本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、下記一般式(I);
R1R2Si(NHR3)(OR4) (1)
(式中、R1は、炭素数3以上の分岐アルキル基または炭素数4以上のシクロアルキル基であり、R2は、炭素数1〜8の直鎖アルキル基または炭素数3〜8の分岐アルキル基であり、R3は、炭素数2〜6のアルキル基であり、R4は、炭素数1〜3の直鎖アルキル基であり、R1およびR2は互いに異なっている。)
で表わされる化合物を外部電子供与性化合物として含むことを特徴とするものである。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物中のR1基は、炭素数3以上の分岐アルキル基または炭素数4以上のシクロアルキル基である。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、R1基としては、炭素数3〜12の分岐アルキル基または炭素数4〜12のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数3〜10の分岐アルキル基または炭素数4〜10のシクロアルキル基であることがより好ましく、炭素数3〜8の分岐アルキル基または炭素数4〜6のシクロアルキル基であることがさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物中のR2基は、炭素数1〜8の直鎖アルキル基または炭素数3〜8の分岐アルキル基であり、炭素数1〜7の直鎖アルキル基または炭素数3〜7の分岐アルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6の直鎖アルキル基または炭素数3〜6の分岐アルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜4の直鎖アルキル基であることがさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を構成するアルキル基R1およびR2は互いに異なっている。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を構成するアルキル基の非対称性が重要なために、R1とR2は互いに異なる構造を有すること、例えば、R1がシクロアルキル基の場合はR2が直鎖または分岐アルキル基であり、R1が分岐アルキル基の場合はR2が直鎖アルキル基またはR1とは異なる構造の分岐アルキル基であることが好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を構成するアルキル基R1およびR2の組み合わせとしては、R1が炭素数3〜8の分岐アルキル基または炭素数4〜6のシクロアルキル基で、かつ、R2が炭素数1〜4の直鎖アルキル基である組み合わせが好ましく、R1がイソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基のいずれかであり、R2がメチル基、エチル基、n-プロピル基およびn−ブチル基のいずれかである組合せがより好ましい。
また、本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を構成するアルキル基R1およびR2の炭素数は異なることが好ましく、アルキル基R1とR2の炭素数の差が、1以上あることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を構成するアルキル基R1およびR2が、特定の置換基からなる互いに異なる構造を有するものであることにより、オレフィン類の重合に供したときに、広い分子量分布を有するオレフィン類重合体を容易に調製することができる。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物中のR3基は、炭素数2〜6のアルキル基であり、炭素数2〜6の直鎖アルキル基、炭素数3〜6の分岐アルキル基または炭素数4〜6のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数2〜4の直鎖アルキル基、炭素数3〜5の分岐アルキル基または炭素数5〜6のシクロアルキル基であることがより好ましく、炭素数2〜4の直鎖アルキル基、炭素数3〜4の分岐アルキル基または炭素数5〜6のシクロアルキル基であることがさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を構成するアルキル基R1およびR2が、適度な大きさを有するアルキル基であることによって、オレフィン類の重合時において、水素応答性が高く、かつ、触媒活性および得られる重合体の立体規則性のバランスが良好な重合性能を容易に発揮する事ができる。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を構成するアルキル基R4は、炭素数1〜3の直鎖アルキル基であり、炭素数1または2の直鎖アルキル基であることが好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物の具体例としては、t-ブチル-n-プロピル(n−エチルアミノ)メトキシシラン、t-ブチル-n-プロピル(n-プロピルアミノ)メトキシシラン、t-ブチル-n-プロピル(n-ブチルアミノ)メトキシシラン、t-ブチル-n-プロピル(sec-ブチルアミノ)メトキシシラン、t-ブチル-n-プロピル(シクロペンチルアミノ)メトキシシラン、t-ブチル-n-プロピル(シクロヘキシルアミノ)メトキシシラン、t-ブチルメチル(n-エチルアミノ)メトキシシラン、t-ブチルメチル(n-プロピルアミノ)メトキシシラン、t-ブチルメチル(n-ブチルアミノ)メトキシシラン、t-ブチルメチル(sec-ブチルアミノ)メトキシシラン、t-ブチルメチル(シクロペンチルアミノ)メトキシシラン、t-ブチルメチル(シクロヘキシルアミノ)メトキシシラン、t-ブチルエチル(n-エチルアミノ)メトキシシラン、t-ブチルエチル(n-プロピルアミノ)メトキシシラン、t-ブチルエチル(n-ブチルアミノ)メトキシシラン、t-ブチルエチル(sec-ブチルアミノ)メトキシシラン、t-ブチルエチル(シクロペンチルアミノ)メトキシシラン、t-ブチルエチル(シクロヘキシルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチル-n-プロピル(n-エチルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチル-n-プロピル(n-プロピルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチル-n-プロピル(n-ブチルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチル-n-プロピル(sec-ブチルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチル-n-プロピル(シクロヘキシルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチルメチル(n-エチルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチルメチル(n-プロピルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチルメチル(n-ブチルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチルメチル(sec-ブチルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチルメチル(シクロヘキシルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチルエチル(n-エチルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチルエチル(n-プロピルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチルエチル(n-ブチルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチルエチル(sec-ブチルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチルエチル(シクロペンチルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチルエチル(シクロヘキシルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシル-n-プロピル(n-エチルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシル-n-プロピル(n-プロピルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシル-n-プロピル(n-ブチルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシル-n-プロピル(sec-ブチルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシル-n-プロピル(シクロペンチルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシル-n-プロピル(シクロヘキシルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシルメチル(n-エチルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシルメチル(n-プロピルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシルメチル(n-ブチルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシルメチル(sec-ブチルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシルメチル(シクロヘキシルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシルエチル(n-エチルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシルエチル(n-プロピルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシルエチル(n-ブチルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシルエチル(sec-ブチルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシルエチル(シクロペンチルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシルエチル(シクロヘキシルアミノ)メトキシシラン等から選ばれる一種以上が挙げられる。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物としては、t-ブチル-n-プロピル(エチルアミノ)メトキシシラン、t-ブチルメチル(n-プロピルアミノ)メトキシシラン、t-ブチルエチル(n-プロピルアミノ)メトキシシラン、t-ブチル-nプロピル(n−プロピルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチル-n-プロピル(エチルアミノ)メトキシシラン、シクロペンチル-n-プロピル(n-プロピルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシル-n-プロピル(n-エチルアミノ)メトキシシラン、シクロヘキシル-n-プロピル(n-プロピルアミノ)メトキシシランから選ばれる一種以上が好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、上記一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物の含有割合は、通常オレフィン類重合用触媒中に含有される固体触媒成分中のチタン原子1モルあたり、1〜200モルであることが好ましく、2〜150モルであることがより好ましく、5〜100モルであることがさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、外部電子供与性化合物として、上記一般式(I)で表される特定の非対称な構造を有するジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を含むことにより、オレフィン類を重合した場合に、固体触媒の活性点に対し上記シラン化合物を構成するアルコキシ基とモノアルキルアミノ基(−NHR)の異なる吸着サイトが存在するとともに、上記シラン化合物を構成する2つのアルキル基の嵩高さが異なることから、吸着力、オレフィンモノマーの重合活性点への挿入し易さ、活性点の成長速度(Kp)、連鎖移動定数(Ktr)等が異なる活性点が形成されやすく、その結果、特に水素添加量の多い条件でのオレフィン重合において、重合活性を高水準で維持しつつ、得られる重合体の高立体規則性、高MFRおよび、広い分子量分布を全て同時にバランスよく満足し得ると考えられる。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、非対称構造を有する一般式(I)で表される特定のジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を外部電子供与性化合物として含むものであることにより、プロピレン等のα−オレフィン類の重合に供したときに、高い立体規則性と重合活性を維持しつつ、従来より広い分子量分布を有するオレフィン重合体を効率よく製造できる。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒としては、上記一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物とともに、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有するオレフィン類重合用の固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物とをさらに含むものが挙げられる。
(固体触媒成分)
マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有するオレフィン類重合用の固体触媒成分としては、マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、内部電子供与性化合物との接触反応物を挙げることができる。
上記マグネシウム化合物としては、ジアルコキシマグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムおよびアルコキシマグネシウムハライド等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記マグネシウム化合物の内、ジアルコキシマグネシウムまたはマグネシウムジハライドが好ましく、具体的には、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム、マグネシウムジクロライド、マグネシウムジブロマイド、マグネシウムジイオダイド等が挙げられ、ジエトキシマグネシウムおよびマグネシウムジクロライドが特に好ましい。
上記マグネシウム化合物のうち、ジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させて得たものでもよい。
上記ジアルコキシマグネシウムは、顆粒状または粉末状であるものが好ましく、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し得る。
ジアルコキシマグネシウムとして球状のものを使用した場合、より良好な粒子形状を有し(より球状で)狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時に生成した重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成した重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の発生を抑制することができる。
上記の球状のジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的には、その粒子の円形度が、3以下であるものが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1〜1.5であることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度とは、ジアルコキシマグネシウム粒子を500個以上走査型電子顕微鏡により撮影し、撮影した粒子を画像解析処理ソフトにより処理することで各粒子の面積Sと周囲長Lを求め、各ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度を下記式
各ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度=L2÷(4π×S)
により算出したときの算術平均値を意味し、粒子の形状が真円に近づくほど、円形度は1に近い値を示す。
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、平均粒子径D50(体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径)で1〜200μmであることが好ましく、5〜150μmであることがより好ましい。
ジアルコキシマグネシウムが球状である場合、上記平均粒径は1〜100μmであることが好ましく、5〜60μmであることがより好ましく、10〜50μmであることがさらに好ましい。
また、ジアルコキシマグネシウムの粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものであることが好ましい。
具体的には、ジアルコキシマグネシウムは、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、5μm以下の粒子が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。一方、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、100μm以上の粒子が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
更にその粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は体積積算粒度分布における積算粒度で90%の粒径、D10は体積積算粒度分布における積算粒度で10%の粒径である。)で表すと3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
上記球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58−41832号公報、特開昭62−51633号公報、特開平3−74341号公報、特開平4−368391号公報、特開平8−73388号公報等に例示されている。
上記マグネシウム化合物は、反応時に溶液状または懸濁液状であることが好ましく、溶液状または懸濁液状であることにより、反応を好適に進行させることができる。
上記マグネシウム化合物が固体である場合には、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒に溶解することにより溶液状のマグネシウム化合物とすることができ、またはマグネシウム化合物の可溶化能を有さない溶媒に懸濁することによりマグネシウム化合物懸濁液とすることができる。
なお、マグネシウム化合物が液体状である場合には、そのまま溶液状のマグネシウム化合物として用いてもよいし、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒にさらに溶解して溶液状のマグネシウム化合物として用いてもよい。
固体のマグネシウム化合物を可溶化しうる化合物としては、アルコール、エーテルおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられ、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノールなどのアルコールが好ましく、2−エチルヘキサノールが特に好ましい。
一方、固体のマグネシウム化合物に対して可溶化能を有さない媒体としては、マグネシウム化合物を溶解することがない、飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒から選ばれる一種以上が挙げられる。
固体触媒成分を構成する四価のチタンハロゲン化合物としては、特に制限されないが、下記一般式(II)
Ti(OR5)rX4−r (II)
(式中、R5は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を示し、rは0または1〜3の整数である。)で表されるチタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の一種以上であることが好適である。
チタンハライドとしては、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライドが挙げられる。
また、アルコキシチタンハライドとしては、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等から選ばれる一種以上が挙げられる。
四価のチタンハロゲン化合物としては、チタンテトラハライドが好ましく、チタンテトラクロライドがより好ましい。
これらのチタン化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
固体触媒成分を構成する内部電子供与性化合物としては、特に制限されないが、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物であることが好ましく、例えば、アルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒト類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si−O−C結合またはSi−N−C結合を含む有機ケイ素化合物等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
内部電子供与性化合物としては、モノエーテル類、ジエーテル類、エーテルカーボネート類等のエーテル化合物や、モノカルボン酸エステル類、ポリカルボン酸エステル類などのエステル類がより好ましく、芳香族ジカルボン酸ジエステル等の芳香族ポリカルボン酸エステル類、脂肪族ポリカルボン酸エステル類、脂環族ポリカルボン酸エステル類、ジエーテル類、およびエーテルカーボネート類から選ばれる一種以上がさらに好ましい。
上記芳香族ジカルボン酸ジエステルとしては、下記一般式(III)
(R6)jC6H4−j(COOR7)(COOR8) (III)
(式中、R6は炭素数1〜8のアルキル基またはハロゲン原子を示し、R7およびR8は炭素数1〜12のアルキル基であり、同一であっても異なっていてもよく、また、置換基R6の数jは0、1または2であり、jが2のとき、各R6は同一であっても異なっていてもよい。)
で表される化合物を挙げることができる。
一般式(III)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、R6は、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基である。
R6がハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれる一種以上の原子が挙げられる。
R6が炭素数1〜8のアルキル基である場合、炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、イソオクチル基、2,2−ジメチルヘキシル基から選ばれる一種以上が挙げられる。
R6としては、メチル基、臭素原子、フッ素原子が好ましく、メチル基、臭素原子がより好ましい。
一般式(III)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、R7およびR8は炭素数1〜12のアルキル基であり、R7およびR8は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
炭素数1〜12のアルキル基としては、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基を挙げることができ、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、またはネオペンチル基であることが好ましい。
一般式(III)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、置換基R6の数jは0、1または2であり、jが2のとき、各R6(2つのR6)は同一であっても異なっていてもよい。
jが0である場合、一般式(III)で表わされる化合物はフタル酸ジエステルであり、jが1または2である場合、一般式(III)で表わされる化合物は置換フタル酸ジエステルである。
jが1の場合、一般式(III)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、R6が、ベンゼン環の3位、4位または5位の位置の水素原子と置換してなるものが好ましい。
jが2の場合、一般式(III)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、R6が、ベンゼン環の4位および5位の位置の水素原子と置換してなるものが好ましい。
一般式(III)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルの具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジイソペンチル、フタル酸ジネオペンチル、フタル酸ジ−n−ヘキシル、フタル酸ジテキシル、フタル酸メチルエチル、フタル酸(エチル)n−プロピル、フタル酸エチルイソプロピル、フタル酸(エチル)n−ブチル、フタル酸エチルイソブチル、フタル酸(エチル)n−ペンチル、フタル酸エチルイソペンチル、フタル酸エチルネオペンチル、フタル酸(エチル)n−ヘキシル等のフタル酸ジエステル、4−クロロフタル酸ジエチル、4−クロロフタル酸ジ−n−プロピル、4−クロロフタル酸ジイソプロピル、4−クロロフタル酸ジ−n−ブチル、4−クロロフタル酸ジイソブチル、4−ブロモフタル酸ジエチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−プロピル、4−ブロモフタル酸ジイソプロピル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチル、4−ブロモフタル酸ジイソブチル等のハロゲン置換フタル酸ジエステル、4−メチルフタル酸ジエチル、4−メチルフタル酸ジ−n−プロピル、4−メチルフタル酸ジイソプロピル、4−メチルフタル酸ジ−n−ブチルまたは4−メチルフタル酸ジイソブチル等のアルキル置換フタル酸ジエステル等が挙げられる。
内部電子供与性化合物として、脂肪族ポリカルボン酸エステル類を使用する場合、脂肪族ポリカルボン酸エステル類としては、飽和脂肪族ポリカルボン酸エステルや、不飽和脂肪族ポリカルボン酸エステルを挙げることができる。
上記飽和脂肪族ポリカルボン酸エステルとしては、マロン酸ジエステル類、コハク酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、アジピン酸ジエステル類、グルタル酸ジエステル類等が挙げられる。マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステル、アルキレン置換マロン酸ジエステル、コハク酸ジエステルから選ばれる1種または2種以上がより好ましい。
また、上記不飽和脂肪族ポリカルボン酸エステルとしては、マレイン酸ジエステル等を挙げることができ、マレイン酸ジエステルまたはアルキル置換マレイン酸ジエステルから選ばれる1種または2種以上がより好ましい。
内部電子供与性化合物としてコハク酸ジエステルを使用する場合、コハク酸ジエステルとしては、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、メチルコハク酸ジエチル、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチル等が挙げられ、コハク酸ジエチルまたは2,3−ジイソプロプルコハク酸ジエチルが好ましい。
内部電子供与性化合物としてマレイン酸ジエステルを使用する場合、マレイン酸ジエステルとしては、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−プロピル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジ−n−ペンチル、マレイン酸ジネオペンチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジオクチル等を例示することができ、これらの中でも、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、及びマレイン酸ジイソブチルが好ましい。
内部電子供与性化合物としてアルキル置換マレイン酸ジエステルを使用する場合、アルキル置換マレイン酸ジエステルとしては、イソプロピルブロモマレイン酸ジエチル、ブチルブロモマレイン酸ジエチル、イソブチルブロモマレイン酸ジエチル、ジイソプロピルマレイン酸ジエチル、ジブチルマレイン酸ジエチル、ジイソブチルマレイン酸ジエチル、ジイソペンチルマレイン酸ジエチル、イソプロピルイソブチルマレイン酸ジエチル、イソプロピルイソペンチルマレイン酸ジメチル、(3−クロロ−n−プロピル)マレイン酸ジエチル、ビス(3−ブロモ−n−プロピル)マレイン酸ジエチル、ジメチルマレイン酸ジブチル、ジエチルマレイン酸ジブチル等を例示することができ、これらの中でも、ジメチルマレイン酸ジブチル、ジエチルマレイン酸ジブチル及びジイソブチルマレイン酸ジエチルが好ましい。
内部電子供与性化合物としてマロン酸ジエステルを使用する場合、マロン酸ジエステルとしては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジ−n−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジ−n−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジネオペンチル等が挙げられ、これらの中でもマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルまたはマロン酸ジイソブチルが好ましい。
また、内部電子供与性化合物としては、置換マロン酸ジエステルが好適である。
内部電子供与性化合物として置換マロン酸ジエステルを使用する場合、置換マロン酸ジエステルとしては、アルキル置換マロン酸ジエステル、ハロゲン置換マロン酸ジエステル、ハロゲン化アルキル置換マロン酸ジエステル等が挙げられ、上記の中でも、アルキル置換マロン酸ジエステルおよびハロゲン置換マロン酸ジエステルが好ましく、アルキル置換マロン酸ジエステルがより好ましい。
上記アルキル置換マロン酸ジエステルとしては、ジアルキルマロン酸ジエステルまたはアルキリデンマロン酸ジエステルが好ましく、エチルシクロペンチルマロン酸ジメチル、エチルシクロペンチルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジメチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル等のジアルキルマロン酸ジエステルや、ベンジリデンマロン酸ジメチルまたはベンジリデンマロン酸ジエチル等のアルキリデンマロン酸ジエステルがより好ましい。
また、脂環族ポリカルボン酸エステルとしては、飽和脂環族ポリカルボン酸エステルおよび不飽和脂環族ポリカルボン酸エステルが挙げられる。具体的には、シクロアルカンジカルボン酸ジエステルやシクロアルケンジカルボン酸ジエステル等が挙げられる。
内部電子供与性化合物としてシクロアルカンジカルボン酸ジエステルを使用する場合、シクロアルカンジカルボン酸ジエステルとしては、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、シクロペンタン−1,3−ジカルボン酸ジエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸ジエステル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、シクロオクタン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、シクロオクタン−1,3−ジカルボン酸ジエステル、シクロノナン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、シクロノナン−1,3−ジカルボン酸ジエステル、シクロデカン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、シクロデカン−1,3−ジカルボン酸ジエステルなどが挙げられる。
内部電子供与性化合物としてジエーテル類を使用する場合、ジエーテル類としては、下記一般式(IV);
R9 kH(3−k)C−O−(CR10R11)m−O−CR12 nH(3−n) (IV)
(一般式(IV)中、R9とR12は、ハロゲン原子または炭素数1〜20の有機基であって、互いに同一であっても異なっていてもよく、R10とR11は、水素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20の有機基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。炭素数1〜20の有機基は、酸素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、およびホウ素原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよく、炭素数1〜20の有機基が複数存在する場合、複数の有機基は互いに結合して環を形成していてもよく、kは0〜3の整数であり、kが2以上の整数である場合、複数個存在するR9は互いに同一でも異なっていてもよく、mは1〜10の整数であり、mが2以上の整数である場合、複数個存在するR10およびR11はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nは0〜3の整数であり、nが2以上の整数である場合、複数個存在するR12は互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表わされる化合物を用いることができる。
一般式(IV)で表わされる化合物において、R9またはR12がハロゲン原子である場合、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子または臭素原子である。
また、R9またはR12が炭素数1〜20の有機基である場合、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基である。
一般式(IV)で表わされる化合物において、炭素数1〜20の有機基が複数存在する場合、複数の有機基は互いに結合して環を形成していてもよい。この場合、環を構成する複数の有機基としては、(1)R9同士(kが2以上である場合)、(2)R12同士(nが2以上である場合)、(3)R9同士(mが2以上である場合)、(4)R11同士(mが2以上である場合)、(5)R9とR10、(6)R9とR11、(7)R9とR12、(8)R10とR11、(9)R10とR12、(10)R11とR12の組み合せを挙げることができ、このうち、(8)R10とR11の組み合せが好ましく、R10とR11が互いに結合してフルオレン環等を形成しているものがより好ましい。
一般式(IV)で表される化合物として、具体的には、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、3,3−ビス(メトキシメチル)−2,6−ジメチルヘプタン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン等から選ばれる一種以上が挙げられ、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、3,3−ビス(メトキシメチル)−2,6−ジメチルヘプタン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンから選ばれる一種以上が好ましく、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンから選ばれる一種以上がより好ましい。
一般式(IV)で表わされる化合物において、kは0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。kが2以上の整数である場合、複数個存在するR9は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(IV)で表わされる化合物において、mは1〜10の整数であり、1〜8の整数であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。mが2以上の整数である場合、複数個存在するR9およびR11は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(IV)で表わされる化合物において、nは0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。nが2以上の整数である場合、複数個存在するR12は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
内部電子供与性化合物としてエーテルカーボネート類を使用する場合、エーテルカーボネート類としては、下記一般式(V);
R13−O−C(=O)−O−Z−OR14 (V)
(一般式(V)中、R13およびR14は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜20の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基または分岐アルケニル基、炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニル基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の窒素原子含有炭化水素基(但し、結合末端がC=N基であるものを除く)、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の酸素原子含有炭化水素基(但し、結合末端がカルボニル基であるものを除く)、または結合末端が炭素原子である炭素数2〜24のリン含有炭化水素基(但し、結合末端がC=P基であるものを除く)を示し、R13およびR14は同一であっても異なっていてもよく、Zは、炭素原子又は炭素鎖を介して結合する結合性基を示す。)で表わされる化合物を用いることができる。
一般式(V)で表わされる化合物において、R13またはR14が炭素数1〜20の直鎖状アルキル基である場合、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ペンチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜12の直鎖状アルキル基が挙げられる。
R13またはR14が炭素数3〜20の分岐アルキル基である場合、例えばイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの2級炭素または3級炭素を有するアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数3〜12の分岐アルキル基が挙げられる。
R13またはR14が炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基である場合、例えば、アリル基、3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、10−ドデセニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基が挙げられる。
R13またはR14が炭素数3〜20の分岐アルケニル基である場合、例えば、イソプロペニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、2−エチル−3−ヘキセニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数3〜12の分岐アルケニル基が挙げられる。
R13またはR14が炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基である場合、例えば、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化エチル基、ハロゲン化n−プロピル基、ハロゲン化n−ブチル基、ハロゲン化n−ペンチル基、ハロゲン化n−ヘキシル基、ハロゲン化n−ペンチル基、ハロゲン化n−オクチル基、ハロゲン化ノニル基、ハロゲン化デシル基、ハロゲン置換ウンデシル基、ハロゲン置換ドデシル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基が挙げられる。
R13またはR14が炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルキル基である場合、例えば、ハロゲン化イソプロピル基、ハロゲン化イソブチル基、ハロゲン化2−エチルヘキシル基、ハロゲン化ネオペンチル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基が挙げられる。
R13またはR14が炭素数2〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基である場合、例えば、2−ハロゲン化ビニル基,3−ハロゲン化アリル基、3−ハロゲン化−2−ブテニル基、4−ハロゲン化−3−ブテニル基、パーハロゲン化−2−ブテニル基、6−ハロゲン化−4−ヘキセニル基、3−トリハロゲン化メチル−2−プロペニル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数2〜12のハロゲン置換アルケニル基が挙げられる。
R13またはR14が炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルケニル基である場合、例えば、3−トリハロゲン化−2−ブテニル基、2−ペンタハロゲン化エチル−3−ヘキセニル基、6−ハロゲン化−3−エチル−4−ヘキセニル基、3−ハロゲン化イソブテニル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルケニル基が挙げられる。
R13またはR14が炭素数3〜20のシクロアルキル基である場合、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、テトラメチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ブチルシクロペンチル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のシクロアルキル基が挙げられる。
R13またはR14が炭素数3〜20のシクロアルケニル基である場合、例えば、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、ノルボルネン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のシクロアルケニル基が挙げられる。
R13またはR14が炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキル基である場合、例えば、ハロゲン置換シクロプロピル基、ハロゲン置換シクロブチル基、ハロゲン置換シクロペンチル基、ハロゲン置換トリメチルシクロペンチル基、ハロゲン置換シクロヘキシル基、ハロゲン置換メチルシクロヘキシル基、ハロゲン置換シクロヘプチル基、ハロゲン置換シクロオクチル基、ハロゲン置換シクロノニル基、ハロゲン置換シクロデシル基、ハロゲン置換ブチルシクロペンチル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキル基が挙げられる。
R13またはR14が炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニル基である場合、例えば、ハロゲン置換シクロプロペニル基、ハロゲン置換シクロブテニル基、ハロゲン置換シクロペンテニル基、ハロゲン置換トリメチルシクロペンテニル基、ハロゲン置換シクロヘキセニル基、ハロゲン置換メチルシクロヘキセニル基、ハロゲン置換シクロヘプテニル基、ハロゲン置換シクロオクテニル基、ハロゲン置換シクロノネニル基、ハロゲン置換シクロデセニル基、ハロゲン置換ブチルシクロペンテニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基が挙げられる。
R13またはR14が炭素数6〜24の芳香族炭化水素基である場合、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、1−フェニルブチル基、4−フェニルブチル基、2−フェニルヘプチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、1,8−ジメチルナフチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素基が挙げられる。
R13またはR14が炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基である場合、ハロゲン化フェニル基、ハロゲン化メチルフェニル基、トリハロゲン化メチルフェニル基、パーハロゲン化ベンジル基、パーハロゲン化フェニル基、2−フェニル−2−ハロゲン化エチル基、パーハロゲン化ナフチル基、4−フェニル−2,3−ジハロゲン化ブチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数6〜12のハロゲン置換芳香族炭化水素基が挙げられる。
なお、前記一般式(V)で表わされる化合物中、R13またはR14がハロゲン原子を含有する基である場合、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子または臭素原子が挙げられる。
また、R13またはR14が、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24のリン含有炭化水素基(但し、結合末端がC=P基であるものを除く)である場合、例えば、ジメチルホスフィンメチル基、ジブチルホスフィノメチル基、ジシクロヘキシルホスフィノメチル基、ジメチルホスフィンエチル基、ジブチルホスフィノエチル基、ジシクロヘキシルホスフィノエチル基などのジアルキルホスフィノアルキル基、ジフェニルホスフィノメチル基、ジトリルホスフィノメチル基などのジアリールホスフィノアルキル基、ジメチルホスフフィノフェニル基、ジエチルホスフフィノフェニル基等のフォスフィノ基置換アリール基などが挙げられ、好ましくは炭素数2〜12のリン含有炭化水素基が挙げられる。
なお、R13またはR14の結合末端とは、一般式(V)で表わされる化合物において、R13またはR14が結合する酸素原子側末端の原子又は基を意味する。
R13としては、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基または分岐アルケニル基、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基または分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基、または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基が好ましく、
炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基または分岐アルケニル基、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基、または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基がより好ましく、
炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基がさらに好ましい。
R14としては、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、結合末端が−CH2−である炭素数3〜12の分岐アルキル基、結合末端が−CH2−である炭素数3〜12の分岐アルケニル基、結合末端が−CH2−である炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、結合末端が−CH2−である炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基、結合末端が−CH2−である炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルケニル基、結合末端が−CH2−である炭素数4〜12のシクロアルキル基、結合末端が−CH2−である炭素数4〜12のシクロアルケニル基、結合末端が−CH2−である炭素数4〜12のハロゲン置換シクロアルキル基、結合末端が−CH2−である炭素数4〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基または結合末端が−CH2−である炭素数7〜12の芳香族基炭化水素基が好ましく、炭素数1〜12の直鎖状炭化水素基、結合末端が−CH2−である炭素数3〜12の分岐アルキル基または結合末端が−CH2−である炭素数7〜12の芳香族基炭化水素基がより好ましい。
なお、R14の結合末端とは、一般式(V)で表わされる化合物において、R14が結合する酸素原子側末端を意味する。
R13およびR14の組み合わせとしては、上述した各基のうち、好ましいもの同士の組み合わせを挙げることができ、より好ましい同士の組み合せであることが好ましい。
一般式(V)で表わされる化合物において、Zは、カーボネート基とエーテル基(OR14基)を結合する二価の結合性基である、炭素原子または炭素鎖を介して結合する結合性基であり、例えば、Zが結合する2つの酸素原子間を炭素鎖で結合する結合性基を挙げることができ、該炭素鎖が2個の炭素原子で構成されている結合性基であることが好ましい。
Zは、炭素数1〜20の直鎖状アルキレン基、炭素数3〜20の分岐アルキレン基、ビニレン基、炭素数3〜20の直鎖状アルケニレン基または分岐アルケニレン基、炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルキレン基、炭素数3〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基または分岐ハロゲン置換アルケニレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルケニレン基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキレン基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニレン基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基、炭素数1〜24の窒素原子含有炭化水素基、炭素数1〜24の酸素原子含有炭化水素基、または炭素数1〜24のリン含有炭化水素基であることが好ましい。
Zは、炭素数2のエチレン基、炭素数3〜12の分岐アルキレン基、ビニレン基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニレン基または分岐アルケニレン基、炭素数2〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキレン基、炭素数3〜12の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基または分岐ハロゲン置換アルケニレン基、炭素数3〜12のシクロアルキレン基、炭素数3〜12のシクロアルケニレン基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキレン基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニレン基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、炭素数6〜12のハロゲン置換芳香族炭化水素基、炭素数2〜12の窒素原子含有炭化水素基、炭素数2〜12の酸素原子含有炭化水素基、または炭素数2〜12のリン含有炭化水素基であり、
特に好ましい基は、炭素数2のエチレン基および炭素数3〜12の分岐アルキレン基から選ばれる2座の結合性基であることがより好ましい(なお、2座の結合性基とは、Zが結合する2つの酸素原子間が炭素鎖で結合され、当該炭素鎖が2個の炭素原子で構成されているものを意味する)。
Zが炭素数1〜20の直鎖状アルキレン基である場合、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基など挙げられ、好ましくは、炭素数2〜12の直鎖状アルキレン基である。更に好ましくはエチレン基が挙げられる。
Zの炭素数3〜20の分岐アルキレン基である場合、例えば、1−メチルエチレン基、2−メチルトリメチレン基、2−メチルテトラメチレン基、2−メチルペンタメチレン基、3−メチルヘキサメチレン基、4−メチルヘプタメチレン基、4−メチルオクタメチレン基、5−メチルノナメチレン基、5−メチルデカメチレン基、6−メチルウンデカメチレン基、7−メチルドデカメチレン基、7−メチルトリデカメチレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の分岐アルキレン基が挙げられる、より好ましくは、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基が挙げられる。
Zが炭素数3〜20の直鎖状アルケニレン基である場合、例えば、プロペニレン基、ブテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基、オクタデセニレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の直鎖状アルケニレン基が挙げられる。
Zが炭素数3〜20の分岐アルケニレン基である場合、例えば、イソプロペニレン基、1−エチルエテニレン基、2−メチルプロペニレン基、2,2−ジメチルブテニレン基、3−メチル−2−ブテニレン基、3−エチル−2−ブテニレン基、2−メチルオクテニレン基、2,4−ジメチル−2−ブテニレン基などが挙げられ、好ましくは、連結部がエテニレン基である炭素数3〜12の分岐アルケニレン基が挙げられ、より好ましくは、イソプロペニレン基、1−エチルエテニレン基が挙げられる。
Zが炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基である場合、例えば、ジクロロメチレン基、クロロメチレン基、ジクロロメチレン基、テトラクロロエチレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基が挙げられ、より好ましくは、クロロエチレン基、フルオロエチレン基、ジクロロエチレン基、ジフルオロエチレン基、テトラフルオロエチレン基が挙げられる。
Zが炭素数1〜20の分岐ハロゲン置換アルキレン基である場合、例えば、1,2−ビスクロロメチルエチレン基、2,2−ビス(クロロメチル)プロピレン基、1,2−ビスジクロロメチルエチレン基、1,2−ビス(トリクロロメチル)エチレン基、2,2−ジクロロプロピレン基、1,1,2,2−テトラクロロエチレン基、1−トリフルオロメチルエチレン基、1−ペンタフルオロフェニルエチレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキレン基が挙げられ、より好ましくは、1−クロロエチルエチレン基、1−トリフルオロメチルエチレン基、1,2−ビス(クロロメチル)エチレン基が挙げられる。
Zが炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基である場合、例えば、ジクロロエテニレン基、ジフルオロエテニレン基、3,3−ジクロロプロペニレン基、1,2−ジフルオロプロペニレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基が挙げられ、より好ましくは、ジクロロエテニレン基、ジフルオロエテニレン基が挙げられる。
Zが炭素数1〜20の分岐ハロゲン置換アルキレン基である場合、例えば、3,4−ジクロロ−1,2−ブチレン基、2,2−ジクロロ−1,3−ブチレン基、1,2−ジフルオロ−1,2−プロピレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキレン基が挙げられ、より好ましくは、クロロメチルエテニレン基、トリフルオロメチルエテニレン基、3,4−ジクロロ−1,2−ブテニレン基が挙げられる。
Zが炭素数3〜20のシクロアルキレン基である場合、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロプロピレン基、2−メチルシクロプロピレン基、シクロブチレン基、2,2−ジメチルシクロブチレン基、2,3−ジメチルシクロペンチレン基、1,3,3−トリメチルシクロヘキシレン基、シクロオクチレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のシクロアルキレン基が挙げられ、より好ましくは、1,2−シクロアルキレン基、あるいは炭化水素基置換−1,2−シクロアルキレン基が挙げられる。
Zが炭素数3〜20のシクロアルケニレン基である場合、例えば、シクロペンテニレン基、2,4−シクロペンタジエニレン基、シクロヘキセニレン基、1,4−シクロヘキサジエニレン基、シクロヘプテニレン基、メチルシクロペンテニレン基、メチルシクロヘキセニレン基、メチルシクロヘプテニレン基、ジシクロデシレン基、トリシクロデシレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のシクロアルケニレン基が挙げられ、より好ましくは、1,2−シクロアルケニレン基、あるいは炭化水素基置換−1,2−シクロアルケニレン基が挙げられる。
Zが炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキレン基である場合、例えば、3−クロロ−1,2−シクロペンチレン基、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−シクロヘキシレン基、3,3−ジクロロ−1,2−シクロプロピレン基、2−クロロメチルシクロプロピレン基、3,4−ジクロロ−1,2−シクロブチレン基、3,3−ビス(ジクロロメチル)−1,2−シクロブチレン基、2,3−ビス(ジクロロメチル)シクロペンチレン基、1,3,3−トリス(フルオロメチル)−1,2−シクロヘキシレン基、3−トリクロロメチル−1,2−シクロオクチレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキレン基が挙げられる。
Zが炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニレン基である場合、例えば、5−クロロ−1,2−シクロ−4−ヘキセニレン基、3,3,4,4−テトラフルオロ−1,2−シクロ−6−オクテニレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニレン基が挙げられる。
Zが炭素数6〜24の芳香族炭化水素基である場合、例えば、1,2−フェニレン、3−メチル−1,2−フェニレン、3,6−ジメチル−1,2−フェニレン、1,2−ナフチレン、2,3−ナフチレン、5−メチル−1,2−ナフチレン、9,10−フェナンスリレン、1,2−アントラセニレン等が挙げられ、好ましくは、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基が挙げられる。
Zが炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基である場合、例えば、3−クロロ−1,2−フェニレン、3−クロロメチル−1,2−フェニレン、3,6−ジクロロ−1,2−フェニレン、3,6−ジクロロ−4,5−ジメチル−1,2−フェニレン、3−クロロ−1,2−ナフチレン、3−フルオロ−1,2−ナフチレン、3,6−ジクロロ−1,2−フェニレン、3,6−ジフルオロ−1,2−フェニレン、3,6−ジブロモ−1,2−フェニレン、1−クロロ−2,3−ナフチレン、5−クロロ−1,2−ナフチレン、2,6−ジクロロ−9,10−フェナンスリレン、5,6−ジクロロ−1,2−アントラセニレン、5,6−ジフルオロ−1,2−アントラセニレン等が挙げられ、好ましくは、炭素数6〜12のハロゲン置換芳香族炭化水素基が挙げられる。
Zが炭素数1〜24の窒素原子含有炭化水素基である場合、例えば、1−ジメチルアミノエチレン基、1,2−ビスジメチルミノエチレン基、1−ジエチルアミノエチレン基、2−ジエチルアミノ−1,3−プロピレン基、2−エチルアミノ−1,3−プロピレン基、4−ジメチルアミノ−1,2−フェニレン基、4,5−ビス(ジメチルアミノ)フェニレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数2〜12の窒素原子含有炭化水素基が挙げられる。
Zが炭素数1〜24の酸素原子含有炭化水素基である場合、例えば、1−メトキシエチレン基、2,2−ジメトキシ−1,3−プロパニレン基、2−エトキシ−1,3−プロパニレン基、2−t−ブトキシ−1,3−プロパニレン基、2,3−ジメトキシ−2,3−ブチレン基、4−メトキシ−1,2−フェニレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数2〜12の酸素原子含有炭化水素基が挙げられる。
Zが炭素数1〜24のリン含有炭化水素基である場合、例えば、1−ジメチルフォスフィノエチレン基、2,2−ビス(ジメチルフォスフィノ)−1,3−プロパニレン基、2−ジエチルフォスフィノ−1,3−プロパニレン基、2−t−ブトキメチルフォスフィノ−1,3−プロパニレン基、2,3−ビス(ジフェニルフォスフィノ)−2,3−ブチレン基、4−メチルフォスフェート−1,2−フェニレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜12のリン含有炭化水素基が挙げられる。
なお、Zがシクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ハロゲン置換シクロアルキレン基、ハロゲン置換シクロアルケニレン基、芳香族炭化水素基またはハロゲン置換芳香族炭化水素基等の環状の基である場合、Zが結合する2つの酸素原子間は炭素鎖で結合され、該炭素鎖が2個の炭素原子で構成されている結合性基とは、環状を構成する炭素鎖の中の隣接する2個の炭素鎖が、当該Zが結合する2つの酸素原子間にある炭素鎖であることを意味する。
一般式(V)で表される化合物の具体例としては、(2−エトキシエチル)メチルカーボネート、(2−エトキシエチル)エチルカーボネート、(2−エトキシエチル)フェニルカーボネートが特に好ましい。
内部電子供与性化合物としては、特に、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、ジメチルマレイン酸ジブチル、ジエチルマレイン酸ジブチル、ジイソブチルマレイン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、メチルコハク酸ジエチル、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチル、マロン酸ジ-n-ブチル、マロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジメチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、(2−エトキシエチル)エチルカーボネート、(2−エトキシエチル)フェニルカーボネート、ベンジリデンマロン酸ジメチル、ベンジリデンマロン酸ジエチルおよびベンジリデンマロン酸ジブチルから選ばれる一種以上が好ましい。
本発明に係るオレフィン重合用触媒において、固体触媒成分は、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および内部電子供与性化合物の接触反応物からなる。
上記マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および内部電子供与性化合物の接触、反応は、第三成分であるポリシロキサンの存在下に行ってもよい。
ポリシロキサンとは、主鎖にシロキサン結合(−Si−O−結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02〜100cm2/s(2〜10000センチストークス)、より好ましくは0.03〜5cm2/s(3〜500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンを意味する。
鎖状ポリシロキサンとしては、ジシロキサンとしてヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1、3−ジクロロテトラメチルジシロキサン、1、3−ジブロモテトラメチルジシロキサン、クロロメチルペンタメチルジシロキサン、1,3−ビス(クロロメチル)テトラメチルジシロキサン、また、ジシロキサン以外のポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。これらの中で、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
上記マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物、内部電子供与性化合物(および場合によりポリシロキサン)を接触させ、反応させる処理は、不活性有機溶媒の存在下に行うことが好ましい。
上記不活性有機溶媒としては、常温(20℃)下において液体で、かつ沸点50〜150℃であるものが好ましく、常温下において液体で、かつ沸点50〜150℃である芳香族炭化水素化合物または飽和炭化水素化合物がより好ましい。
上記不活性有機溶媒として、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の直鎖脂肪族炭化水素化合物、メチルヘプタン等の分岐状脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物等から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記不活性有機溶媒のうち、常温下において液体で、沸点が50〜150℃である芳香族炭化水素化合物が、得られる固体触媒成分の活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性を向上させることができるため、好適である。
マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および内部電子供与性化合物は、適宜不活性有機溶媒の存在下に混合することにより、接触、反応させることができる。
上記反応時の温度は、0〜130℃が好ましく、40〜130℃がより好ましく、30〜120℃がさらに好ましく、80〜120℃が一層好ましい。また、反応時間は、1分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、30分間〜6時間がさらに好ましく、30分間〜5時間が一層好ましく、1〜4時間がより一層好ましい。
上記反応に先だって低温熟成を施してもよい。
低温熟成は、反応時の温度よりも低温で各成分を接触させる予備反応であって、低温熟成時の温度は、−20〜70℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、−10〜30℃がさらに好ましい。また、低温熟成時間は、1分間〜6時間が好ましく、5分間〜4時間がより好ましく、30分間〜3時間がさらに好ましい。
マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および内部電子供与性化合物類を接触、反応させる際、マグネシウム化合物1モルに対する四価のチタンハロゲン化合物の使用量は、0.5〜100モルであることが好ましく、1〜50モルであることがより好ましく、1〜10モルであることがさらに好ましい。
マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および内部電子供与性化合物を接触、反応させる際、マグネシウム化合物1モルに対する内部電子供与性化合物の使用量は、0.01〜10モルであることが好ましく、0.01〜1モルであることがより好ましく、0.02〜0.6モルであることがさらに好ましい。
また、不活性有機溶媒を使用する場合、不活性有機溶媒の使用量は、マグネシウム化合物1モルに対し、0.001〜500モルであることが好ましく、0.5〜100モルであることがより好ましく、1.0〜20モルであることがさらに好ましい。
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行うことが好ましい。
上記反応終了後、反応生成物は、反応液を静置し、適宜、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)とするか、さらに熱風乾燥等により乾燥状態にした上で、洗浄処理することが好ましい。
上記反応終了後、反応液を静置し、上澄み液を適宜除去した上で、得られた反応生成物を洗浄処理する。
上記洗浄処理は、通常洗浄液を用いて行われる。
洗浄液としては、上記不活性有機溶媒と同様のものを挙げることができ、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の常温下で液体、かつ、沸点が50〜150℃の直鎖脂肪族炭化水素化合物や、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の常温下で液体、かつ、沸点が50〜150℃の環式脂肪族炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、オルトジクロロベンゼン等の常温下で液体、かつ、沸点が50〜150℃の芳香族炭化水素化合物等から選ばれる一種以上が好ましい。
上記洗浄液を使用することにより、反応物中から、副生成物や不純物を容易に溶解し、除去することができる。
上記洗浄処理は、0〜120℃の温度下で行うことが好ましく、0〜110℃の温度下で行うことがより好ましく、30〜110℃の温度下で行うことがさらに好ましく、50〜110℃の温度下で行うことが一層好ましく、50〜100℃の温度下で行うことがより一層好ましい。
洗浄処理は、反応生成物に対して所望量の洗浄液を加えて攪拌した後、フィルトレーション法(濾過法)もしくはデカンテーション法により、液相を除去することにより行うことが好ましい。
また、後述するように、洗浄回数が複数回(2回以上)である場合には、反応生成物に対して最後に添加した洗浄液を除去することなく、そのまま次工程の反応に供することもできる。
上記各成分を接触、反応させた後、洗浄処理することにより、反応生成物中に残留する未反応原料成分や反応副生成物(アルコキシチタンハライドや四塩化チタン−カルボン酸錯体等)の不純物を除去することができる。
上記洗浄処理後に適宜後処理を施してもよい。
上記後処理を施す場合、例えば、上記反応終了後に得られた反応物や、上記洗浄処理後に得られた洗浄物に対し、四価のチタンハロゲン化合物をさらに接触させる態様や、四価のチタンハロゲン化合物をさらに接触させた後に洗浄する態様を挙げることができる。上記後処理における洗浄は、上述した反応生成物の洗浄と同様に行うことができる。
上記各成分の接触反応物は、通常、懸濁液状であり、当該懸濁液状の生成物は、静置し、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)としたり、さらに熱風乾燥等により乾燥することにより固体触媒成分を得ることができる。
上記固体触媒成分において、マグネシウム原子の含有量は、10〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、15〜40質量%がさらに好ましく、15〜25質量%が特に好ましい。
上記固体触媒成分において、チタン原子の含有量は、0.5〜8.0質量%が好ましく、0.5〜5.0質量%が好ましく、0.5〜3.5質量%がさらに好ましい。
上記固体触媒成分において、ハロゲン原子の含有量は、20〜88質量%が好ましく、30〜85質量%がより好ましく、40〜80質量%がさらに好ましく、45〜75質量%が一層好ましい。
本発明に係るオレフィン重合用触媒において、内部電子供与性化合物の含有割合は、1.5〜30質量%が好ましく、3.0〜25質量% がより好ましく、6.0〜25質量%がさらに好ましい。
本出願書類において、固体触媒成分中のマグネシウム原子の含有量は、固体触媒成分を塩酸溶液で溶解し、EDTA溶液で滴定するEDTA滴定方法により測定した値を意味するものとする。
本出願書類において、固体触媒成分中のチタン原子の含有量は、JIS 8311−1997「チタン鉱石中のチタン定量方法」に記載の方法(酸化還元滴定)に準じて測定した値を意味するものとする。
本出願書類において、固体触媒成分中のハロゲン原子の含有量は、固体触媒成分を硫酸と純水の混合溶液で処理して水溶液とした後、所定量を分取し、硝酸銀標準溶液でハロゲン原子を滴定する硝酸銀滴定法により測定した値を意味するものとする。
本出願書類において、固体触媒成分中の内部電子供与性化合物の含有量は、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、GC−14B)を用いて下記の条件で測定したときに、予め既知濃度に基づいて測定した検量線を用いて求められる結果を意味する。
<測定条件>
カラム:パックドカラム(φ2.6×2.1m, Silicone SE-30 10%,Chromosorb WAWDMCS 80/100、ジーエルサイエンス(株)社製)
検出器:FID(Flame IonizationDetector,水素炎イオン化型検出器)
キャリアガス:ヘリウム、流量40ml/分
測定温度:気化室280℃、カラム225℃、検出器280℃、または気化室265℃、カラム180℃、検出器265℃
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、上記一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物と、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有する固体触媒成分とともに、有機アルミニウム化合物を含み得るものである。
上記有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(VI)
R15 pAlQ3−p (VI)
(式中、R15は炭素数1〜6のアルキル基であり、Qは水素原子またはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
一般式(VI)で表わされる有機アルミニウム化合物において、R15は炭素数1〜6のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等を挙げることができる。
上記一般式(VI)で表わされる有機アルミニウム化合物において、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、Qがハロゲン原子である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
上記一般式(VI)で表わされる有機アルミニウム化合物として、具体的には、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドから選ばれる一種以上を挙げることができ、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好適である。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、外部電子供与性化合物として、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物以外の化合物を含むものであってもよい。
このような外部電子供与性化合物としては、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物が挙げられ、具体的には、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、有機ケイ素化合物、中でもSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物等が挙げられる。
上記外部電子供与性化合物のなかでも、安息香酸エチル、p−メトキシ安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸エチル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のエステル類、1,3−ジエーテル類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物が好ましく、Si−O−C結合を有する有機ケイ素化合物が特に好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物の含有割合は、本発明の効果が得られる範囲において任意に選定することができ、特に限定されない。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、固体触媒成分中のチタン原子1モルあたり、有機アルミニウム化合物を、1〜2000モル含むことが好ましく、50〜1000モル含むことがより好ましい。
また、本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、オレフィン類重合用触媒中に含有される固体触媒成分中のチタン原子1モルあたり、上記一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を、1〜200モル含むことが好ましく、2〜150モル含むことがより好ましく、5〜100モル含むことがさらに好ましい。
さらに、本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、オレフィン類重合用触媒中に含有される有機アルミニウム化合物1モルあたり、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を、0.001〜10モル含むことが好ましく、0.002〜2モル含むことがより好ましく、0.002〜0.5モル含むことがさらに好ましい。
本発明によれば、プロピレン等のα−オレフィン類の重合に際し、高い立体規則性、広い分子量分布および優れた流動性を高い水準でバランスよく発揮し得る重合体を製造し得るオレフィン類重合用触媒を提供することができる。
次に、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有する固体触媒成分と、
有機アルミニウム化合物と、
下記一般式(I)
R1R2Si(NHR3)(OR4) (I)
(式中、R1は、炭素数3以上の分岐アルキル基または炭素数4以上のシクロアルキル基であり、R2は、炭素数1〜8の直鎖アルキル基または炭素数3〜8の分岐アルキル基であり、R3は、炭素数2〜6のアルキル基であり、R4は、炭素数1〜3の直鎖アルキル基であり、R1およびR2は互いに異なっている。)
で表わされる化合物からなる外部電子供与性化合物とを
相互に接触させることを特徴とするものである。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法において、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有する固体触媒成分の詳細や、有機アルミニウム化合物の詳細や、一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物の詳細は、上述した内容と同様である。
また、各成分の接触割合については、上述したオレフィン類重合用触媒の構成成分の含有割合に対応する量を接触することが好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法において、上記各成分を接触させる順序は任意であるが、例えば、以下の接触順序を例示することができる。
(i)(α)固体触媒成分→(γ)一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を含む外部電子供与性化合物→(β)有機アルミニウム化合物
(ii)(β)有機アルミニウム化合物→(γ)一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を含む外部電子供与性化合物→(α)固体触媒成分
(iii)(γ)一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を含む外部電子供与性化合物→(α)固体触媒成分→(β)有機アルミニウム化合物
(iv)(γ)一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を含む外部電子供与性化合物→(β)有機アルミニウム化合物→(α)固体触媒成分
上記接触例(i)〜(iv)において、接触例(ii)が好適である。
なお、上記接触例(i)〜(iv)において、「→」は接触順序を意味し、例えば、「(α)オレフィン類重合用固体触媒成分→(β)有機アルミニウム化合物→(γ)一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を含む外部電子供与性化合物」は、(α)固体触媒成分中に(β)有機アルミニウム化合物を添加して接触させた後、(γ)一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を含む外部電子供与性化合物を添加して接触させることを意味する。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法においては、固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を、オレフィン類不存在下で接触させてもよいし、オレフィン類の存在下で(重合系内で)接触させてもよい。
上記固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および一般式(I)で表されるジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物の接触は、固体触媒成分や調製造後のオレフィン類重合用触媒の劣化を防止するため、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気下、或いはプロピレン等のモノマー雰囲気下で行うことが好ましい。
また、操作の容易性を考慮すると、不活性溶媒等、分散媒の存在下において行うことも好ましく、不活性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物等が用いられ、脂肪族炭化水素がより好ましく、中でもヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサンがより好ましい。
上記各成分を接触させる際の接触温度は、−10℃〜100℃が好ましく、0℃〜90℃がより好ましく、20℃〜80℃がさらに好ましい。接触時間は1分間〜10時間が好ましく、10分間〜5時間がより好ましく、30分間〜2時間がさらに好ましい。
接触温度及び接触時間を上記の範囲とすることで、オレフィン類重合用触媒の重合活性や得られる重合体の立体規則性を向上させ易くなり、結果として得られるオレフィン類重合体の機械的物性、加工性、生産性が向上し易くなる。
本発明によれば、プロピレン等のα−オレフィン類の重合に際し、高い立体規則性、広い分子量分布および優れた流動性をバランスよく発揮し得る重合体を製造し得るオレフィン類重合用触媒を簡便に製造する方法を提供することができる。
次に、本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法は、本発明に係るオレフィン類重合触媒の存在下、オレフィン類の重合を行なうことを特徴とするものである。
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、エチレン、プロピレンまたは1−ブテンが好適であり、プロピレンがより好適である。
プロピレンを重合する場合、プロピレン以外の他のα―オレフィン類との共重合を行ってもよく、プロピレンと他のα−オレフィン類の単量体との共重合としては、プロピレンと少量のエチレンをコモノマーとして、1段で重合するランダム共重合と、第一段階(第一重合槽)でプロピレンの単独重合を行い、第二段階(第二重合槽)あるいはそれ以上の多段階(多段重合槽)でプロピレンとエチレン等の他のα−オレフィンとの共重合を行う、いわゆるプロピレン−エチレンブロック共重合が代表的であり、プロピレンと他のα−オレフィンとのブロック共重合が好ましい。
ブロック共重合により得られるブロック共重合体とは、2種以上のモノマー組成が連続して変化するセグメントを含む重合体であり、モノマー種、コモノマー種、コモノマー組成、コモノマー含量、コモノマー配列、立体規則性などポリマーの一次構造の異なるポリマー鎖(セグメント)が1分子鎖中に2種類以上繋がっている形態のものをいう。
共重合されるオレフィン類としては、炭素数2〜20のα−オレフィン(炭素数3のプロピレンを除く)であることが好ましく、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等を挙げることができ、これ等のオレフィン類は一種以上併用することができる。共重合されるオレフィン類としては、エチレンまたは1−ブテンが好適であり、エチレンが特に好適である。
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類の重合は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができる。
また、重合対象となるオレフィン類は、気体および液体のいずれの状態でも用いることができる。
オレフィン類の重合は、例えば、オートクレーブ等の反応炉内において、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の存在下、オレフィン類を導入し、加熱、加圧状態下に行う。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、重合温度は、通常200℃以下であるが、100℃以下が好ましく、活性や立体規則性の向上の観点からは、60〜100℃がより好ましく、70〜90℃がさらに好ましく、75〜80℃が一層好ましい。本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、重合圧力は、10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法においては、上記重合温度範囲において、比較的高温下でホモ重合した場合でも水素活性に優れ高い立体規則性およびMFRを有する重合体を高い生産性の下で作製することができるとともに、高温下で共重合した場合においても、優れた水素活性と共重合活性を達成し、耐衝撃性に優れた共重合体を製造することができる。
また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応は一段で行ってもよいし、二段以上で行ってもよい。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、プロピレンと他のα−オレフィン類とのブロック共重合反応は、通常、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の存在下、前段でプロピレン単独あるいは、プロピレンと少量のα−オレフィン(エチレン等)とを接触させ、次いで後段でプロピレンとα−オレフィン(エチレン等)とを接触させることにより実施することができる。なお、上記前段の重合反応を複数回繰り返し実施してもよいし、上記後段の重合反応を複数回繰り返し多段反応により実施してもよい。
プロピレンと他のα−オレフィン類とのブロック共重合反応は、具体的には、前段で(最終的に得られる共重合体に占める)ポリプロピレン部の割合が20〜90質量%になるように重合温度および時間を調整して重合を行ない、次いで後段において、プロピレンおよびエチレンあるいは他のα−オレフィンを導入し、(最終的に得られる共重合体に占める)エチレン−プロピレンゴム(EPR)などのゴム部割合が10〜80質量%になるように重合することが好ましい。
前段及び後段における重合温度は共に、200℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、75〜80℃がさらに好ましく、重合圧力は、10MPa以下が好ましく、6MPa以下がより好ましく、5MPa以下がさらに好ましい。
上記共重合反応においても、連続重合法、バッチ式重合法のいずれの重合法も採用することができ、重合反応は1段で行なってもよいし、2段以上で行なってもよい。
また、重合時間(反応炉内の滞留時間)は、前段または後段の各重合段階のそれぞれの重合段階で、あるいは連続重合の際においても、1分〜5時間であることが好ましい。
重合方法としては、シクロヘキサン、ヘプタン等の不活性炭化水素化合物の溶媒を使用するスラリー重合法、液化プロピレン等の溶媒を使用するバルク重合法、実質的に溶媒を使用しない気相重合法が挙げられ、バルク重合法または気相重合法が好適であり、後段の反応は一般的にはEPRのPP粒子からの溶出を抑える目的から気相重合反応であることが好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類を重合(以下、適宜、本重合と称する。)するにあたり、重合対象となるオレフィン類に対して本発明に係るオレフィン類重合用触媒の構成成分の一部または全部を接触させることにより、予備的な重合(以下、適宜、予備重合と称する。)を行ってもよい。
予備重合を行うに際して、本発明のオレフィン類重合用触媒の構成成分およびオレフィン類の接触順序は任意であるが、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物を装入し、次いで固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を一種以上接触させることが好ましい。または、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物を装入し、次いで一般式(I)で表されるアミノシラン化合物を含む外部電子供与性化合物を接触させ、さらに固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を一種以上接触させることが好ましい。
予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類、あるいはスチレン等のモノマーを用いることができ、予備重合条件も、上記重合条件と同様である。
上記予備重合を行うことにより、触媒活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性および粒子性状等を一層改善し易くなる。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法によれば、プロピレン等のα−オレフィン類から、高い立体規則性、広い分子量分布および優れた流動性をバランスよく発揮し得る重合体を簡便に製造することができる。
次に、本発明に係るプロピレン-α−オレフィン共重合体について説明する。
本発明に係るプロピレン-α−オレフィン共重合体は、本発明に係るオレフィン重合用触媒の存在下におけるプロピレンおよびプロピレン以外のα−オレフィンの共重合反応物からなることを特徴とするものである。
本発明に係るプロピレン−α−オレフィン共重合体は、共重合対象となるモノマーがプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンに特定されていることを除けば、上述した本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法により製造され得るものである。
本発明に係るプロピレン−α−オレフィン共重合体は、EPR(エチレン−プロピレンゴム)等のゴム部を高い含有率で含有し、ブロック率も高いことから、優れた耐衝撃性を容易に発揮することができる。
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
(製造例1)
<固体触媒成分(A-1)の調製>
撹拌装置を備え、内部が窒素ガスで充分に置換された内容積500mlのフラスコに、四塩化チタン30mlおよびトルエン20mlを装入して、混合溶液を形成した。次いで、平均粒径32μmの球状ジエ卜キシマグネシウム(円形度1.10)10.0g (87.4ミリモル)、トルエン50mlおよびフタル酸ジ−n−ブチル3.6mlを用いて形成した懸濁液を、10℃の液温に保持した前記混合溶液中に添加した。その後、液温を10℃から90℃まで昇温し、90℃で2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた固体生成物を90℃のトルエン100mlで4回洗浄し、新たに四塩化チタン30mlおよびトルエン70mlを加え、110℃に昇温し、110℃で2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、40℃のn−ヘプタン100mlで10回洗浄して、固体触媒成分(A-1)を得た。なお、この固体触媒成分中のチタン含有率を測定したところ、2.67質量%であった。
(製造例2)
<固体触媒成分(A-2)の調製>
製造例1における内部電子供与性化合物をフタル酸ジ−n−ブチル3.6ml(13.6ミリモル)から2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチル3.6ml(13.6ミリモル)に変更した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分(A−2)を調製した。なお、この固体触媒成分のチタン含有率は3.2質量%であった。
(実施例1)
<重合触媒の形成及びプロピレン重合>
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの攪拌機付きオートクレーブ2基に、それぞれ、トリエチルアルミニウム1.98ミリモル、t-ブチル−n−プロピル(n−プロピルアミノ)メトキシシラン(BPPAMS、信越化学工業株式会社製、純度99.9%)0.198ミリモルおよび上記固体触媒成分(A-1)をチタン原子換算で0.00264ミリモル装入してオレフィン重合用触媒を形成した。
次いで、一方のオートクレーブに水素ガス1.5リットルと液化プロピレン1.4リットル、もう一方のオートクレーブに水素ガス4.0リットルと液化プロピレン1.4リットルをそれぞれ装入し、20℃で5分間予備重合を行った後、70℃まで昇温し、70℃でそれぞれ1時間の重合反応を行い、2種類のプロピレン重合体(水素ガス1.5リットル重合物および水素ガス4リットル重合物)を得た。
得られた2種類のプロピレン重合物(水素ガス1.5リットル重合物および水素ガス4リットル重合物)において、下記式によりプロピレン重合活性を求めたところ、水素ガス1.5リットル重合物の重合時における固体触媒成分1g当たりの重合活性は44,100(g−pp/g−cat)であり、水素ガス4リットル重合物の重合時における固体触媒成分1g当たりの重合活性は54,200(g−pp/g−cat)であった。
<プロピレン重合活性>
プロピレン重合活性(g−pp/g−触媒)=ポリプロピレンの質量(g)/オレフィン類重合用触媒中の固体触媒成分の質量(g)
また、得られた2種類のプロピレン重合体(水素ガス1.5リットル重合物および水素ガス4リットル重合物)について、それぞれ、以下の方法により、重合体の溶融流れ性(MFR)、重合体のp−キシレン可溶分の割合(XS)(質量%)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)および分子量分布(Mz/Mw)を測定した。結果を表1に示す。
<重合体の溶融流れ性(MFR)>
重合体の溶融流れ性を示すメルトフローレート(MFR)(g/10分間)は、ASTM D 1238、JIS K 7210に準じて測定した。
<重合体のp−キシレン可溶分の割合(XS)>
攪拌装置を具備したフラスコ内に、4.0gの重合体(ポリプロピレン)と、200mlのp−キシレンを装入し、外部温度をキシレンの沸点以上(約150℃)とすることにより、フラスコ内部のp−キシレンの温度を沸点下(137〜138℃)に維持しつつ、2時間かけて重合体を溶解した。その後1時間かけて液温を23℃まで冷却し、不溶解成分と溶解成分とを濾過分別した。上記溶解成分の溶液を採取し、加熱減圧乾燥によりp−キシレンを留去し、得られた残留物の質量を求め、生成した重合体(ポリプロピレン)に対する相対割合(質量%)を算出して、キシレン可溶分(XS)とした。
<重合体の分子量分布(Mw/Mn)および分子量分布(Mz/Mw)>
重合体の分子量分布(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、Z平均分子量Mzを、GPC装置(waters社製 GPC2000)を用いて、以下の条件で測定し、重合体の分子量分布(Mw/Mn)および分子量分布(Mz/Mw)を算出した。
溶媒:オルソジクロロベンゼン(ODCB)
流量:1mg/min
カラム:shodex UT−806M×3、HT−803×1
サンプル濃度:1mg/ml
(比較例1)
t-ブチル−n−プロピル(n−プロピルアミノ)メトキシシラン0.198ミリモルを、同モルのビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン(BPIQDMS)に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合触媒を形成し、プロピレン重合を行って、プロピレン重合体(水素ガス1.5リットル重合物および水素ガス4リットル重合物)を得た。
得られたプロピレン重合体の評価を実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
t-ブチル−n−プロピル(n−プロピルアミノ)メトキシシラン0.198ミリモルを、同モルのビス(パーヒドロキノリノ)(メチルアミノ)メトキシシラン(BPQMS)に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合触媒を形成し、プロピレン重合を行って、プロピレン重合体(水素ガス1.5リットル重合物および水素ガス4リットル重合物)を得た。
得られたプロピレン重合体の評価を実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
t-ブチル−n−プロピル(n−プロピルアミノ)メトキシシラン0.198ミリモルを、同モルのシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合触媒を形成し、プロピレン重合を行って、プロピレン重合体(水素ガス1.5リットル重合物および水素ガス4リットル重合物)を得た。
得られたプロピレン重合体の評価を実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
t-ブチル−n−プロピル(n−プロピルアミノ)メトキシシラン0.198ミリモルを、同モルのジエチルアミノトリエトキシシラン(DEATES)に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合触媒を形成し、プロピレン重合を行って、プロピレン重合体(水素ガス1.5リットル重合物および水素ガス4リットル重合物)を得た。
得られたプロピレン重合体の評価を実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
(比較例5)
t-ブチル−n−プロピル(n−プロピルアミノ)メトキシシラン0.198ミリモルを、同モルのジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン(DCPBEAS)に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合触媒を形成し、プロピレン重合を行って、プロピレン重合体(水素ガス1.5リットル重合物および水素ガス4リットル重合物)を得た。
得られたプロピレン重合体の評価を実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
チタン原子換算で0.0026ミリモルの固体触媒成分(A−1)に代えて、同量の固体触媒成分(A−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、重合触媒を形成し、プロピレン重合を行って、プロピレン重合体(水素ガス1.5リットル重合物および水素ガス4リットル重合物)を得た。
得られたプロピレン重合体の評価を実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
t-ブチル−n−プロピル(n−プロピルアミノ)メトキシシラン0.198ミリモルを、同モルのt-ブチルメチル(n-プロピルアミノ)メトキシシラン(BMPAMS)に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合触媒を形成し、プロピレン重合を行って、プロピレン重合体(水素ガス1.5リットル重合物および水素ガス4リットル重合物)を得た。
得られたプロピレン重合体の評価を実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
表1より、実施例1〜実施例3においては、オレフィン類重合用触媒が、外部電子供与性化合物として、特定の非対称な構造を有するジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を含むことにより、オレフィン類を重合した場合に、固体触媒の活性点に対し上記シラン化合物を構成するアルコキシ基とモノアルキルアミノ基(−NHR)の異なる吸着サイトが存在するとともに、上記シラン化合物を構成する2つのアルキル基の嵩高さが異なることから、外部電子供与性化合物による吸着力、プロピレンモノマーの重合活性点への挿入し易さ、活性点の成長速度(Kp)、連鎖移動定数(Ktr)等が異なる活性点が形成されやすく、その結果、特に水素添加量が4.0リットルと多い条件下でのオレフィン重合において、重合活性を高水準で維持しつつ、得られる重合体の高立体規則性、高MFRおよび、広い分子量分布を全て同時にバランスよく達成し得ることが分かる。
一方、表1より、比較例1〜比較例4においては、オレフィン類重合用触媒が、外部電子供与性化合物として、特定の非対称な構造を有するジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を含まないことから、特に水素添加量の多い条件下でのプロピレン重合において、所望の効果を発揮し得ないことが分かる。
すなわち、比較例1においては、オレフィン類重合用触媒が、外部電子供与性化合物として、BPIQS(ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン)を含み、係るシラン化合物を構成する極めて嵩高い環状構造を有する2つのアミノ基(パーヒドロイソキノリノ基)により、重合活性点への水素やプロピレンモノマーの装入が極度に妨害されると考えられ、このために、重合活性および得られる重合体のMFRが著しく低下することが分かる。
また、比較例2においては、オレフィン類重合用触媒が、外部電子供与性化合物として、BPQMS(ビス(パーヒドロキノリノ)(メチルアミノ)メトキシシラン)を含み、係るシラン化合物を構成する極めて嵩高い環状構造を有する2つのアミノ基(パーヒドロイソキノリノ基)により、重合活性および得られる重合体のMFRが著しく低下するとともに、固体触媒成分中の吸着サイトに対する吸着力が劣るメチルアミノ基を有することにより、高立体規則性の重合活性点が形成されにくくなると考えられ、このために、得られる重合体においてXSが増加する(立体規則性が低下する)ことが分かる。
さらに、比較例3においては、オレフィン類重合用触媒が、外部電子供与性化合物として、CMDMS(シクロヘキシルメチルジメトキシシラン)を含み、係るシラン化合物において2つのアルキル基が左右非対称の構造を有するものの、固体触媒成分への吸着サイトである2つのアルコキシ基が同一の構造を有することから、固体触媒成分への吸着力やプロピレンモノマーの重合活性点への挿入し易さ、活性点の成長速度(Kp)、連鎖移動定数(Ktr)等の異なる活性点が形成されにくいと考えられ、このために、水素添加量の多い条件でのプロピレン重合において、得られる重合体の分子量分布が広がらない(Mw/Mnが5前後である)ことが分かる。
加えて、比較例4および比較例5においては、オレフィン類重合用触媒が、外部電子供与性化合物として、DEATES(ジエチルアミノトリエトキシシラン)またはDCPBEAS(ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン)を含むことから、固体触媒成分の吸着サイト重合活性点への水素の挿入され易さが高まると考えられ、このために、水素添加量の多い条件でのプロピレン重合において、得られる重合体の分子量分布が広がらない(Mw/Mnが5前後である)ことが分かる。
(実施例4)
<オレフィン類重合用触媒(エチレン−プロピレン共重合触媒)の調製>
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム2.4ミリモル、t-ブチル-n-プロピル(n-プロピルアミノ)メトキシシラン0.24ミリモルおよび上記固体触媒成分(A−1)を6mg装入し、オレフィン類重合用触媒(エチレン−プロピレン共重合触媒)を調製した。
上記オレフィン類重合用触媒(エチレン−プロピレン共重合触媒)を含む攪拌機付オートクレーブに対し、液化プロピレン15モル(1.2リットル)と水素ガス0.20MPa(分圧)を装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で45分間、1段目のホモポリプロピレン(ホモPP)重合反応を行なった後、常圧に戻し、次いでオートクレーブ内(リアクター内)を窒素置換してからオートクレーブの計量を行ない、生成した一部のポリマーを分取し、ホモ段(1段目)の重合活性(ホモ活性)を、計量後のオートクレーブ質量からオートクレーブの風袋質量を差し引いて算出し、また、一部分取したポリマーの溶融流れ特性(MFR)を実施例1と同様の方法で測定した。
次に、計量後のオートクレーブに配管を接続し、エチレンおよびプロピレンを、エチレン/プロピレンモル比が1.0/1.0となるように上記オートクレーブ内(リアクター内)に投入した後、70℃まで昇温し、エチレン/プロピレン/水素を、それぞれ1分あたりのガス供給量(リットル/分)が2/2/0.086の割合となるよう導入しつつ、1.2MPa、70℃、60分間の条件で反応させることにより、エチレン−プロピレン共重合体を得た。
得られたエチレン−プロピレン共重合体について、エチレン−プロピレンブロック共重合活性(ICP活性)、共重合体の溶融流れ性(MFR)、EPR含有率(エチレン−プロピレンブロック共重合体中のキシレン可溶分量)、ブロック率(C.V.)および極限粘度(I.V.)を、以下の方法により測定した。
結果を表2に示す。
<エチレン−プロピレンブロック共重合活性(ICP活性)(g−ICP/(g−cat・時間))>
エチレン−プロピレンブロック共重合時におけるエチレン−プロピレンブロック共重合活性(ICP活性)は、以下の式により算出した。
エチレン−プロピレンブロック共重合活性(g−ICP/(g−cat))=((エチレン−プロピレンブロック共重合体の質量(g))/エチレン−プロピレン共重合用触媒に含まれる固体触媒成分の質量(g))
<共重合体の溶融流れ性(ICP−MFR)>
共重合体の溶融流れ性を示すメルトフローレート(MFR)(g/10分間)は、ASTM D 1238、JIS K 7210に準じて測定した。
<EPR含有率(エチレン−プロピレンブロック共重合体中のキシレン可溶分量)>
攪拌装置を具備したフラスコ内に、5.0gの共重合体(エチレン−プロピレンブロック共重合体)と、250mlのp−キシレンを装入し、外部温度をキシレンの沸点以上(約150℃)とすることにより、フラスコ内部のp−キシレンの温度を沸点下(137〜138℃)に維持しつつ、2時間かけて重合体を溶解した。その後1時間かけて液温を23℃まで冷却し、不溶解成分と溶解成分とを濾過分別した。上記溶解成分の溶液を採取し、加熱減圧乾燥によりp−キシレンを留去し、得られた残留物の質量を求め、生成した重合体(エチレン−プロピレンブロック共重合体)に対する相対割合(質量%)を算出して、EPR含有率(質量%)とした。
<ブロック率(C.V.)>
エチレン−プロピレン共重合体のブロック率(C.V.)は、下記式により求めた。
ブロック率(質量%)={(I−G+J)÷(I−F)}× 100
(ここで、Fはオートクレーブ質量(g)、GはホモPP重合終了後、未反応モノマーを除去した後のオートクレーブ質量(g)、Iは共重合反応終了後のオートクレーブ質量(g)、Jはホモ重合後に一部抜き出したポリマー量(g)である。)
<極限粘度(I.V.)>
極限粘度(I.V.)は、135℃のデカリン中で、ウベローデ型粘度計で還元粘度(ηSP/c)を測定し、下記式(ハギンスの式)
ηSP/c=[η]+k[η]2c
(ここで、[η]は極限粘度(I.V. (dl/g))、ηSP/cは還元粘度(dl/g)、cはポリマー濃度(g/dl)、kはハギンス定数(0.35)である。)において、ポリマー濃度cがゼロになるように外挿して([η](dl/g)=lim{C→0}(ηSP/c)となるよう外挿して)極限粘度(I.V.)を算出した。
(比較例6)
t-ブチル−n−プロピル(n−プロピルアミノ)メトキシシラン0.24ミリモルを、同モルのシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)に変更した以外は、実施例4と同様にして、共重合触媒を形成し、エチレン・プロピレン共重合を行って、エチレン・プロピレン共重合体を得た。
得られたエチレン・プロピレン共重合体の評価を実施例4と同様に行った。結果を表2に示す。
(比較例7)
t-ブチル−n−プロピル(n−プロピルアミノ)メトキシシラン0.24ミリモルを、同モルのジエチルアミノトリエトキシシラン(DEATES)に変更した以外は、実施例4と同様にして、共重合触媒を形成し、エチレン・プロピレン共重合を行って、エチレン・プロピレン共重合体を得た。
得られたエチレン・プロピレン共重合体の評価を実施例4と同様に行った。結果を表2に示す。
表2より、実施例4においては、本発明の特定の非対称な構造を有するジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物を外部電子供与性化合物として含有するオレフィン重合用触媒を用いてエチレン・プロピレンブロック重合を行なっており、上記ジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物がアルコキシ基とモノアルキルアミノ基(−NHR)の異なる吸着サイトが存在し、かつ、2つのアルキル基の嵩高さが異なることから、固体触媒成分上の重合活性点に対する吸着力やモノマーの挿入し易さ、活性点における共重合体の成長速度(Kp)、連鎖移動定数(Ktr)等の異なる活性点が形成されやすく重合活性持続性に優れ、その結果、得られる共重合体は高MFRで、重合体分子量の指標である極限粘度(I.V.)が同等の範囲においてブロック率(C.V.)およびEPR含有率が共に高く、しかもキシレン可溶分(EPR)中のエチレン含有率は低いことから、共重合体分子内にエチレンが高度に分散しており、溶融成型性と耐衝撃性の両方において優れることが分かる。
一方、表2より、比較例6〜比較例7においては、従来公知の外部電子供与性化合物を含有するオレフィン重合用触媒を用いてエチレン・プロピレンブロック重合を行なっており、係る外部電子供与性化合物は、特定の非対称な構造を有するジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン化合物でないことから、重合活性点に対する吸着力やモノマーの挿入し易さ、活性点における共重合体の成長速度(Kp)、連鎖移動定数(Ktr)等の似通った重合活性点が形成されやすい。その結果、得られる共重合体のブロック率(C.V.)およびEPR含有率が低下し、また、キシレン可溶分(EPR)中のエチレン含有率が高いことから、共重合体分子内に高分子量エチレン鎖の存在が示され、エチレン分散度の低下と共に機械的物性(耐衝撃性)までもが低下していることが分かる。