JP6970572B2 - 転舵機能付ハブユニットおよびそれを備えた車両 - Google Patents
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Description
車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪タイヤ角度を旋回外輪タイヤ角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
走行状況に応じてステアリングジオメトリを可変とした機構に関しては、例えば特許文献1,2が提案されている。特許文献1では、ナックルアームとジョイント位置を相対的に変化させて、ステアリングジオメトリを変化させる。特許文献2では、モータ2個を使い、トー角とキャンバー角の両方を任意の角度に傾けることを可能にしている。また、4輪独立転舵の機構につき、特許文献3で提案されている。
特許文献1では、前述のようにナックルアームとジョイント位置を相対的に変化させてステアリングジオメトリを変化させているが、このような部分で車両のジオメトリを変化させるほどの大きな力を得るモータアクチュエータを備えることは、空間の制約上、非常に困難である。また、この位置での変化によるタイヤ角の変化が小さく、大きな効果を得るためには、大きく変化させる、つまり大きく動かす必要がある。
特許文献3は、4輪独立転舵の車両にしか適用出来ず、また転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持しているため、剛性が低下し、過大な走行Gの発生によってステアリングジオメトリが変化してしまう可能性がある。
また、転舵軸上に減速機を設けた場合、大きな動力が必要となる。このため、モータを大きくするが、モータを大きくすると車輪の内周部に全体を配置することが困難となる。
また、減速比の大きい減速機を設けた場合、応答性が悪化する。
懸架装置のナックルに設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる転舵用アクチュエータと、を備え、
前記転舵用アクチュエータは、モータと、このモータの回転出力を直線動作に変換する直動機構とを有し、この直動機構は、前記ハブユニット本体に連結された送りねじ機構と、この送りねじ機構を回転支持する回転支持軸受と、この回転支持軸受に外部から入力される反力以上の予圧を与える予圧付与手段とを有する。
前記「予圧」は、設計等によって任意に定める予圧であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な予圧を求めて定められる。
そのため、前輪等の転舵輪および後輪等の非転舵輪のいずれに用いてもよい。転舵輪に用いる場合は、ステアリング装置により方向が変化させられる部材に設置されることにより、運転者のハンドル操作による転舵に付加して、左右の車輪個別の、または左右輪連動したタイヤの微小な角度変化を行わせる機構となる。
さらに直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角度の量を調整することで、走行抵抗を下げ燃費を悪化させることなく、走行安定性を確保するなど調整が可能である。
この構成によると、直動機構の送りねじ機構を回転支持する回転支持軸受に対し、予圧付与手段により適切な前記予圧を与える。回転支持軸受に適切な予圧が与えられていることで、転舵用アクチュエータのモータからの駆動力を適切にガタなく(特に軸方向のガタを抑えて)ハブベアリングに力を伝達することができる。したがって、時間的な遅れが発生しない。
また、車輪側から地面との反力がハブベアリングに入力された場合、転舵用アクチュエータに前記反力が伝達されるが、この反力以上の予圧を回転支持軸受に与えておくことで、直動機構の軸方向の不所望な移動、および直動機構の半径方向の移動も抑えることができる。したがって、車輪角度を正確に変化させることができ、これにより車両の挙動を容易に且つ正確に制御することができる。
そのため、この発明の転舵機能付ハブユニットにつき前述した各効果が得られる。前輪は一般的に転舵輪とされるが、転舵輪にこの発明の転舵機能付ハブユニットを適用した場合は、走行中におけるトー角調整に効果的である。また、後輪は一般的に非転舵輪とされるが、非転舵輪に適用した場合は、非転舵輪の若干の転舵によって低速走行時における最小回転半径の低減を図ることができる。
この発明の第1の実施形態に係る転舵機能付ハブユニットを図1ないし図11、および図15ないし図18と共に説明する。
<補助転舵機能付ハブユニットの概略構造>
図1に示すように、この転舵機能付ハブユニット(補助転舵機能付ハブユニット)1は、ハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、回転許容支持部品4と、転舵用アクチュエータ(補助転舵用アクチュエータ)5とを備える。図4および図5に示すように、ナックル6のインボード側に、補助転舵用アクチュエータ5のアクチュエータ本体7が設けられ、ナックル6のアウトボード側に、ハブユニット本体2が設けられる。
この補助転舵機能付ハブユニット1は、この実施形態では転舵輪、具体的には図14に示すように、車両10の前輪9Fのステアリング装置11による転舵に付加して左右輪個別に微小な角度(約±5deg)を転舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。
図1に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、後述の補助転舵力受け部17(図3,図5参照)とを備える。
図8に示すように、ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9(図1)とを繋ぐ役目をしている。
図2に示すように、ブレーキ21は、ブレーキロータ21aと、ブレーキキャリパ21bとを有する。ブレーキキャリパ21bは、外輪19に一体にアーム状に突出して形成された上下二箇所のブレーキキャリパ取付部22(図6)に取付けられる。
図8に示すように、各回転許容支持部品4は、転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、テーパころ軸受が適用されている。転がり軸受は、取付軸部16bの外周に嵌合された内輪4aと、ユニット支持部材3およびナックル6に後述するように嵌合された外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。図5に示すように、ナックル6のアウトボード側端に、略リング形状のユニット支持部材3が着脱自在に固定されている。ユニット支持部材3のインボード側側面のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3aがそれぞれ形成されている。
図3〜図5に示すように、補助転舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を補助転舵軸心A(図1)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7と、このアクチュエータ本体7の一部(略全体)を覆うケース6bとを有する。
図2に示すように、アクチュエータ本体7は、モータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を直動出力部25aの往復直線動作に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
ねじ軸36の先端の直動出力部25aには、ハブベアリング15(図2)の外輪19(図2)に設けられた補助転舵力受け部17が、ジョイント部8を介して連結されている。ジョイント部8は、二本のピン41,42で補助転舵力受け部17および直動出力部25aにそれぞれ回転自在に連結されている。このため、ねじ軸36の前後移動によって、ナックル6に対して、ハブユニット本体2(図1)の全体が補助転舵軸心A(図1)を中心に回転し得る。
なおモータ26の駆動力を、減速機を介さず直接直動機構25へ伝達する機構も可能である。
以上説明した補助転舵機能付ハブユニット1によれば、車輪9を支持するハブベアリング15を含むハブユニット本体2を、アクチュエータ本体7の駆動により、補助転舵軸心A回りに自由に回転させることができる。つまり、ハブユニット本体2は、補助転舵用アクチュエータ5の直動出力部25aをモータ26の駆動により進退させることで、直動出力部25aに連結された補助転舵力受け部17を介して回転させられる。
さらに直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角度の量を調整することで、走行抵抗を下げ燃費を悪化させることなく、走行安定性を確保するなど調整が可能である。
また、車両が走行中に、本実施形態の補助転舵機能付ハブユニット1の電源等の機能に異常が発生した場合でも、ハンドル操作によって安全な場所まで車両を寄せることができ、安全が確保される。
そこで、車輪側からの反力以上予圧を回転支持軸受31に与えておくことで、直動機構25の軸方向の不所望な移動、および直動機構25の半径方向の移動も抑えることができる。したがって、車輪角度を正確に変化させることができ、これにより車両の挙動を容易に且つ正確に制御することができる。
比較的反力の小さな条件のみで使用される場合には、回転支持軸受31として回転抵抗の低いアンギュラ玉軸受が好ましく、直動機構25を効率よく動作させることができる。
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
第1の実施形態では、アクチュエータ本体7の略全体がケース6bに覆われているが、この例に限定されるものではない。図12および図13に示すように、例えば、アクチュエータ本体7のうちモータ26が、ケース6bから露出して同ケース6bの外表面に取り付けられる構造(所謂外付け構造)であってもよい。この場合、既製品のモータ26を用いることができるうえ、モータ26を容易に交換することができる等、メンテナンス性を高めることが可能となる。
この構成によると、使用条件にかかわらず回転支持軸受に一定の予圧を安定して与えることができる。
2…ハブユニット本体
3…ユニット支持部材
4…回転許容支持部品
5…補助転舵用アクチュエータ
6…ナックル
9…車輪
10…車両
12…懸架装置
15…ハブベアリング
25…直動機構
26…モータ
30…送りねじ機構
31…回転支持軸受
33…予圧付与手段
33b…シム
33c…ばね座金
Claims (5)
- 車輪支持用のハブベアリングを有するハブユニット本体と、
懸架装置のナックルに設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる転舵用アクチュエータと、を備え、
前記ユニット支持部材は、上下に突出して設けられたトラニオン軸状の取付け軸部を有し、
前記取付け軸部は、前記転舵軸心と同軸であり、
前記転舵用アクチュエータは、モータと、このモータの回転出力を直線動作に変換する直動機構とを有し、この直動機構は、前記ハブユニット本体に連結された送りねじ機構と、この送りねじ機構を回転支持する回転支持軸受と、この回転支持軸受に外部から入力される反力以上の予圧を与える予圧付与手段とを有する転舵機能付ハブユニット。 - 請求項1に記載の転舵機能付ハブユニットにおいて、前記送りねじ機構が滑りねじの送りねじ機構である転舵機能付ハブユニット。
- 請求項1または請求項2に記載の転舵機能付ハブユニットにおいて、前記予圧付与手段として、前記回転支持軸受に定位置予圧で予圧を与えるシムを備えた転舵機能付ハブユニット。
- 請求項1または請求項2に記載の転舵機能付ハブユニットにおいて、前記予圧付与手段として、前記回転支持軸受に定圧予圧で予圧を与えるばね座金を備えた転舵機能付ハブユニット。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の転舵機能付ハブユニットを用いて前輪および後輪のいずれか一方または両方が支持された車両。
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