添付図面を参照して、第1の実施の形態に係るウエーハについて説明する。図1は第1の実施の形態に係るウエーハの斜視図、図2はフィルム貼着工程前の状態を示す図、図3は、第1の実施の形態に係るフィルムを介して樹脂層及びシートで被覆されるウエーハの模式図、図4は樹脂層形成工程におけるゴミ混入の影響を示す図である。
ウエ―ハWは円盤状に形成され、ウエーハWの一方の面W1にはバンプBが突出形成されている。ウエーハWの他方の面W2は、ウエーハWを所定の厚みにするために研削される。ウエーハWとしては、シリコン等の材料でなる半導体ウエーハが用いられる。
バンプBの材料としては、金、銅、ニッケル、アルミ、錫及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。バンプBはウエーハの一方の面W1に例えば球状で形成され、数量、構造、配置等は特に限定されない。バンプBの高さは、ウエーハWの一方の面W1から、例えば100μm~250μm程度の高さとなるように形成されている。バンプBの代わりに、他の機能を持つ凸凹状の構造が形成されていてもよい。
ここで、従来、バンプが形成されるウエーハを研削する際、バンプの高さによる影響を抑えるために、ウエーハの一方の面にバンプが埋没される厚みの糊層を備えた保護テープを貼着している。また、バンプが埋没されるようにウエーハの一方の面に樹脂層を形成し、樹脂層を平坦化している。しかしながら、バンプが大きい場合、バンプを埋没させる糊層を保護テープに形成することは難しく、ウエーハを均一な厚みに研削することができない。また、研削後にウエーハから保護テープや樹脂層が剥がされる際、バンプに糊層や樹脂層が引っ掛かり易くなり、これらの一部がバンプの根本に残ってしまう問題がある。
そこで、図2に示すように、第1のテーブル5にウエーハWの他方の面W2を保持した状態で、一方の面W1のバンプBの形状にならわせて薄いフィルムFを密着させ、このフィルムFを介して、樹脂層R2(図4参照)を形成する方法が検討されている。樹脂層R2は、ウエーハWの一方の面W1を、フィルムFを介してシートS(図4A参照)上の樹脂に押し当てることで形成される。これにより、図3に示すように、ウエーハWの一方の面W1に、フィルムFを介して、バンプBが埋没される厚みの樹脂層R2が形成される。シートSをウエーハWから引き剥がすことにより、ウエーハWからフィルムF、樹脂層R2及びシートSを容易に剥離することができる。
樹脂層R2の形成においては、図4Aに示すように、まず、第2のテーブル6に載置されたシートS(図4A参照)の上に樹脂を供給する。そして、第1のテーブル5で、フィルムFを密着させたウエーハWの裏面W2を保持し、フィルムFを介してウエーハWの一方の面W1を樹脂に押し当てることにより樹脂を押し広げる。この状態で樹脂を硬化させることにより、ウエーハWの一方の面W1に、フィルムFを介して、樹脂層R2が形成される。
しかしながら、図4Aに示すように、樹脂層R2を形成する際に、第1のテーブル5とウエーハWの他方の面W2との間にゴミD1が入ると、ゴミD1にウエーハWが押し込まれて、ゴミD1の部分において、樹脂層R2に凹みが形成される。この場合、図4Bに示すように、ウエーハWが研削される際にウエーハWが研削用のテーブルに置き直されて、ゴミD1が取り除かれると、樹脂層R2の凹みの部分でウエーハWが凹んだ状態となる。ウエーハが凹んだ状態で、ウエーハWの他方の面W2が研削されると、ウエーハWを均一な厚みにすることができない。
また、樹脂層R2を形成する際に、シートSを載置する第2のテーブル6とシートSとの間にゴミD2が入ると、ゴミD2にシートSが押し込まれて、ゴミD2の部分で、樹脂層R2に凹みが形成され、均一な厚みの樹脂層R2が形成されない。この場合、図4Bに示すように、ウエーハWが研削される際にウエーハWが研削用のテーブルに置き直されてゴミD2が取り除かれると、ゴミD2の影響で樹脂層R2が薄く形成された部分でウエーハWが凹む。この状態でウエーハWの他方の面W2が研削されると、樹脂層R2の影響を受けて、ウエーハWを均一な厚みにすることができない。
この問題を解決するために、樹脂層R2を形成する際にゴミD1、D2が入らないように、第1のテーブル5及び第2のテーブル6を清掃する場合、洗浄機構が必要になるため装置構成が複雑になる。また、洗浄時間が必要になるため、操作が煩雑になる。このため、洗浄をしなくとも、ゴミD1、D2の影響を抑え、研削したウエーハWの厚みが均一になる加工方法が必要とされている。
そこで、本実施の形態においては、図4Cに示すように、ウエーハWの他方の面W2を保持した(シートS側が上面になる)状態で、樹脂層R2の厚みが均一でないことにより生じるシートSの凹み部分を削り取る高さ(二点鎖線)までシートSを切削する。すなわち、シートSの表面の高さhから、凹み部分が削り取られる高さh´まで、シートSを切削する。これにより、シートSと樹脂層R2との合計厚みを均一にすることができるため、シートSを保持してウエーハWの他方の面W2を研削する際に、ゴミD1、D2に起因する樹脂層R2の厚みの影響を抑えて、ウエーハWの厚みを均一にすることができる。
以下、図5から図12を参照して、第1の実施の形態に係るウエーハの研削方法について説明する。第1の実施の形態に係るウエーハの研削方法は、フィルム貼着工程、保持工程、フィルム密着工程、樹脂層形成工程、外周除去工程、切削工程、研削工程を含んでいる。図5は第1の実施の形態に係るフィルム貼着工程、図6は保持工程、図7はフィルム密着工程、図8及び図9は樹脂層形成工程、図10は外周除去工程、図11は切削工程、図12は研削工程を示す図である。
図5に示すように、まずフィルム貼着装置においてフィルム貼着工程が実施される。図5Aに示すように、フィルムFは、例えば、樹脂等の材料からなる柔軟なフィルムであり、ウエーハWの外径より大きい径を有する円形状に形成されている。フィルムFには、外周に沿ってリング状の糊層Pが形成されている。また、リングフレーム10には、ウエーハWを収容可能な開口が形成されている。
図5Bは、図5Aの部分拡大図である。図5Bに示すように、フィルムFは、糊層Pを介してリングフレーム10に貼着される。フィルムFの厚みとしては、特に限定されないが、例えば、30μm~150μm程度の厚みであることが好ましい。これにより、後述するフィルム密着工程において、ウエーハWの形状にならってフィルムFをウエーハWに密着させることができる。なお、フィルムFのリングフレーム10への貼着は、オペレータにより行われてもよい。
図6に示すように、フィルム貼着工程の後には、樹脂貼装置において保持工程が実施される。図6Aに示すように、樹脂貼装置は、第1のテーブル21を備えている。第1のテーブル21の表面には、多孔質のポーラス材によってウエーハWを保持するウエーハ保持部23が形成されている。ウエーハ保持部23は、第1のテーブル21内の流路を通じて切換弁31に接続されており、切換弁31を介して吸引源35又はエア源36に接続される。ウエーハ保持部23がポーラス材で形成されることにより、ウエーハWの保持面を略平坦に形成できる。これにより、後述する樹脂層形成工程で、第1のテーブル21でウエーハWを保持した状態でウエーハWの一方の面W1に樹脂層R2が形成される際に、ウエーハWの波立ちにより樹脂層R2が不均一な厚みに形成されることが防止される。
第1のテーブル21の外周部には、リングフレーム10を保持するリング状のフレーム保持部24が形成されている。フレーム保持部24の外周には、複数の吸引孔が形成されている。吸引孔は、第1のテーブル21内の流路を通じて切換弁32に接続されており、切換弁32を介して吸引源37又はエア源38に接続される。フレーム保持部24は、ウエーハ保持部23と段差を設けて形成され、ウエーハ保持部23よりも高い位置に設けられている。これにより、ウエーハWがフィルムFで覆われた際に、後述する密室Cが形成され易くなる。フレーム保持部24とウエーハ保持部23との間には吸引路28が形成されており、吸引路28は切換弁33を介して真空吸引源39に連通している。また、第1のテーブル21には、反転手段25が備えられ、第1のテーブル21が反転可能となっており、反転手段25には昇降手段26が備えられ、第1のテーブル21が昇降可能となっている。
第1のテーブル21の上方には、フィルムFが貼着されたリングフレーム10を吸引保持するフレーム搬送手段40が設けられている。フレーム搬送手段40は、ウエーハWの外径より大きい径を有する円盤状の支持板の外周部に、複数の保持パッド41が設けられて形成されている。各保持パッド41は、支持板内の流路を通じて切換弁45に接続されており、切換弁45を介して吸引源46又はエア源47に接続される。フレーム搬送手段40には移動機構(不図示)が備えられ、フレーム搬送手段40は、リングフレーム10を保持した状態で垂直方向に移動可能となっている。
図6Aに示すように、第1のテーブル21のウエーハ保持部23に、ウエーハWの他方の面W2が下面になるようにウエーハWが載置される。このとき、切換弁31は吸引源35に接続され、ウエーハ保持部23に負圧が生じる。これにより、ウエーハWは、バンプBが形成される一方の面W1が上面になる状態で第1のテーブル21に保持される。また、切換弁32は吸引源37に接続され、フレーム保持部24の吸引孔に負圧が生じる。切換弁33は真空吸引源39から遮断されているため、フレーム保持部24及び吸引路28に負圧は生じていない。また、フレーム搬送手段40の保持パッド41によりリングフレーム10が保持され、フィルムFがウエーハWの一方の面W1を覆うように、リングフレーム10がフレーム保持部24の上方に位置付けられる。このとき、切換弁45は吸引源46に接続され、保持パッド41に負圧が生じている。
そして、図6Bに示すように、昇降機構(不図示)によりフレーム搬送手段40が下降され、リングフレーム10がフレーム保持部24に載置される。これにより、フィルムFでウエーハWの一方の面W1が覆われ、フィルムFと、ウエーハWの外面と、ウエーハ保持部23の上面と、フレーム保持部24の側面及び上面で囲まれた空間には密室Cが形成される。
このとき、切換弁45は切り換えられエア源47に接続され、保持パッド41からリングフレーム10が離される。また、フレーム保持部24の吸引孔に生じる負圧により、フィルムFを介してリングフレーム10が保持される。
図7に示すように、保持工程の後には、フィルム密着工程が実施される。図7に示すように、切換弁33は切り換えられて真空供給源39に連通され、吸引路28に負圧が生じることより、密室Cが減圧される。これにより、大気圧により、フィルムFがウエーハWの一方の面W1に押しつけられ、引き伸ばされる。バンプBの凸凹形状にならって、ウエーハWの一方の面W1にフィルムFを密着させることができる。
図8及び図9に示すように、フィルム密着工程の後には、樹脂層形成工程が実施される。図8Aに示すように、樹脂貼装置は、詳細は記載しないが、第1のテーブル21の下方に第2のテーブル51を備えており、第2のテーブル51では樹脂等でなる略平坦なシートSが保持される。第2のテーブル51の上面には、ウエーハWより径の大きい円形の凹部51aが形成されている。
凹部51aの内側には、複数の紫外線照射部55が配置されている。凹部51aの上端は、紫外線照射部55から放射される紫外線の少なくとも一部を透過させるガラス板等のプレート53で覆われており、第2のテーブル51の上面の一部を形成している。プレート53によって、シートSの中央部分が支持される。第2のテーブル51の外周部分には、複数の吸引孔が形成されている。吸引孔は第2のテーブル51内の流路を通じて切換弁56に接続されており、切換弁56を介して吸引源57又はエア源58に接続される。
シートSは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の材料からなり、ウエーハWの外径より大きい径を有する円形状に形成されている。シートSの厚みとしては、特に限定されないが、例えば、200μm~300μm程度の厚みであることが好ましい。これにより、シートSを、ゴミD1、D2(図4A参照)の厚み以上とすることができる。よって、後述する切削工程において、ゴミD1及びゴミD2により生じるシートSの凹み部分(図4C参照)を効果的に削る取ることができる。
第2のテーブル51の上方には、シートSの上に液状樹脂を供給する液状樹脂供給手段59が設けられている。液状樹脂R1としては、例えば、紫外線照射部55から放射される紫外線の光エネルギーによって硬化する紫外線硬化性の液状樹脂R1が用いられる。
図8Aに示すように、第2のテーブル51の上面にシートSが敷かれる。このとき、切換弁56は吸引源57に接続され、第2のテーブル51の外周に形成される吸引孔に負圧が生じ、シートSが第2のテーブル51に保持される。そして、図8Bに示すように、液状樹脂供給手段59により、シートSの中心付近に紫外線硬化性の液状樹脂R1が供給される。ウエーハWの一方の面W1全面が覆われるように、液状樹脂R1の供給量が調整される。
次に、図9Aに示すように、第1のテーブル21にはフィルム密着工程でフィルムFが密着された状態のウエーハWが保持されている。上記したように、第2のテーブル51の上方に、第1のテーブル21が位置付けられ、反転手段25により第1のテーブル21が反転されて、ウエーハWの一方の面W1に密着されるフィルムFが、第2のテーブル51に保持されるシートSに対面される。
そして、図9Bに示すように、昇降手段26により第1のテーブル21が下降される。フィルムFとシートSとが接近し、フィルムFを介してウエーハWが液状樹脂R1に押し当てられる。これにより、シートSの上の液状樹脂R1がウエーハWの面積以上に広げられ、フィルムFを介してウエーハWを被覆する。この状態で、液状樹脂R1に紫外線照射部55から紫外線を照射することにより、液状樹脂R1が硬化して、フィルムFとシートSとの間に、バンプBの凸凹形状を埋没させる厚みの樹脂層R2が形成される。なお、ウエーハWが埋没される樹脂層R2が形成されるように、昇降手段26による第1のテーブル21の下降量が調整される。
樹脂層R2が形成された後、図9Cに示すように、切換弁56は切り換えられエア源58に接続され第2のテーブル51のシートSの保持が解除され、昇降手段26により第1のテーブル21が上昇される。これにより、樹脂層R2及びシートSが第2のテーブル51から離され、第1のテーブル21に保持されるウエーハWが、樹脂層R2及びシートSで被覆された状態で移動される。なお、このとき、切換弁33は真空吸引源39から遮断されていてもよい。
このように、樹脂層R2によってウエーハWの一方の面W1に形成されるバンプBを埋没させることで、バンプBの凸凹形状の影響を抑えて、後述する研削工程における基準面を形成できる。また、樹脂が硬化されて樹脂層R2が形成されることにより、フィルム密着工程においてウエーハWの一方の面W1に密着されたフィルムFは、密着された状態が維持される。
ここで、保持工程において、第1のテーブル21とウエーハWとの間にゴミD1(図4A参照)が入った状態で第1のテーブル21にウエーハWが保持される場合、樹脂層R2は均一な厚みに形成されていない(図4A参照)。また、樹脂層形成工程において、第2のテーブル51とシートSとの間にゴミD2(図4A参照)が入った状態で第2のテーブル51にシートSが保持される場合、樹脂層R2が均一な厚みに形成されていない。
図10に示すように、樹脂層形成工程の後には、外周除去工程が実施される。図10Aに示すように、第1のテーブル21の上方には、切断手段60が設けられている。切断手段60は、回転台61の下面から下方に突出したカッター62を有している。回転台61は、Z軸回りに回転可能、かつZ軸方向に移動可能に形成されている。カッター62は、ウエーハWの外形寸法に合わせて刃の位置が調整されている。切断手段60は、下方に配置されたフィルムFを介して樹脂層R2及びシートSで被覆されるウエーハWに対して、回転台61のZ軸方向の移動によりシートS、樹脂層R2及びフィルムFに対する切り込み深さを調整し、回転台61の回転によりシートS、樹脂層R2及びフィルムFをウエーハWの外形に沿って切断する。
また、第1のテーブル21の上方には、搬送機構70(図10B参照)が設けられている。搬送機構70は、搬送パッド71を有しており、搬送パッド71の下面にはウエーハWを吸引保持する保持面72を有する多孔質のポーラス板が備えられている。保持面72は搬送パッド71内の流路を通じて切換弁75に接続されており、切換弁75を介して吸引源76又はエア源77に接続される。また、搬送機構70に設けられる移動手段74で搬送パッド71を旋回させることで、搬送パッド71に保持されるウエーハWを搬送することができる。
図10Aに示すように、反転手段25により、第1のテーブル21が反転され、ウエーハWは、フィルムを介して樹脂層R2及びシートSで被覆される一方の面W1が上面になる状態となる。第1のテーブル21の上方に、切断手段60が位置付けられる。回転台61が下降され、シートS、樹脂層R2及びフィルムFにカッター62が切り込まれる。回転台61が回転することにより、ウエーハWの外周に沿って、シートS、樹脂層R2及びフィルムFが切断される。なお、このとき、切換弁33は真空吸引源39から遮断されていてもよい。
切断後、図10Bに示すように、第1のテーブル21の切換弁31、32は切り換えられエア源36、38に接続され、切換弁33は切り換えられ真空吸引源39から遮断される。これにより、第1のテーブル21によるウエーハW及びリングフレーム10の吸引保持が解除される。また、搬送機構70がウエーハWの上方に移動され、搬送パッド71がウエーハWの中央部分を被覆するシートSに接触される。このとき、搬送パッド71の切換弁75が吸引源76に接続され、搬送パッド71に生じる負圧により、搬送パッド71にシートSを介してウエーハWが保持される。そして、図10Cに示すように、移動手段74により搬送パッド71が旋回されることで、ウエーハWが第1のテーブル21から搬出される。切断されたウエーハWの外周部分はリングフレーム10とともにウエーハWの中央部分から離され、除去される。
図11に示すように、外周除去工程の後には、バイト切削装置において切削工程が行われる。図11Aに示すように、バイト切削装置は、ピンチャックテーブル91を備えている。ピンチャックテーブル91の上面には、ウエーハWより径の小さい円形の凹部91aが形成されており、上面の凹部91aを囲む領域はリング部93を形成している。リング部93は、凹部91aの底面の外周部から上方に突出形成されている。凹部91aの底面には、複数のピン92が立設されている。各ピン92は柱状に形成され、各ピン92の高さはリング部93の高さと揃えられている。隣接するピン92の間隔は略同一であり、複数のピン92の先端及びリング部93によりウエーハWの他方の面W2を支持する平坦な支持面が形成される。ピンチャックテーブル91によりウエーハWが保持されることにより、ウエーハWとピンチャックテーブル91との間にゴミが入ることが防止される。
また、凹部91aの底面には吸引源98に連通する連通口95が形成されている。連通口95はピンチャックテーブル91内の流路を通じて切換弁97に接続されており、切換弁97を介して吸引源98又はエア源99に接続される。吸引源98の駆動によって凹部91a内に負圧が生じ、この負圧によってウエーハWをリング部93及びピン92上で吸引保持することができる。また、ピンチャックテーブル91には切削送り手段96が設けられており、切削送り手段96により、ピンチャックテーブル91が切削送りされる。
ピンチャックテーブル91の上方には、切削手段100が設けられている。切削手段100は、スピンドル105の下端に円盤状のマウント106を備えている。モータ(不図示)によってスピンドル105は回転され、これによりマウント106が回転される。マウント106の下面には、刃部を有する切削バイト101が取り付けられ、この切削バイト101によりウエーハWを被覆するシートSが切削される。切削中は加工部分に向けて切削水を噴射することにより、切削屑が除去される。切削バイト101としては、例えば、ダイヤモンド、超硬合金、CBN等の硬質材料が使用される。また、切削手段100は、Z軸方向に移動可能に形成されている。切削バイト101でシートSを切削することにより、シートSを上から押し付けることがない。このため、研削砥石でシートSを研削する場合と比べて、ウエーハWへの加工負荷を抑えることができる。これにより、ピン92の形状がウエーハWへ転写されることが抑えられ、ウエーハW並びにウエーハWを被覆する樹脂層R2及びシートSが波立つことが抑えられる。これにより、シートSの表面を平坦に切削することができる。
図11Aに示すように、ピンチャックテーブル91に、フィルムFを介して樹脂層R2及びシートSで被覆される一方の面W1が上面にようになるように、ウエーハWが載置される。ピン92の先端が他方の面W2に接触され、リング部93がウエーハWの外周全周に接触されることにより、ウエーハWの他方の面W2及びリング部93で凹部91a内は塞がれ、密閉された空間となる。このとき、切換弁97は吸引源98に接続され、凹部91a内に生じる負圧により、ウエーハWがピンチャックテーブル91に吸引保持される。
スピンドル105が回転され切削バイト101が回転される。この状態で、シートSを所定量削り込む高さ、すなわち樹脂層R2が均一な厚みに形成されないことによるシートSの凹み部分(図4C参照)が削り取られる高さh´まで切削手段100を下降させておく。そして、切削送り手段96によって、切削手段100の下方の加工位置方向に所定速度でピンチャックテーブル91を移動させる。これにより、シートSの表面が切削バイト101によって切削されていき、ウエーハWの一方の面W1側を被覆するシートSの表面全面が切削され、ウエーハWの他方の面W2に対して平行な被切削面S1が形成される。これにより、シートSの凹み部分が削り取られて、シートSと樹脂層R2との合計厚みを均一にすることができる(図4C参照)。
切削後、図11Bに示すように、ピンチャックテーブル91の切換弁97は切り換えられエア源99に接続され、ピンチャックテーブル91によるウエーハWの吸引保持が解除される。そして、搬送機構110がウエーハWの上方に移動され、搬送パッド111がウエーハWを被覆するシートSに接触される。吸引源116により搬送パッド111に生じる負圧により、搬送パッド111にシートSを介してウエーハWが保持され、移動手段114により搬送パッド111が旋回されることで、ウエーハWがピンチャックテーブル91から搬出される。
図12に示すように、切削工程の後には、研削装置において研削工程が行われる。図12Aに示すように、研削装置は、第3のテーブル121を備えている。第3のテーブル121の下方には、第3のテーブル121を回転させる回転手段122が設けられている。また、第3のテーブル121の上面には、多孔質のポーラス材によってウエーハWを吸引保持する保持面123が形成されている。保持面123は、第3のテーブル121内の流路を通じて切換弁125に接続されており、切換弁125を介して吸引源126又はエア源127に接続される。吸引源126への接続により、保持面123に生じる負圧でウエーハWが吸引保持される。
第3のテーブル121の上方には、研削手段130が設けられている。研削手段130は、モータ(不図示)を含むスピンドル133の下端に円盤状のマウント135を設けて構成されている。マウント135の下面には、ホイール基台136に複数の研削砥石137が真円の環状に配設された研削ホイール138が回転可能に装着されている。研削ホイール138は、スピンドル133の駆動によって回転される。複数の研削砥石137は、例えば、ダイヤモンド砥粒をメタルボンド等のボンド剤で固めたセグメント砥石で構成される。研削砥石137により、第3のテーブル121に保持されたウエーハWが研削される。また、研削手段130は、研削送り手段(不図示)によりZ軸方向に移動可能となっている。
図12Aに示すように、第3のテーブル121の保持面123に、切削工程で切削したシートSの被切削面S1が下面になるように、ウエーハWが載置される。このとき、切換弁125は吸引源126に接続され、保持面123に生じる負圧により、第3のテーブル121にウエーハWが保持される。
スピンドル133が回転され研削ホイール138が回転される。ウエーハWは第3のテーブル121の回転により回転し、回転する研削ホイール138が研削送り手段(不図示)によりZ軸方向に研削送りされ、研削砥石137がウエーハWの他方の面W2に接触されることにより、ウエーハWが研削される。そして、図12Bに示すように、所定の厚みとなるまでウエーハWが研削される。
このように、切削工程においてシートSを切削することにより、ゴミD1、D2(図4A参照)の影響で生じるシートSの凹みを削り取ることができるため、シートSと樹脂層R2との合計厚みを均一できる(図4C参照)。よって、シートSに凹みが生じている部分も生じていない部分も、シートS及び樹脂層R2が同じ厚みになるように調整できる。これにより、研削工程において、シートSの被切削面S1を下面にしてウエーハWの他方の面W2を研削すると、シートS及び樹脂層R2の平坦面を基準にウエーハを研削できる。このため、ゴミD1、D2の影響で樹脂層R2が均一な厚みに形成されない場合であっても、ウエーハWを平坦に研削することができる。
研削工程の後には、研削されたウエーハWから、フィルムF、樹脂層R2及びシートSが剥離される。ウエーハWからシートSの端部側を引き剥がすように、ウエーハWとシートSとを相対的に移動させる。フィルムFを介して樹脂層R2が形成されているため、シートSをウエーハWから剥離することで、ウエーハWから、フィルムF、樹脂層R2及びシートSをまとめて剥離でき、バンプBに樹脂層R2が残ることがない。
以上のように、第1の実施の形態に係るウエーハWの研削方法では、第1のテーブル21でウエーハWの他方の面W2を保持した状態で、バンプBが形成されたウエーハWの一方の面W1側に、バンプBの凸凹形状にならってフィルムFを密着させる。その後、第2のテーブル51に敷かれたシートSの上に紫外線硬化性の液状樹脂R1を供給し、フィルムFを介してウエーハWと液状樹脂R1を押し当てた状態で液状樹脂R1を硬化させることで、フィルムFとシートSとの間に樹脂層R2を形成する。これにより、樹脂層R2によってバンプBを埋没させ、樹脂層R2の平坦面を基準にウエーハWを研削できる。また、ウエーハWの一方の面W1にフィルムFを介して樹脂層R2が形成される。このため、シートSをウエーハWから剥離することで、樹脂層R2がウエーハWに直接に形成される場合と比べて、ウエーハWからフィルムF、樹脂層R2及びシートSを容易に剥離することができ、バンプが大きくても樹脂層R2がバンプBの根本に残ることがない。また、第1のテーブル21とウエーハWとの間に入ったゴミD1、及び第2のテーブル51とシートSとの間に入ったゴミD2により均一な厚みの樹脂層R2が形成されない場合でも、シートSを切削バイト101で切削することで、シートSと樹脂層R2との合計厚みを均一にすることができる。これにより、ウエーハWの他方の面W2を研削する際に、シートS及び樹脂層R2の平坦面を基準にウエーハWを研削できる。よって、ウエーハWの厚みを均一にすることができ、ウエーハWを平坦に研削することができる。
次に、図13から図20を参照して、第2の実施の形態のウエーハの研削方法について説明する。図13は保持工程、図14はフィルム密着工程、図15から図17は樹脂層形成工程、図18は切削工程、図19は外周除去工程、図20は研削工程を示す図である。なお、第2の実施の形態のウエーハWの研削方法は、外周除去工程の前に切削工程が行われる点で第1の実施の形態と相違している。したがって、第1の実施の形態と相違する点についてのみ説明し、共通する構成については説明を省略する。
フィルム貼着工程において、フィルムFがリングフレーム10に貼着された後(図5参照)、図13に示すように、保持工程が実施される。図13Aに示すように、第1のテーブル21のウエーハ保持部23に、ウエーハWの他方の面W2が下面になるようにウエーハWが吸引保持され、フレーム搬送手段40の保持パッド41に保持されたリングフレーム10がフレーム保持部24の上方に位置付けられる。そして、図13Bに示すように、フレーム搬送手段40が下降され、リングフレーム10がフレーム保持部24で保持される。これにより、フィルムFでウエーハWの一方の面W1が覆われて密室Cが形成される。
図14に示すように、保持工程の後には、フィルム密着工程が実施される。保持工程で形成された密室Cが減圧されることにより、大気圧でフィルムFがウエーハWの一方の面W1に押しつけられる。これにより、バンプBの凸凹形状にならってウエーハWの一方の面W1にフィルムFが密着される。
図15から図17に示すように、フィルム密着工程の後には、樹脂層形成工程が実施される。図15Aに示すように、第2のテーブル51にシートSが保持され、図15Bに示すように、シートSの上に液状樹脂R1が供給される。図16Aに示すように、第2のテーブル51の上方に第1のテーブル21が位置付けられるとともに反転されて、ウエーハWの一方の面W1に密着されるフィルムFが、第2のテーブル51に保持されるシートSに対面される。図16Bに示すように、第1のテーブル21が下降され、ウエーハWがフィルムFを介して液状樹脂R1に押し当てられる。これにより、フィルムFを介してウエーハWが液状樹脂R1に被覆される。この状態で、液状樹脂R1が硬化され、フィルムFとシートSとの間に樹脂層R2が形成される。
そして、図16Cに示すように、第2のテーブル51によるシートSの保持が解除されて、第1のテーブル21が上昇され、第1のテーブル21に保持されるウエーハWが、フィルムFを介して樹脂層R2及びシートSに被覆された状態で移動される。図17Aに示すように、第1のテーブル21が反転される。そして、切換弁31、32がエア源36、38に接続され、切換弁33が真空吸引源39から遮断されることにより、第1のテーブル21によるウエーハWの保持が解除される。図17Bに示すように、フレーム搬送手段40の保持パッド41によりリングフレーム10が吸引保持され、フィルムFを介してウエーハWが搬送される。
図18に示すように、樹脂層形成工程の後には、バイト切削装置において切削工程が行われる。バイト切削装置に備えられるピンチャックテーブル191の外周には、リングフレーム10を支持するフレーム支持部141が形成されている。フレーム支持部141には複数の保持パッド142が設けられており、保持パッド142は、フレーム支持部141内の流路を通じて切換弁145に接続され、切換弁145を介して吸引源146又はエア源147に接続される。
ピンチャックテーブル191に、樹脂層R2及びシートSで被覆される一方の面W1が上面になるようにウエーハWが載置され、フレーム支持部141の保持パッド142に、リングフレーム10が載置される。ピン192の先端及びリング部193でウエーハWの他方の面W2が支持されることにより、凹部191a内は密閉された空間となる。このとき、切換弁197は吸引源198に接続され、凹部191a内に生じる負圧により、ウエーハWがピンチャックテーブル191に吸引保持される。また、切換弁145は吸引源146に接続され、保持パッド142に生じる負圧により、リングフレーム10が吸引保持される。
切削バイト101が回転された状態で、シートSの凹み部分(図4C参照)を切削する高さまで切削手段100を下降させておく。そして、切削手段100の下方の加工位置方向に所定速度でピンチャックテーブル191を移動させることにより、シートSの表面が平坦に切削され、ウエーハWの他方の面W2に対して平行な被切削面S1が形成される。これにより、シートSの凹み部分が削り取られて、シートSと樹脂層R2との合計厚みを均一にすることができる(図4C参照)。
図19に示すように、切削工程の後には、外周除去工程が実施される。図19Aに示すように、バイト切削装置に設けられる切断手段60が、ピンチャックテーブル191の上方に位置付けられる。切断手段60の回転台61が下降され、シートS、樹脂層R2及びフィルムFにカッター62が切り込まれる。回転台61が回転することにより、ウエーハWの外周に沿って、シートS、樹脂層R2及びフィルムFが切断される。
切断後、図19Bに示すように、ピンチャックテーブル191の切換弁197は切り換えられエア源199に接続される。これにより、ピンチャックテーブル191によるウエーハWの吸引保持が解除される。そして、図19Cに示すように、搬送機構150がウエーハWの上方に移動され、搬送パッド151がウエーハWの中央部分を被覆するシートSに接触される。このとき、搬送パッド151の切換弁155は吸引源156に接続され、搬送パッド151に生じる負圧により、搬送パッド151にシートSを介してウエーハWが保持される。そして、移動手段154により搬送パッド151が旋回されることで、ウエーハWがピンチャックテーブル191から搬出される。切断されたウエーハWの外周部分はフィルムFに連なり、保持パッド142に保持されるリングフレーム10とともにウエーハWの中央部分から離され、除去される。
図20に示すように、外周除去工程の後には、研削装置において研削工程が行われる。図20Aに示すように、第3のテーブル121の保持面123に、シートSの被切削面S1が下面になるように、ウエーハWが載置される。第3のテーブル121の切換弁125は吸引源126に接続され、保持面123に生じる負圧により、第3のテーブル121にウエーハWが保持される。ウエーハWは第3のテーブル121の回転により回転し、回転する研削ホイール138が研削送りされ、研削砥石137がウエーハWの他方の面W2に接触されることで、ウエーハWが研削される。そして、図20Bに示すように、所定の厚みとなるまでウエーハWが研削される。
このように、切削工程において、ゴミD1、D2(図4A参照)の影響で生じるシートSの凹みを削り取ることができるため、シートSと樹脂層R2との合計厚みを均一できる(図4C参照)。よって、シートSに凹みが生じている部分も生じていない部分も、シートSと樹脂層R2が同じ厚みになるように調整できる。これにより、研削工程において、シートS及び樹脂層R2の平坦面を基準にウエーハを研削できる。このため、ゴミD1、D2の影響で均一な厚みに形成されていない樹脂層R2の影響を抑えて、ウエーハWを平坦に研削することができる。
研削工程の後には、シートSをウエーハWから剥離することにより、ウエーハWから、フィルムF、樹脂層R2及びシートSを剥離する。以上のように、第2の実施の形態に係るウエーハWの研削方法では、切削工程において、フィルムFがリングフレーム10に貼着された状態でシートSが切削されることにより、フィルムFとウエーハWとの間に切削水が入ることが防止され、フィルムFとウエーハWとが密着された状態が効果的に維持される。
上記実施の形態においては、ウエーハWとして、シリコン等で形成される半導体ウエーハが用いられたが、一方の面W1にバンプBが形成されていれば、ウエーハWはこれに限定されない。加工対象のウエーハWとしては、加工の種類に応じて、例えば、半導体デバイスウエーハ、光デバイスウエーハ、パッケージ基板、半導体基板、無機材料基板、酸化物ウエーハ、生セラミックス基板、圧電基板等の各種ウエーハが用いられてもよい。半導体デバイスウェーハとしては、デバイス形成後のシリコンウエーハや化合物半導体ウエーハが用いられてもよい。光デバイスウエーハとしては、デバイス形成後のサファイアウエーハやシリコンカーバイドウエーハが用いられてもよい。また、パッケージ基板としてはCSP(Chip Size Package)基板、半導体基板としてはシリコンの他にガリウム砒素等、無機材料基板としてはサファイア、セラミックス、ガラス等が用いられてもよい。さらに、酸化物ウエーハとしては、デバイス形成後又はデバイス形成前のリチウムタンタレート、リチウムナイオベートが用いられてもよい。
本実施の形態では、第2のテーブル51によってシートSを保持してからシートSの上面に液状樹脂R1を塗布しているが、液状樹脂R1が上面に塗布された状態のシートSを第2のテーブル51によって保持してもよい。
本実施の形態においては、樹脂層形成工程において、第2のテーブル51に対して第1のテーブル21を下降させることにより、フィルムFとシートSとを接近させる構成としたが、ウエーハWがフィルムFを介して樹脂に押し当てられれば、これに限定されない。第1のテーブル21に対して、第2のテーブル51を上昇させることにより、フィルムFとシートSとを接近させる構成としてもよい。
また、本発明の各実施の形態を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記各実施の形態を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
また、本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
本実施の形態では、本発明をウエーハWの研削方法に適用した構成について説明したが、一方の面側が樹脂層で保護される基板を平坦に加工する加工装置に適用することも可能である。