JP6967913B2 - メタクリル系樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、メタクリル系樹脂の製造方法に関する。
エッジライト型バックライトユニットを有する面状発光装置は、近年、テレビ、パーソナルコンピュータ用モニター、カーナビゲーションシステムモニター、携帯電話、PDA等の用途で使用され、より薄型が求められることが多い。
面状発光装置におけるエッジライト型バックライトユニットを構成する部材である導光板は、側面に配置されたLED等の光源の光を正面に導く役割を果たす。
バックライトユニットに用いられる導光板としては、光線透過率が高いこと、比較的安価で入手が容易であること等の理由から、アクリル樹脂や環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂といった透明な樹脂材料の利用が検討されている。
なかでも、バックライトユニットの薄型化を実現するために、射出成形性に優れ、より光線透過率が高く、より複屈折特性にも優れているメタクリル系樹脂並びにその組成物の開発が進んでいる。
エッジライト方式では、導光板中の光透過距離が比較的長いため導光板中の光損失が大きく、光損失を防止するためには、使用する樹脂並びにそれから得られる成形体には更に高い光線透過率と可視光域(波長範囲が400〜750nm)において透過率差が少ないことが求められる。
光線透過率が低くなると、導光板の輝度が低下したり、輝度ムラが生じたり、色ムラが生じたりするし、透過率差が大きい場合、例えば470nm程度の波長の短い領域での光線透過率が低いと、透過した光が黄色味を帯びるという問題を生じる懸念が高くなる。
また、光源のより高出力化等に伴い、光源の発熱量も多くなり、導光板にも耐熱性が要求されるようになってきており、加えて、導光する成形体に複屈折性が発現すると、偏光光源で発生した偏光が導光体を通過することで偏光特性が乱れてランダム偏光に近づいてしまう問題点がある。これら問題点を解消するために、位相差が小さく、且つ、光弾性係数が小さい樹脂からなる導光板を用いることにより、光の利用効率を高めることも提案されている。
そこで、比較的耐熱性の良好なポリカーボネート樹脂では、低複屈折化の検討が、一方、より光線透過率が高く、複屈折特性に優れるメタクリル系樹脂では、主鎖に環構造単位の導入等による耐熱性の向上や複屈折特性の更なる向上が盛んに検討されている。
例えば、メタクリル系樹脂においては特許文献1には、主鎖にマレイミド単量体由来の構造単位を有し、耐熱性にも、複屈折特性にも優れた熱可塑性樹脂及びその成形体が提案されている。
確かに、特許文献1に開示された樹脂は、耐熱性に優れ、低い位相差、低い光弾性係数を有しているものの、主にフィルム用途向けに設計されたためか、薄肉射出成形性や肉厚のある成形体での色調、並びに長光路長での光線透過率が十分ではなく、更なる改善の余地がある。
また、特許文献2には、N−アルキルマレイミド及び/又はN−シクロアルキルマレイミド単量体由来の構造単位を有し、特定の重量平均分子量の範囲にあるメタクリル系樹脂を用いて調製した光学部材がその色調や長光路での光線透過率が良好で、導光体等の光学部材に利用できることが開示されている。
しかしながら、特許文献2にて得られる光学部材は、着色性のフェニルマレイミド等のN−芳香族置換マレイミドを単量体としてあえて用いないで重合することにより、その色調や長光路長での透過率は比較的良好なものとなったものの、複屈折特性の改善は不十分となる場合もあった。そして、エッジライト型バックライトユニットを構成する導光板として用いる場合においては、長光路での光線透過率の更なる向上とともに、複屈折特性(例えば、位相差、光弾性係数)並びに薄肉射出成形性等の改善の余地がある。
一方で、特許文献3では、バルク重合や少量の重合溶媒を含むバルク重合等により得られた重合溶液から重合物を回収する方法として、平板ヒータを持つ熱交換器と減圧容器とからなる揮発分除去装置が開示されている。この装置は特定の流路を有しており、不安定流動を生じることなく、効率よく揮発分の除去ができることが開示されている。
しかしながら、エッジライト型バックライトユニットを有する面状発光装置用の導光板として利用するような、比較的ガラス転移温度が高く、高度に制御された光学特性を有するメタクリル系樹脂の製造に利用した例は開示されておらず、更なる改良が求められていた。
国際公開第2011/149088号公報 特開2016−210963号公報 特表平9−509980号公報
従って、本発明の目的は、耐熱性が高く、高度に複屈折が制御され、光線透過率、色調、及び透明性に優れるメタクリル系樹脂を製造することのできる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上述した課題を解決するために、主鎖に環構造単位を有するメタクリル系樹脂並びに樹脂組成物の調製条件(例えば、重合方法、重合条件、脱揮方法、添加剤の添加方法、ペレット造粒条件等)をより詳細に検討した結果、特許文献1にて採用されている脱揮方法であるメタノール再沈法では、残存する単量体とメタノールとの反応副生成物の生成のためか、或いは、メタノールとの分離工程が更に付加されるためか、他の脱揮方法(例えば、脱揮用二軸押出機を用いる方法、薄膜蒸発装置を用い脱揮する方法等)により得られる重合物に比較して長光路長での光線透過率が低下していることが判明した。
また、本発明者らの検討により、別の脱揮方法として、従来より利用されている加熱剪断力下で脱揮操作を行う薄膜蒸発機やベント付二軸押出機を用いる方法を採用した場合、重合物及び未反応単量体に加えて重合溶媒とを含む溶液を高温で高剪断力下にて脱揮操作を行うためと推定されるが、未反応のN−置換マレイミドをその構造単位として含む低分子量で着色性を有する反応副生成物が生成しやすいことが判り、より高い光線透過率を有するメタクリル系樹脂を得ようとする場合においては、脱揮条件並びに脱揮方法の選択もより重要な因子であることも判った。
一方、その重合方法として懸濁重合法を採用している特許文献2では、N−置換マレイミドを用いた主鎖に環構造単位を有するメタクリル系樹脂を調製した際、N−置換マレイミドの着色性加水分解副生物が生成したり、用いる懸濁助剤由来の異物が混入する等の影響を受け、やはり長光路長での光線透過率がいまだ十分ではない可能性があることが判明した。
本発明者らは更に鋭意検討を重ねた結果、耐熱性が高く、高度に複屈折が制御され、色調及び透明性に優れた光学部品、特にエッジライト型バックライトユニットを構成する導光板にも適用可能な、長光路での高い光線透過率を有するメタクリル系樹脂を調製するためには、溶液重合後に得られる重合溶液から脱揮工程を経て重合物を回収する際に、その上部に熱交換器を附帯した脱揮槽を主な構成とする脱揮装置を用い、特定の温度範囲で加熱・脱揮操作を行って、重合物を回収することにより、比較的ガラス転移温度が高いメタクリル系樹脂であっても、良好な色調と高い透過率を有するメタクリル系樹脂が調製できることが判明した。更に加えて、脱揮工程に供する重合溶液中での未反応N−置換マレイミド単量体、特にN−芳香族置換マレイミドの溶液中での濃度を特定の濃度以下に調製した重合溶液を脱揮操作に供することにより、更に、高い透明性と良好な色調を有するメタクリル系樹脂を得ることができることも見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]ガラス転移温度(Tg)が120℃超160℃以下である主鎖に環構造を有する構造単位(X)を含むメタクリル系樹脂の製造方法であって、
前記構造単位(X)がN−置換マレイミド単量体由来の構造単位であり、
重合後の重合溶液を100質量%とした場合に重合物を30〜70質量%含む重合溶液を加熱・脱揮して、前記重合物を回収する際に、その上部に熱交換器を附帯する脱揮槽を備える、回転部を有しない脱揮装置であって、前記熱交換器が断面が矩形であるスリット状流路が積層された構造を有する脱揮装置1機のみを用い、回転部を有する脱揮装置は用いず、
前記スリット状流路の平面視形状は、前記重合溶液の入り口側の幅より前記重合溶液の出口側の幅が広い形状であり、
Tg+100℃〜Tg+140℃の温度にて、加熱・脱揮操作を行う
ことを特徴とする、メタクリル系樹脂の製造方法。
[2]前記脱揮槽内の圧力を5〜300Torrに維持しながら前記脱揮操作を行う、[1]に記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
[3]前記重合後の重合溶液に、その融点が100℃〜250℃である3価のリン元素を含むリン系酸化防止剤、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤を添加する、[1]又は[2]に記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
[4]前記少なくとも1種の酸化防止剤の添加量が、前記重合溶液中に含まれる前記重合物を100質量部とした場合に、0.01〜0.3質量部である、[3]に記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
[5]前記脱揮装置に供する前記重合後の重合溶液中に含まれる前記N−置換マレイミド単量体の含有量が、前記脱揮装置に供する前記重合後の重合溶液を100質量%とした場合に、その総量として2000質量ppm以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
本発明によれば、耐熱性が高く、高度に複屈折が制御され、光線透過率、色調、及び透明性に優れるメタクリル系樹脂を製造することのできる製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
−メタクリル系樹脂−
本実施形態におけるメタクリル系樹脂は、メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位、及び主鎖に環構造を有する構造単位とからなるメタクリル系樹脂であって、主鎖に環構造を有する構造単位としては、例えば、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位、ラクトン環構造単位、グルタルイミド系構造単位、グルタル酸無水物系構造単位等を例示できる。その中でも好ましくは、少なくともN−置換マレイミド単量体由来の構造単位を含むメタクリル系樹脂である。
以下、各単量体構造単位について説明する。
−−メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位−−
まず、メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位について説明する。
メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位は、例えば、以下に示すメタクリル酸エステル類から選ばれる単量体から形成される。メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロオクチル、メタクリル酸トリシクロデシル、メタクリル酸ジシクロオクチル、メタクリル酸トリシクロドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸1−フェニルエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸3−フェニルプロピル、メタクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル等が挙げられる。
これらの単量体は、単独で用いる場合も2種以上を併用する場合もある。
上記メタクリル酸エステルのうち、得られるメタクリル系樹脂の透明性や耐候性が優れる点で、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸ベンジルが好ましい。
メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位は、一種のみ含有していても、二種以上含有していてもよい。
メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位の含有量としては、特に限定されないが、メタクリル系樹脂を100質量%として、好ましくは60〜95質量%の範囲、より好ましくは60〜92質量%の範囲である。
この範囲内にあるとき、メタクリル樹脂が本来有している高い光学特性を維持できるためより好ましい改良効果が得られる。
−−N−置換マレイミド単量体由来の構造単位−−
N−置換マレイミド単量体由来の構造単位は、下記式(1)で表されるN−芳香族置換マレイミド単量体由来の構造単位及び/又は下記式(2)で表されるN−脂環族置換マレイミド単量体由来の構造単位から選ばれた少なくとも一つとしてよく、好ましくは、下記式(1)及び下記式(2)で表される構造単位の両方から構成される。
Figure 0006967913
式(1)中、Rは、炭素数7〜14のアリールアルキル基、炭素数6〜14のアリール基のいずれかを示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基のいずれかを示す。
また、Rがアリール基の場合には、Rは、置換基としてハロゲン原子を含んでいてもよい。
また、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、ベンジル基等の置換基で置換されていてもよい。
Figure 0006967913
式(2)中、Rは、水素原子、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜18のアルキル基のいずれかを示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基のいずれかを示す。
以下、具体的な例を示す。
式(1)で表される構造単位を形成する単量体としては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)マレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2−ニトロフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)マレイミド、N−(4−ベンジルフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−アントラセニルマレイミド、3−メチル−1−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、3,4−ジメチル−1−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1,3−ジフェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1,3,4−トリフェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン等が挙げられる。
これらの単量体のうち、得られるメタクリル系樹脂の耐熱性、及び複屈折等の光学的特性が優れる点から、N−フェニルマレイミド及びN−ベンジルマレイミドが好ましい。
これらの単量体は、単独で用いる場合も2種以上を併用して用いる場合もある。
式(2)で表される構造単位を形成する単量体としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−s−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−ヘプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、1−シクロヘキシル−3−メチル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−シクロヘキシル−3,4−ジメチル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−シクロヘキシル−3−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−シクロヘキシル−3,4−ジフェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン等が挙げられる。
これらの単量体のうち、メタクリル系樹脂の耐候性が優れる点から、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドが好ましく、近年光学材料に求められている低吸湿性に優れることから、N−シクロヘキシルマレイミドが特に好ましい。
これらの単量体は、単独で用いる場合も2種以上を併用して用いることもできる。
本実施形態のメタクリル系樹脂において、式(1)で表される構造単位を形成する単量体と式(2)で表される構造単位を形成する単量体とを併用して用いることが、高度に制御された複屈折特性を発現させ得るため、好ましい。
式(1)で表されるN−芳香族置換マレイミド単量体由来の構造単位の含有量(A1)の、式(2)で表されるN−脂環族置換マレイミド単量体由来の構造単位の含有量(A2)に対するモル割合、(A1/A2)は、好ましくは0超15以下、より好ましくは0超10以下である。モル割合(A1/A2)がこの範囲にあるとき、本実施形態のメタクリル系樹脂は透明性を維持し、黄変を伴わず、また耐環境性を損なうことなく、良好な耐熱性と良好な光弾性特性を発現する。
N−置換マレイミド単量体由来の構造単位の含有量としては、特に限定されないが、メタクリル系樹脂を100質量%として、好ましくは5〜40質量%の範囲、より好ましくは11〜35質量%の範囲である。
この範囲内にあるとき、メタクリル系樹脂はより十分な耐熱性改良効果が得られ、また、耐候性、低吸水性、光学特性についてより好ましい改良効果が得られる。なお、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位の含有量が40質量%以下とすることが、重合反応時に単量体成分の反応性が低下し未反応で残存する単量体量が多くなることによるメタクリル系樹脂の物性低下を防ぐのに有効である。
本実施形態におけるN−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で、メタクリル酸エステル単量体及びN−置換マレイミド単量体と共重合可能な他の単量体由来の構造単位を含有していてもよい。
例えば、共重合可能な他の単量体としては、芳香族ビニル;不飽和ニトリル;シクロヘキシル基、ベンジル基、又は炭素数1〜18のアルキル基を有するアクリル酸エステル;グリコール類の不飽和カルボン酸エステル;グリシジル化合物;不飽和カルボン酸等を挙げることができる。
上記芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
上記不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル等が挙げられる。
また、上記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
また、グリコール類の不飽和カルボン酸エステルとしては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。
また、グリシジル化合物としては、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの半エステル化物又は無水物等が挙げられる。
上記共重合可能な他の単量体由来の構造単位は、一種のみ有していてもよく、二種以上を有していてもよい。
これら共重合可能な他の単量体由来の構造単位の含有量としては、メタクリル系樹脂を100質量%として、0〜20質量%であることが好ましく、0.05〜15質量%であることがより好ましく、0.1〜10質量%であることがさらに好ましい。
他の単量体由来の構造単位の含有量がこの範囲にあると、主鎖に環構造を導入する本来の効果を損なわずに、樹脂の成形加工性や機械的特性を改善できるため好ましい。
本実施形態における主鎖にN−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂の製造方法としては、溶液重合法が採用できる。
以下、溶液重合法を用いてラジカル重合にて、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂(以下、「マレイミド共重合体」と記す場合がある)を製造する方法について、具体的に説明するが、同様に溶液重合法を用いてラジカル重合した後、環化反応により調製される、主鎖にラクトン環構造単位を有するメタクリル系樹脂の製造においても以下に記す方法を利用することができる。
本実施形態における製造方法における重合形式として、例えば、バッチ(回分法とも称する)重合法、セミバッチ(半回分法とも称する)重合法、連続重合法のいずれも用いることができる。
用いる重合溶媒としては、重合により得られるマレイミド共重合体の溶解度を高め、ゲル化防止等の目的から反応液の粘度を適切に保てるものであれば、特に制限はない。
具体的な重合溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;ジメチルホルムアミド、2−メチルピロリドン等の極性溶媒を用いることができる。
また、重合時における重合生成物の溶解を阻害しない範囲で、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールを重合溶媒として併用してもよい。
重合時の溶媒量としては、重合が進行し、生産時に共重合体や使用モノマーの析出等が起こらず、容易に除去できる量であれば特に制限はないが、例えば、配合する単量体の総量を100質量部とした場合に、10〜100質量部とすることが好ましい。より好ましくは25〜100質量部、さらに好ましくは40〜100質量部、さらにより好ましくは50〜100質量部である。
本実施形態においては、重合時の溶媒量が、配合する単量体の総量を100質量部とした場合に、100質量部以下の範囲内で、重合中に溶媒濃度を適宜変更しながら重合する方法も好ましく用いることができる。より具体的には、重合初期においては40〜60質量部を配合し、重合途中に、残りの60〜40質量部を配合し、最終的には、配合する単量体の総量を100質量部とした場合に、溶媒量が100質量部以下の範囲になるようにする方法等が例示できる。
溶液重合を採用する際には、重合溶液中の溶存酸素濃度を出来る限り低減させておくことが重要であり、例えば、溶存酸素濃度は、10ppm以下の濃度であることが好ましい。溶存酸素濃度は、例えば、溶存酸素計DOメーターB−505(飯島電子工業株式会社製)を用いて測定することができる。溶存酸素濃度を低下する方法としては、重合溶液中に不活性ガスをバブリングする方法、重合前に重合溶液を含む容器中を不活性ガスで0.2MPa程度まで加圧した後に放圧する操作を繰り返す方法、重合溶液を含む容器中に不活性ガスを通ずる方法等の方法を適宜選択することができる。
重合温度としては、重合が進行する温度であれば特に制限はないが、70〜180℃であることが好ましく、より好ましくは80〜160℃である。さらに好ましくは90〜150℃、さらにより好ましくは100〜150℃である。生産性の観点から70℃以上とすることが好ましく、重合時の副反応を抑制し、所望の分子量や品質の重合体を得るために180℃以下とすることが好ましい。
また、重合時間については、必要な転化率にて、必要な重合度を得ることができる時間であれば特に限定はないが、生産性等の観点から、2〜15時間であることが好ましく、より好ましくは3〜12時間、さらに好ましくは4〜10時間である。
重合開始剤としては、一般にラジカル重合において用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物;等を挙げることができる。
これらは、単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
重合開始剤の添加量としては、重合に用いる単量体の総量を100質量部とした場合に、0.01〜1質量部としてよく、好ましくは0.05〜0.5質量部の範囲である。
本実施形態における重合開始剤の添加方法としては、一定添加速度ではなく重合溶液内に残存する単量体濃度に合わせ、可変的な添加であれば特に制限はなく、連続的に加えても断続的に加えてもよい。
これらの方法を採用することにより、重合後期におけるオリゴマーや低分子量体の生成量を抑制したり、重合時の過熱を抑制して重合の安定性を図ったりすることもできる。
重合反応時には、必要に応じて、連鎖移動剤を添加して重合してもよい。
連鎖移動剤としては、一般的なラジカル重合において用いる連鎖移動剤が使用でき、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム等のハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー、α−テルピネン、ジペンテン、ターピノーレン等の不飽和炭化水素化合物;等が挙げられる。
これらは、単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
これらの連鎖移動剤は、重合反応が進行中であれば、いずれの段階に添加してもよく、特に限定されるものではない。
連鎖移動剤の添加量としては、重合に用いる単量体の総量を100質量部とした場合に、0.01〜1質量部としてよく、好ましくは0.05〜0.5質量部である。
溶液重合により得られる重合液から重合物を回収する方法としては、脱揮工程と呼ばれる工程を経由して重合溶媒や未反応の単量体を分離し、重合生成物を回収する方法が挙げられる。
ここで、脱揮工程とは、重合溶媒、残存単量体、反応副生成物等の揮発分を、加熱・減圧条件下で、除去する工程をいう。
本実施形態では、環構造単位としてN−置換マレイミド構造単位を選択した場合には、重合終了後のメタクリル系樹脂を含む重合溶液には、重合溶液中に含まれるN−置換マレイミド単量体の含有量を一定濃度以下に制御した上で、次の脱揮工程に供することが重要である。
具体的に、脱揮工程に供する重合溶液中に含まれるN−置換マレイミド単量体の含有量としては、重合溶液を100質量%とした場合に、残存するN−置換マレイミド単量体の総量として2000質量ppm以下が好ましく、より好ましくは1500質量ppm以下、更に好ましくは1000質量ppm以下である。
また、N−置換マレイミドとしてN−フェニルマレイミド等のN−芳香族置換マレイミドを使用する際には、その含有量が1000質量ppm以下、より好ましくは800質量ppm以下、更に好ましくは600質量ppm以下である。
脱揮工程に供するメタクリル系樹脂を含む重合溶液中に残存するN−置換マレイミドの濃度がこの範囲にあると、加熱された脱揮装置内で、未反応のN−置換マレイミドをその構造単位として含む低分子量で着色性を有する反応副生成物やN−置換マレイミドの熱変性物の生成等を抑制することができ、高い光線透過率を有するメタクリル系樹脂を得ることができるため好ましい。
一方、重合溶液中に含まれるN−置換マレイミド単量体の濃度が高い状態で、脱揮工程に供給し、高温で、且つ高減圧下にて脱揮を行い、回収された重合物中に残存するN−置換マレイミド単量体の含有量を低減する方法では、広い波長領域で高い光線透過率を有する、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂が得られない傾向にあり、本発明の目的を達成することが困難となる場合がある。
脱揮工程に供するメタクリル系樹脂を含む重合溶液中に残存するN−置換マレイミド単量体の残存濃度を求める方法としては、例えば、重合溶液の一部を採取・秤量し、この試料をクロロホルムに溶解させて、5質量%溶液を調整し、内部標準物質としてn−デカンを添加し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製 GC−2010)を用いて、試料中に残存するN−置換マレイミド単量体の濃度を測定することにより求めることができる。より具体的な測定条件としては、後述の実施例記載の方法を用いることができる。
脱揮工程に供するメタクリル系樹脂を含む重合溶液中に残存するN−置換マレイミド単量体の残存濃度を本実施形態の好ましい範囲に制御する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、単量体の転化率を高めるために、重合時間を出来る限り長くしたり、重合溶液中の未反応の単量体濃度に合わせ、重合開始剤の添加速度を変化させたりして重合を行う方法;重合中に溶媒濃度を適宜変更しながら重合する方法;重合後半に残存するN−置換マレイミド単量体との反応性が高い他の単量体を追加添加する方法;重合終了時にα−テルピネン等、N−置換マレイミドとの反応性の高い化合物を添加する方法;開始剤単量体の一部を重合開始前に反応器内に仕込み、重合開始剤を添加することによって重合を開始した後に、単量体の残部を供給する方法(いわゆるセミバッチ重合法)等の方法を例示することができる。
また、本実施形態の製造方法において用いる脱揮装置に供する重合溶液には、重合溶液を100質量%とした場合に、少なくとも重合物を30〜70質量%、好ましくは40〜60質量%含む。重合溶液に含まれるメタクリル系樹脂重合物の濃度がこの範囲にあると、熱交換器のスリット流路内での圧力損失が過大とならず、また、熱負荷が過大となることもなく、熱交換器自体が過大な大きさにすることもなく、高品位な重合物のまま熱交換と気液分離(スリット流路内で一部気液分離を生じている場合も包含する)を行うことができるため好ましい。
なお、脱揮装置に供する重合溶液における重合物の含有量は、重合溶液の一部を採取し、試料の総質量(a)から、試料に含まれる単量体量(b)並びに重合溶媒量(c)を除し、計算式(a−b−c)/a×100により、算出することができ、具体的には後述する実施例に記載する方法を用いて測定することができる。
中でも、本実施形態においては、セミバッチ重合法を採用することがより好ましく、重合開始剤の添加開始から30分以降に、重合に供与する単量体の総質量を100質量%として、メタクリル酸エステル単量体を5〜35質量%、好ましくは10〜30質量%を添加する方法を採用することが好ましい。
本実施形態においては、バルク(塊状)重合後の重合溶液やメタクリル系樹脂からの異物除去等の目的で、樹脂を溶媒に溶解した後に濾過操作等を行い、得られた樹脂を含む溶液を用いて脱揮操作を行う場合についても、その利用を妨げるものではない。
より具体的には、本実施形態では、重合により得られた重合物を含む溶液を、減圧容器の上部に設置され加熱された熱交換器、例えば、多管式熱交換器、プレートフィン式熱交換器、平板型流路とヒータとを有する平板式熱交換器等に供して予熱した後、加熱・減圧下にある脱揮槽に供給して、重合溶媒、未反応原料混合物、重合副生成物等と共重合体とを分離除去してよい。
本実施形態での製造方法における脱揮工程においては、その上部に断面が矩形であるスリット状流路が積層された構造を有する熱交換器と減圧ユニットを附帯した脱揮が可能な大きさを有する脱揮槽、並びに脱揮後の重合物を排出するためのギアポンプ等の排出装置とを主な構成とする脱揮装置を用いることが特に好ましい。その構造としては回転部を有しないことが好ましい。
より具体的には、かかる脱揮装置では、重合物を含む重合溶液は、円筒状の熱交換器の中央部より供給され、層状に配置された多数のアルミ製の加熱平板間に形成された各スリットに分配され加熱される。各スリットは加熱平板間にアルミ製スペーサーを設置することにより形成される。加熱された重合溶液は、スリット状流路から、熱交換器と一体化した減圧下の減圧容器内に供給されて、フラッシュ蒸発されてよい。
スリット状流路としては、アルミ製スペーサーの各層で同一平面上に8つ以上に分割されていることが好ましい。
スリット状流路の断面における高さは、1.0〜2.5mmであることが好ましい。高さがこの範囲にあると、重合物を含む重合溶液の流動が不安定になることなく、効率よく加熱平板から伝熱でき、回収される重合物に、劣化や着色等の問題を生じることないため好ましい。
スリット状流路の長さは、各分割部分で、150〜500mmであることが好ましく、好ましくは160〜300mmの範囲であることがより好ましい。
また、スリット状流路の平面視形状としては、矩形としてよく、重合溶液の入り口側の幅より重合溶液の出口側の幅が広い形状(例えば、台形)が好ましい。また、スリット状流路の延在方向に垂直な面による断面の形状としては、矩形としてよい。
スリット状流路を上記特徴を備えるものとすることにより、重合溶液がスリット内を流動する際に、大きな振動を伴うこともなく、その流量を増大させた場合においても、圧力変動が比較的小さくすることができるので好ましい。
また、本実施形態における熱交換器の各スリット状流路の伝熱面積としては、各スリット状流路の容積当たりの伝熱面積が800m/m以上であり、好ましくは1000m/m以上、更に好ましくは1200m/m以上である。伝熱面積がこの範囲より小さいと、重合溶液を所定の温度に昇温させるために加熱平板の温度をより高くする必要があり、重合物の熱劣化や着色を生じる懸念があるため好ましくない。
本実施形態の熱交換器を用いることにより、従来より脱揮装置に附帯させる熱交換器として広く利用されている二重管型の熱交換器に比較して、比較的高濃度の重合溶媒や未反応の単量体を含む重合溶液を用いる場合においても、回収する重合物の品位を低下させることなく、安定、且つ効率的な熱交換が実施できるため好ましい。
上述の脱揮装置を2機以上を直列に設置して、2段階で脱揮する方法も採用することも可能である。
本実施形態に係るメタクリル系樹脂の製造においては、脱揮工程に供する重合物を含む重合溶液には、融点が100〜250℃の範囲にあり且つ3価のリン元素を有する、リン系酸化防止剤、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤を添加することが好ましい。
上記リン系酸化防止剤は、3価のリン元素を有しつつ、その融点は120〜200℃の範囲にあることが好ましい。
本発明者らは、重合物に加えて、未反応単量体、重合溶媒、反応副生成物等を含む重合溶液を加熱・脱揮操作に供する際に、これら複数の成分間での想定外の副反応に伴う恐れがあり、重合溶媒や重合物の劣化や着色構造の生成を回避すべき鋭意検討した結果、重合溶液に特定の酸化防止剤を事前に添加した後、脱揮操作に供することが有効であることを見出した。
重合溶液に添加する上記酸化防止剤の添加量としては、重合溶液中に含まれる重合物を100質量部とした場合に、0.01〜0.3質量部の範囲であることが好ましく、0.05〜0.25質量部の範囲であることが好ましい。
0.01質量部より少ない場合は、減圧下での脱揮操作において、散逸してしまい有効な添加効果を発現できない恐れがあり、また、0.3質量部より多い場合には、得られるメタクリル系樹脂を射出成形に供した際に、金型汚れを生じたり、成形品表面にシルバーストリークスを生じる懸念があり、好ましくない。
融点が100〜250℃の範囲にあり且つ3価のリン元素を有するリン系酸化防止剤としては、市販のリン系酸化防止剤であれば、例えば、イルガフォス168(Irgafos168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、BASF製、融点180〜190℃)、イルガフォス12(Irgafos12:トリス[2−[[2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、BASF製、融点190〜210℃)、アデカスタブHP−10(ADKSTAB HP−10:2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト:株式会社ADEKA製、融点146〜152℃)、アデカスタブPEP36(ADKSTAB PEP36:ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト:株式会社ADEKA製、融点234〜240℃)、アデカスタブPEP36A(ADKSTAB PEP36A:ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト:株式会社ADEKA製、融点234〜240℃)、スミライザーGP(SumilizerGP:(6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学製、融点128℃)、GSY P101(テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5メチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスホナイト:堺化学製、融点約100℃)等が挙げられる。
これらは1種でも2種を組み合わせて用いることもできる。
リン系酸化防止剤の含有量としては、重合溶液の熱安定性を向上させる効果が得られる量であればよく、重合溶液中に含まれる重合物100質量部に対して、0.2質量部以下であることが好ましく、好ましくは0.01〜0.2質量部である。
用いるヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、市販のフェノール系酸化防止剤であれば、イルガノックス1010(Irganox 1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF社製)、イルガノックス1076(Irganox 1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASF社製)、イルガノックス1330(Irganox 1330:3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、BASF社製)、イルガノックス3114(Irganox3114:1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、BASF社製)、イルガノックス3125(Irganox 3125、BASF社製)、アデカスタブAO−60(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ADEKA社製)、アデカスタブAO−80(3、9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルキシオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ADEKA社製)、シアノックス1790(Cyanox 1790、サイテック製)、スミライザーGA−80(Sumilizer GA−80、住友化学製)、スミライザーGS(Sumilizer GS:アクリル酸2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニル、住友化学製)、スミライザーGM(Sumilizer GM:アクリル酸2−tert−ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルベンジル)フェニル、住友化学製)等が挙げられる。
これらの市販のヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、溶媒や未反応の単量体を含む重合溶液への熱安定性付与効果の観点から、イルガノックス1010、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−80、イルガノックス1076、スミライザーGS等が好ましい。
これらは1種のみを単独で用いても、2種以上併用してもよい。
フェノール系酸化防止剤の含有量としては、重合溶液の熱安定性を向上させる効果が得られる量であればよく、含有量が過剰である場合、成形体の光線透過率に影響を及ぼす懸念があることから、重合溶液中に含まれる重合物100質量部に対して、0.2質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.2質量部である。
尚、重合溶液に添加する酸化防止剤として、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合においては、重合溶液中に含まれる重合物を100質量部とした場合に、その総量が0.3質量部以下であることが好ましく、0.25質量部以下であることがより好ましい。
添加する酸化防止剤の総量がこの範囲にあると、加熱・減圧下での脱揮操作において、重合物の熱劣化や着色を防止することができるとともに、脱揮装置の減圧系に不要な析出物を大量に形成させることがなく、安定して高い減圧度での運転が可能となり、特に好ましい。
本実施形態の製造方法において、脱揮装置に附帯する熱交換器にて加熱する温度の範囲としては、Tg+100℃〜Tg+140℃の温度、好ましくは、Tg+110℃〜Tg+140℃の温度であり、加熱・保温された脱揮槽の温度の範囲としては、Tg+100℃〜Tg+140℃の温度、好ましくは、Tg+110℃〜Tg+140℃の温度である。
熱交換器ならびに脱揮槽の温度がこの範囲にあると、比較的滞留時間が長くなっても、重合溶液より回収される重合物を劣化・変色させることなく、回収できるため好ましい。
本実施形態の製造方法において、脱揮装置に附帯する脱揮槽の圧力(真空度)の範囲としては、5〜300Torr、好ましくは、10〜200Torrの範囲に維持しながら脱揮操作を行うことが好ましい。
脱揮槽の圧力がこの範囲にあると、効率よく未反応単量体又は未反応単量体と重合溶媒の混合物を分離除去することができ、回収されたメタクリル系樹脂重合物を射出成形に供した際に、金型汚れや成形品表面でのシルバーストリークスの発生等が抑制できるので好ましい。
脱揮槽内における平均滞留時間としては、5〜60分であり、好ましくは5〜45分である。平均滞留時間がこの範囲にあると、効率よく脱揮できるとともに、重合物の熱変性による着色や分解を抑制できるので好ましい。
脱揮工程を経て回収された重合物は、造粒工程と呼ばれる工程にてペレット状に加工される。
造粒工程では、例えば、溶融状態の樹脂を多孔ダイを付帯設備として有するギアポンプ、単軸押出機、二軸押出機等から選ばれた少なくとも1種の搬出造粒装置にて、ストランド状に押出し、コールドカット方式、空中ホットカット方式、水中ストランドカット方式、及びアンダーウォーターカット方式にて、ペレット状に加工する。
本実施形態では、高度に制御されたメタクリル系樹脂を得ようとするため、高温下で溶融状態にある組成物をできる限り空気に触れないようにして、素早く冷却固化させることができる造粒方式を採用することが好ましい。
その場合には、溶融樹脂温度を可能な範囲で低くし、且つ多孔ダイ出口から冷却水面までの滞留時間を極力少なくし、冷却水の温度も可能な範囲で高い温度にて、実施できる条件にて造粒を行うことがより好ましい。
例えば、溶融樹脂温度としては、220〜280℃が好ましく、より好ましくは230〜270℃であり、多孔ダイ出口から冷却水面までの滞留時間は5秒以内が好ましく、より好ましくは3秒以内であり、冷却水の温度としては、30〜80℃が好ましく、より好ましくは40〜60℃の範囲である。
これら溶融樹脂温度並びに冷却水温度の範囲にて実施することにより、より着色が少なく、含有する水分率が低いメタクリル系樹脂ならびにその組成物が得られるので好ましい。
脱揮工程後のメタクリル系樹脂中に残留する単量体の含有量については、少ないほど、熱安定性や製品品質の観点から好ましい。具体的には、メタクリル酸エステル単量体の含有量としては、3000質量ppm以下が好ましく、より好ましくは2000質量ppm以下である。N−置換マレイミド単量体の含有量としては総量として200質量ppm以下が好ましく、より好ましくは100質量ppm以下であり、重合溶媒の含有量としては500質量ppm以下が好ましく、より好ましくは300質量ppm以下である。
また、本実施形態のメタクリル系樹脂を導光板等の光学部材用途等に用いる場合には、その光線透過率を高く保持し、且つ異物を減少させる目的で、重合反応工程、液−液分離工程、液−固分離工程、脱揮工程、造粒工程のいずれか又は複数の工程において、例えば、濾過精度1.5〜20μmの焼結フィルター、プリーツフィルター、及び/又はリーフディスク型ポリマーフィルター等を濾過装置に付加し用いて、調製することも好ましい方法である。
(メタクリル系樹脂)
本実施形態のメタクリル系樹脂は、本実施形態のメタクリル系樹脂の製造方法により製造されたものである。
以下、本実施形態のメタクリル系樹脂の特性について詳細に記載する。
−ガラス転移温度−
本実施形態におけるメタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、120℃超160℃以下である。
メタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が120℃を超えていれば、近年のレンズ成形体、液晶ディスプレイ用フィルム成形体光学フィルムとして必要十分な耐熱性をより容易に得ることができる。
ガラス転移温度(Tg)は、使用環境温度下での寸法安定性や耐久性の観点から、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。
一方、メタクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)が160℃を超える場合には、溶融加工時の温度をかなり高い温度としなくてはならず、樹脂等の熱分解を招きやすく、溶融加工にて良好な製品を得ることが難しくなる可能性がある。
ガラス転移温度(Tg)は、上述の理由から、好ましくは150℃以下である。
ガラス転移温度(Tg)は、JIS−K7121に準拠して測定することにより決定できる。具体的には、後述する実施例に記載する方法を用いて測定することができる。
−重量平均分子量−
本実施形態のメタクリル系樹脂は、GPC測定法により測定されるポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量(Mw)が90,000〜180,000であることが好ましく、より好ましくは100,000〜170,000、さらに好ましくは120,000〜160,000である。
重量平均分子量(Mw)がこの範囲にあると、機械的強度と成形加工性とのバランスに優れるため好ましい。
−分子量分布−
また、分子量分布を表すパラメータとしての、Z平均分子量(Mz)、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の間における比に関しては、本実施形態におけるメタクリル系樹脂では、流動性と機械強度とのバランスを考慮すると、Mw/Mnは、2.0〜3.0であることが好ましく、2.1〜2.9であることがより好ましく、2.1〜2.7であることがさらに好ましく;Mz/Mwは、1.6〜3.0であることが好ましく、1.6〜2.8であることがより好ましく、1.7〜2.7であることがさらに好ましい。
特に、本実施形態におけるメタクリル系樹脂においては、Mz/Mwがこの範囲にあることで、高分子量体の存在割合の増加に伴う成形体中のゲル状物の増加が抑制しつつ、流動性と耐衝撃性とのバランスに優れた樹脂となる傾向にあり、薄物の射出成形体を得る目的上、特に好ましい。
なお、メタクリル系樹脂のZ平均分子量、重量平均分子量、数平均分子量については、後述の実施例記載の方法にて測定することができる。
−光弾性係数−
本実施形態の主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂の光弾性係数Cの絶対値は1.0×10−12Pa−1以下であることが好ましく、0.5×10−12Pa−1以下であることがより好ましく、0.3×10−12Pa−1以下であることがさらに好ましい。
光弾性係数に関しては種々の文献に記載があり(例えば、化学総説,No.39,1998(学会出版センター発行)参照)、下記式(i−a)及び(i−b)により定義されるものである。光弾性係数Cの値がゼロに近いほど、外力による複屈折変化が小さいことがわかる。
=|Δn|/σ・・・(i−a)
|Δn|=|nx−ny|・・・(i−b)
(式中、Cは、光弾性係数、σは、伸張応力、|Δn|は複屈折の絶対値、nxは、伸張方向の屈折率、nyは、面内で伸張方向と垂直な方向の屈折率、をそれぞれ示す。)
本実施形態のメタクリル系樹脂の光弾性係数Cの絶対値が1.0×10−12Pa−1以下であれば、厚みが比較的薄く、且つ光路長の長い射出成形体においても、光線透過率が高く、導光板として用いる場合においても、輝度むらが少ない光学部材が得られる。
光弾性係数Cは、具体的には、後述の実施例記載の方法にて求めることができる。
−クロロホルム溶液での光線透過率−
一般にメタクリル系樹脂を用い、射出成形により得られる成形体は、その成形条件(シリンダー温度、金型温度、射出速度、保持圧力、金型材質、金型内の試験片型形状、スプルー、ランナー等の流路設計等、様々な要因の影響を受けた上での成形体の光線透過率を示すことが広く知られている。
そのため、樹脂が本来有する光線透過率を求めようとする場合には、樹脂を溶液化し、溶液状態での光線透過率を求めることがよいのではないかと本発明者らは考えた。
その際、できる限り、樹脂本来の特性を反映した評価とすべく、鋭意検討した結果、その濃度として20質量対容量百分率を採用し、且つ、光線透過率測定時の石英セル長として100mmの長光路セルを採用することにより、樹脂が本来有する透過率特性をよく反映した評価が可能であることを見出したのである。
すなわち、本実施形態のメタクリル系樹脂は、20質量対容量百分率クロロホルム溶液に調製した場合の光線透過率が、光路長100mm、波長470nmの条件下で測定し得られる光線透過率が94.0%以上、好ましくは95.0%以上、更に好ましくは96.0%以上である。
また、上述の光線透過率に加えて、該樹脂の20質量対容量百分率クロロホルム溶液に調製した場合の光線透過率が、光路長100mm、波長700nmの条件下で測定し得られる光線透過率が96.0%以上、好ましくは97.0%以上、更に好ましくは98.0%以上である。
これらを満たすことにより、本実施形態で得られるメタクリル系樹脂を導光板等の光学部材として用いる場合には、幅広い条件にて射出成形により導光板を調製した場合においても、より高い光線透過率とより小さい光線透過率の波長依存性が発現でき、導光板として用いる際には、輝度が高く、色むらの少ない導光板を得ることができるので好ましい。
該樹脂のクロロホルム溶液での光線透過率を測定する方法としては、質量対容量百分率(以下w/v%と記す)で20w/v%(すなわち、10gの試料をクロロホルムに溶解し50mLの溶液とするような割合で作製した溶液)に調整し、紫外可視分光光度計を用いて測定し決定することができる。
光線透過率は、より具体的には、後述の実施例記載の方法にて求めることができる。
(メタクリル系樹脂組成物の製造方法)
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、上述の本実施形態のメタクリル系樹脂の製造方法により製造されるメタクリル系樹脂を用いて、製造することできる。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、いずれの方法を選択した場合においても、メタクリル系樹脂組成物を製造する際には、酸素及び水分を可能な限り低減させた上で行うことが好ましい。
メタクリル系樹脂の水分量としては、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは500質量ppm以下に調整することが推奨される。
これらの範囲内であれば、本発明の要件を満たす組成物を調製することが比較的容易となり、有利である。
例えば、押出機を用いた製造方法を採用した場合、原料であるペレット化されたメタクリル系樹脂は、減圧下又は除湿空気下で加温し、予め十分に乾燥させることで、水分を出来る限り除去して用いることが好ましい。
その際、後述する各種酸化防止剤や添加剤を配合する場合においては、これら各種酸化防止剤や添加剤自体も、含まれる水分量を十分に低減してから配合することが好ましい。
さらに、押出機内に酸素が混入することを極力低減し、溶融状態にある組成物の酸化を防止するため、押出機内に不活性ガス、例えば、窒素ガス等を流入させ、ベント付押出機を用い、減圧排気しながら実施することが好ましい。
本実施形態では、高度に制御されたメタクリル系樹脂組成物を得ようとするため、高温下で溶融状態にある組成物をできる限り空気に触れないようにして、素早く冷却固化させることができる造粒方式を採用することが好ましい。
かかる目的のためには、例えば、ウォータリングホットカット方式、コールドカット方式、水中ストランドカット方式、アンダーウォーターカット方式等が好ましいが、生産性及び造粒装置コストの面から、一般的には水冷ストランドカット方式がより好ましい。
その場合には、溶融樹脂温度を可能な範囲で低くし、且つ多孔ダイ出口から冷却水面までの滞留時間を極力少なくし、冷却水の温度も可能な範囲で高い温度にて、実施できる条件にて造粒を行うことがより好ましい。
例えば、溶融樹脂温度としては、220〜280℃が好ましく、より好ましくは230〜270℃であり、多孔ダイ出口から冷却水面までの滞留時間は5秒以内が好ましく、より好ましくは3秒以内であり、冷却水の温度としては、30〜80℃が好ましく、より好ましくは40〜60℃の範囲である。
(メタクリル系樹脂組成物)
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、上述の本実施形態のメタクリル系樹脂に加えて、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂、添加剤を含んでよい
−他の熱可塑性樹脂−
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を調製する際には、本実施形態の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂を配合することもできる。
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリブチルアクリレート等のポリアクリレート類;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー等の芳香族ビニル系樹脂;更には、例えば、特開昭59−202213号公報、特開昭63−27516号公報、特開昭51−129449号公報、特開昭52−056150号公報等に記載の、3〜4層構造のアクリル系ゴム粒子;特公昭60−17406号公報、特開平8−245854公報に開示されているゴム質重合体;国際公開第2014−002491号に記載の、多段重合で得られるメタクリル系ゴム含有グラフ卜共重合体粒子;等が挙げられる。
この中でも、良好な光学特性と機械的特性とを得る観点からは、スチレン−アクリロニトリル共重合体や、本実施形態で調製されるメタクリル系樹脂と相溶し得る組成からなるグラフト部をその表面層に有するゴム含有グラフト共重合体粒子が好ましい。
前述のアクリル系ゴム粒子、メタクリル系ゴム含有グラフ卜共重合体粒子、及びゴム質重合体の平均粒子径としては、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物より得られるフィルムの衝撃強度及び光学特性等を高める観点から、0.03〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5μmである。
他の熱可塑性樹脂の含有量としては、メタクリル系樹脂を100質量部とした場合に、好ましくは0〜50質量部、より好ましくは0〜25質量部の範囲である。
−添加剤−
本実施形態に係るメタクリル系樹脂を含む樹脂組成物を射出成形による導光板調製に用いる場合には、近年の導光板の薄肉化や複雑形状化に伴い、その射出成形条件が、より高温で、より高い剪断下等の過酷となった場合においても安定性に射出成形でき、加えて光源のより高出力化等による導光板の着色等を抑制することが重要となる。
そのために、本実施形態に係るメタクリル系樹脂組成物には、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合して用いることが好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤を添加するタイミングとしては、先に記した、重合後に重合物を含む重合溶液に添加する態様に加えて、重合前の単量体混合溶液に添加する態様;脱揮後の溶融状態にある重合物に添加する態様;脱揮・造粒後に得られるペレットを用い、再度溶融押出・造粒する際に添加する態様を実施することができる。
その際、重合物を含む重合溶液に添加する酸化防止剤と上述の追加添加する酸化防止剤とは、同じであっても、異なっていても、本発明の効果を損わない限りであれば、特に制限はない。
−−リン系酸化防止剤−−
本実施形態に係るメタクリル系樹脂を含む樹脂組成物には、融点が100〜250℃の範囲にあり且つ3価のリン元素を有するリン系酸化防止剤を含有することが好ましい。
本実施形態のメタクリル系樹脂を含む樹脂組成物は、例えば、薄肉で比較的流動距離がある導光板を調製する射出成形に用いられるため、加工性や複屈折性等の光学特性を向上させるためにより高温で成形する場合が多く、その際の熱安定性をより高めることが必要となる。そのため、本実施形態では、加工時の熱安定性を向上させたり、酸化防止剤自体の成形体表面へのブリードアウトを防止する観点からも、リン系酸化防止剤は、3価のリン元素を有しつつ、その融点が100〜250℃の範囲であり、上記融点は、好ましくは120〜200℃の範囲にあることが好ましい。
3価のリン元素を有し融点が100〜250℃であるリン系酸化防止剤としては、例えば、特に限定されないが、亜リン酸エステル類(以下、「ホスファイト類」とも記載する)、ホスホナイト類等を用いることができる。市販のリン系酸化防止剤を用いてもよく、例えば、イルガフォス(登録商標)168(Irgafos168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、BASF製、融点180〜190℃)、イルガフォス12(Irgafos12:トリス[2−[[2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、BASF製、融点190〜210℃)、アデカスタブ(登録商標)HP−10(ADKSTAB HP−10:2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト:株式会社ADEKA製、融点146〜152℃)、アデカスタブPEP36(ADKSTAB PEP36:ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト:株式会社ADEKA製、融点234〜240℃)、アデカスタブPEP36A(ADKSTAB PEP36A:ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト:株式会社ADEKA製、融点234〜240℃)、スミライザー(登録商標)GP(SumilizerGP:(6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学製、融点128℃)
、GSY P101(テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5メチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスホナイト:堺化学製、融点約100℃)等が挙げられる。
これらは1種でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
リン系酸化防止剤の含有量としては、熱安定性を向上させる効果が得られる量であればよく、含有量が過剰である場合、射出成形体の光線透過率に影響を及ぼす懸念があり、加えて成形加工時にブリードアウトする等の問題が発生するおそれがあることから、メタクリル系樹脂100質量部に対して、0.2質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.2質量部である。
尚、リン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の両者として作用する化合物(例えば、分子内にホスファイト構造とヒンダードフェノール構造の両者を含む化合物)を用いる場合は、リン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤のそれぞれが含まれているものと考える。
−−ヒンダードフェノール系酸化防止剤−−
本実施形態に係るメタクリル系樹脂を含む樹脂組成物には、上述のリン系酸化防止剤に加えて、ヒンダードフェノール系酸化防止剤をも含むことが好ましい。
用いるヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に制限はなく、市販のフェノール系酸化防止剤を使用してもよく、例えば、イルガノックス(登録商標)1010(Irganox 1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF社製)、イルガノックス1076(Irganox 1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASF社製)、イルガノックス1330(Irganox 1330:3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、BASF社製)、イルガノックス3114(Irganox3114:1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、BASF社製)、イルガノックス3125(Irganox 3125、BASF社製)、アデカスタブAO−60(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ADEKA社製)、アデカスタブAO−80(3、9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルキシオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ADEKA社製)、シアノックス(登録商標)1790(Cyanox 1790、サイテック製)、スミライザーGA−80(Sumilizer GA−80、住友化学製)、スミライザーGS(Sumilizer GS:アクリル酸2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニル、住友化学製)、スミライザーGM(Sumilizer GM:アクリル酸2−tert−ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルベンジル)フェニル、住友化学製)等が挙げられる。
これらの市販のヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、樹脂への熱安定性付与効果の観点から、イルガノックス1010、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−80、イルガノックス1076、スミライザーGS等が好ましい。
これらは1種のみを単独で用いても、2種以上併用してもよい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量としては、熱安定性を向上させる効果が得られる量であればよく、含有量が過剰である場合、成形体の光線透過率に影響を及ぼす懸念があり、加えて成形加工時にブリードアウトする等の問題が発生するおそれがあることから、メタクリル系樹脂100質量部に対して、0.1質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.1質量部である。
−−紫外線吸収剤−−
本実施形態に係るメタクリル系樹脂を含む樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、その組成に紫外線吸収剤を含むことができる。
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、その極大吸収波長を280〜380nmに有する紫外線吸収剤であることが好ましく、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物等を好ましく用いることができる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、特に制限はないが、例えば、市販品を例示すると、Kemisorb(登録商標)2792(ケミプロ化成製)、アデカスタブ(登録商標)LA31(株式会社ADEKA製)、チヌビン(登録商標)234(BASF社製)等が挙げられる。
ベンゾトリアジン系化合物としては、特に制限はないが、市販品を例示すると、例えばKemisorb102(ケミプロ化成社製)、LA−F70(株式会社ADEKA製)、LA−46(株式会社ADEKA製)、チヌビン405(BASF社製)、チヌビン460(BASF社製)、チヌビン479(BASF社製)、チヌビン1577FF(BASF社製)等を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、特に、樹脂との相溶性、加熱時の揮散性の観点から、分子量400以上のベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物が好ましく、また、紫外線吸収剤自体の押出加工時加熱による分解抑制の観点から、ベンゾトリアジン系化合物が特に好ましい。
また、前記紫外線吸収剤の融点(Tm)は、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましく、160℃以上であることがさらにより好ましい。
加えて、前記紫外線吸収剤は、23℃から260℃まで20℃/分の速度で昇温した場合の重量減少率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらにより好ましく、5%以下であることがよりさらに好ましい。
これら紫外線吸収剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
2種類の構造の異なる紫外線吸収剤を併用することにより、広い波長領域の紫外線を吸収することができる。
前記紫外線吸収剤の配合量は、耐熱性、耐湿熱性、熱安定性、透明性及び成形加工性を阻害せず、本発明の効果を発揮する量であれば特に制限はないが、メタクリル系樹脂100質量部に対して、0.001〜0.1質量部であることが好ましく、好ましくは0.001〜0.08質量部以下、より好ましくは0.001〜0.05質量部であり、さらにより好ましくは0.001〜0.03質量部である。この範囲にあると、紫外線吸収剤による色調変化を最小限に止めた上で、紫外線による着色や性能劣化を抑制することができる。
−−光安定剤−−
本実施形態に係るメタクリル系樹脂を含む樹脂組成物を導光板等の光学部材に用いる場合は、本発明の目的を損なわない範囲で、光安定剤をその組成に含むことができる。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等が挙げられる。
前記光安定剤の配合量としては、耐熱性、耐湿熱性、熱安定性、透明性及び成形加工性を阻害せず、本発明の効果を発揮する量であれば特に制限はないが、メタクリル系樹脂100質量部に対して、0.001〜0.05質量部であることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.03質量部の範囲である。この範囲にあると、導光板用成形体としての耐久性、射出成形性等のバランスに優れる。
−−離型剤−−
本実施形態に係るメタクリル系樹脂を含む樹脂組成物は、射出成形加工性を高めるために、離型剤として、グリセリン脂肪酸エステル及び又はソルビタン脂肪酸エステルを含有することが好ましい。
グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種の脂肪酸エステルをその組成中に含有することにより、樹脂組成物の成形加工時における製品の金型密着による表面不良を抑制し、良外観の成形体を得ることができ好ましい。これらの離型剤は、射出成形時における溶融混練の際に内部潤滑剤としての効果を有し、溶融時の樹脂分解を抑制することにより、ガス付着等による曇りの少ない良好な外観の成形体を連続的に提供することを可能にするものと考えられる。
また、これらは、メタクリル系樹脂に対する相溶性もよく、成形体の長い光路長における透過率への影響も少なく、また、得られた成形体が高温下に置かれた際の染み出し等を抑制する上でも効果的であり、高温下で長期間の使用においても成形体に曇り等を発生させないので好ましく用いることができる。
かかる目的で用いられるグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、リノール酸、オレイン酸等の脂肪酸のモノないしジ脂肪酸エステルである。
これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
これらのなかでも、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート等が特に好ましい。
上述の離型剤として使用することができる化合物類の中では、光路長の長い成形品における光線透過率への影響が少ないため、特に、グリセリンモノステアレートが好適に用いることができる。
これら脂肪酸エステルの添加量は、樹脂分解の抑制、加工性の向上の観点から、メタクリル系樹脂100質量部に対して0.05〜0.2質量部の範囲であり、より好ましくは0.08〜0.15質量部の範囲で含むことが好ましい。この範囲にあると、射出成形時の金型汚れを生じることなく、成形体とした場合における透明性の低下が抑制でき、本来の目的である離型性を有効に発揮できるため好ましい。
これら離型剤を添加するタイミングとしては、重合後に重合物を含む重合溶液への添加、脱揮後の溶融状態にある重合物への添加、脱揮・造粒後に得られるペレットを用い、再度溶融押出・造粒する際への添加等が例示できる。本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を調製する場合には、これらの中でも、重合後に重合物を含む重合溶液に、或いは脱揮後の溶融状態にある重合物に離型剤を添加することが好ましい。脱揮後の溶融状態にある重合物に添加する方法としては、例えば、ポリマーミキサーやインラインミキサーを用いて添加する方法も好ましい。
−−その他の添加剤−−
本実施形態に係るメタクリル系樹脂を含む樹脂組成物には、本実施形態の効果を著しく損なわない範囲内で、その他の添加剤を含有させてもよい。
特に本発明のメタクリル系樹脂組成物を導光板成形用に供する場合においては、必要に応じて、蛍光増白剤、ブルーイング剤等のマスキング剤を任意に使用することができる。
その他の添加剤としては、特に制限はないが、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤;帯電防止剤;或いはこれらの混合物等が挙げられる。
(成形体の調製方法)
本実施形態の成形体は、上述の本実施形態のメタクリル系樹脂や、上述の本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を用いて、製造することできる。
本実施形態に係るメタクリル系樹脂を含む樹脂組成物を用い、成形体を得ようとする場合には、射出成形及び射出圧縮成形を適用することができる。
通常、射出成形法は、(1)樹脂を溶融させ、温度制御された金型のキャビティに溶融樹脂を充填する射出工程、(2)ゲートシールするまでキャビティ内に圧力をかけ、射出工程で充填された溶融樹脂が金型に接し冷却されて収縮した量に相当する樹脂を注入する保圧工程、(3)保圧を開放後、樹脂が冷却されるまで成形品を保持する冷却工程、(4)金型を開いて冷却された成形品を取り出す工程からなる。
この際、成形温度としては、メタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度を基準として、Tg+100℃〜Tg+160℃の範囲、好ましくは、Tg+110℃〜Tg+150℃の範囲であることが好ましい。ここで、成形温度とは、射出ノズルに巻かれているバンドヒータの制御温度を指す。
また、金型温度としては、メタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg−70℃〜Tgの範囲、好ましくはTg−50℃〜Tg−20℃の範囲であることが好ましい。
また、射出速度としては、得ようとする射出成形体の厚さや寸法により、適宜選択することができるが、例えば、200〜1000mm/秒の範囲から適宜選択することができる。
また、保圧のための圧力としては、30〜120MPaの範囲で適宜選択できる。
ここで保圧のための圧力とは、溶融樹脂を充填した後に、ゲートから更に溶融樹脂を送り出すためのスクリューによって保持される圧力である。
射出圧縮成形とは、射出成形開始時に、予め金型を僅かに開き、高速、且つ低圧にて溶融樹脂を金型内に充填した後、高速にて型締め圧を高め、樹脂全面に均一保圧する圧縮保圧工程が付加された射出成形法であり、表面特性や光学特性に優れた成形体を成形することが可能となる。
より薄肉、例えば、厚さが1mm未満で対角寸法が100mmを超えるような射出成形体を得ようとする場合には、射出圧縮成形を採用することより光学特性や色調に優れた成形体が得られるので特に好ましい。
また、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を用いて得られる射出成形体を、導光板として用いる際には、その表面に微細な凹凸を付型してあるものも含まれる。このような微細な凹凸を設けることによって、反射層を別途印刷等で設ける必要が無くなり好ましい。微細な凹凸とは、特に限定されないが、直方体、円柱形、楕円柱、三角柱、球面、非球面等の構成単位がはっきりしている凹凸や、梨地状やヘアライン状等の凹凸形状ではあるが、構成単位がはっきりしない凹凸或いはその組み合わせ、さらには構成単位がはっきりしているが、その形状特にサイズが変化している凹凸等が挙げられる。凹凸の形状としては、形状の高さもしくは凹部が0.1〜500μm、凹凸間のピッチ距離としては、10〜1000μmが例示できる。
以下、本実施形態の成形体の特性について詳細に記載する。
−面内方向の位相差Re測定−
本実施形態の成形体は、面内方向の位相差Reの絶対値が、30nm以下であることが好ましい。但し、ここで面内方向位相差Reは、1mm厚に換算して求めた値である。
面内方向位相差Reの絶対値は、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましく、6nm以下であることが特に好ましい。
一般に、面内方向位相差Reの絶対値は、複屈折の大小を表す指標である。本実施形態に係る成形体は、既存樹脂(例えば、PMMA、PC、トリアセチルセルロース樹脂、環状オレフィン樹脂等)の複屈折に対して十分に小さく、光学材料として低複屈折が要求される光学部品(例えば、レンズ、導光板)等の用途に好適である。
一方、面内方向位相差Reの絶対値が30nmを超える場合、屈折率異方性が高いことを意味し、光学部品として低複屈折が要求される用途には使用できないことがある。
−色調(YI値)−
本実施形態の成形体は、光路長1mmにおけるYI(イエローネインデックスネス)値が、1.0以下であることが好ましく、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.6以下である。
光路長1mmにおけるYI値が上記範囲であると、光学用途向け成形体にも好適な色調を得ることができる。
なお、光路長1mmにおけるYI値は、色差計(日本電色社製、SD5000)を用いて、JIS K 7373に準拠して測定することができる。より具体的には、後述の実施例記載の方法にて測定することができる。
−厚み方向の光線透過率−
本実施形態の成形体は、光路長1mmにおける光線透過率が、90%以上であることが好ましく、より好ましくは91%以上、更に好ましくは92%以上である。
光路長1mmにおける光線透過率がこの範囲にあることにより、光学用途向け成形体用途にも好適な透明性を得ることができる。
なお、光線透過率は、ヘーイズメータ(日本電色社製、NDH5000W)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定することができる。より具体的には、後述の実施例記載の方法にて測定することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容を具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(1.重合物の含有量)
脱揮装置に供する重合溶液における重合物の含有量は、重合溶液の一部を採取し、試料をクロロホルムに溶解させて、5質量%溶液を調整し、内部標準物質としてn−デカンを添加し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製 GC−2010)を用いて、試料中に残存する単量体量及び重合溶媒量を測定し、試料の総質量(a)から、試料に含まれる単量体量(b)並びに重合溶媒量(c)を除し、計算式(a−b−c)/a×100により、重合物の含有量(質量%)を算出した。
(2.重合後の重合溶液中に残存するN−置換マレイミド単量体の残存量の決定)
重合溶液の一部を採取・秤量し、この試料をクロロホルムに溶解させて、5質量%溶液を調整し、内部標準物質としてn−デカンを添加し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製 GC−2010)、を用いて、以下の条件にて測定を行い、決定した。
検出器:FID
使用カラム:ZB−1
測定条件:45℃で5分保持後、20℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温、その後15分間保持
(3.構造単位の解析)
後述の実施例及び比較例で製造したメタクリル系樹脂中の各構造単位は、特に断りのない限りH−NMR測定及び13C−NMR測定により、メタクリル系樹脂について各構造単位を同定し、その存在量を算出した。H−NMR測定及び13C−NMR測定の測定条件は、以下の通りである。
・測定機器:ブルーカー株式会社製 DPX−400
・測定溶媒:CDCl、又は、d6−DMSO
・測定温度:40℃
(4.ガラス転移温度)
JIS−K7121に準拠して、メタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)(℃)を測定した。
まず、標準状態(23℃、65%RH)で状態調節(23℃で1週間放置)した試料から、試験片として4点(4箇所)、それぞれ約10mgを切り出した。
次に、示差走査熱量計(パーキンエルマージャパン(株)製 Diamond DSC)を窒素ガス流量25mL/分の条件下で用いて、ここで、10℃/分で室温(23℃)から200℃まで昇温(1次昇温)し、200℃で5分間保持して、試料を完全に融解させた後、10℃/分で200℃から40℃まで降温し、40℃で5分間保持し、さらに、上記昇温条件で再び昇温(2次昇温)する間に描かれるDSC曲線のうち、2次昇温時の階段状変化部分曲線と各ベースライン延長線から縦軸方向に等距離にある直線との交点(中間点ガラス転移温度)をガラス転移温度(Tg)(℃)として測定した。1試料当たり4点の測定を行い、4点の算術平均(小数点以下四捨五入)を測定値とした。
(5.分子量及び分子量分布)
後述の実施例及び比較例で製造したメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)は、下記の装置、及び条件で測定した。
・測定装置:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC−8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH−H 1本、TSKgel SuperHM−M 2本、TSKgel SuperH2500 1本、を順に直列接続して使用した。
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン、流速:0.6mL/min、内部標準として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を、0.1g/Lで添加した。
検出器:RI(示差屈折)検出器 検出感度:3.0mV/分
サンプル:0.02gのメタクリル系樹脂のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量:10μL
検量線用標準サンプル:単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる、以下の10種のポリメチルメタクリレート(PolymerLaboratories製;PMMA Calibration Kit M−M−10)を用いた。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
上記の条件で、メタクリル系樹脂又はメタクリル系樹脂の溶出時間に対する、RI検出強度を測定した。
上記、検量線用標準サンプルの測定により得られた各検量線を基に、メタクリル系樹脂及びメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、並びにZ平均分子量(Mz)を求め、その値を用い、分子量分布(Mw/Mn)及び(Mz/Mw)を決定した。
(6.溶液での光線透過率)
後述の実施例及び比較例にて得られたメタクリル系樹脂を20w/v%(すなわち、10gの試料をクロロホルムに溶解し50mLの溶液とするような割合で作製した溶液)となるようなクロロホルム溶液とし、測定試料とした。紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−2500PC)を用い、測定波長380〜780nm、スリット幅2nm、10cm光路長セルで視野角10°、補助イルミナントCを使用、基準物体:クロロホルムとして、透過率測定を行った。
波長470nm並びに波長700nmにおける透過率(%)を記録した。
(7.光弾性係数)
実施例及び比較例にて得られたメタクリル系樹脂を、真空圧縮成形機を用いてプレスフィルムとすることで、測定用試料とした。
具体的な試料調製条件としては、真空圧縮成形機(神藤金属工業所製、SFV−30型)を用い、260℃、減圧下(約10kPa)、10分間予熱した後、樹脂を、260℃、約10MPaで5分間圧縮し、減圧及びプレス圧を解除した後、冷却用圧縮成形機に移して冷却固化させた。得られたプレスフィルムを、23℃、湿度60%に調整した恒温恒湿室内で24時間以上養生を行った上で、測定用試験片(厚み約150μm、幅6mm)を切り出した。
Polymer Engineering and Science 1999, 39,2349−2357に詳細な記載のある複屈折測定装置を用いて、光弾性係数C(Pa−1)を測定した。
フィルム状の試験片を、同様に恒温恒湿室に設置したフィルムの引張り装置(井元製作所製)にチャック間50mmになるように配置した。次いで、複屈折測定装置(大塚電子製、RETS−100)のレーザー光経路がフィルムの中心部に位置するように装置を配置し、歪速度50%/分(チャック間:50mm、チャック移動速度:5mm/分)で伸張応力をかけながら、試験片の複屈折を測定した。
測定より得られた複屈折の絶対値(|Δn|)と伸張応力(σ)の関係から、最小二乗近似によりその直線の傾きを求め、光弾性係数(C)(Pa−1)を計算した。計算には、伸張応力が2.5MPa≦σ≦10MPaの間のデータを用いた。
=|Δn|/σ
ここで、複屈折の絶対値(|Δn|)は、以下に示す値である。
|Δn|=|nx−ny|
(nx:伸張方向の屈折率、ny:面内で伸張方向と垂直な方向の屈折率)
(8.射出成形体の面内方向の位相差Re)
ファナック(株)製「AUTO SHOT Model 15A」射出成形機を用い、平板金型(製品寸法:短辺;45mm×長辺;60mm×厚さ;1mm;ゲートタイプ:ファンゲートで長辺側に設置)にて、シリンダー温度270℃、金型温度110℃、冷却時間60秒、サイクル時間70秒の条件下にて50ショットの射出成形を行い、薄肉射出成形板を調製した。
得られた射出成形板のうち、最後に得られた5枚について、23℃、湿度60%に調整した恒温恒湿室に設置した王子計測機器(株)製位相差測定装置(KOBRA−21ADH)を用い、波長589nmにおいて面内方向の位相差Reの測定を実施した。尚、その測定位置としては、平板サンプルの中心部に加え、長辺端面部より10mm内側で短辺端面部より10mm内側にて、それぞれ4点を追加し、計5点の位置にて位相差Reの測定を行い、射出成形板5枚の面内位相差Reをそれぞれ測定し、計25点の絶対値の平均値をもって、位相差Re値とした。
(9.射出成形体の厚み方向の色調(YI)及び光線透過率)
上述の8.記載の射出成形板調製で得られた射出成形板について、厚み方向(光路長1mm)のYI値及び光線透過率を測定した。
厚み方向のYI値は、色差計(日本電色社製、SD5000)を用いて、JIS K 7373に準拠して、波長範囲380〜780nmにて測定した。
厚み方向の光線透過率は、ヘーイズメータ(日本電色社製、NDH5000W)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定した。
[原料]
後述する実施例及び比較例において使用した原料について下記に示す。
[[単量体]]
・メチルメタクリレート(MMA):旭化成株式会社製
・N−フェニルマレイミド(phMI):株式会社日本触媒製
・N−シクロヘキシルマレイミド(chMI):株式会社日本触媒製
・スチレン:旭化成ケミカルズ社製
[重合開始剤]
・1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン:日油株式会社製「パーヘキサC」
[連鎖移動剤]
・n−オクチルメルカプタン:花王株式会社製
[酸化防止剤]
・A−1;イルガノックス1076(BASF社製)
・A−2;イルガノックス1010(BASF社製)
・A−3;スミライザーGS(住友化学株式会社製)
・P−1;イルガフォス168(融点180〜190℃、BASF社製)
・P−2;アデカスタブPEP36(融点234〜240℃、株式会社ADEKA製)
・P−3;アデカスタブHP−10(融点146〜152℃、株式会社ADEKA製)
・P−4;スミライザーGP(融点128℃、住友化学株式会社製)
・P−5;アデカスタブ1500(室温(25℃)で液状物;株式会社ADEKA製)
[実施例1]
メチルメタクリレート(以下MMAと記す)450.7kg、N−フェニルマレイミド(以下phMIと記す)39.6kg、N−シクロヘキシルマレイミド(以下chMIと記す)59.3kg、連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタンを0.33kg、mXy450.0kgを計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼を具備した1.25m反応器に加え撹拌し、混合単量体溶液を得た。
反応器の内容液については30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施した。
その後ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を124℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.23kgをmXy1.82kgに溶解させた重合開始剤溶液を調製し、この溶液を1kg/時間の速度で添加することで重合を開始した。さらに開始剤溶液は重合開始0.5時間後に0.5kg/時、1時間後に0.42kg/時、2時間後に0.35kg/時、3時間後に0.14kg/時間、4時間後に0.13kg/時間にそれぞれ添加速度を低下させ、重合開始7時間後に添加を停止した。
なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で124±2℃で制御した。
重合開始から15時間経過した後、主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂を含む重合溶液を得た。
得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量をガスクロマトグラフィーを用いて評価した結果、phMIを630質量ppm、chMIを1250質量ppmを含んでいた。
この重合溶液に、溶液中に含まれる重合体100質量部に対して、0.05質量部のイルガノックス1076と0.15質量部のイルガフォス168を撹拌下に添加した。
この酸化防止剤を含む重合溶液をSUS316L製メタルファイバーからなる濾過精度2μmのフィルターを通すことにより濾過を行った。
脱揮に供する重合溶液における重合物の含有量を表1に示す値となった。
重合溶液から重合物を回収するため、脱揮工程に用いる装置として、その上部に、同一平面上に8ケ所に分割されたスリット状流路を有し、スリット状流路の断面が矩形で、スリット厚みが1.5mmであり、スリット状流路の断面における高さが1.5mmであり、スリット状流路の長さが196mmであり、スリット状流路の容積当たりの伝熱面積が1300m/mであるスリット状流路が34段積層された熱交換器を附帯する内容積約0.3mのSUS製熱媒ジャケット付減圧容器(以下、脱揮槽と記す)とから構成される脱揮装置を用いた。
重合により得られた重合物を含む溶液を、30リットル/時の速度で減圧容器の上部に設置した熱交換機の中心部に供給し、各スリット状流路を経由し、樹脂温度260℃に加熱された後、内温260℃、真空度は30Torrの条件に加熱・減圧された脱揮槽に各スリット開口部より重合溶液を供給し脱揮処理を施した。
脱揮後の重合物は脱揮槽下部よりギアポンプで昇圧し、ストランドダイから押し出され、水冷後、ペレット化してメタクリル系樹脂組成物ペレットを得た。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、81.3質量%、7.9質量%、10.8質量%であった。また、重量平均分子量は141,000、Mz/Mwは1.54、Mw/Mnは2.24、ガラス転移温度は135℃であった。その他の物性は表1に示す。
[実施例2]
MMA341.0kg、phMI39.3kg、chMI59.7kg、連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタンを0.28kg、メタキシレン247.0kg(以下mXyと記す)を計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼を具備した1.25m反応器に加え撹拌し、混合単量体溶液を得た。
次いで、mXy123.0kgを計量して、タンク1に加えた。
さらに、タンク2にMMA110.0kg及びmXy80.0kgを計量して撹拌し、追添用単量体溶液とした。
反応器の内容液については30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施し、タンク1、タンク2のそれぞれについては10L/分の速度で窒素によるバブリングを30分間実施し、溶存酸素を除去した。
その後ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を124℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.35kgをmXy4.652kgに溶解させた重合開始剤溶液を、1kg/時間の速度で添加することで重合を開始するとともに、タンク1から30.75kg/時間で4時間の間、mXyを添加した。
なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で124±2℃で制御した。
次いで4時間後から6時間後の間、タンク2からMMAを含む単量体溶液を95kg/時間の速度で添加した。
さらに開始剤溶液は重合開始0.5時間後に0.25kg/時間、4時間後に0.75kg/時間、6時間後に0.5kg/時間にそれぞれ添加速度を低下させ、重合開始7時間後に開始剤溶液の添加を停止し、重合を更に3時間継続し、主鎖に環構造単位を有するメタクリル系樹脂を含む重合溶液を得た。
得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量をガスクロマトグラフィーを用いて評価した結果、phMIを360質量ppm、chMIを590質量ppmを含んでいた。
この重合溶液に、溶液中に含まれる重合体100質量部に対して、0.15質量部のイルガノックス1076と0.1質量部のイルガフォス168とを撹拌下に添加した。
酸化防止剤を含む重合溶液をSUS316L製メタルファイバーからなる濾過精度2μmのフィルターを通すことにより濾過を行った。
脱揮に供する重合溶液における重合物の含有量を表1に示す値となった。
重合溶液から重合物を回収するため、脱揮工程に用いる装置として、平板スリット型流路と熱媒流路を有する平板式熱交換器と内容積約0.3mのSUS製熱媒ジャケット付減圧容器(以下、脱揮槽と記す)とから構成される脱揮装置を用いた。
重合により得られた重合物を含む溶液を、30リットル/時の速度で減圧容器の上部に設置した熱交換機に供給し、260℃に加熱した後、内温260℃、真空度は30Torrの条件に加熱・減圧された脱揮槽に供給し脱揮処理を施した。
脱揮後の重合物は脱揮槽下部よりギアポンプで昇圧し、ストランドダイから押し出され、水冷後、ペレット化してメタクリル系樹脂組成物ペレットを得た。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、82.0質量%、7.1質量%、10.9質量%であった。また、重量平均分子量は145,000、Mz/Mwは1.75、Mw/Mnは2.44、ガラス転移温度は135℃であった。その他の物性は表1に示す。
[実施例3]
最初に反応器に仕込む単量体量をそれぞれ、MMA291.5kg、phMI44.0kg、chMI104.5kgに変更し、重合溶液に添加する酸化防止剤を表1に記載したものに変更し、加えて、脱揮時の減圧度を10Torrに変更した以外は実施例2と同様にしてメタクリル系樹脂組成物ペレットを得た。
尚、得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量をガスクロマトグラフィーを用いて評価した結果、phMIを500質量ppm、chMIを1160質量ppmを含んでいた。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、73.0質量%、8.0質量%、19.0質量%であった。また、重量平均分子量は133,000、Mz/Mwは1.78、Mw/Mnは2.39、ガラス転移温度は151℃であった。その他の物性は表1に示す。
[実施例4]
最初に反応器に仕込む単量体量をそれぞれ、MMA381.3kg、phMI52.2kg、chMI16.5kgに変更し、重合溶液に添加する酸化防止剤を表1に記載し、加えて、脱揮発時の減圧度を80Torrに変更したものに変更した以外は実施例2と同様にしてメタクリル系樹脂組成物ペレットを得た。
尚、得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量をガスクロマトグラフィーを用いて評価した結果、phMIを640質量ppm、chMIを310質量ppmを含んでいた。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、87.5質量%、9.5質量%、3.0質量%であった。また、重量平均分子量は151,000、Mz/Mwは1.65、Mw/Mnは2.29、ガラス転移温度は123℃であった。その他の物性は表1に示す。
[実施例5]
最初に反応器に仕込む連鎖移動剤の添加量を0.39gに変更し、重合溶液に添加する酸化防止剤を表1に記載したものに変更し、加えて、脱揮温度を240℃に、脱揮時の減圧度を100Torrに変更した以外は実施例2と同様にしてメタクリル系樹脂ペレットを得た。
尚、得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量をガスクロマトグラフィーを用いて評価した結果、phMIを320質量ppm、chMIを580質量ppmを含んでいた。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、82.0質量%、7.1質量%、10.9質量%であった。また、重量平均分子量は95,000、Mz/Mwは1.62、Mw/Mnは2.18、ガラス転移温度は134℃であった。であった。その他の物性は表1に示す。
[実施例6]
最初に反応器に仕込む単量体量をそれぞれ、MMA204.2kg、phMI5.5kg、chMI187.0kg、スチレン53.3kgに変更し、重合溶液に添加する酸化防止剤を表1に記載したものに変更した以外は実施例2と同様にしてメタクリル系樹脂ペレットを得た。
尚、得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量をガスクロマトグラフィーを用いて評価した結果、phMIを50質量ppm、chMIを1260質量ppmを含んでいた。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI、スチレンの各単量体由来の構造単位は、それぞれ、55.3質量%、1.0質量%、34.0質量%、9.7質量%であった。また、重量平均分子量は130,000、Mz/Mwは1.71、Mw/Mnは2.33、ガラス転移温度は150℃であった。その他の物性は表1に示す。
[実施例7]
酸化防止剤をイルガノックス1010(A−2)0.1質量部に変更した以外は実施例1と同様に行い、メタクリル系樹脂ペレットを得た。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、81.3質量%、7.9質量%、10.8質量%であった。また、重量平均分子量は141,000、Mz/Mwは1.54、Mw/Mnは2.24、ガラス転移温度は135℃であった。その他の物性は表1に示す。
[実施例8]
重合溶液に添加する酸化防止剤を表1に示す酸化防止剤に変更し、この重合溶液を予め170℃に加熱された管状熱交換器と気化槽からなる濃縮装置に供給し、溶液中に含まれる重合体の濃度を67.5質量%まで高めた以外は実施例1と同様に行い、メタクリル系樹脂ペレットを得た。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、81.3質量%、7.9質量%、10.8質量%であった。また、重量平均分子量は141,000、Mz/Mwは1.54、Mw/Mnは2.24、ガラス転移温度は135℃であった。その他の物性は表1に示す。
添加する酸化防止剤として液状のリン系酸化防止剤を用いたため、射出成形評価時には、金型汚れや成形品表面にシルバーストリークスが発生した。
[実施例9]
MMA170.5kg、phMI19.7kg、chMI29.9kg、連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタンを0.07kg、メチルイソブチルケトン123.5kg(以下MIBKと記す)を計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼を具備した1.25m反応器に加え撹拌し、混合単量体溶液を得た。
次いで、MIBK61.5kgを計量して、タンク1に加えた。
さらに、タンク2にMMA55.0kg及びMIBK40.0kgを計量して撹拌し、追添用単量体溶液とした。
反応器の内容液については30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施し、タンク1、タンク2のそれぞれについては10L/分の速度で窒素によるバブリングを30分間実施し、溶存酸素を除去した。
その後ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を124℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.17kgをMIBK2.32kgに溶解させた重合開始剤溶液を、0.5kg/時間の速度で添加することで重合を開始するとともに、タンク1から15.4kg/時間で4時間の間、MIBKを添加した。
なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で124±2℃で制御した。
次いで4時間後から6時間後の間、タンク2からMMAを含む単量体溶液を47.5kg/時間の速度で添加した。
さらに開始剤溶液は重合開始0.5時間後に0.125kg/時間、4時間後に0.375kg/時間、6時間後に0.25kg/時間にそれぞれ添加速度を低下させ、重合開始7時間後に開始剤溶液の添加を停止し、重合を更に3時間継続した後、MIBKを40kg/時間の速度で温度を124℃に維持しながら10時間掛けて追加添加し、主鎖に環構造単位を有するメタクリル系樹脂を含む希釈された重合溶液を得た。
得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量をガスクロマトグラフィーを用いて評価した結果、phMIを180質量ppm、chMIを300質量ppmを含んでいた。
この重合溶液に、溶液中に含まれる重合体100質量部に対して、0.15質量部のイルガノックス1076と0.1質量部のイルガフォス168とを撹拌下に添加した。
酸化防止剤を含む重合溶液をSUS316L製メタルファイバーからなる濾過精度2μmのフィルターを通すことにより濾過を行った。
脱揮に供する重合溶液における重合物の含有量を表1に示す値となるよう調整した。
重合溶液から重合物を回収するため、脱揮工程に用いる装置として、平板スリット型流路と熱媒流路を有する平板式熱交換器と内容積約0.3mのSUS製熱媒ジャケット付減圧容器(以下、脱揮槽と記す)とから構成される脱揮装置を用いた。
重合により得られた重合物を含む溶液を、30リットル/時の速度で減圧容器の上部に設置した熱交換機に供給し、260℃に加熱した後、内温260℃、真空度は10Torrの条件に加熱・減圧された脱揮槽に供給し脱揮処理を施した。
脱揮後の重合物は脱揮槽下部よりギアポンプで昇圧し、ストランドダイから押し出され、水冷後、ペレット化してメタクリル系樹脂組成物ペレットを得た。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、82.0質量%、7.1質量%、10.9質量%であった。また、重量平均分子量は218,000、Mz/Mwは1.88、Mw/Mnは2.67、ガラス転移温度は135℃であった。その他の物性は表1に示す。
[実施例10]
重合時間を8時間に変更した以外は実施例1と同様にして重合を行い、重合溶液を得た。
得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量をガスクロマトグラフィーを用いて評価した結果、phMIを1380質量ppm、chMIを3010質量ppmを含んでいた。
この重合溶液に、溶液中に含まれる重合体100質量部に対して、0.05質量部のイルガノックス1076と0.15質量部のイルガフォス168を撹拌下に添加した。
この酸化防止剤を含む重合溶液をSUS316L製メタルファイバーからなる濾過精度2μmのフィルターを通すことにより濾過を行った。
脱揮に供する重合溶液における重合物の含有量を表1に示す値となった。
重合溶液から重合物を回収するため、脱揮工程に用いる装置として、その上部に、同一平面上に8ケ所に分割されたスリット状流路を有し、スリット状流路の断面が矩形で、スリット厚みが1.5mmであり、スリット状流路の断面における高さが1.5mmであり、スリット状流路の長さが196mmであり、スリット状流路の容積当たりの伝熱面積が1300m/mであるスリット状流路が34段積層された熱交換器を附帯する内容積約0.3mのSUS製熱媒ジャケット付脱揮槽とから構成される脱揮装置を用いた。
重合により得られた重合物を含む溶液を、30リットル/時の速度で減圧容器の上部に設置した熱交換機の中心部に供給し、各スリット状流路を経由し、樹脂温度260℃に加熱された後、内温260℃、真空度は5Torrの条件に加熱・減圧された脱揮槽に各スリット開口部より重合溶液を供給し脱揮処理を施した。
脱揮後の重合物は脱揮槽下部よりギアポンプで昇圧し、ストランドダイから押し出され、水冷後、ペレット化してメタクリル系樹脂組成物ペレットを得た。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、81.4質量%、8.1質量%、10.5質量%であった。また、重量平均分子量は143,000、Mz/Mwは1.57、Mw/Mnは2.17、ガラス転移温度は135℃であった。その他の物性は表1に示す。
[比較例1]
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素ガス導入ノズル、開始剤溶液導入ノズル、及び重合溶液排出ノズルを備えたSUS製重合反応器(容量0.5L)を用い、オイルバスにて反応温度を130℃に制御した。
重合反応器内に、MMA576g、phMI61g、chMI83g及びメチルイソブチルケトン480g、連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタンを0.31gを混合した後、窒素ガスで置換して原料溶液を調製した。また、パーヘキサC(日油(株)製;濃度75wt%)8.63gをメチルイソブチルケトン91.37gに溶解した後、窒素ガスで置換して開始剤溶液を調製した。
原料溶液はポンプを用いて8.25mL/minで原料溶液導入ノズルから導入した。また、開始剤溶液はポンプを用いて0.08mL/minで開始剤溶液導入ノズルから導入した。
30分後、重合溶液排出ノズルから抜き出しポンプを用いて500mL/hrの一定流量でポリマー溶液を排出した。
ポリマー溶液は、排出から1.5時間分は初流タンクに分別回収した。排出開始から、1.5時間後から2.5時間のポリマー溶液を本回収した。得られたポリマー溶液と、抽出溶媒であるメタノールを同時にホモジナイザーに供給し、乳化分散抽出した。
分離沈降したポリマーを回収し、真空下、130℃で2時間乾燥して目的とするメタクリル系樹脂を得た。
ヘンシェルミキサーを用いて、得られたメタクリル系樹脂100質量部に対して、酸化防止剤としてのアデカスタブPEP36を0.2質量部を混合し混合物を調製した。
得られた混合物を15mmφベント付二軸押出機(テクノベル社製;KZW15−45MG)に供給し溶融混練を行った。運転条件としては、押出機下部及びダイ設定温度230℃の条件にて実施した。
得られた樹脂組成物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、77.3質量%、10.6質量%、12.1質量%であった。また、重量平均分子量は141,000、Mz/Mwは1.48、Mw/Mnは1.79、ガラス転移温度は137℃であった。であった。その他の物性は表1に示す。
[比較例2]
公開特許2016−210963号公報記載の実施例1に従い、懸濁重合法により、N−置換マレイミド単量体由来の構造単位を含有するメタクリル系樹脂を調製した。
より具体的には、4枚傾斜パドル翼を取り付けた攪拌機を有する容器に、水2kg、第三リン酸カルシウム65g、炭酸カルシウム39g、ラウリル硫酸ナトリウム0.39gを投入し、混合液(a)を得た。
次に、3枚後退翼を取り付けた攪拌機を有する60リットルの反応器に、水26kgを投入して80℃に昇温し、ついで混合液(a)、及びMMA17.03kg、chMI4.57kg、スチレン1.33kg、開始剤であるラウロイルパーオキサイド41g、並びに連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタンを49gを反応器に投入した。ついで約75℃に保って懸濁重合を行った。単量体等重合原料を投入してから約120分以降は、重合温度を93℃にすべく、1℃/分の速度で昇温した後、180分間重合を継続し、重合反応を完了した。
次に、50℃まで冷却したのち、懸濁剤を溶解させるため20質量%の硫酸を投入した。
次に、重合液を1.68mmメッシュの篩にかけ、異常重合物を除去した上で、得られた重合物を含むスラリーを脱水してビーズ状の重合物を回収した。
回収したビーズ状重合物は水洗・脱水処理を繰り返した後、80℃の乾燥オーブンで12時間乾燥した。
予め窒素置換されたタンブラー型ミキサーを用いて、得られたビーズ状重合物100質量部に対して、酸化防止剤としてのアデカスタブPEP36を0.1質量部を混合し混合物を調製した。
得られた混合物を58mmφベント付二軸押出機に供給し溶融混練を行った。運転条件としては、押出機下部及びダイ設定温度270℃、回転数200rpm、ベント部での真空度は200Torr、吐出量20kg/時の条件にて実施した。
溶融混練された樹脂組成物は、多孔ダイを通じてストランド状に押出され、予め50℃に加温された冷却水が満たされた冷却バスに導入し冷却固化させ、カッターにより裁断され、ペレット状の組成物を得た。
得られた樹脂組成物の組成を確認したところ、MMA、chMI、スチレン各単量体由来の構造単位は、それぞれ、74.6質量%、19.6質量%、5.8質量%であった。また、重量平均分子量は159,000、Mz/Mwは1.42、Mw/Mnは1.76、ガラス転移温度は137℃であった。であった。その他の物性は表1に示す。
[比較例3]
実施例1と同様に重合を行い、酸化防止剤を含む重合溶液を得た。
この重合溶液を予め170℃に加熱された管状熱交換器と気化槽からなる濃縮装置に供給し、溶液中に含まれる重合物の濃度を68.8質量%まで高めた。
得られた重合溶液は、伝熱面積が0.2mである薄膜蒸発機に供給し、脱揮を行った。
この際の装置内温度は280℃、供給量30L/hr、回転数400rpm、真空度30Torrで実施し、脱揮後の重合物はギアポンプで昇圧し、ストランドダイから押し出され、水冷後、ペレット化して主鎖に環構造単位を有するメタクリル系樹脂を得た。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、81.3質量%、7.9質量%、10.8質量%であった。また、重量平均分子量は136,000、Mz/Mwは1.54、Mw/Mnは1.94、ガラス転移温度は135℃であった。その他の物性は表1に示す。
[比較例4]
実施例9において使用する溶媒をメチルイソブチルケトンからトルエンに変更し、開始剤溶液の添加を停止し、重合を更に3時間継続した後に添加する溶媒量を、トルエンを50kg/時間の速度で温度を124℃に維持しながら10時間掛けて追加添加することに変更した以外は実施例9と同様にして主鎖に環構造単位を有するメタクリル系樹脂を含む希釈された重合溶液を得た
得られた重合溶液に含まれるN−置換マレイミド量をガスクロマトグラフィーを用いて評価した結果、phMIを160質量ppm、chMIを260質量ppmを含んでいた。
この重合溶液に、溶液中に含まれる重合体100質量部に対して、0.15質量部のイルガノックス1076と0.1質量部のイルガフォス168とを撹拌下に添加した。
酸化防止剤を含む重合溶液をSUS316L製メタルファイバーからなる濾過精度2μmのフィルターを通すことにより濾過を行った。
脱揮に供する重合溶液における重合物の含有量を表1に示す値となるよう調整した。
重合溶液から重合物を回収するため、脱揮工程に用いる装置として、平板スリット型流路と熱媒流路を有する平板式熱交換器と内容積約0.3mのSUS製熱媒ジャケット付減圧容器(以下、脱揮槽と記す)とから構成される脱揮装置を用いた。
重合により得られた重合物を含む溶液を、30リットル/時の速度で減圧容器の上部に設置した熱交換機に供給し、300℃に加熱した後、内温300℃、真空度は30Torrの条件に加熱・減圧された脱揮槽に供給し脱揮処理を施した。
[比較例5]
予め170℃に加熱された管状熱交換器と気化槽からなる濃縮装置に供給し、重合溶液中に含まれる重合体の濃度を81.5質量%まで高めた以外は、実施例1と同様にしてメタクリル系樹脂組成物を得た。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、81.3質量%、7.9質量%、10.8質量%であった。また、重量平均分子量は138,000、Mz/Mwは1.50、Mw/Mnは2.27、ガラス転移温度は135℃であった。その他の物性は表1に示す。
Figure 0006967913
本発明のメタクリル系樹脂組成物は、耐熱性が高く、複屈折性に優れ、加えて、射出成形性にも優れている。
本発明のメタクリル系樹脂組成物を用いて得られる光学部品用成形体は、例えば、スマートフォン、PDA、タブレットPC、液晶テレビ等のディスプレイに用いられる導光板、ディスプレイ前面板、タッチパネル、さらにはスマートフォン、タブレットPCカメラ用レンズ等や、ヘッドマウントディスプレーや液晶プロジェクター等の光学レンズ部品、例えば、プリズム素子、導波路、レンズ、とりわけ、小型薄肉偏肉形状の光学レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、レンズ、フレネルレンズ、マイクロレンズアレイを備えた位相板、光学カバー部品等が挙げられる。また、自動車部品としては、車載ディスプレイ用導光板;車載メーターパネル、;カーナビゲーションの前面板、コンバイナ、光学カバー部品等ヘッドアップディスプレイ向け光学部品;車載用カメラレンズ、導光棒等が挙げられ、その他、カメラ焦点板や屋外、店頭、公共機関、交通機関等の場所で宣伝、広告等の目的でネットワークに接続した薄型ディスプレイに情報を流すデジタルサイネージ用表示装置用部品等に特に好ましく用いることができる。

Claims (5)

  1. ガラス転移温度(Tg)が120℃超160℃以下である主鎖に環構造を有する構造単位(X)を含むメタクリル系樹脂の製造方法であって、
    前記構造単位(X)がN−置換マレイミド単量体由来の構造単位であり、
    重合後の重合溶液を100質量%とした場合に重合物を30〜70質量%含む重合溶液を加熱・脱揮して、前記重合物を回収する際に、その上部に熱交換器を附帯する脱揮槽を備える、回転部を有しない脱揮装置であって、前記熱交換器が断面が矩形であるスリット状流路が積層された構造を有する脱揮装置1機のみを用い、回転部を有する脱揮装置は用いず、
    前記スリット状流路の平面視形状は、前記重合溶液の入り口側の幅より前記重合溶液の出口側の幅が広い形状であり、
    Tg+100℃〜Tg+140℃の温度にて、加熱・脱揮操作を行う
    ことを特徴とする、メタクリル系樹脂の製造方法。
  2. 前記脱揮槽内の圧力を5〜300Torrに維持しながら前記脱揮操作を行う、請求項1に記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
  3. 前記重合後の重合溶液に、その融点が100℃〜250℃である3価のリン元素を含むリン系酸化防止剤、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤を添加する、請求項1又は2に記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
  4. 前記少なくとも1種の酸化防止剤の添加量が、前記重合溶液中に含まれる前記重合物を100質量部とした場合に、0.01〜0.3質量部である、請求項に記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
  5. 前記脱揮装置に供する前記重合後の重合溶液中に含まれる前記N−置換マレイミド単量体の含有量が、前記脱揮装置に供する前記重合後の重合溶液を100質量%とした場合に、その総量として2000質量ppm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
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