JP7046121B2 - 回転機の制御装置 - Google Patents

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Description

本願は、回転機の制御装置に関するものである。
特許文献1の技術では、内燃機関の始動時に、界磁電流を流す際に、界磁磁束と同方向の磁束を形成する電機子電流を流すことによって、界磁磁束の形成をアシストするとともに磁気飽和によるインダクタンスの低下を利用して界磁電流の応答を上げている。
特許文献2の技術では、内燃機関の始動時において、d軸電流を予め正の方向に流した後、負の方向に変化させることにより、電機子巻線と界磁巻線と間の相互インダクタンスによって、界磁巻線に正の誘導起電力を生じさせ、界磁電流の応答を上げている。
特開2002-191158号公報 特開2018-42387号公報
しかしながら、特許文献1の技術は、内燃機関の始動時に行われる制御であるため、内燃機関の始動時以外には適用できない。
特許文献2の技術では、出力トルクの発生前に、予め、d軸電流を正の値に変化させておく必要があり、内燃機関の始動時等、出力トルクが発生していない特殊な条件でしか実行できない。
出力トルクの変化に応じて、界磁電流は常時変化されるが、界磁電流の応答遅れにより、ロータ磁束の応答遅れが生じ、ロータ磁束の応答遅れにより出力トルクの応答遅れが生じる。
そこで、本願は、内燃機関の始動時に限定されることなく、界磁電流の応答遅れにより生じるロータ磁束の応答遅れを低減することができる回転機の制御装置を提供することを目的とする。
本願に係る回転機の制御装置は、界磁巻線を設けたロータと電機子巻線を設けたステータとを有する回転機を制御する回転機の制御装置であって、
前記電機子巻線の電流指令値である電機子電流指令値を算出し、前記電機子電流指令値に基づいて電機子電圧指令値を算出し、前記電機子電圧指令値に基づいて、インバータが有するスイッチング素子をオンオフ制御することにより、前記電機子巻線に電圧を印加する電機子電流制御部と、
前記界磁巻線に流れる界磁電流を検出する界磁電流検出部と、
前記界磁巻線の電流指令値である界磁電流指令値を算出し、前記界磁電流指令値に基づいて界磁電圧指令値を算出し、前記界磁電圧指令値に基づいて、コンバータが有するスイッチング素子をオンオフ制御することにより、前記界磁巻線に電圧を印加する界磁電流制御部と、を備え、
前記ロータの磁極の方向をd軸とし、前記d軸より電気角で90°進んだ方向をq軸とし、
前記電機子電流制御部は、前記界磁電流指令値と界磁電流の検出値との偏差に応じて、前記電機子電流指令値のd軸成分を変化させ
前記電機子電流制御部は、前記界磁電圧指令値が前記界磁巻線に印加できる最大電圧以上になる最大電圧飽和状態になった場合に、前記偏差に応じて前記電機子電流指令値のd軸成分を変化させるものである。

本願に係る回転機の制御装置によれば、界磁電流の応答遅れにより、ロータ磁束が、目標のロータ磁束から逸脱しても、界磁電流指令値と界磁電流の検出値との偏差に応じて、電機子電流指令値のd軸成分が変化されるので、電機子電流指令値のd軸成分の変化によりロータ磁束を変化させることができ、ロータ磁束を目標のロータ磁束に近づけることができる。よって、内燃機関の始動時に限定されることなく、界磁電流の応答遅れにより生じるロータ磁束の応答遅れを低減することができ、ロータ磁束の応答遅れにより生じる出力トルクの応答遅れを低減することができる。
実施の形態1に係る回転機及び回転機の制御装置の概略構成図である。 実施の形態1に係る制御装置の概略ブロック図である。 実施の形態1に係る制御装置のハードウェア構成図である。 実施の形態1に係るインバータのスイッチング素子のオンオフ制御挙動を説明するタイムチャートである。 実施の形態1に係るコンバータのスイッチング素子のオンオフ制御挙動を説明するタイムチャートである。 実施の形態1の比較例に係る制御挙動を説明するタイムチャートである。 実施の形態1の比較例に係る制御挙動を説明するタイムチャートである。 実施の形態1に係る界磁電流とロータ磁束、及び電流微分インダクタンスとの関係特性図である。 実施の形態1に係るロータ磁束の磁気飽和特性を示す図である。 実施の形態1に係る制御挙動を説明するタイムチャートである。 実施の形態1に係る制御挙動を説明するタイムチャートである。 実施の形態2に係る制御挙動を説明するタイムチャートである。 実施の形態3の比較例に係る制御挙動を説明するタイムチャートである。 実施の形態3に係る制御挙動を説明するタイムチャートである。 実施の形態3の比較例に係る制御挙動を説明するタイムチャートである。 実施の形態3に係る制御挙動を説明するタイムチャートである。 実施の形態1に係る車両用の発電電動機とされた回転機の模式図である。
1.実施の形態1
実施の形態1に係る回転機の制御装置11(以下、単に、制御装置11と称す)について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係る回転機1及び制御装置11の概略構成図である。
1-1.回転機1
回転機1は、ステータ18と、ステータ18の径方向内側に配置されたロータ14と、を備えている。回転機1は、界磁巻線型の同期回転機とされている。ステータ18の鉄心に、電機子巻線12が巻装されている。ロータ14の鉄心に界磁巻線4が巻装され、電磁石が設けられている。
本実施の形態では、電機子巻線12は、U相、V相、及びW相の3相の電機子巻線Cu、Cv、Cwとされている。3相の電機子巻線Cu、Cv、Cwは、スター結線とされてもよいし、デルタ結線とされてもよい。
ロータ14には、ロータ14の回転角度(回転角度)を検出する回転センサ15が設けられている。回転センサ15の出力信号は、制御装置11に入力される。回転センサ15には、ホール素子、レゾルバ、又はエンコーダ等の各種のセンサが用いられる。回転センサ15が設けられず、後述する電流指令値に高調波成分を重畳することによって得られる電流情報等に基づいて、回転角度(磁極位置)を推定するように構成されてもよい(いわゆる、センサレス方式)。
1-2.直流電源2
直流電源2は、インバータ5及びコンバータ9に直流電圧Vdcを出力する。直流電源2として、バッテリー、DC-DCコンバータ、ダイオード整流器、PWM整流器等、直流電圧を出力する任意の機器が用いられる。直流電源2には、平滑コンデンサ3が並列接続されている。
1-3.インバータ5
インバータ5は、複数のスイッチング素子を有し、直流電源2と電機子巻線12との間で電力変換を行う。インバータ5は、直流電源2の正極側に接続される正極側のスイッチング素子SPと、直流電源2の負極側に接続される負極側のスイッチング素子SNと、が直列接続された直列回路を、3相各相の電機子巻線に対応して3組設けている。各直列回路における2つのスイッチング素子の接続点が、対応する相の電機子巻線に接続される。
具体的には、U相の直列回路では、U相の正極側のスイッチング素子SPuとU相の負極側のスイッチング素子SNuとが直列接続され、2つのスイッチング素子の接続点がU相の電機子巻線Cuに接続されている。V相の直列回路では、V相の正極側のスイッチング素子SPvとV相の負極側のスイッチング素子SNvとが直列接続され、2つのスイッチング素子の接続点がV相の電機子巻線Cvに接続されている。W相の直列回路では、Wの正極側のスイッチング素子SPwとW相の負極側のスイッチング素子SNwとが直列接続され、2つのスイッチング素子の接続点がW相の電機子巻線Cwに接続されている。
インバータ5のスイッチング素子には、ダイオードが逆並列接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、ダイオードが逆並列接続されたバイポーラトランジスタ、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等が用いられる。各スイッチング素子のゲート端子は、ゲート駆動回路等を介して、制御装置11に接続されている。よって、各スイッチング素子は、制御装置11から出力されるスイッチング信号によりオン又はオフされる。
電機子電流センサ8は、各相の電機子巻線Cu、Cv、Cwに流れる電流を検出する電流検出回路である。本実施の形態では、電機子電流センサ8は、各相のスイッチング素子の直列回路と電機子巻線とをつなぐ電線上に備えられている。各相の電機子電流センサ8の出力信号は、制御装置11に入力される。電機子電流センサ8は、ホール素子、シャント抵抗等の電流センサとされている。なお、電機子電流センサ8は、各相のスイッチング素子の直列回路に直列接続されてもよい。
1-4.コンバータ9
コンバータ9は、スイッチング素子を有し、直流電源2と界磁巻線4との間で電力変換を行う。本実施の形態では、コンバータ9は、直流電源2の正極側に接続される正極側のパワー半導体SPと直流電源2の負極側に接続される負極側のパワー半導体SNとが直列接続された直列回路を2組設けたHブリッジ回路とされている。第1組の直列回路28における正極側のパワー半導体SP1と負極側のパワー半導体SN1との接続点が、界磁巻線4の一端に接続され、第2組の直列回路29における正極側のパワー半導体SP2と負極側のパワー半導体SN2との接続点が、界磁巻線4の他端に接続される。
本実施の形態では、第1組及び第2組の正極側のパワー半導体SP及び負極側のパワー半導体SNは、スイッチング素子とされている。コンバータ9のスイッチング素子には、ダイオードが逆並列接続されたIGBT、ダイオードが逆並列接続されたバイポーラトランジスタ、MOSFET等が用いられる。各スイッチング素子のゲート端子は、ゲート駆動回路等を介して、制御装置11に接続されている。よって、各スイッチング素子は、制御装置11から出力されるスイッチング信号によりオン又はオフされる。
なお、第1組の直列回路28の負極側のスイッチング素子SN1をダイオードに置き換えたり、第2組の直列回路29の負極側のスイッチング素子SN2をダイオードに置き換えたりする等、コンバータ9を他の構成としてもよい。
界磁電流センサ6は、界磁巻線4を流れる電流である界磁電流Ifを検出する電流検出回路である。本実施の形態では、界磁電流センサ6は、第1組の直列回路28の接続点と界磁巻線4の一端とを接続する電線上に設けられている。界磁電流センサ6は、界磁電流Ifを検出可能な他の個所に設けられてもよい。界磁電流センサ6の出力信号は、制御装置11に入力される。界磁電流センサ6は、ホール素子、シャント抵抗等の電流センサとされている。
1-5.制御装置11
制御装置11は、インバータ5及びコンバータ9を介して、回転機1を制御する。制御装置11は、図2に示すように、回転検出部31、電機子電流検出部32、電機子電流制御部33、界磁電流検出部34、及び界磁電流制御部35等の機能部を備えている。制御装置11の各機能は、制御装置11が備えた処理回路により実現される。具体的には、制御装置11は、図3に示すように、処理回路として、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置90(コンピュータ)、演算処理装置90とデータのやり取りする記憶装置91、演算処理装置90に外部の信号を入力する入力回路92、演算処理装置90から外部に信号を出力する出力回路93、及び外部装置とデータ通信を行う通信回路94等を備えている。
演算処理装置90として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、各種の論理回路、及び各種の信号処理回路等が備えられてもよい。また、演算処理装置90として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられ、各処理が分担して実行されてもよい。記憶装置91として、演算処理装置90からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(Random Access Memory)、及び演算処理装置90からデータを読み出し可能に構成されたROM(Read Only Memory)等が備えられている。入力回路92は、回転センサ15、電機子電流センサ8、界磁電流センサ6等の各種のセンサ及びスイッチが接続され、これらセンサ及びスイッチの出力信号を演算処理装置90に入力するA/D変換器等を備えている。出力回路93は、インバータ5及びコンバータ9のスイッチング素子をオンオフ駆動するゲート駆動回路等の電気負荷が接続され、これら電気負荷に演算処理装置90から制御信号を出力する駆動回路等を備えている。通信回路94は、外部装置と通信を行う。
そして、制御装置11が備える各制御部31~35等の各機能は、演算処理装置90が、ROM等の記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行し、記憶装置91、入力回路92、及び出力回路93等の制御装置11の他のハードウェアと協働することにより実現される。なお、各制御部31~35等が用いるテーブルデータ等の設定データは、ソフトウェア(プログラム)の一部として、ROM等の記憶装置91に記憶されている。以下、制御装置11の各機能について詳細に説明する。
1-5-1.電機子電流の基本制御
回転検出部31は、電気角でのロータの磁極位置θ(ロータの回転角度θ)及び回転角速度ωを検出する。本実施の形態では、回転検出部31は、回転センサ15の出力信号に基づいて、ロータの磁極位置θ(回転角度θ)及び回転角速度ωを検出する。磁極位置は、ロータに設けられた電磁石のN極の向きに設定される。なお、回転検出部31は、電流指令値に高調波成分を重畳することによって得られる電流情報等に基づいて、回転センサを用いずに、回転角度(磁極位置)を推定するように構成されてもよい(いわゆる、センサレス方式)。
電機子電流検出部32は、電機子電流センサ8の出力信号に基づいて、3相の巻線に流れる電機子電流Iur、Ivr、Iwrを検出する。ここで、Iurが、U相の電機子電流Iuの検出値であり、Ivrが、V相の電機子電流Ivの検出値であり、Iwrが、W相の電機子電流Iwの検出値である。なお、電機子電流センサ8が2相の電機子電流を検出するように構成され、残りの1相の電機子電流が、2相の電機子電流の検出値に基づいて算出されてもよい。例えば、電機子電流センサ8が、V相及びW相の電機子電流Ivr、Iwrを検出し、U相の電機子電流Iurが、Iur=-Ivr-Iwrにより算出されてもよい。
電機子電流制御部33は、電機子巻線の電流指令値である電機子電流指令値を算出し、電機子電流指令値に基づいて電機子電圧指令値を算出し、電機子電圧指令値に基づいて、インバータ5が有するスイッチング素子をオンオフ制御することにより、電機子巻線に電圧を印加する。
本実施の形態では、図2に示すように、電機子電流制御部33は、電流指令値算出部331、電圧指令値算出部332、及びスイッチング制御部333を備えている。
電流指令値算出部331は、電機子電流指令値を算出する。本実施の形態では、電流指令値算出部331は、d軸の電流指令値Ido及びq軸の電流指令値Iqoを算出する。d軸は、ロータの磁極(N極、磁極位置θ)の方向に定められ、q軸は、d軸より電気角で90°進んだ方向に定められている。dq軸の回転座標系は、ロータの磁極位置θの回転に同期して回転する。
電流指令値算出部331は、最大トルク電流制御、弱め界磁制御、Id=0制御などの公知のベクトル制御方法に従って、d軸及びq軸の基本電流指令値Idob、Iqobを演算する。本実施の形態では、最大トルク電流制御により、d軸及びq軸の基本電流指令値Idob、Iqobが算出される場合を説明する。
最大トルク電流制御では、トルク指令値Toのトルクを出力させる電流が最小になるd軸及びq軸の基本電流指令値Idob、Iqobが算出される。
弱め界磁制御では、最大トルク電流制御により算出されるd軸及びq軸の基本電流指令値Idob、Iqobよりも、d軸の基本電流指令値Idobが負の方向に増加される。弱め磁束制御では、dq軸の回転座標系上で、電圧制限楕円(定誘起電圧楕円)と、トルク指令値Toの定トルク曲線との交点に、dq軸の基本電流指令値Idob、Iqobが算出される。
Id=0制御では、d軸の基本電流指令値Idobが0に設定され、トルク指令値Toに応じてq軸の基本電流指令値Iqobが増減される。
トルク指令値Toは、制御装置11の内部で演算されてもよいし、制御装置11の外部から伝達されてもよい。
本実施の形態では、次式に示すように、電流指令値算出部331は、後述するd軸電流の変化条件が成立していない場合は、ベクトル制御方法に従って設定されたd軸の基本電流指令値Idobを、最終的なd軸の電流指令値Idoに設定する。電流指令値算出部331は、d軸電流の変化条件が成立している場合は、d軸の基本電流指令値Idobに、後述するd軸の電流指令値の変化量ΔIdoを加算した値を、最終的なd軸の電流指令値Idoに設定する。本実施の形態では、d軸電流の変化条件は、常時成立しているものとする。
1)d軸電流の変化条件が成立していない場合、
Ido=Idob ・・・(1)
2)d軸電流の変化条件が成立している場合、
Ido=Idob+ΔIdo
電流指令値算出部331は、次式に示すように、d軸電流の変化条件の成立の有無にかかわらず、ベクトル制御方法に従って設定されたq軸の基本電流指令値Iqobを、最終的なq軸の電流指令値Iqoに設定する。
Iqo=Iqob ・・・(2)
電圧指令値算出部332は、電機子電流指令値に基づいて電機子電圧指令値を算出する。本実施の形態では、電圧指令値算出部332は、d軸及びq軸の電流指令値Ido、Iqoに基づいて、d軸及びq軸の電圧指令値Vdo、Vqoを算出する。
電圧指令値算出部332は、3相の電機子電流の検出値Iur、Ivr、Iwrを、磁極位置θに基づいて3相2相変換及び回転座標変換を行って、d軸の電流検出値Idr及びq軸の電流検出値Iqrに変換する。そして、電圧指令値算出部332は、d軸の電流検出値Idrがd軸の電流指令値Idoに近づくように、d軸の電流指令値Idoとd軸の電流検出値Idrとの偏差ΔIdに対して比例積分制御を行って、d軸の電圧指令値Vdoを算出し、q軸の電流検出値Iqrがq軸の電流指令値Iqoに近づくように、q軸の電流指令値Iqoとq軸の電流検出値Iqrとの偏差ΔIqに対して比例積分制御を行って、q軸の電圧指令値Vqoを算出する。また、d軸電流とq軸電流の非干渉化のための公知のフィードフォワード制御が行われてもよい。
或いは、電圧指令値算出部332は、電流検出値を用いず、d軸及びq軸の電流指令値Ido、Iqoに基づいて、回転機の諸元を用い、d軸及びq軸の電圧指令値Vdo、Vqoを算出するフィードフォワード制御を実行してもよい。例えば、電圧指令値算出部332は、次式に示すように、d軸及びq軸の電流指令値Ido、Iqoに基づいて、回転機の諸元(巻線の抵抗値R、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq、ロータ磁束ψf)、及び回転角速度ωに基づいて、d軸の電圧指令値Vdo及びq軸の電圧指令値Vqoを算出してもよい。この場合は、電機子電流センサ8及び電機子電流検出部32が備えられなくてもよい。
Vdo=R×Ido-ω×Lq×Iqo
Vqo=R×Iqo+ω×(Ld×Ido+ψf) ・・・(3)
そして、電圧指令値算出部332は、d軸及びq軸の電圧指令値Vdo、Vqoを、磁極位置θに基づいて、固定座標変換及び2相3相変換を行って、3相の電圧指令値Vuo、Vvo、Vwoに変換する。なお、電圧指令値算出部332は、3相の電圧指令値に対して、2相変調、空間ベクトル変調等の線間電圧が変化しないような変調を加えてもよい。
スイッチング制御部333は、電機子電圧指令値に基づいて、PWM制御(Pulse Width Modulation)により、インバータ5が有するスイッチング素子をオンオフ制御することにより、電機子巻線に電圧を印加する。本実施の形態では、図4に示すように、スイッチング制御部333は、3相の電圧指令値Vuo、Vvo、Vwoのそれぞれと電機子搬送波の周期Tssで振動する電機子搬送波Csとを比較することにより、複数のスイッチング素子をオンオフ制御する。電機子搬送波Csは、電機子搬送波の周期Tssで0を中心に直流電圧の半分値Vdc/2の振幅で振動する三角波とされている。直流電圧Vdcは、電圧センサにより検出されてもよい。
スイッチング制御部333は、各相について、電機子搬送波Csが電圧指令値を下回った場合は、正極側のスイッチング素子のスイッチング信号QPをオン(本例では、1)して、正極側のスイッチング素子をオンし、電機子搬送波Csが電圧指令値を上回った場合は、正極側のスイッチング素子のスイッチング信号QPをオフ(本例では、0)して、正極側のスイッチング素子をオフする。一方、スイッチング制御部333は、各相について、電機子搬送波Csが電圧指令値を下回った場合は、負極側のスイッチング素子のスイッチング信号QNをオフ(本例では、0)して、負極側のスイッチング素子をオフして、負極側のスイッチング素子をオフし、電機子搬送波Csが電圧指令値を上回った場合は、負極側のスイッチング素子のスイッチング信号QNをオン(本例では、1)して、負極側のスイッチング素子をオンする。なお、各相について、正極側のスイッチング素子のオン期間と負極側のスイッチング素子のオン期間との間には、正極側及び負極側のスイッチング素子の双方をオフにする短絡防止期間(デッドタイム)が設けられてもよい。
1-5-2.界磁電流の基本制御
界磁電流検出部34は、界磁電流センサ6の出力信号に基づいて、界磁巻線4に流れる電流である界磁電流Ifrを検出する。ここで、Ifrは、界磁電流Ifの検出値である。
界磁電流制御部35は、界磁巻線の電流指令値である界磁電流指令値Ifoを算出し、界磁電流指令値Ifoに基づいて界磁電圧指令値Vfoを算出し、界磁電圧指令値Vfoに基づいて、コンバータ9が有するスイッチング素子をオンオフ制御することにより、界磁巻線4に電圧を印加する。
本実施の形態では、図2に示すように、界磁電流制御部35は、電流指令値算出部351、電圧指令値算出部352、及びスイッチング制御部353を備えている。
電流指令値算出部351は、界磁電流指令値Ifoを算出する。例えば、電流指令値算出部351は、トルク指令値To等に基づいて、界磁電流指令値Ifoを設定する。
電圧指令値算出部352は、界磁電流指令値Ifoに基づいて界磁電圧指令値Vfoを算出する。電圧指令値算出部352は、次式に示すように、界磁電流指令値Ifoと界磁電流検出値Ifrとの偏差ΔIf(以下、界磁電流偏差ΔIfと称す)に対して比例積分制御を行って、界磁電圧指令値Vfoを算出する。
Figure 0007046121000001
ここで、Kpfは、比例ゲインであり、Kifは、積分ゲインであり、sは、ラプラス演算子であり、1/sは、積分を表す。比例ゲインKpf及び積分ゲインKifは、界磁電流検出値Ifr及びd軸電流(指令値又は検出値)等に応じて変化されてもよい。なお、式(4)は、連続系で表しているが、実際には、式(4)を演算周期で離散化した演算式を用いて、演算周期毎に演算処理が実行される。本実施の形態では、演算周期は、後述する界磁搬送波の周期Tsfと同じに設定されている。
或いは、電圧指令値算出部352は、電流検出値を用いず、界磁電流指令値Ifoに基づいて、回転機の諸元を用い、界磁電圧指令値Vfoを算出するフィードフォワード制御を実行してもよい。例えば、電圧指令値算出部352は、次式に示すように、界磁電流指令値Ifoに基づいて、回転機の諸元(界磁巻線4の抵抗値Rf)に基づいて、界磁電圧指令値Vfoを算出してもよい。この際、次式に示すように、一次進み処理が加えられてもよい。ここで、Tfoは、一次進み処理の定数であり、sは、ラプラス演算子である。一次進み処理の定数Tfoは、界磁電流検出値Ifr等に応じて変化されてもよい。この場合は、界磁電流センサ6及び界磁電流検出部34が備えられなくてもよい。
Vfo=(Tfo×s+1)×Rf×Ifo ・・・(5)
電圧指令値算出部352は、次式に示すように、界磁電圧指令値Vfoを上限電圧値Vfmaxにより上限制限すると共に、界磁電圧指令値Vfoを下限電圧値Vfminにより下限制限する。ここで、MIN(A,B)は、A、Bのいずれか小さい方を出力する関数である。MAX(A,B)は、A、Bのいずれか大きい方を出力する関数である。
Vfo=MAX(Vfmin,MIN(Vfmax,Vfo)) ・・・(6)
上限電圧値Vfmaxは、界磁巻線4に印加できる最大電圧に設定される。下限電圧値Vfminは、界磁巻線4に印加できる最小電圧に設定される。本実施の形態では、上限電圧値Vfmaxは、直流電圧Vdcに設定される。下限電圧値Vfminは、-1×直流電圧Vdcに設定される。スイッチング直後のリンギングの影響、後述する短絡防止期間の設定等を考慮して、上限電圧値Vfmaxは、直流電圧Vdcよりも小さい値に設定されてもよく、下限電圧値Vfminは、-1×直流電圧Vdcよりも大きい値に設定されてもよい。
なお、電圧指令値算出部352は、界磁電圧指令値Vfoを上限電圧値Vfmax及び下限電圧値Vfminにより上限制限及び下限制限しなくてもよい。このように、上限制限及び下限制限を行わなくても、後述するように、界磁電圧指令値Vfoは、最大電圧(Vdc)と最小電圧(-Vdc)との間を振動する界磁搬送波信号Cfと比較されるので、コンバータ9のスイッチング素子のオンオフ制御結果は、上限制限及び下限制限の有無にかかわらず同様になる。
スイッチング制御部353は、界磁電圧指令値Vfoに基づいて、PWM制御(Pulse Width Modulation)により、コンバータ9のスイッチング素子をオンオフ制御する。
例えば、図5に示すように、スイッチング制御部353は、界磁電圧指令値Vfoと、界磁搬送波の周期Tsfで振動する界磁搬送波信号Cfとを比較することにより、複数のスイッチング素子をオンオフ制御する。界磁搬送波信号Cfは、界磁搬送波の周期Tsfで-1×直流電圧Vdcから直流電圧Vdcの間を振動する三角波とされている。直流電圧Vdcは、電圧センサにより検出されてもよい。
スイッチング制御部353は、界磁搬送波信号Cfが界磁電圧指令値Vfoを下回った場合は、第1組の正極側のスイッチング素子SP1のスイッチング信号QP1をオン(本例では、1)し、第1組の負極側のスイッチング素子SN1のスイッチング信号QN1をオフ(本例では、0)し、第2組の正極側のスイッチング素子SP2のスイッチング信号QP2をオフ(0)し、第2組の負極側のスイッチング素子SN2のスイッチング信号QN2をオン(1)する。
一方、スイッチング制御部353は、界磁搬送波信号Cfが界磁電圧指令値Vfoを上回った場合は、第1組の正極側のスイッチング信号QP1をオフ(0)し、第1組の負極側のスイッチング信号QN1をオン(1)し、第2組の正極側のスイッチング信号QP2をオン(1)し、第2組の負極側のスイッチング信号QN2をオフ(0)する。なお、各組について、正極側のスイッチング素子のオン期間と負極側のスイッチング素子のオン期間との間には、正極側及び負極側のスイッチング素子の双方をオフにする短絡防止期間(デッドタイム)が設けられてもよい。
1-5-3.界磁電流偏差ΔIfに応じたd軸電流の変化制御
<比較例の制御挙動>
図6及び図7に、トルク指令値Toがステップ的に増加した場合の比較例に係る制御挙動を示す。比較例では、後述する界磁電流偏差ΔIfに応じたd軸電流の変化制御が行われておらず、d軸の基本電流指令値Idobが、そのまま、最終的なd軸の電流指令値Idoに設定される。図6では、界磁電圧指令値Vfoの増加量が小さく、界磁電圧指令値Vfoが最大電圧(上限電圧値Vfmax)に到達しておらず、最大電圧飽和状態になっていない。一方、図7では、界磁電圧指令値Vfoの増加量が大きく、界磁電圧指令値Vfoが最大電圧(上限電圧値Vfmax)に到達しており、最大電圧飽和状態になっている。
まず、図6について説明する。各グラフの縦軸は、物理量を無次元化して表している。界磁電圧は、印加可能な最大電圧を1で表している。
時刻t01で、トルク指令値Toが0からステップ的に増加している。そして、トルク指令値Toに応じて算出される界磁電流指令値Ifoが、0からステップ的に増加している。また、トルク指令値Toに応じて、最大トルク電流制御により算出されるq軸の電流指令値Iqoが、0からステップ的に増加し、d軸の電流指令値Idoが、0からステップ的に減少している。
出力トルクTrは、ロータ磁束ψとq軸電流Iqとの乗算値に比例する。ロータ磁束ψは、界磁電流Ifに応じて変化する。界磁電流のフィードバック制御系の応答性は、d軸及びq軸の電流のフィードバック制御系の応答性よりも遅い。そのため、界磁電流検出値Ifrは、d軸及びq軸の電流検出値Idr、Iqrよりも遅れて変化している。よって、主に、界磁電流Ifの応答遅れによって、出力トルクTrの応答遅れが生じている。
時刻t01の直後において、界磁電流検出値Ifrの増加によるロータ磁束の増加量よりも、d軸の電流検出値Idrの減少によるロータ磁束の減少量が上回ったため、ロータ磁束が一時的に低下し、出力トルクTrが一時的に低下している。
時刻t01で、界磁電流指令値Ifoと界磁電流検出値Ifrとの界磁電流偏差ΔIfが増加し、PI制御(特に、比例項)により演算される界磁電圧指令値Vfoが増加している。しかし、界磁電圧指令値Vfoの増加量が小さく、界磁電圧指令値Vfoは、上限電圧値Vfmaxにより上限制限されていない。そのため、界磁電流のフィードバック制御系の応答性は、損なわれておらず、界磁電流検出値Ifrは、界磁電流指令値Ifoにフィードバック制御系の応答性(時定数)で追従している。
次に、図7について説明する。図6と同様に、各グラフの縦軸は、物理量を無次元化して表している。界磁電圧は、印加可能な最大電圧を1で表している。
時刻t11で、図6と同様に、トルク指令値Toが0からステップ的に増加し、界磁電流指令値Ifoが、0からステップ的に増加し、q軸の電流指令値Iqoが、0からステップ的に増加し、d軸の電流指令値Idoが、0からステップ的に減少している。しかし、図6に比べて、トルク指令値Toの増加量が大きくなっているため、界磁電流指令値Ifoの増加量、q軸の電流指令値Iqoの増加量、d軸の電流指令値Idoの減少量が大きくなっている。
そのため、図6に比べて、界磁電流偏差ΔIfが大きくなっており、PI制御(特に、比例項)により演算される界磁電圧指令値Vfoが大きくなっている。界磁電圧指令値Vfoは、上限電圧値Vfmaxにより上限制限され、最大電圧飽和状態になっている(時刻t11から時刻t12まで)。そのため、界磁電流のフィードバック制御系の応答性が、損なわれており、界磁電流検出値Ifrは、界磁電流指令値Ifoにフィードバック制御系の本来の応答性(時定数)よりも遅い応答性で追従している。よって、界磁電流検出値Ifrの応答遅れが大きくなっており、界磁電流検出値Ifrに応じて変化するロータ磁束ψ及び出力トルクTrの応答遅れが大きくなっている。
このように、比較例では、界磁電流のフィードバック制御系の応答遅れによって、ロータ磁束ψ及び出力トルクTrの応答遅れが生じている。特に、界磁電圧指令値Vfoが最大電圧(上限電圧値Vfmax)に到達する最大電圧飽和状態、又は界磁電圧指令値Vfoが最小電圧(下限電圧値Vfmin)に到達する最小電圧飽和状態になると、界磁電流のフィードバック制御系の応答性が悪化し、ロータ磁束ψ及び出力トルクTrの応答性が悪化する。
<界磁巻線の応答性>
界磁巻線の電圧方程式は、次式で表せられる。ここで、ψは、ロータの鉄心の磁束であり、Rfは、界磁巻線の抵抗であり、Vfは、界磁巻線の印加電圧である。
Figure 0007046121000002
式(7)を変形すると次式を得る。ここで、電流微分インダクタンスdLIfは、ロータ磁束ψを界磁電流Ifについて微分したものである。電流微分インダクタンスdLIfは、界磁電流Ifの各動作点における、界磁電流Ifの変化に対するロータ磁束ψの変化の比とも表現できる。
Figure 0007046121000003
式(8)をラプラス変換して変形すると、界磁巻線の伝達関数Gpf(s)は、次式のようになる。
Figure 0007046121000004
式(9)に示すように、制御対象である界磁巻線の伝達関数Gpf(s)の応答性(時定数)は、電流微分インダクタンスdLIfに比例する。よって、電流微分インダクタンスdLIfを減少させることで、制御対象である界磁巻線の応答性を向上させることができる。
<d軸電流の変化による、ロータ磁束ψの応答性の向上>
図8の上段に示すように、d軸電流Id=0の条件では、界磁電流Ifが動作点Aよりも小さい領域では、ロータに磁気飽和が生じておらず、界磁電流Ifに比例して、ロータ磁束ψが増加しており、電流微分インダクタンスdLIfは一定値になっている。一方、界磁電流Ifが動作点Aよりも大きくなると、ロータの鉄心に磁気飽和が生じ、界磁電流Ifの増加に対するロータ磁束ψの増加の傾きが減少している。ここで、ロータ磁束ψは、ロータ磁束のd軸成分である。そのため、図8の下段に示すように、ロータ磁束ψを界磁電流Ifについて微分した電流微分インダクタンスdLIfは、界磁電流Ifが動作点Aよりも増加するに従って減少している。
<理論上のロータ磁束ψ0と、磁気飽和による実際の磁束ψ>
磁気飽和が生じない場合の理論上のロータ磁束ψ0は、次式に示すように、理論上の界磁巻線のインダクタンスLf0に界磁電流Ifを乗算した磁束と、理論上のd軸インダクタンスLd0にd軸電流Idを乗算した磁束と、を合計した磁束になる。ここで、理論上の界磁巻線のインダクタンスLf0は、界磁巻線の巻数(巻数の2乗)に応じたインダクタンスであり、理論上のd軸インダクタンスLd0は、電機子巻線の巻数(巻数の2乗)に応じたインダクタンスである。
ψ0=Lf0×If+Ld0×Id ・・・(10)
しかし、次式及び図9に示すように、磁気飽和が生じると、実際のロータ磁束ψは、磁気飽和が生じない場合の理論上の磁束ψ0から低下する。fψ()は、ロータの鉄心の磁気飽和特性を表す関数である。
ψ=fψ(ψ0) ・・・(11)
<d軸電流に応じた、磁束ψの平行移動>
式(10)を変形すると次式を得る。
ψ0=Lf0×(If+Ksr×Id)
Ksr=Ld0/Lf0 ・・・(12)
ここで、Ksrは、d軸電流Idを界磁電流相当値に変換する換算定数である。換算定数Ksrは、界磁巻線の巻数に応じた界磁巻線のインダクタンスLf0に対する、電機子巻線の巻数に応じたd軸インダクタンスLd0の比率になる。
式(12)に示すように、理論上の磁束ψ0が同じ値になる界磁電流Ifは、d軸電流Idに-Ksrを乗算した値に応じて変化する。式(11)及び図9に示したように、同じ値の理論上の磁束ψ0に対応する実際の磁束ψは、同じ値になる。そのため、図8に示したように、実際のロータ磁束ψ及び電流微分インダクタンスdLIfの特性は、d軸電流Idに-Ksrを乗算した値に応じて、界磁電流Ifの方向(横方向)に平行移動する。
<目標のロータ磁束ψoを得るためのd軸電流の変化>
目標のロータ磁束ψoを得るためのd軸電流Idの設定を検討する。例えば、図8において、界磁電流指令値Ifo及びd軸の基本電流指令値Idobにおけるロータ磁束ψを、目標のロータ磁束ψoとする。目標の電流微分インダクタンスdLIfoを、目標のロータ磁束ψoに対応させて設定する。式(12)から、界磁電流Ifが、界磁電流指令値Ifoであり、d軸電流Idがd軸の基本電流指令値Idobである場合の、理論上の目標のロータ磁束ψo0は、次式となる。
ψo0=Lf0×(Ifo+Ksr×Idob) ・・・(13)
そして、現在の界磁電流検出値Ifrにおいて、理論上の目標のロータ磁束ψo0を得るための変化後のd軸の電流指令値をIdochgとすると、式(12)から次式を得る。
ψo0=Lf0×(Ifr+Ksr×Idochg) ・・・(14)
式(14)を式(13)に代入し、変化後のd軸の電流指令値Idochgについて整理すると次式を得る。ここで、ΔIdoは、d軸の電流指令値の変化量である。
Idochg=Idob+ΔIdo
ΔIdo=(Ifo-Ifr)/Ksr ・・・(15)
よって、界磁電流の応答遅れにより、ロータ磁束ψが、界磁電流指令値Ifo及びd軸の基本電流指令値Idobに対応する目標のロータ磁束ψoから逸脱しても、d軸の電流指令値Idoを、界磁電流偏差ΔIf(=Ifo-Ifr)に応じたd軸の電流指令値の変化量ΔIdoだけ変化させることにより、ロータ磁束ψを目標のロータ磁束ψoに近づけることができる。
そこで、電機子電流制御部33は、界磁電流指令値Ifoと界磁電流検出値Ifrとの偏差(界磁電流偏差ΔIf)に応じて、d軸の電流指令値Idoを変化させる。
本実施の形態では、電機子電流制御部33は、式(15)を用いて、d軸の電流指令値の変化量ΔIdoを算出し、d軸の電流指令値の変化量ΔIdoによりd軸の電流指令値Idoを変化させる。本実施の形態では、式(1)を用いて説明したように、電機子電流制御部33は、d軸の基本電流指令値Idobに、d軸の電流指令値の変化量ΔIdoを加算した値を、最終的なd軸の電流指令値Idoに設定する。本実施の形態では、d軸電流の変化条件は、常時成立しているものとする。
界磁電流指令値Ifoに対する界磁電流検出値Ifrの応答遅れにより生じる、界磁電流指令値Ifo及びd軸の基本電流指令値Idobに対応する目標のロータ磁束ψoに対するロータ磁束の応答遅れを、d軸電流の変化により生じるロータ磁束の変化により低減することができる。よって、ロータ磁束の応答遅れにより生じる出力トルクの応答遅れを低減することができる。また、ロータ磁束と同様に、電流微分インダクタンスdLIfの応答遅れを低減することができ、界磁電流のフィードバック制御系の応答性の変動を低減することができる。特に、界磁電圧指令値Vfoが最大電圧(上限電圧値Vfmax)に到達する最大電圧飽和状態になり、フィードバック制御系の応答性が悪化し、界磁電流偏差ΔIfが大きくなっても、界磁電流偏差ΔIfに応じたd軸電流の変化により、ロータ磁束の応答遅れ及びロータ磁束の応答遅れにより生じる出力トルクの応答遅れを低減することができる。また、電流微分インダクタンスdLIfの応答遅れを低減することができ、界磁電流のフィードバック制御系の応答性の悪化を抑制することができる。
<制御挙動>
図10及び図11に、比較例の図6及び図7と同様の条件で、d軸の電流指令値の変化処理が行われる本実施の形態に係る制御挙動を示す。図6及び図7と同様に、各グラフの縦軸は、物理量を無次元化して表している。界磁電圧は、印加可能な最大電圧を1で表している。
まず、図10について説明する。時刻t21で、図6と同様に、トルク指令値Toが0からステップ的に増加し、界磁電流指令値Ifoが、0からステップ的に増加し、q軸の電流指令値Iqoが、0からステップ的に増加し、d軸の基本電流指令値Idobが、0からステップ的に減少している。
時刻t21の後、界磁電流偏差ΔIfが増加したため、界磁電流偏差ΔIfに応じたd軸の電流指令値の変化量ΔIdoが増加し、d軸の電流指令値Idoが、時刻t21でステップ的に低下したd軸の基本電流指令値Idobよりも増加している。d軸電流の増加により、ロータ磁束は、界磁電流指令値Ifo及びd軸の基本電流指令値Idobに対応する目標のロータ磁束に近づけられている。よって、図6のような出力トルクTrの低下は生じておらず、出力トルクTrの応答遅れを低減することができる。
次に、図11について説明する。時刻t31で、図7と同様に、トルク指令値Toが0からステップ的に増加し、界磁電流指令値Ifoが、0からステップ的に増加し、q軸の電流指令値Iqoが、0からステップ的に増加し、d軸の基本電流指令値Idobが、0からステップ的に減少している。
図7と同様に、トルク指令値Toの増加量が大きくなっているため、界磁電圧指令値Vfoは、上限電圧値Vfmaxにより上限制限され、最大電圧飽和状態になっている(時刻t31から時刻t32まで)。
時刻t31の後、界磁電流偏差ΔIfが増加したため、d軸の電流指令値の変化量ΔIdoが増加し、d軸の電流指令値Idoが、時刻t31でステップ的に低下したd軸の基本電流指令値Idobよりも増加している。d軸電流の増加により、ロータ磁束は、界磁電流指令値Ifo及びd軸の基本電流指令値Idobに対応する目標のロータ磁束に近づけられている。よって、図7よりも、出力トルクTrの立ち上がりの応答性がよくなっており、全体的に出力トルクTrの応答遅れが低減している。
界磁巻線のインダクタンスは、電機子巻線のインダクタンスに比べて大きい。界磁電流指令値Ifoから界磁電流検出値Ifrまでの界磁電流のフィードバック制御系の応答周波数は、d軸及びq軸の電流指令値Ido及びIqoからd軸及びq軸の電流検出値Idr、Iqrまでの電機子電流のフィードバック制御系の応答周波数に比べて低く設定されている。ここで、応答周波数は、閉ループ伝達関数のカットオフ周波数及び時定数の逆数に相当する。よって、d軸電流の増加速度は、界磁電流の増加速度よりも早くなっている。d軸の電流指令値の増加により、速やかにd軸電流を増加させ、ロータ磁束を増加させることができている。
また、d軸電流の増加により、電流微分インダクタンスdLIfは、界磁電流指令値Ifo及びd軸の基本電流指令値Idobに対応する目標の電流微分インダクタンスに近づけられている。よって、最大電圧飽和状態による界磁電流のフィードバック制御系の応答性の悪化を低減することができ、図7よりも、界磁電流検出値Ifrの応答性を向上させることができている。そのため、図7よりも、界磁電流偏差ΔIfを応答性良く低減させることができ、早期に最大電圧飽和状態を解消でき、フィードバック制御系の応答性の悪化を解消できている。よって、最大電圧飽和状態が生じた場合でも、界磁電流検出値Ifr及び出力トルクTrの応答遅れを低減することができる。なお、ΔIdoが負になる場合には図8のようにロータ磁束を減少、インダクタンスを増加させる側になり回路による応答時定数が大きくなるため、ΔIdoを0以上とすることでロータ磁束を増加、インダクタンスを低下させることができる。
<q軸の電流指令値の増加>
一方、図10及び図11に示したように、d軸電流の増加によりロータ磁束が、界磁電流指令値Ifo及びd軸の基本電流指令値Idobに対応する目標のロータ磁束に近づけられているが、トルク指令値Toに対して出力トルクTrが十分に増加していない。これは、d軸電流を増加させることによりリラクタンストルクが低下することによる。
回転機の出力トルクTrは、次式のように、与えられる。ここで、Pmは、極対数であり、ψは、上述したロータ磁束(d軸成分)であり、Lqは、q軸インダクタンスである。リラクタンストルクが生じる回転機では、多くの場合、Ld<Lqになり、(Ld―Lq)<0になる。
Tr=Pm×Iq×{Lf×If+(Ld-Lq)×Id}
=Pm×Iq×{ψ-Lq×Id}
=Pm×Iq×{ψ-Lq×(Idob+ΔIdo)} ・・・(16)
式(16)のd軸のロータ磁束ψは、d軸電流の増加により、目標のロータ磁束になる。一方、q軸のロータ磁束は、d軸電流の増加により、Lq×ΔIdoだけ減少し、出力トルクは、Pm×Iq×Lq×ΔIdoだけ低下する。よって、次式に示すように、q軸電流Iqを、出力トルクの変化分Pm×Iq×Lq×ΔIdoを補うように変化させれば、出力トルクの変化を抑制することができる。
Figure 0007046121000005
ここで、ΔIqoは、q軸の電流指令値の変化量であり、Toは、トルク指令値である。
よって、電機子電流制御部33は、d軸の電流指令値の変化量ΔIdoに応じて、q軸の電流指令値Iqoを変化させてもよい。例えば、電機子電流制御部33は、d軸電流の変化条件が成立している期間、演算周期毎に、式(17)を用い、q軸の電流指令値の変化量ΔIqoを算出し、q軸の基本電流指令値Iqobにq軸の電流指令値の変化量ΔIqoを加算した値を、最終的なq軸の電流指令値Iqoに設定する。
<車両の発電電動機として用いられる場合>
本実施の形態の回転機の制御装置を、車両用の発電電動機に使用する場合、図17のような構成となる。回転機1のロータの回転軸は、プーリ及びベルト機構101を介して、内燃機関100のクランク軸に連結されている。回転機1の回転軸は、内燃機関100及び変速装置102を介して車輪103に連結される。回転機1は、電動機として機能し、内燃機関100の補機として、車輪103の駆動力源となると共に、発電機として機能し、内燃機関100の回転を利用して発電を行う。
近年は、アイドルストップ車が増加しており、回転機1の駆動トルクにより内燃機関を再始動させる際の、駆動トルクの立ち上がり時間の短縮が求められている。回転機の制御装置において、界磁電流の立ち上がり時間が遅れると、駆動トルクの立ち上がり時間および発電の立ち上がり時間が遅れる。上述したように、界磁電流偏差ΔIfに応じてd軸電流を変化させることで、界磁電流の応答遅れによるロータ磁束及び出力トルクの応答遅れを低減することができる。
2.実施の形態2
次に、実施の形態2に係る回転機1及び制御装置11について説明する。上記の実施の形態1と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係る回転機1及び制御装置11の基本的な構成は実施の形態1と同様であるが、d軸電流の変化条件の設定方法が、実施の形態1と異なる。
本実施の形態では、電機子電流制御部33は、界磁電圧指令値Vfoが界磁巻線に印加できる最大電圧(上限電圧値Vfmax)以上になる最大電圧飽和状態になった場合に、d軸電流の変化条件が成立したと判定し、界磁電流偏差ΔIfに応じてd軸の電流指令値Idoを変化させる。
図7及び図11を用いて上述したように、最大電圧飽和状態になると、特に、界磁電流の応答遅れが大きくなり、ロータ磁束及び出力トルクの応答遅れが大きくなるので、界磁電流偏差ΔIfに応じてd軸の電流指令値Idoを変化させることにより、ロータ磁束、出力トルク、及び界磁電流の応答遅れを低減することができる。
電機子電流制御部33は、最大電圧飽和状態になりd軸電流の変化条件が成立した後、次式が満たされた場合に、d軸電流の変化条件が成立しなくなったと判定し、d軸の電流指令値の変化処理を終了する。
Ifr+Idob×Ksr≧Ifsat0 ・・・(18)
ここで、Ifsat0は、d軸電流Idが0である場合にロータに目標の磁気飽和が生じる目標の界磁電流値であり、予め設定される。界磁電流検出値Ifrの増加により、式(18)が満たされるようになると、d軸の電流指令値Idoを、d軸の基本電流指令値Idobに戻しても、ロータに目標の磁気飽和を生じさせることができ、界磁電流の応答性が悪化しないと判断できる。
或いは、電機子電流制御部33は、最大電圧飽和状態になりd軸電流の変化条件が成立した後、界磁電流偏差ΔIfの絶対値が、解除判定値Thcn以下になった場合に、界磁電流偏差ΔIfに応じたd軸の電流指令値Idoの変化を終了してもよい。
界磁電流検出値Ifrが界磁電流指令値Ifoに近づき、界磁電流の応答遅れが解消している場合は、d軸電流の変化処理を終了することができる。
式(1)を用いて上述したように、電流指令値算出部331は、d軸電流の変化条件が成立していない場合は、ベクトル制御方法に従って設定されたd軸の基本電流指令値Idobを、最終的なd軸の電流指令値Idoに設定し、d軸電流の変化条件が成立している場合は、d軸の基本電流指令値Idobにd軸の電流指令値の変化量ΔIdoを加算した値を、最終的なd軸の電流指令値Idoに設定する。
<制御挙動>
図12に、実施の形態1の図11と同様の条件の制御挙動を示す。図11と同様に、各グラフの縦軸は、物理量を無次元化して表している。界磁電圧は、印加可能な最大電圧を1で表している。
時刻t41で、図11と同様に、界磁電流指令値Ifoが、0からステップ的に増加し、界磁電圧指令値Vfoが、上限電圧値Vfmaxにより上限制限され、最大電圧飽和状態になったので、d軸電流の変化条件が成立している。
時刻t41から時刻t42の間、d軸電流の変化条件が成立しているので、界磁電流偏差ΔIfに応じてd軸の電流指令値の変化量ΔIdoが算出され、d軸の基本電流指令値Idobにd軸の電流指令値の変化量ΔIdoを加算した値が、d軸の電流指令値Idoに設定されている。そのため、図11で説明したように、最大電圧飽和状態が生じた場合に、界磁電流及び出力トルクTrの応答遅れを低減することができる。
そして、時刻t42で、式(18)が成立したので、電機子電流制御部33は、d軸電流の変化条件が成立しなくなったと判定し、d軸の電流指令値の変化処理を終了し、d軸の基本電流指令値Idobをd軸の電流指令値Idoに設定している。式(18)が満たされるようになると、d軸の電流指令値Idoをd軸の基本電流指令値Idobに戻しても、界磁電流及び出力トルクTrの応答遅れは悪化していない。
3.実施の形態3
次に、実施の形態3に係る回転機1及び制御装置11について説明する。上記の実施の形態1と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係る回転機1及び制御装置11の基本的な構成は実施の形態1と同様である。実施の形態1では、電機子巻線と界磁巻線と間の相互インダクタンスが微小である場合であったが、本実施の形態では、電機子巻線と界磁巻線と間の相互インダクタンスが無視できないほど大きい。
そのため、界磁巻線の電圧方程式は、次式で表せられる。実施の形態1の式(8)に比べて、左辺の第2項に相互インダクタンスMfの項が追加されている。
Figure 0007046121000006
<界磁電流指令値Ifoの増加時の制御挙動>
図13に、相互インダクタンスMfを無視できない回転機1に対して、d軸の基本電流指令値Idobが、そのまま、d軸の電流指令値Idoに設定される比較例の制御挙動を示す。各グラフの縦軸は、物理量を無次元化して表している。界磁電圧は、印加可能な最大電圧を1で表している。
時刻t51で、トルク指令値Toが0からステップ的に増加し、界磁電流指令値Ifoが、0からステップ的に増加し、q軸の電流指令値Iqoが、0からステップ的に増加し、d軸の電流指令値Idoが、0からステップ的に減少している。トルク指令値Toの増加量が大きくなっているため、界磁電流指令値Ifoの増加量が大きくなっている。
界磁電圧指令値Vfoは、上限電圧値Vfmaxにより上限制限され、最大電圧飽和状態になっている(時刻t51から時刻t52まで)。そのため、界磁電流のフィードバック制御系の応答性が悪化している。
時刻t51の直後に、d軸の電流検出値Idrが急峻に減少するため、式(19)の左辺の第2項が正方向に大きくなり、式(19)の右辺全体が昇圧されることで、界磁電流検出値Ifrが増加し、応答性が向上している。
しかし、その後は、最大電圧飽和状態であるため、界磁電流検出値Ifrの応答遅れが大きくなっており、界磁電流検出値Ifrに応じて変化するロータの磁束ψ及び出力トルクTrの応答遅れが大きくなっている。
次に、図14に、図13と同様の条件で、界磁電流偏差ΔIfに応じたd軸の電流指令値の変化処理が行われる本実施の形態に係る制御挙動を示す。
図13と同様に、界磁電圧指令値Vfoは、上限電圧値Vfmaxにより上限制限され、最大電圧飽和状態になっている(時刻t61から時刻t62まで)。時刻t61以降、界磁電流偏差ΔIfが大きくなっているので、d軸の電流指令値の変化量ΔIdoが大きくなり、d軸の電流指令値Idoが大きく増加される。
時刻t61の直後に、d軸の電流検出値Idrが急峻に増加するため、式(19)の左辺の第2項が負方向に大きくなり、式(19)の右辺全体が降圧されることで、界磁電流検出値Ifrが低下し、負の値になっている。
時刻t61の直後において、d軸の電流検出値Idrの増加によるロータ磁束の増加量よりも、界磁電流検出値Ifrの減少によるロータ磁束の減少量が上回ったため、ロータ磁束が一時的に低下し、出力トルクTrが一時的に低下している。
ロータ磁束ψは、式(10)及び式(11)により表され、d軸電流Idと界磁電流Ifとのバランスにより定まるが、負になる可能性がある。そこで、ロータに、電磁石と同じ磁束方向を有する永久磁石が設けられてもよい。永久磁石を設けることで、ロータ磁束ψが負になることを抑制できる。
よって、図13と比べ、d軸の電流検出値Idrが増加している間は、界磁電流検出値Ifrの増加が遅れており、出力トルクTrの増加が遅れている。一方、d軸電流の増加により、ロータが磁気飽和の状態になり、界磁電流検出値Ifrが応答性良く増加している。そして、界磁電流検出値Ifrの増加によって、式(15)により算出されるd軸の電流指令値の変化量ΔIdoが次第に低下し、d軸の電流検出値Idrが次第に低下すると、式(19)の左辺の第2項が正になり、界磁電流検出値Ifrを増加させる方向に作用する。よって、図13と比べ、界磁電流検出値Ifrの増加が速くなり、出力トルクTrの増加が速くなっている。
よって、相互インダクタンスMfが大きい回転機1では、界磁電流指令値Ifoが増加し、界磁電流偏差ΔIfが増加した直後は、界磁電流If及び出力トルクTrの増加が遅れるが、その後、界磁電流If及び出力トルクTrの増加が速くなる。よって、相互インダクタンスMfが小さい回転機1と同じように、d軸電流の変化により、界磁電流If及び出力トルクTrの応答性を向上させることができる。
また、相互インダクタンスMfによる出力トルクTrの変動を低減するために、d軸の電流指令値の変化量ΔIdoに、応答遅れ処理(例えば、一次遅れ処理)を行って、式(19)の左辺の第2項の絶対値を小さくしたり、式(17)を用いて説明したように、d軸の電流指令値の変化量ΔIdoに応じてq軸の電流指令値Iqoを変化させたりしてもよい。
<界磁電流指令値Ifoの減少時の制御挙動>
図15に、相互インダクタンスMfを無視できない回転機1に対して、d軸の基本電流指令値Idobが、そのまま、d軸の電流指令値Idoに設定される比較例の制御挙動を示す。各グラフの縦軸は、物理量を無次元化して表している。界磁電圧は、印加可能な最小電圧を-1で表している。
時刻t71で、トルク指令値Toがステップ的に減少し、界磁電流指令値Ifoが、ステップ的に減少し、q軸の電流指令値Iqoが、ステップ的に減少し、d軸の電流指令値Idoが、ステップ的に増加している。
時刻t71の直後に、d軸の電流検出値Idrが急峻に増加するため、式(19)の左辺の第2項が負方向に大きくなり、式(19)の右辺全体が降圧されることで、界磁電流検出値Ifrが低下し、応答性が向上している。しかし、その後は、界磁電流Ifの応答遅れが大きくなっており、出力トルクTrの応答遅れが生じている。そして、時刻t72で、界磁電流検出値Ifrが界磁電流指令値Ifoに到達し、出力トルクTrがトルク指令値Toに到達している。
次に、図16に、図15と同様の条件で、界磁電流偏差ΔIfに応じたd軸の電流指令値の変化処理が行われる本実施の形態に係る制御挙動を示す。
時刻t81で、界磁電流指令値Ifoが、ステップ的に減少し、界磁電流偏差ΔIfが負方向に大きくなっているので、d軸の電流指令値の変化量ΔIdoが小さくなり、d軸の電流指令値Idoが大きく減少している。
時刻t81の直後に、d軸の電流検出値Idrが急峻に減少するため、式(19)の左辺の第2項が負方向に大きくなり、式(19)の右辺全体が降圧されることで、界磁電流検出値Ifrが増加している。そのため、界磁電流偏差ΔIfが負方向に増加し、界磁電圧指令値Vfoは、下限電圧値Vfminにより下限制限され、最小電圧飽和状態になっている。
時刻t81の直後において、d軸の電流検出値Idrの減少により、ロータ磁束が減少したが、界磁電流検出値Ifrの増加により、ロータ磁束が増加したため、ロータ磁束の低下が一時的に不十分になり、出力トルクTrの低下速度が一時的に遅くなっている。
その後、界磁電流偏差ΔIfの絶対値が次第に減少するに従って、d軸の電流指令値の変化量ΔIdoが次第に増加する。d軸の電流検出値Idrが次第に増加すると、式(19)の左辺の第2項が負になり、界磁電流検出値Ifrを減少させる方向に作用する。時刻t82で、界磁電流検出値Ifrが界磁電流指令値Ifoに到達し、出力トルクTrがトルク指令値Toに到達している。よって、図15の時刻t72に比べ、最終的な界磁電流検出値Ifrの減少が速くなり、出力トルクTrの減少が速くなっている。
よって、相互インダクタンスMfが大きい回転機1では、界磁電流指令値Ifoが減少し、界磁電流偏差ΔIfが負方向に増加した直後は、界磁電流If及び出力トルクTrの減少が遅れるが、その後、界磁電流If及び出力トルクTrの減少が速くなる。よって、相互インダクタンスMfが小さい回転機1と同じように、d軸電流の変化により、界磁電流If及び出力トルクTrの応答性を向上させることができる。
また、相互インダクタンスMfによる出力トルクTrの変動を低減するために、d軸の電流指令値の変化量ΔIdoに、応答遅れ処理(例えば、一次遅れ処理)を行って、式(19)の左辺の第2項の絶対値を小さくしたり、式(17)を用いて説明したように、d軸の電流指令値の変化量ΔIdoに応じてq軸の電流指令値Iqoを変化させたりしてもよい。
<転用例>
上記の各実施の形態では、回転機1は、車両用の発電電動機である場合を例に説明した。しかし、回転機1は、電動機とされてもよく、発電機とされてもよく、車両以外の各種の装置に用いられてもよい。
上記の各実施の形態では、ステータに1組の3相の電機子巻線が設けられる場合を例に説明した。しかし、ステータに複数組(例えば2組)の電機子巻線が設けられ、各組の電機子巻線に対応してインバータ及び制御装置の電機子電流制御部が設けられてもよい。
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
1 回転機、4 界磁巻線、5 インバータ、9 コンバータ、11 回転機の制御装置、12 電機子巻線、14 ロータ、18 ステータ、32 電機子電流検出部、33 電機子電流制御部、Ido d軸の電流指令値、Idob d軸の基本電流指令値、ΔIdo d軸の電流指令値の変化量、Idr d軸の電流検出値、Iqo q軸の電流指令値、Iqob q軸の基本電流指令値、ΔIqo q軸の電流指令値の変化量、Iqr q軸の電流検出値、Ifo 界磁電流指令値、Ifr 界磁電流検出値、ΔIf 界磁電流偏差、Ifsat0 Id=0の目標飽和の界磁電流値、Ksr 換算定数、Mf 相互インダクタンス、Thcn 解除判定値、To トルク指令値、Tr 出力トルク、Vdc 直流電圧、Vdo d軸の電圧指令値、Vqo q軸の電圧指令値、Vfmax 界磁電圧指令値の上限電圧値、Vfmin 界磁電圧指令値の下限電圧値、Vfo 界磁電圧指令値、dLIf 電流微分インダクタンス

Claims (10)

  1. 界磁巻線を設けたロータと電機子巻線を設けたステータとを有する回転機を制御する回転機の制御装置であって、
    前記電機子巻線の電流指令値である電機子電流指令値を算出し、前記電機子電流指令値に基づいて電機子電圧指令値を算出し、前記電機子電圧指令値に基づいて、インバータが有するスイッチング素子をオンオフ制御することにより、前記電機子巻線に電圧を印加する電機子電流制御部と、
    前記界磁巻線に流れる界磁電流を検出する界磁電流検出部と、
    前記界磁巻線の電流指令値である界磁電流指令値を算出し、前記界磁電流指令値に基づいて界磁電圧指令値を算出し、前記界磁電圧指令値に基づいて、コンバータが有するスイッチング素子をオンオフ制御することにより、前記界磁巻線に電圧を印加する界磁電流制御部と、を備え、
    前記ロータの磁極の方向をd軸とし、前記d軸より電気角で90°進んだ方向をq軸とし、
    前記電機子電流制御部は、前記界磁電流指令値と界磁電流の検出値との偏差に応じて、前記電機子電流指令値のd軸成分を変化させ
    前記電機子電流制御部は、前記界磁電圧指令値が前記界磁巻線に印加できる最大電圧以上になる最大電圧飽和状態になった場合に、前記偏差に応じて前記電機子電流指令値のd軸成分を変化させる回転機の制御装置。
  2. 前記電機子電流制御部は、前記界磁電流の検出値をIfrとし、換算定数をKsrとし、変化前の前記電機子電流指令値のd軸成分をIdobとし、電機子電流のd軸成分が0である場合に前記ロータに目標の磁気飽和が生じる目標の界磁電流値をIfsat0とし、
    前記最大電圧飽和状態になった後、
    Ifr+Idob×Ksr≧Ifsat0
    の式が満たされた場合に、前記偏差に応じた前記電機子電流指令値のd軸成分の変化を終了する請求項に記載の回転機の制御装置。
  3. 前記電機子電流制御部は、前記最大電圧飽和状態になった後、前記偏差の絶対値が、解除判定値以下になった場合に、前記偏差に応じた前記電機子電流指令値のd軸成分の変化を終了する請求項に記載の回転機の制御装置。
  4. 前記換算定数は、前記界磁巻線の巻数に応じた界磁巻線のインダクタンスに対する、前記電機子巻線の巻数に応じたd軸インダクタンスの比率に設定されている請求項2に記載の回転機の制御装置。
  5. 界磁巻線を設けたロータと電機子巻線を設けたステータとを有する回転機を制御する回転機の制御装置であって、
    前記電機子巻線の電流指令値である電機子電流指令値を算出し、前記電機子電流指令値に基づいて電機子電圧指令値を算出し、前記電機子電圧指令値に基づいて、インバータが有するスイッチング素子をオンオフ制御することにより、前記電機子巻線に電圧を印加する電機子電流制御部と、
    前記界磁巻線に流れる界磁電流を検出する界磁電流検出部と、
    前記界磁巻線の電流指令値である界磁電流指令値を算出し、前記界磁電流指令値に基づいて界磁電圧指令値を算出し、前記界磁電圧指令値に基づいて、コンバータが有するスイッチング素子をオンオフ制御することにより、前記界磁巻線に電圧を印加する界磁電流制御部と、を備え、
    前記ロータの磁極の方向をd軸とし、前記d軸より電気角で90°進んだ方向をq軸とし、
    前記電機子電流制御部は、前記界磁電流指令値と界磁電流の検出値との偏差に応じて、前記電機子電流指令値のd軸成分を変化させ、
    前記界磁電流指令値をIfoとし、前記界磁電流の検出値Ifrとし、換算定数をKsrとし、前記電機子電流指令値のd軸成分の変化量をΔIdoとし、
    ΔIdo=(Ifo-Ifr)/Ksr
    の式を用いて、前記変化量を算出し、前記変化量により前記電機子電流指令値のd軸成分を変化させ、
    前記換算定数は、前記界磁巻線の巻数に応じた界磁巻線のインダクタンスに対する、前記電機子巻線の巻数に応じたd軸インダクタンスの比率に設定されている回転機の制御装置。
  6. 前記電機子電流制御部は、前記電機子電流指令値のd軸成分の前記変化量を0以上に設定する請求項に記載の回転機の制御装置。
  7. 界磁巻線を設けたロータと電機子巻線を設けたステータとを有する回転機を制御する回転機の制御装置であって、
    前記電機子巻線の電流指令値である電機子電流指令値を算出し、前記電機子電流指令値に基づいて電機子電圧指令値を算出し、前記電機子電圧指令値に基づいて、インバータが有するスイッチング素子をオンオフ制御することにより、前記電機子巻線に電圧を印加する電機子電流制御部と、
    前記界磁巻線に流れる界磁電流を検出する界磁電流検出部と、
    前記界磁巻線の電流指令値である界磁電流指令値を算出し、前記界磁電流指令値に基づいて界磁電圧指令値を算出し、前記界磁電圧指令値に基づいて、コンバータが有するスイッチング素子をオンオフ制御することにより、前記界磁巻線に電圧を印加する界磁電流制御部と、を備え、
    前記ロータの磁極の方向をd軸とし、前記d軸より電気角で90°進んだ方向をq軸とし、
    前記電機子電流制御部は、前記界磁電流指令値と界磁電流の検出値との偏差に応じて、前記電機子電流指令値のd軸成分を変化させ、
    前記電機子電流制御部は、前記電機子電流指令値のd軸成分の変化量に応じて、前記電機子電流指令値のq軸成分を変化させる回転機の制御装置。
  8. 前記界磁電流指令値から界磁電流値までの制御系の応答周波数は、前記電機子電流指令値から電機子電流値までの制御系の応答周波数よりも低い請求項1から7のいずれか一項に記載の回転機の制御装置。
  9. 前記ロータは、前記界磁巻線に加えて永久磁石を設けた請求項1からのいずれか一項に記載の回転機の制御装置。
  10. 前記回転機は、車両用の発電電動機である請求項1からのいずれか一項に記載の回転機の制御装置。
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