JP7280163B2 - メタクリル系樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
[1]
主鎖にN-置換マレイミド単量体由来の構造単位を有し、
ガラス転移温度(Tg)が120℃超160℃以下であり、
光弾性係数の絶対値が3.0×10-12Pa-1以下であるメタクリル系樹脂の製造方法であって、
N-置換マレイミド溶液中の2-(N-置換アミノ)-N-置換スクシンイミド量が、前記N-置換マレイミド溶液中のN-置換マレイミド100質量%に対して、5質量ppm以下となるようにN-置換マレイミドを水洗及び/又は脱水する前処理工程、
前記前処理工程で得られたN-置換マレイミド溶液を用いて重合する重合工程、
前記重合工程で得られた重合溶液を、回転部を有しない脱揮装置を用いて脱揮する脱揮工程、
を有することを特徴とする、メタクリル系樹脂の製造方法。
前記脱揮工程において、前記重合溶液が受けるせん断速度が20s-1以下である、[1]のメタクリル系樹脂の製造方法。
前記重合工程において、重合開始剤の添加開始から30分後以降に、重合に供与する全ての単量体の総質量100質量%に対して、5~35質量%のメタクリル酸エステル単量体を追加添加する、[1]又は[2]のメタクリル系樹脂の製造方法。
重合終了後に残存する未反応N-置換マレイミドの総質量が、重合終了時の重合溶液100質量%に対して、10質量ppm以上1000質量ppm以下である、[1]~[3]のいずれかのメタクリル系樹脂の製造方法。
前記N-置換マレイミド単量体がN-アリールマレイミド類を含み、
重合終了後の未反応N-アリールマレイミド類の総質量が、重合終了時の重合溶液100質量%に対して、10質量ppm以上500質量ppm以下である、[1]~[4]のいずれかのメタクリル系樹脂の製造方法。
特に、本実施形態の方法で製造するメタクリル系樹脂は、耐熱性が高く、高度に複屈折が制御され、色調が改善されていることが好ましい。
本実施形態の方法により製造されるメタクリル系樹脂は、主鎖にN-置換マレイミド単量体由来の構造単位を含み、さらにメタクリル酸エステル単量体由来の構造単位を含むことが好ましい。上記メタクリル系樹脂は、主鎖がN-置換マレイミド単量体由来の構造単位とメタクリル酸エステル単量体由来の構造単位とのみからなっていてもよい。
-メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位-
メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位は、例えば、以下に示すメタクリル酸エステル類から選ばれる単量体に由来する構造単位が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロオクチル、メタクリル酸トリシクロデシル、メタクリル酸ジシクロオクチル、メタクリル酸トリシクロドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸1-フェニルエチル、メタクリル酸2-フェノキシエチル、メタクリル酸3-フェニルプロピル、メタクリル酸2,4,6-トリブロモフェニル等が挙げられる。
これらの単量体は、単独で用いる場合も2種以上を併用する場合もある。
上記メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位としては、得られるメタクリル系樹脂の透明性や耐候性が優れる点で、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸ベンジルに由来する構造単位であることが好ましい。
メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位は、一種のみ含有していても、二種以上含有していてもよい。
N-置換マレイミド単量体由来の構造単位は、下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群から選ばれる少なくとも一つの構造単位としてよく、好ましくは、下記式(1)及び下記式(2)で表される構造単位の両方から形成される。
また、R2またはR3がアリール基の場合には、R2またはR3は置換基としてハロゲン原子を含んでいてもよい。
また、R1は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、ベンジル基等の置換基で置換されていてもよい。
式(1)で表される構造単位を形成する単量体(N-アリールマレイミド類、N-芳香族置換マレイミド等)としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-(2-クロロフェニル)マレイミド、N-(4-クロロフェニル)マレイミド、N-(4-ブロモフェニル)マレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルフェニル)マレイミド、N-(2-エチルフェニル)マレイミド、N-(2-メトキシフェニル)マレイミド、N-(2-ニトロフェニル)マレイミド、N-(2,4,6-トリメチルフェニル)マレイミド、N-(4-ベンジルフェニル)マレイミド、N-(2,4,6-トリブロモフェニル)マレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-アントラセニルマレイミド、3-メチル-1-フェニル-1H-ピロール-2,5-ジオン、3,4-ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-2,5-ジオン、1,3-ジフェニル-1H-ピロール-2,5-ジオン、1,3,4-トリフェニル-1H-ピロール-2,5-ジオン等が挙げられる。
これらの単量体のうち、得られるメタクリル系樹脂の耐熱性、及び複屈折等の光学的特性が優れる点から、N-フェニルマレイミド及びN-ベンジルマレイミドが好ましい。
これらの単量体は、単独で用いる場合も2種以上を併用して用いる場合もある。
これらの単量体のうち、メタクリル系樹脂の耐候性が優れる点から、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドが好ましく、近年光学材料に求められている低吸湿性に優れることから、N-シクロヘキシルマレイミドが特に好ましい。
これらの単量体は、単独で用いる場合も2種以上を併用して用いることもできる。
モル割合(X1/X2)がこの範囲にあるとき、本実施形態の方法で得られるメタクリル系樹脂は透明性を維持し、黄変を伴わず、また耐環境性を損なうことなく、良好な耐熱性と良好な光弾性特性を発現する。
この範囲内にあるとき、メタクリル系樹脂はより十分な耐熱性改良効果が得られ、また、耐候性、低吸水性、光学特性についてより好ましい改良効果が得られる。なお、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位の含有量が40質量%以下とすることが、重合反応時に単量体成分の反応性が低下し未反応で残存する単量体量が多くなることによるメタクリル系樹脂の物性低下を防ぐのに有効である。
上記芳香族ビニルとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
上記不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、等が挙げられる。
上記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
上記グリシジル化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記不飽和カルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの半エステル化物又は無水物等が挙げられる。
上記共重合可能な他の単量体由来の構造単位は、一種のみ有していてもよく、二種以上を有していてもよい。
他の単量体由来の構造単位の含有量がこの範囲にあると、主鎖にN-置換マレイミドの環構造を導入する本来の効果を損なわずに、樹脂の成形加工性や機械的特性を改善できるため好ましい。
--ガラス転移温度--
本実施形態の方法により得られるメタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、120℃超160℃以下である。
メタクリル系樹脂のガラス転移温度が120℃を超えていれば、近年のレンズ成形体等の光学部品、車載ディスプレイ等の自動車部品、液晶ディスプレイ用フィルム成形体光学フィルムとして必要十分な耐熱性をより容易に得ることができる。ガラス転移温度(Tg)は、使用環境温度下での寸法安定性の観点から、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。
一方、メタクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)が160℃以下である場合には、極端な高温での溶融加工を避け、樹脂等の熱分解を抑制し、良好な製品を得ることができる。ガラス転移温度(Tg)は、上述の効果が一層得られる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、JIS-K7121に準拠して測定することにより決定できる。具体的には、後述の実施例記載の方法で求めることができる。
本実施形態の方法により得られるメタクリル系樹脂では、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは100,000~170,000の範囲であり、より好ましくは100,000~150,000の範囲であり、さらに好ましくは120,000~150,000の範囲である。重量平均分子量(Mw)が上記範囲にあると、機械的強度、及び流動性のバランスにも優れる。
なお、メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)は、下記の装置、及び条件で測定することができる。
・測定装置:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH-H 1本、TSKgel SuperHM-M 2本、TSKgel SuperH2500 1本、を順に直列接続して使用する。
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン、流速:0.6mL/min、内部標準として、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を、0.1g/Lで添加する。
検出器:RI(示差屈折)検出器
検出感度:3.0mV/分
サンプル:0.02gのメタクリル系樹脂のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量:10μL
検量線用標準サンプル:単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる、以下の10種のポリメチルメタクリレート(PolymerLaboratories製;PMMA Calibration Kit M-M-10)を用いる。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
上記の条件で、メタクリル系樹脂の溶出時間に対する、RI検出強度を測定する。
上記、検量線用標準サンプルの測定により得られた各検量線を基に、メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及びZ平均分子量(Mz)を求め、その値を用い、分子量分布(Mw/Mn)及び(Mz/Mw)を決定する。
本実施形態の方法により得られるメタクリル系樹脂のメタノール不溶分の量の、メタノール不溶分の量とメタノール可溶分の量との合計量100質量%に対する割合は、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは95.5質量%以上であり、さらに好ましくは96質量%以上であり、よりさらに好ましくは96.5質量%以上であり、特に好ましくは97質量%以上であり、最も好ましくは97.5質量%以上である。メタノール不溶分の量の割合を95質量%以上とすることで、フィルム成形時のキャストロール汚れや、射出成形時のシルバーストリークス発生等の成形時のトラブルを抑制することができる。
なお、メタノール不溶分及びメタノール可溶分は、メタクリル系樹脂をクロロホルム溶液とした後に溶液を大過剰量のメタノール中に滴下することによって再沈殿を行い、濾液及び濾物を分別し、その後に各々を乾燥させることによって得られたものを言う。
具体的には、次のようにして求めることができる。メタクリル系樹脂5gをクロロホルム100mLに溶解させた後、溶液を滴下漏斗に入れ、撹拌子を用いて撹拌している1Lのメタノール中に約1時間かけて滴下して、再沈殿を行う。全量滴下後、1時間静置した後に、メンブランフィルター(アドバンテック東洋株式会社製、T050A090C)をフィルターとして用いて、吸引濾過を行う。濾物は60℃で16時間真空乾燥してメタノール不溶分とする。また、濾液はロータリーエバポレーターを、バス温度を40℃として、真空度を初期設定の390Torrから徐々に下げて最終的に30Torrとして、溶媒を除去した後、ナス形フラスコに残存している可溶分を回収し、メタノール可溶分とする。メタノール不溶分の質量及びメタノール可溶分の質量の各々を秤量し、メタノール可溶分の量の、メタノール可溶分の量とメタノール不溶分の量の合計量(100質量%)に対する割合(質量%)(メタノール可溶分率)を算出する。
本実施形態の方法により得られるメタクリル系樹脂の光弾性係数CRの絶対値は、3.0×10-12Pa-1以下であり、好ましくは2.0×10-12Pa-1以下であり、より好ましくは1.5×10-12Pa-1以下であり、更に好ましくは1.0×10-12Pa-1以下である。光弾性係数に関しては種々の文献に記載があり(例えば、化学総説,No.39,1998(学会出版センター発行)参照)、下記式(i-a)及び(i-b)により定義されるものである。
光弾性係数CRの値がゼロに近いほど、外力による複屈折変化が小さいことがわかる。
CR=|Δn|/σR ・・・(i-a)
|Δn|=|nx-ny| ・・・(i-b)
(式中、CRは、光弾性係数、σRは、伸張応力、|Δn|は複屈折の絶対値、nxは、伸張方向の屈折率、nyは、面内で伸張方向と垂直な方向の屈折率、をそれぞれ示す。)
上記メタクリル系樹脂の光弾性係数CRの絶対値が3.0×10-12Pa-1以下であれば、成形時の残留応力や、成形体を部品として製品にはめ込んだ場合に生ずる応力などにより発生する複屈折が十分に小さくなるため、光学部品や自動車部品とした場合にも鮮明な映像や画像が得られる。
なお、光弾性係数CRの測定は、メタクリル系樹脂を、真空圧縮成形機を用いてプレスフィルムとすることで行う。具体的には後述の実施例記載の方法で求めることができる。
本実施形態におけるメタクリル系樹脂の発光強度(蛍光発光強度)の評価は、以下に示す(i)と(ii)の2種類の手法で行うことができる。
(i)フルオレセイン/エタノール溶液中のフルオレセイン濃度と、これを励起波長436nm、スリット幅2nmで分光分析した際に得られる514nmにおける蛍光発光強度と、から得られる濃度-強度換算式を用い、メタクリル系樹脂のクロロホルム溶液を分光分析した際に得られる蛍光発光強度を、フルオレセイン/エタノール溶液濃度へ換算することで行う。すなわち、本実施形態においては、メタクリル系樹脂の2.0質量%クロロホルム溶液を励起波長436nm、スリット幅2nmで分光分析した際に得られる514nmの蛍光発光強度を、フルオレセイン/エタノール溶液濃度換算した際に得られるフルオレセイン濃度が、30×10-10mol/L以下であることが好ましく、より好ましくは1×10-10mol/L以上、20×10-10mol/L以下、さらに好ましくは1×10-10mol/L以上、18×10-10mol/L以下、特に好ましくは1×10-10mol/L以上、10×10-10mol/L以下である。30×10-10mol/L以下にあることで、厚肉成形体においても着色の少ない成形片を成形できる。また、下限値以上であることにより、ブルーライトを軽減できるため好ましい。なお、濃度-強度換算式を得る際のフルオレセイン/エタノール溶液中のフルオレセイン濃度は、0mol/L~1.0×10-6mol/Lの間で行った。
(ii)硫酸キニーネ二水和物を1mol/L希硫酸溶液に溶解させた溶液中の硫酸キニーネ濃度と、これを励起波長365nm、スリット幅2nmで分光分析した際に得られる458nmにおける蛍光発光強度と、から得られる濃度-強度換算式を用い、メタクリル系樹脂のクロロホルム溶液を分光分析した際に得られる蛍光発光強度を、硫酸キニーネ二水和物を1mol/L希硫酸溶液に溶解させた溶液中の硫酸キニーネ濃度に換算することで行う。すなわち、本実施形態においては、メタクリル系樹脂の2.0質量%クロロホルム溶液を励起波長365nm、スリット幅2nmで分光分析した際に得られる458nmの蛍光発光強度を、硫酸キニーネ二水和物を1mol/L希硫酸溶液に溶解させた溶液の濃度に換算した際に得られる硫酸キニーネ濃度が、好ましくは4×10-9mol/L以上、6×10-9mol/L以下であることが好ましい。4×10-9mol/L以上あることで458nmの青色発光の効果によりメタクリル系樹脂のYIが小さくなるため好ましい。また6×10-9mol/Lを超えると365nm付近の吸収帯の強度が高く、YIが大きくなるため好ましくない。
なお、測定は蛍光分光光度計(堀場JobinYvon社製、Fluorolog3-22)を用い、光源としてキセノンランプ、検出器としてPMTを用いて測定を行った。時定数0.2s、測定モードは各波長の励起光強度で発光強度を規格化するSc/Rcとし、光路長1cm石英セルで90°観測で行った。また濃度-強度換算式を得る際の硫酸キニーネ/希硫酸溶液中の硫酸キニーネ濃度は、0mol/L~1.0×10-6mol/Lの間で行った。
以下、本実施形態のメタクリル系樹脂の製造方法について説明する。
-N-置換マレイミド単量体由来の構造単位を含むメタクリル系樹脂の製造方法-
主鎖にN-置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂(以下、「マレイミド共重合体」と記す場合がある)の製造方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法のいずれの重合方法が挙げられ、好ましくは懸濁重合、塊状重合、溶液重合法であり、さらに好ましくは溶液重合法である。
メタクリル系樹脂に蛍光発光性を与えるN-置換マレイミド中の不純物の一つとして、N-置換マレイミドと一級アミンとが反応して生じる2-アミノ-N-置換スクシンイミドが挙げられる。2-アミノ-N-置換スクシンイミドはそれ自体が蛍光発光性を有するだけでなく、詳細な変性機構は不明なものの、これを300℃以上に加熱したり、せん断を有する脱揮装置に供したりすると、蛍光発光性を有する熱変性物が生じることが発明者らの検討により明らかになった。すなわち、N-置換マレイミド中に含まれる2-アミノ-N-置換スクシンイミドの低減と、メタクリル系樹脂の製造においては回転部を有しない脱揮装置を用い、300℃以下で脱揮を行うこととが、メタクリル系樹脂の蛍光発光強度を制御するために好ましい。
例えば、本実施形態においては、N-置換マレイミド中の2-アミノ-N-置換スクシンイミドを、以下に示す水洗工程により除去し、続く脱水工程で水分を除去することで、蛍光発光強度を制御し、かつ良好な色調を有するメタクリル系樹脂を調製するに適切なN-置換マレイミド溶液を得ることができる。
用いられる水は下水、純水、上水のいずれを用いても良い。また酸性水溶液、アルカリ性水溶液の酸性度は制限されない。有機層と水層を混合、洗浄する際の温度は40℃以上であれば良いが、好ましくは40℃以上80℃以下、より好ましくは50℃以上60℃以下である。有機層に対する水層の重量割合は、有機層重量を100質量%とした場合、5質量%以上300質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上200質量%、さらにより好ましくは30質量%以上100質量%以下である。
有機層濃度、液温及び水層の重量割合がこれらの範囲にあると、N-置換マレイミドと水との反応が進行しにくく、かつ2-アミノ-N-置換スクシンイミドが水層側へ抽出されやすいため好ましい。
上記前処理工程で得られるN-置換マレイミド溶液は、上記N-置換マレイミド溶液中に含まれる2-アミノ-N-置換スクシンイミドの質量割合が、上記N-置換マレイミド溶液中に含まれるN-置換マレイミド100質量%に対して、5質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量ppm以上1質量ppm以下である。
上記前処理工程で得られるN-置換マレイミド溶液中に含まれる水分量は、N-置換マレイミド溶液100質量%に対して、200質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100~200質量ppmである。
上記前処理工程で得られるN-置換マレイミド溶液中に含まれるN-置換マレイミドの質量割合は、N-置換マレイミド溶液100質量%に対して、5~30質量%であることが好ましく、より好ましくは5~25質量%である。この範囲にある場合、N-置換マレイミドが析出しにくく、均一溶液として移送が可能であるため好ましい。
複数種のN-置換マレイミド溶液を重合工程で用いる場合、複数種のN-置換マレイミド溶液の混合液が上記2-アミノ-N-置換スクシンイミドの質量割合、上記水分量、及び/又は上記N-置換マレイミドの質量割合を満たすことが好ましく、各N-置換マレイミド溶液が上記2-アミノ-N-置換スクシンイミドの質量割合、上記水分量、及び/又は上記N-置換マレイミドの質量割合を満たすことがより好ましい。
重合工程では、上記前処理工程で得られたN-置換マレイミド溶液に、メタクリル酸エステル単量体、任意の単量体、重合開始剤、重合溶媒、連鎖移動剤等を混合し、単量体混合液としてから重合に用いてもよい。
メタクリル系樹脂の重合終了時に未反応N-置換マレイミドが存在すると、詳細な機構は不明だが、加熱された脱揮装置内等でN-置換マレイミドをその構造単位として含む低分子量で蛍光発光性を有する反応副生成物が生成することがあることを本発明者らは見出した。
また、N-置換マレイミドとしてN-フェニルマレイミド等のN-アリールマレイミド類を使用する際には、重合終了後に残存する未反応N-アリールマレイミド類の総質量が、重合終了時の重合溶液100質量%に対して、500質量ppm以下が好ましく、より好ましくは10質量ppm以上500質量ppm以下、さらに好ましくは10質量ppm以上50質量ppm以下である。
これらの範囲にあるとき、メタクリル系樹脂の蛍光強度を所定の範囲内に抑えることができるため好ましい。また未反応N-置換マレイミド量を10質量ppm未満にするためには重合温度を高くしたり、開始剤量を増やしたりする必要があるため、マレイミド熱変性物や活性ラジカルが増加し、メタクリル系樹脂の色調悪化の原因となるため好ましくない。
単量体の追加添加の開始時点、追加添加のスピードなどは、重合転化率に応じて適宜選択すればよい。また、本発明の効果や未反応N-置換マレイミド量を低減することを阻害しない範囲で、メタクリル酸エステル単量体に加え、N-置換マレイミド単量体やその他の単量体を含む単量体混合物を追加添加してもよい。
上述のようなセミバッチ重合法を採用することにより、重合後半時点での未反応のN-置換マレイミド単量体を低減し、脱揮工程における蛍光発光性物質の生成を最小限とすることが可能となり、光路長の長い成形体においても良好な色調を有するメタクリル系樹脂並びに該樹脂の組成物を得ることができるので好ましい。
セミバッチ重合法では、重合開始剤の添加開始から30分後以降に、重合に供与する全ての単量体(メタクリル酸エステル、N-置換マレイミド、及び任意の他の単量体)の総質量を100質量%として、メタクリル酸エステル単量体を5~35質量%追加添加することが好ましい。言い換えると、重合に供与する全ての単量体の総質量100質量%のうち65~95質量%を重合開始前に反応器内に仕込み、重合開始剤の添加開始から30分後以降にメタクリル酸エステル単量体の残部5~35質量%を追加添加することが好ましい。
追加添加するメタクリル酸エステル単量体量は、重合に供与する全ての単量体の総質量を100質量%として、より好ましくは10~30質量%である。
単量体の追加添加の開始時点、追加添加のスピードなどは、重合転化率に応じて適宜選択すればよい。
また、本発明の効果やN-置換マレイミド単量体の転化率を高めることを阻害しない範囲で、メタクリル酸エステル単量体に加え、N-置換マレイミド単量体やその他の単量体を含む単量体混合物を追加添加してもよい。
具体的な重合溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;ジメチルホルムアミド、2-メチルピロリドン等の極性溶媒を用いることができる。
また、重合時における重合生成物の溶解を阻害しない範囲で、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールを重合溶媒として併用してもよい。
より具体的には、重合初期においては40~60質量%を配合し、重合途中に、残りの60~40質量%を配合し、最終的には、配合する単量体の総量を100質量%とした場合に、溶媒量が100質量%以下の範囲になるようにする方法等が例示できる。
この方法を採用することにより、重合転化率を高めることができ、さらに分子量分布を制御することが可能となり、射出成形性に優れ、光路長の長い成形体を調製した際にも良好な色調が得られる樹脂が得られるので好ましい。
これらは、単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
本実施形態では、反応系内に残存する未反応の単量体総量に対する重合開始剤より発生するラジカル総量の割合が、常時一定値以下となるように、重合開始剤の種類及び添加量、並びに重合温度等を適宜選択することが好ましい。
これらの方法を採用することにより、重合後期におけるオリゴマーや低分子量体の生成量を抑制したり、重合時の過熱を抑制して重合の安定性を図ったりすることもできる。
重合反応時には、必要に応じて、連鎖移動剤を添加して重合してもよい。
これらは、単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
具体的には、その上部に熱交換器を配置し脱揮が可能な大きさを有する減圧容器に減圧ユニットが附帯した構成の脱揮槽と、脱揮後の重合物を排出するためのギアポンプ等の排出装置とから構成される脱揮装置を採用することができる。
上記脱揮装置は、重合溶液を、減圧容器の上部に配置され加熱された熱交換器、例えば、多管式熱交換器、プレートフィン式熱交換器、平板型流路とヒータを有する平板式熱交換器等に供して予熱した後、加熱・減圧下にある脱揮槽に供給して、重合溶媒、未反応原料混合物、重合副生成物等と共重合体を分離除去する。上述のように回転部を有しない脱揮装置を用いることで、未反応のN-置換マレイミドに由来する低分子量で蛍光発光性を有する反応副生成物を抑制することができ、蛍光強度を所定の範囲内に制御できるため好ましい。また良好な色調を有するメタクリル系樹脂を得ることができるため好ましい。
上記回転部を有する装置としては、神鋼環境ソリューション社製ワイプレン及びエクセバ、日立製作所製コントラ及び傾斜翼コントラ等の薄膜蒸発機;ベント付き押出機;等が挙げられる。回転部を設けないことにより、脱揮中のせん断を低減でき、蛍光発光性が一層低い樹脂を得ることができる。
本実施形態における脱揮工程においては、重合溶液にかかるせん断速度を20s-1以下とすることが好ましく、10s-1以下とすることがより好ましく、0.1s-1以上、10s-1以下として実施することがさらも好ましい。せん断速度を0.1s-1以上とすることにより、溶融樹脂の流れが遅くなりすぎず、滞留時間が増加することによる色調悪化を抑えることができる。また20s-1以下とすることにより、せん断による蛍光発光性を有する反応副生物の生成を抑えることができる。
ここで、例えば押出機におけるせん断速度γは下記式で計算する。
γ=(π×D×N)/H
(式中、Dはスクリュー径(m)、Nは1秒あたりのスクリュー回転数、Hはスクリュー溝深さ(m)を表す。)
また、平板型流路の場合には、せん断速度γは下記式で計算する。
γ=(6×Q)/(w×h2)
(式中、Qは平板型流路を通過する体積流量(m3/s)、wは平板型流路の幅(m)、hは平板間の距離(m)を表す。)
脱揮装置に供された重合溶液は、該熱交換器の中央部から該スリット状流路へ送られて加熱される。加熱された重合溶液は、スリット状流路から、熱交換器と一体化した減圧下の減圧容器内に供給されて、フラッシュ蒸発させられる。
このような脱揮方法は、フラッシュ脱揮とも称されることもあり、本発明においては、以後、フラッシュ脱揮とも記する。
上述する脱揮装置を2機以上直列に設置して、2段階以上で脱揮する方法を採用することも可能である。
造粒工程では、溶融状態の樹脂を、多孔ダイを付帯設備として有するギアポンプ、単軸押出機、及び二軸押出機等から選ばれた少なくとも1種の搬出造粒装置にて、ストランド状に押出し、コールドカット方式、空中ホットカット方式、水中ストランドカット方式、及びアンダーウォーターカット方式にて、ペレット状に加工する。せん断による蛍光発光性を有する反応副生物の生成を抑える観点から押出機は用いず、せん断速度の小さい搬送装置を選択することが好ましい。
その場合には、溶融樹脂温度を可能な範囲で低くし、且つ多孔ダイ出口から冷却水面までの滞留時間を極力少なくし、冷却水の温度も可能な範囲で高い温度にて、実施できる条件にて造粒を行うことがより好ましい。
例えば、溶融樹脂温度としては、220~280℃が好ましく、より好ましくは230~270℃であり、多孔ダイ出口から冷却水面までの滞留時間は5秒以内が好ましく、より好ましくは3秒以内であり、冷却水の温度としては、30~80℃が好ましく、より好ましくは40~60℃の範囲である。
これら溶融樹脂温度並びに冷却水温度の範囲にて実施することにより、より着色が少なく、含有する水分率が低いメタクリル系樹脂ならびにその組成物が得られるので好ましい。
また、残留する重合溶媒の含有量としては500質量ppm以下が好ましく、より好ましくは300質量ppm以下である。
上記メタクリル系樹脂組成物は、上述する、主鎖にN-置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂を含み、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、種々の添加剤を含有していてもよい。
添加剤としては、特に制限はないが、例えば、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、他の熱可塑性樹脂、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、酸化鉄等の顔料等の無機充填剤、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤;亜リン酸エステル類、ホスホナイト類、リン酸エステル類等の有機リン化合物、その他添加剤、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
上記メタクリル系樹脂組成物は、成形加工時あるいは使用中の劣化や着色を抑制する酸化防止剤を含有することが好ましい。
上記酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、1種又は2種以上を併用してしてもよい。
本実施形態の方法で得られるメタクリル系樹脂は、溶融押出や、射出成形、フィルム成形用途等、様々な用途で好適に使用される。加工の際に受ける熱履歴は加工方法により異なるが、押出機のように数十秒程度から、肉厚品の成形加工やシート成形のように数十分~数時間の熱履歴を受けるものまで様々である。長時間の熱履歴を受ける場合、所望の熱安定性を得るために、熱安定剤量添加量を増やす必要がある。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリン)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミン)フェノール、アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル、アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル等が挙げられる。
特に、ペンタエリスリトールテラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルが好ましい。
これらの市販のフェノール系酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果の観点から、イルガノックス1010、アデカスタブAO-60、アデカスタブAO-80、イルガノックス1076、スミライザーGS等が好ましい。
これらは1種のみを単独で用いても、2種以上併用してもよい。
これらの市販のリン系酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果、多種の酸化防止剤との併用効果の観点から、イルガフォス168、アデカスタブPEP-36、アデカスタブPEP-36A、アデカスタブHP-10、アデカスタブ1178が好ましく、アデカスタブPEP-36A、アデカスタブPEP-36が特に好ましい。
これらのリン系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの市販の硫黄酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果、多種の酸化防止剤との併用効果の観点、取り扱い性の観点から、アデカスタブAO-412S、ケミノックスPLSが好ましい。
これらの硫黄系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
上記メタクリル系樹脂組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含有することができる。
ヒンダードアミン系光安定剤は、特に限定されないが、環構造を3つ以上含む化合物であることが好ましい。ここで、環構造は、芳香族環、脂肪族環、芳香族複素環及び非芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、1つの化合物中に2以上の環構造を有する場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、具体的には、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジオールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応物、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジオールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応物、ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート等が挙げられる。
中でも環構造を3つ以上含んでいるビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジオールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応物、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジオールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応物が好ましい。
上記メタクリル系樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、その極大吸収波長を280~380nmに有する紫外線吸収剤であることが好ましく、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-ベンゾトリアゾール-2-イル-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-t-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-t-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖及び側鎖ドデシル)-4-メチルフェノール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステルが挙げられる。
これらの中でも、分子量が400以上のベンゾトリアゾール系化合物が好ましく、例えば、市販品の場合、Kemisorb(登録商標)2792(ケミプロ化成製)、アデカスタブ(登録商標)LA31(株式会社ADEKA製)、チヌビン(登録商標)234(BASF社製)等が挙げられる。
ベンゾトリアジン系化合物としては、市販品を使用してもよく、例えばKemisorb102(ケミプロ化成社製)、LA-F70(株式会社ADEKA製)、LA-46(株式会社ADEKA製)、チヌビン405(BASF社製)、チヌビン460(BASF社製)、チヌビン479(BASF社製)、チヌビン1577FF(BASF社製)等を用いることができる。
その中でも、アクリル系樹脂との相溶性が高く紫外線吸収特性が優れている点から、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(3-アルキルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-5-α-クミルフェニル]-s-トリアジン骨格(「アルキルオキシ」は、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等の長鎖アルキルオキシ基を意味する)を有する紫外線吸収剤がさらに好ましく用いることができる。
また、上記紫外線吸収剤の融点(Tm)は、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましく、160℃以上であることがさらにより好ましい。
上記紫外線吸収剤は、23℃から260℃まで20℃/分の速度で昇温した場合の重量減少率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらにより好ましく、5%以下であることがよりさらに好ましい。
これら紫外線吸収剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種類の構造の異なる紫外線吸収剤を併用することにより、広い波長領域の紫外線を吸収することができる。
上記紫外線吸収剤の含有量は、耐熱性、耐湿熱性、熱安定性、及び成形加工性を阻害せず、本発明の効果を発揮する量であれば特に制限はないが、メタクリル系樹脂100質量%に対して、0.1~5質量%であることが好ましく、好ましくは0.2~4質量%以下、より好ましくは0.25~3質量%であり、さらにより好ましくは0.3~3質量%である。この範囲にあると、紫外線吸収性能、成形性等のバランスに優れる。
上記メタクリル系樹脂組成物は、離型剤を含有することができる。上記離型剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、炭化水素系滑剤、アルコール系滑剤、ポリアルキレングリコール類や、カルボン酸エステル類、炭化水素類のパラフィン系ミネラルオイル等が挙げられる。
上記離型剤として使用可能な脂肪酸エステルとしては、特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。
このような脂肪酸エステルとしては、例えば、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、クエン酸ステアリル、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート、グリセリントリオレエート、グリセリンモノリノレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノ12-ヒドロキシステアレート、グリセリンジ12-ヒドロキシステアレート、グリセリントリ12-ヒドロキシステアレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステル、モンタン酸部分ケン化エステル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ソルビタントリステアレート等を挙げることができる。
これらの脂肪酸エステルは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
市販品としては、例えば、理研ビタミン社製リケマールシリーズ、ポエムシリーズ、リケスターシリーズ、リケマスターシリーズ、花王社製エキセルシリーズ、レオドールシリーズ、エキセパールシリーズ、ココナードシリーズが挙げられ、より具体的にはリケマールS-100、リケマールH-100、ポエムV-100、リケマールB-100、リケマールHC-100、リケマールS-200、ポエムB-200、リケスターEW-200、リケスターEW-400、エキセルS-95、レオドールMS-50等が挙げられる。
脂肪酸アミドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルオレイン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド等の置換アミド;メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド(エチレンビスステアリルアミド)、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸ビスアミド;m-キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド等を挙げることができる。
これらの脂肪酸アミドは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
市販品としては、例えば、ダイヤミッドシリーズ(日本化成社製)、アマイドシリーズ(日本化成社製)、ニッカアマイドシリーズ(日本化成社製)、メチロールアマイドシリーズ、ビスアマイドシリーズ、スリパックスシリーズ(日本化成社製)、カオーワックスシリーズ(花王社製)、脂肪酸アマイドシリーズ(花王社製)、エチレンビスステアリン酸アミド類(大日化学工業社製)等が挙げられる。
市販品としては、一例をあげると、堺化学工業社製SZシリーズ、SCシリーズ、SMシリーズ、SAシリーズ等が挙げられる。
上記脂肪酸金属塩を使用する場合の含有量は、透明性保持の観点から、メタクリル系樹脂組成物100質量%に対して0.2質量%以下であることが好ましい。
使用に供される離型剤としては、分解開始温度が200℃以上であるものが好ましい。ここで、分解開始温度はTGAによる1%質量減量温度によって測定することができる。
離型剤の含有量は、離型剤としての効果が得られる量であればよく、含有量が過剰である場合、加工時にブリードアウトの発生やスクリューの滑りによる押出不良等の問題が発生するおそれがあることから、メタクリル系樹脂100質量%に対して、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、さらにより好ましくは0.8質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.01~0.8質量%、特に好ましくは0.01~0.5質量%である。上記範囲の量で添加すると、離型剤添加による透明性の低下を抑制されるうえ、射出成形時の離型不良やシート成形時の金属ロールへの貼りつきが抑制される傾向にあるため、好ましい。
上記メタクリル系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわず、複屈折率の調整や可とう性向上の目的で、メタクリル系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含有することもできる。
この中でも、良好な光学特性と機械的特性とを得る観点からは、スチレン-アクリロニトリル共重合体や、主鎖にN-置換マレイミド単量体由来の構造単位を含むメタクリル系樹脂と相溶し得る組成からなるグラフト部をその表面層に有するゴム含有グラフト共重合体粒子が好ましい。
上記メタクリル系樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されるものではない。例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練する方法が挙げられる。その中でも押出機による混練が、生産性の面で好ましい。混練温度は、メタクリル系樹脂を構成する重合体や、混合する他の樹脂の好ましい加工温度に従えばよく、目安としては140~300℃の範囲、好ましくは180~280℃の範囲である。また、押出機には、揮発分を減じる目的で、ベント口を設けることが好ましい。
ここで、残存する溶媒とは、重合時に用いた重合溶媒(但し、アルコール類を除く)、及び重合により得られた樹脂を再度溶解し、溶液化する際に用いる溶媒を指し、具体的には、重合溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、2-メチルピロリドン等の極性溶媒;等が例示でき、再溶解に用いる溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン、塩化メチレン等が例示できる。
上記残存溶媒量及び上記残存アルコール量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
例えば、溶液重合での重合溶液中の溶存酸素濃度としては、重合工程において、300ppm未満が好ましく、また、押出機等を利用した調製法において、押出機内の酸素濃度としては、1容量%未満とすることが好ましく、0.8容量%未満とすることがさらに好ましい。メタクリル系樹脂の水分量としては、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは500質量ppm以下に調整する。
これらの範囲内であれば、上記メタクリル系樹脂組成物を調製することが比較的容易となり、有利である。
メタクリル系樹脂成形体の製造方法としては、押出成形、射出成形、圧縮成形、カレンダー成形、インフレーション成形、中空成形等の種々の成形方法を用いることができる。
本実施形態の方法で得られるメタクリル系樹脂又はそれを含む樹脂組成物を用いた各種成形体には、例えば、反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理等の表面機能化処理をさらに行うこともできる。
上記メタクリル系樹脂成形体は、光路長80mmにおけるYI(イエローネスインデックス)が、17.0以下であることが好ましく、より好ましくは15.0以下、さらに好ましくは14.0以下である。光路長80mmにおけるYIがこの範囲にあることにより、導光板等の長光路の成形体用途にも好適な色調を得ることができる。
なお、YIは、長光路分光透過色計(日本電色社製、ASA1)を用いて、JIS K 7373に準拠して測定することができる。より具体的には、後述の実施例記載の方法にて測定することができる。
メタクリル系樹脂成形体の用途としては、例えば、家庭用品、OA機器、AV機器、電池電装、照明機器、自動車部品、ハウジング、衛生陶器代替等のサニタリー、光学部品等への用途が挙げられる。
自動車部品としては、テールランプ、メーターカバー、ヘッドランプ、導光棒、レンズ、カーナビゲーションの前面板等が挙げられる。
光学部品としては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる導光板、拡散板、偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板、視野角制御フィルム、液晶光学補償フィルム等の位相差フィルム、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、レンズ、タッチパネル等が挙げられ、また、太陽電池に用いられる透明基板等に好適に用いることができる。その他にも、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野、あるいはヘッドマウントディスプレーや液晶プロジェクター等の光学製品において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバー等にも用いることができる。
また、他の樹脂の改質材として用いることもできる。
N-シクロヘキシルマレイミド、又はN-シクロヘキシルマレイミド/メタキシレン溶液を採取・秤量し、N-シクロヘキシルマレイミド25質量%メタキシレン溶液を調製し、内部標準物質として安息香酸イソプロピルを添加し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製 GC-2014)を用いて、以下の条件にて測定を行い、決定した。
検出器:FID
使用カラム:HP-5ms
測定条件:80℃で5分保持後、10℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温、その後5分間保持
N-フェニルマレイミド、又はN-フェニルマレイミド/メタキシレン溶液を採取・秤量し、N-フェニルマレイミド10質量%メタキシレン溶液を調製し、内部標準物質として安息香酸イソプロピルを添加し、リキッドクロマトグラフィー(Waters株式会社製 UPLC H-class)を用いて、以下の条件にて測定を行い、決定した。
検出器:PDA(検出波長:210nm~300nm)
使用カラム:ACQUITY UPLC HSS T3
カラム温度:40℃
移動相:0.1%ギ酸含有50%アセトニトリル水溶液
流速:0.4mL/min
分析対象(重合後の重合溶液、又はメタクリル系樹脂ペレット)の一部を採取・秤量し、この試料をクロロホルムに溶解させて、5質量%溶液を調製し、内部標準物質としてn-デカンを添加し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製 GC-2010)を用いて、以下の条件にて測定を行い、決定した。
検出器:FID
使用カラム:ZB-1
測定条件:45℃で5分保持後、20℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温、その後15分間保持
後述の実施例及び比較例で製造したメタクリル系樹脂中の各構造単位は、特に断りのない限り1H-NMR測定及び13C-NMR測定により、メタクリル系樹脂及びメタクリル系樹脂組成物について各構造単位を同定し、その存在量を算出した。1H-NMR測定及び13C-NMR測定の測定条件は、以下の通りである。
・測定機器:ブルーカー株式会社製 DPX-400
・測定溶媒:CDCl3、又は、d6-DMSO
・測定温度:40℃
JIS-K7121に準拠して、メタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)(℃)を測定した。
まず、標準状態(23℃、65%RH)で状態調節(23℃で1週間放置)した試料から、試験片として4点(4箇所)、それぞれ約10mgを切り出した。
次に、示差走査熱量計(パーキンエルマージャパン(株)製 Diamond DSC)を窒素ガス流量25mL/分の条件下で用いて、ここで、10℃/分で室温(23℃)から200℃まで昇温(1次昇温)し、200℃で5分間保持して、試料を完全に融解させた後、10℃/分で200℃から40℃まで降温し、40℃で5分間保持し、さらに、上記昇温条件で再び昇温(2次昇温)する間に描かれるDSC曲線のうち、2次昇温時の階段状変化部分曲線と各ベースライン延長線から縦軸方向に等距離にある直線との交点(中間点ガラス転移温度)をガラス転移温度(Tg)(℃)として測定した。1試料当たり4点の測定を行い、4点の算術平均(小数点以下四捨五入)を測定値とした。
後述の実施例及び比較例で製造したメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)は、下記の装置、及び条件で測定した。
・測定装置:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH-H 1本、TSKgel SuperHM-M 2本、TSKgel SuperH2500 1本、を順に直列接続して使用した。
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン、流速:0.6mL/min、内部標準として、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を、0.1g/Lで添加した。
検出器:RI(示差屈折)検出器 検出感度:3.0mV/分
サンプル:0.02gのメタクリル系樹脂のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量:10μL
検量線用標準サンプル:単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる、以下の10種のポリメチルメタクリレート(PolymerLaboratories製;PMMA Calibration Kit M-M-10)を用いた。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
上記の条件で、メタクリル系樹脂の溶出時間に対する、RI検出強度を測定した。
上記、検量線用標準サンプルの測定により得られた各検量線を基に、メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、並びにZ平均分子量(Mz)を求め、その値を用い、分子量分布(Mw/Mn)及び(Mz/Mw)を決定した。
実施例及び比較例にて得られたメタクリル系樹脂を、真空圧縮成形機を用いてプレスフィルムとすることで、測定用試料とした。
具体的な試料調製条件としては、真空圧縮成形機(神藤金属工業所製、SFV-30型)を用い、260℃、減圧下(約10kPa)、10分間予熱した後、樹脂を、260℃、約10MPaで5分間圧縮し、減圧及びプレス圧を解除した後、冷却用圧縮成形機に移して冷却固化させた。得られたプレスフィルムを、23℃、湿度60%に調整した恒温恒湿室内で24時間以上養生を行った上で、測定用試験片(厚み約150μm、幅6mm)を切り出した。
Polymer Engineering and Science 1999, 39,2349-2357に詳細な記載のある複屈折測定装置を用いて、光弾性係数CR(Pa-1)を測定した。
フィルム状の試験片を、同様に恒温恒湿室に設置したフィルムの引張り装置(井元製作所製)にチャック間50mmになるように配置した。次いで、複屈折測定装置(大塚電子製、RETS-100)のレーザー光経路がフィルムの中心部に位置するように装置を配置し、歪速度50%/分(チャック間:50mm、チャック移動速度:5mm/分)で伸張応力をかけながら、試験片の複屈折を測定した。
測定より得られた複屈折の絶対値(|Δn|)と伸張応力(σR)の関係から、最小二乗近似によりその直線の傾きを求め、光弾性係数(CR)(Pa-1)を計算した。計算には、伸張応力が2.5MPa≦σR≦10MPaの間のデータを用いた。
CR=|Δn|/σR
ここで、複屈折の絶対値(|Δn|)は、以下に示す値である。
|Δn|=|nx-ny|
(nx:伸張方向の屈折率、ny:面内で伸張方向と垂直な方向の屈折率)
実施例及び比較例にて得られたメタクリル系樹脂をガラス製のサンプル瓶に秤量してクロロホルムを加え、振とう機で毎分800回の速度で30分間振とうすることでメタクリル系樹脂の2.0質量%クロロホルム溶液を作製した。以下に示す(i)と(ii)の2種類の手法で蛍光発光強度の評価を行った。
(i)フルオレセイン/エタノール溶液の濃度と、これを励起波長436nm、スリット幅2nmで分光分析した際に得られる514nmの蛍光発光強度から得られる濃度-強度換算式を用い、メタクリル系樹脂の2.0質量%クロロホルム溶液を分光分析した際に得られる蛍光発光強度を、フルオレセイン/エタノール溶液濃度へ換算した。
具体的にはエタノール、及び5×10-8mol/Lと1×10-6mol/Lのフルオレセイン/エタノール溶液それぞれの514nmにおける発光強度(表1に示す)を測定し、エタノールバックグラウンド(BG)補正有りの値を用いて線形近似直線(図1に示す)を求め、これを濃度-強度換算式とした。この式を用いてメタクリル系樹脂組成物の2.0質量%クロロホルム溶液の発光強度を濃度へ換算し、評価した。
(ii)硫酸キニーネ二水和物を1mol/L希硫酸溶液に溶解させた溶液の濃度と、これを励起波長365nm、スリット幅2nmで分光分析した際に得られる458nmの蛍光発光強度から得られる濃度-強度換算式を用い、メタクリル系樹脂の2.0質量%クロロホルム溶液を分光分析した際に得られる蛍光発光強度を、硫酸キニーネ二水和物を1mol/L希硫酸溶液に溶解させた溶液の濃度に換算した。
具体的には1mol/L希硫酸、及び1×10-7mol/Lと1×10-6mol/Lの硫酸キニーネ二水和物/希硫酸溶液それぞれの458nmにおける発光強度(表2に示す)を測定し、希硫酸グラウンド(BG)補正有りの値を用いて線形近似直線(図2に示す)を求め、これを濃度-強度換算式とした。この式を用いてメタクリル系樹脂の2.0質量%クロロホルム溶液の発光強度を濃度へ換算し、評価した。
なお、蛍光の測定は蛍光分光光度計(堀場JobinYvon社製、Fluorolog3-22)を用い、光源としてキセノンランプ、検出器としてPMTを用いて測定を行った。時定数0.2s、測定モードは各波長の励起光強度で発光強度を規格化するSc/Rcとし、光路長1cm石英セルで90°観測で行った。
-射出成形板での評価-
ファナック(株)製「AUTO SHOT Model 15A」射出成形機を用い、シリンダー温度270℃、金型温度90℃の条件にて、厚さ3mm×幅12mm×長さ124mmの短冊形試験片を作製した。
得られた成形片を長手方向に80mmにカットし、研磨機(メガロテクニカ(株)社製、プラビューティー)を用いて、カッターの回転数を8500rpm、送り速度1m/分にて成形片の長手方向に垂直な両方の端面を磨いた。
磨き処理を行った成形片について、長光路分光透過色計(日本電色社製、ASA1)を用いて、長さ方向(光路長80mm)のYIを測定した。YIは、JIS K 7373に準拠して、波長範囲380~780nmにて測定した。
実施例及び比較例にて得たメタクリル系樹脂、もしくは成形片を、20w/v%クロロホルム溶液(すなわち、10gの試料をクロロホルムに溶解し50mLの溶液とするような割合で作製した溶液)とし、測定試料とした。紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、UV-2500PC)を用い、測定波長380~780nm、スリット幅2nm、10cm光路長セルで視野角10°、補助イルミナントCを使用、基準物体:クロロホルムとして、透過率測定を行った。
JIS K 7373に従い、XYZ表色系を用いて、下記式
YI=100(1.2769X-1.0592Z)/Y
により、YI(イエローネスインデックス)を算出した。
後述する実施例及び比較例において使用した原料について下記に示す。
[[単量体]]
・メチルメタクリレート(MMA):旭化成株式会社製
・N-フェニルマレイミド(phMI、phMI質量に対する2-アニリノ-N-フェニルスクシンイミド(APSI)の質量割合60質量ppm):株式会社日本触媒製
・N-シクロヘキシルマレイミド(chMI、chMI質量に対する2-シクロヘキシルアミノ-N-シクロヘキシルスクシンイミド(CCSI)の質量割合80質量ppm):株式会社日本触媒製
・スチレン:旭化成株式会社製
下記の水洗方法により2-アミノ-N-置換スクシンイミドを除去し、脱水方法により含有水分を除去した。
---N-シクロヘキシルマレイミド中CCSIの5質量ppm以下への低減---
chMI250.0kg、メタキシレン750.0kg(以下mXyと記す)を計量し、ジャケットによる温度調節装置と三枚後退翼を撹拌翼として具備した2.0m3グラスライニング製反応器に加え、ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を56℃に上昇させ、撹拌し、有機層を得た。次いで2質量%硫酸水350.0kgを計量し、反応器に加え、溶液温度を56℃に保ち、100rpmで10分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜出した。
同様の操作を2回繰り返し、有機層を硫酸水で洗浄する操作を合計3回行った。有機層中のCCSI量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、有機層中のchMIに対して4.9質量ppmであった。
その後、イオン交換水350.0kgを反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで10分間撹拌した。撹拌を停止し、20分間静置させ、水層をドラム缶に抜出した。
同様の操作をもう一度繰り返し、有機層をイオン交換水で洗浄する操作を合計2回行った。有機層中のCCSI量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、有機層中のchMIに対して4.6質量ppmであった。溶液温度を50℃に保ち、100rpmで撹拌しつつ反応器内を徐々に減圧し、反応器内圧力を5kPaとした。その後溶液温度を60℃に上昇させ、共沸脱水操作を行った。131.6kgの水/mXy混合液を留去し、有機層中水分濃度をカールフィッシャー水分測定器により定量したところ、有機相の質量に対して102質量ppmであった。
有機層に濃度調整用mXyを加え、chMI24.0質量%、水分濃度191質量ppm、chMIの質量に対してCCSI4.6質量ppmの有機層を1034.3kg得た。
---N-シクロヘキシルマレイミド中CCSIの1質量ppm以下への低減---
chMI80.0kg、メタキシレン240.0kg(以下mXyと記す)を計量し、ジャケットによる温度調節装置と神鋼環境ソリューション製フルゾーンを撹拌翼として具備した0.50m3グラスライニング製反応器に加え、ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を55℃に上昇させ、撹拌し、有機層を得た。次いで2質量%硫酸水112.0kgを計量し、反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで30分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜出した。
同様の操作を3回繰り返し、有機層を硫酸水で洗浄する操作を合計4回行った。有機層中のCCSI量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、有機層中のchMIに対して0.57質量ppmであった。
その後、イオン交換水112.0kgを反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで30分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜出した。
溶液温度を50℃に保ち、100rpmで撹拌しつつ反応器内を徐々に減圧し、反応器内圧力を5kPaとした。その後溶液温度を60℃に上昇させ、共沸脱水操作を行った。54kgの水/mXy混合液を留去し、有機層中水分濃度をカールフィッシャー水分測定器により定量したところ、有機相の質量に対して46質量ppmであった。
有機層に濃度調整用mXyを加え、chMI20.3質量%、水分濃度125質量ppm、chMIの質量に対してCCSI0.60質量ppmの有機層を384.0kg得た。
---N-フェニルマレイミド中APSIの5質量ppm以下への低減---
phMI150.0kg、mXy720.0kgを計量し、ジャケットによる温度調節装置と三枚後退を撹拌翼として具備した2.0m3グラスライニング製反応器に加え、ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を55℃に上昇させ、撹拌し、有機層を得た。次いで7質量%重曹水336.0kgを計量し、反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで10分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜出した。
次いでイオン交換水336.0kgを反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで10分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜出した。
その後、2質量%硫酸水336.0kgを計量し、反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで10分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜出した。
上記と同様にイオン交換水で洗浄する操作を2回行った。
有機層中のAPSI量をリキッドクロマトグラフィーで定量したところ、有機層中のphMIに対して3.6質量ppmであった。
溶液温度を50℃に保ち、100rpmで撹拌しつつ反応器内を徐々に減圧し、反応器内圧力を5kPaとした。その後溶液温度を55℃に上昇させ、共沸脱水操作を行った。190kgの水/mXy混合液を留去し、有機層中水分濃度をカールフィッシャー水分測定器により定量したところ、有機層の質量に対して47質量ppmであった。
有機層に濃度調整用mXyを加え、phMI10.8質量%、水分濃度170質量ppm、phMIの質量に対してAPSI3.4質量ppmの有機層を1340.7kg得た。
---N-フェニルマレイミド中APSIの1質量ppm以下への低減---
phMI50.0kg、mXy240.0kgを計量し、ジャケットによる温度調節装置と神鋼環境ソリューション製フルゾーンを撹拌翼として具備した0.50m3グラスライニング製反応器に加え、ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を55℃に上昇させ、撹拌し、有機層を得た。次いで7質量%重曹水112.0kgを計量し、反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで15分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜出した。同様の操作をもう一度繰り返し、有機層を重曹水で洗浄する操作を合計2回行った。
次いでイオン交換水112.0kgを反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで30分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜出した。
その後、2質量%硫酸水112.0kgを計量し、反応器に加え、溶液温度を55℃に保ち、100rpmで30分間撹拌した。撹拌を停止し、10分間静置させ、水層をドラム缶に抜出した。同様の操作を2回繰り返し、有機層を硫酸水で洗浄する操作を合計3回行った。
上記と同様にイオン交換水で洗浄する操作を2回行った。
有機層中のAPSI量をリキッドクロマトグラフィーで定量したところ、有機層中のphMIに対して0.37質量ppmであった。
溶液温度を50℃に保ち、100rpmで撹拌しつつ反応器内を徐々に減圧し、反応器内圧力を5kPaとした。その後溶液温度を55℃に上昇させ、共沸脱水操作を行った。72kgの水/mXy混合液を留去し、有機層中水分濃度をカールフィッシャー水分測定器により定量したところ、有機層の質量に対して60質量ppmであった。
有機層に濃度調整用mXyを加え、phMI10.3質量%、水分濃度180質量ppm、phMIの質量に対してAPSI0.42質量ppmの有機層を432.8kg得た。
・1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン:日油株式会社製「パーヘキサC」
[[連鎖移動剤]]
・n-オクチルメルカプタン:花王株式会社製
[[ヒンダードフェノール系酸化防止剤]]
・イルガノックス1076:BASF社製
[[リン系酸化防止剤]]
・イルガフォス168(融点180~190℃):BASF社製
上記工程を複数回行い、水洗工程及び脱水工程を経たphMIの10.3質量%メタキシレン(以下、mXyと記す)溶液(APSI0.42質量ppm含有)を508.7kg計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼を具備した1.25m3反応器に加え、溶液温度60℃、反応器内圧力5kPaにて撹拌しつつmXyを312.8kg減圧下留去した。次いで、反応釜を常圧に戻し、水洗工程及び脱水工程を経たchMIの20.3質量%mXy溶液(CCSI0.60質量ppm含有)を81.8kgと、mXy38.3kgを投入した。さらにMMA326.1kgと、連鎖移動剤であるn-オクチルメルカプタンを0.66kgを計量、投入して撹拌し、単量体混合溶液を得た。
次いで、mXy123.0kgを計量して、タンク1に加えた。
さらに、タンク2にMMA165.0kg及びmXy80.0kgを計量して撹拌し、追添用単量体溶液とした。
反応器の内容液については30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施し、タンク1、タンク2のそれぞれについては10L/分の速度で窒素によるバブリングを30分間実施し、溶存酸素を除去した。
その後ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を124℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.35kgをmXy3.025kgに溶解させた重合開始剤溶液を、1kg/時間の速度で添加することで重合を開始するとともに、タンク1から30.75kg/時間で4時間の間、mXyを添加した。
なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で124±2℃で制御した。
次いで4時間後から6時間後の間、タンク2からMMAを含む単量体溶液を122.5kg/時間の速度で添加した。
さらに開始剤溶液は重合開始0.5時間後に0.25kg/時間、4時間後に0.75kg/時間、6時間後に0.5kg/時間にそれぞれ添加速度を低下させ、重合開始7時間後に開始剤溶液の添加を停止し、重合を更に3時間継続し、主鎖に環構造単位を有するメタクリル系樹脂を含む重合溶液を得た。
得られた重合溶液に含まれるN-置換マレイミド量を評価した結果、phMIを340質量ppm、chMIを120質量ppm含んでいた。
この重合溶液に、溶液中に含まれる重合体100質量%に対して、0.1質量%のイルガノックス1076と0.05質量%のイルガフォス168とを撹拌下に添加した。
酸化防止剤を含む重合溶液をSUS316L製メタルファイバーからなる濾過精度2μmのフィルターを通すことにより濾過を行った。
重合溶液から重合物を回収するため、脱揮工程に用いる装置として、平板スリット型流路と熱媒流路を有する平板式熱交換器と内容積約0.3m3のSUS製熱媒ジャケット付減圧容器(以下、脱揮槽と記す)とから構成される、回転部を有していない脱揮装置を用いた。
重合により得られた重合物を含む溶液を、30リットル/時の速度で減圧容器の上部に設置した熱交換機に供給し、260℃に加熱した後、内温260℃、真空度は30Torrの条件に加熱・減圧された脱揮槽に供給し脱揮処理を施した。脱揮装置内でのせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると5.3s-1であった。
脱揮後の重合物を脱揮槽下部よりギアポンプで昇圧し、ストランドダイから押し出し、水冷後、ペレット化してメタクリル系樹脂組成物ペレットを得た。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、88.1質量%、9.0質量%、2.9質量%であった。また、重量平均分子量は102,000、Mw/Mnは2.12であった。その他の物性は表3に示す。
水洗工程及び脱水工程を経たphMIの10.3質量%mXy溶液(APSI0.42質量ppm含有)、及びchMIの20.3質量%mXy溶液(CCSI0.60質量ppm含有)を用い、実施例1と同様の操作を経てphMI39.6kg、chMI59.5kg、mXy247.0kgの混合溶液を得た。ここにMMA296.0kg、n-オクチルメルカプタン0.390kgを投入して単量体混合溶液を調製後、実施例1と同様にしてメタクリル系樹脂組成物ペレットを得た。
尚、得られた重合溶液に含まれるN-置換マレイミド量を評価した結果、phMIを80質量ppm、chMIを460質量ppm含んでいた。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、83.1質量%、6.8質量%、10.1質量%であった。また、重量平均分子量は151,000、Mw/Mnは2.14であった。その他の物性は表3に示す。
水洗工程及び脱水工程を経たphMIの10.3質量%mXy溶液(APSI0.42質量ppm含有)、及びchMIの20.3質量%mXy溶液(CCSI0.60質量ppm含有)を用い、実施例1と同様の操作を経てphMI5.6kg、chMI187.2kg、mXy247.0kgの混合溶液を得た。ここにMMA184.2kg、スチレン53.1kg、n-オクチルメルカプタン0.280kgを投入して単量体混合溶液を調製した。
次いで、mXy123.0kgを計量して、タンク1に加えた。
さらに、タンク2にMMA130.0kg及びmXy80.0kgを計量して撹拌し、追添用単量体溶液とした。
その後、実施例1と同様にしてメタクリル系樹脂組成物ペレットを得た。
尚、得られた重合溶液に含まれるN-置換マレイミド量を評価した結果、phMIを30質量ppm、chMIを250質量ppm含んでいた。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI、スチレン各単量体由来の構造単位は、それぞれ、57.2質量%、0.8質量%、33.0質量%、9.0質量%であった。また、重量平均分子量は130,000、Mw/Mnは2.33、ガラス転移温度は150℃であった。その他の物性は表3に示す。
水洗工程及び脱水工程を経たphMIの10.3質量%mXy溶液(APSI0.42質量ppm含有)、及びchMIの20.3質量%mXy溶液(CCSI0.60質量ppm含有)を用い、実施例1と同様の操作を経てphMI52.4kg、chMI16.6kg、mXy450.0kgの混合溶液を得た。ここにMMA491.1kg、n-オクチルメルカプタン0.660kgを投入して単量体混合溶液を調製した。
反応器の内容液については30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施し、溶存酸素を除去した。
その後ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を124℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.23kgをmXy1.82kgに溶解させた重合開始剤溶液を調製し、この溶液を1kg/時間の速度で添加することで重合を開始した。さらに開始剤溶液は重合開始0.5時間後に0.5kg/時、1時間後に0.42kg/時、2時間後に0.35kg/時、3時間後に0.14kg/時間、4時間後に0.13kg/時間にそれぞれ添加速度を低下させ、重合開始7時間後に添加を停止した。
なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で124±2℃で制御した。
重合開始から15時間経過した後、主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂を含む重合溶液を得た。
得られた重合溶液に含まれるN-置換マレイミド量を評価した結果、phMIを6300質量ppm、chMIを2150質量ppm含んでいた。
この重合溶液に、溶液中に含まれる重合体100質量%に対して、0.1質量%のイルガノックス1076と0.05質量%のイルガフォス168を撹拌下に添加した。
この酸化防止剤を含む重合溶液をSUS316L製メタルファイバーからなる濾過精度2μmのフィルターを通すことにより濾過を行った。
重合溶液から重合物を回収するため、脱揮工程に用いる装置として、平板スリット型流路と熱媒流路を有する平板式熱交換器と内容積約0.3m3のSUS製熱媒ジャケット付減圧容器(以下、脱揮槽と記す)とから構成される、回転部を有しない脱揮装置を用いた。
重合により得られた重合物を含む溶液を、30リットル/時の速度で減圧容器の上部に設置した熱交換機に供給し、260℃に加熱した後、内温260℃、真空度は30Torrの条件に加熱・減圧された脱揮槽に供給し脱揮処理を施した。脱揮装置内でのせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると5.3s-1であった。
脱揮後の重合物を脱揮槽下部よりギアポンプで昇圧し、ストランドダイから押し出し、水冷後、ペレット化してメタクリル系樹脂組成物ペレットを得た。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、88.3質量%、9.0質量%、2.7質量%で
あった。また、重量平均分子量は113,000、Mw/Mnは2.25、ガラス転移温度は135℃であった。その他の物性は表3に示す。
水洗工程及び脱水工程を経たphMIの10.8質量%mXy溶液(APSI3.4質量ppm含有)、及びchMIの24.0質量%mXy溶液(CCSI4.6質量ppm含有)を用い、単量体混合溶液中の単量体濃度を実施例1に合わせるため、減圧下留去するmXy重量と、その後投入するmXy重量を変更した以外は実施例1と同様の操作を経て、主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂組成物ペレットを得た。
尚、得られた重合溶液に含まれるN-置換マレイミド量を評価した結果、phMIを320質量ppm、chMIを110質量ppm含んでいた。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、88.1質量%、9.1質量%、2.8質量%で
あった。また、重量平均分子量は102,000、Mw/Mnは2.13、ガラス転移温度は132℃であった。その他の物性は表3に示す。
水洗工程及び脱水工程を経たphMIの10.3質量%mXy溶液(APSI0.42質量ppm含有)、及びchMIの20.3質量%mXy溶液(CCSI0.60質量ppm含有)を用い、実施例1と同様の操作を経てphMI39.6kg、chMI59.7kg、mXy236.9kgの混合溶液を得た。ここにMMA340.7kg、n-オクチルメルカプタン0.275kgを投入して単量体混合溶液を調製した。
次いで、mXy123.1kgを計量して、タンク1に追添用溶媒を準備した。
さらに、タンク2にMMA110.0kg、mXy90.0kgを計量し、撹拌して追添用MMA溶液を得た。
反応器の内容液については30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施し、タンク1、タンク2のそれぞれについては10L/分の速度で窒素によるバブリングを30分間実施し、溶存酸素を除去した。
その後ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を128℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.371kgをmXy3.004kgに溶解させた重合開始剤溶液を、1kg/時間の速度で添加することで重合を開始した。
なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で128±2℃で制御した。重合開始から30分後、開始剤溶液の添加速度を0.25kg/時間に低下させ、さらにタンク1から30.78kg/時間で3.5時間の間mXyを添加した。
次いで重合開始から4時間後に開始剤溶液の添加速度を0.75kg/時間に上げるとともにタンク2から追添用MMA溶液を100kg/時間で2時間の間添加した。
さらに重合開始から6時間後に開始剤溶液の添加速度を0.5kg/時間に低下させ、重合開始7時間後に添加を停止した。
重合開始から8時間経過した後、メタクリル系樹脂を含む重合溶液を得た。
得られた重合溶液に含まれるN-置換マレイミド量を評価した結果、phMIを240質量ppm、chMIを1010質量ppm含んでいた。
次に得られた重合体溶液を、脱揮用に複数のベント口を装備した二軸押出機に導入することにより、脱揮を行った。二軸押出機では、樹脂換算で10kg/時となるように、得られた共重合体溶液を供給し、バレル温度260℃、スクリュー回転数150rpm、真空度10~40Torrの条件とした。二軸押出機で脱揮された樹脂を、ストランドダイから押出し、水冷後ペレット化し、メタクリル系樹脂を得た。脱揮装置内でのせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると80s-1であった。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、80.9質量%、7.7質量%、11.4質量%であった。また、重量平均分子量は149,000、Mw/Mnは2.26であった。その他の物性は表3に示す。
MMA335.5kg、phMI(市販品のまま、未精製)37.4kg、chMI(市販品のまま、未精製)67.1kg、連鎖移動剤であるn-オクチルメルカプタンを0.300kg、mXy236.9kgを計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼を具備した1.25m3反応器に加え撹拌し、混合単量体溶液を得た。
次いで、mXy123.1kgを計量して、タンク1に追添用溶媒を準備した。
さらに、タンク2にMMA110.0kg、mXy90.0kgを計量し、撹拌して追添用MMA溶液を得た。
反応器の内容液については30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施し、タンク1、タンク2のそれぞれについては10L/分の速度で窒素によるバブリングを30分間実施し、溶存酸素を除去した。
その後ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を123℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.481kgをmXy2.644kgに溶解させた重合開始剤溶液を、1kg/時間の速度で添加することで重合を開始した。
なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で123±2℃で制御した。重合開始から30分後、開始剤溶液の添加速度を0.25kg/時間に低下させ、さらにタンク1から30.78kg/時間で3.5時間の間mXyを添加した。
次いで重合開始から4時間後に開始剤溶液の添加速度を0.75kg/時間に上げるとともにタンク2から追添用MMA溶液を100kg/時間で2時間の間添加した。
さらに重合開始から6時間後に開始剤溶液の添加速度を0.25kg/時間に低下させ、重合開始7時間後に添加を停止した。
重合開始から8時間経過した後、メタクリル系樹脂を含む重合溶液を得た。
得られた重合溶液に含まれるN-置換マレイミド量を評価した結果、phMIを340質量ppm、chMIを1480質量ppm含んでいた。
次に得られた重合体溶液を、予め250℃に加熱された管状熱交換器と気化槽からなる、回転部を有していない濃縮装置に供給して脱揮を行った。気化槽の真空度は10~15Torrの条件とした。気化槽を流下した樹脂をスクリューポンプで払い出し、ストランドダイから押出し、水冷後ペレット化し、メタクリル系樹脂を得た。脱揮装置内でのせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると5.3s-1であった。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、80.0質量%、7.2質量%、12.8質量%であった。また、重量平均分子量は137,000、Mw/Mnは2.32であった。その他の物性は表3に示す。
水洗工程及び脱水工程を経たphMIの10.3質量%mXy溶液(APSI0.42質量ppm含有)、及びchMIの20.3質量%mXy溶液(CCSI0.60質量ppm含有)を用い、実施例1と同様の操作を経てphMI45.0kg、chMI30.0kg、mXy247.0kgの混合溶液を得た。ここにMMA485.1kg、n-オクチルメルカプタン0.660kgを投入して単量体混合溶液を調製した。
反応器の内容液については30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施し、溶存酸素を除去した。
その後ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を124℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.23kgをmXy1.82kgに溶解させた重合開始剤溶液を調製し、この溶液を1kg/時間の速度で添加することで重合を開始した。さらに開始剤溶液は重合開始0.5時間後に0.5kg/時、1時間後に0.42kg/時、2時間後に0.35kg/時、3時間後に0.14kg/時間、4時間後に0.13kg/時間にそれぞれ添加速度を低下させ、重合開始7時間後に添加を停止した。
なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で124±2℃で制御した。
重合開始から15時間経過した後、主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂を含む重合溶液を得た。
得られた重合溶液に含まれるN-置換マレイミド量を評価した結果、phMIを6500質量ppm、chMIを2260質量ppm含んでいた。
この重合溶液に、溶液中に含まれる重合体100質量%に対して、0.1質量%のイルガノックス1076と0.05質量%のイルガフォス168を撹拌下に添加した。
この酸化防止剤を添加した重合溶液を予め170℃に加熱された管状熱交換器と気化槽からなる濃縮装置に供給し、溶液中に含まれる重合体の濃度を70質量%まで高め、次いで得られた重合溶液を伝熱面積が0.2m2である、回転部を有する薄膜蒸発機に供給し、脱揮を行った。
この際の装置内温度は280℃、供給量30L/hr、回転数400rpm、真空度30Torrで実施し、脱揮後の重合物をギアポンプで昇圧し、ストランドダイから押し出し、水冷後、ペレット化して、メタクリル系樹脂組成物ペレットを得た。回転部を有する薄膜蒸発機内でのせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると3.2×103s-1であった。
得られたペレット状の重合物の組成を確認したところ、MMA、phMI、chMI各単量体由来の構造単位は、それぞれ、87.3質量%、7.7質量%、5.0質量%であった。また、重量平均分子量は152,000、Mw/Mnは2.05、ガラス転移温度は135℃であった。その他の物性は表3に示す。
MMA400.3kg、スチレン100.2kg、n-ドデシルメルカプタン0.396kg(重合系に投入した全単量体の合計質量に対して800質量ppmに相当)、トルエン500.4kgを計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼を具備した1.25m3反応器に加え撹拌し、混合単量体溶液を得た。
次いで、反応器内の溶液に30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施し、溶存酸素を除去した。
その後、ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を120℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン0.253kgをmXy4.748kgに溶解させた重合開始剤溶液を、1.0kg/時間の速度で5時間添加することで重合を開始した。このように重合開始剤は、初期に添加せず、一定の添加速度で一定時間添加した。
なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で120±2℃で制御した。
重合開始時点から6時間経った時点で重合溶液のサンプリングを行い、残存している単量体濃度から重合転化率の解析を行ったところ、96%であったことから、この時点を重合終了時点とした(重合時間=6時間)。
その後、この重合溶液を、予め170℃に加熱された管状熱交換器と気化槽からなる濃縮装置に供給し、溶液中に含まれる重合体の濃度を70質量%まで高めた。
得られた重合溶液は、伝熱面積が0.2m2である薄膜蒸発機に供給し、脱揮を行った。
この際の装置内温度は280℃、供給量30L/hr、回転数400rpm、真空度30Torrで実施し、脱揮後の重合物はギアポンプで昇圧し、ストランドダイから押し出され、水冷後、ペレット化してメタクリル系樹脂を得た。回転部を有する薄膜蒸発機内でのせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると3.2×103s-1であった。
得られたメタクリル系樹脂を用い、イミド化剤としてモノメチルアミンを用い、口径15mm、L/D=90の噛合い型同方向回転式二軸押出機を利用して、グルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂を製造した。
その際、ポッパーより窒素ガスをフローすることで、押出機内の酸素濃度を1%以下にした。押出機の各温調ゾーンの設定温度を250℃、スクリュー回転数300rpm、MS樹脂を1kg/時で供給し、モノメチルアミンの供給量をメタクリル系樹脂100質量%に対して20質量%とした。ホッパーからメタクリル系樹脂を投入し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルからモノメチルアミンを注入した。反応ゾーンの末端にはシールリングを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物及び過剰のメチルアミンをベント口の真空度を60Torrに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂は、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化した。押出機内でのせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると160s-1であった。
次いで、口径15mm、L/D=90の噛合い型同方向回転式二軸押出機である回転部を有する装置にて、押出機の各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpmの条件にて、ホッパーより、上記にて得られたペレットを1kg/hrの供給量にて投入し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから、上記ペレット状樹脂100質量%に対して0.8質量%の炭酸ジメチルを注入した。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物及び過剰の炭酸ジメチルを、ベント口の真空度を100Torrに減圧して除去した。押出機内でのせん断速度を装置形状、運転条件から計算すると80s-1であった。
押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂は、水槽で冷却した後、ペレタイザで再度ペレット化し、グルタルイミド系構造単位を有するメタクリル系樹脂を得た。
一方、比較例ではメタクリル系樹脂、及びメタクリル系樹脂成形体の溶液の色調は良好だが、メタクリル系樹脂成形体の長光路での色調は損なわれていた。
上記メタクリル系樹脂組成物を用いて得られる光学部品用成形体は、例えば、スマートフォン、PDA、タブレットPC、液晶テレビ等のディスプレイに用いられる導光板、ディスプレイ前面板、タッチパネル、さらにはスマートフォン、タブレットPCカメラ用レンズ等や、ヘッドマウントディスプレーや液晶プロジェクター等の光学レンズ部品、例えば、プリズム素子、導波路、レンズ、とりわけ、小型薄肉偏肉形状の光学レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、レンズ、フレネルレンズ、マイクロレンズアレイを備えた位相板、光学カバー部品等が挙げられる。また、自動車部品としては、車載ディスプレイ用導光板;車載メーターパネル、;カーナビゲーションの前面板、コンバイナ、光学カバー部品等ヘッドアップディスプレイ向け光学部品;車載用カメラレンズ、導光棒等が挙げられ、その他、カメラ焦点板や屋外、店頭、公共機関、交通機関等の場所で宣伝、広告等の目的でネットワークに接続した薄型ディスプレイに情報を流すデジタルサイネージ用表示装置用部品等に特に好ましく用いることができる。
Claims (5)
- 主鎖にN-置換マレイミド単量体由来の構造単位を有し、
ガラス転移温度(Tg)が120℃超160℃以下であり、
光弾性係数の絶対値が3.0×10-12Pa-1以下であるメタクリル系樹脂の製造方法であって、
N-置換マレイミド溶液中の2-(N-置換アミノ)-N-置換スクシンイミド量が、前記N-置換マレイミド溶液中のN-置換マレイミド100質量%に対して、5質量ppm以下となるようにN-置換マレイミドを水洗及び/又は脱水する前処理工程、
前記前処理工程で得られたN-置換マレイミド溶液を用いて重合する重合工程、
前記重合工程で得られた重合溶液を、回転部を有しない脱揮装置を用いて脱揮する脱揮工程、
を有することを特徴とする、メタクリル系樹脂の製造方法。 - 前記脱揮工程において、前記重合溶液が受けるせん断速度が20s-1以下である、請求項1に記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
- 前記重合工程において、重合開始剤の添加開始から30分後以降に、重合に供与する全ての単量体の総質量100質量%に対して、5~35質量%のメタクリル酸エステル単量体を追加添加する、請求項1又は2に記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
- 重合終了後に残存する未反応N-置換マレイミドの総質量が、重合終了時の重合溶液100質量%に対して、10質量ppm以上1000質量ppm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
- 前記N-置換マレイミド単量体がN-アリールマレイミド類を含み、
重合終了後の未反応N-アリールマレイミド類の総質量が、重合終了時の重合溶液100質量%に対して、10質量ppm以上500質量ppm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
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