以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤ等の様々なタイヤに用いることができる。
図1に示されるように、タイヤ1は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。本実施形態のトレッド部2は、例えば、タイヤ赤道Cに対して非対称のトレッドパターンを具える。トレッド部2は、タイヤ1の車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端Toと、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端Tiとを有する。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。
各トレッド端To、Tiは、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
トレッド部2は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝3と、前記主溝3で区分された複数の陸部4とを含む。各主溝3は、トレッド幅TWの2%以上の溝幅を有する。トレッド幅TWは、前記正規状態における外側トレッド端Toから内側トレッド端Tiまでのタイヤ軸方向の距離である。本実施形態のトレッド部2は、例えば、4本の主溝3で区分された5本の陸部4を有している。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
主溝3は、例えば、外側ショルダー主溝5と、内側ショルダー主溝6と、外側クラウン主溝7と、内側クラウン主溝8とを含んでいる。外側ショルダー主溝5は、複数の主溝3の内、最も外側トレッド端To側に設けられている。内側ショルダー主溝6は、複数の主溝3の内、最も内側トレッド端Ti側に設けられている。外側クラウン主溝7は、例えば、外側ショルダー主溝5とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。内側クラウン主溝8は、例えば、内側ショルダー主溝6とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。
外側ショルダー主溝5及び内側ショルダー主溝6は、例えば、タイヤ赤道Cから溝中心線までの距離L1がトレッド幅TWの0.25〜0.35倍であるのが望ましい。外側クラウン主溝7及び内側クラウン主溝8は、例えば、タイヤ赤道Cから溝中心線までの距離L2がトレッド幅TWの0.05〜0.15倍であるのが望ましい。
外側ショルダー主溝5は、複数の主溝のうち最も小さい溝幅W1を有している。最も外側トレッド端To側の配された外側ショルダー主溝5は、気柱共鳴音が車両の外方に響き易く、ノイズ性能への影響が大きい。本発明のタイヤは、外側ショルダー主溝5の溝幅を相対的に小さくすることにより、この主溝の気柱共鳴音を低減し、ひいてはノイズ性能を高めている。
ノイズ性能と操縦安定性をバランス良く高めるために、外側ショルダー主溝5の溝幅W1は、例えば、複数の主溝のうちの最大の溝幅の0.50〜0.65倍であるのが望ましい。内側ショルダー主溝6の溝幅W2、外側クラウン主溝7の溝幅W3及び内側クラウン主溝8の溝幅W4は、例えば、トレッド幅TWの5.5%〜7.5%であるのが望ましい。各主溝5乃至8は、例えば、5.0〜12.0mmの溝深さを有しているのが望ましい。さらに望ましい態様では、外側ショルダー主溝5は、複数の主溝のうち最も小さい溝深さを有している。
上記陸部4は、外側ショルダー陸部11と、外側ミドル陸部12と、内側ショルダー陸部13と、内側ミドル陸部14とを含んでいる。さらに、本実施形態の陸部4は、クラウン陸部15を含んでいる。外側ショルダー陸部11は、複数の陸部4の内、最も外側トレッド端To側に配されている。内側ショルダー陸部13は、複数の陸部4の内、最も内側トレッド端Ti側に配されている。外側ミドル陸部12は、外側ショルダー陸部11の内側トレッド端Ti側に隣り合っている。内側ミドル陸部14は、内側ショルダー陸部13の外側トレッド端To側に隣り合っている。クラウン陸部15は、外側ミドル陸部12と内側ミドル陸部14との間に配されている。
外側ショルダー陸部11、内側ショルダー陸部13及び内側ミドル陸部14のそれぞれには、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝20が設けられている。横溝20は、例えば、トレッド幅TWの1.0%〜2.0%の溝幅W5を有している。横溝20は、例えば、3.0〜8.0mmの溝深さを有している。横溝20は、例えば、タイヤ軸方向に対して0〜15°の角度θ1で設けられている。各陸部に設けられた横溝20のさらに詳細な構成は、後述される。
図2には、外側ミドル陸部12の拡大図が示されている。図2に示されるように、外側ミドル陸部12は、外側ミドル陸部12のタイヤ軸方向の中心位置よりも内側トレッド端Ti側でタイヤ周方向に連続して延びるミドル縦細溝30と、ミドル縦細溝30の外側トレッド端To側に区分された外側部32と、ミドル縦細溝30の内側トレッド端Ti側に区分された内側部31とを含んでいる。
従来、主溝が接地する前後において、その溝壁が変形する。このときの溝壁の振動及び主溝内の圧力変化により、主溝の気柱共鳴音が大きくなる傾向がある。これに対し、本発明のタイヤは、外側ミドル陸部12及びその内側トレッド端Ti側に隣り合う外側クラウン主溝7に接地圧が作用したとき、主溝に代替して上記ミドル縦細溝30が変形することにより、主溝の溝壁が変形するのを防ぎ、ひいては上記主溝の気柱共鳴音を低減させることができる。
本発明のミドル縦細溝30は、トレッド幅TWの2%未満でありかつ外側ミドル陸部のタイヤ軸方向の幅W8の3%〜10%の溝幅W7を有する。このため、ミドル縦細溝30は、気柱共鳴音を殆ど発生させない。また、上記溝幅を有するミドル縦細溝30は、主溝よりも変形し易く、上記作用によって隣り合う主溝の溝壁の変形をさらに抑制できる。
また、本発明のタイヤの内側部31は、溝やサイプが設けられていないプレーンリブとして構成されている。このため、外側ミドル陸部12の内側トレッド端Ti側に隣り合う外側クラウン主溝7において、溝壁の変形及び溝内の圧力変化がより一層抑制され、気柱共鳴音が顕著に抑制される。
操縦安定性とノイズ性能とをバランス良く高めるために、内側部31のタイヤ軸方向の幅W9は、例えば、外側ミドル陸部12のタイヤ軸方向の幅W8の0.20〜0.40であるのが望ましい。
ミドル縦細溝30は、例えば、タイヤ周方向に沿って直線状に延びている。ミドル縦細溝30の溝幅W7は、例えば、0.8〜2.0mmであるのが望ましい。
図3(a)には、図2のミドル縦細溝30のA−A線断面図が示されている。図3(a)に示されるように、ミドル縦細溝30の深さd4は、例えば、外側ショルダー主溝5の深さd1の0.30〜0.45倍であるのが望ましい。このようなミドル縦細溝30は、操縦安定性を維持しつつ、上記の作用を発揮することができる。
図2に示されるように、本実施形態の外側ミドル陸部12の外側部32には、例えば、複数の外側ミドル横溝23が設けられている。各外側ミドル横溝23は、例えば、外側ミドル陸部12の外側トレッド端To側のエッジ12aから内側トレッド端Ti側に延び、かつ、外側ミドル陸部12内で途切れている。本実施形態では、各外側ミドル横溝23がミドル縦細溝30と連通している。
各外側ミドル横溝23は、例えば、タイヤ軸方向に対して、他の陸部に設けられた横溝20よりも大きい角度θ2で傾斜しているのが望ましい。換言すれば、本発明の各外側ミドル横溝23は、タイヤ周方向に対して、他の陸部に設けられた横溝20よりも小さい角度で傾斜している。望ましい態様では、外側ミドル横溝23のいずれの部分においても、タイヤ軸方向に対する角度が、他の陸部に設けられた横溝20のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きい。さらに望ましい態様では、外側ミドル横溝23の溝中心の両端を結ぶ直線のタイヤ軸方向に対する角度が、上記横溝20のタイヤ軸方向に対する最大の角度よりも大きい。
このような各外側ミドル横溝23の配置は、付近の陸部分の剛性を適度に緩和するため、陸部が接地するときに路面に追従し易くなり、ひいては初期応答性が高められる。
外側ミドル横溝23の上記角度θ2は、例えば、45〜60°であるのが望ましい。また、本実施形態の外側ミドル横溝23は、上記角度θ2が内側トレッド端Ti側に向かって漸減するように僅かに湾曲している。
外側ミドル横溝23のタイヤ軸方向の長さL5は、例えば、外側ミドル陸部12のタイヤ軸方向の幅W8の0.50〜0.80倍であるのが望ましい。これにより、操縦安定性を維持しつつ、外側ミドル横溝23付近の陸部分の接地時の打音を緩和することができる。
外側ミドル横溝23は、例えば、トレッド幅TWの0.8%〜1.6%の溝幅W6を有しているのが望ましい。このような外側ミドル横溝23は、操縦安定性及びノイズ性能をバランス良く高めるのに役立つ。
図3(b)には、外側ミドル横溝23のB−B線断面図が示されている。図3(b)に示されるように、外側ミドル横溝23は、例えば、第1溝部23aと第2溝部23bとを含んでいる。第1溝部23aは、例えば、外側ショルダー主溝5に連通し、一定の深さで延びている。第2溝部23bは、第1溝部23aの内側トレッド端Ti側に連通し、内側トレッド端Ti側に向かって深さが漸減している。これにより、外側部32のタイヤ軸方向の中央部が適度に変形し易くなって初期応答性が高められ、かつ、外側ショルダー主溝5及びミドル縦細溝30付近の陸部分の偏摩耗が抑制される。
第1溝部23aの深さd2は、例えば、外側ショルダー主溝5の溝深さd1の0.45〜0.55倍であるのが望ましい。第1溝部23aは、外側ミドル横溝23が接地時に過度に開くのを防ぎ、ひいては外側ミドル横溝23のポンピング音を低減することができる。
第2溝部23bは、例えば、第1溝部23aよりも深さが大きい部分を含む。第2溝部23bの最大の深さd3は、例えば、第1溝部23aの深さd2の1.40〜1.60倍である。本実施形態では、外側ミドル横溝23の最深部から内側トレッド端Ti側に深さが漸減することにより、第2溝部23bが構成されている。
図4には、外側ショルダー陸部11の拡大図が示されている。図4に示されるように、外側ショルダー陸部11には、タイヤ軸方向に延びる複数の外側ショルダー横溝38と、外側ショルダー横溝38よりも小さい溝幅の外側ショルダー横細溝39とが設けられている。望ましい態様では、外側ショルダー横溝38と外側ショルダー横細溝39とがタイヤ周方向に交互に設けられている。
外側ショルダー横溝38は、例えば、外側ショルダー陸部11を完全に横切っている。外側ショルダー横溝38は、例えば、タイヤ軸方向に対して外側ミドル横溝23と同じ向きに傾斜している。外側ショルダー横溝38のタイヤ軸方向に対する角度θ4は、例えば、5〜15°であるのが望ましい。
外側ショルダー横溝38の溝幅W10は、例えば、外側ミドル横溝23の溝幅W6(図2に示す)よりも大きいのが望ましい。外側ショルダー横溝38の溝幅W10は、例えば、外側ミドル横溝23の溝幅W6の1.30〜1.70倍であるのが望ましい。このような外側ショルダー横溝38は、ノイズ性能を維持しつつ、ウェット性能を高めるのに役立つ。
図5(a)には、外側ショルダー横溝38のC−C線断面図が示されている。図5(a)に示されるように、外側ショルダー横溝38は、例えば、外側トレッド端To側の第1溝部38aと、外側ショルダー主溝5に連なり第1溝部38aよりも小さい深さの第2溝部38bを有している。第2溝部38bの深さd6は、例えば、第1溝部38aの深さd5の0.60〜0.75倍である。第2溝部38bは、外側ショルダー横溝38が接地したときに過度に開くのを防ぎ、ひいてはポンピング音を低減することができる。
図4に示されるように、外側ショルダー横細溝39は、例えば、外側ショルダー横溝38と同じ向きに傾斜している。本実施形態の外側ショルダー横細溝39は、例えば、外側ショルダー横溝38に沿って延びている。
外側ショルダー横細溝39の溝幅W11は、例えば、外側ショルダー横溝38の溝幅W10の0.40〜0.60倍であるのが望ましい。本実施形態の外側ショルダー横細溝39は、例えば、陸部の踏面での開口幅が1.5mm以上とされている。但し、このような態様に限定されるものではなく、外側ショルダー横細溝39は、サイプとして構成されても良い。本明細書において、「サイプ」とは、幅が1.5mm未満の切れ込みを意味する。
図5(b)には、外側ショルダー横細溝39のD−D線断面図が示されている。図5(b)に示されるように、本実施形態の外側ショルダー横細溝39は、例えば、上述の開口幅を有する開口部28と、1.5mm未満の幅でタイヤ半径方向に延びるサイプ部29とを含んでいる。このような外側ショルダー横細溝39は、外側ショルダー陸部11の過度な剛性低下を防ぎ、操縦初期応答性と耐摩耗性とをバランス良く高めることができる。
図6には、クラウン陸部15の拡大図が示されている。図6に示されるように、クラウン陸部15は、例えば、タイヤ周方向に連続して延びているのが望ましい。このようなクラウン陸部15は、上述した外側ミドル陸部12の内側部31とともに、トレッド部2のタイヤ赤道C付近の剛性を高め、旋回時に大きなコーナリングフォースを提供できる。
クラウン陸部15には、例えば、複数の外側凹部33及び複数の内側スロット34が設けられているのが望ましい。本実施形態では、外側凹部33及び内側スロット34が外側ミドル横溝23と同じピッチで設けられている。外側凹部33は、クラウン陸部15の外側トレッド端To側のエッジ15aから内側トレッド端Ti側に凹んでいる。内側スロット34は、クラウン陸部15の内側トレッド端Ti側のエッジ15bから外側トレッド端To側に延びかつクラウン陸部15内で途切れている。
外側凹部33は、例えば、陸部の踏面上で互いに逆向きに傾斜した第1エッジ33a及び第2エッジ33bを含んでいる。第1エッジ33aは、例えば、タイヤ軸方向に対して50〜70°の角度θ5で傾斜している。第2エッジ33bは、例えば、第1エッジ33aよりもタイヤ軸方向に対して小さい角度θ6で傾斜している。具体的には、第2エッジ33bの角度θ6は、例えば、0〜10°である。
外側凹部33のタイヤ軸方向の幅W12は、外側ミドル陸部12の内側部31のタイヤ軸方向の幅W9(図2に示す)よりも小さいのが望ましい。このような外側凹部33は、クラウン陸部15と外側ミドル陸部12との摩耗の進行を均一に近付け、ひいては耐摩耗性の向上を期待することができる。
内側スロット34は、例えば、タイヤ軸方向に対して外側ミドル横溝23と同じ向きに傾斜しているのが望ましい。内側スロット34のタイヤ軸方向に対する角度θ7は、例えば、10〜25°であるのが望ましい。
内側スロット34のタイヤ軸方向の長さL6は、例えば、外側凹部33の幅W12よりも大きいのが望ましい。本実施形態では、クラウン陸部15がタイヤ赤道C上に設けられ、内側スロット34は、タイヤ赤道Cを跨ることなく配されている。より具体的には、内側スロット34の長さL6は、例えば、クラウン陸部15のタイヤ軸方向の幅W13の0.30〜0.50倍であるのが望ましい。このような内側スロット34は、クラウン陸部15を適度に変形し易くし、クラウン陸部15が接地するときの打撃音を低減することができる。
さらに望ましい態様では、内側スロット34の長さL6は、外側ミドル横溝23のタイヤ軸方向の長さL5よりも小さい。具体的には、内側スロット34の長さL6は、外側ミドル横溝23の長さL5の0.45〜0.65倍であるのが望ましい。このような内側スロット34は、クラウン陸部15と外側ミドル陸部12との摩耗の進行を均一に近付けるのに役立つ。
図7には、外側凹部33及び内側スロット34のE−E線断面図が示されている。図7に示されるように、外側凹部33の最大の深さd8は、主溝の最大の深さd7の0.25〜0.47倍であるのが望ましい。
内側スロット34は、例えば、内側トレッド端Ti側に向かって深さが漸増しているのが望ましい。内側スロット34の最大の深さd9は、例えば、外側凹部33の最大の深さd8よりも大きい。より望ましい態様では、内側スロット34の上記深さd9は、例えば、外側ミドル横溝23の第1溝部23aの深さd2(図3(a)に示す)の1.30〜1.70倍である。このような内側スロット34は、操縦安定性を維持しつつ、クラウン陸部15が接地するときの打撃音を低減することができる。
図8には、内側ミドル陸部14及び内側ショルダー陸部13の拡大図が示されている。図8に示されるように、内側ミドル陸部14には、例えば、複数の内側ミドル横溝41及び複数の内側ミドルサイプ42が設けられている。本実施形態では、内側ミドル横溝41と内側ミドルサイプ42とがタイヤ周方向に交互に設けられている。
内側ミドル横溝41は、例えば、内側ミドル陸部14を完全に横切っている。内側ミドル横溝41は、例えば、タイヤ軸方向に対して内側スロット34と同じ向きに傾斜している。内側ミドル横溝41のタイヤ軸方向に対する角度θ8は、例えば、10〜18°であるのが望ましい。
本実施形態では、内側ミドル横溝41が僅かに湾曲し、タイヤ軸方向に対する溝中心線の角度が内側トレッド端Tiに向かって漸減している。内側ミドル横溝41の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度θ9(本実施形態では、外側トレッド端To側の端部における角度に相当する)は、例えば、外側ミドル横溝23のタイヤ軸方向に対する角度θ2の0.20〜0.30倍であるのが望ましい。これにより、内側ミドル横溝41の付近の陸部分のタイヤ軸方向の剛性が高められ、旋回中期に大きなコーナリングフォースが得られる。
図1に示されるように、内側ミドル横溝41は、内側クラウン主溝8を介して内側スロット34と滑らかに連続しているのが望ましい。このような内側ミドル横溝41は、内側スロット34とともに高い排水性を発揮できる。なお、「溝又はスロットが滑らかに連続する位置に設けられる」とは、少なくとも、一方の溝又はスロットを仮想延長した領域が、他方の溝又はスロットを仮想延長した領域と交わる態様を含む。より望ましい態様として、本実施形態では、内側ミドル横溝41を仮想延長した領域が、内側スロット34の内側クラウン主溝8側の端部と交わっている。また、内側スロット34を仮想延長した領域が、内側ミドル横溝41の内側クラウン主溝8側の端部と交わっている。
図9(a)には、図8の内側ミドル横溝41のF−F線断面図が示されている。図9(a)に示されるように、内側ミドル横溝41は、タイヤ軸方向の両側の端部41aの間に、各端部41aよりも小さい深さを有する浅底溝部41bを含んでいる。浅底溝部41bの深さd11は、例えば、上記端部41aの深さd10の0.30〜0.40倍である。このような内側ミドル横溝41は、内側ミドル陸部14の剛性を維持しつつ、ウェット性能を高めることができる。
図8に示されるように、内側ミドルサイプ42は、例えば、内側ミドル陸部14を完全に横切っている。内側ミドルサイプ42は、例えば、タイヤ軸方向に対して内側ミドル横溝41と同じ向きに傾斜し、より望ましい態様では内側ミドル横溝41に沿って延びている。
図9(b)には、図8の内側ミドルサイプ42のG−G線断面図が示されている。図9(b)に示されるように、内側ミドルサイプ42は、例えば、タイヤ軸方向の両側の端部42aの間に、各端部42aよりも小さい深さを有する浅底サイプ部42bを含んでいる。浅底サイプ部42bの深さd13は、例えば、上記端部42aの深さd12の0.40〜0.55倍である。このような内側ミドルサイプ42は、初期応答性と耐摩耗性とをバランス良く高めることができる。
さらに望ましい態様では、内側ミドルサイプ42の端部42aの深さd12は、内側ミドル横溝41の端部41aの深さd10よりも小さい。一方、内側ミドルサイプ42の浅底サイプ部42bの深さd13は、内側ミドル横溝41の浅底溝部41bの深さd11よりも大きい。このような内側ミドル横溝41及び内側ミドルサイプ42は、内側ミドル陸部14の偏摩耗を抑制することができる。
図8に示されるように、内側ショルダー陸部13には、例えば、複数の内側ショルダー横溝43及び複数の内側ショルダーサイプ44が設けられている。本実施形態では、内側ショルダー横溝43と内側ショルダーサイプ44とがタイヤ周方向に交互に設けられている。
内側ショルダー横溝43は、例えば、内側ショルダー陸部13を完全に横切っている。内側ミドル横溝41は、例えば、タイヤ軸方向に対して内側ミドル横溝41と同じ向きに傾斜している。内側ショルダー横溝43のタイヤ軸方向に対する角度θ10は、例えば、10°未満であるのが望ましい。
本実施形態では、内側ショルダー横溝43が僅かに湾曲し、タイヤ軸方向に対する溝中心線の角度が内側トレッド端Tiに向かって漸減している。内側ショルダー横溝43の溝中心線のタイヤ軸方向に対する最大の角度θ11(本実施形態では、外側トレッド端To側の端部における角度に相当する)は、例えば、内側ミドル横溝41のタイヤ軸方向に対する最大の角度θ9よりも小さいのが望ましい。
内側ショルダー横溝43は、内側ショルダー主溝6を介して内側ミドル横溝41と滑らかに連続しているのが望ましい。より望ましい態様として、本実施形態では、内側ショルダー横溝43を仮想延長した領域が、内側ミドル横溝41の内側ショルダー主溝6側の端部と交わっている。また、内側ミドル横溝41を仮想延長した領域が、内側ショルダー横溝43の内側ショルダー主溝6側の端部と交わっている。このような内側ショルダー横溝43は、優れた排水性を発揮し得る。
本実施形態では、内側スロット34、内側ミドル横溝41及び内側ショルダー横溝43が主溝を介して滑らかに連続し、これらのタイヤ軸方向に対する角度が内側スロット34の内端から内側トレッド端Tiまで漸減しているのが望ましい。このような横溝の配置は、ウェット性能をさらに高めるのに役立つ。
図9(c)には、内側ショルダー横溝43のH−H線断面図が示されている。図9(c)に示されるように、内側ショルダー横溝43は、例えば、第1溝部43aと、内側ショルダー主溝6に連なり第1溝部43aよりも小さい深さを有する第2溝部43bとを含んでいる。第2溝部43bの深さd15は、例えば、第1溝部43aの深さd14の0.60〜0.70倍である。このような内側ショルダー横溝43は、ポンピング音を低減することができる。
図8に示されるように、内側ショルダーサイプ44は、例えば、内側ショルダー陸部13を完全に横切っている。内側ショルダーサイプ44は、例えば、タイヤ軸方向に対して内側ショルダー横溝43と同じ向きに傾斜し、より望ましい態様では内側ショルダー横溝43に沿って延びている。
内側ショルダーサイプ44は、例えば、内側ショルダー主溝6を介して内側ミドルサイプ42と滑らかに連続しているのが望ましい。このような内側ショルダーサイプ44は、内側ショルダー陸部13を適度に変形し易くし、初期応答性を高めることができる。
図1に示されるように、トレッド部2のランド比LTは、例えば、60%〜70%であるのが望ましい。なお、本明細書において、「ランド比」とは、トレッド部2に設けられた溝、サイプ及びスロットを全て埋めた仮想接地面の全面積Saに対する、実際の合計接地面積Sbの比Sb/Saである。
トレッド部2は、外側トレッド端Toとタイヤ赤道Cとの間の外側トレッド部2Aと、内側トレッド端Tiとタイヤ赤道Cとの間の内側トレッド部2Bとを含む。外側トレッド部2Aは、内側トレッド部2Bよりも大きいランド比を有するのが望ましい。具体的には、外側トレッド部2Aのランド比LAは、例えば、60%〜80%であるのが望ましい。内側トレッド部2Bのランド比LBは、例えば、55%〜75%であるのが望ましい。このようなトレッド部2は、優れた初期応答性を発揮しつつ、旋回中期に大きなコーナリングフォースを発揮することができる。
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
図1の基本パターンを有するサイズ215/60R16のタイヤが試作された。比較例として、図10に示されるように、外側ミドル陸部aに設けられたミドル縦細溝bが、外側ミドル陸部aの溝中心線よりも外側トレッド端側(図10では左側)に配されたタイヤが試作された。このタイヤにおいて、外側ミドル横溝dは、内側クラウン主溝からミドル縦細溝bまでのびている。なお、比較例のタイヤのトレッド部は、上記の点を除き、図1で示されるトレッド部と実質的に同一である。各テストタイヤのノイズ性能及び操縦安定性がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:16×6.5J
タイヤ内圧:210kPa
テスト車両:排気量2500cc、後輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
<ノイズ性能>
上記テスト車両でドライ路面を速度100km/hで走行したときの車内騒音が測定された。結果は、比較例の値を100とする指数であり、数値が小さい程、車内騒音が小さく良好であることを示す。
<操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、操縦安定性が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
テストの結果、実施例のタイヤは、優れたノイズ性能を発揮していることが確認できた。また、実施例のタイヤは、操縦安定性も高められていることが確認できた。