図1は、本発明の実施例に係る建設機械としてのショベル(掘削機)を示す側面図である。ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはバケット6が取り付けられている。作業要素としてのブーム4、アーム5及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つ、エンジン11等の動力源が搭載されている。
図2は、図1のショベルに搭載される駆動系の構成例を示す図である。図2において、機械的動力系は二重線、作動油ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気制御系は一点鎖線でそれぞれ示されている。
エンジン11の出力軸にはメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14は、1回転当たりの吐出量がレギュレータ14Aによって制御される可変容量型油圧ポンプである。パイロットポンプ15は固定容量型油圧ポンプである。メインポンプ14には作動油ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。パイロットポンプ15にはパイロットライン25を介して操作装置26が接続されている。
コントロールバルブ17は、複数のバルブを含むバルブセットであり、ショベルにおける油圧系を制御する。コントロールバルブ17は、作動油ラインを介して、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、旋回用油圧モータ21等の油圧アクチュエータに接続されている。
操作装置26は、油圧アクチュエータを操作するための装置であり、操作レバー及び操作ペダルを含む。操作装置26は、パイロットライン27を介してコントロールバルブ17に接続され、且つ、パイロットライン28を介して操作圧センサ29に接続されている。
操作圧センサ29は、操作装置26が生成するパイロット圧を検出し、検出したパイロット圧に関する情報をコントローラ30に送信する。操作圧センサ29は、アーム操作レバーの操作状態を検出するアーム操作圧センサ、ブーム操作レバーの操作状態を検出するブーム操作圧センサ等を含む。
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。本実施例では、コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムをCPUに実行させて各種機能を実現する。
シリンダ圧センサ31は、油圧シリンダの油室における作動油の圧力を検出するセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。シリンダ圧センサ31は、アームロッド圧センサ、ブームロッド圧センサ、アームボトム圧センサ、ブームボトム圧センサ等を含む。アームロッド圧センサは、アームシリンダ8のロッド側油室8Rにおける作動油の圧力であるアームロッド圧を検出する。ブームロッド圧センサは、ブームシリンダ7のロッド側油室7Rにおける作動油の圧力であるブームロッド圧を検出する。アームボトム圧センサは、アームシリンダ8のボトム側油室8Bにおける作動油の圧力であるアームボトム圧を検出する。ブームボトム圧センサは、ブームシリンダ7のボトム側油室7Bにおける作動油の圧力であるブームボトム圧を検出する。
姿勢センサ32は、ショベルの姿勢を検出するセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。姿勢センサ32は、アーム角度センサ、ブーム角度センサ、バケット角度センサ、旋回角度センサ、傾斜角度センサ等を含む。アーム角度センサは、ブーム4に対するアーム5の開閉角度(以下、「アーム角度」とする。)を検出する。ブーム角度センサは、上部旋回体3に対するブーム4の俯仰角度(以下、「ブーム角度」とする。)を検出する。バケット角度センサは、アーム5に対するバケット6の開閉角度(以下、「バケット角度」とする。)を検出する。アーム角度センサ、ブーム角度センサ及びバケット角度センサのそれぞれは、例えば、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせで構成される。ポテンショメータ、ストロークセンサ、ロータリエンコーダ等で構成されてもよい。旋回角度センサは、下部走行体1に対する上部旋回体3の旋回角度を検出する。傾斜角度センサは、水平面に対するショベルの接地面の角度である機体傾斜角度を検出する。
表示装置33は、各種情報を表示するための装置であり、例えば、ショベルの運転室に設置される液晶ディスプレイである。表示装置33は、コントローラ30からの制御信号に応じて各種情報を表示する。
音声出力装置34は、各種情報を音声出力するための装置であり、例えば、ショベルの運転室に設置されるスピーカである。音声出力装置34は、コントローラ30からの制御信号に応じて各種情報を音声出力する。
再生弁V1は、油圧シリンダのロッド側油室とボトム側油室とを接続する第1油路C1に配置される。すなわち、再生弁V1は、油圧シリンダへの作動油の流量を調整する流量制御弁と油圧シリンダとの間に配置されている。再生弁V1は、例えば、電磁比例弁であり、コントローラ30からの制御電流に応じて第1油路C1の流路面積を制御する。再生弁V1は、ブーム再生弁、アーム再生弁等を含む。本実施例では、再生弁V1は、ブームシリンダ7のロッド側油室7Rとボトム側油室7Bとを接続する第1油路C1に配置されたブーム再生弁である。再生弁V1は、ロッド側油室7Rとボトム側油室7Bとの間の双方向の作動油の流れを許容する。すなわち、チェック弁を含んでいない。但し、再生弁V1は、ロッド側油室7Rからボトム側油室7Bへの作動油の流れのみを許容するチェック弁が配置された油路を含む第1弁位置と、ボトム側油室7Bからロッド側油室7Rへの作動油の流れのみを許容するチェック弁が配置された油路を含む第2弁位置と、ロッド側油室7Rとボトム側油室7Bとの間の作動油の流れを遮断する第3弁位置とを含んでいてもよい。或いは、再生弁V1は、第1弁位置に相当する弁位置と第3弁位置に相当する弁位置の2つの弁位置を含む第1の比例弁と、第2弁位置に相当する弁位置と第3弁位置に相当する弁位置の2つの弁位置を含む第2の比例弁とで構成されていてもよい。また、再生弁V1は、コントロールバルブ17の外部に配置されている。そのため、コントロールバルブ17内のスプール弁の動きとは独立して制御される。
コントローラ30は、操作圧センサ29、シリンダ圧センサ31、姿勢センサ32等の出力を得て、各種機能要素による演算を実行する。各種機能要素は、掘削操作検出部300、姿勢検出部301、許容最大圧力算出部302、再生弁制御部303等を含む。各種機能要素は、ソフトウェアで構成されてもよくハードウェアで構成されてもよい。そして、コントローラ30は、その演算結果を表示装置33、音声出力装置34、再生弁V1等に対して出力する。
掘削操作検出部300は、掘削操作が行われたことを検出する機能要素である。本実施例では、掘削操作検出部300は、アーム閉じ操作を含むアーム掘削操作が行われたことを検出する。具体的には、掘削操作検出部300は、アーム閉じ操作が検出され、ブームロッド圧が所定値以上であり、且つ、アームボトム圧とアームロッド圧の圧力差が所定値以上の場合に、アーム掘削操作が行われたことを検出する。なお、アーム掘削操作は、アーム閉じ操作のみの単独操作、アーム閉じ操作とブーム下げ操作との組み合わせである複合操作、アーム閉じ操作とバケット閉じ操作との組み合わせである複合操作を含む。
掘削操作検出部300は、ブーム上げ操作を含むブーム上げ複合掘削操作が行われたか否かを検出してもよい。具体的には、掘削操作検出部300は、ブーム上げ操作が検出され、ブームロッド圧が所定値以上であり、且つ、アームボトム圧とアームロッド圧の圧力差が所定値以上の場合に、ブーム上げ複合掘削操作が行われたことを検出する。また、掘削操作検出部300は、アーム閉じ操作が検出されたことを追加的な条件としてブーム上げ複合掘削操作が行われたことを検出してもよい。
掘削操作検出部300は、操作圧センサ29、シリンダ圧センサ31の出力に加え、或いはそれらに代えて、姿勢センサ32等の他のセンサの出力を用いて掘削操作が行われたか否かを検出してもよい。
姿勢検出部301は、ショベルの姿勢を検出する機能要素である。本実施例では、姿勢検出部301は、姿勢センサ32の出力に基づいてブーム角度、アーム角度、バケット角度、機体傾斜角度、及び、旋回角度をショベルの姿勢として検出する。
許容最大圧力算出部302は、掘削作業中の油圧シリンダにおける作動油の許容最大圧力を算出する機能要素である。許容最大圧力は、ショベルの姿勢に応じて変化する。掘削作業中に油圧シリンダにおける作動油が許容最大圧力を超えると、ショベルの機体は意図しない動きをもたらす場合がある。意図しない動きは、機体の浮き上がり、機体の引き摺られ等を含む。本実施例では、許容最大圧力算出部302は、掘削作業中の許容最大ブームロッド圧を算出する。ブームロッド圧が許容最大ブームロッド圧を超えると、ショベルの機体は、浮き上がるおそれがある。許容最大圧力算出部302は、掘削作業中の許容最大アームボトム圧を算出してもよい。アームボトム圧が許容最大アームボトム圧を超えると、ショベルの機体は、掘削地点のほうに引き摺られるおそれがある。
再生弁制御部303は、掘削作業中におけるショベルの機体の意図しない動きを防止するために再生弁V1を制御する機能要素である。本実施例では、再生弁制御部303は、ショベルの機体の浮き上がりを防止するために、再生弁V1の開口面積を調整してブームロッド圧を許容最大ブームロッド圧以下に制御する。具体的には、再生弁制御部303は、ショベルの機体の安定度に関する所定の条件(以下、「制御開始条件」とする。)が満たされていると判定した場合に再生弁V1を制御してショベルの機体の意図しない動きを防止する。
より具体的には、再生弁制御部303は、アーム閉じ操作のみの単独操作であるアーム掘削操作が行われている場合に、ブームロッド圧が上昇して許容最大ブームロッド圧以下の所定圧力に達すると、制御開始条件が満たされていると判定する。そして、再生弁V1を開いて再生弁V1の開口面積を大きくする。その結果、ロッド側油室7Rからボトム側油室7Bに作動油が流れ、ブームロッド圧は低下する。このとき、ボトム側油室7Bの容積は増大し、ブームシリンダ7は伸張する。このように、再生弁制御部303は、ブームロッド圧を低減させることで、ブームロッド圧が許容最大ブームロッド圧を超えてしまうのを防止し、ショベルの機体が浮き上がるのを防止する。
また、再生弁制御部303は、再生弁V1を開いた場合には、表示装置33及び音声出力装置34の少なくとも一方に制御信号を出力してもよい。再生弁V1を開いた旨を表すテキストメッセージを表示装置33に表示させるため、或いは、その旨を表す音声メッセージ、警報音等を音声出力装置34から出力させるためである。
次に、図3を参照しながら、姿勢検出部301によるショベルの姿勢の検出、及び、許容最大圧力算出部302による許容最大圧力の算出について説明する。なお、図3は、掘削が行われる際にショベルに作用する力の関係を示す図である。
最初に、掘削作業中に機体が浮き上がるのを防止するための制御に関するパラメータについて説明する。
図3において、点P1は、上部旋回体3とブーム4との連結点を示し、点P2は、上部旋回体3とブームシリンダ7のシリンダとの連結点を示す。また、点P3は、ブームシリンダ7のロッド7Cとブーム4との連結点を示し、点P4は、ブーム4とアームシリンダ8のシリンダとの連結点を示す。また、点P5は、アームシリンダ8のロッド8Cとアーム5との連結点を示し、点P6は、ブーム4とアーム5との連結点を示す。また、点P7は、アーム5とバケット6との連結点を示し、点P8は、バケット6の先端を示す。なお、図3は、説明の明瞭化のため、バケットシリンダ9の図示を省略している。
また、図3は、点P1及び点P3を結ぶ直線と水平線との間の角度をブーム角度θ1とし、点P3及び点P6を結ぶ直線と点P6及び点P7を結ぶ直線との間の角度をアーム角度θ2とし、点P6及び点P7を結ぶ直線と点P7及び点P8を結ぶ直線との間の角度をバケット角度θ3として示す。
更に、図3において、距離D1は、機体の浮き上がりが発生するときの回転中心RCとショベルの重心GCとの間の水平距離、すなわち、ショベルの質量M及び重力加速度gの積である重力M・gの作用線と回転中心RCとの間の距離を示す。そして、距離D1と重力M・gの大きさとの積は、回転中心RC周りの第1の力のモーメントの大きさを表す。なお、記号「・」は「×」(乗算記号)を表す。
また、図3において、距離D2は、回転中心RCと点P8との間の水平距離、すなわち、掘削反力FRの鉛直成分FR1の作用線と回転中心RCとの間の距離を示す。そして、距離D2と鉛直成分FR1の大きさとの積は、回転中心RC周りの第2の力のモーメントの大きさを表す。なお、掘削反力FRは、鉛直軸に対して掘削角度θを形成し、掘削反力FRの鉛直成分FR1は、FR1=FR・cosθで表される。また、掘削角度θは、ブーム角度θ1、アーム角度θ2、及びバケット角度θ3に基づいて算出される。
また、図3において、距離D3は、点P2及び点P3を結ぶ直線と回転中心RCとの間の距離、すなわち、ブームシリンダ7のロッド7Cを引っ張り出そうとする力FBの作用線と回転中心RCとの間の距離を示す。そして、距離D3と力FBの大きさとの積は、回転中心RC周りの第3の力のモーメントの大きさを表す。
また、図3において、距離D4は、掘削反力FRの作用線と点P6との間の距離を示す。そして、距離D4と掘削反力FRの大きさとの積は、点P6周りの第1の力のモーメントの大きさを表す。
また、図3において、距離D5は、点P4及び点P5を結ぶ直線と点P6との間の距離、すなわち、アーム5を閉じるアーム推力FAの作用線と点P6との間の距離を示す。そして、距離D5とアーム推力FAの大きさとの積は、点P6周りの第2の力のモーメントの大きさを表す。
ここで、掘削反力FRの鉛直成分FR1が回転中心RC周りにショベルを浮き上がらせようとする力のモーメントの大きさと、ブームシリンダ7のロッド7Cを引っ張り出そうとする力FBが回転中心RC周りにショベルを浮き上がらせようとする力のモーメントの大きさとを置き換え可能であると仮定する。この場合、回転中心RC周りの第2の力のモーメントの大きさと回転中心RC周りの第3の力のモーメントの大きさとの関係は以下の(1)式で表される。
FR1・D2=FR・cosθ・D2=FB・D3・・・(1)
また、アーム推力FAが点P6周りにアーム5を閉じようとする力のモーメントの大きさと、掘削反力FRが点P6周りにアーム5を開こうとする力のモーメントの大きさとはつり合うものと考えられる。この場合、点P6周りの第1の力のモーメントの大きさと点P6周りの第2の力のモーメントの大きさとの関係は以下の(2)式及び(2)'式で表される。なお、記号「/」は「÷」(除算記号)を表す。
FA・D5=FR・D4・・・(2)
FR=FA・D5/D4・・・(2)'
また、(1)式及び(2)式より、ブームシリンダ7のロッド7Cを引っ張り出そうとする力FBは、以下の(3)式で表される。
FB=FA・D2・D5・cosθ/(D3・D4)・・・(3)
更に、図3のX−X断面図で示すように、ブームシリンダ7のロッド側油室7Rに面するピストンの環状受圧面積を面積ABとし、ロッド側油室7Rにおける作動油の圧力をブームロッド圧PBとし、ブームシリンダ7のボトム側油室7Bに面するピストンの円状受圧面積を面積AB2とし、ボトム側油室7Bにおける作動油の圧力をブームボトム圧PB2とすると、ブームシリンダ7のロッド7Cを引っ張り出そうとする力FBは、FB=PB・AB−PB2・AB2で表される。但し、PB≫PB2のため、FBは、FB=PB・ABで表される。従って、(3)式は、以下の(4)式及び(4)'式で表される。
PB=FA・D2・D5・cosθ/(AB・D3・D4)・・・(4)
FA=PB・AB・D3・D4/(D2・D5・cosθ)・・・(4)'
ここで、機体が浮き上がる際の、ブームシリンダ7のロッド7Cを引っ張り出そうとする力FBを力FBMAXとすると、重力M・gが機体を浮き上がらせないようにする回転中心RC周りの第1の力のモーメントの大きさと、力FBMAXが機体を浮き上がらせようとする回転中心RC周りの第3の力のモーメントの大きさとはつり合うものと考えられる。この場合、それら2つの力のモーメントの大きさの関係は以下の(5)式で表される。
M・g・D1=FBMAX・D3・・・(5)
また、このときのブームロッド圧PBを、機体の浮き上がりを防止するために用いる許容最大ブームロッド圧(以下、「第1許容最大圧力」とする。)PBMAXとすると、第1許容最大圧力PBMAXは、以下の(6)式で表される。
PBMAX=M・g・D1/(AB・D3)・・・(6)
また、距離D1は定数であり、距離D2〜D5は、掘削角度θと同様、掘削アタッチメントの姿勢、すなわち、ブーム角度θ1、アーム角度θ2、及びバケット角度θ3に応じて決まる値である。具体的には、距離D2は、ブーム角度θ1、アーム角度θ2、及びバケット角度θ3に応じて決まり、距離D3は、ブーム角度θ1に応じて決まり、距離D4は、バケット角度θ3に応じて決まり、距離D5は、アーム角度θ2に応じて決まる。
その結果、許容最大圧力算出部302は、姿勢検出部301が検出するブーム角度θ1と(6)式とを用いて第1許容最大圧力PBMAXを算出することができる。
また、再生弁制御部303は、ブームロッド圧PBを第1許容最大圧力PBMAX以下の所定圧力に維持することによってショベルの機体の浮き上がりを防止することができる。具体的には、再生弁制御部303は、ブームロッド圧PBが所定圧力に達した場合に、ロッド側油室7Rからボトム側油室7Bに流出する作動油の流量を増大させ、ブームロッド圧PBを低下させる。ブームロッド圧PBの低下は、(4)'式が示すように、アーム推力FAの低下をもたらし、更には、(2)'式が示すように、掘削反力FRの低下、ひいてはその鉛直成分FR1の低下をもたらすためである。
また、回転中心RCの位置は、旋回角度センサ32Dの出力に基づいて決定される。例えば、下部走行体1と上部旋回体3との間の旋回角度が0度の場合には、下部走行体1が接地面と接触する部分のうちの後端が回転中心RCとなり、下部走行体1と上部旋回体3との間の旋回角度が180度の場合には、下部走行体1が接地面と接触する部分のうちの前端が回転中心RCとなる。また、下部走行体1と上部旋回体3との間の旋回角度が90度又は270度の場合には、下部走行体1が接地面と接触する部分のうちの側端が回転中心RCとなる。
次に、掘削作業中に機体が掘削地点のほうに引き摺られるのを防止するための制御に関するパラメータについて説明する。
掘削作業中に機体を水平方向に動かそうとする力の関係は、以下の(7)式で表される。
μ・N≧FR2・・・(7)
なお、静止摩擦係数μは、ショベルの接地面の静止摩擦係数を表し、垂直抗力Nは、ショベルの重力M・gに対する垂直抗力を表し、力FR2は、ショベルを掘削地点のほうに引き摺ろうとする掘削反力FRの水平成分FR2を表す。また、摩擦力μ・Nは、ショベルを静止させようとする最大静止摩擦力を表し、掘削反力FRの水平成分FR2が最大静止摩擦力μ・Nを上回ると、ショベルは、掘削地点のほうに引き摺られる。なお、静止摩擦係数μは、ROM等に予め記憶される値であってもよく、各種情報に基づいて動的に算出されるものであってもよい。本実施例では、静止摩擦係数μは、入力装置(図示せず。)を介して操作者が選択する予め記憶された値である。操作者は、接地面の状態に応じて複数レベルの摩擦状態(静止摩擦係数)から所望の摩擦状態(静止摩擦係数)を選択する。
ここで、掘削反力FRの水平成分FR2は、FR2=FR・sinθで表され、また、(2)'式より、掘削反力FRは、FR=FA・D5/D4で表されるため、(7)式は、以下の(8)式で表される。
μ・M・g≧FA・D5・sinθ/D4・・・(8)
また、図3のY−Y断面図で示すように、アームシリンダ8のボトム側油室8Bに面するピストンの円状受圧面積を面積AAとし、ボトム側油室8Bにおける作動油の圧力をアームボトム圧PAとし、アームシリンダ8のロッド側油室8Rに面するピストンの円状受圧面積を面積AA2とし、ロッド側油室8Rにおける作動油の圧力をアームロッド圧PA2とすると、アーム推力FAは、FA=PA・AA−PA2・AA2で表される。但し、PA≫PA2のため、アーム推力FAは、FA=PA・AAで表される。そのため、(8)式は、以下の(9)式で表される。
PA≦μ・M・g・D4/(AA・D5・sinθ)・・・(9)
ここで、(9)式の右辺と左辺が等しいときのアームボトム圧PAは、機体が掘削地点のほうに引き摺られるのを回避可能な許容最大アームボトム圧、すなわち、機体が掘削地点のほうに引き摺られるのを防止するために用いる許容最大アームボトム圧(以下、「第2許容最大圧力」とする。)PAMAXに相当する。
以上の関係より、許容最大圧力算出部302は、姿勢検出部301が検出するブーム角度θ1、アーム角度θ2、及びバケット角度θ3と、(9)式とを用いて第2許容最大圧力PAMAXを算出することができる。
また、再生弁制御部303は、アームボトム圧PAを第2許容最大圧力PAMAX以下の所定圧力に維持することによってショベルの機体が掘削地点のほうに引き摺られるのを防止することができる。具体的には、再生弁制御部303は、アームボトム圧PAが所定圧力に達した場合に、第1ポンプ14Lからボトム側油室8Bに流入する作動油の流量を減少させ、アームボトム圧PAを低下させる。ロッド側油室8Rとボトム側油室8Bとを接続する油路に再生弁が配置されている場合には、再生弁制御部303は、アームボトム圧PAが所定圧力に達したときに、ボトム側油室8Bからロッド側油室8Rに流出する作動油の流量を増大させ、アームボトム圧PAを低下させてもよい。アームボトム圧PAの低下は、アーム推力FAの低下をもたらし、更には、掘削反力FRの水平成分FR2の低下をもたらすためである。
次に、図4を参照し、図1のショベルに搭載される油圧回路の構成例について説明する。図4は、図1のショベルに搭載される油圧回路の構成例を示す図である。図4の例では、駆動系は、第1ポンプ14L、第2ポンプ14R、コントロールバルブ17、及び、油圧アクチュエータを含む。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、及び、旋回用油圧モータ21を含む。また、油圧アクチュエータは、左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rを含んでいてもよい。
旋回用油圧モータ21は、上部旋回体3を旋回させる油圧モータであり、ポート21L、21Rがそれぞれリリーフ弁22L、22Rを介して作動油タンクTに接続され、且つ、チェック弁23L、23Rを介して作動油タンクTに接続されている。
第1ポンプ14Lは、作動油タンクTから作動油を吸い込んで吐出する。第1ポンプ14Lはレギュレータ14ALに接続される。レギュレータ14ALは、コントローラ30からの指令に応じて第1ポンプ14Lの斜板傾転角を変更して第1ポンプ14Lの押し退け容積(1回転当たりの吐出量)を制御する。第2ポンプ14Rに関するレギュレータ14ARについても同様である。第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rは図2のメインポンプ14に対応し、レギュレータ14AL、14ARは図2のレギュレータ14Aに対応する。
第1ポンプ14L、第2ポンプ14Rは、センターバイパス管路40L、40R、パラレル管路42L、42R、戻り管路43L、43R、43Cを経て作動油タンクTまで作動油を循環させる。
センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された流量制御弁170、172L、及び173Lを通る作動油ラインである。センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された流量制御弁171、172R、及び173Rを通る作動油ラインである。
パラレル管路42Lは、センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。パラレル管路42Lは、流量制御弁170又は流量制御弁172Lによってセンターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の流量制御弁に作動油を供給する。パラレル管路42Rは、センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。パラレル管路42Rは、流量制御弁171又は流量制御弁172Rによってセンターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の流量制御弁に作動油を供給する。
戻り管路43Lは、センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。戻り管路43Lは、油圧アクチュエータから流量制御弁170、172L、173Lを通って流れる作動油を戻り管路43Cに流通させる。戻り管路43Rは、センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。戻り管路43Rは、油圧アクチュエータから流量制御弁171、172R、173Rを通って流れる作動油を戻り管路43Cに流通させる。
センターバイパス管路40L、40Rは、最も下流にある流量制御弁173L、173Rのそれぞれと作動油タンクTとの間にネガティブコントロール絞り18L、18R及びリリーフ弁19L、19Rを備える。第1ポンプ14L、第2ポンプ14Rが吐出した作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rで制限される。そして、ネガティブコントロール絞り18L、18Rは、レギュレータ14AL、14ARを制御するための制御圧(ネガコン圧)を発生させる。リリーフ弁19L、19Rは、ネガコン圧が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、センターバイパス管路40L、40Rの作動油を作動油タンクTに排出する。
戻り管路43Cの最下流にはバネ付きチェック弁20が設置されている。バネ付きチェック弁20は、旋回用油圧モータ21と戻り管路43Cとを繋ぐ管路44内の作動油の圧力を高める機能を果たす。この構成により、旋回減速時における旋回用油圧モータ21の吸い込み側ポートに確実に作動油を補給してキャビテーションの発生を防止する。
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。本実施例では、コントロールバルブ17は、流量制御弁170、171、172L、172R、173L、173Rと、センターバイパス管路40L、40R、パラレル管路42L、42R、及び、戻り管路43L、43Rを含む鋳造部品である。
流量制御弁170、171、172L、172R、173L、及び173Rは、油圧アクチュエータに流出入する作動油の向き及び流量を制御する弁である。図4の例では、流量制御弁170、171、172L、172R、173L、及び173Rのそれぞれは、対応する操作装置26が生成するパイロット圧を左右何れかのパイロットポートで受けて動作する3ポート3位置のスプール弁である。操作装置26は、操作量(操作角度)に応じて生成したパイロット圧を、操作方向に対応する側のパイロットポートに作用させる。
具体的には、流量制御弁170は、旋回用油圧モータ21に流出入する作動油の向き及び流量を制御するスプール弁であり、流量制御弁171は、バケットシリンダ9に流出入する作動油の向き及び流量を制御するスプール弁である。
流量制御弁172L、172Rは、ブームシリンダ7に流出入する作動油の向き及び流量を制御するスプール弁であり、流量制御弁173L、173Rは、アームシリンダ8に流出入する作動油の向き及び流量を制御するスプール弁である。
再生弁V1は、コントローラ30からの指令に応じて開口の大きさを調整して流量を制御する弁であり、第1油路C1に設けられている。第1油路C1は、第2油路C2と第3油路C3を接続している。第2油路C2は、ブームシリンダ7のロッド側油室7Rと流量制御弁172L、172Rとを接続している。第3油路C3は、ブームシリンダ7のボトム側油室7Bと流量制御弁172L、172Rとを接続している。図4の例では、再生弁V1は、コントロールバルブ17の外部に配置されたブーム再生弁であり、第2油路C2と第3油路C3との間の連通・遮断を切り替え可能な1ポート2位置の電磁比例弁である。具体的には、再生弁V1は、第1弁位置にある場合に第2油路C2と第3油路C3との間を最大開口で連通させ、第2弁位置にある場合にその連通を遮断できる。また、再生弁V1は、第1弁位置と第2弁位置の間の任意の弁位置に留まることができる。再生弁V1の開口面積は、第1弁位置に近いほど大きい。再生弁V1は、流量制御弁と同様に、コントロールバルブ17の内部に配置されていてもよい。この場合、第1油路C1もコントロールバルブ17の内部に配置される。
コントローラ30は、例えば、ブームロッド圧が所定圧力に達したことを検知すると、再生弁V1に指令を出力する。指令を受けた再生弁V1は第2弁位置から第1弁位置に向かって変位し、第2油路C2と第3油路C3との間を連通させる。
図4の例では、再生弁V1は、アーム再生弁V1aを更に含む。アーム再生弁V1aは、アームシリンダ8のロッド側油室8Rとボトム側油室8Bとを接続する第1油路C1aに配置される電磁比例弁である。アーム再生弁V1aは、例えば、コントローラ30からの制御電流に応じて第1油路C1aの流路面積を制御する。アーム再生弁V1aは、ロッド側油室8Rとボトム側油室8Bとの間の双方向の作動油の流れを許容する。すなわち、チェック弁を含んでいない。また、アーム再生弁V1aは、コントロールバルブ17の外部に配置されている。そのため、コントロールバルブ17内のスプール弁の動きとは独立して制御される。
具体的には、第1油路C1aは、第2油路C2aと第3油路C3aを接続している。第2油路C2aは、アームシリンダ8のロッド側油室8Rと流量制御弁173L、173Rとを接続している。第3油路C3aは、アームシリンダ8のボトム側油室8Bと流量制御弁173L、173Rとを接続している。図4の例では、アーム再生弁V1aは、第2油路C2aと第3油路C3aとの間の連通・遮断を切り替え可能な1ポート2位置の電磁比例弁である。具体的には、アーム再生弁V1aは、第1弁位置にある場合に第2油路C2aと第3油路C3aとの間を最大開口で連通させ、第2弁位置にある場合にその連通を遮断できる。また、アーム再生弁V1aは、第1弁位置と第2弁位置の間の任意の弁位置に留まることができる。アーム再生弁V1aの開口面積は、第1弁位置に近いほど大きい。アーム再生弁V1aは、流量制御弁と同様に、コントロールバルブ17の内部に配置されていてもよい。この場合、第1油路C1aもコントロールバルブ17の内部に配置される。
次に、図5を参照して、コントローラ30がショベルの機体の浮き上がりを防止しながら掘削作業を支援する処理(以下、「第1支援処理」とする。)について説明する。なお、図5は、第1支援処理の流れを示すフローチャートであり、コントローラ30は、所定周期で繰り返しこの第1支援処理を実行する。
最初に、コントローラ30の掘削操作検出部300は、掘削操作中であるか否かを判定する(ステップS1)。
コントローラ30は、例えば、操作圧センサ29の出力に基づいてアーム閉じ操作中であることを検出する。そして、アーム閉じ操作中であることを検出した場合、掘削操作検出部300は、アームボトム圧とアームロッド圧の圧力差を算出する。そして、掘削操作検出部300は、算出した圧力差が所定値以上の場合に、掘削操作中(アーム掘削操作中)であると判定する。
或いは、コントローラ30は、操作圧センサ29の出力に基づいてブーム上げ操作中であることを検出する。そして、ブーム上げ操作中であることを検出した場合、掘削操作検出部300は、ブームロッド圧を取得する。また、掘削操作検出部300は、アームボトム圧とアームロッド圧の圧力差を算出する。そして、掘削操作検出部300は、ブームロッド圧が所定値以上であり、且つ、算出した圧力差が所定値以上の場合に、掘削操作中(ブーム上げ複合掘削操作中)であると判定する。
掘削操作中でないと判定した場合(ステップS1のNO)、掘削操作検出部300は、今回の第1支援処理を終了させる。
一方、掘削操作検出部300が掘削操作中であると判定した場合(ステップS1のYES)、姿勢検出部301は、ショベルの姿勢を検出する(ステップS2)。具体的には、姿勢検出部301は、アーム角度センサ、ブーム角度センサ及びバケット角度センサの出力に基づいて、ブーム角度θ1、アーム角度θ2、及びバケット角度θ3を検出する。掘削アタッチメントに作用する力の作用線と所定の回転中心との間の距離をコントローラ30の許容最大圧力算出部302が導出できるようにするためである。
その後、許容最大圧力算出部302は、姿勢検出部301の検出値に基づいて、第1許容最大圧力PBMAXを算出する(ステップS3)。具体的には、許容最大圧力算出部302は、上述の(6)式を用いて第1許容最大圧力PBMAXを算出する。
その後、許容最大圧力算出部302は、算出した第1許容最大圧力PBMAX以下の所定圧力を目標ブームロッド圧PBTとして設定する(ステップS4)。具体的には、許容最大圧力算出部302は、第1許容最大圧力PBMAXから所定値を差し引いた後の値を目標ブームロッド圧PBTとして設定する。
その後、コントローラ30の再生弁制御部303は、ショベルの機体の安定度に関する所定の条件である制御開始条件が満たされているか否かを判定する(ステップS5)。例えば、再生弁制御部303は、ブームロッド圧PBが目標ブームロッド圧PBTに達した場合に制御開始条件が満たされたと判定する。ブームロッド圧PBがこのまま上昇し続ければショベルの機体が浮き上がるおそれがあると判断できるためである。
制御開始条件が満たされていると判定した場合(ステップS5のYES)、例えば、ブームロッド圧PBが目標ブームロッド圧PBTに達した場合、再生弁制御部303は、再生弁V1(ブーム再生弁)を制御してブームロッド圧PBを低減させる(ステップS6)。具体的には、再生弁制御部303は、再生弁V1に対して制御電流を供給し、再生弁V1の開口面積を増大させる。第1油路C1の流路面積を増大させるためである。そして、再生弁制御部303は、ロッド側油室7Rからボトム側油室7Bに作動油を流すことによって、ブームロッド圧PBを低減させる。このとき、ブームロッド圧センサの出力に基づいてブームロッド圧PBをフィードバック制御してもよい。その結果、ブームシリンダ7が伸張することで掘削反力FRの鉛直成分FR1が減少し、ショベルの機体の浮き上がりが防止される。
なお、ステップS5において、制御開始条件が満たされていないと判定した場合(ステップS5のNO)、例えば、ブームロッド圧PBが目標ブームロッド圧PBT未満に留まる場合、再生弁制御部303は、ブームロッド圧PBを低減させることなく、今回の第1支援処理を終了させる。ショベルの機体が浮き上がるおそれがないためである。
以上の構成により、コントローラ30は、パイロット圧に影響を与えることなく、掘削作業中にショベルの機体が浮き上がるのを防止できる。そのため、ショベルの機体が浮き上がる寸前のところでの、機体重量を効率的に利用した掘削作業を実現できる。また、浮き上がったショベルの姿勢を元に戻すための操作を不要にする等、作業効率を向上させることができ、ひいては、燃費の低減、機体故障の防止、操作者の操作負担の軽減を実現できる。
また、コントローラ30は、再生弁V1の開口面積を自動的に制御してブームロッド圧PBを低減させる。すなわち、操作者によるブーム操作レバーの操作とは無関係にブームロッド圧PBを低減させる。そのため、操作者は、ブーム操作レバーを微操作して機体の浮き上がりを防止する必要はない。
また、コントローラ30は、ロッド側油室7Rとボトム側油室7Bとの間で作動油を移動させるため、ロッド側油室7Rからリリーフ弁等を通じて作動油タンクTに作動油を排出する構成に比べ、無駄に作動油タンクTに排出されてしまう作動油の量を減らすことできる。
また、例えばショベルの非操作時に異常な制御電流等に起因して再生弁V1が開いたままになってしまったとしても、アタッチメントの自重等によるブームシリンダ7の収縮は、ブームシリンダ7を伸張させようとする力と収縮させようとする力がつり合った時点で止まる。ロッド側油室7R及びボトム側油室7B以外に作動油が流出しないためである。そのため、ボトム側油室7Bと作動油タンクTとを繋ぐ油路に電磁リリーフ弁が配置されている構成においてその電磁リリーフ弁が開いたままになってしまったときのようにブームシリンダ7を過度に収縮させてしまうこともない。
次に、図6を参照し、アーム掘削作業中における各種物理量の時間的推移について説明する。図6は、アーム掘削作業中におけるアームボトム圧PA、ブームロッド圧PB、機体傾斜角度、及び、ブームシリンダストローク量のそれぞれの時間的推移を示す図である。図6の実線は第1支援処理が実行されるときの推移を表し、図6の点線は第1支援処理が実行されないときの推移を表す。図6の例では、操作者は、アーム閉じ操作のみによってアーム掘削作業を行っている。
時刻t1においてバケット6が地面と接触した後の時刻t2において、アームボトム圧PAは比較的急激に増大する。アーム掘削作業が進むにつれて掘削負荷が急増するためである。
その後、時刻t3において、ブームロッド圧PBは、アームボトム圧PAの急激な増大に僅かに遅れ、アームボトム圧PAと同様に、比較的急激に増大する。
その後、時刻t4において、ブームロッド圧PBが目標ブームロッド圧PBTに達すると、第1支援処理を利用できる場合には、コントローラ30は、再生弁V1に対して制御電流を供給し、再生弁V1の開口面積を増大させる。その結果、ブームロッド圧PBは、実線で示すように、目標ブームロッド圧PBTを維持するように推移する。このとき、コントローラ30は、ブームロッド圧PBの変動に応じて再生弁V1の開口面積を増減させることでブームロッド圧PBが目標ブームロッド圧PBTで維持されるようにする。具体的には、コントローラ30は、ブームロッド圧PBが目標ブームロッド圧PBTを上回ったときに再生弁V1の開口面積を増大させ、ブームロッド圧PBが目標ブームロッド圧PBTを下回ったときに再生弁V1の開口面積を低減させる。
そのため、ブームシリンダストローク量は、時刻t4において増大し始め、その後も比較的緩やかに増大していく。すなわち、ブーム4が緩やかに上昇していく。アーム5を閉じる際に掘削反力が増大してブームロッド圧PBが目標ブームロッド圧PBTを上回る度に再生弁V1の開口面積が大きくなりロッド側油室7Rからボトム側油室7Bに作動油が流れるためである。
その結果、機体傾斜角度は大きく変動することなくそのままの状態で推移する。すなわち、ショベルの機体が浮き上がることはない。
一方、第1支援処理を利用しない場合には、コントローラ30は、ブームロッド圧PBが目標ブームロッド圧PBTに達しても、再生弁V1の開口面積を増大させることはない。その結果、ブームロッド圧PBは、点線で示すように、時刻t5においてショベルの機体が浮き上がるまで目標ブームロッド圧PBTを超えて増大し続ける。ショベルの機体が浮き上がると、ブームロッド圧PBの更なる増大が抑制される。機体の浮き上がりによって掘削負荷の更なる増大が抑制されるためである。
ブームシリンダストローク量は、点線で示すように、時刻t4以降もそのままの状態で維持される。すなわち、ブームシリンダ7は伸張しない。一方、機体傾斜角度は、点線で示すように、時刻t5において増大し始め、その後も比較的緩やかに増大していく。ショベルの機体が浮き上がるためである。
このように、コントローラ30は、ブームロッド圧PBが目標ブームロッド圧PBTに達したときに再生弁V1を開くことで、ショベルの機体が浮き上がるのを防止できる。
また、コントローラ30は、ブームシリンダ7に関する操作とは無関係に再生弁V1を制御できる。具体的には、アーム掘削作業中において、操作者がブーム操作レバーを操作していない場合であっても、必要に応じて再生弁V1を開くことでブームシリンダ7の伸張を許容し、ブームロッド圧を下げてショベルの機体が浮き上がるのを防止できる。
次に図7を参照し、図1のショベルに搭載される油圧回路の別の構成例について説明する。図7は、図1のショベルに搭載される油圧回路の別の構成例を示す図である。図7の油圧回路は、主に、コントロールバルブ17が可変ロードチェック弁51〜53、合流弁55、及び、統一ブリードオフ弁56L、56Rを含む点で図4の油圧回路と異なるが、その他の点で共通する。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳細に説明する。
可変ロードチェック弁51〜53は、コントローラ30からの指令に応じて動作する。図7の例では、可変ロードチェック弁51〜53は、流量制御弁171〜173のそれぞれと第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rのうちの少なくとも一方との間の連通・遮断を切り替え可能な1ポート2位置の電磁弁である。なお、可変ロードチェック弁51〜53は、第1位置において、ポンプ側に戻る作動油の流れを遮断するチェック弁を有する。具体的には、可変ロードチェック弁51は、第1位置にある場合に流量制御弁171と第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rのうちの少なくとも一方との間を連通させ、第2位置にある場合にその連通を遮断する。可変ロードチェック弁52及び可変ロードチェック弁53についても同様である。
合流弁55は、第1ポンプ14Lが吐出する作動油(以下、「第1作動油」とする。)と第2ポンプ14Rが吐出する作動油(以下、「第2作動油」とする。)とを合流させるか否かを切り替える。図7の例では、合流弁55は、1ポート2位置の電磁弁であり、コントローラ30からの指令に応じて動作する。具体的には、合流弁55は、第1位置にある場合に第1作動油と第2作動油とを合流させ、第2位置にある場合に第1作動油と第2作動油とを合流させないようにする。
統一ブリードオフ弁56L、56Rは、コントローラ30からの指令に応じて動作する。図7の例では、統一ブリードオフ弁56Lは、第1作動油の作動油タンクTへの排出量を制御可能な1ポート2位置の電磁弁である。統一ブリードオフ弁56Rについても同様である。この構成により、統一ブリードオフ弁56L、56Rは、流量制御弁170〜173のうちの関連する流量制御弁の合成開口を実現できる。具体的には、合流弁55が第2位置にある場合に、統一ブリードオフ弁56Lは流量制御弁170及び流量制御弁173の合成開口を実現でき、統一ブリードオフ弁56Rは流量制御弁171及び流量制御弁172の合成開口を実現できる。統一ブリードオフ弁56Lは、第1位置にある場合にコントローラ30からの指令に応じてその合成開口の開口面積を調整する可変絞りとして機能し、第2位置にある場合にその合成開口を遮断する。統一ブリードオフ弁56Rについても同様である。
可変ロードチェック弁51〜53、合流弁55、及び、統一ブリードオフ弁56L、56Rのそれぞれは、パイロット圧駆動のスプール弁であってもよい。
次に、図8を参照して、図7の油圧回路を搭載するショベルのコントローラ30が、ショベルの機体が掘削地点のほうに引き摺られるのを防止しながらアーム掘削作業を支援する処理(以下、「第2支援処理」とする。)について説明する。なお、図8は、第2支援処理の流れを示すフローチャートであり、コントローラ30は、所定周期で繰り返しこの第2支援処理を実行する。
最初に、コントローラ30の掘削操作検出部300は、アーム閉じ操作を含むアーム掘削操作中であるか否かを判定する(ステップS11)。具体的には、掘削操作検出部300は、操作圧センサ29の出力に基づいてアーム閉じ操作中であることを検出する。そして、アーム閉じ操作中であることを検出した場合、掘削操作検出部300は、アームボトム圧とアームロッド圧の圧力差を算出する。そして、掘削操作検出部300は、算出した圧力差が所定値以上の場合にアーム掘削操作中であると判定する。
アーム掘削操作中でないと判定した場合(ステップS11のNO)、掘削操作検出部300は、今回の第2支援処理を終了させる。
一方、掘削操作検出部300がアーム掘削操作中であると判定した場合(ステップS11のYES)、姿勢検出部301は、ショベルの姿勢を検出する(ステップS12)。
その後、許容最大圧力算出部302は、姿勢検出部301の出力に基づいて、第2許容最大圧力を算出する(ステップS13)。具体的には、許容最大圧力算出部302は、上述の(9)式を用いて第2許容最大圧力PAMAXを算出する。
その後、許容最大圧力算出部302は、算出した第2許容最大圧力PAMAX以下の所定圧力を目標アームボトム圧PATとして設定する(ステップS14)。本実施例では、許容最大圧力算出部302は、第2許容最大圧力PAMAXを目標アームボトム圧PATとして設定する。
その後、コントローラ30の再生弁制御部303は、ショベルの機体の安定度に関する所定の条件である制御開始条件が満たされているか否かを判定する(ステップS15)。例えば、再生弁制御部303は、アームボトム圧PAが目標アームボトム圧PATに達した場合に制御開始条件が満たされたと判定する。アームボトム圧PAがこのまま上昇し続ければショベルの機体が掘削地点のほうに引き摺られるおそれがあると判断できるためである。
制御開始条件が満たされていると判定した場合(ステップS15のYES)、例えば、アームボトム圧PAが目標アームボトム圧PATに達した場合、再生弁制御部303は、アーム再生弁V1aを制御してアームボトム圧PAとアームロッド圧PA2との差圧を低減させることでアーム推力FAを低減させる(ステップS16)。具体的には、再生弁制御部303は、アーム再生弁V1aに対して制御電流を供給し、アーム再生弁V1aを開いてその開口面積を増大させる。第1油路C1aの流路面積を増大させるためである。そして、流量制御弁173のCTポート(シリンダ・タンクポート)の開口が大きい場合には、再生弁制御部303は、ボトム側油室8Bから作動油を流出させることによって、アームボトム圧PAを低減させる。その結果、アームシリンダ8の伸張が抑制され或いは停止されることで掘削反力FRの水平成分FR2が減少し或いは消失し、ショベルの機体が掘削地点のほうに引き摺られるのが防止される。
また、流量制御弁173のCTポートの開口が小さい場合であっても、再生弁制御部303は、ロッド側油室8Rへ作動油を流入させることによって、アームロッド圧PA2を上昇させ、アームボトム圧PAとアームロッド圧PA2との差圧を低減させる。その結果、アームシリンダ8の伸張が抑制され或いは停止されることで掘削反力FRの水平成分FR2が減少し或いは消失し、ショベルの機体が掘削地点のほうに引き摺られるのが防止される。
このように、アームシリンダ8から排出される作動油は、流量制御弁173のシリンダ・タンクポートの開口の大きさに応じて、排出される側の油室とは反対側の油室へ供給され、若しくは、タンクへ排出される。その結果、アームシリンダ8の伸張が抑制され或いは停止されることでショベルの機体が掘削地点のほうに引き摺られるのが防止される。
ステップS15において、制御開始条件が満たされていないと判定した場合(ステップS15のNO)、例えば、アームボトム圧PAが目標アームボトム圧PAT未満に留まる場合、再生弁制御部303は、アームボトム圧PAを低減させることなく、今回の第2支援処理を終了させる。ショベルの機体が引き摺られるおそれがないためである。
以上の構成により、コントローラ30は、パイロット圧に影響を与えることなく、アーム掘削作業中にショベルの機体が掘削地点のほうに引き摺られるのを防止することができる。そのため、ショベルの機体が引き摺られる寸前のところでの、機体重量を効率的に利用したアーム掘削作業を実現できる。また、引き摺られたショベルの姿勢を元に戻すための操作を不要にする等、作業効率を向上させることができ、ひいては、燃費の低減、機体故障の防止、操作者の操作負担の軽減を実現できる。
また、コントローラ30は、ロッド側油室8Rとボトム側油室8Bとの間で作動油を移動させるため、ボトム側油室8Bからリリーフ弁等を通じて作動油タンクTに作動油を排出する構成に比べ、管路等における圧力損失を抑制できる。また、アーム再生弁V1aが開いたままになってしまったとしても、アームシリンダ8を伸張させようとする力と収縮させようとする力がつり合った時点でアームシリンダ8の伸縮が止まるため、リリーフ弁が開いたままになってしまったときのようにアームシリンダ8を過度に伸縮させることもない。
次に、図9を参照して、図7の油圧回路を搭載するショベルのコントローラ30が、ショベルの機体が浮き上がること、及び、ショベルの機体が掘削地点のほうに引き摺られることを防止しながら掘削作業を支援する処理(以下、「第3支援処理」とする。)について説明する。図9は、第3支援処理の流れを示すフローチャートであり、コントローラ30は、所定周期で繰り返しこの第3支援処理を実行する。
最初に、コントローラ30の掘削操作検出部300は、ブーム上げ操作及びアーム閉じ操作を含む複合掘削操作中であるか否かを判定する(ステップS21)。具体的には、掘削操作検出部300は、操作圧センサ29の出力に基づいてブーム上げ操作中であることを検出する。そして、ブーム上げ操作中であることを検出した場合、掘削操作検出部300は、ブームロッド圧を取得する。また、掘削操作検出部300は、アームボトム圧とアームロッド圧の圧力差を算出する。そして、掘削操作検出部300は、ブームロッド圧が所定値以上であり、且つ、算出した圧力差が所定値以上の場合に、複合掘削操作中であると判定する。
複合掘削操作中でないと判定した場合(ステップS21のNO)、掘削操作検出部300は、今回の第3支援処理を終了させる。
一方、掘削操作検出部300が複合掘削操作中であると判定した場合(ステップS21のYES)、姿勢検出部301は、ショベルの姿勢を検出する(ステップS22)。
その後、許容最大圧力算出部302は、姿勢検出部301の検出値に基づいて、第1許容最大圧力及び第2許容最大圧力を算出する(ステップS23)。具体的には、許容最大圧力算出部302は、上述の(6)式を用いて第1許容最大圧力PBMAXを算出し、且つ、上述の(9)式を用いて第2許容最大圧力PAMAXを算出する。
その後、許容最大圧力算出部302は、算出した第1許容最大圧力PBMAX以下の所定圧力を目標ブームロッド圧PBTとして設定する(ステップS24)。
その後、コントローラ30の再生弁制御部303は、ショベルの機体の安定度に関する所定の条件である制御開始条件が満たされているか否かを判定する(ステップS25)。例えば、再生弁制御部303は、ブームロッド圧PBが目標ブームロッド圧PBTに達した場合に制御開始条件が満たされたと判定する。ここでは、制御開始条件である所定の条件が満たされたか否かは、ブームロッド圧PBを用いて判定されているが、掘削反力の鉛直成分の大きさが予め定められた条件を満たしたか否かに基づいて判定されてもよい。このように、鉛直成分に寄与するパラメータに基づいて浮き上がりの防止に関する判定が行われてもよい。
制御開始条件が満たされていると判定した場合(ステップS25のYES)、例えば、ブームロッド圧PBが目標ブームロッド圧PBTに達した場合、再生弁制御部303は、再生弁V1(ブーム再生弁)を制御してブームロッド圧PBを低減させる(ステップS26)。具体的には、再生弁制御部303は、再生弁V1に対して制御電流を供給し、再生弁V1を開いてその開口面積を増大させる。第1油路C1の流路面積を増大させるためである。そして、再生弁制御部303は、ロッド側油室7Rから作動油を流出させることによって、ブームロッド圧PBを低減させる。その結果、ブームシリンダ7が伸張することで掘削反力FRの鉛直成分FR1が減少し、ショベルの機体の浮き上がりが防止される。
その後、コントローラ30の再生弁制御部303は、ブームロッド圧PBの監視を継続する。そして、再生弁V1の開口面積を増大させたにもかかわらずブームロッド圧PBが更に上昇して第1許容最大圧力PBMAXに達した場合(ステップS27のYES)、再生弁制御部303は、アーム再生弁V1aを制御してアームボトム圧PAを低減させる(ステップS28)。具体的には、再生弁制御部303は、アーム再生弁V1aに対して制御電流を供給し、アーム再生弁V1aを開いてその開口面積を増大させる。第1油路C1aの流路面積を増大させるためである。そして、再生弁制御部303は、ボトム側油室8Bから作動油を流出させることによって、アームボトム圧PAを低減させる。その結果、アームシリンダ8の伸張が抑制され或いは停止されることで掘削反力FRの鉛直成分FR1が減少し或いは消失し、ショベルの機体の浮き上がりが防止される。
ステップS25において、制御開始条件が満たされていないと判定した場合(ステップS25のNO)、例えば、ブームロッド圧PBが目標ブームロッド圧PBT未満に留まる場合、コントローラ30は、ブームロッド圧PBを低減させることなく、処理をステップS29に進める。ショベルの機体を浮き上がらせるおそれがないためである。
同様に、ステップS27において、ブームロッド圧PBが第1許容最大圧力PBMAX未満に留まる場合(ステップS27のNO)、コントローラ30は、アームボトム圧PAを低減させることなく、処理をステップS29に進める。ショベルの機体を浮き上がらせるおそれがないためである。
その後、ステップS29において、許容最大圧力算出部302は、算出した第2許容最大圧力PAMAX以下の所定圧力を目標アームボトム圧PATとして設定する。具体的には、許容最大圧力算出部302は、第2許容最大圧力PAMAXを目標アームボトム圧PATとして設定する。
その後、コントローラ30の再生弁制御部303は、別の制御開始条件が満たされているか否かを判定する(ステップS30)。例えば、再生弁制御部303は、アームボトム圧PAが目標アームボトム圧PATに達した場合に別の制御開始条件が満たされたと判定する。
別の制御開始条件が満たされていると判定した場合(ステップS30のYES)、例えば、アームボトム圧PAが目標アームボトム圧PATに達した場合、再生弁制御部303は、アーム再生弁V1aを制御してアームボトム圧PAとアームロッド圧PA2との差圧を低減させることでアーム推力FAを低減させる(ステップS31)。具体的には、再生弁制御部303は、アーム再生弁V1aに対して制御電流を供給し、アーム再生弁V1aを開いてその開口面積を増大させる。第1油路C1aの流路面積を増大させるためである。そして、再生弁制御部303は、ボトム側油室8Bから作動油を流出させることによって、アームボトム圧PAを低減させる。その結果、アームシリンダ8の伸張が抑制され或いは停止されることで掘削反力FRの水平成分FR2が減少し或いは消失し、ショベルの機体が掘削地点のほうに引き摺られるのが防止される。
また、アームシリンダ8が収縮する際にも、例えば、アームロッド圧PA2が目標アームロッド圧PA2Tに達した場合、再生弁制御部303は、アーム再生弁V1aを制御してアームボトム圧PAとアームロッド圧PA2との差圧を低減させることでアーム推力FAを低減させることができる。この場合、アーム5が開き方向に回動する場合でも、ショベルが引き摺られるのを防止できる。ここでは、制御開始条件である所定の条件が満たされたか否かは、アームロッド圧PA2又はアームボトム圧Aを用いて判定されているが、掘削反力の水平成分の大きさが予め定められた条件を満たしたか否かに基づいて判定されてもよい。このように、水平成分に寄与するパラメータに基づいて引き摺られの防止に関する判定が行われてもよい。
ステップS30において、別の制御開始条件が満たされていないと判定した場合(ステップS30のNO)、例えば、アームボトム圧PAが目標アームボトム圧PAT未満に留まる場合、再生弁制御部303は、アームボトム圧PAを低減させることなく、今回の第3支援処理を終了させる。ショベルの機体が引き摺られるおそれがないためである。
また、ステップS24〜ステップS28におけるショベルの浮き上がりを防止するための一連の処理、及び、ステップS29〜ステップS31におけるショベルが引き摺られるのを防止するための一連の処理は順不同である。従って、2つの一連の処理は、同時並行で実行されてもよく、ショベルが引き摺られるのを防止するための一連の処理が、ショベルの浮き上がりを防止するための一連の処理に先行して実行されてもよい。
以上の構成により、コントローラ30は、パイロット圧に影響を与えることなく、掘削作業中にショベルの機体が浮き上がり或いは掘削地点のほうに引き摺られるのを防止できる。そのため、ショベルの機体が浮き上がり或いは引き摺られる寸前のところでの、機体重量を効率的に利用した複合掘削作業を実現できる。また、浮き上がった或いは引き摺られたショベルの姿勢を元に戻すための操作を不要にする等、作業効率を向上させることができ、ひいては、燃費の低減、機体故障の防止、操作者の操作負担の軽減を実現できる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施例に制限されることはない。上述した実施例は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形及び置換が適用され得る。また、上述の実施例を参照して説明された特徴のそれぞれは、技術的に矛盾しない限り、適宜に組み合わされてもよい。
例えば、上述の実施例では、許容最大圧力算出部302及び再生弁制御部303による演算は、ショベルの接地面が水平面であることを前提として行われる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。上述の実施例における各種演算は、ショベルの接地面が傾斜面であっても、傾斜角度センサの出力を追加的に考慮して適切に実行され得る。
コントローラ30は、バケット閉じ操作中における機体の浮き上がりを防止するように構成されてもよい。この場合、コントローラ30は、ブームロッド圧が目標ブームロッド圧PBTを上回った場合に再生弁V1を開く。また、コントローラ30は、バケット閉じ操作及びブーム上げ操作を含む複合掘削操作中における機体の浮き上がりを防止するように構成されてもよい。この場合、コントローラ30は、ブームロッド圧が目標ブームロッド圧PBTを上回った場合に再生弁V1を開く。そして、コントローラ30は、ブームロッド圧が第1許容最大圧力PBMAXに達した場合に、バケットシリンダ9のロッド側油室とボトム側油室を接続する第1油路に配置されたバケット再生弁を開く。このようにして、コントローラ30は、バケット閉じ操作及びブーム上げ操作を含む複合掘削操作中における機体の浮き上がりを防止してもよい。同様に、バケット再生弁を利用してショベルの機体が引き摺られるのを防止してもよい。
また、上述の実施例では、再生弁V1は、ロッド側油室7Rから作動油を流出させるために利用されているが、ボトム側油室7Bから作動油を流出させるために利用されてもよい。また、アーム再生弁V1aは、ボトム側油室8Bから作動油を流出させるために利用されているが、ロッド側油室8Rから作動油を流出させるために利用されてもよい。すなわち、コントローラ30は、アーム再生弁V1aを開いてアームシリンダ8のロッド側油室8Rからボトム側油室8Bに、若しくは、アームシリンダ8のボトム側油室8Bからロッド側油室8Rに、自重に応じて作動油が流れるようにしてもよい。バケット再生弁についても同様である。
また、上述の実施例では、ブームシリンダ7、アームシリンダ8等の油圧シリンダは、エンジン駆動のメインポンプ14が吐出する作動油によって動かされるが、電動モータ駆動の油圧ポンプが吐出する作動油によって動かされてもよい。
また、上述の構成は、油圧シリンダにより上下運動を行うフォークリフト、ホイールローダ等の他の建設機械に搭載されてもよい。