以下、本発明に係るウェーハ面取り装置の一実施例を、図面を用いて説明する。図1は、ウェーハ面取り装置10の一実施例の概略上面図であり、図2は、図1に示すウェーハ面取り装置10の主要部である加工部16A(16B)の正面図である。
ウェーハ面取り装置10は、供給回収部12、プリアライメント部14、2つの加工部16A、16B、オリエンテーション・フラット(以下、オリフラと称す)研磨部18、洗浄部20、後測定部22、及び搬送部24、操作パネル17および制御装置15を有している。供給回収部12は、面取り加工するウェーハWをウェーハカセット30から加工側19へ供給するとともに、面取り加工されたウェーハWを加工側19からウェーハカセット30に回収する。本実施例の供給回収部12は、4台のカセットテーブル32と、1台の供給回収ロボット34を備える。
供給回収ロボット34は、カセットテーブル32にセットされた各ウェーハカセット30からウェーハWを1枚ずつ取り出してプリアライメント部14に供給する。それとともに、面取り加工されたウェーハWを後測定部22からウェーハカセット30に収納する。供給回収ロボット34は3軸回転型の搬送アーム36を備えており、吸着パッドでウェーハWの裏面を真空吸着してウェーハWを保持する。供給回収ロボット34の搬送アーム36は、ガイドレール38に沿って移動可能なスライドブロック40上に設けられている。スライドブロック40が前後方向(Y軸方向)に移動することにより、搬送アーム36が移動する。
プリアライメント部14は、面取り加工するウェーハWの厚さ測定とプリアライメントを実行する。プリアライメント部14は、測定テーブル50、厚さセンサ52、及びオリフラ検出センサ54を備える。測定テーブル50は、その中心軸回りにウェーハWを回転させる。厚さセンサ52は、静電容量センサであり、ウェーハWの表面から裏面までの距離を測定する。静電容量センサの測定結果は、図示しない演算装置に出力され、ウェーハWの厚さが求められる。オリフラ検出センサ54は、レーザセンサであり、ウェーハWのオリフラの位置を検出する。
2つの加工部16A、16Bは、ウェーハ面取り装置10の正面部に並列して配置されており、それぞれ、ウェーハWの外周面取りの全加工、すなわち、粗加工から仕上げ加工までを実行する。加工部16A、16Bは互いに同一の構成であり、ウェーハ送り装置60、外周研削装置62を備える。
オリフラ研磨部18は、ウェーハWのオリフラ部を仕上げ加工する。オリフラ研磨部18は、ウェーハ送り装置70及びオリフラ研磨ユニット72を有する。ウェーハ送り装置70は、ウェーハWを吸着保持し、前後方向(Y軸方向)、左右方向(X軸方向)、及び上下方向(Z軸方向)と、中心軸(θ軸)回りの回転方向に移動可能なチャックテーブル74を有する。オリフラ研磨ユニット72は、オリフラ部の仕上げ加工(仕上げ研磨)するオリフラ研磨ヘッド76を備える。
洗浄部20は、面取り加工後のウェーハWを洗浄するものであり、洗浄テーブル82で保持したウェーハWを回転させながら、ウェーハWの表面に洗浄液を噴射して、ウェーハWの表面に付着した汚れを剥離除去する、スピン洗浄装置80を備える。後測定部22は、面取り加工したウェーハWの直径を測定するものであり、ウェーハWの直径を測定する直径測定器84、ウェーハWを保持して回転及び上下動させる測定テーブル86を有する。
搬送部24は、ウェーハ面取り装置10の各部にウェーハWを搬送するものであり、研削トランスファ部100、オリフラ精研トランスファ部102、洗浄トランスファ部104、及び収納トランスファ部106を備える。研削トランスファ部100は、水平ガイド110、110に沿ってスライド移動するスライドブロック112、112上に設けたトランスファアーム114を備える。トランスファアーム114の先端には吸着パッド116が取り付けられている。トランスファアーム114は、ウェーハWを保持した状態で、水平移動及び上下移動することができる。
オリフラ精研トランスファ部102、および洗浄トランスファ部104、収納トランスファ部106は、研削トランスファ部100と同様の構成で、それぞれ、水平ガイド110、スライドブロック112、トランスファアーム114、吸着パッド116を有する。
次に、本発明の特徴的部分である加工部16A、16Bの構成について、図2を用いて説明する。加工部16A、16Bの構成は同じであるから、加工部16Aについてのみ、説明するが、加工部16Bも同様である。
加工部16Aは、上述したように、ウェーハ送り装置60と外周研削装置62とを備える。ウェーハ送り装置60は、本体ベース141上に載置されたX軸ベース121、2本のX軸ガイドレール122、4個のX軸リニアガイド123、ボールスクリューとサーボモータで構成されたX軸駆動手段125により、図2のX方向に移動されるXテーブル124を有する。Xテーブル124には、2本のY軸ガイドレール126、4個のY軸リニアガイド127、図示しないボールスクリューとサーボモータから構成されるY軸駆動手段により、図2のY方向に移動されるYテーブル128が組込まれている。
Yテーブル128の上部には、2本のZ軸ガイドレール129と図示しない4個のZ軸リニアガイドによって案内され、ボールスクリュー及びステッピングモータを備えるZ軸駆動手段130によって図のZ方向に移動されるZテーブル131が組込まれている。Zテーブル131には、θ軸モータ132、θスピンドル133が組込まれている。θスピンドル133には、ウェーハWを吸着載置するウェーハテーブル134が取り付けられている。
ウェーハテーブル134はウェーハテーブルの回転軸心CWを中心として図2のθ方向に回転する。ウェーハテーブル134の上面は、図1に示したトランスファアーム114が配設されており、トランスファアームの先端には、下向きに吸着パッド116が取り付けられている。吸着パッド116は真空源と連通し、面取り加工されるウェーハW、または面取り加工を行う砥石をツルーイングするツルーイング砥石(以下、ツルアーと称する)が載置されて吸着固定される。ウェーハ送り装置60が、ウェーハW及びツルアーを図2のθ方向に回転するとともに、X、Y、及びZ方向に移動する。
外周研削装置62は、複数の外周粗研削用溝が形成された外周加工砥石152が取り付けられ、図示しない外周砥石モータによって軸心CHを中心に回転駆動される外周砥石スピンドル151、外周加工砥石152の上方に取付けられた外周精研スピンドル154及び外周精研モータ156を有している。外周精研スピンドル154にはウェーハWの外周を仕上げ研削する面取り用砥石である外周精研削砥石155が取付けられている。外周精研削砥石155は、ロータリ163が回転することにより、加工位置へ移動する。外周精研削砥石155は、ウェーハテーブル134上面に載置された図示しないツルアー、またはウェーハテーブル下部に取り付けられた図示しないツルアーによりツルーイングされ、外周精研削用溝が形成される。
本実施例で使用するウェーハWは、タンタル酸リチウム(以下LTと称す)やニオブ酸リチウム(以下LNと称す)のインゴットからスライスされた化合物半導体ウェーハで、直径φ50~300mm程度の薄い円板状をしている。そして、X線回折や光像法を用いて、劈開面211が予め検出されている。検出された劈開面211に対して、角度を有して、ウェーハWの位置決め基準となるオリフラ210が円の一部を切り欠くように、形成されている。また、図1に示した直径測定器84または他の方法で、ウェーハWの直径Dは正確に求められている。さらに、ウェーハWの厚さtも、プリアライメント部14の厚さセンサ52で、予め正確に求められている。ウェーハWの直径D及び厚さt、オリフラ210と劈開面211との関係、等の計測および検出データは、各ウェーハWについて制御装置15が備える図示しない記憶手段に、ウェーハWの面取り加工開始までに記憶されている。
次に、図2及び図3以下を用いて、本発明の一実施例によるウェーハWの面取り加工開始まで及び面取り加工開始直後の状態について、説明する。図3は、研削トランスファ部100を用いて、ウェーハWをウェーハ送り装置60に移載した後のウェーハWの動きを説明する図である。初めに図3(a)に示すように、吸着パッド116に吸着された状態を保持して、ウェーハWはウェーハ送り装置60のウェーハテーブル134に載置されている(図2参照)。
制御装置15は、制御装置15に記憶されたウェーハWの直径D、ウェーハWの劈開面211及びオリフラ210の位置、ウェーハWの厚さt、に基づいて、ウェーハ送り装置60のZ軸を駆動するZ軸駆動手段を駆動する。そして、外周加工砥石152または外周精研削砥石155の加工高さ位置に、ウェーハWの研削位置である周囲部を合わせ、ウェーハWの高さ位置をロックする。ウェーハWの加工位置高さが合ったので、ウェーハWの劈開面211が外周加工砥石152または外周精研削砥石155に初めて当接するときに、その相対位置関係が、後述する図3(d)の状態、すなわち、ウェーハWの回転中心CWと外周加工砥石152の回転中心(CH)または外周精研削砥石155の回転中心を結ぶ線上に、劈開面が位置するまで、ウェーハWをθ軸モータ132を用いて回転させる(Op1)。言い換えれば、ウェーハWの劈開面211は、外周加工砥石152または外周精研削砥石155に最初に当接するときに、これら砥石152、155の接線方向に直角な方向に位置するよう、位置づけされる〔図3(b)〕。
このようにウェーハWの周方向位置を定めたら、θ軸モータ132の回動をロックし、X軸駆動手段125を用いて、ウェーハWをX軸方向に移動させる(Op2)。その際、ウェーハWの直径Dと外周加工砥石152または外周精研削砥石155の外径dを用いて、ウェーハWのX方向移動距離を正確に制御装置15が制御する。そのため、外周加工砥石152および外周精研削砥石155には、常時それらの外径dを検出できる検出装置を設けることが望ましい。もしくは、定期的にそれら砥石152、155の外径dを検出するようにする。上記X方向の移動が所定距離に達したら、X軸駆動手段125をロックし、それ以上のウェーハWのX方向の移動を防止する〔図3(c)〕。
ウェーハWの加工位置への接近を、外周加工砥石152または外周精研削砥石155の接線方向にすることができたので、図示しないY軸駆動手段を用いて制御装置15が、ウェーハWを外周加工砥石152または外周精研削砥石155に接近させる(Op3)。この時、制御装置15に記憶されたウェーハWの直径Dおよびそれら砥石の外径dを用いて、制御装置15は、ウェーハWが砥石152、155に最初に当接する位置が、ウェーハWの劈開面211であって、砥石152、155の接線方向に直交する方向であることを確認する。砥石152、155は高速で回転Rしているので、ウェーハWが砥石152、155に当接する直前はその接近速度を低下させて、当接の衝撃を緩和する。
ウェーハWが外周加工砥石152または外周精研削砥石155に当接した〔図3(d)〕ら、X軸駆動手段125のロックを解除し、以後はウェーハWの外周形状に沿った面取り加工を実施できるようにする。また、ロックしていたθ軸モータ132の回転を再開する。なお、θ軸モータ132の回転のロックや再開は、モータを直接オン/オフしてもよいし、クラッチ等を介して実行してもよい。θ軸モータ132の回転は減速されており、ウェーハWの回転は砥石152、155の回転に比べて桁違いに遅く、ウェーハWが劈開面211を起点として破損するのを防止する。ウェーハWが砥石152、155に当接したら、所定の研削諸元で外周面取り加工が開始される。
図4に、ウェーハWが砥石152(155)に当接した時の研削抵抗の発生状態を模式的に示す。砥石152(155)は右回りに高速回転Rしているものとする。ウェーハWは、砥石152(155)の回転方向と同じ右方向に低速回転(R0)している。劈開面211上の点を含む、当接点でもあり加工点でもあるウェーハWの点では、摩擦力または研削抵抗Fが発生する。ここで重要なことは、この研削抵抗Fは、劈開面211に直角な方向の力であり、劈開面211に平行な成分を有していないことである。このことについては、図5を用いてより詳しく説明する。
図5は、比較例として、ウェーハWの劈開面211が砥石152(155)に接近する方向に対して斜めの状態で、ウェーハWが砥石152(155)に当接する場合を示す、図3または図4に対応する図である。ウェーハWと砥石152(155)の当接位置では、図4の例と同様に研削抵抗Fが砥石152(155)の接線方向に発生する。その結果、当接部では研削抵抗Fにより、劈開面211方向の分力FPと劈開面211に垂直な分力FTが発生する。
ところで、単結晶では顕著になるが多結晶であっても、劈開面はその面に沿って結晶が裂けやすい面であり、劈開面方向に力が加わると、結晶は容易に破壊する。つまり、劈開面211方向の分力FTの存在は、単結晶であればその面方向からウェーハWの全面にほぼ真っ直ぐに延びる劈開が始まることを意味する。これは、図5で模式的に示すような破損領域215の形成を引き起こし、ウェーハWの面取り加工における歩留まりを低下させる。
以上のように、ウェーハWの劈開面211の位置と砥石152(155)との関係がウェーハWの面取り加工における歩留まり向上において重要であることが知られるが、ウェーハWの直径Dの変動や厚さtの変動が、劈開面211の影響よりも大きな影響を面取り加工に及ぼすことも危惧される。そこで、図6を用いて、ウェーハWの直径が面取り加工に及ぼす影響について、以下に説明する。
図6(a)は、ウェーハWの直径Dが規定の大きさの場合であり、図6(b)は、ウェーハWの径が(D+δ)まで大きくなった場合である。各図の左側は、ウェーハWと砥石152(155)の当接部の上面断面図であり、右側はその横断面図である。ウェーハWの大きさが規定の大きさであれば、砥石152(155)の面取り面231、232によりウェーハWは上側および下側が、ほぼ同じ量、同じ形状で面取り221、222され、厚さ方向中間部がr加工される。
これに対して、ウェーハWの径がδだけ大きくなった場合には、ウェーハWと砥石152(155)の相対高さ位置を変えることで、ウェーハWの周方向当接関係を維持しながら、面取り加工ができる。具体的には、同じ砥石152(155)の面取り面231、232およびr加工面形状を用いて増大した径のウェーハWを加工すれば、上側面取り量233と下側面取り量234とそれらの形状はほぼ同一ではなくなるものの、劈開面211を砥石回転の接線方向に対して、直角方向を維持できる。なお、直径変化量を考慮せずに規定ウェーハを加工するのと同一の状態で加工すると、例えば、D=50mmのウェーハでδ=0.1mmの直径誤差があれば、劈開面方向の研削抵抗の分力FPは研削抵抗Fの3%程度生じる。この程度でも、面取り加工により劈開面211からの破損が生じて面取り加工の歩留まりを低下させる恐れがある。さらに、厚さtが変化しても、同様に対処できる。
上記本実施例の面取り加工方法を、まとめて図7に処理のフローチャートで示す。インゴットからウェーハをスライスして作製した後に、面取り加工を開始する。初めに、LT、LNの各ウェーハWについて、X線回折や光像法を用いて、劈開面211を検出し記憶する。また、各ウェーハWの厚さtおよび直径Dを計測する(ステップS710)。なお、ウェーハWの厚さt及び直径Dは、外周研削装置62とともに厚さセンサ52を備えるプリアライメント部14や直径測定器84を備えた後測定部22を有するウェーハ面取り装置10で別途実行してもよい。
検出した劈開面211に基づいて、図示しないオリフラ加工機でウェーハWにオリフラ210を加工する(ステップS720)。その際、上記理由からオリフラ210は、好ましくは、劈開面211に平行な面と異ならせる。さらに好ましくは、図4に示したように劈開面211がウェーハWの半径方向と一致する位置の近傍から、オリフラ210の加工を始める。なお、オリフラ位置と劈開面との関係を記憶させれば、劈開面211は見えないけれども、以後の加工を目視的に確認できる。
ウェーハ面取り装置10のウェーハカセット30に各ウェーハWを収納したのち、ウェーハ面取り装置10に取り付ける。その後、ウェーハ面取り装置内で事前処理をしたのち、研削トランスファ部100を用いて、面取り用加工部16A(16B)にウェーハWを移載する(ステップS730)。
ウェーハ送り装置60と外周研削装置62の各部を操作して、ウェーハWを砥石152(155)に当接させる操作Op1~Op3を実行する(ステップS740~S760)。すなわち、加工位置であるウェーハWと砥石152(155)の当接位置において、ウェーハが砥石152に接するよう、ウェーハWをθ軸回りに回動させる(ステップS740)。その際、当接時に劈開面211がウェーハWと砥石152(155)の中心を結ぶ線に一致する位置まで、ウェーハWを回転させる(Op1)。
次に、ウェーハ送り装置60のX軸駆動手段125を用いて、X方向にウェーハWを移動させる(ステップS750)。その際、加工位置であるウェーハWと砥石152(155)の当接位置までの、X方向距離分だけ移動させる(Op2)。なお、ステップS740およびステップS750の操作Op1、Op2の順序は、逆であっても、同時であってもよいが、次の操作Op3よりは前に完了しておく必要がある。
ウェーハ送り装置60のY軸駆動手段を用いて、Y方向にウェーハWを移動させる(ステップS760)。すなわち、ウェーハWが砥石152(155)に当接する位置に接線方向から接近するように、ウェーハを移動させる(Op3)。なお、この操作Op3の際には、既にウェーハWと砥石152(155)の位置は、ウェーハWの直径D、厚さt、砥石152(155)の直径dの測定値に基づいて、制御措置15が制御しているので、ウェーハWの外周面の面取り量が過大になることは防止されている。
ウェーハWの面取り開始位置が定まったので、面取りを開始する。面取りの際は、ウェーハWも回転させる(ステップS770)。ウェーハWの面取りを継続し、オリフラ210位置に達したら、検出したウェーハWの砥石152(155)への当接力に基づいて、ウェーハWをX方向に移動させる(ステップS780)。なお、当接力を検出する代わりに、予め制御手段15に記憶させたウェーハWの形状を使用して、X方向移動量を決定するようにしてもよい。ウェーハWが一周したら、研削は終了する。
以上説明したように本発明によれば、半導体ウェーハの面取り加工時に、回転する砥石の接線方向からウェーハを接近させ、その際、ウェーハの劈開面が接近方向に直角方向となるようにウェーハの周方向位置を固定したので、劈開面に対して傾斜した方向からウェーハが砥石に接近することが回避され、劈開面に垂直方向の研削抵抗成分に起因するウェーハの破損を防止できる。これにより、研削加工時のウェーハの歩留まりを向上できる。また、ウェーハの径や厚さにばらつきがあっても、予め計測した量に応じてウェーハと砥石の加工位置高さを調整するだけでよく、難削材であるLT、LN製ウェーハの面取り加工においても、劈開面からのウェーハの破損を防止できる。