本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本明細書に添付した図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりしている場合がある。本明細書等において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む範囲であることを意味する。本明細書等において、「フィルム」、「シート」、「板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。例えば、「板」は、「シート」、「フィルム」と一般に呼ばれ得るような部材をも含む概念である。
〔インプリントモールド用基板〕
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す平面図であり、図2は、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す分解斜視図であり、図3は、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す切断端面図であり、図4は、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板における支持部近傍の概略構成を示す部分拡大切断端面図であり、図5は、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板の薄板部近傍の概略構成を示す部分拡大平面図である。
図1~図5に示すように、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1は、インプリントモールドの微細凹凸パターンが形成され得る第1面2A及び第1面2Aに対向する第2面2Bを有する薄板部2と、薄板部2の第2面2Bを支持する支持面3Aを有する中空筒状の支持部3と、薄板部2及び支持部3の間に介在し、薄板部2及び支持部3を連結する接合部4とを備える。
薄板部2は、中空筒状の支持部3の開口一端を第2面2Bで閉塞するようにして、接合部4を介して支持部3と連結されている。
薄板部2としては、例えば、石英ガラス基板、ソーダガラス基板、蛍石基板、フッ化カルシウム基板、フッ化マグネシウム基板、アクリルガラス基板、ホウケイ酸ガラス基板等のガラス基板;ポリカーボネート基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板、その他ポリオレフィン基板等の樹脂基板等からなる単層基板や、上記基板のうちから任意に選択された2以上を積層してなる積層基板等の透明基板等を用いることができる。
なお、第1の実施形態において「透明」とは、インプリント樹脂としての光硬化性樹脂を硬化させることが可能な波長の光、例えば波長150~400nmの光線を対象物(本実施形態においては薄板部2)の片側(本実施形態においては薄板部2の第1面2A側又は第2面2B側)から照射した際、照射された側とは反対側へ光が到達することを意味する。透明であるのは光硬化性樹脂を硬化させることが目的であるのだから、好適な基準を透過率で示すならば60%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは96%以上である。
第1の実施形態において、薄板部2の形状(平面視形状)は略矩形状であるが、このような形状に限定されるものではなく、インプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドの用途等に応じた任意の形状、例えば、略円形状等であってもよい。また、薄板部2の大きさ(平面視の大きさ)も、特に限定されるものではなく、インプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドの用途等に応じた大きさに設定され得る。
さらに、薄板部2の厚さT2は、薄板部2の材質、インプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドの用途等に応じて適宜設定され得るが、当該薄板部2が石英ガラスにより構成される場合、0.3~1.5mm程度に設定され得る。第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10(図21参照)は、支持部3の中空部の開口一端が薄板部2により閉塞されることで形成される凹部6を有することで、インプリント処理時、特にインプリントモールド10の剥離時において、薄板部2のうちの微細凹凸パターンが形成されている領域を少なくとも湾曲させることができ、その結果、インプリントモールドをインプリント樹脂に押圧するときには、インプリント樹脂内に気体(空気)が残存することによるパターン欠陥を抑制し、インプリントモールドの剥離時には、インプリント樹脂からの剥離を容易にするという効果を奏する。そのため、薄板部2の厚さT2が薄すぎたり、厚すぎたりすると、インプリントモールド10の剥離時に意図したとおりに湾曲させるのが困難となるおそれがある。また、薄板部2の厚さT2が薄すぎると、インプリントモールド10の強度が低下するおそれもある。
第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1において、薄板部2の第1面2Aに対向する第2面2Bの外縁部近傍には、接合部4を介して支持部3が連結されているが、薄板部2の第2面2Bのうち、少なくとも接合部4に当接する領域である外縁部近傍の表面には、粗面化、密着層形成等、接合部4との密着性を向上させる処理がなされていてもよい。第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10においては、長期間に亘って使用された後、薄板部2と支持部3とを分離することで、支持部3が再利用され得る。この薄板部2と支持部3とを分離する際に、接合部4が支持部3側に残存してしまうと、当該支持部3を再利用するにあたって、支持部3から接合部4を除去しなければならない。しかしながら、薄板部2の第2面2Bにおける上記外縁部近傍の表面に接合部4との密着性を向上させる処理が施されていることで、薄板部2と支持部3とを分離するときに、接合部4を薄板部2側に残存させることができ、支持部3の再利用がより容易になる。
第1の実施形態において、薄板部2は、第1面2A側に凸構造部21、いわゆるメサ構造を有するものであるが、この態様に限定されるものではなく、当該凸構造部21(メサ構造)を有しない平板であってもよい。また、薄板部2の第1面2Aには、Cr、Crの窒化物等のクロム系材料;シリコン、シリコンを含む合金、シリコン酸化物、シリコン窒化物等のシリコン系材料等により構成されるハードマスク層(図示省略)が形成されていてもよい。
支持部3は、外形が平面視略方形状の中空角筒状を有しており、平面視における略中心に略円形の中空部が形成されてなる。支持部3の開口一端を薄板部2(第2面2B)で閉塞するように、支持部3の支持面3Aが接合部4を介して薄板部2の第2面2Bに連結されていることで、有底略円筒状の凹部6が形成される。
支持部3の支持面3Aは、薄板部2の第1面2A側からの平面視において、薄板部2の外縁よりも外側にはみ出して露出する第1領域31Aと、第1領域31Aの内側に位置し、薄板部2の第2面2Bと接合部4を介して連結される環状の第2領域32Aとを含む。
平面視における支持部3の外形の大きさは、薄板部2よりも大きく構成されている。これにより、支持部3は、薄板部2の外縁よりも外側にはみ出して露出する第1領域31Aを有することになる。支持部3が薄板部2よりも大きいことで、例えば支持部3と薄板部2とを分離する際、支持部3を保持可能な領域として、大きさの差分が生じた箇所を保持することが可能となる。また、支持部3と薄板部2との接合時における両者の位置ずれも許容される。
平面視における中空部(薄板部2により閉塞される開口一端)の大きさは、少なくとも、薄板部2の第1面2A上に微細凹凸パターンが形成される領域(凸構造部21の上面の領域)を包含し得る大きさである。平面視において、中空部が微細凹凸パターンの形成される領域(凸構造部21の上面の領域)を内包可能な大きさであることで、インプリントモールド用基板1から作製されたインプリントモールド10を用いたインプリント処理時、微細凹凸パターンが形成されている領域を少なくとも湾曲させることができ、その結果、インプリントモールドをインプリント樹脂に押圧するときには、インプリント樹脂内に気体(空気)が残存することによるパターン欠陥を抑制し、インプリントモールドの剥離時には、インプリント樹脂からの剥離を容易にするという効果が発揮され得る。
支持部3の厚さT3は、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10の凹部6の深さに応じて適宜設定され得るが、例えば、3~10mm程度に設定され得る。
第1領域31Aの幅W31Aは、後述する貫通孔33を形成可能な程度の幅であればよく、例えば、20mm~60mm程度であればよい。第2領域32Aの幅W32Aは、接合部4を介して薄板部2と支持部3とを強固に接合可能な程度の幅であればよく、例えば、1mm~30mm程度であればよい。なお、第2領域32Aの幅W32Aは、凹部6を薄板部2の第1面2Aに投影した平面視(図1参照)において、凹部6の外壁に対する接線に直交する方向における最小の長さを意味するものとする。
支持部3には、薄板部2の外周を取り囲むように支持部3の厚さ方向(支持面3Aから対向面3B(又は対向面3Bから支持面3A)に向かう方向)に沿って貫通する(支持面3A及び対向面3Bの間を貫通する)複数の貫通孔33が形成されている。貫通孔33の第1開口部33Aは第1領域31Aに位置しており、第2開口部33Bは対向面3Bに位置している。なお、第1の実施形態において、支持部3には、少なくとも1つの貫通孔33が形成されていればよいが、複数の貫通孔33が形成されているのが好ましく、複数の貫通孔33が薄板部2の外縁の各辺に沿って、かつ薄板部2をほぼ均等に取り囲む(ほぼ一様に分布する)ように形成されているのがより好ましい。
図5に示すように、インプリントモールド用基板1の平面視において、すべての貫通孔33の第1開口部33Aの少なくとも一部が薄板部2により塞がれていなければよく、薄板部2の中心C2と支持部3の中心C3とを一致させ、薄板部2の中心C2及び支持部3の中心C3と貫通孔33の第1開口部33Aの中心C33とを通る仮想線分VLを引いたときに、当該仮想線分VL上における薄板部2の中心C2から薄板部2の外縁との交点P2までの長さL1が、仮想線分VL上における支持部3の中心C3から第2領域32Aの内縁(凹部6の外壁)との交点P3までの長さL2よりも長く、仮想線分VL上における支持部3の中心C3から貫通孔33の第1開口部33Aの縁部(薄板部2の中心C2(支持部3の中心C3)から見たときに最も近い縁部)との交点P33までの長さL3以下であればよい。
また、仮想線分VL上における薄板部2の外縁との交点P2から貫通孔33の第1開口部33Aの縁部との交点P33までの長さL4が、50μm以上であるのが好ましく、100μm~15mmであるのがより好ましい。当該長さL4が50μm未満であると、薄板部2の中心C2と支持部3の中心C3との位置ずれが生じると、少なくとも一部の貫通孔33の第1開口部33Aの一部が薄板部2によって塞がれてしまうおそれがある。
貫通孔33は、インプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10を用いたインプリント処理時に、インプリントモールド10と被転写基板との間にヘリウムガス等を供給するとともに、余剰のヘリウムガス等を回収するために用いられる。したがって、貫通孔33の数は特に限定されるものではなく、インプリントモールド10と被転写基板との間にヘリウムガス等を十分に供給可能な程度で適宜設定され得る。
第1の実施形態において、第1開口部33Aの外縁及び/又は第2開口部33Bの外縁に、面取り部331,332が設けられているのが好ましい(図4参照)。このような面取り部331,332が設けられていることで、第1開口部33Aや第2開口部33Bの外縁から異物が発生するのを抑制することができる。
貫通孔33の第1開口部33Aの開口径D33Aと第2開口部33Bの開口径D33Bとは、特に限定されるものではなく、実質的に同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
支持面3A側における貫通孔33の開口径D331Aと対向面3B側における貫通孔33の開口径D331Bとは、実質的に同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。それらが互いに異なっている場合、支持面3A側における貫通孔33の開口径D331Aが対向面3B側における貫通孔33の開口径D331Bよりも小さいのが好ましい。支持面3A側における貫通孔33の開口径D331Aが対向面3B側における貫通孔33の開口径D331Bよりも小さいことで、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1やそれから作製されるインプリントモールド10の洗浄時に、第1開口部33Aから貫通孔33に浸入した洗浄液等が、スピン乾燥時の遠心力により第2開口部33Bから効果的に排出されやすくなる。この場合において、第1開口部33A側から第2開口部33B側に向けて、貫通孔33の内径が徐々に大きくなるように変化しているのが、洗浄液等の排出容易性の観点から好ましい。
支持面3A側における貫通孔33の開口径D331Aと対向面3B側における貫通孔33の開口径D331Bとが実質的に同一であって、貫通孔33は支持部3の厚さ方向において実質的に一定の内径(開口径D331A,D331Bと実質的に同一の内径)を有していてもよい。支持部3の厚さ方向の途中における貫通孔33の内径が、支持面3A側における貫通孔33の開口径D331Aや対向面3B側における貫通孔33の開口径D331Bよりも小さかったり大きかったりすると、貫通孔33に浸入した洗浄液等が排出され難くなるおそれがある。なお、支持面3A側における貫通孔33の開口径D331Aが対向面3B側における貫通孔33の開口径D331Bよりも大きく、貫通孔33の内径は第2開口部33B側から第1開口部33A側に向けて徐々に大きくなっていてもよい。
また、貫通孔33の内径は、第1開口部33A側から第2開口部33B側に向けて徐々に大きくなっていてもよいが、この態様に限定されるものではなく、貫通孔33の内壁面が階段状に形成され、貫通孔33の内径が第1開口部33A側から第2開口部33B側に向けて段階的に大きくなっていてもよい。
支持面3A側における貫通孔33の開口径D331Aは、特に限定されるものではないが、例えば、0.1mm~5mm程度に設定され得る。また、対向面3B側における貫通孔33の内径D331Bも特に限定されるものではないが、例えば、0.1mm~7mm程度に設定され得る。
後述するように、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10は、インプリントモールド10を保持する保持面111を有するモールドホルダ110と、被転写基板200が載置される基板ステージ120と、モールドホルダ110の保持面111に形成され、インプリントモールド10及び被転写基板200の間にヘリウムガス等を供給するためのガス供給孔130とを備えるインプリント装置100(図21参照)において好適に用いられる。このガス供給孔130にインプリントモールド10の第2開口部33Bを位置合わせするようにしてモールドホルダ110にインプリントモールド1を保持させることで、貫通孔33を介してインプリントモールド10と被転写基板200との間にヘリウムガス等を供給することができる。
第1の実施形態において、貫通孔33の内壁面には、当該内壁面の全体を覆う保護膜が形成されていてもよい。保護膜としては、例えば、クロム、アルミニウム、タンタル、チタン、タングステン、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)及びゲルマニウム(Ge)等からなる膜、並びにこれらの金属の酸化膜及び窒化膜等が挙げられる。このような保護膜が形成されていることで、インプリントモールド10の製造過程において凸構造部21上に微細凹凸パターン11をドライエッチングにより形成する際に、貫通孔33の内壁面がエッチングされるのを抑制することができる。なお、保護膜は、例えば、スパッタリング法、蒸着法、CVD法、ALD法により貫通孔33の内壁面に形成され得る。なお、貫通孔33の内壁面に保護膜が形成されていないと、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1からインプリントモールド10を作製する際に、インプリントモールド用基板1をエッチングに付して微細凹凸パターン11を形成するが、そのときに貫通孔33の内壁面もエッチングに曝される。しかしながら、微細凹凸パターン11を形成するときにおける貫通孔33の内壁面のエッチング量は、非常に小さく(ナノメートルオーダー)、インプリントモールド10の機能、作用等に与える影響はない又は極めて小さいと考えられる。
支持部3を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、薄板部2を構成する材料と同一材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。支持部3が、薄板部2を構成する材料と異なる材料により構成される場合、当該支持部3を構成する材料としては、例えば、シリコン系材料、金属材料、石英ガラス、ソーダガラス、蛍石、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス材料;ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、その他ポリオレフィン類等の樹脂材料のほか、低膨張セラミックス等のセラミックス材料等が挙げられる。
接合部4は、薄板部2及び支持部3を接着可能であって、かつ薄板部2及び支持部3を分離可能な構成を有する。なお、第1の実施形態において、接合部4が薄板部2と支持部3との間にのみ存在している態様を例に挙げるが、インプリント処理に影響を及ぼさないのであれば、このような態様に限定されるものではない。例えば、接合部4は、薄板部2の第2面2Bの全面を覆っていてもよいし、中空部から露出する第2面2Bの一部を覆っていてもよい。このような態様のインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10を用いたインプリント処理において、インプリント樹脂として光硬化性樹脂を用いるのであれば、接合部4は、当該光硬化性樹脂を硬化させ得る光を透過可能に構成されていればよい。
このような接合部4として、薄板部2及び支持部3を接着可能であって、加熱等により、少なくとも支持部3に対する粘着力を低下させ得る樹脂材料(光硬化性粘着剤、ワックス系粘着剤等)を例示することができる。特に、接合部4を構成する材料として、薄板部2及び支持部3を常温で連結可能な光硬化性粘着剤を用いることで、連結時に薄板部2や支持部3に生じ得る内部応力を低減することができるため、薄板部2の主面2Aの平坦性に影響を与えにくくなる。
上記樹脂材料の粘着力(被着体である薄板部2及び支持部3に対する粘着力)は、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10をインプリント処理に使用しているときに、薄板部2と支持部3とが分離してしまわない程度であればよく、硬化させたインプリント樹脂(光硬化性樹脂)から薄板部2を垂直方向に剥離するのに要する力の2倍以上、好ましくは5倍以上の力に耐えられるものであればよい。例えば、接合部4が上記樹脂材料により構成され、薄板部2及び支持部3がともに石英により構成される場合、硬化させたインプリント樹脂(光硬化性樹脂)から薄板部2を垂直方向に剥離するのに要する力の最大値が20Nであったならば、硬化させたインプリント樹脂(光硬化性樹脂)と薄板部2との接触面積と同一面積で石英に接着させた上記樹脂材料を剥離するのに要する力の最大値が40N以上であるのが好ましい。ただし、実際のインプリント処理において、インプリントモールド10を剥離するときに薄板部2が湾曲することで、接合部4には、垂直方向の力と薄板部2の湾曲による水平方向の力との合力が加わるため、インプリント処理での繰り返し利用や、インプリント処理以外の不慮の外力による剥離を防ぐために、硬化させたインプリント樹脂(光硬化性樹脂)から薄板部2を垂直方向に剥離するのに要する力の5倍以上(100N以上)とすることが好ましい。
また、接合部4が上記樹脂材料により構成される場合、薄板部2の第2面2Bと接合部4との間及び/又は支持部3の第2領域32Aと接合部4との間に、さらに剥離層を有していてもよく、薄板部2の第2面2Bと接合部4との間及び支持部3の第2領域32Aと接合部4との間のそれぞれに第1剥離層51及び第2剥離層52のそれぞれを有しているのが好ましい(図6参照)。この場合において、接合部4と支持部3の第2領域32Aとの間に介在する第2剥離層52の剥離力と、接合部4と薄板部2の第2面2Bとの間に介在する第1剥離層51の剥離力とが、互いに異なるのが好ましく、接合部4と支持部3の第2領域32Aとの間に介在する第2剥離層52の剥離力が、接合部4と薄板部2の第2面2Bとの間に介在する第1剥離層51の剥離力よりも小さいのが特に好ましい。薄板部2と支持部3とを分離したときに、接合部4としての樹脂材料が支持部3側に残存すると、支持部3を再利用する場合に当該接合部4を除去する必要があるが、支持部3と接合部4との間に剥離層を有することで、接合部4としての樹脂材料が薄板部2側に残存しやすくなり、支持部3の再利用をより容易にすることができる。また、薄板部2の第2面2Bと接合部4との間及び支持部3の第2領域32Aと接合部4との間のそれぞれに第1剥離層51及び第2剥離層52のそれぞれを有しており、第1剥離層51の剥離力と第2剥離層52の剥離力とが互いに異なる場合において、第1剥離層51の剥離力が第2剥離層52の剥離力よりも小さい場合には、薄板部2と支持部3とを分離したときに支持部3の第2領域32A上に接合部4が残存するが、支持部3の第2領域32Aと接合部4との間に第2剥離層52が介在していることで、支持部3から接合部4を容易に除去することができる。一方、第1剥離層51の剥離力が第2剥離層52の剥離力よりも大きい場合には、接合部4が薄板部2側に残存し易くなり、支持部3の再利用をより容易にすることができる。なお、薄板部2と接合部4との間及び支持部3と接合部4との間のいずれか一方であれば、後者に剥離層を有するのが好ましい。
第1の実施形態において、接合部4は、上記樹脂材料に限定されるものではなく、空隙を有する構造体により構成されていてもよい。接合部4内に空隙が存在することで、接合部4を物理的に破壊して、薄板部2及び支持部3を容易に分離することができる。
上記空隙を有する構造体としては、例えば、多孔質体や、ピラーアレイ等が挙げられる。特に、支持部3がシリコン系材料により構成される場合、支持部3の支持面3A上に形成した多孔質シリコン層を、接合部4として用いることができる。
接合部4が空隙を有する構造体により構成される場合、接合部4の空隙率は、20~60%とすることができ、30~50%とするのが好ましい。当該空隙率が上記範囲内であれば、接合部4を破壊して、薄板部2及び支持部3を分離することができるとともに、他の部分(薄板部2及び支持部3)に比較して低強度の接合部4が破損することなく、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されたインプリントモールドをインプリント処理に使用することができる。
接合部4の厚さT4は、可能な限り薄いのが好ましいが、接合部4や薄板部2を構成する材料に応じて適宜設定することができる。接合部4として上記樹脂材料を用いた場合、接合部4の厚さT4が薄くなると、薄板部2と支持部3との接合時に薄板部2に生じ得る内部応力がより低減される。例えば、接合部4の厚さT4は、3~100nm程度とすることができる。薄板部2に生じ得る内部応力は、例えば、接合前後の上記樹脂材料(接合部4)の収縮率や膨張率、さらに熱膨張係数に依存する。このため、収縮率や膨張率が低く、または熱膨張係数が薄板部2に近い樹脂材料を接合部4として用いる場合には、接合部4の厚さT4を前述の数値範囲(3~100nm)に比べて厚くすることができる。また、本実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドを、薄板部2に生じ得る内部応力を無視することが可能な用途に使用する際には、上述の数値範囲によらず、例えばサブミクロン又はミクロン単位の厚さT4の樹脂材料を接合部4として使用することができる。なお、後述するように薄板部2の主面2Aを平坦な面として構成させるために、接合部4は、薄板部2に引張応力を与える目的とする、薄板部2に生じ得る内部応力を調整可能な層であってもよい。
上述した構成を有するインプリントモールド用基板1は、薄板部2及び支持部3が接合部4を介して連結した構成を有することで、支持部3の中空部とその開口一端を閉塞する薄板部2(対向面2B)により、有底略円筒状の凹部6が形成される。そして、支持部3の中空部は、容易な加工技術により高精度に形成可能であり、薄板部2の対向面2Bは、高い平坦度を有する面として構成可能であるため、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1は、高精度の凹部6を有することになる。また、接合部4が薄板部2及び支持部3を分離可能に構成されていることで、インプリントモールド用基板1から作製されたインプリントモールドを廃棄するときに、薄板部2及び支持部3を容易に分離し、少なくとも支持部3を再利用することが容易となる。その結果、長期的な観点からインプリントモールドの製造コストの上昇を抑制することができる。
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す切断端面図であり、図8は、第2の実施形態に係るインプリントモールド用基板における支持部近傍の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略するものとする。
第2の実施形態に係るインプリントモールド用基板1は、支持部3の支持面3Aの構造以外、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1と同様の構成を有する。したがって、支持部3の支持面3Aの構造を中心に説明する。
第2の実施形態における支持部3の支持面3Aは、薄板部2の第1面2A側からの平面視において、薄板部2の外縁よりも外側にはみ出して露出する第1領域31Aと、第1領域31Aの内側に位置し、薄板部2の第2面2Bと接合部4を介して連結される環状の第2領域32Aとを含む。
第1領域31Aは、薄板部2の外縁との間に間隔をあけるようにして立設する側面部311と、側面部311の上端部に連続する平面部312とを含む。薄板部2の第1面2Aを上方に位置させた状態において、平面部312は、薄板部2の凸構造部21の上面に設定されるパターン領域と同一又はそれよりも低い高さ位置に存在する。平面部312がパターン領域よりも高い高さ位置に存在すると、インプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールド10を用いたインプリント処理時に、被転写基板200に平面部312が衝突してしまうおそれがある。
側面部311は、薄板部2の外縁から外側に向かって(薄板部2の外縁の各辺に直交する方向に向かって)所定の間隔をあけるようにして離れて位置している。後述するように、薄板部2の外縁と側面部311との間の間隔に第1開口部33Aを位置させるように貫通孔33が形成されているため、上記間隔の幅Wは、支持面3A側における貫通孔33の開口部の径D331Aよりも大きければよく、例えば、0.2mm~6mm程度であればよい。
貫通孔33は、薄板部2の外縁と側面部311との間の間隔に第1開口部33Aを位置させ、支持部3の対向面3Bに第2開口部33Bを位置させるように、支持部3の厚さ方向に沿って形成されている。
第2の実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドにおいて、パターン領域に形成されている微細凹凸パターン11側から見たときに貫通孔33の第1開口部33Aの外側に側面部311が設けられている。この側面部311が設けられていないと、貫通孔33を通じて供給されるヘリウムガス等が、第1開口部33Aからインプリントモールドの外側へと流れてしまい、パターン領域側に効率よく供給され難くなる。しかしながら、側面部311が設けられていることで、第1開口部33Aからパターン領域へ向かうヘリウムガス等の流れを制御することができるため、当該ヘリウムガス等を微細凹凸パターン11側に効率よく供給することが可能となり、ヘリウムガス等の供給量を抑制することができる。
[第3の実施形態]
図9は、第3の実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す切断端面図であり、図10は、第3の実施形態に係るインプリントモールド用基板における支持部近傍の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。なお、第3の実施形態において、第1及び第2の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略するものとする。
第3の実施形態に係るインプリントモールド用基板1は、薄板部2の外縁の近傍の構造以外、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1と同様の構成を有する。したがって、薄板部2の外縁の近傍の構造を中心に説明する。
第3の実施形態の薄板部2は、第1面2Aと、第1面2Aに対向する第2面2Bと、第1面2Aの外縁及び第2面2Bの外縁の間を連続する傾斜面2Cとを有する。傾斜面2Cは、第1面2Aの外縁から第2面2Bの外縁に向かって広がるように傾斜している。すなわち、第1面2Aは、第2面2Bに包摂される大きさを有する。傾斜面2Cは、第1面2A側に向かって凸状に湾曲する湾曲傾斜面であってもよいし(図9及び図10参照)、第1面2A側に向かって凹状に湾曲する湾曲傾斜面であってもよいし、平坦な傾斜面であってもよい。
第3の実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドを用いてインプリント処理を行う際に、貫通孔33を通じてパターン領域側に向かってヘリウムガス等が供給される。このとき、第3の実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドによれば、第1開口部33Aから流出するヘリウムガス等が傾斜面2Cに沿ってパターン領域側に向かって案内されやすくなる。また、パターン領域側から外側に向かって流れる余剰のヘリウムガス等が、傾斜面2Cに沿って第1開口部33Aに向かって案内されやすくなる。よって、第1開口部33Aからパターン領域へ向かうヘリウムガス等の流れを制御することができるため、当該ヘリウムガス等を微細凹凸パターン11側に効率よく供給することが可能となり、ヘリウムガス等の供給量を抑制することができる。また、パターン領域から外側へと向かうヘリウムガス等を第1開口部33Aに案内しやすくなるため、当該ヘリウムガス等を効率よく回収することが可能となり、ヘリウムガス等の使用量を抑制することができる。
[第4の実施形態]
図11は、第4の実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す切断端面図であり、図12は、第4の実施形態に係るインプリントモールド用基板における支持部近傍の概略構成を示す部分拡大切断端面図であり、図13は、第4の実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す側面図である。なお、第4の実施形態において、第1~第3の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略するものとする。
第4の実施形態に係るインプリントモールド用基板1は、貫通孔33の構造以外、第2の実施形態に係るインプリントモールド用基板1と同様の構成を有する。したがって、貫通孔33の構造を中心に説明する。
第4の実施形態において、貫通孔33は、薄板部2の外縁と側面部311との間の間隔に向かうように、側面部311に第1開口部33Aを位置させ、支持部3の外側面3Cに第2開口部33Bを位置させるように、薄板部2の第1面2Aと実質的に平行な方向に沿って支持部3を貫通している。
第4の実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドを用いるインプリント処理において、パターン領域に形成されている微細凹凸パターンが所望とする倍率で転写されるように、インプリントモールドの支持部3の外側面3Cを中心に向かって押圧することによって倍率補正が行われる。支持部3に貫通孔33が形成されていることで、押圧によって印加される荷重に対する支持部3の強度は低下している。しかしながら、貫通孔33の孔軸方向が押圧方向と実質的に一致しているため、押圧によって印加される荷重に耐えることができ、支持部3の破損等が防止され得る。
[第5の実施形態]
図14は、第5の実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す切断端面図であり、図15は、第5の実施形態に係るインプリントモールド用基板における支持部近傍の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。なお、第5の実施形態において、第1~第4の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略するものとする。
第5の実施形態に係るインプリントモールド用基板1は、貫通孔33の構造以外、第4の実施形態に係るインプリントモールド用基板1と同様の構成を有する。したがって、貫通孔33の構造を中心に説明する。
第5の実施形態において、貫通孔33は、薄板部2の外縁と側面部311との間の間隔に向かうように、側面部311に第1開口部33Aを位置させ、支持部3の外側面3Cに第2開口部33Bを位置させるように、薄板部2の第1面2Aに交差する方向に沿って支持部3を貫通している。
第5の実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドを用いるインプリント処理において、パターン領域に形成されている微細凹凸パターンが所望とする倍率で転写されるように、インプリントモールドの支持部3の外側面3Cを中心に向かって押圧することによって倍率補正が行われる。支持部3に貫通孔33が形成されていることで、押圧によって印加される荷重に対する支持部3の強度は低下している。しかしながら、貫通孔33の孔軸方向が押圧方向に対して所定の角度で傾斜しているため、押圧によって印加される荷重に耐えることができ、支持部3の破損等が防止され得る。また、貫通孔33の第2開口部33Bから第1開口部33Aへの方向が、インプリントモールドのパターン領域へ向かう方向であるため、貫通孔33を通じて供給されるヘリウムガス等をパターン領域に向かって案内しやすい構造となっている。よって、第1開口部33Aからパターン領域へ向かうヘリウムガス等の流れを制御することができるため、当該ヘリウムガス等を微細凹凸パターン11側に効率よく供給することが可能となり、ヘリウムガス等の供給量を抑制することができる。
[第6の実施形態]
図16は、第6の実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す切断端面図であり、図17は、第6の実施形態に係るインプリントモールド用基板における支持部近傍の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。なお、第6の実施形態において、第1~第5の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略するものとする。
第6の実施形態に係るインプリントモールド用基板1は、薄板部2の外縁の近傍の構造以外、第5の実施形態に係るインプリントモールド用基板1と同様の構成を有する。したがって、薄板部2の外縁の近傍の構造を中心に説明する。
第6の実施形態における薄板部2は、第3の実施形態と同様に、第1面2Aと、第1面2Aに対向する第2面2Bと、第1面2Aの外縁及び第2面2Bの外縁の間を連続する傾斜面2Cとを有する。傾斜面2Cは、第1面2Aの外縁から第2面2Bの外縁に向かって広がるように傾斜している。すなわち、第1面2Aは、第2面2Bに包摂される大きさを有する。傾斜面2Cは、第1面2A側に向かって凸状に湾曲する湾曲傾斜面であってもよいし(図16及び図17参照)、第1面2A側に向かって凹状に湾曲する湾曲傾斜面であってもよいし、平坦な傾斜面であってもよい。
第6の実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドを用いてインプリント処理を行う際に、貫通孔33を通じてパターン領域側に向かってヘリウムガス等が供給される。このとき、上記インプリントモールドによれば、第1開口部33Aから流出するヘリウムガス等が傾斜面2Cに沿ってパターン領域側に向かって案内されやすくなる。また、パターン領域側から外側に向かって流れる余剰のヘリウムガス等が、傾斜面2Cに沿って第1開口部33Aに向かって案内されやすくなる。よって、第1開口部33Aからパターン領域へ向かうヘリウムガス等の流れを制御することができるため、当該ヘリウムガス等を微細凹凸パターン11側に効率よく供給することが可能となり、ヘリウムガス等の供給量を抑制することができる。また、パターン領域から外側へと向かうヘリウムガス等を第1開口部33Aに案内しやすくなるため、当該ヘリウムガス等を効率よく回収することが可能となり、ヘリウムガス等の使用量を抑制することができる。さらに、インプリントモールドの支持部3の外側面3Cを中心に向かって押圧して倍率補正が行われる際に、貫通孔33の孔軸方向が押圧方向に対して所定の角度で傾斜しているため、押圧によって印加される荷重に耐えることができ、支持部3の破損等が防止され得る。
[第7の実施形態]
図18は、第7の実施形態に係るインプリントモールド用基板の概略構成を示す切断端面図であり、図19は、第7の実施形態に係るインプリントモールド用基板における支持部近傍の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。なお、第7の実施形態において、第1~第6の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略するものとする。
第7の実施形態に係るインプリントモールド用基板1は、貫通孔33の構造以外、第3の実施形態に係るインプリントモールド用基板1と同様の構成を有する。したがって、貫通孔33の構造を中心に説明する。
第7の実施形態において、貫通孔33は、支持部3の第1領域31Aに第1開口部33Aを位置させ、支持部3の外側面3Cに第2開口部33Bを位置させるように、薄板部2の第1面2Aに交差する方向に沿って支持部3を貫通している。すなわち、貫通孔33の孔軸方向が押圧方向に対して所定の角度で傾斜している。
第7の実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製されるインプリントモールドを用いるインプリント処理において、パターン領域に形成されている微細凹凸パターンが所望とする倍率で転写されるように、インプリントモールドの支持部3の外側面3Cを中心に向かって押圧することによって倍率補正が行われる。支持部3に貫通孔33が形成されていることで、押圧によって印加される荷重に対する支持部3の強度は低下している。しかしながら、貫通孔33の孔軸方向が押圧方向に対して所定の角度で傾斜しているため、押圧によって印加される荷重に耐えることができ、支持部3の破損等が防止され得る。また、貫通孔33の第2開口部33Bから第1開口部33Aへの方向が、インプリントモールドのパターン領域へ向かう方向であるため、貫通孔33を通じて供給されるヘリウムガス等をパターン領域に向かって案内しやすい構造となっている。よって、第1開口部33Aからパターン領域へ向かうヘリウムガス等の流れを制御することができるため、当該ヘリウムガス等を微細凹凸パターン11側に効率よく供給することが可能となり、ヘリウムガス等の供給量を抑制することができる。
〔インプリントモールド用基板の製造方法〕
上述した構成を有するインプリントモールド用基板1は、以下のようにして製造することができる。図20は、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1の製造工程を断面図にて概略的に示す工程フロー図である。
図20(A)に示すように、まず、薄板部2及び支持部3を準備し、支持部3の支持面3Aにおける第2領域32A上に接合部4を設ける。なお、薄板部2の第2面2Bにおける接合部4と当接する部分には、必要に応じて表面処理(粗面化処理、密着層形成処理等)がなされている。また、薄板部2の第1面2Aの凸構造部21上には、予めハードマスク層が形成されていてもよい。
支持部3は、所定形状の基材を準備し、当該基材の略中心に中空部を形成するとともに、第1開口部33Aが支持面3Aの第1領域31Aに位置し、第2開口部33Bが対向面3Bに位置するように、厚さ方向に貫通する貫通孔33を形成することにより得られる。中空部や貫通孔33の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、切削器具等を用いて機械的に加工してもよいし、中空部に相当する開口部を有するレジストパターン等を形成してエッチングしてもよい。
接合部4が上記樹脂材料により構成される場合、スピンコート法、インクジェット法、ディスペンサー法、上記樹脂材料を揮発させて塗布する蒸着法等の任意の塗布方法により、支持部3の支持面3Aの第2領域32A上に接合部4を設けることができる。なお、接合部4と支持部3との間に剥離層を設ける場合、支持部3の支持面3Aの第2領域32A上に剥離層を形成し、当該剥離層上に接合部4を設ければよい。また、接合部4と薄板部2との間に剥離層を設ける場合、支持部3の支持面3Aの第2領域32A上に接合部4を設けるとともに、薄板部2の第2面2Bにおける接合部4と当接する面に剥離層を形成してもよいし、薄板部2の第2面2Bにおける接合部4と当接する面に剥離層及び接合部4をこの順に設けてもよい。
また、接合部4が空隙を有する構造体により構成される場合には、以下のようにして接合部4を設けることができる。
接合部4が多孔質シリコンにより構成される場合、例えば、シリコンウェハから作製された支持部3の支持面3Aの第2領域32Aを、陽極化成法によりHF水溶液中で電界エッチングすることにより、当該支持部3の支持面3Aの第2領域32A上に多孔質シリコン層を形成することができる。この多孔質シリコン層を接合部4として用いることができる。
また、接合部4がピラーアレイ構造体により構成される場合、例えば、支持部3の支持面3Aの第2領域32A上にピラーアレイに対応するレジストパターンを形成した後、エッチングすることで、支持部3の支持面3Aの第2領域32A上にピラーアレイ構造体を形成することができる。このピラーアレイ構造体を接合部4として用いることができる。
なお、接合部4が空隙を有する構造体である場合、上述した方法により形成し、支持部3と一体的に構成される接合部4に限定されるものではなく、接合部4としての上記多孔質シリコン層やピラーアレイ構造体を別途作製し、支持部3の支持面3Aの第2領域32A上に当該接合部4(多孔質シリコン、ピラーアレイ構造体等)を設けてもよい。
次に、図20(B)に示すように、支持部3の開口一端を薄板部2(第2面2B)にて閉塞するように、薄板部2の第2面2Bと支持部3の支持面3A(第2領域32A)とを、接合部4を介して連結する。これにより、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1を製造することができる。
薄板部2と支持部3とを連結する方法としては、例えば、接合部4が光硬化性粘着剤により構成される場合、薄板部2と、支持部3の支持面3Aの第2領域32Aに設けられた接合部4とを貼り合わせ、光(例えば紫外線等)を照射する方法等が挙げられる。
また、接合部4が多孔質シリコン層により構成される場合、当該多孔質シリコン層あるいは薄板部2や支持部3としての石英の表面を、プラズマやレーザー等を用いて表面活性化処理し接合する直接接合法、薄板部2及び支持部3がホウケイ酸ガラスにより構成される場合には陽極接合法、シリコン酸化物を介して多孔質シリコン層とシロキサン結合により接合する方法等が挙げられる。
さらに、接合部4がピラーアレイ構造体により構成される場合、各ピラーの天面(頂部)に粘着剤層等を形成し、薄板部2の第2面2Bに当該粘着剤層等を介して貼り合わせる方法等が挙げられる。
〔インプリントモールド〕
続いて、上述した第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1から作製され得るインプリントモールドについて説明する。図21は、本実施形態におけるインプリントモールド10を示す切断端面図であり、図22は、当該インプリントモールド10を示す平面図である。
図21に示すように、本実施形態におけるインプリントモールド10は、第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1の薄板部2の第1面2Aから突出する凸構造部21上に、所望の微細凹凸パターン11が形成されてなる。微細凹凸パターン11の形状、寸法、アスペクト比等は、インプリントモールド10の用途に応じて適宜設定され得る。
図22に示すように、インプリントモールド10の平面視において、微細凹凸パターン11の形成されている凸構造部21上のパターン領域は、支持部3の中空部の外形により規定される領域HAに包含されている。したがって、当該インプリントモールド10を用いたインプリント処理時において、インプリントモールド10の薄板部2のうち、微細凹凸パターン11の形成されているパターン領域を少なくとも湾曲させることができるため、被転写材としてのインプリント樹脂から容易に剥離することができる。
上記インプリントモールド10は、薄板部2と支持部3とが、それらを分離可能な接合部4を介して連結されているため、例えば、複数回の使用により破損したときなど、当該インプリントモールド10を廃棄するときに、薄板部2と支持部3とを容易に分離し、少なくとも支持部3を再利用することができる。
上記インプリントモールド10は、支持部3に貫通孔33が形成されているため、当該貫通孔33を介してインプリントモールド10と被転写基板200との間にヘリウム等のガスを供給することができる。これにより、当該インプリントモールド10を用いたインプリント処理により、被転写基板200上に形成される転写パターンに欠陥を発生させるのを抑制することができる。
〔インプリントモールドの製造方法〕
上記インプリントモールド10は、例えば下記のようにして製造することができる。図23は、本実施形態におけるインプリントモールドの製造方法の各工程を断面図にて示す工程フロー図である。
本実施形態におけるインプリントモールド10の製造方法においては、まず、金属クロム膜等のハードマスク層12が薄板部2の第1面2Aの凸構造部21上に設けられている第1の実施形態に係るインプリントモールド用基板1を用意し、微細凹凸パターン11に対応するレジストパターン60を当該第1面2Aの凸構造部21上における微細凹凸パターン11を形成するパターン領域上に形成する(図23(A)参照)。
なお、ハードマスク層12の厚さは、インプリントモールド用基板1の薄板部2を構成する材料に応じたエッチング選択比、インプリントモールド10における微細凹凸パターン11のアスペクト比等を考慮して適宜設定され得る。
レジストパターン60を構成するレジスト材料としては、特に限定されるものではなく、従来公知のエネルギー線感応型レジスト材料(例えば、電子線感応型レジスト材料、紫外線感応型レジスト材料等)等を用いることができる。
レジストパターン60を形成する方法としては、特に限定されるものではない。例えば、レジストパターン60は、電子線リソグラフィー法やフォトリソグラフィー法等により形成され得る。
続いて、レジストパターン60をマスクとして用いてハードマスク層12をドライエッチング法によりエッチングし、ハードマスクパターン13を形成する(図23(B)参照)。そして、当該ハードマスクパターン13をマスクとして用いてインプリントモールド用基板1の薄板部2の第1面2Aの凸構造部21をエッチングし、微細凹凸パターン11を形成する(図23(C)参照)。
最後に、ハードマスクパターン13を除去する(図23(D)参照)。これにより、薄板部2の第1面2Aの凸構造部21上に微細凹凸パターン11が形成されてなり、高精度の凹部6を有するインプリントモールド10を製造することができる。
なお、レジストパターン60を形成する際に電子線リソグラフィー法やフォトリソグラフィー法を用いる場合には、露光光源側から見たときに、薄板部2はたわみを持たず一様に平坦であることがより好ましい。そのため、薄板部2は大きさに応じた厚みを有するか、あるいは張力を有するように支持部3に貼り付けられていることが好ましい。
[インプリント装置]
上述した構成を有するインプリントモールド10を好適に用いることのできるインプリント装置の一例について説明する。
図24は、本実施形態におけるインプリント装置を概略的に示す構成図であり、図25は、本実施形態におけるインプリント装置における転写位置近傍の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
本実施形態におけるインプリント装置100は、インプリントモールド10を保持可能な保持面111を有するモールドホルダ110と、モールドホルダ110に保持されたインプリントモールド10の支持部3の外側面3Cを押圧することにより倍率補正を行い得る倍率補正機構(図示せず)と、被転写基板200が載置される基板ステージ120と、インプリントモールド10と接触して被転写基板200上に濡れ広がったインプリント樹脂300を硬化させるための硬化手段(UV光源等,図示せず)とを備える。モールドホルダ110には、モールドホルダ110に保持されたインプリントモールド1及び基板ステージ120に載置された被転写基板200の間にガスを供給するためのガス供給孔130が形成されている。
基板ステージ120は、載置された被転写基板200を保持可能な保持機構(図示せず)を有する。かかる保持機構としては、例えば、吸引による保持機構、機械挟持による保持機構、静電気による保持機構等が挙げられる。
基板ステージ120は、基板ステージ120上に載置・保持された被転写基板200上にインプリント樹脂300の液滴を供給するインクジェットヘッド140の下方の液滴供給位置(図24において一点鎖線にて示される位置)と、モールドホルダ110の下方の転写位置との間で水平方向(図24に示す矢印方向)に往復移動可能に構成されている。なお、基板ステージ120は、転写位置と液滴供給位置との間で相対的に往復移動可能に構成されていればよく、例えば、基板ステージ120は往復移動不可能に構成されており、モールドホルダ110及びインクジェットヘッド140のそれぞれが基板ステージ120の上方に移動可能に構成されていてもよい。
モールドホルダ110は、微細凹凸パターン11を基板ステージ120側に向けてインプリントモールド10を保持する保持面111を有する。モールドホルダ110は、例えば、吸引による保持機構、機械挟持による保持機構、静電気による保持機構等の保持機構(図示せず)を有し、当該保持機構によりインプリントモールド10を保持することができる。モールドホルダ110は、基板ステージ120に載置されている被転写基板200に向かって、鉛直方向に往復移動可能に構成されており、これにより、被転写基板200上のインプリント樹脂300にインプリントモールド10の微細凹凸パターン11を接触させ、またインプリント樹脂300からインプリントモールド10を離間させることができる。なお、モールドホルダ110に保持されているインプリントモールド10の微細凹凸パターン11に被転写基板200上のインプリント樹脂300を接触させるように、基板ステージ120が鉛直方向に往復移動可能に構成されていてもよい。
かかるインプリント装置100において、インプリントモールド10は、貫通孔33の第2開口部33Bをガス供給孔130に位置合わせして、モールドホルダ110の保持面111に保持される。ガス供給孔130は、ガスタンク(図示せず)に連続しており、ガスタンクから供給されるガスをインプリントモールド10と被転写基板200との間に供給可能に構成されている(図25参照)。ガス供給孔130から供給され得るガスとしては、例えば、ヘリウム、PFP(ペンタフルオロプロパン)、TFP(テトラフルオロプロペン)等の凝縮性ガス等が挙げられる。
ガス供給孔130は、モールドホルダ110に保持されるインプリントモールド10の貫通孔33の第2開口部33Bに対応する位置に設けられており、ガス供給孔130の内径は、第2開口部33Bの開口径D33Bと同一又はそれよりも大きければよい。これにより、モールドホルダ110にインプリントモールド10が保持されたときにガス供給孔130から供給されるガスが貫通孔33を介してインプリントモールド10と被転写基板200との間に供給される。ガス供給孔130の外径は、例えば、0.1mm~10mm程度に設定され得る。
本実施形態におけるインプリントモールド10を上記インプリント装置100のモールドホルダ110に保持させるとともに、基板ステージ120上に載置・保持された被転写基板200上にインクジェットヘッド140からインプリント樹脂300の液滴を供給する。そして、液滴供給位置(図24において一点鎖線にて示される位置)から、モールドホルダ110の下方の転写位置に被転写基板200を水平方向に移動させる。インプリントモールド10をモールドホルダ110に保持させるときに、貫通孔33の第2開口部33Bとガス供給孔130とを位置合わせするとともに、倍率補正機構(図示せず)により支持部3の外側面3Cを押圧して所定の倍率補正が行われる。
次に、ガス供給孔130及び貫通孔33を介してインプリントモールド10と被転写基板200との間にヘリウム等のガスが供給され、モールドホルダ110を、基板ステージ120に載置されている被転写基板200に向かって、鉛直方向に移動させ、被転写基板200上のインプリント樹脂300にインプリントモールド10の微細凹凸パターンを接触させることで、インプリントモールド10の凸構造部21と被転写基板200との間にインプリント樹脂300を展開させる。その状態でインプリント樹脂300を硬化させた後、モールドホルダ110を鉛直方向に移動させることで、インプリント樹脂300からインプリントモールド10を引き離す。これにより、被転写基板200上のインプリント樹脂300にインプリントモールド10の微細凹凸パターン11が転写され、転写パターンに欠陥を生じさせないようにすることができる。
〔インプリントモールドの再生方法〕
続いて、上記インプリントモールド10の再生方法について説明する。図26は、本実施形態におけるインプリントモールドの再生方法の各工程を断面図により示す工程フロー図である。
本実施形態においては、まず、使用済みのインプリントモールド10の薄板部2と支持部3とを分離する(図26(A)参照)。薄板部2と支持部3とを分離する方法としては、例えば、接合部4が上記樹脂材料により構成される場合、当該接合部4に赤外線を照射して加熱することにより、接合部4の粘着力を低下させ、薄板部2と支持部3とを分離する方法等を挙げることができる。このとき、支持部3と接合部4との間に剥離層が設けられていれば、接合部4を薄板部2側に残存させるようにして薄板部2と支持部3とを分離することができる。
また、接合部4が空隙を有する構造体により構成される場合、当該接合部4(構造体)を機械的に切断することにより薄板部2と支持部3とを分離する方法等を挙げることができる。
次に、必要に応じて支持部3の支持面3Aの第2領域32Aに残存する接合部4を除去したり、支持面3Aを清浄化したりするとともに、別途新たな薄板部2’を準備し、支持部3の開口一端を当該薄板部2’にて閉塞するように、当該薄板部2’の第2面2B’と支持部3の支持面3A(第2領域32A)とを、接合部4’を介して連結する。(図26(B)参照)。これにより、使用済みのインプリントモールド10をインプリントモールド用基板1として再生することができる。なお、使用済みのインプリントモールド10の支持部3の対向面3Bに、別途新たな薄板部2’を連結して、インプリントモールド用基板1として再生してもよい。
新たな薄板部2’の第1面2A’には、金属クロム膜等により構成されるハードマスク層が形成されていてもよい。薄板部2’と支持部3とを、接合部4を介して連結する方法としては、上記インプリントモールド用基板1の製造方法において説明した方法と同様の方法(図26(B)参照)を採用することができる。
そして、再生されたインプリントモールド用基板1を用いて、図23に示す方法によりインプリントモールド10を製造することで、インプリントモールド10を再生することができる。
上述のようにして、本実施形態によれば、少なくとも支持部3を再利用することができ、使用済みのインプリントモールド10を再生することができる。
以上説明した実施形態は、本開示の理解を容易にするために記載されたものであって、本開示を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本開示の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
上記実施形態においては、薄板部2と支持部3とを連結する接合部4として、両者を接着可能な樹脂材料や空隙を有する構造体(多孔質シリコン層、ピラーアレイ構造体等)を例に挙げて説明したが、本開示はこのような態様に限定されるものではない。例えば、薄板部2と支持部3とを、両者を接着可能なゴム系接着剤等により構成される接合部4を介して連結してもよいし、薄板部2と支持部3とをネジ等により機械的に連結させてもよい。
上記実施形態においては、薄板部2の第2面2B又は支持部3の支持面3A(第2領域32A)に接合部4を設け、当該接合部4を介して薄板部2と支持部3とを連結しているが、本開示はこのような態様に限定されるものではない。例えば、薄板部2の第2面2B及び支持部3の支持面3A(第2領域32A)の双方に接合部4を設け、接合部4同士を接合することにより薄板部2と支持部3とを連結してもよい。
上記実施形態においては、薄板部2と支持部3とを、接合部4を介して連結してなるインプリントモールド用基板1を例に挙げて説明したが、本開示はこのような態様に限定されるものではない。例えば、接合部4を有さず、薄板部2と支持部3とが一体化されてなるものであってもよい(図27参照)。
上記実施形態においては、薄板部2と支持部3とを、接合部4を介して連結してなるインプリントモールド用基板1の薄板部2の第1面2Aから突出する凸構造部21上に微細凹凸パターン11を形成することによりインプリントモールド10を製造しているが、本開示はこのような態様に限定されるものではない。例えば、第1面2Aの凸構造部21上に微細凹凸パターン11が形成されてなる薄板部2と、支持部3とを準備し、当該薄板部2と支持部3とを、支持部3の開口一端を薄板部2の対向面2Bで覆うようにして接合部4を介して連結することで、インプリントモールド10を製造してもよい。