルインバータであってもよい。
ゲートドライバ7は、制御装置5から出力されるゲートパルス信号Gu,Gv,Gwを増幅し、増幅したゲートパルス信号Gu,Gv,Gwをゲートパルス信号Gup,Gvp,Gwpとしてスイッチング素子Q1,Q3,Q5のゲートへ出力する。また、ゲートドライバ7は、制御装置5から出力されるゲートパルス信号Gu,Gv,Gwを反転増幅してゲートパルス信号Gun,Gvn,Gwnを生成し、生成したGun,Gvn,Gwnをスイッチング素子Q2,Q4,Q6のゲートへ出力する。
ゲートパルス信号Gup,Gunは、一方がオンである場合、他方はオフである。これにより、スイッチング素子Q1がオンになると、スイッチング素子Q2がオフになり、スイッチング素子Q1がオフになると、スイッチング素子Q2はオンになる。このように、ゲートパルス信号Gup,Gunによって、スイッチング素子Q1,Q2は相補的に動作する。同様に、ゲートパルス信号Gvp,Gvnによって、スイッチング素子Q3,Q4は相補的に動作し、ゲートパルス信号Gwp,Gwnによって、スイッチング素子Q5,Q6は相補的に動作する。ゲートパルス信号Gu,Gv,Gw,Gup,Gun,Gvp,Gvn,Gwp,Gwnは、高電位レベルの状態である場合にオンの状態であり、低電位レベルの状態である場合にオフの状態である。
また、ゲートドライバ7は、低圧系の制御装置5と高圧系の主回路6とを絶縁する機能を有しており、主回路6の異常時に制御装置5の故障を防ぐ役割を有している。以下において、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwの各々を区別せずに示す場合、ゲートパルス信号Gと記載する場合がある。
制御装置5は、零ベクトル変調を行う零ベクトル変調部34と、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwを生成するゲートパルス生成部35と、交流電動機1の回転子の磁極位置θeおよび回転速度ωeを推定する推定装置9とを備える。磁極位置θeは、交流電動機1が備える回転子の電気角であり、交流電動機1の位置の一例である。また、回転速度ωeは、交流電動機1が備える回転子の電気角速度であり、交流電動機1の速度の一例である。以下において、磁極位置θeの推定を位置推定と記載する場合があり、回転速度ωeの推定を速度推定と記載する場合がある。
零ベクトル変調部34は、電圧形インバータ4から出力される2種類の零電圧ベクトルの出力比率を不規則に変化させる。2種類の零電圧ベクトルは、第1の零電圧ベクトルと第2の零電圧ベクトルである。第1の零電圧ベクトルは、上側アームであるスイッチング素子Q1,Q3,Q5がすべてオンである状態で電圧形インバータ4から出力される。第2の零電圧ベクトルは、上側アームであるスイッチング素子Q1,Q3,Q5がすべてオフである状態で電圧形インバータ4から出力される。
第1の零電圧ベクトルと第2の零電圧ベクトルとの出力比率を不規則に変化させることで、キャリア騒音のスペクトルピークが分散され、キャリア騒音を低減することができる。キャリア騒音は、後述するキャリア波Scの周波数であるキャリア周波数に応じて交流電動機1または電圧形インバータ4などが振動して発する騒音である。第1の零電圧ベクトルと第2の零電圧ベクトルとの出力比率は、ゲートパルス生成部35による変調方式によって変わる。変調方式が変わる場合でも、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に同じ値を加えることによって、第1の零電圧ベクトルと第2の零電圧ベクトルとの出力比率を変化させることができる。電圧指令vu
*は、u相の電圧指令であり、電圧指令vv
*は、v相の電圧指令であり、電圧指令vw
*は、w相の電圧指令である。
3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*のすべてに同じ正の値を加えることによってゲートパルス信号Gu,Gv,Gwがすべてオンになる時間が延び、電圧形インバータ4から第1の零電圧ベクトルが出力される時間が延びる。また、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*のすべてに同じ負の値を加えることによってゲートパルス信号Gu,Gv,Gwがすべてオフになる時間が延び、電圧形インバータ4から第2の零電圧ベクトルが出力される時間が延びる。
零ベクトル変調部34は、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に乱数値を加えることによって、第1の零電圧ベクトルと第2の零電圧ベクトルとの出力比率を不規則に変化させる零ベクトル変調を行う。なお、零ベクトル変調部34は、予め設定された条件を満たさない場合、入力される3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*をそのままゲートパルス生成部35へ出力することができる。予め設定された条件は、例えば、交流電動機1が予め設定された速度以下で回転していることなどである。また、零ベクトル変調部34は、零ベクトル変調を行わない設定がされている場合、入力される3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*をそのままゲートパルス生成部35へ出力することができる。
ゲートパルス生成部35は、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に基づいて、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwを生成する。ゲートパルス生成部35は、生成したゲートパルス信号Gu,Gv,Gwを電圧形インバータ4のゲートドライバ7へ出力する。
ゲートパルス生成部35は、高周波の周期信号であるキャリア波Scと3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*とを比較する比較部21と、比較部21から出力されるゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのシフト処理を行うパルスシフト処理部22とを備える。ここでは、キャリア波Scが三角波の信号である例を説明するが、キャリア波Scは、鋸波などの他の波形の信号であってもよい。キャリア波Scは、キャリア信号とも呼ばれる。
比較部21は、電圧指令vu
*の瞬時値がキャリア波Scの瞬時値以下である場合、ゲートパルス信号Guをオンにし、電圧指令vu
*の瞬時値がキャリア波Scの瞬時値よりも大きい場合、ゲートパルス信号Guをオフにする。比較部21は、電圧指令vv
*の瞬時値がキャリア波Scの瞬時値以下である場合、ゲートパルス信号Gvをオンにし、電圧指令vv
*の瞬時値がキャリア波Scの瞬時値よりも大きい場合、ゲートパルス信号Gvをオフにする。比較部21は、電圧指令vw
*の瞬時値がキャリア波Scの瞬時値以下である場合、ゲートパルス信号Gwをオンにし、電圧指令vw
*の瞬時値がキャリア波Scの瞬時値よりも大きい場合、ゲートパルス信号Gwをオフにする。
なお、上述した例では、ゲートパルス生成部35は、キャリア比較変調方式を用いてゲートパルス信号Gu,Gv,Gwを生成するが、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwを生成する方法はキャリア比較変調方式に限定されない。例えば、ゲートパルス生成部35は、キャリア比較変調方式に代えて、空間ベクトル変調方式などの他変調方式を用いて、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwを生成してもよい。また、ゲートパルス生成部35は、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwに代えて、ゲートパルス信号Gup,Gun,Gvp,Gvn,Gwp,Gwnを生成してもよい。この場合、ゲートドライバ7は、ゲートパルス信号Gup,Gun,Gvp,Gvn,Gwp,Gwnを増幅する。ゲートドライバ7は、増幅したゲートパルス信号Gup,Gun,Gvp,Gvn,Gwp,Gwnをスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のゲートへ出力する。
パルスシフト処理部22は、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのオンとオフとの切り替わりタイミングをずらすパルスシフト処理を行う。パルスシフト処理部22のパルスシフト処理については、後で詳述する。
推定装置9は、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwと、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*とに基づいて、交流電動機1の磁極位置θeおよび回転速度ωeを推定する。推定装置9は、交流電動機1の磁極位置θeおよび回転速度ωeのうち一方のみを推定することもできる。
推定装置9は、母線電流ibusの値を検出する母線電流検出部11と、相電流iu,iv,iwの値を判定する相電流判定部12と、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwに基づいて、後述する時刻差Tbを算出する時刻差算出部13とを備える。また、推定装置9は、時刻差算出部13によって算出された時刻差Tbと、相電流判定部12によって判定された相電流iu,iv,iwの値と、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*とに基づいて、磁極位置θeおよび回転速度ωeを推定する推定部15を備える。
母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値は、直流電源3と電圧形インバータ4との間の直流母線61に流れる電流である母線電流の瞬時値である。母線電流検出部11は、CTと呼ばれる変流器を用いたタイプの電流センサであってもよく、シャント抵抗を用いるタイプの電流センサであってもよい。以下において、母線電流ibusの値を単に母線電流ibusと記載する場合がある。
図1に示す例では、母線電流検出部11は、低電位側の直流母線61に設けられ、低電位側の直流母線61に流れる電流の値を検出するが、高電位側の直流母線61に設けられてもよい。なお、母線電流検出部11がシャント抵抗を用いるタイプの電流センサである場合、低電位側の直流母線61に母線電流検出部11を設けることで、母線電流検出部11における絶縁回路の部品コストを抑えることができる。
相電流判定部12は、母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値に基づいて、相電流iu,iv,iwの値を判定する。相電流判定部12によって判定される相電流iu,iv,iwの値は、電圧形インバータ4と交流電動機1との間に流れるu相、v相、およびw相の電流である3つの相電流の瞬時値である。以下、相電流iuをu相電流iuと記載し、相電流ivをv相電流ivと記載し、相電流iwをw相電流iwと記載する場合がある。また、相電流iu,iv,iwの値を単に相電流iu,iv,iwと記載する場合がある。
図2から図4は、実施の形態1にかかる相電流判定部による相電流の値の判定方法を説明するための図である。図2から図4に示す例では、電圧形インバータ4にY結線の3相抵抗負荷1aが接続されている。また、スイッチング素子Q1,Q2の接続点から3相抵抗負荷1aへ流れる電流がu相電流iuであり、スイッチング素子Q3,Q4の接続点から3相抵抗負荷1aへ流れる電流がv相電流ivである。また、スイッチング素子Q5,Q6の接続点から3相抵抗負荷1aへ流れる電流がw相電流iwである。
また、電圧形インバータ4から3相抵抗負荷1aへ流れる相電流の向きは、正方向であり、3相抵抗負荷1aから電圧形インバータ4へ流れる相電流の向きは、負方向である。例えば、u相電流iuが図2に示す矢印の方向に流れる場合、u相電流iuの向きは正方向である。同様に、v相電流ivが図2に示す矢印の方向に流れる場合、v相電流ivの向きは正方向であり、w相電流iwが図2に示す矢印の方向に流れる場合、w相電流iwの向きは正方向である。
相電流判定部12は、母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値と、複数のゲートパルス信号Gu,Gv,Gwの状態とに基づいて、相電流iu,iv,iwの値を判定する。例えば、相電流判定部12は、6つのスイッチング素子Qのオンとオフとの組み合わせパターンが特定の組み合わせパターンであるタイミングで母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値に基づいて、相電流iu,iv,iwの値を判定する。
例えば、スイッチング素子Q1,Q4,Q6がオンであり、スイッチング素子Q2,Q3,Q5がオフであるとする。この場合、図3に示すように、電圧形インバータ4から3相抵抗負荷1aへu相電流iuが流れ、u相電流iuと同じ大きさの電流がv相電流ivおよびw相電流iwに分割されて3相抵抗負荷1aから電圧形インバータ4へ流れる。直流母線61に流れる電流は、u相電流iuと同じ大きさの電流であるため、相電流判定部12は、図3に示す状態において、母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値によってu相電流iuの値を判定することができる。
図3に示すように、u相電流iuの向きに対して直流母線61に流れる電流の向きが逆方向になる。そのため、母線電流検出部11は、直流母線61に流れる電流が図3に示す向きである場合に、正の母線電流ibusを出力するように直流母線61に配置される。なお、母線電流検出部11は、直流母線61に流れる電流が図3に示す向きである場合に、負の母線電流ibusを出力するように直流母線61に配置されてもよい。この場合、母線電流ibusの値は、相電流判定部12によって正負が反転される。
図3では、正方向のu相電流iuの値を判定する例を示しているが、負方向のu相電流iuの値、正方向および負方向のv相電流ivの値、および正方向および負方向のw相電流iwの値も同様に判定される。例えば、図4に示すように、スイッチング素子Q1,Q3,Q6がオンであり、スイッチング素子Q2,Q4,Q5がオフであるとする。この場合、相電流判定部12は、母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値によって負方向のw相電流iwの値を判定することができる。
3つの相電流iu,iv,iwのうち2つの相電流の値がわかれば、残りの1つの相電流の値は、キルヒホッフの電流則によって算出することができる。そのため、相電流判定部12は、母線電流検出部11によって異なる2つのタイミングで検出される母線電流ibusの値から3つの相電流iu,iv,iwのうちいずれか2つの相電流の値を判定する。そして、相電流判定部12は、判定した2つの相電流の値から残りの1つの相電流の値を算出により判定する。このように、相電流判定部12は、2回の母線電流検出を1セットとして、3つの相電流iu,iv,iwの値を判定する。
電圧形インバータ4が2レベルインバータである場合、6つのスイッチング素子Qにおけるオンとオフとの組み合わせのパターンは、8つある。8つの組み合わせパターンのうち6つの組み合わせパターンの各々は、上述した特定パターンである。6つのスイッチング素子Qにおけるオンとオフとの組み合わせのパターンが特定パターンである場合、母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値から相電流iu,iv,iwのいずれか1つの値を判定することができる。残りの2つの組み合わせパターンでは、電圧形インバータ4の出力は上述した零電圧ベクトルになるため、母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値から相電流iu,iv,iwの値を判定することが難しい。
図5は、実施の形態1にかかる相電流判定部による相電流の判定に用いられる母線電流の検出タイミングと、キャリア波と、電圧指令と、ゲートパルス信号との関係の一例を示す図である。図5において、Tcは、キャリア波Scの周期であるキャリア周期であり、fcは、キャリア波Scの周波数であるキャリア周波数である。
図5に示す例では、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*のうち、電圧指令vu
*の瞬時値が最も大きく、電圧指令vv
*の瞬時値がその次に大きく、電圧指令vw
*の瞬時値が最も小さい。本実施の形態では、ある時刻における3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*のうち絶対値が中間にある電圧指令の相を中間相と呼ぶ。図5に示す例では、電圧指令vv
*が中間の大きさであるため、中間相は、V相である。
図5において、時刻t1からt7の期間は、キャリア波Scの最初の下り半周期である。下り半周期は、キャリア波Scの半周期であってキャリア波Scの値が漸次小さくなる期間である。キャリア波Scの最初の下り半周期のうち、ゲートパルス信号Guがオンでゲートパルス信号Gv,Gwがオフである時刻t3では、スイッチング素子Q1,Q4,Q6がオンで、スイッチング素子Q2,Q3,Q5がオフである。したがって、時刻t3において、母線電流検出部11で検出される母線電流ibusの値は、u相電流iuの値と同じである。相電流判定部12は、時刻t3で母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値をu相電流iuの値として判定する。
キャリア波Scの最初の下り半周期のうち、ゲートパルス信号Gu,Gvがオンでゲートパルス信号Gwがオフである時刻t5では、スイッチング素子Q1,Q3,Q6がオンで、スイッチング素子Q2,Q4,Q5がオフである。したがって、時刻t5において、母線電流検出部11で検出される母線電流ibusの値はw相電流iwの値と同じである。相電流判定部12は、時刻t5で母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値をw相電流iwの値として判定する。
相電流判定部12は、時刻t3で検出された母線電流ibusの値から得られるu相電流iuの値と、時刻t5で検出された母線電流ibusの値から得られるw相電流iwの値とから、キルヒホッフの法則に基づき、v相電流ivの値を算出する。このように、相電流判定部12は、キャリア波Scの下り半周期において複数の電流検出タイミングで母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値から相電流iu,iv,iwの値を判定する。同様に、相電流判定部12は、次の下り半周期である時刻t11からt16の期間のうち時刻t13,t15を電流検出タイミングとして母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値を用いて相電流iu,iv,iwの値を判定する。
このように、相電流判定部12は、キャリア波Scの下り半周期において、2回の電流検出タイミングで母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値から相電流iu,iv,iwの値を判定する。なお、これらの2回の電流検出タイミングは、キャリア波Scの下り半周期に限定されない。例えば、相電流判定部12は、キャリア波Scの下り半周期に代えて、キャリア波Scの上り半周期において、2回の電流検出タイミングで母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値から相電流iu,iv,iwの値を判定することもできる。上り半周期は、キャリア波Scの半周期であってキャリア波Scの値が漸次大きくなる期間である。
スイッチング素子Qのオンとオフが切り替わった直後は、スイッチング素子Qのオンとオフとの切り替えによって母線電流ibusにリンギングが現われる。リンギングが生じている母線電流ibusの値から相電流iu,iv,iwの値を精度よく判定することが難しい。そのため、相電流判定部12は、リンギングが収まるまでの時間として予め定められた時間待ってから、母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値を用いて相電流の値を判定する。
図5に示す例では、相電流判定部12は、中間相のゲートパルス信号であるゲートパルス信号Gvがオフからオンになる時刻t4の直前である時刻t3で母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値を相電流iuの値として判定する。また、相電流判定部12は、ゲートパルス信号Gvがオフからオンになる時刻t4から予め設定された時間TA後の時刻t5で母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値を相電流iwの値として判定する。
このように、相電流判定部12は、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのうち中間相のゲートパルス信号のオンとオフとの切り替わりであるタイミングである状態切り替わりタイミングを判定する。そして、相電流判定部12は、状態切り替わりタイミングの直前のタイミングと状態切り替わりタイミングから時間TA後のタイミングとを各々母線電流ibusの値を検出するタイミングである母線電流検出タイミングとして決定する。相電流判定部12は、これら2回の母線電流検出タイミングの各々で母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値から、相電流iu,iv,iwのいずれか2つの相電流の値を判定する。相電流判定部12は、判定した2つの相電流の値に基づいて残りの相電流の値を算出する。2つの相電流の判定タイミングを近づけることができることから、相電流判定部12は、検出した2つの相電流の値に基づいて残りの相電流の値を精度よく判定することができる。
相電流判定部12は、母線電流検出部11によって繰り返し検出される母線電流ibusの値を記憶することができる。相電流判定部12は、記憶した母線電流ibusの値のうち、中間相のゲートパルス信号が切り替わる直前に母線電流検出部11によって検出された母線電流ibusの値を抽出することができる。相電流判定部12は、抽出した母線電流ibusの値に基づいて、相電流の値を判定することができる。
また、中間相のゲートパルス信号がオフからオンになってから中間相のレグの上側アームがオフからオンになるまでに遅延時間Tdがあるとする。この場合、相電流判定部12は、中間相のゲートパルス信号のオンとオフとが切り替わった時刻に母線電流検出部11によって検出された母線電流ibusの値を用いることもできる。相電流判定部12は、中間相のゲートパルス信号のオンとオフとが切り替わった時刻に検出される母線電流ibusの値に加え、中間相のゲートパルス信号のオンとオフとが切り替わってから時間TC後に検出される母線電流ibusの値を用いる。時間TCは、時間TAに遅延時間Tdを加算した時間である。なお、上述した例では、中間相がv相である例を示したが、相電流判定部12は、中間相がu相である場合および中間相がw相である場合も同様の処理を行うことができる。
このように、相電流判定部12は、複数のゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのうち中間相のゲートパルス信号が変化するタイミングに基づき2回の母線電流検出タイミングを決定する。これら2回の母線電流検出タイミングは、相電流iu,iv,iwのうち2つの相電流の値を判定するために用いられる母線電流ibusの値を検出するタイミングである。相電流判定部12は、決定した2回の母線電流検出タイミングを含む検出期間毎に母線電流検出部11によって検出される複数の母線電流ibusの値に基づいて、相電流iu,iv,iwの値を判定する。
上述した8つの組み合わせパターンは、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の変化によって切り替わり、組み合わせパターンの切り替わり間隔も、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の変化によって変わる。組み合わせパターンの切り替わりは、3相のゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのいずれかのオンとオフとが切り替わることによって行われ、その直後に母線電流ibusにリンギングが現われる。
リンギングは一般に数マイクロ秒オーダで収束するが、リンギングが収束する前に再度、3相のゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのいずれかのオンとオフとが切り替わると、切り替わり前の状態における相電流の値を得ることが難しい。すなわち、数マイクロ秒の範囲において、3相のゲートパルス信号Gu,Gv,Gwで構成されるゲートパルス信号群の状態変化が2回発生する場合、母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値から相電流の値を判定することが難しい。このように、組み合わせパターンの切り替わり間隔がリンギングの収束時間よりも短い場合、母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値から相電流の値を判定することが難しい。
そこで、制御装置5のパルスシフト処理部22は、組み合わせパターンの切り替わり間隔が予め設定された時間TA以上になるように、3相のゲートパルス信号Gu,Gv,Gwの少なくとも1つのオンとオフとが切り替わるタイミングをずらす処理を行う。時間TAは、リンギングが生じてからリンギングが収束するまでの時間、すなわち、リンギングの収束時間以上の値に設定される。これにより、パルスシフト処理部22は、組み合わせパターンの切り替わり間隔をリンギングの収束時間以上ずらすことができ、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の値にかかわらず、リンギングが収束するまでの待ち時間を確保することができる。
パルスシフト処理部22は、キャリア1周期内で、3相のゲートパルス信号Gu,Gv,Gwの少なくとも1つのオンとオフとが切り替わるタイミングをずらすパルスシフト処理を行う。例えば、パルスシフト処理部22は、キャリア波Scの上り半周期から下り半周期までの期間において、ゲートパルス信号Gをずらし、キャリア波Scの上り半周期と下り半周期とで各々ゲートパルス信号Gのデューティ比を変える処理を行う。
パルスシフト処理によって、キャリア波Scの半周期では電圧形インバータ4から出力される3相の電圧が変化するが、キャリア1周期では、オンとオフとが切り替わるタイミングをずらす前と後とでゲートパルス信号Gのデューティ比は同じである。これにより、電圧形インバータ4から出力される3相の電圧のキャリア1周期毎の平均値が電圧指令vu
*,vv
*,vw
*と一致するようにスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンおよびオフが行われる。したがって、パルスシフト処理部22は、キャリア1周期単位で電圧形インバータ4の3相の出力電圧の変化を抑制することができる。
相電流判定部12は、パルスシフト処理によって、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の値とは無関係に母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値から相電流iu,iv,iwの値を判定することができる。
図5に示す例では、相電流判定部12は、キャリア波Scの下り半周期において、3つの相電流iu,iv,iwの値を判定するが、3つの相電流iu,iv,iwの値を判定するタイミングは、キャリア波Scの下り半周期に限定されない。例えば、相電流判定部12は、キャリア波Scの下り半周期に代えて、キャリア波Scの上り半周期において、2回の母線電流検出タイミングで母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値に基づき相電流iu,iv,iwの値を判定できる。
また、相電流判定部12は、キャリア波Scの下り半周期での相電流iu,iv,iwの値を判定する判定処理と、キャリア波Scの上り半周期での相電流iu,iv,iwの値を判定する判定処理とを交互に行うこともできる。この場合、相電流判定部12は、パルスシフト処理部22によってキャリア1周期単位で電圧形インバータ4の出力電圧の変化が抑制されるため、キャリア波Scの周期の1.5倍以上の周期毎に1度、相電流iu,iv,iwの値を判定する。
また、相電流判定部12は、キャリア波Scの1周期毎に3つの相電流iu,iv,iwの値を判定することに代えて、キャリア波Scの2周期以上の期間毎に3つの相電流iu,iv,iwの値を判定することもできる。キャリア波Scの周波数に上限がある場合、3つの相電流iu,iv,iwの値を判定する判定処理の周期である3相電流判定周期が長くなると、交流電動機1の高速回転時において、相電流iu,iv,iwの周波数がキャリア波Scの周波数へ近づく。この場合、相電流判定部12によって判定される相電流iu,iv,iwの1周期分の波形に対する時間分解能が低くなる。時間分解能が低くなるほど、推定装置9の推定精度および制御装置5による制御性能などが下がることから、高速回転時には3相電流判定周期は長くない方がよい。したがって、キャリア波Scの周波数に上限がある場合、3相電流判定周期は、キャリア波Scの1周期であることが望ましい場合がある。
上述した中間相のゲートパルス信号の状態切り替わりタイミングは、中間相の電圧指令によって変化し、中間相のゲートパルス信号の状態切り替わりタイミングによって、母線電流ibusの値の検出タイミングである母線電流検出タイミングが変化する。また、母線電流検出タイミングは、パルスシフト処理部22によるパルスシフト処理によっても変化する。パルスシフト処理による母線電流検出タイミングの変化は小さいが、中間相の電圧指令が大きく変動する場合、母線電流検出タイミングも大きく変動する。
図5に示す例では、キャリア波Scが極大値になる時刻t11を境に中間相の電圧指令であるv相の電圧指令vv*の値が大きく変化している。そのため、中間相のゲートパルス信号であるゲートパルス信号Gvが切り替わるタイミングも大きく前後する。それに伴い、キャリア波Scが極大値になる時刻t1から母線電流検出タイミングである時刻t3,t5までの時間と、キャリア波Scが極大値になる時刻t11から母線電流検出タイミングである時刻t13,t15までの時間との差が大きくなる。
このように、母線電流検出タイミングは、キャリア周期毎に変化する。そのため、推定部15は、相電流判定部12によって判定される相電流iu,iv,iwの値を用いて磁極位置θeおよび回転速度ωeを推定する際に、電流検出時刻間の時刻差Tbを用いている。電流検出時刻は、相電流判定部12による判定処理に用いられる母線電流ibusの母線電流検出部11による検出時刻として特定される時刻である。例えば、電流検出時刻は、相電流判定部12が1相目の電流の値を判定するために用いた母線電流ibusの検出時刻と相電流判定部12が2相目の電流の値を判定するために用いた母線電流ibusの検出時刻との平均の時刻である。この場合、相電流判定部12は、1相目の電流の値を判定するために用いた母線電流ibusの検出時刻と、2相目の電流の値を判定するために用いた母線電流ibusの検出時刻とを加算して2で除して得られる時刻を電流検出時刻として求める。母線電流ibusの検出時刻は、母線電流ibusが母線電流検出部11によって検出された時刻である。
なお、電流検出時刻は、1相目の電流の値を判定するために用いられた母線電流ibusの母線電流検出部11による検出時刻であってもよく、2相目の電流の値を判定するために用いられた母線電流ibusの母線電流検出部11による検出時刻であってもよい。
例えば、図5において、最初にu相電流iuの値を判定するために用いられる母線電流ibusが検出される時刻t3を時刻tu1とし、次にu相電流iuの値を判定するために用いられる母線電流ibusが検出される時刻t13を時刻tu2とする。また、最初にw相電流iwの値を判定するために用いられる母線電流ibusが検出される時刻t5を時刻tw1とし、次にw相電流iwの値を判定するために用いられる母線電流ibusが検出される時刻t15を時刻tw2とする。リンギングの収束のための待ち時間である時間TAは既知である。したがって、時刻tu1と時刻tw1との時刻差は既知であり、時刻tu2と時刻tw2との時刻差も既知である。しかしながら、時刻tu1と時刻tu2との時刻差または時刻tw1と時刻tw2との時刻差は、既知ではない。すなわち、電流検出時刻間の時刻差Tbは既知ではない。
そこで、時刻差算出部13は、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwに基づいて、電流検出時刻間の時刻差Tbを算出する。具体的には、時刻差算出部13は、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのうち中間相のゲートパルス信号がオンとオフとの間で切り替わるタイミングに基づいて、時刻tu1,tw1,tu2,tw2を判定する。時刻差算出部13は、判定した時刻tu1,tw1,tu2,tw2に基づいて、時刻tu1と時刻tw1との中間の時刻である時刻tavg1を算出し、時刻tu2と時刻tw2との中間の時刻である時刻tavg2を算出する。時刻差算出部13は、時刻tavg1と時刻tavg2との時刻差を時刻差Tbとして算出する。このように、時刻差算出部13は、相電流判定部12による判定処理で用いられた母線電流ibusの検出時刻として特定される電流検出時刻と相電流判定部12による次の判定処理で用いられた母線電流ibusの検出時刻として特定される電流検出時刻との時刻差Tbを算出する。
リンギングの収束のための待ち時間である時間TAが一定である場合、時刻tu1と時刻tu2との時刻差および時刻tw1と時刻tw2との時刻差の各々は、時刻tavg1と時刻tavg2との時刻差と同じである。この場合、時刻差算出部13は、時刻tu1と時刻tu2との時刻差を時刻差Tbとして算出することもでき、時刻tw1と時刻tw2との時刻差を時刻差Tbとして算出することもできる。図5では、時刻tw1と時刻tw2との時刻差が時刻差Tbとして算出された例を示している。
時刻差Tbの変動についてさらに具体的に説明する。図6は、実施の形態1にかかる交流電動機が低速で回転している場合の3相の電圧指令とキャリア波との関係の一例を示す図である。図7は、実施の形態1にかかる交流電動機が高速で回転している場合の3相の電圧指令とキャリア波との関係の一例を示す図である。図6および図7において、縦軸は変調率を示し、横軸は時刻を示す。また、図6および図7に示す3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*は、零ベクトル変調部34による零ベクトル変調は行われていない。
図6に示すように、交流電動機1が低速で回転している場合、キャリア波Scの周波数に対して3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の周波数が十分に低い。また、交流電動機1の速度起電力は交流電動機1の速度に比例して大きくなるため、交流電動機1が低速で回転している場合、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の振幅は比較的小さい。したがって、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*は、傾きが緩やかであり、中間相の電圧指令は、傾きが緩やかである。なお、図6に示す例では、中間相は、前半から後半の一部までがv相で、後半の残りがu相である。
図7に示すように、交流電動機1が高速で回転している場合、交流電動機1が低速で回転している場合に比べ、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の周波数が高い。例えば、非同期PWM(Pulse Width Modulation)で交流電動機1を回転させる場合、キャリア波Scの周波数に対する3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の周波数の比率が10%~15%程度になることは珍しくない。交流電動機1が高速で回転している場合、図7に示すように、交流電動機1が低速で回転している場合に比べて、中間相がv相、u相、w相、v相、・・・の順で高速で変化し、速度起電力も大きくなっている。そのため、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の振幅も、図6に示す場合に比べて大きく、中間相の電圧指令の傾きもかなり大きくなっている。したがって、電流検出時刻間の時刻差Tbの変動は大きい。
交流電動機1を高速で回転させる場合、相電流iu,iv,iwの波形に対する時間分解能は高いほどよい。そのため、図5に示す例では、相電流判定部12は、キャリア波Scの1周期毎に母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値に基づいて3相の相電流iu,iv,iwの値を判定する処理を行う。電流検出時刻間の平均時刻差に対して、電流検出時刻間の時刻差Tbの変動が最も大きくなるのは、キャリア波Scの1周期毎に1度、3つの相電流iu,iv,iwの値を判定する場合である。この場合、電流検出時刻間の時刻差Tbは、電流検出時刻間の平均時刻差を「Tbave」とすると、0.5×Tbave<Tb<1.5×Tbaveの範囲で変化する。
キャリア波Scの2周期毎に1度、3つの相電流iu,iv,iwの値を判定する場合、電流検出時刻間の時刻差Tbの変動は、0.75×Tbave<Tb<1.25×Tbaveの範囲に緩和される。「Tbave」は、上述したように電流検出時刻間の平均時刻差である。電流検出時刻間の平均時刻差を延ばすほど、電流検出時刻間の時刻差Tbの変動は緩和されるが、相電流iu,iv,iwの波形に対する時間分解能が低くなる。そのため、交流電動機1が高速で回転している場合に回転速度ωeの推定精度を高くすることが難しくなる場合がある。
図8は、実施の形態1にかかる3相の電圧指令が正弦波である場合の中間相の電圧指令の変化の一例を示す図である。図9は、実施の形態1にかかる三次高調波重畳を用いて変形させた3相の電圧指令のうち中間相の電圧指令の変化の一例を示す図である。図8に示すように、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*が正弦波である場合、中間相の電圧指令の波形は、ほぼ三角波である。また、図9に示すように、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*が正弦波に三次高調波を重畳した電圧指令である場合も、中間相の電圧指令の波形は、ほぼ三角波である。また、他の変調方式を用いた場合、中間相波形が図8および図9に示す程度の三角波にならないこともあるが、変調率が1の付近では零電圧ベクトルの選択の自由度が減少することから、中間相の波形は三角波にかなり近づく。
これらの三角波の周波数は、図8および図9に示すように、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の3倍である。そのため、中間相の波形は3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の基本周波数に対して3n次の周波数成分を含んでいる。nは1以上の奇数である。
電流検出時刻間の時刻差Tbの変動は、交流電動機1を高速で回転させる場合だけではなく、交流電動機1を低速で回転させる場合においても大きくなる場合がある。図10は、実施の形態1にかかる零ベクトル変調部によって零ベクトル変調が行われた3相の電圧指令の一例を示す図である。図10において、縦軸は変調率を示し、横軸は時刻を示す。図10に示すvu
*,vv
*,vw
*は、図9に示す三次高調波が重畳された電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の波形に対して、ランダムノイズが加えられたような波形である。
上述したように、零ベクトル変調によりキャリア騒音のスペクトルピークが分散され、キャリア騒音を低減することができる。零ベクトル変調を行った場合、交流電動機1が低速で回転している場合でも中間相の波形が急激に変化する場合がある。交流電動機1が低速で回転している場合、電圧形インバータ4から出力される電圧が小さく、電圧形インバータ4から出力される電圧が小さいときほど、零電圧ベクトルの選択の自由度が増す。そのため、交流電動機1が低速で回転している場合、零ベクトル変調で電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に加算できる乱数値は電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の変調率が小さいときほど大きい。零ベクトル変調部34は、交流電動機1の回転が低速であるほど、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に加算する乱数値を大きくする。
したがって、零ベクトル変調を行った場合、交流電動機1が低速で回転しているときでも中間相の電圧指令の波形が急激に変化し、電流検出時刻間の時刻差Tbの変化が大きくなる。この場合、電流検出時刻間の時刻差Tbの変動を無視すると速度推定または位置推定を行っても良好な結果が得られない場合がある。
ここで、電流検出時刻間の時刻差Tbの変化に伴う微積分演算の誤差について説明する。まず、電流検出時刻間の時刻差Tbの変化に伴う積分演算の誤差について説明する。図11および図12は、長方形近似による積分演算のイメージを示す図である。図13は、時刻差の変動を無視した場合の積分演算のイメージを示す図である。図11から図13において、縦軸は、任意の曲線x(t)の時刻tにおける値を示し、横軸は、時刻を示す。
任意の曲線x(t)を離散的に積分する場合、幅が各々微小時間Tである複数の長方形を幅方向に敷き詰め、各長方形の面積を合算することによって積分結果が得られる。この場合、各長方形は、他の長方形と重ならず且つ隣接する長方形との間で隙間がないように敷き詰められる。図11は、微小時間Tが一定の場合における長方形近似による積分の例を示しており、積分演算の誤差が生じるが、多くの場合は長方形近似による積分でも問題がない。より高精度な積分演算を行いたい場合、台形近似による積分を行うことで対応できる。
微小時間Tが一定でない場合も同様に、図12に示すように、長方形と重ならず且つ隣接する長方形との間で隙間がないように各長方形を敷き詰めることで、適切な積分演算を行うことができる。図12に示す例では、T=T+ΔT(t)であり、微小時間Tは一定であり、ΔT(t)が時刻の経過に伴って変動する時間である。
ΔT(t)を用いずに積分演算を行った場合、図13に示すように、他の長方形と重なったり、隣接する長方形との間で隙間が生じたりする。全体の面積については、重なった分と隙間の分が相殺しあって大きな誤差にならない場合があるが、部分的な面積には大きな誤差が発生する。したがって、電流検出時刻間の時刻差Tbを固定値として積分演算を行うと積分演算の結果に誤差が生じる。
次に、電流検出時刻間の時刻差Tbの変化に伴う微分演算の誤差について説明する。 図14は、微分演算の誤差を説明するための図である。図14に示す例では、任意の曲線x2(t)の傾きを求めるのに使用できる値は、時刻t1におけるx2(t1)=aと、時刻t2におけるx2(t2)=bの2点であり、時刻t1と時刻t2との時刻差Tbは、Tb=T+ΔT(t)であるとする。また、ΔT(t)は時刻差Tbの変動量であり、計算するタイミング毎に変化するものとする。この場合、ΔT(t)を用いずに微分演算を行った場合、ΔT(t)の分だけ微分演算の結果に誤差が生じる。
このように、電流検出時刻間の時刻差Tbが変動する場合において、電流検出時刻間の時刻差Tbの変動を無視して微積分演算を行う場合、微積分演算の誤差が生じる。そこで、推定部15は、時刻差算出部13によって算出された時刻差Tbに基づいて、交流電動機1の磁極位置θeおよび回転速度ωeを推定する。
磁極位置θeおよび回転速度ωeを推定する方法として様々な方法が検討されている。交流電動機1の回転速度の全域のうち中高速の領域では交流電動機1の速度起電力の情報を利用して磁極位置θeを求めるのが一般的である。実施の形態1にかかる推定部15は、アークタンジェント法を用いて磁極位置θeおよび回転速度ωeを推定する。なお、磁極位置θeおよび回転速度ωeの推定方法は、アークタンジェント法に限定されない。例えば、磁極位置θeおよび回転速度ωeの推定方法には、適応オブザーバを用いる方法がある。適応オブザーバについては、実施の形態2において説明する。
アークタンジェント法は最もプリミティブな位置推定法であり、広く知られている。下記式(1)は固定子座標上における表面磁石型同期交流電動機の電圧方程式である。下記式(1)において、「p」は微分演算子、「Ra」は電機子抵抗、「La」は電機子インダクタンス、「vα,vβ」は固定子座標上の電圧、「Φa」は電機子鎖交磁束数、「iα,iβ」は固定子座標上の電流である。以下において、固定子座標を静止座標と記載する場合がある。
上記式(1)の右辺第2項は速度起電力を表している。なお、速度起電力の項は下記式(2)のように表現可能である。下記式(2)において、「eα」はα軸速度起電力、「eβ」はβ軸速度起電力、「p」は微分演算子、「φαr」は回転子α軸磁束、「φβr」は回転子β軸磁束、「Φa」は電機子鎖交磁束数である。
上記式(1)を見て分かるとおり、速度起電力に磁極位置情報である磁極位置θeの情報が含まれるため、上記式(1)を整理して磁極位置θeを演算する。まず、回転子磁束項を左辺に、それ以外の項を右辺にまとめると、下記式(3)が得られる。微分計算はノイズを増幅させるため、下記式(3)の両辺を積分して下記式(4)を得る。ここで、電圧センサなどに直流オフセットがある場合、純粋積分を使うと積分値が発散するため、下記式(4)の計算を行う際はローパスフィルタによる近似積分を使い、直流分は積分しないようにするのが慣例である。
上記式(4)において、記号「^」は推定値を表す。上記式(4)を計算して、回転子磁束を求め、求めた回転子磁束を用いて下記式(5)に示すアークタンジェントの計算を行うことで、回転子の磁極位置θeを推定することができる。推定された回転子の磁極位置θeを用いれば、回転速度ωeを計算可能なため、下記式(6)で推定速度ωe^を計算することができる。但し、微分ノイズの影響を避けるため、この推定速度ωe^を制御に使用する場合にはローパスフィルタをかけるのが一般的である。また、速度起電力の推定を行い、下記式(7)のように、速度起電力の振幅を電機子鎖交磁束数Φaで除算することにより、推定速度ωe^を計算することもできる。速度起電力は上記式(3)の右辺を計算することによって算出することができる。しかしながら、永久磁石の磁束は温度変化により変動するため、下記式(7)の計算方法では温度変化によって定常的な速度推定誤差が生じる。そのため、下記式(6)による速度推定方法による誤差は、下記式(7)に示す方法による誤差よりも少ない。また、アークタンジェント法は計算量が少ないというメリットがある。実施の形態1では下記式(6)による速度推定を行った場合について説明する。
まず、上述した電流検出時刻間の時刻差Tbが変動しないものとして、上記式(4)から式(6)で表されるアークタンジェント法の演算を離散化する場合について説明する。交流電動機1に印加する静止座標系の電圧から交流電動機1の電機子抵抗による電圧降下を差し引き、ローパスフィルタによって下記式(8)のように近似積分の演算を行うことができる。下記式(8)において、「TS」は制御周期、「TLPF」は近似積分のローパスフィルタの時定数、「n」は今回のサンプリング点を表す値、「n-1」は前回のサンプリング点を表す値である。今回のサンプリング点は、現在のサンプリング点ということもできる。下記式(8)は、上記式(4)の右辺第1項の積分を離散化したものということができる。ここでは、ローパスフィルタの離散化は後退差分によって行っているが、前進差分または双一次変換を用いてローパスフィルタの離散化を行ってもよい。
また、静止座標系の回転子磁束は、下記式(9)のように離散化することができる。したがって、今回のサンプリング点における推定位置θe^(n)は、下記式(10)によって算出することができる。また、今回のサンプリング点における推定位置θe^(n)と前回のサンプリング点における推定位置θe^(n)を用いて、2つのサンプリング点間における推定速度ωe^は、下記式(11)によって算出することができる。「θe^」は、「θe」の推定値であり、「ωe^」は、「ωe」の推定値である。
しかしながら、上述したように、電流検出時刻間の時刻差Tbは時々刻々と変動する。したがって、電流検出時刻間の時刻差Tbを用いて演算しなければ、推定位置θe^および推定速度ωe^に誤差が生じる。
そこで、推定部15は、電流検出時刻間の時刻差Tbを用いて、アークタンジェント法による演算を行う。電流検出時刻間の時刻差TbをTS+ΔT(n)と表したとき、上記式(8)で示されるローパスフィルタの演算は、下記式(12)のように書き換えることができる。
また、静止座標系の回転子磁束は、上記式(12)で求めた値を上記式(9)に代入することによって算出することができる。したがって、今回のサンプリング点における推定位置θe^(n)は、上記式(10)によって算出することができる。また、2つのサンプリング点間における推定速度ωe^は、電流検出時刻間の時刻差Tb=TS+ΔT(n)を用いた下記式(13)により算出することができる。
推定部15は、サンプリング点毎に相電流判定部12によって判定された相電流iu,iv,iwを静止座標系の電流iα,iβへ座標変換する。また、推定部15は、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*を静止座標系の電圧vα,vβへ座標変換する。推定部15は、静止座標系の電流iα,iβおよび電圧vα,vβと、時刻差算出部13によって算出された時刻差Tbとに基づいて、上記式(12)の演算を行う。推定部15は、上記式(12)によって算出された値と、静止座標系の電流iα,iβとを上記式(9)へ代入して、静止座標系の回転子磁束を算出する。推定部15は、上記式(9)によって算出された静止座標系の回転子磁束を上記式(10)に代入して、推定位置θe^を算出する。また、推定部15は、上記式(10)の演算によって算出した推定位置θe^と、時刻差算出部13によって算出された時刻差Tbとを上記式(13)に代入して、推定速度ωe^を算出する。
上記式(12),(13)で示されるΔT(n)の定義域は、図5からも分かるように、-0.5×TS<ΔT(n)<0.5×TSである。したがって、上記式(12),(13)を用いた演算と、上記式(8),(11)を用いた演算とで誤差に大きな差が生じる。すなわち、ΔTを用いて推定処理を行うか否かによって推定誤差に大きな差が生じる。
ここで、上記式(11)を用いた演算による速度推定について説明する。ここでは、キャリア波Scの周波数であるキャリア周波数が5kHzであり、相電流判定部12は、キャリア波Scの1周期に1回、3つの相電流iu,iv,iwの値を判定する場合を例に挙げて説明する。制御周期TSは、キャリア周波数の逆数であり、200μsである。
交流電動機1の回転速度ωeが2500rad/sである場合、交流電動機1の磁極位置θeは、200μsの間に0.5rad進む。しかしながら、電流検出時刻間の時刻差Tbは、100μsから300μsの範囲で変動する。したがって、例えば、時刻差Tbが300μsであった場合、磁極位置θeは、300μsの間に0.75rad進む。この場合、上記式(11)のように0.75radを制御周期TSで除算すると、推定速度ωe^は、3750radになり、回転速度ωeの真値に対して1.5倍になってしまう。この推定誤差は、交流電動機1を制御する上で無視できないほど大きい。
ΔT(n)の平均値は零であることから、推定速度ωe^にローパスフィルタをかけることによって、ΔT(n)による誤差を除去することができるが、制御ループ内にローパスフィルタを挿入すると、制御応答が下がってしまう。そのため、上記式(11)の演算による推定処理では高速応答を実現することが難しい。
推定部15は、上記式(13)の演算を行うため、0.75radは時刻差Tbで除算される。そのため、推定速度ωe^は、2500radであり、回転速度ωeの真値と一致する。このように、推定部15は、上記式(13)を用いた演算を行うことによって、上記式(11)を用いた演算を行う場合に比べ、速度推定の誤差を大幅に低減することができる。また、推定部15は、上記式(12)の演算を行うことで、上記式(8)の演算を行う場合に比べ、位置推定の誤差を大幅に低減することができる。
以上のように、実施の形態1にかかる推定装置9は、母線電流検出部11と、相電流判定部12と、時刻差算出部13と、推定部15とを備える。母線電流検出部11は、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に基づいて生成される複数のゲートパルス信号Gu,Gv,Gwによって駆動される電圧形インバータ4の直流母線61に流れる電流である母線電流ibusの値を検出する。相電流判定部12は、母線電流検出部11によって検出される母線電流ibusの値と複数のゲートパルス信号Gu,Gv,Gwの状態とに基づいて、電圧形インバータ4から交流電動機1へ供給される相電流iu,iv,iwの値を判定する。時刻差算出部13は、相電流判定部12による前回の判定処理で用いられた母線電流ibusの検出時刻として特定される電流検出時刻と相電流判定部12による今回の判定処理で用いられた母線電流ibusの検出時刻として特定される電流検出時刻との時刻差Tbを算出する。相電流判定部12による前回の判定処理で用いられた母線電流ibusの検出時刻として特定される電流検出時刻は、第1の電流検出時刻の一例である。相電流判定部12による今回の判定処理で用いられた母線電流ibusの検出時刻として特定される電流検出時刻は、第2の電流検出時刻の一例である。推定部15は、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*と、相電流iu,iv,iwの値と、時刻差Tbとに基づいて、交流電動機1の磁極位置θeおよび回転速度ωeのうち少なくとも一方を推定する。このように、推定装置9は、相電流判定部12の電流検出時刻間の時刻差Tbを用いて推定処理を行う。そのため、推定装置9は、キャリア波Scにおける連続する2つの半周期の各々で検出される母線電流ibusの値から補間処理により3相の電流の値を判定する場合に比べ、3つの相電流iu,iv,iwの値を判定する処理の周期である判定周期を短くできる。また、推定装置9は、電流検出時刻間の時刻差Tbを磁極位置θeおよび回転速度ωeの推定に用いることから、電流検出時刻間の時刻差Tbの変動が大きい場合であっても、磁極位置θeおよび回転速度ωeの推定精度を高めることができる。したがって、交流電動機1が高速に回転している場合または零ベクトル変調が行われている場合において、磁極位置θeおよび回転速度ωeの推定精度を高めることができる。
また、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwは、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*とキャリア波Scとの比較に基づいて生成される。そして、電流検出時刻間の時刻差Tbは、キャリア波Scの半周期の期間よりも長く、キャリア波Scの1.5倍の周期よりも短い。これにより、推定装置9は、交流電動機1が高速に回転している場合または零ベクトル変調が行われている場合において、磁極位置θeおよび回転速度ωeの推定精度を高めることができる。
また、推定装置9を備える駆動装置2は、電圧形インバータ4へ入力される複数のゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのうち少なくとも1つを時間的にずらすパルスシフト処理部22を備える。パルスシフト処理部22は、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのうち変化の間隔が予め設定された時間TA未満である2つのゲートパルス信号のうち少なくとも1つを時間的にずらして2つのゲートパルス信号の変化の間隔を予め設定された時間TA以上にする。これにより、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の値にかかわらず、リンギングが収束するまでの待ち時間を確保することができる。
また、駆動装置2は、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に乱数値を加えることによって、電圧形インバータ4から出力される2種類の零電圧ベクトルの出力比率を不規則に変化させる零ベクトル変調部34を備える。これにより、零ベクトル変調によりキャリア騒音のスペクトルピークが分散され、キャリア騒音を低減することができる。零ベクトル変調を行った場合、交流電動機1が低速で回転しているときでも中間相の電圧指令の波形が急激に変化し、電流検出時刻間の時刻差Tbの変化が大きくなる。このような場合であっても、推定装置9は、磁極位置θeおよび回転速度ωeの推定精度を高めることができる。
実施の形態2.
実施の形態2にかかる推定装置の推定部は、適応オブザーバを用いて、交流電動機の位置および速度を推定する点で、実施の形態1にかかる推定装置の推定部と異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
実施の形態2にかかる推定装置の推定部は、適応オブザーバを用いて、交流電動機の位置および速度を推定する点で、実施の形態1にかかる推定装置の推定部と異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
図15は、本発明の実施の形態2にかかる推定装置を含む電動機システムの構成例の一例を示す図である。図15に示すように、実施の形態2にかかる電動機システム100Aは、制御装置5を有する駆動装置2に代えて、制御装置5Aを有する駆動装置2Aを備える。制御装置5Aは、推定部15を有する推定装置9に代えて、推定部15Aを有する推定装置9Aを備える。
図16は、実施の形態2にかかる推定部の構成例を示す図である。推定部15Aは、適応オブザーバによって構成されており、交流電動機1の磁極位置θeおよび回転速度ωeを推定する。適応オブザーバは、交流電動機1の固定子磁束および回転子磁束を状態量とする状態方程式で規定されているため、適応磁束オブザーバとも呼ばれる。なお、状態量として拡張誘起電圧または電流などを採用して適応オブザーバを構成することもできる。
図16に示す推定部15Aは、電圧ベクトルと、電流ベクトルと、電流検出時刻間の時刻差Tbとを用いて、推定速度ωe^と、推定位置θe^とを算出し、算出した推定速度ωe^と推定位置θe^とを出力する。電圧ベクトルは、電圧形インバータ4から交流電動機1へ出力される電圧のベクトルであり、電流ベクトルは、電圧形インバータ4から交流電動機1へ出力される電流のベクトルである。
推定部15Aは、モデル偏差演算部51と、角速度推定器52と、一次角周波数演算器53と、積分器54とを備える。モデル偏差演算部51は、電圧ベクトルと、電流ベクトルと、一次角周波数ω1と、推定速度ωe^と、電流検出時刻間の時刻差Tbとに基づきモデル偏差εを演算する。角速度推定器52は、モデル偏差εと電流検出時刻間の時刻差Tbとに基づき推定速度ωe^を演算する。一次角周波数演算器53は、推定磁束ベクトルと、推定電流ベクトルと、推定速度ωe^とを用いて、一次角周波数ω1を演算する。積分器54は、電流検出時刻間の時刻差Tbに基づいて一次角周波数ω1を積分して推定位置θe^を出力する。
モデル偏差演算部51は、電流推定器71と、減算器72と、偏差演算器73とを備える。電流推定器71は、電圧ベクトルと、電流ベクトルと、一次角周波数ω1と、推定速度ωe^と、電流検出時刻間の時刻差Tbとに基づき、推定磁束ベクトルと推定電流ベクトルとを算出し、算出した推定磁束ベクトルと推定電流ベクトルとを出力する。減算器72は、推定電流ベクトルから電流ベクトルを減算することによって電流偏差ベクトルを算出し、算出した電流偏差ベクトルを出力する。
偏差演算器73は、減算器72からの電流偏差ベクトルを入力とし、推定磁束ベクトルの直交成分をスカラ量として抽出し、抽出したスカラ量をモデル偏差εとして出力する。推定磁束ベクトルの直交成分をスカラ量として抽出する手法としては、電流偏差ベクトルを回転する直交座標系上に座標変換する手法と、電流偏差ベクトルと推定磁束ベクトルとの外積値の大きさを演算する手法とが公知である。
電流推定器71は、交流電動機1の状態方程式から電流と磁束を推定する。ここでは、交流電動機1は一般的な埋込型永久磁石同期電動機であると仮定するが、方程式が立式できれば、誘導電動機、表面型永久磁石同期電動機、巻線界磁式同期電動機、またはリラクタンス式同期電動機などのように他種の電動機であってもよい。すなわち、電流推定器71は、他種の電動機についても、同様の方法で電流推定を行うことができる。
交流電動機1が永久磁石埋込型同期電動機の場合、状態方程式は下記式(14)および式(15)のように表される。但し、「Ld」はd軸のインダクタンス、「Lq」はq軸のインダクタンス、「id」はd軸電流、「iq」はq軸電流、「φds」はd軸固定子磁束、「φqs」はq軸固定子磁束、「φdr」はd軸回転子磁束、記号「^」は推定値を表す。また、「Ra」は電機子抵抗、「ω1」は一次角周波数、「vd」はd軸電圧、「vq」はq軸電圧、「h11」から「h32」はオブザーバゲインを表す。また、一次角周波数ω1は下記式(16)のように与えられる。「h41」,「h42」はオブザーバゲインを表す。
上記式(14)および式(15)は通常の誘起電圧に基づく式であるが、上記式(14)および式(15)に変形を加えて拡張誘起電圧の形式で表現しても同様の計算ができる。なお、上記式(14)および式(15)はdq回転座標における数式であるが、上記式(14)および式(15)に変形を加えて静止αβ座標または3相座標といった他の座標系で表現しても同様の計算ができる。上記式(14)には推定速度ωe^が含まれるため、推定速度ωe^と実際の回転速度ωeとが一致していない場合、電流推定に誤差が生じる。ここではモデル偏差εを下記式(17)のように定義し、推定部15Aはモデル偏差εが零になるように、角速度推定器52を用いて推定速度ωe^の値を調整する。角速度推定器52は、例えば、比例積分制御器に積分器を直列接続して構成される。
一次角周波数演算器53は、上記式(16)を基に、推定磁束ベクトルと、推定電流ベクトルと、推定速度ωe^とから一次角周波数ω1を演算する。積分器54は、一次角周波数ω1を積分することにより磁極位置θeを推定する。適応オブザーバは、鎖交磁束数の変動にロバストであり、定常的な速度推定誤差が発生しない点で優れており、高性能な速度推定法である。
上記式(14)および式(15)の状態方程式は、電流検出時刻間の時刻差Tbが変動することから、離散化する際には注意を要する。オイラー法による離散化を行うと、下記式(18)から式(21)が得られる。但し、「TS」は制御周期、「n」は今回のサンプリング点を表す値、「n-1」は前回のサンプリング点を表す値、「tavg」は、電流検出サンプル点からキャリア波Scの谷までの時間を表す。キャリア波Scの谷は、例えば、キャリア波Scが極小値になる位置を示し、図5に示す時刻t7,t16で各々現われる。電流検出サンプル点は、例えば、上述した電流検出時刻である。また、一次角周波数ω1は下記式(22)のように与えられる。
推定部15Aのモデル偏差演算部51は、推定位置θe^を用いて座標変換を行う。モデル偏差演算部51は、積分器54によって得られる推定位置θe^を用いて、3つの相電流iu,iv,iwを、回転する直交座標系であるdq座標系の電流へ座標変換することで、d軸電流idおよびq軸電流iqを求める。また、モデル偏差演算部51は、積分器54によって得られる推定位置θe^を用いて、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*を、回転する直交座標系であるdq座標系の電圧へ座標変換することで、d軸電圧vdおよびq軸電圧vqを求める。なお、d軸電圧vdおよびq軸電圧vqを得るために座標変換に用いる推定位置θe^は、例えば、電流検出時刻間の中央の時刻のものを用いるとよい。なお、上記式(19)および式(20)の状態方程式は、固定子磁束と回転子磁束を状態量として用いているが、電流または拡張誘起電圧を状態量としてもよい。
上記式(19)には、推定速度ωe^が含まれているため、推定速度ωe^と実際の回転速度ωeとが一致していない場合、電流推定に誤差が生じる。ここでは、モデル偏差εを下記式(23)のように定義し、推定部15Aは、モデル偏差εが零になるように、角速度推定器52を用いて推定速度ωe^の値を調整する。角速度推定器52は、下記式(24)から式(26)の演算によって、推定速度ωe^を算出する。下記式(25)において、「xa」は、比例積分制御の状態量であり、「n+1」は、次回のサンプリング点である。
上記式(25)では、ΔT(n)が用いられ、上記式(26)では、ΔT(n-1)が用いられている。そのため、推定部15Aは、電流検出時刻間の時刻差Tbが変動する場合においても、精度よく推定速度ωe^を算出することができる。
一次角周波数演算器53は、推定磁束ベクトルと、推定電流ベクトルと、推定速度ωe^とを上記式(22)に代入することによって、一次角周波数ω1を算出する。積分器54は、下記式(27)を用いて、一次角周波数ω1を積分することによって推定位置θe^を算出する。なお、Tb=TS+ΔT(n)である。下記式(27)では、ΔT(n)が用いられているため、推定部15Aは、電流検出時刻間の時刻差Tbの変動がある場合においても、精度よく推定位置θe^を算出することができる。
以上のように、実施の形態2にかかる推定部15Aは、電流推定器71と、減算器72と、偏差演算器73と、角速度推定器52とを備える。電流推定器71は、状態量推定部の一例であり、減算器72および偏差演算器73は、誤差算出部の一例であり、角速度推定器52は、速度推定部の一例である。電流推定器71は、交流電動機1の磁束ベクトルと電流ベクトルとを推定し、推定した結果である推定磁束ベクトルと推定電流ベクトルとを出力する。磁束ベクトルは、状態量の一例である。偏差演算器73は、モデル偏差εを算出する。モデル偏差εは、状態量の誤差の一例である。角速度推定器52は、モデル偏差εと時刻差Tbとに基づいて、推定速度ωe^を算出する。また、電流推定器71は、電圧ベクトルと、電流ベクトルと、一次角周波数ω1と、推定速度ωe^と、電流検出時刻間の時刻差Tbとに基づいて、推定磁束ベクトルと推定電流ベクトルを算出する。推定部15Aでは、定常的な速度推定誤差が発生しないことから、速度推定を精度よく行うことができる。
実施の形態3.
実施の形態3では、電流検出時刻間で電圧形インバータから交流電動機に印加される電圧を用いて交流電動機の位置および速度を推定する点で、実施の形態1,2にかかる駆動装置と異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1,2の制御装置5,5Aと異なる点を中心に説明する。
実施の形態3では、電流検出時刻間で電圧形インバータから交流電動機に印加される電圧を用いて交流電動機の位置および速度を推定する点で、実施の形態1,2にかかる駆動装置と異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1,2の制御装置5,5Aと異なる点を中心に説明する。
図17は、本発明の実施の形態3にかかる推定装置を含む電動機システムの構成例の一例を示す図である。図17に示すように、実施の形態3にかかる電動機システム100Bは、制御装置5を有する駆動装置2または制御装置5Aを有する駆動装置2Aに代えて、制御装置5Bを有する駆動装置2Bを備える。制御装置5Bは、推定装置9または推定装置9Aに代えて、推定装置9Bを備える。
推定装置9Bは、母線電流検出部11と、相電流判定部12と、時刻差算出部13と、検出時刻間電圧演算部14と、推定部15Bとを備える。検出時刻間電圧演算部14は、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwと、電流検出時刻間の時刻差Tbとに基づいて、電流検出時刻間の3つの相電圧vub,vvb,vwbの値を算出する。検出時刻間電圧演算部14によって算出される相電圧vub,vvb,vwbの値は、電流検出時刻間におけるu相、v相、およびw相の電圧である3つの相電圧の瞬時値である。推定部15Bは、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に代えて、電流検出時刻間の3つの相電圧vub,vvb,vwbの値を用いて、推定速度ωe^および推定位置θe^を算出する点で、推定部15または推定部15Aと異なる。相電圧vubは、u相の電圧であり、相電圧vvbは、v相の電圧であり、相電圧vwbは、w相の電圧である。以下において、相電圧vubをu相電圧vubと記載し、相電圧vvbをv相電圧vvbと記載し、相電圧vwbをw相電圧vwbと記載する場合がある。また、相電圧vub,vvb,vwbの値を単に相電圧vub,vvb,vwbと記載する場合がある。
検出時刻間電圧演算部14は、電流検出時刻間における各ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのデューティ比に基づいて、電流検出時刻間の3つの相電圧vub,vvb,vwbの値を算出する。具体的には、検出時刻間電圧演算部14は、電流検出時刻間においてゲートパルス信号Guがオンになっているオン時間の比に基づいて、電流検出時刻間のu相の電圧vuの値を算出する。同様に、検出時刻間電圧演算部14は、電流検出時刻間においてゲートパルス信号Gvがオンになっている時間であるオン時間に基づいて、電流検出時刻間のv相の電圧vvの値を算出する。また、検出時刻間電圧演算部14は、電流検出時刻間においてゲートパルス信号Gwがオンになっている時間であるオン時間に基づいて、電流検出時刻間のw相の電圧vwの値を算出する。
図18は、実施の形態3にかかる検出時刻間電圧演算部の構成例を示す図である。図18に示すように、検出時刻間電圧演算部14は、オン時間算出部41と、電圧算出部42とを備える。オン時間算出部41は、電流検出時刻間において複数のゲートパルス信号Gu,Gv,Gwの各々がオンになっている時間であるオン時間を算出する。電圧算出部42は、母線電圧Vdcの値と、オン時間算出部41によって算出されたオン時間と、時刻差算出部13によって算出された時刻差Tbとに基づいて、3つの相電圧vub,vvb,vwbの値を算出する。母線電圧Vdcは、低電位側の直流母線61と高電位側の直流母線61との間の電圧である母線電圧であり、母線電圧Vdcの値は、母線電圧Vdcの瞬時値である。
図19は、実施の形態3にかかる検出時刻間電圧演算部による電流検出時刻間の3つの相電圧の算出方法を説明するための図である。図19に示す例では、最初の相電流判定周期で2相目の電流の値を判定するために用いられた母線電流ibusの検出時刻である時刻t5が最初の電流検出時刻として特定される。また、次の相電流判定周期で同じ2相目の電流の値を判定するために用いられた母線電流ibusの検出時刻である時刻t15が次の電流検出時刻として特定される。したがって、図19に示す例では、電流検出時刻間の時刻差Tbは、Tb=t15-t5で求められる。なお、図19では、各ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwは、パルスシフト処理部22によるパルスシフト処理が行われていない。
検出時刻間電圧演算部14は、下記式(28)の演算によって、電流検出時刻間のu相電圧vubの値を算出することができる。下記式(28)において、「tuon1」は電流検出時刻間の前半でu相のゲートパルス信号Guのオン時間であり、「tuon2」は電流検出時刻間の後半でu相のゲートパルス信号Guのオン時間である。また、「Vdc」は母線電圧であり、不図示の母線電圧検出手段により検出される。なお、母線電圧が一定である場合、母線電圧検出手段を用いなくてもよい。
同様に、検出時刻間電圧演算部14は、下記式(29)および式(30)の演算によって、電流検出時刻間のv相電圧vvbの値および電流検出時刻間のw相電圧vwbの値を算出することができる。「tvon1」は電流検出時刻間の前半でv相のゲートパルス信号Gvがオンとなっている時間であり、「tvon2」は電流検出時刻間の後半でv相のゲートパルス信号Gvがオンとなっている時間である。また、「twon1」は電流検出時刻間の前半でw相のゲートパルス信号Gwがオンとなっている時間であり、「twon2」は電流検出時刻間の後半でw相のゲートパルス信号Gwがオンとなっている時間である。
相電流判定部12で用いられる母線電流ibusの検出時刻は変動することから、電流検出時刻間の時刻差Tbは、ほとんどの場合、キャリア波Scの周期と一致しない。そのため、電流検出時刻間のu相電圧vubの値は、ほとんどの場合、電圧指令vu
*と一致しない。同様の理由で、v相電圧vvbの値も、ほとんどの場合、電圧指令vv
*と一致せず、w相電圧vwbの値も、ほとんどの場合、電圧指令vw
*と一致しない。したがって、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*を速度推定および位置推定に用いた場合、電圧誤差によって速度推定および位置推定に誤差が生じる。
相電流判定部12による3つの相電流iu,iv,iwの判定処理がキャリア波Scの1周期毎に1度行われる場合、電流検出時刻間の時刻差Tbは、キャリア周期Tcに対し、0.5×Tc<Tb<1.5×Tcの範囲で変動する。この場合、電圧誤差の変動が大きく、速度推定および位置推定に生じる誤差の変動も大きくなる。
推定部15Bは、検出時刻間電圧演算部14によって算出された電流検出時刻間の3つの相電圧vub,vvb,vwbの値を用いて速度推定および位置推定を行う。そのため、推定部15Bは、推定精度が高い速度推定および位置推定を行うことができる。
推定部15Bは、検出時刻間電圧演算部14によって算出された電流検出時刻間の3つの相電圧vub,vvb,vwbを静止座標系の電圧vα,vβへ座標変換する。すなわち、推定部15Bは、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に代えて電流検出時刻間の3つの相電圧vub,vvb,vwbを座標変換して得られる静止座標系の電圧vα,vβを用いる点で、推定部15,15Aと異なる。
推定部15Bが適応オブザーバのように状態量の推定誤差から速度を算出するアルゴリズムの場合、推定部15Bは、状態量の推定値と真値の差分を算出して誤差を測定する。図16に示す適応オブザーバでは、減算器72は推定電流ベクトルと電流ベクトルとの差分を算出する。推定電流ベクトルと電流ベクトルとの差分を算出する処理において、推定電流ベクトルと電流ベクトルとに時刻のずれがあると、推定電流ベクトルと電流ベクトルとの差分の算出結果を精度よく行えない場合がある。推定部15Bの電流推定器71は、上述したように、電流検出時刻間の3つの相電圧vub,vvb,vwbの値を用いることで、電流検出時刻の推定電流ベクトルを精度よく求めることができる。
ここで、検出時刻間電圧演算部14による電流検出時刻間の3つの相電圧vub,vvb,vwbの値の算出方法の一例について具体的に説明する。まず、電流検出時刻間における各ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのオン時間の検出方法の一例について説明する。
検出時刻間電圧演算部14のオン時間算出部41は、電流検出時刻間の期間を3つ以上の区間に分割する。オン時間算出部41は、分割した3つ以上の区間の各々においてゲートパルス信号Gu,Gv,Gwがオンになっている時間であるオン時間をゲートパルス信号Gu,Gv,Gw毎に求める。オン時間算出部41は、分割した3つ以上の区間の各々のオン時間をゲートパルス信号Gu,Gv,Gw毎に合算することで、電流検出時刻間におけるオン時間をゲートパルス信号Gu,Gv,Gw毎に算出する。これにより、オン時間算出部41は、電流検出時刻間における各ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのオン時間を精度よく算出することができる。
以下、電流検出時刻間におけるゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのオン時間のうちゲートパルス信号Guのオン時間を例に挙げて説明する。検出時刻間電圧演算部14のオン時間算出部41は、オン時間tuon1とオン時間tuon2とを各々算出し、オン時間tuon1とオン時間tuon2とを合算することで、ゲートパルス信号Guのオン時間を求める。
まず、オン時間tuon1の算出方法について説明する。ここでは、キャリア波Scの頂点の時刻から電流検出時刻への相対時間をTdet1,Tdet2と定義する。図19に示す例では、キャリア波Scの頂点は、キャリア波Scの谷である。キャリア波Scの谷の時刻は、時刻t7,t16である。
相対時間Tdet1は、電流検出時刻である時刻t5とキャリア波Scが頂点になる時刻t7までの時間である。相対時間Tdet2は、電流検出時刻である時刻t15とキャリア波Scが頂点になる時刻t16までの時間である。相電流判定部12は、キャリア波Scが頂点になるタイミングと電流検出時刻との相対的な時刻差を示す相対時間Tdet1,Tdet2を算出することができる。相電流判定部12は、算出した相対時間Tdet1,Tdet2を検出時刻間電圧演算部14へ通知する。
図19では、上述したパルスシフト処理を行っていない例を示しているが、ゲートパルス信号Guに対するパルスシフト処理が行われた場合、ゲートパルス信号Guのオンとオフとの切り替わりのタイミングが変わる。オン時間tuon1は、キャリア波Scの下り半周期と上り半周期に跨っているため、パルスシフト処理が行われた場合、オン時間tuon1のうちキャリア波Scの下り半周期の時間幅と上り半周期の時間幅とが変わる。そのため、オン時間算出部41は、オン時間tuon1を下り半周期と上り半周期に分けて算出する。
ここで、時刻t1から時刻t11までのキャリア周期を第1のキャリア周期とし、時刻t11から時刻t17でのキャリア周期を第2のキャリア周期とする。第1のキャリア周期の下り半周期において、2相目の電流であるw相の電流iwの値を判定するために用いられる母線電流ibusの値が検出される時刻t5の時点で、u相のゲートパルス信号Guはすでにオフからオンに切り替わっている。したがって、オン時間tuon1のうち下り半周期のオン時間は相対時間Tdet1と同じである。この場合、オン時間算出部41は、オン時間tuon1のうち下り半周期のオン時間が相対時間Tdet1と同じ時間であると判定する。
仮に、時刻t5においてu相のゲートパルス信号Guがオフからオンへ切り替わっていない場合、オン時間tuon1のうち下り半周期のオン時間は、u相のゲートパルス信号Guから求めることができる。例えば、オン時間算出部41は、u相のゲートパルス信号Guがオフからオンへ切り替わる時刻からキャリア波Scの頂点の時刻t7までの時間を、オン時間tuon1のうち下り半周期のオン時間として算出することができる。
オン時間算出部41は、オン時間tuon1のうち上り半周期のオン時間を、u相のゲートパルス信号Guから算出する。オン時間算出部41は、キャリア波Scの頂点の時刻t7からu相のゲートパルス信号Guがオンからオフへ切り替わる時刻までの時間を、オン時間tuon1のうち上り半周期のオン時間として算出することができる。
次に、オン時間tuon2の算出方法について説明する。オン時間算出部41は、第2のキャリア周期の下り半周期におけるu相のゲートパルス信号Guのオン時間を算出し、算出した時間から相対時間Tdet2を減算することによって、オン時間tuon2を得ることができる。例えば、オン時間算出部41は、第2のキャリア周期において、u相のゲートパルス信号Guがオフからオンへ切り替わる時刻t12からキャリア波Scの頂点の時刻t16までの時間を算出する。オン時間算出部41は、時刻t12から時刻t16までの時間から相対時間Tdet2を減算することによって、オン時間tuon2を得る。但し、オン時間tuon2の最小値は零であるため、オン時間算出部41は、計算結果が負になる場合は強制的にオン時間tuon2を零にする。
相電流判定部12は、相対時間Tdet1,Tdet2に基づいて、電流検出時刻間の時刻差Tbを算出することもできる。電流検出時刻の時刻差Tbの変動分ΔT(t)は、相対時間Tdet1と相対時間Tdet2との差である。また、電流検出時刻の時刻差Tbは、キャリア周期Tcに変動分ΔT(t)を加えたものである。相電流判定部12は、下記式(31)の演算によって、電流検出時刻間の時刻差Tbを算出することができる。
このように、実施の形態3にかかる制御装置5Bは、電流検出時刻の絶対時間を検出することなく、相対時間Tdet1,Tdet2に基づいて、電流検出時刻間の時刻差Tbと電流検出時刻間の3つの相電圧vub,vvb,vwbの値とを算出することができる。
なお、オン時間算出部41は、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwに代えて、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に基づいて、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのオン時間を算出することもできる。この場合、オン時間算出部41は、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の大きさからゲートパルス信号Gu,Gv,Gwがオフからオンへ切り替わる時刻を算出する。また、中間相のゲートパルス信号Gがオフからオンへ切り替わってから時間TAが経過するまでの時間を算出する。そして、オン時間算出部41は、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwがオフからオンへ切り替わる時刻と、中間相のゲートパルス信号Gがオフからオンへ切り替わってから時間TAが経過するまでの時間とに基づいて、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのオン時間を算出することができる。
このように、検出時刻間電圧演算部14のオン時間算出部41は、電流検出時刻間の期間を3つの区間に分割し、分割した3つの区間の各々においてゲートパルス信号Gのオン時間を求める。オン時間算出部41は、分割した3つの区間の各々のオン時間を合算することで電流検出時刻間におけるゲートパルス信号Gのオン時間を算出する。上述した例では、3つの区間は、最初に電流検出が行われる下り半周期と、電流検出が行われない上り半周期と、次に電流検出が行われる下り半周期である。検出時刻間電圧演算部14のオン時間算出部41は、電流検出時刻間におけるゲートパルス信号Gのオン時間を電流検出時刻間の時刻差Tbで除算することで、電流検出時刻間におけるゲートパルス信号Gのデューティ比を算出する。検出時刻間電圧演算部14の電圧算出部42は、電流検出時刻間におけるゲートパルス信号Gのデューティ比から電流検出時刻間における電圧を算出する。
検出時刻間電圧演算部14は、相電流判定部12による相電流の検出が行われる周期がキャリア波Scの周期の1.5倍以上の場合でも、電流検出時刻間を4つ以上の区間に分割し、場合分けして計算することで、電流検出時刻間の電圧を算出することができる。
また、上述した例では、検出時刻間電圧演算部14は、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwがオンになっている期間を算出するが、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwがオフになっている期間を算出することもできる。キャリア波Scの下り半周期および上り半周期の長さは既知である。したがって、電流検出時刻間においてゲートパルス信号Gu,Gv,Gwがオフになっている期間を算出することで、間接的に、電流検出時刻間においてゲートパルス信号Gu,Gv,Gwがオンになっている時間を求めることができる。
上述したように、電流検出時刻間の時刻差Tbは、ほとんどの場合、キャリア周期Tcと一致せず、また、交流電動機1の回転が高速であるほど、変動が大きい。また、図8および図9を用いて説明したように、中間相の波形は3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の基本周波数に対して3n次の周波数成分を含んでいる。nは1以上の整数である。そのため、交流電動機1が高速で回転している場合、電流検出時刻間の時刻差Tbとキャリア周期Tcとのズレは、電気角3fの周期で顕著になる。電気角3fは、交流電動機1の電気角周波数の3倍の周波数である。
図20は、実施の形態3にかかる電流検出時刻間の時刻差を固定値とした場合の速度推定の結果の一例を示す図である。図21は、図20に示す速度推定の結果をFFT解析した結果を示す図である。図20および図21では、脈動負荷の周波数は交流電動機1の回転軸の回転周波数と等しく、交流電動機1の極対数は3である。図20において、縦軸は交流電動機1の回転速度ωeであり、横軸は時刻である。また、図21において、縦軸は交流電動機1の回転速度ωeであり、横軸は周波数である。以下、交流電動機1の相電圧または相電流の周波数である電気的な周波数を「fe」と記載し、交流電動機1の回転軸の回転周波数である機械的な周波数を「fm」と記載する。なお、ここで、回転速度ωeと電気的な周波数feとの関係は、ωe=2π・feで表される。πは円周率である。また、交流電動機1の極対数を「Pm」と表したとき、電気的な周波数feと機械的な周波数fmとの関係は、fe=Pm・fmで表される。
図20に示すように、電流検出時刻間の時刻差Tbを固定値とした場合、速度真値に比べて推定速度の波形は、高周波の振動成分が大きい。図21に示すように、図20に示す推定速度をFFT解析すると、振動の主要な成分は交流電動機1の電気的な周波数feの3倍の周波数成分である。1シャント電流検出を用いた場合、電気的な周波数feの3倍の周波数で電流検出時刻が変化するが、電流検出時刻間の時刻差Tbの変動を無視しているために、図20に示すように、推定速度には、大きな誤差が生じている。また、図20に示すように、脈動負荷の影響によって速度真値は、機械的な周波数fmの1倍の周波数で振動しているが、推定速度の波形ではこの振動を覆い隠すように機械的な周波数fmの1.4倍の周波数にピークがある。そのため、機械的な周波数fmの1倍の脈動がほとんど見えなくなっている。
上述したように交流電動機1の極対数は3であるが、電気3f成分および機械9f成分の側波帯として、機械7.6f成分と機械10.4f成分のピークが立っている。電気3f成分は、電気的な周波数feの3倍の周波数成分であり、機械9f成分は、機械的な周波数fmの9倍の周波数成分である。また、機械7.6f成分は、機械的な周波数fmの7.6倍の周波数成分であり、機械10.4f成分は、機械的な周波数fmの10.4倍の周波数成分である。
このように、電流検出時刻間の時刻差Tbを固定値とした場合の速度推定では、1シャント電流検出方式による電流検出時刻の変化と電流検出時刻の変化に付随する電圧誤差とによって速度真値に含まれない成分の速度推定誤差が生じる。
図22は、実施の形態3にかかる推定部による速度推定の結果の一例を示す図である。図23は、図22に示す速度推定の結果をFFT解析した結果を示す図である。図22および図23では、脈動負荷の周波数は機械的な周波数fmと等しく、交流電動機1の極対数は3である。図22において、縦軸は交流電動機1の回転速度ωeであり、横軸は時刻である。また、図23において、縦軸は交流電動機1の回転速度ωeであり、横軸は周波数である。
実施の形態3にかかる推定部15Bは、相電流判定部12によって特定される電流検出時刻間の時刻差Tbと、検出時刻間電圧演算部14によって算出される電流検出時刻間の相電圧vub,vvb,vwbの値とに基づいて、速度推定を行う。これにより、推定部15Bは、図22および図23に示すように、速度推定の誤差を大幅に低減することができる。同様に、実施の形態3にかかる推定部15Bは、相電流判定部12によって検出される電流検出時刻間の時刻差Tbと、検出時刻間電圧演算部14によって特定される電流検出時刻間の相電圧vub,vvb,vwbの値とに基づいて、位置推定を行う。これにより、推定部15Bは、位置推定の誤差を大幅に低減することができる。
以上のように、実施の形態3にかかる推定装置9Bは、電流検出時刻間で電圧形インバータ4から交流電動機1に印加される相電圧vub,vvb,vwbの値を電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に基づいて算出する検出時刻間電圧演算部14を備える。検出時刻間電圧演算部14は、相電圧算出部の一例である。推定部15Bは、相電流iu,iv,iwの値と、時刻差Tbと、検出時刻間電圧演算部14によって算出される相電圧vub,vvb,vwbの値とに基づいて、推定位置θe^と推定速度ωe^とを算出する。
また、検出時刻間電圧演算部14は、オン時間算出部41と、電圧算出部42とを備える。オン時間算出部41は、電流検出時刻間において複数のゲートパルス信号Gu,Gv,Gwの各々がオンになっている時間であるオン時間を算出する。電圧算出部42は、母線電圧Vdcの値と、オン時間算出部41によって算出されたオン時間と、時刻差算出部13によって算出された時刻差Tbとに基づいて、相電圧vub,vvb,vwbの値を算出する。これにより、検出時刻間電圧演算部14は、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwから電流検出時刻間における相電圧vub,vvb,vwbの値を算出することができる。
また、オン時間算出部41は、電流検出時刻間の期間を3つ以上の区間に分割し、3つ以上の区間の各々において複数のゲートパルス信号Gu,Gv,Gwの各々がオンになっている時間であるオン時間を求める。オン時間算出部41は、3つ以上の区間の各々のオン時間をゲートパルス信号G毎に合算することで、電流検出時刻間における各ゲートパルス信号Gのオン時間を算出する。これにより、検出時刻間電圧演算部14は、電流検出時刻間における各ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwのオン時間を精度よく算出することができる。
実施の形態4.
実施の形態4では、交流電動機の駆動装置のうち上述した推定装置および電圧形インバータを除く部分の構成について具体的に説明する。以下においては、実施の形態3と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態3の電動機システム100Bと異なる点を中心に説明する。
実施の形態4では、交流電動機の駆動装置のうち上述した推定装置および電圧形インバータを除く部分の構成について具体的に説明する。以下においては、実施の形態3と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態3の電動機システム100Bと異なる点を中心に説明する。
図24は、本発明の実施の形態4にかかる電動機システムの構成例を示す図である。図24に示すように、電動機システム100Cは、交流電動機1と、駆動装置2Cとを備える。駆動装置2Cは、電圧形インバータ4と、制御装置5Cを備える。制御装置5Cは、推定装置9Bと、速度制御部30と、座標変換部31,33と、dq軸電流制御部32と、零ベクトル変調部34と、ゲートパルス生成部35とを備える。なお、制御装置5Cは、推定装置9Bに代えて、推定装置9または推定装置9Aを備える構成であってもよい。なお、制御装置5Cは、dq座標系に基づくセンサレスベクトル制御であるとするが、他の制御法や座標系を用いても構わない。
速度制御部30は、推定装置9Bによって算出された推定速度ωe^が速度指令ω*と一致するように、d軸電流指令id
*およびq軸電流指令iq
*を生成する。速度制御部30は、PID(Proportional Integral Differential)制御器などのフィードバック制御器で構成されるが、フィードバック制御器以外の制御器で構成されてもよい。また、速度制御部30は、PID制御器と並列にフィードフォワード制御器を有する構成であってもよく、これにより、制御応答を早めることができる。また、速度制御部30は、繰り返し制御などの振動抑制制御器をPID制御器と併用して特定周波数の外乱応答を高める構成であってもよい。
q軸電流指令iq
*は、推定速度ωe^と速度指令ω*との偏差がゼロに収束するよう決定されるが、d軸電流指令id
*の決定方法は、交流電動機1の種類によって種々の変更が可能である。例えば、交流電動機1が表面型永久磁石同期電動機である場合、速度制御部30は、電圧が飽和していない状況下ではd軸電流指令id
*をゼロにする制御方式である「id=0制御」を行うことができる。「id=0制御」によって、銅損を低減することができる。また、交流電動機1が埋込型永久磁石同期電動機である場合、リラクタンストルクを併用できるため、速度制御部30は、「最大トルク/電流制御(Maximum Torque Per Ampere control)」を行うこともできる。「最大トルク/電流制御」は、マイナス方向のd軸電流指令id
*を与える制御方式であり、銅損を低減することができる。また、速度制御部30は、より大きなマイナス方向のd軸電流指令id
*を与える制御方式である弱め磁束制御を行うこともできる。弱め磁束制御を行うことによって、電圧飽和時には、交流電動機1が表面型永久磁石同期電動機と埋込型永久磁石同期電動機のどちらの場合であっても、銅損の増加と引き換えに機械出力を増大させることができる。
座標変換部31は、推定装置9Bによって算出された推定位置θe^に基づいて、座標変換によって相電流iu,iv,iwをdq座標系の電流であるd軸電流idおよびq軸電流iqへ変換する。dq軸電流制御部32は、d軸電流idがd軸電流指令id
*と一致するようにd軸電圧指令vd
*を調整し、q軸電流iqがq軸電流指令iq
*と一致するようにq軸電圧指令vq
*を調整する。dq軸電流制御部32は、例えば、d軸電流idをフィードバック制御する不図示のPID(Proportional Integral Differential)制御器と、q軸電流iqをフィードバック制御する不図示のPID制御器と、dq軸の干渉成分をフィードフォワード補償する不図示の非干渉化制御とを備える。
このように、dq軸電流制御部32は、dq座標系において、d軸電流idとq軸電流iqとを個別に制御しており、これにより、良好な電流制御性能を実現している。なお、速度制御部30およびdq軸電流制御部32には微積分の演算が含まれるため、dq軸電流制御部32は、電流検出時刻間の時刻差Tbを使って、微積分の演算誤差を防いでいる。
座標変換部33は、推定装置9Bによって算出された推定位置θe^に基づいて、d軸電圧指令vd
*およびq軸電圧指令vq
*を電圧指令vu
*,vv
*,vw
*へ座標変換する。零ベクトル変調部34は、座標変換部33によって座標変換された電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に対して零ベクトル変調を行う。ゲートパルス生成部35は、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に基づいて、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwを生成し、生成したゲートパルス信号Gu,Gv,Gwを電圧形インバータ4へ出力する。ゲートパルス生成部35は、上述したようにパルスシフト処理部22を有しているため、電圧指令vu
*,vv
*,vw
*の値にかかわらず相電流判定部12によって3相電流の値を判定することができる。そのため、推定装置9Bは、位置推定および速度推定の精度をさらに向上させることができ、制御性能を一層高めることができる。
推定装置9Bの推定部15Bは、上述したように、1シャント電流検出方式による電流検出時刻の時刻差Tbと電流検出時刻の時刻差Tbに付随して変化する電流検出時刻間の電圧とに基づいて速度推定および位置推定を行う。すなわち、推定部15Bは、相電流判定部12によって検出される電流検出時刻間の時刻差Tbと、検出時刻間電圧演算部14によって算出される電流検出時刻間の電圧とに基づいて、速度推定および位置推定を行う。これにより、推定装置9Bは、速度推定および位置推定の誤差を大幅に低減することができる。
図25は、実施の形態4にかかる制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図25に示すように、実施の形態4にかかる制御装置5Cは、母線電流検出部11と、処理回路80とを備える。処理回路80は、プロセッサ81と、メモリ82と、入力回路83と、AD(Analog to Digital)変換回路84と、DA(Digital to Analog)変換回路85とを備える。プロセッサ81は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processer)、およびシステムLSI(Large Scale Integration)のうち1つ以上を含む。メモリ82は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、およびEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)のうち1つ以上を含む。また、メモリ82は、コンピュータが読み取り可能なプログラムが記録された記録媒体を含む。かかる記録媒体は、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルメモリ、光ディスク、コンパクトディスク、およびDVD(Digital Versatile Disc)のうち1つ以上を含む。
プロセッサ81は、メモリ82の記録媒体に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、相電流判定部12、時刻差算出部13、検出時刻間電圧演算部14、および推定部15Bの機能を実行する。入力回路83は、外部からの速度指令ω*または3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*をプロセッサ81へ通知する。プロセッサ81は、外部からの速度指令ω*または3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*に基づいて磁極位置θeおよび回転速度ωeを推定する処理を行う。AD変換回路84は、母線電流検出部11で検出される母線電流ibusの値をアナログ信号からデジタル信号へ変換する。プロセッサ81は、AD変換回路84からデジタル化された母線電流ibusの値を取得し、取得した母線電流ibusの値に基づく処理を行う。また、プロセッサ81は、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*を変調してゲートパルス信号Gu,Gv,Gwを生成し、生成したゲートパルス信号Gu,Gv,GwをDA変換回路85へ出力する。DA変換回路85は、ゲートパルス信号Gu,Gv,Gwをデジタル信号からアナログ信号へ変換し、アナログ信号へ変換したゲートパルス信号Gu,Gv,Gwをゲートドライバ7へ出力する。なお、ゲートドライバ7に変調手段が設けられている場合、プロセッサ81は、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*をゲートドライバ7へ送信することができる。この場合、3相の電圧指令vu
*,vv
*,vw
*は、デジタル値であってもアナログ値であってもよい。
プロセッサ81、メモリ82、入力回路83、AD変換回路84、およびDA変換回路85の間でデータの送受信が行われる。データは、デジタル信号で送受信されるが、アナログ信号で送受信されてもよい。また、データの送受信方法は、パラレル通信でもシリアル通信でもよい。また、アナログ信号とデジタル信号は不図示の変換器によって適宜変換しても構わない。
なお、実施の形態1,2の推定装置9,9Aも、実施の形態4の推定装置9Bと同様に、図25に示すハードウェア構成によって実現できる。例えば、プロセッサ81は、メモリ82のうち記録媒体に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、相電流判定部12、時刻差算出部13、および推定部15の機能を実行することができる。また、プロセッサ81は、メモリ82のうち記録媒体に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、相電流判定部12、時刻差算出部13、および推定部15Aの機能を実行することができる。
また、プロセッサ81は、推定装置9,9A,9Bの機能に加え、速度制御部30、座標変換部31,33、dq軸電流制御部32、零ベクトル変調部34、およびゲートパルス生成部35の機能の一部または全部を実行することもできる。この場合、プロセッサ81は、メモリ82に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、速度制御部30、座標変換部31,33、dq軸電流制御部32、零ベクトル変調部34、およびゲートパルス生成部35の機能を実行する。
以上のように、実施の形態4にかかる駆動装置2Cでは、磁極位置θeおよび回転速度ωeの推定精度が高い推定装置9Bを用いている。そのため、駆動装置2Cでは、交流電動機1が高速に回転している場合または零ベクトル変調が行われている場合において、交流電動機1に対する制御の性能が向上する。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
1 交流電動機、2,2A,2B,2C 駆動装置、3 直流電源、4 電圧形インバータ、5,5A,5B,5C 制御装置、6 主回路、7 ゲートドライバ、9,9A,9B 推定装置、11 母線電流検出部、12 相電流判定部、13 時刻差算出部、14 検出時刻間電圧演算部、15,15A,15B 推定部、21 比較部、22 パルスシフト処理部、30 速度制御部、31,33 座標変換部、32 dq軸電流制御部、34 零ベクトル変調部、35 ゲートパルス生成部、41 オン時間算出部、42 電圧算出部、51 モデル偏差演算部、52 角速度推定器、53 一次角周波数演算器、54 積分器、61 直流母線、71 電流推定器、72 減算器、73 偏差演算器、100,100A,100B,100C 電動機システム、G,Gu,Gv,Gw,Gup,Gun,Gvp,Gvn,Gwp,Gwn ゲートパルス信号、ibus 母線電流、iu,iv,iw 相電流、Sc キャリア波、Tb 時刻差、tuon1,tuon2 オン時間、vub,vvb,vwb 相電圧、vu
*,vv
*,vw
* 電圧指令、θe 磁極位置、θe^ 推定位置、ωe 回転速度、ωe^ 推定速度。
Claims (9)
- 電圧指令に基づいて生成される複数のゲートパルス信号によって駆動される電圧形インバータの直流母線に流れる電流である母線電流の値を検出する母線電流検出部と、
前記母線電流検出部によって検出される母線電流の値と、前記複数のゲートパルス信号の状態とに基づいて、前記電圧形インバータから交流電動機へ供給される複数の相電流の値を判定する判定処理を行う相電流判定部と、
前記相電流判定部による前回の判定処理で用いられた前記母線電流の検出時刻として特定される第1の電流検出時刻と前記相電流判定部による今回の判定処理で用いられた前記母線電流の検出時刻として特定される第2の電流検出時刻との時刻差を算出する時刻差算出部と、
前記相電流判定部によって判定された前記複数の相電流の値と、前記時刻差算出部によって算出された前記時刻差とに基づいて、前記交流電動機の位置および速度のうち少なくとも一方を推定する推定部と、を備える
ことを特徴とする推定装置。 - 前記第1の電流検出時刻と前記第2の電流検出時刻との間に前記電圧形インバータから前記交流電動機に印加される相電圧の値を前記電圧指令に基づいて算出する相電圧算出部を備え、
前記推定部は、
前記複数の相電流の値と、前記時刻差と、前記相電圧算出部によって算出された前記相電圧の値とに基づいて、前記交流電動機の位置および速度のうち少なくとも一方を推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の推定装置。 - 前記相電圧算出部は、
前記第1の電流検出時刻と前記第2の電流検出時刻との間において前記複数のゲートパルス信号の各々がオンになっている時間であるオン時間を算出するオン時間算出部と、
前記直流母線の電圧の値と、前記オン時間算出部によって算出された前記オン時間と、前記時刻差算出部によって算出された前記時刻差とに基づいて、前記第1の電流検出時刻と前記第2の電流検出時刻との間の前記相電圧の値を算出する電圧算出部と、を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の推定装置。 - 前記オン時間算出部は、
前記第1の電流検出時刻と前記第2の電流検出時刻との間の期間を3つ以上の区間に分割し、前記3つ以上の区間の各々において前記複数のゲートパルス信号の各々がオンになっている時間であるオン時間を求め、前記3つ以上の区間の各々の前記オン時間を合算することで前記第1の電流検出時刻と前記第2の電流検出時刻との間における前記オン時間を算出する
ことを特徴とする請求項3に記載の推定装置。 - 前記ゲートパルス信号は、
前記電圧指令とキャリア波との比較に基づいて生成され、
前記時刻差は、前記キャリア波の半周期の期間よりも長く、前記キャリア波の1.5倍の周期よりも短い
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の推定装置。 - 前記推定部は、
前記交流電動機の状態量を推定する状態量推定部と、
前記状態量推定部によって推定された前記状態量の誤差を算出する誤差算出部と、
前記誤差算出部によって算出された前記状態量の誤差に基づいて、前記交流電動機の速度を推定する速度推定部と、を備え、
前記状態量推定部および前記速度推定部のうち少なくとも一方は、
前記時刻差に基づく演算を行う
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の推定装置。 - 請求項1から6のいずれか1つに記載の推定装置を備える
ことを特徴とする交流電動機の駆動装置。 - 前記電圧形インバータへ入力される前記複数のゲートパルス信号のうち少なくとも1つを時間的にずらすパルスシフト処理部を備え、
前記パルスシフト処理部は、
前記複数のゲートパルス信号のうち2つのゲートパルス信号の変化の間隔が予め設定された時間未満である場合に、前記2つのゲートパルス信号のうち少なくとも1つを時間的にずらして前記2つのゲートパルス信号の変化の間隔を前記予め設定された時間以上にする
ことを特徴とする請求項7に記載の交流電動機の駆動装置。 - 前記電圧指令に乱数値を加えることによって、前記電圧形インバータから出力される2種類の零電圧ベクトルの出力比率を不規則に変化させる零ベクトル変調部を備える
ことを特徴とする請求項7または8に記載の交流電動機の駆動装置。
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