JP6899464B2 - 転舵軸付ハブベアリングおよびこれを備えた車両 - Google Patents
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Description
車両のジオメトリとして、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、 (2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪タイヤ角度を旋回外輪タイヤ角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
アッカーマンジオメトリは、遠心力を無視できるような低速域において、車両をスムースに旋回させるために、各輪が共通の一点を中心として旋回するように左右輪の舵角差を設定しているが、遠心力を無視できない高速域の旋回においては、車輪は遠心力とつり合う方向にコーナリングフォースを発生させることが望ましいため、アッカーマンジオメトリよりもパラレルジオメトリとすることが好ましい。
前述したように一般的な車両の操舵装置は機械的に車輪と接続されているため、一般的には固定された単一のステアリングジオメトリしか取ることができず、アッカーマンジオメトリとパラレルジオメトリとの中間的なジオメトリに設定されることが多い。しかし、この場合、低速域では左右輪の舵角差が不足して外輪の舵角が過大となり、高速域では内輪の舵角が過大となる。このように内外輪のタイヤ横力配分に不要な偏りがあると、走行抵抗の悪化による燃費悪化及びタイヤの早期磨耗の原因となり、また内外輪を効率的に利用できないことによって、コーナリングのスムースさが損なわれるといった課題がある。
走行状況に応じてステアリングジオメトリを可変とした機構に関しては、例えば特許文献1,2が提案されている。特許文献1では、ナックルアームとジョイント部位置を相対的に変化させて、ステアリングジオメトリを変化させる。特許文献2では、モータ2個を使い、トー角とキャンバー角の両方を任意の角度に傾けることを可能にしている。また、4輪独立転舵の機構につき、特許文献3で提案されている。
特許文献2では、モータ2個を使い、トー角とキャンバー角の両方を任意の角度に傾けることが可能であるが、制御が複雑になる。また、ハブベアリング部を支持するために大径の球面玉軸受を設けており、重量増となる。
特許文献3では、転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持している。このため剛性が低下し、走行Gの発生によってステアリングジオメトリが変化してしまう可能性がある。
内輪と、外輪と、これら内外輪間に介在した複列の転動体とを有し、懸架装置に、上下二箇所の、予圧が付与されている回転許容支持部品を介して、前記外輪の外周から上下に突出して設けられるトラニオン軸状の取付軸部の回りに回転自在なように支持されている。
この発明の転舵軸付ハブベアリングは、前記懸架装置のナックルに、前記上下二箇所の前記回転許容支持部品を介して、前記取付軸部の回りに回転自在なように支持されていてもよい。
前記取付軸部の軸心である転舵軸心が、前記懸架装置のキングピン軸に対して角度を成していてもよい。
前記外輪の外周から上下に突出して前記転舵軸心と同軸心に設けられる取付軸部である転舵軸に対して前記転がり軸受の内輪に押圧力を付与することで、前記上下二箇所の回転許容支持部品のそれぞれに予圧が付与されるものであってもよい。
前記外輪の外周から上下に突出して前記転舵軸心と同軸心に設けられる取付軸部である転舵軸に対して前記滑り軸受の内輪に押圧力を付与することで、前記上下二箇所の回転許容支持部品のそれぞれに予圧が付与されるものであってもよい。
前記ハブベアリング部組立部品は、懸架装置のユニット支持部材に、上下2箇所の回転許容支持部品を介して、上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に設置され、
前記転舵用アクチュエータは、前記ユニット支持部材に設置されて前記ハブベアリング部組立部品を前記転舵軸心回りに回転させる。
この転舵機能付ハブユニットは、補助的な転舵を可能にしたことで、剛性確保上の課題が生じるが、剛性の高い車両のユニット支持部材に転舵用アクチュエータを取り付け、かつ、同じくユニット支持部材にハブベアリング部組立部品を取り付ける構成としたため、剛性を高めることができる。
また、この転舵機能付ハブユニットは、操舵装置による転舵とは別に行う転舵であるため、転舵可能な角度は数度以内の僅かな角度で済み、万一、電力の失陥などで転舵用アクチュエータを動作させることができない場合であっても、操舵装置によって安全に車両を停止する位置まで誘導することができる。
この転舵機能付ハブユニットは、転舵輪および非転舵輪のいずれの支持に用いてもよいが、転舵輪の支持に用いる場合は、ナックルに設置される。この場合、ハンドル操作などによって操舵装置で転舵させられた転舵輪の転舵角度を、この転舵機能付ハブユニットで修正する。
なお、ナックルに設置する場合、前記転舵軸心は、ナックルの回転中心となるキングピン軸とは同心でも構わない。
非転舵輪の支持にこの転舵機能付ハブユニットを用いる場合、例えばハンドル操作などで前輪転舵を行う車両において、補助的な転舵となる後輪転舵を行わせる。
このようにユニット支持部材に対してハブベアリング部組立部品と転舵用アクチュエータとを外・内に振り分けて配置した場合、ユニット支持部材回りの空間に対して効率良くこの転舵機能付ハブユニットを設置することができ、またユニット支持部材の車両幅方向の内側に転舵用アクチュエータが位置することで、転舵用アクチュエータの電動モータやセンサ類の配線を他の部材との干渉を生じることなく行える。
ジョイント部のみで連結し、転舵用アクチュエータとハブベアリング部組立部品とをそれぞれ独立して前記ユニット支持部材に取付けることで、剛性を高める効果がより一層得易い。
このようにアーム部を設けることで、ユニット支持部材にハブベアリング部組立部品とは別に設置された転舵用アクチュエータによる転舵の動作の伝達が、簡素な構成で効率良く行える。
これにより、走行中に、車両の走行条件に応じた補助的な転舵が左右輪独立で行えて、車両の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。また、転舵機能を行う機構を有しながら、剛性が低下することが防止される。
<転舵機能付ハブユニットの概略構造>
図4に分解して示すように、この転舵機能付ハブユニット(補助転舵機能付ハブユニット1)は、ハブベアリング部組立部品2と補助転舵用アクチュエータ5とを備える。ハブベアリング部組立部品2と補助転舵用アクチュエータ5とは、懸架装置のユニット支持部材となるナックル6に対して、図3に外観を示すように両面にそれぞれ組み付けられる。図3において、一点鎖線によるハッチングを施した部分は、ナックル6およびハブベアリング部組立部品2を示す。図5は補助転舵機能付ハブユニット1を車輪側から見た図を、図6は図3を真上から見た図を示す。
ハブベアリング部組立部品2は、ナックル6に対して車幅方向の外側(アウトボード側)に突出して設置され、補助転舵用アクチュエータ5は車幅方向の内側(インボード側)に突出して設置される。
この補助転舵機能付ハブユニット1は、この実施形態では転舵輪、具体的には図8に示すように、車両10の前輪9Fの車両用ステアリング装置11による転舵に付加して左右輪個別に微小な角度(約±5deg)を転舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。
懸架装置12は、ストラット式サスペンション機構とされているが、マルチリンク式サスペンション機構など他のサスペンション機構でも構わない。
通常の車両は、車両走行の直進安定性の向上を目的としてキングピン角度が10〜20度で設定されており、この実施形態の補助転舵機能付ハブユニット1は、前記キングピン軸K(図1)とは別の角度(軸)の補助転舵軸心Aを有しており、補助転舵用アクチュエータ5によってナックル6に対するハブベアリング部組立部品2の角度を、走行中に任意に変更することができる。
ハブベアリング部組立部品2は、ハブベアリング15と、アウターリング16と、ブレーキキャリパ取付部材22(図3,図5参照)とが、一つの組立部品として一体に組み立てられ、一体に転舵するものである。
図2に示すように、ブレーキ21は、ブレーキロータ21aと、ブレーキキャリパ21bとを有する。ブレーキキャリパ21bは、外輪19に一体にアーム状に突出して形成された上下2箇所のブレーキキャリパ取付部22(図3、図5)に取付けられる。
回転許容支持部品4は、転がり軸受からなる。この回転許容支持部品4である転がり軸受は、図7に示すように、内輪4aと、外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在した複列の転動体4cとを有し、内輪4aは、前記アウターリング16に設けられた前記取付軸部16bの外周に嵌合して設置されている。外輪4bは、ナックル6に設けられた軸受嵌合部に嵌合状態に設置されている。
この例では、回転許容支持部品4となる転がり軸受として、テーパころ軸受を適用して予圧が与えられる構造とし、車両の重量が補助転舵機能付ハブユニット1に作用した場合にも予圧が抜けないように設定されている。具体的には、各取付軸部16bに、雌ねじ部が径方向に延びるように形成され、この雌ねじ部に螺合するボルト23が設けられている。内輪4aの端面に円板状の押圧部材24を介在させ、前記雌ねじ部に螺合するボルト23により、内輪4aの端面に押圧力を付与することで、各回転許容支持部品4にそれぞれ予圧を与えている。これにより各回転許容支持部品4の剛性を高め得る。
回転許容支持部品4は、テーパころ軸受に限るものではなく、最大負荷等の使用条件によってはアンギュラ玉軸受を用いることも可能である。回転許容支持部品4は、転がり軸受に限らず、球面軸受等の滑り軸受を用いることも可能である。
ナックル6は、前記回転許容支持部品4の外輪4bを嵌合させる軸受嵌合部の中心よりも先端側の部分がナックル分割体3として分割され、ナックル分割体3はナックル6の本体部分にボルトにより締め付け固定されている。この分割構造とすることで、ハブベアリング部組立部品2のトラニオン状の取付軸部16bをナックル6の軸受嵌合部内に組み込み可能としている。なお、ナックル6への組み込み上の支障が生じない回転支持構造である場合は、ナックル6の一部をナックル分割体3として分割する必要はない。
図2に示すように、ハブベアリング部組立部品2のアウターリング16の外周の一部に一体に突出してアーム部17が設けられている。このアーム部17は、ジョイント部8を介して、補助転舵用アクチュエータ5の直動出力部25aに回転自在に連結されている。これにより、補助転舵用アクチュエータ5の直動出力部25aが進退することで、ハブベアリング部組立部品2が補助転舵軸心A(図1)回りに回転、つまり補助転舵させられる。
図1に示すように、補助転舵用アクチュエータ5は、ハブベアリング部組立部品2を補助転舵軸心A回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7と、このアクチュエータ本体7の一部(略全体)を覆うケース7bとを有する。補助転舵用アクチュエータ5は、ナックル6に設けられた取り付け凹部6bに一部が嵌合し、ボルト(図示せず)等で取り付けられる。
図2に示すように、アクチュエータ本体7は、モータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を直動出力部25aの往復直線動作に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
直動機構25は、滑りねじまたはボールねじ等の送りねじ機構、またはラック・ピニオン機構等用いることができ、この例では台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構が用いられている。
モータ26、減速機27および直動機構25を備えたアクチュエータ本体7は、準組立品として組み立てられてケース7bにボルト等により着脱自在に取り付けられる。
なお、モータ26の駆動力を、減速機を介さず直接直動機構25へ伝達する機構も可能である。
この補助転舵機能付ハブユニット1は、ステアリング装置によるナックルの回転中心となるキングピン軸とは異なる補助転舵軸Aを持ち、この補助転舵軸Aでハブベアリング部組立部品2が上下両端部で回転可能に保持されている。また、この補助転舵機能付ハブユニット1内に配置されている補助転舵用アクチュエータ5によって、前記補助転舵軸Aを中心として回転作動させることが可能である。これによって、簡単な構造で、補助転舵機能付ハブユニット1に取り付けられた車輪9のタイヤ9bのトー角度を任意に変更することができる。
車両の走行条件に応じて、左右の車輪の角度を独立して任意に変更することができるため、車両の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。また、適切なトー角度を設定することで燃費を改善することも可能となる。
また、この補助転舵機能付ハブユニット1は、左右のタイヤの微小な角度(約±5deg)を、独立して変化させるのに使用される。そのため、車両が走行中に本開発品の補助転舵機能付ハブユニット1機能が失陥した場合でも、ハンドル操作によって安全な場所まで車両を寄せることができ、安全が確保される。
Claims (8)
- 車輪を回転支持する転舵軸付ハブベアリングであって、
内輪と、外輪と、これら内外輪間に介在した複列の転動体とを有し、懸架装置に、上下二箇所の、予圧が付与されている回転許容支持部品を介して、前記外輪の外周から上下に突出して設けられるトラニオン軸状の取付軸部の回りに回転自在なように支持され、前記回転許容支持部品は、前記取付軸部の外周に嵌合して設置されている転舵軸付ハブベアリング。 - 請求項1記載の転舵軸付ハブベアリングにおいて、前記懸架装置のナックルに、前記上下二箇所の前記回転許容支持部品を介して、前記取付軸部の回りに回転自在なように支持された転舵軸付ハブベアリング。
- 請求項2記載の転舵軸付ハブベアリングにおいて、前記取付軸部の軸心である転舵軸心が、前記懸架装置のキングピン軸に対して角度を成している転舵軸付ハブベアリング。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の転舵軸付ハブベアリングにおいて、前記回転許容支持部品が転がり軸受であり、前記取付軸部である転舵軸に対して前記転がり軸受の内輪に押圧力を付与することで、前記上下二箇所の回転許容支持部品のそれぞれに予圧が付与される転舵軸付ハブベアリング。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の転舵軸付ハブベアリングにおいて、前記回転許容支持部品が滑り軸受であり、前記取付軸部である転舵軸に対して前記滑り軸受の内輪に押圧力を付与することで、前記上下二箇所の回転許容支持部品のそれぞれに予圧が付与される転舵軸付ハブベアリング。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の転舵軸付ハブベアリングにおいて、前記転舵軸付ハブベアリングを前記取付軸部の軸心である転舵軸心回りに回転させるための作用点を有する転舵軸付ハブベアリング。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の転舵軸付ハブベアリングにおいて、前記取付軸部である転舵軸に直交する方向に突き出したアーム部が前記外輪に固定状態に設けられ、前記アーム部に、前記転舵機能付ハブベアリングを前記取付軸部の軸心である転舵軸心回りに回転させる転舵用アクチュエータの進退動作する直動出力部が連結されている転舵軸付ハブベアリング。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の転舵軸付ハブベアリングを搭載した車両。
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