JP6874622B2 - 加飾フィルムおよびそれを用いた加飾成形体の製造方法 - Google Patents

加飾フィルムおよびそれを用いた加飾成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための加飾フィルム及びその加飾フィルムを用いる加飾成形体の製造方法に関する。詳しくは、熱成形時のフィルムのしわや破膜を抑制でき、樹脂成形体への十分な接着強度を発現することができるとともに、熱成形後のシボ戻りや、熱成形時にフィルム中に含まれる添加剤がフィルム外に移行するといったフィルムへのダメージが少ない、樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための加飾フィルム及びその加飾フィルムを用いる加飾成形体の製造方法に関する。
近年、VOC(揮発性有機化合物)削減要求等で塗装に替わる加飾技術への要求が高まっており、様々な加飾技術の提案が成されている。
なかでも塗膜に代わる加飾フィルムを真空圧空成形または真空成形により成形体に適用して、加飾フィルムおよび成形体が一体化された装飾成形品を形成する技術が提案され(例えば特許文献1参照)、近年、特に注目されるようになっている。
真空圧空成形および真空成形による加飾成形は、インサート成形に代表される他の加飾成形に比べ、形状の自由度が大きく、加飾フィルムの端面が加飾対象の裏側まで巻き込まれることで継ぎ目が生じないため外観に優れ、さらに、比較的低温、低圧で熱成形することができることから、加飾フィルム表面にシボ等を付与することにより、加飾成形体の表面でのシボ等の再現性に優れるといった利点を有する。
このような真空圧空成形および真空成形による加飾成形において、加飾フィルムと成形体とを貼着させる際、加飾フィルムに破膜やしわが発生したり、加飾フィルムと成形体との接着強度が十分に得られないという課題があった。また接着強度の向上のための層として、接着剤やタッキファイヤ等の使用が提案されているが、高価であること、層構成が極めて複雑になること、耐溶剤性や耐熱性が不足すること、等の問題を有している。
このような問題に対し、ポリプロピレン系樹脂からなる基体(成形体)に、ポリプロピレン系樹脂を含有する接着層を含む加飾フィルムを適用することにより、加飾フィルムと成形体とを熱融着することが提案されている(例えば特許文献2,3を参照)。特許文献2及び3において開示された発明は、加飾フィルムの接着層としてポリプロピレン系樹脂を用いるものであるが、実質的にはさらに、接着層の上に表面層、接合層やバルク層にアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート等の層を設けることを必要としている。このように異種原材料を組み合わせることによって、ドローダウン性などの熱成形性を発現させているのであり、これらの異種原材料を含まないポリプロピレン系樹脂からなる加飾フィルムでは熱成形性を確保することができず、これを貼着した成形品の表面には、穴やしわ、空気の巻き込みが生じやすく、更には破膜が発生し外観の優れる加飾成形体を得ることができなかった。特に異種原材料としてポリウレタン樹脂を含む場合、熱硬化性樹脂であるポリウレタン樹脂は、加熱時に融解しないためフィルムの形態を保持しやすく熱成形性を非常に高めるものの、リサイクル性が極めて低いという課題があった。
すなわち、特許文献2及び3に記載された加飾フィルムでは、接着性及び外観などの熱成形性を確保するため異種原材料を含み、層構成が複雑でその製造には多くの工程を必要とすること、異種原材料が組み合わされた加飾フィルムのリサイクルが困難であること、という問題を有している。
さらに、熱成形時にフィルムが加熱・融解することでフィルム表面のシボ等が消えてしまうシボ戻りという現象が生じる問題がある。
また、真空圧空成形および真空成形による加飾熱成形は、射出成形等の工程で成形された基体と加飾フィルムとの一体性が高い成形品が得られる利点がある一方、加飾フィルムが基体の表面についた傷を拾ってしまい、加飾成形体の表面に基体表面についた傷の影響による外観不良が生じやすい問題がある。
特開2002−67137号公報 特開2013−14027号公報 特開2014−124940号公報
従来の技術では、リサイクルが容易な、優れた接着性及び外観を両立できるプロピレン系樹脂からなる加飾フィルムはいまだ達成されていない。本発明の課題は、上記問題点を鑑み、十分な接着強度と製品外観を両立することができ、シボ戻りが少なく、基体の傷を目立たなくすることで製品不良の低減を可能とし、さらにリサイクルを容易とする三次元加飾熱成形に用いる加飾フィルム及びそれを用いた加飾成形体の製造方法を提供することにある。
三次元加飾熱成形においては、固体状態の樹脂成形体に固体状態の加飾フィルムを貼着させるには、成形体表面及びフィルムが十分に軟化又は融解することが必要である。そのため、成形体表面とフィルムの軟化若しくは融解に必要な熱量を加えること、又は軟化若しくは融解しやすい成形体及びフィルムを用いることが重要となる。一方で、フィルムを加熱しすぎると、フィルムは粘度が低下し、三次元加飾熱成形工程における成形体の突き上げや真空チャンバーを大気圧に戻す際の空気の流入により、フィルムが破断したり暴れたりすることが外観不良につながる。また、加熱しすぎると、フィルム中に含まれる添加剤がフィルム外に移行してしまうため、耐熱性や耐候性、造核性能といった添加剤由来の付与機能が低下する問題が生じる。さらに、シボ戻りが発生しやすくなる問題が生じる。そこで、本発明者らは、これらの課題を解決するばかりでなく、更にそれに加えて基体表面に付いた傷を目立たなくするための加飾フィルムの構成を検討した。その結果、ポリプロピレン系樹脂(A)および熱可塑性エラストマー(B)を主成分とする、良好な接着強度を発揮しうる樹脂組成物からなるシール層(I)と、フィルム全体の粘度の低下を抑制し熱成形性の保持とシボ戻りの抑制をおこなうポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)からなる層(II)の組み合わせによって前記課題を解決し得ることを見出した。
さらに、驚くべきことにこのような加飾フィルムは傷を目立たなくする効果が高く、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための加飾フィルムであって、
該加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)および熱可塑性エラストマー(B)を主成分として含み、
ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(B)との重量比率は97:3〜5:95である樹脂組成物からなるシール層(I)、並びに
ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)からなる層(II)を含み、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)は下記要件(a1)を満たし、
前記熱可塑性エラストマー(B)は下記要件(b1)〜(b3)を満たし、
前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)は下記要件(c1)〜(c2)を満たすことを特徴とする加飾フィルム。
(a1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(A))は、0.5g/10分を超える。
(b1)プロピレンおよび/またはブテンを主成分とする熱可塑性エラストマーである。
(b2)密度は、0.850〜0.950g/cmである。
(b3)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))は、0.1〜100g/10分である。
(c1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(C))は、40g/10分以下である。
(c2)ひずみ硬化度λは、1.1以上である。
[2] 前記熱可塑性エラストマー(B)は、エチレン含量が50重量%未満であるプロピレン−エチレン共重合体、エチレン含量が50重量%未満であるブテン−エチレン共重合体、エチレン含量が50重量%未満であるプロピレン−エチレンーブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、またはブテン単独重合体であることを特徴とする[1]に記載の加飾フィルム。
[3] 前記熱可塑性エラストマー(B)は、下記要件(b4)を満たすことを特徴とする[1]又は[2]に記載の加飾フィルム。
(b4)融解ピーク温度(Tm(B))が30〜170℃である。
[4] 前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)は、下記要件(c1’)〜(c2’)を満たすことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の加飾フィルム。
(c1’)MFR(B)は、20g/10分以下である。
(c2’)ひずみ硬化度λは、1.8以上である。
[5] 前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)は、下記要件(c1”)〜(c2”)を満たすことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の加飾フィルム。
(c1”)MFR(B)は、12g/10分以下である。
(c2”)ひずみ硬化度λは、2.3以上である。
[6] 前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)は、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1)を含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の加飾フィルム。
[7] 前記ポリプロピレン系樹脂(C−1)は、架橋法以外の方法により製造されたゲルの少ないポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする[6]に記載の加飾フィルム。
[8] [1]〜[7]のいずれか一項に記載の加飾フィルムを準備するステップ、樹脂成形体を準備するステップ、減圧可能なチャンバーボックス中に、前記樹脂成形体及び前記加飾フィルムをセットするステップ、前記チャンバーボックス内を減圧するステップ、前記加飾フィルムを加熱軟化させるステップ、前記樹脂成形体に前記加飾フィルムを押し当てるステップ、前記減圧したチャンバーボックス内を大気圧に戻す又は加圧するステップを含むことを特徴とする加飾成形体の製造方法。
[9] 前記樹脂成形体は、プロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とする[8]に記載の加飾成形体の製造方法。
本発明の加飾フィルムによれば、三次元加飾熱成形性が良好で、成形体との接着力が高く短時間の加熱時間で成形体への貼着が可能なのでシボ戻りが抑えられ、成形体表面の傷を目立ちにくくできるため三次元加飾成形体の外観を良好にでき、しかもリサイクル性が良好な加飾フィルムを得ることが可能である。
本発明の加飾成形体の製造方法によれば、その表面に穴やしわがなく、加飾フィルムと樹脂成形体の間に空気の巻き込みが無く、シボなどのテクスチャーの再現性が良好で、傷が目立たない美麗な加飾成形体を得ることができる。また、従来接着が困難であった樹脂成形体に対し、加飾フィルムを綺麗に貼着することができる。さらに、このようにして得られた加飾成形体は、加飾フィルムの構成材料がポリプロピレン系樹脂であり、熱硬化性樹脂層を含まないため又は含ませなくてよいため、リサイクルしても外観や性能の低下が小さく、リサイクル適性が高い。
本発明の加飾フィルムの層構成の例を示す図である。 本発明の加飾成形体の製造方法に用いる装置の概要を説明する模式的断面図である。 図2の装置内に樹脂成形体および加飾フィルムをセットした様子を説明する模式的断面図である。 図2の装置内を加熱および減圧する様子を説明する模式的断面図である。 図2の装置内で樹脂成形体に加飾フィルムを押し当てる様子を説明する模式的断面図である。 図2の装置内を大気圧に戻す又は加圧する様子を説明する模式的断面図である。 得られた加飾成形体において、不要な加飾フィルムのエッジがトリミングされた様子を説明する模式的断面図である。 得られた加飾成形体の層構成の例を示す図である。
本明細書において、加飾フィルムとは、成形体を装飾するためのフィルムをいう。加飾成形とは、加飾フィルムと成形体とを貼着させる成形をいう。三次元加飾熱成形とは、加飾フィルムと成形体とを貼着させる成形であって、加飾フィルムを成形体の貼着面に沿って熱成形すると同時に貼着させる工程を有し、該工程が、加飾フィルムと成形体との間に空気が巻き込まれるのを抑制するために、減圧(真空)下で熱成形を行い、加熱した加飾フィルムを成形体に貼着させ、圧力解放(加圧)により、密着させる工程である、成形をいう。以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
本発明における加飾フィルムは、樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための加飾フィルムであって、該加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)および熱可塑性エラストマー(B)を主成分として含み、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(B)との重量比率は97:3〜5:95である樹脂組成物からなるシール層(I)、並びにポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)からなる層(II)を含み、前記ポリプロピレン系樹脂(A)は下記要件(a1)を満たし、
前記熱可塑性エラストマー(B)は下記要件(b1)〜(b3)を満たし、
前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)は下記要件(c1)〜(c2)を満たすことを特徴とする加飾フィルムである。
(a1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(A))は、0.5g/10分を超える。
(b1)プロピレンおよび/またはブテンを主成分とする熱可塑性エラストマーである。
(b2)密度は、0.850〜0.950g/cmである。
(b3)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))は、0.1〜100g/10分である。
(c1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(C))は、40g/10分以下である。
(c2)ひずみ硬化度λは、1.1以上である。
[シール層(I)]
本発明の加飾フィルムはポリプロピレン系樹脂(A)および熱可塑性エラストマー(B)を主成分として含む樹脂組成物からなるシール層(I)を含むものである。シール層(I)は、三次元加飾熱成形の際に、樹脂成形体(基体)と接する層である。シール層(I)を設けることにより、三次元加飾熱成形時のフィルム加熱時間が短くても十分な接着強度が発現し、さらに基体表面についた傷を目立ちにくくすることができる。
[ポリプロピレン系樹脂(A)]
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン−α−オレフィン共重合体(ランダムポリプロピレン)、プロピレンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)等の様々なタイプのプロピレン系重合体、又はそれらの組み合わせを選択することができる。プロピレン系重合体は、プロピレンモノマー由来の重合単位を50mol%以上含んでいることが好ましい。プロピレン系重合体は、極性基含有モノマー由来の重合単位を含まないものであることが好ましい。
(a1)メルトフローレート(MFR(A))
シール層(I)に含まれるポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)MFR(A)は、0.5g/10分を超えることが必要であり、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは2g/10分以上である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の緩和が十分に進行し十分な接着強度を発揮することができると共に、基体についた傷が目立ちにくくなる。MFR(A)の上限に制限はないが、100g/10分以下であることが好ましい。前記の範囲であると、物性低下による接着強度の悪化が生じることがない。
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂および後述するポリプロピレン系樹脂組成物のMFRの測定は、ISO 1133:1997 Conditions Mに準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定した。単位はg/10分である。
(a2)融解ピーク温度(Tm(A))
ポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピーク温度(DSC融解ピーク温度、本明細書においては「融点」と称する場合もある)(Tm(A))は、110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の成形性が良好である。融解ピーク温度の上限に制限はないが、170℃以下であることが好ましく、前記の範囲であると、十分な接着強度を発揮することができる。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(A)は、チーグラー触媒、メタロセン触媒等により重合される樹脂であることができる。すなわち、ポリプロピレン系樹脂(A)は、チーグラー触媒系プロピレン重合体、メタロセン触媒系プロピレン重合体であることができる。
[熱可塑性エラストマー(B)]
本発明のシール層(I)で必須成分として用いられる熱可塑性エラストマー(B)は、下記の特性(b1)〜(b3)、好ましくはさらに(b4)及び/又は(b5)を有するものである。
(b1)組成
本発明の熱可塑性エラストマー(B)はプロピレンおよび/またはブテンを主成分とする熱可塑性エラストマーである。ここで、「プロピレンおよび/またはブテンを主成分とする熱可塑性エラストマー」は、(i)プロピレンを主成分とする熱可塑性エラストマー、(ii)ブテンを主成分とする熱可塑性エラストマー、(iii)プロピレンとブテンを合計した成分を主成分とする熱可塑性エラストマーを包含する。なお、本明細書において、単位「wt%」は、重量%を意味する。
熱可塑性エラストマー(B)中のプロピレンまたはブテンの含有量については特に制限はないが、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上である。例えば、熱可塑性エラストマー(B)は35重量%を超えてプロピレンまたはブテンを含有することができる。
また、熱可塑性エラストマー(B)はプロピレンおよびブテンを両方含んでもよく、その場合は、プロピレンとブテンを合計した成分が熱可塑性エラストマー(B)の主成分となり、プロピレンとブテンの含有量の合計は好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上である。プロピレンおよびブテンの両方が含まれる場合は、例えば、熱可塑性エラストマー(B)は、プロピレン及びブテンを合計して35重量%を超えて含有することができる。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮し、フィルムの加熱時間を短くすることができ、基体についた傷を目立ちにくくする効果が高い。なお、プロピレンまたはブテンを主成分とする熱可塑性エラストマーは、ポリプロピレン系樹脂(A)への均一分散性が高く、それが基体についた傷を目立ちにくくする効果をより高めていると考えられる。なお、熱可塑性エラストマー(B)は、プロピレン又はブテンの単独の成分とすることもできる。
(b2)密度
熱可塑性エラストマー(B)の密度は0.850〜0.950g/cmであることが必要であり、好ましくは0.855〜0.940g/cm、さらに好ましくは0.86〜0.93g/cmである。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮し、さらにフィルム成形性も良好になる。
(b3)メルトフローレート(MFR(B))
熱可塑性エラストマー(B)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)MFR(B)は、0.1〜100g/10分であることが必要であり、好ましくは0.5〜50g/10分、さらに好ましくは1〜30g/10分である。前記の範囲であると、基体についた傷を目立ちにくくする効果が高い。
(b4)融解ピーク温度(Tm(B))
熱可塑性エラストマー(B)の融解温度ピーク(DSC融解ピーク温度)Tm(B)は、30〜170℃であることが好ましく、より好ましくは35〜168℃、さらに好ましくは40〜165℃以上である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮することができる。
(b5)エチレン含量[E(B)]
本発明の熱可塑性エラストマー(B)は、上述特性(b1)〜(b3)を満たせば、適宜、選択して使用することができるが、エチレン含量が50重量%未満であるプロピレン−エチレン共重合体、エチレン含量が50重量%未満であるブテン−エチレン共重合体、エチレン含量が50重量%未満であるプロピレン−エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、またはブテン単独重合体であることが好ましい。
上記プロピレン−エチレン共重合体、ブテン−エチレン共重合体又はプロピレン−エチレン−ブテン共重合体のエチレン含量[E(B)]は、より好ましくは45重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下であり、前記範囲であると三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮することができる。
[エチレン含量[E(B)]の算出方法]
熱可塑性エラストマー(B)がエチレンを含むエラストマーの場合、熱可塑性エラストマー(B)のエチレン含量[E(B)]は13C−NMR測定で得られた積分強度から求めることができる。
[算出方法1(二元系)]
二種類の繰り返し単位から構成され二元系のエラストマー(プロピレン−エチレン共重合体又はブテン−エチレン共重合体等)におけるエチレン含量[E(B)]について説明する。エチレン−α−オレフィン二元系エラストマーのエチレン含量は(式−1−1)、(式1−1−2)で求めることができる。
エチレン含量(mol%)=IE×100/(IE+IX) ・・・(式−1−1)
エチレン含量(重量%)=[エチレン含量(mol%)×エチレンの分子量]×100/[エチレン含量(mol%)×エチレンの分子量+α−オレフィン含量(mol%)×α−オレフィンの分子量] ・・・(式−1−2)
ここで、IE、IXは、それぞれエチレン、α−オレフィンについての積分強度であり、下記(式―2)、(式―3)により求めることができる。
IE=(Iββ+Iγγ+Iβδ+Iγδ+Iδδ)/2+(Iαγ+Iαδ)/4 ・・・(式−2)
IX=Iαα+(Iαγ+Iαδ)/2 ・・・(式−3)
ここで、右辺のIの下つきの記号は、下記構造式(a)〜(d)に記載の炭素を示す。例えばααはα−オレフィン連鎖に基づくメチレン炭素を示し、Iααはα−オレフィン連鎖に基づくメチレン炭素のシグナルの積分強度を表す。
Figure 0006874622

構造式(d)中、nは1以上の奇数を表す。
以下に、(式―2)、(式―3)に用いる積分強度について記載する。
プロピレン−エチレン共重合体であれば、(式―2)、(式―3)に以下の積分強度を代入し、エチレン含量を求める。
ββ=I25.0−24.2
γγ=I30.8−30.6
βδ=I27.8−26.8
γδ=I30.6−30.2
δδ=I30.2−28.0
αα=I48.0−43.9
αγ+Iαδ=I39.0−36.2
ここで、Iは積分強度を、右辺のIの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI39.0−36.2は39.0ppmと36.2ppmの間に検出した13Cシグナルの積分強度を示す。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
ブテン−エチレン共重合体であれば、(式−2)、(式−3)に以下の積分強度の値を代入し、エチレン含量[E(B)]を求める。
ββ=I24.6−24.4
γγ=I30.9−30.7
βδ=I27.8−26.8
γδ=I30.5−30.2
δδ=I30.2−28.0
αα=I39.3−38.1
αγ+Iαδ=I34.5−33.8
[算出方法2(三元系)]
次に、三種類の繰り返し単位から構成される三元系エラストマーにおけるエチレン含量[E(B)]について説明する。プロピレン−エチレン−ブテン三元系エラストマーのエチレン含量は、下記(式−4−1)、(式−4−2)で求めることができる。
エチレン含量(mol%)=IE×100/(IE+IP+IB) ・・・(式−4−1)
エチレン含量[E(B)](重量%)=[エチレン含量(mol%)×エチレンの分子量]×100/[エチレン含量(mol%)×エチレンの分子量+プロピレン含量(mol%)×プロピレンの分子量+ブテン含量(mol%)×ブテンの分子量] ・・・(式−4−2)
ここで、IE、IP、IBはそれぞれ、エチレン、プロピレン、ブテンについての積分強度であり、(式−5)、(式−6)、(式−7)で求めることができる。
IE=(Iββ+Iγγ+Iβδ+Iγδ+Iδδ)/2+(Iαγ(P)+Iαδ(P)+Iαγ(B)+Iαδ(B))/4 ・・・(式−5)
IP=1/3×〔ICH3(P)+ICH(P)+Iαα(PP)+1/2×(Iαα(PB)+Iαγ(P)+Iαδ(P))〕 ・・・(式−6)
IB=1/4×〔(ICH3(B)+ICH(B)+I2B2+Iαα(BB))+1/2×(Iαα(PB)+Iαγ(B)+Iαδ(B))〕 ・・・(式−7)
ここで、添え字の(P)は、プロピレン由来のメチル基分岐に基づくシグナルであることを意味し、同様に(B)はブテン由来のエチル基分岐に基づくシグナルであることを意味する。
また、αα(PP)は、プロピレン連鎖に基づくメチレン炭素のシグナルを意味し、同様にαα(BB)はブテン連鎖に基づくメチレン炭素のシグナルを、αα(PB)はプロピレン−ブテン連鎖に基づくメチレン炭素のシグナルを意味する。
ここで、γγシグナルは、プロピレン−プロピレン−エチレンと並んだ中心のプロピレンのメチン炭素CH(PPE)のシグナルの裾と重なるため、γγのシグナルを分離することは困難である。
γγシグナルはエチレン連鎖が2個の構造式(c)で現れ、エチレン由来のγγの積分強度と構造式(c)のβδの積分強度には(式−8)が成り立つ。
βδ(構造式(c))=2×Iγγ ・・・(式−8)
また、βδは、エチレン連鎖が3個以上の構造式(d)で現れ、構造式(d)のβδの積分強度はγδの積分強度と等しく(式−9)が成り立つ。
βδ(構造式(d))=Iγδ ・・・(式−9)
よって、構造式(c)と構造式(d)に基づくβδは(式−10)で求まる。
βδ=Iβδ(構造式(c))+Iβδ(構造式(d))=2×Iγγ+Iγδ ・・・(式−10)
すなわち、Iγγ=(Iβδ−Iγδ)/2 ・・・(式−10’)
よって、(式−10’)を(式−5)に代入すると、IEは(式−11)に置き換えることができる。
IE=(Iββ+Iδδ)/2+(Iαγ(P)+Iαδ(P)+Iαγ(B)+Iαδ(B)+3×Iβδ+Iγδ)/4 ・・・(式−11)
ここで、βδシグナルは1−ブテンに基づくエチル分岐の重なりを補正し、(式−12)となる。
βδ=Iαγ(P)+Iαδ(P)+Iαγ(B)+Iαδ(B)−2×Iββ ・・・(式−12)
(式−11)、(式−12)より、IEは(式−13)となる。
IE=Iδδ/2+Iγδ/4−Iββ+Iαγ(P)+Iαδ(P)+Iαγ(B)+Iαδ(B) ・・・(式−13)
(式−13)、(式−6)、(式−7)に以下を代入し、エチレン含量を求める。
ββ=I25.2−23.8
γδ=I30.4−30.2
δδ=I30.2−29.8
αγ(P)+Iαδ(P)=I39.5−37.3
αγ(B)+Iαδ(B)=I34.6−33.9
CH3(P)=I22.6−19.0
CH(P)=I29.5−27.6+I31.2−30.4+I33.4−32.8
αα(PP)=I48.0−45.0
CH3(B)=I11.4−10.0
CH(B)=I35.5−34.7+I37.4−36.8+I39.7−39.6
αα(BB)=I40.3−40.0
αα(PB)=I44.2−42.0
2B2=I26.7−26.4
なお、各シグナルの帰属は、次の5つの文献を参照した;
Macromolecules,Vol.10,No.4,1977、
Macromolecules,Vol.36,No.11,2003、
Analytical Chemistry,Vol.76,No.19,2004、
Macromolecules,2001,34,4757−4767、
Macromolecules,Vol.25,No.1,1992
また、熱可塑性エラストマー(B)は本発明の効果を損なわない限り、プロピレンとブテン以外のα―オレフィンとの共重合体であってもよい。α−オレフィンとしては、具体的にはエチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で又は組み合せて用いることができる。これらの中では、特に1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく用いられる。
このような熱可塑性エラストマーは、触媒存在下、各モノマーを共重合することにより製造される。具体的には、熱可塑性エラストマーは、オレフィンの重合触媒として、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の触媒を使用して、気相法、溶液法、高圧法、スラリー法等のプロセスで、プロピレン、1−ブテン、エチレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンを共重合させて、製造することができる。
また、本発明のシール層(I)に用いる熱可塑性エラストマー(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
このような熱可塑性エラストマーは、市販品として、三井化学(株)製のタフマーXMシリーズ、タフマーBLシリーズ、タフマーPNシリーズや、エクソンモービルケミカル社製のVISTAMAXXシリーズなどを挙げることができる。
[樹脂組成物]
シール層(I)を構成する樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂(A)および熱可塑性エラストマー(B)を含む。前記樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(B)との混合物又は溶融混練物であってもよいし、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(B)との逐次重合物であってもよい。
シール層(I)を構成する樹脂組成物において、ポリプロピレン系樹脂(A)および熱可塑性エラストマー(B)の重量比((A):(B))は、97:3〜5:95で構成される必要があり、好ましくは95:5〜10:90、より好ましくは93:7〜20:80である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮し、フィルムの加熱時間を短くすることができる上、シール層(I)と層(II)の接着性が良好になる。
また、樹脂組成物には、添加剤、フィラー、その他の樹脂成分などが含まれていてもよい。添加剤、フィラー、その他の樹脂成分などの総量は、樹脂組成物に対して50重量%以下であることが好ましい。
添加剤としては、酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤などの、ポリプロピレン系樹脂に用いることのできる公知の各種添加剤を配合することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオ系酸化防止剤などを例示することができる。中和剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩類等を例示することができる。光安定剤および紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン類、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類などを例示することができる。
結晶核剤としては、芳香族カルボン酸金属塩、芳香族リン酸金属塩、ソルビトール系誘導体、ロジンの金属塩等、アミド系核剤を挙げることができる。これらの結晶核剤の中では、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)アルミニウム、ビス(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−6−ヒドロキシ−12H−ジベンゾ[d,g][1,2,3]ジオキサホスホシン−6−オキシド)水酸化アルミニウム塩と有機化合物の複合体、p−メチル−ベンジリデンソルビトール、p−エチル−ベンジリデンソルビトール、1,2,3−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール、ロジンのナトリウム塩などを例示することができる。
滑剤としては、ステアリン酸アマイドなどの高級脂肪酸アマイド類などを例示することができる。帯電防止剤としては、グリセリン脂肪酸モノエステルなどの脂肪酸部分エステル類などを例示することができる。金属不活性剤としては、トリアジン類、フォスフォン類、エポキシ類、トリアゾール類、ヒドラジド類、オキサミド類などを例示することができる。
フィラーとしては、無機充填剤、有機充填剤などの、ポリプロピレン系樹脂に用いることのできる公知の各種充填剤を配合することができる。無機充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ガラスファイバーやカーボンファイバーなどを例示することができる。また有機充填剤としては、架橋ゴム微粒子、熱硬化性樹脂微粒子、熱硬化性樹脂中空微粒子、などを例示することができる。
その他の樹脂成分としては、変性ポリオレフィンや石油樹脂、その他の熱可塑性樹脂等を例示することができる。
樹脂組成物の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、添加剤、フィラー、その他の樹脂成分等とを溶融混練する方法、ポリプロピレン系樹脂(A)と添加剤、フィラーその他の樹脂成分等を溶融混練したものに、熱可塑性エラストマー(B)をドライブレンドする方法、ポリプロピレン系樹脂(A)を熱可塑性エラストマー(B)に加え添加剤、フィラー、その他の樹脂組成物等をキャリアレジンに高濃度で分散させたマスターバッチをドライブレンドする方法等によって製造することができる。
[層(II)]
本発明の加飾フィルムに含まれる層(II)は、ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)を含む。加飾フィルムに、層(II)を設けることにより、三次元加飾熱成形時にフィルムが破断したり暴れたりすることによる外観不良の発生を抑制することが出来る。これにより、加飾フィルムは、熱成形性を改良するための熱成形性に優れる熱硬化性樹脂層を含まなくてもよい。
層(II)は、ポリプロピレン系樹脂(C)からなることも、複数のポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂組成物(C)からなることもでき、また、ポリプロピレン系樹脂(C)以外に、他のポリプロピレン系樹脂が存在していてもよい。層(II)がポリプロピレン系樹脂(C)からなるときには、ポリプロピレン系樹脂(C)は、後述する要件(c1)および(c2)を満たす。層(II)がポリプロピレン系樹脂組成物(C)からなるときには、ポリプロピレン系樹脂組成物(C)は、後述する要件(c1)および(c2)を満たす。また、ポリプロピレン系樹脂(C)以外に、他のポリプロピレン系樹脂が存在する場合には、ポリプロピレン系樹脂組成物(C)に加え、少なくともポリプロピレン系樹脂(C)が、後述する要件(c1)および(c2)を満たすとよい。ポリプロピレン系樹脂(C)および他のポリプロピレン系樹脂のブレンドは、特に制限されるものではなく、ペレットおよび/またはパウダーの混合、溶融ブレンド、或は溶液ブレンドのいずれでもよく、これらの組合せでもよい。
[ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)]
次に、層(II)を構成するポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)について説明する。
(c1)メルトフローレート(MFR(C))
本発明において、ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)は、粘度が低下しすぎると十分な成形安定性は得られないため、ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)は、一定の粘度を有する必要がある。本発明では、この粘度の指標としてMFR(230℃、2.16kg荷重)を規定する。
本発明において、ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)MFR(C)は、以下の要件(c1)を満たし、好ましくは要件(c1′)を満たし、より好ましくは要件(c1″)を満たす。ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)のMFR(C)を下記の値以下にすることにより、外観が良好な加飾成形体を得ることができる。
(c1)MFR(C)が40g/10分以下であること。
(c1′)MFR(C)が20g/10分以下であること。
(c1″)MFR(C)が12g/10分以下であること。
ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)のMFR(C)の下限については特に制限はないが、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上である。MFR(C)を上記の値以上にすることにより、加飾フィルムの製造時の成形性が向上して、フィルム表面にシャークスキンや界面荒れと呼ばれる外観不良が発生することを抑制できる。
(c2)ひずみ硬化度λ
ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)のひずみ硬化度λは、以下の要件(c2)を満たし、好ましくは要件(c2′)を満たし、より好ましくは要件(c2″)を満たす。ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)のひずみ硬化度λを下記の範囲の値にすることにより、加飾熱成形時の成形性が良好で、外観に優れる加飾成形体を得ることができる。
(c2)ひずみ硬化度λが1.1以上であること。
(c2′)ひずみ硬化度λが1.8以上であること。
(c2″)ひずみ硬化度λが2.3以上であること。
ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)のひずみ硬化度λの上限については特に制限はないが、好ましくは50以下、より好ましくは20以下である。ひずみ硬化度λを上記範囲の値にすることにより、加飾フィルムの外観を良好にすることができる。
ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)のひずみ硬化度λは、伸長粘度測定におけるひずみ硬化性の測定に基づき求められる。伸長粘度のひずみ硬化性(非線形性)については「講座・レオロジー」日本レオロジー学会編、高分子刊行会、1992、pp.221−222に記載されており、本発明では、同書の図7−20に図示された求め方に準じた方法でひずみ硬化度λを算出するものとし、剪断粘度の値としてη(0.01)を、伸長粘度の値としてηe(3.5)を採用し、ひずみ硬化度λを下記式(b−2)で定義する。
λ=ηe(3.5)/{3×η(0.01)} 式(b−2)
上記式(b−2)において、η(0.01)は動的周波数掃引実験により測定される、測定温度180℃、角振動数ω=0.01rad/sにおける複素粘性率[単位:Pa・s]であり、複素粘性率ηは、複素弾性率G[単位:Pa]と角振動数ωから、η=G/ωにて計算される。またηe(3.5)は伸長粘度測定により測定される、測定温度180℃、歪速度1.0s−1、ひずみ量3.5における伸長粘度である。
通常、これらの粘弾性測定で得られるデータは、離散的な各振動数あるいは測定時間間隔での弾性率や粘度等の数値の集まりとなる。従って、本発明で使用したものと異なる装置や条件で測定を実施した場合に、必ずしも角振動数ω=0.01rad/sでの複素粘性率η(0.01)やひずみ量3.5での伸長粘度ηe(3.5)のデータが存在しない場合があり得るが、その場合はその前後のデータを使用して線形補間、スプライン補間等の内挿を行う事で該当の値を推定することは許される。補間を行う際には、応力や時間のスケールは対数スケールとすることが常法である。
このとき、伸長粘度にひずみ硬化性(非線形性)を有さない試料であれば、ひずみ硬化度λは約1(例えば、0.9以上1.1未満)又はより小さい値を示し、ひずみ硬化性(非線形性)が強くなるほどひずみ硬化度λの値は大きくなる。
一般の結晶性ポリプロピレンは直鎖状高分子であり、通常ひずみ硬化性を有さない。これに対し、本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(C)は、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1)であることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)がひずみ硬化性を発現することが出来る。
本発明における長鎖分岐構造とは、分岐を構成する炭素骨格(分岐の主鎖)の炭素数が数十以上、分子量では数百以上からなる分子鎖による分岐構造を言う。この長鎖分岐構造は、1−ブテンなどのα−オレフィンと共重合を行うことにより形成される短鎖分岐とは区別される。
ポリプロピレン系樹脂に長鎖分岐構造を導入する方法には、長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンに高エネルギーイオン化放射線を照射する方法(特開昭62−121704号公報)や、長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンに有機過酸化物を反応させる方法(特表2001−524565号公報)や、末端不飽和結合を有するマクロモノマーを製造し、それをプロピレンと共重合する方法(特表2001−525460号公報)等が挙げられるが、いずれの方法を用いて製造された場合でも、ポリプロピレン系樹脂のひずみ硬化度λを大きくすることができる。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1)は、長鎖分岐構造を有している限り特に限定されるものではないが、架橋法以外の方法により製造されポリプロピレン系樹脂であることが好ましく、櫛型鎖構造を有し、重合時に長鎖分岐構造が形成されるマクロマー共重合法を用いる方法で得られたものが好ましい。このような方法の例としては、例えば、特表2001−525460号公報や、特開平10−338717号公報、特表2002−523575号公報、特開2009−57542号公報、特許5027353号公報、特開平10−338717号公報に開示される方法が挙げられる。特に特開2009−57542号公報のマクロマー共重合法はゲルの発生が無く長鎖分岐含有ポリプロピレン系樹脂(C−1)を得ることができ、本発明に好適である。
ポリプロピレン中に長鎖分岐構造を有することは、樹脂のレオロジー特性による方法、分子量と粘度との関係を用いて分岐指数g’を算出する方法、13C−NMRを用いる方法などによって定義される。本発明においては、下記に示すように分岐指数g’及び/又は13C−NMRによって長鎖分岐構造を定義する。
[分岐指数g’]
分岐指数g’は、長鎖分岐構造に関する、直接的な指標として知られている。「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983)に詳細な説明があるが、分岐指数g’の定義は、以下の通りである。
分岐指数g’=[η]br/[η]lin
[η]br:長鎖分岐構造を有するポリマー(br)の固有粘度
[η]lin:ポリマー(br)と同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度
上記定義から明らかな通り、分岐指数g’が1よりも小さな値を取ると、長鎖分岐構造が存在すると判断され、長鎖分岐構造が増えるほど分岐指数g’の値は、小さくなっていく。
分岐指数g’は、光散乱計と粘度計を検出器に備えたGPCを使用することによって、絶対分子量Mabsの関数として得ることができる。本発明における分岐指数g’の測定方法については特開2015−40213号公報に詳細が記載されているが、下記の通りである。
[測定方法]
GPC:Alliance GPCV2000(Waters社製)
検出器:接続順に記載
多角度レーザー光散乱検出器(MALLS):DAWN−E(Wyatt Technology社製)
示差屈折計(RI):GPC付属
粘度検出器(Viscometer):GPC付属
移動相溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン(Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)
移動相流量:1mL/分
カラム:東ソー社製 GMHHR−H(S) HTを2本連結
試料注入部温度:140℃
カラム温度:140℃
検出器温度:全て140℃
試料濃度:1mg/mL
注入量(サンプルループ容量):0.2175mL
[解析方法]
多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)から得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)、および、Viscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献1〜4を参考にして計算を行う。
参考文献:
1.「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983. Chapter1.)
2.Polymer, 45, 6495−6505(2004)
3.Macromolecules, 33, 2424−2436(2000)
4.Macromolecules, 33, 6945−6952(2000)
本発明の加飾フィルムにおいて、ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)がゲルを含有していると、フィルム外観が悪化することから、ゲルが含有されていないポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)を用いることが好ましい。とりわけ前述の長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1)として、特定の構造を有するメタロセン触媒を用いて末端不飽和結合を有するマクロモノマーを製造し、それをプロピレンと共重合することによって長鎖分岐構造を形成する方法を用いて製造されたものが好ましい。特に、下記に記載する、絶対分子量Mabsが100万における分岐指数g’が0.3以上1.0未満を満たすものが好ましく、より好ましくは0.55以上0.98以下、更に好ましくは0.75以上0.96以下、最も好ましくは0.78以上0.95以下である。本発明において「ゲルの少ない」とは、絶対分子量Mabsが100万におけるポリプロピレン系樹脂の分岐指数g’が上記範囲内にあることをいう。分岐指数g’がこの範囲にあると、高度に架橋した成分が形成されておらず、ゲルの生成が無い、或いは非常に少ない為、特にポリプロピレン系樹脂(C−1)を含む層(I)が製品の表面を構成する場合に外観を悪化させない。
[13C−NMR]
13C―NMRは、短鎖分岐構造と長鎖分岐構造を区別することができる。Macromol.Chem.Phys.2003,vol.204,1738に詳細な説明があるが、その概要は以下の通りである。
長鎖分岐構造を有するプロピレン系重合体は、下記構造式(1)に示すような特定の分岐構造を有する。構造式(1)において、C、C、Cは、分岐炭素に隣接するメチレン炭素を示し、Cbrは、分岐鎖の根元のメチン炭素を示し、P、P、Pは、プロピレン系重合体残基を示す。
プロピレン系重合体残基P、P、Pは、それ自体の中に、構造式(1)に記載されたCbrとは、別の分岐炭素(Cbr)を含有することもあり得る。
Figure 0006874622
このような分岐構造は、13C−NMR分析により同定される。各ピークの帰属は、Macromolecules,Vol.35、No.10.2002年、3839−3842頁の記載を参考にすることができる。すなわち、43.9〜44.1ppm,44.5〜44.7ppm及び44.7〜44.9ppmに、それぞれ1つ、合計3つのメチレン炭素(C、C、C)が観測され、31.5〜31.7ppmにメチン炭素(Cbr)が観測される。上記の31.5〜31.7ppmに観測されるメチン炭素を、以下、分岐メチン炭素(Cbr)と略称することがある。
長鎖分岐構造を有するプロピレン系重合体の13C−NMRのスペクトルは、分岐メチン炭素Cbrに近接する3つのメチレン炭素が、ジアステレオトピックに非等価に3本に分かれて観測されることが特徴である。
13C−NMRで帰属されるこのような分岐鎖は、プロピレン系重合体の主鎖から分岐した炭素数5以上のプロピレン系重合体残基を示し、それと炭素数4以下の分岐とは、分岐炭素のピーク位置が異なることにより、区別できるので、本発明においては、この分岐メチン炭素のピークが確認されることにより、長鎖分岐構造の有無を判断することができる。
なお、本発明における13C−NMRの測定方法については下記の通りである。
13C−NMR測定方法]
試料200mgをo−ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(CBr)=4/1(体積比)2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ溶解し、13C−NMR測定を行った。
13C−NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400M型NMR装置を用いて行った。
試料の温度120℃、プロトン完全デカップリング法で測定を実施した。その他の条件は以下の通りである。
パルス角:90°
パルス間隔:4秒
積算回数:20000回
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチル炭素のピークを1.98ppmとして設定し、他の炭素によるピークの化学シフトはこれを基準とした。
44ppm付近のピークを使用して長鎖分岐量を算出することができる。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1)の13C−NMRスペクトルは、44ppm付近のピークから定量された長鎖分岐量が0.01個/1000トータルプロピレン以上であることが好ましく、より好ましくは0.03個/1000トータルプロピレン以上、さらに好ましくは0.05個/1000トータルプロピレン以上である。この値が大きすぎると、ゲル・フィッシュアイ等の外観不良の原因となるため、好ましくは1.00個/1000トータルプロピレン以下、より好ましくは0.50個/1000トータルプロピレン以下、さらに好ましくは0.30個/1000トータルプロピレン以下である。
このような長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1)は、ポリプロピレン系樹脂組成物(C)中に、ひずみ硬化性が付与されるのに十分な量含まれていればよい。長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1)は、ポリプロピレン系樹脂組成物(C)100重量%中、好ましくは1〜100重量%、より好適には5重量%以上含まれる。
本発明における長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1)は、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン−α−オレフィン共重合体(ランダムポリプロピレン)、プロピレンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)等の様々なタイプのプロピレン系重合体、又はそれらの組み合わせを選択することができる。プロピレン系重合体は、プロピレンモノマー由来の重合単位を50mol%以上含んでいることが好ましい。
融解ピーク温度(Tm(C))
ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)のDSC測定における融解ピーク温度(Tm(C))は、特に限定されるものではないが、好ましくは130℃以上、より好ましくは140〜170℃、更に好ましくは150〜168℃であるとよい。ポリプロピレン系樹脂(C)は、このような融点をもつプロピレン単独重合体あるいはプロピレン−α−オレフィン共重合体であることが好ましく、また、融点が高くても低結晶性の成分を含むと耐傷つき性や耐溶剤性は低下するため、ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)は、エチレン含有量が50〜70重量%のエチレン−α−オレフィン共重合体を含まないことが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂組成物(C)には、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1)以外の複数のポリプロピレン系樹脂や、添加剤、フィラー、着色剤、その他の樹脂成分などが含まれていてもよい。このとき、添加剤、フィラー、着色剤、その他の樹脂成分などの総量は、これらを包含するポリプロピレン系樹脂組成物(C)に対して50重量%以下であることが好ましい。
本発明の加飾成形体が、着色された成形体として成形される場合、加飾フィルムにのみ着色剤を用いればよいため、樹脂成形体全体に着色する場合と比べ、高価な着色剤の使用を抑制することが可能である。また着色剤を配合することに伴う物性変化を抑制することができる。
添加剤としては、酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤などの、ポリプロピレン系樹脂に用いることのできる公知の各種添加剤を配合することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオ系酸化防止剤などを例示することができる。中和剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩類等を例示することができる。光安定剤および紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン類、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類などを例示することができる。
結晶核剤としては、芳香族カルボン酸金属塩、芳香族リン酸金属塩、ソルビトール系誘導体、ロジンの金属塩等、アミド系核剤を挙げることができる。これらの結晶核剤の中では、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)アルミニウム、ビス(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−6−ヒドロキシ−12H−ジベンゾ[d,g][1,2,3]ジオキサホスホシン−6−オキシド)水酸化アルミニウム塩と有機化合物の複合体、p−メチル−ベンジリデンソルビトール、p−エチル−ベンジリデンソルビトール、1,2,3−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール、ロジンのナトリウム塩などを例示することができる。
滑剤としては、ステアリン酸アマイドなどの高級脂肪酸アマイド類などを例示することができる。帯電防止剤としては、グリセリン脂肪酸モノエステルなどの脂肪酸部分エステル類などを例示することができる。金属不活性剤としては、トリアジン類、フォスフォン類、エポキシ類、トリアゾール類、ヒドラジド類、オキサミド類などを例示することができる。
フィラーとしては、無機充填剤、有機充填剤などの、ポリプロピレン系樹脂に用いることのできる公知の各種充填剤を配合することができる。無機充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ガラスファイバー、カーボンファイバーなどを例示することができる。また、有機充填剤としては、架橋ゴム微粒子、熱硬化性樹脂微粒子、熱硬化性樹脂中空微粒子、などを例示することができる。
その他の樹脂成分としては、ポリエチレン系樹脂、エチレン系エラストマーなどのポリオレフィン、変性ポリオレフィン、その他の熱可塑性樹脂等を例示することができる。
また、意匠性を付与するために着色することも可能であり、着色には無機顔料、有機顔料、染料等の各種着色剤を用いることが出来る。また、アルミフレークや酸化チタンフレーク、(合成)マイカ等の光輝材を使用することもできる。
ポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体と添加剤、フィラー、その他の樹脂成分等を溶融混練する方法、プロピレン系重合体と添加剤、フィラー等を溶融混練したものにその他の樹脂成分をドライブレンドする方法、プロピレン系重合体とその他の樹脂成分に加え添加剤、フィラー等をキャリアレジンに高濃度で分散させたマスターバッチをドライブレンドする方法等によって製造することができる。
[加飾フィルム]
本発明における加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)および熱可塑性エラストマー(B)からなるシール層(I)、およびポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)からなる層(II)を含む。加飾フィルムは、シール層(I)、層(II)の他に様々な構成を取ることが可能である。すなわち、加飾フィルムは、シール層(I)および層(II)からなる二層フィルムであっても、シール層(I)および層(II)と他の層からなる三層以上の多層フィルムであってもよい。なお、シール層(I)は、樹脂成形体(基体)に沿って貼着する。また、加飾フィルムは、その表面にシボ、エンボス、印刷、サンドプラスト、スクラッチ等が施されていてもよい。
加飾フィルムは加飾対象の形状の自由度が大きく、加飾フィルムの端面が加飾対象の裏側まで巻き込まれることで継ぎ目が生じないため外観に優れ、さらに、加飾フィルムの表面にシボ等を付与することで様々なテクスチャーを表現できる。例えば樹脂成形体にエンボス等のテクスチャーを付与する場合、エンボスの付与された加飾フィルムを用いて三次元加飾熱成形を行えばよい。このため、エンボスを付与する成形体金型で成形する場合の課題、すなわちエンボスパターン毎に成形体金型が必要であること、曲面の金型に複雑なエンボスを施すことは非常に困難で高価であること、といった課題が解決でき、様々なパターンのエンボスを容易に付与した加飾成形体を得ることができる。
多層フィルムには、シール層(I)および層(II)の他、表面層、表面加飾層、印刷層、遮光層、着色層、基材層、バリア層、これらの層間に設けることができるタイレイヤー層等を含めることができる。ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)からなる層(II)は、多層フィルムを構成する層の内、シール層を除くいずれの層であってもよい。
多層フィルムにおいて、シール層(I)と層(II)以外の層は、好ましくは熱可塑性樹脂からなる層であり、より好ましくはポリプロピレン系樹脂からなる層である。シール層(I)と層(II)以外の層は、シール層(I)および層(II)と識別することができる限り、その層を構成するポリプロピレン系樹脂のMFR(230℃、2.16kg荷重)は特に制限されるものではない。各層は熱硬化性樹脂を含まない層であることが好ましい。熱可塑性樹脂を用いることにより、リサイクル性が向上し、ポリプロピレン系樹脂を用いることにより、層構成の複雑化を抑制することができ、さらにリサイクル性がより向上する。
加飾フィルムが、二層フィルムであるとき、シール層(I)が樹脂成形体への貼着面のシール層を構成し、層(II)が樹脂成形体への貼着面とは逆の表面層を構成する。
加飾フィルムが三層以上の多層フィルムであるとき、シール層(I)と層(II)との間に、その他の層が介在すると、基体表面の傷の浮き出しを抑制する効果が低下する場合がある。このため、多層フィルムは、樹脂成形体の貼着面側からシール層(I)/層(II)/その他の層(複数の層を含む)という構成が好ましい。
図8(a)〜(c)は、樹脂成形体に貼着した加飾フィルムの実施形態の断面を模式的に例示する説明図である。図8(a)〜(c)において、理解を容易にするため、シール層(I)および層(II)の配置を特定して説明するが、加飾フィルムの層構成はこれら例示に限定して解釈されるものではない。本明細書において、図面の符号1は加飾フィルム、符号2は層(II)、符号3はシール層(I)、符号4は表面加飾層(III)、符号5は樹脂成形体を示す。図8(a)は、加飾フィルムが二層フィルムからなる例であり、樹脂成形体5にポリプロピレン系樹脂(A)および熱可塑性エラストマー(B)からなるシール層(I)が貼着し、シール層(I)の上にポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)からなる層(II)が積層する。図8(b)の加飾フィルムはシール層(I)、層(II)および表面層からなり、樹脂成形体5の表面にシール層(I)が貼着し、シール層(I)の上に層(II)および表面層がこの順に積層する。図8(c)の加飾フィルムはシール層(I)、層(II)および表面加飾層(III)からなり、樹脂成形体5の表面にシール層(I)が貼着し、シール層(I)の上に層(II)および表面加飾層(III)がこの順に積層する。
加飾フィルムの好ましい別の態様として、樹脂成形体への貼着面とは反対側の最表面に、表面加飾層樹脂からなる表面加飾層(III)とを含む多層フィルムが挙げられる。
表面加飾層樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂、より好ましくはポリプロピレン系樹脂(D)であるとよい。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(D)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(D))は、好ましくはMFR(D)>MFR(C)を満たす。上記の値の範囲にすることにより、より美麗な表面テクスチャーを表現することができる。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(D)は、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン−α−オレフィン共重合体(ランダムポリプロピレン)、プロピレンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)等の様々なタイプのプロピレン系重合体、又はそれらの組み合わせを選択することができる。プロピレン系重合体は、プロピレンモノマー由来の重合単位を50mol%以上含んでいることが好ましい。プロピレン系重合体は、極性基含有モノマー由来の重合単位を含まないものであることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂(D)は、耐油性、耐溶剤性、耐傷付き性等の観点からホモポリプロピレンが好ましい。また光沢や透明性(発色性)の観点からは、プロピレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。本発明において、表面加飾層(III)を構成するポリプロピレン系樹脂(D)は、シール層(I)を構成するポリプロピレン系樹脂(A)と同じであっても異なっていてもよい。
ポリプロピレン系樹脂(D)には、添加剤、フィラー、その他の樹脂成分などが含まれていてもよい。すなわち、プロピレン系重合体と添加剤、フィラー、その他の樹脂成分などとの樹脂組成物(ポリプロピレン系樹脂組成物)であってもよい。添加剤、フィラー、その他の樹脂成分などの総量は、ポリプロピレン系樹脂組成物に対して50重量%以下であることが好ましい。
添加剤としては、前記のシール層(I)を構成する樹脂組成物に含まれていてもよい添加剤等を使用することができる。
ポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体と添加剤、フィラー、その他の樹脂成分等を溶融混練する方法、プロピレン系重合体と添加剤、フィラー等を溶融混練したものにその他の樹脂成分をドライブレンドする方法、プロピレン系重合体とその他の樹脂成分に加え添加剤、フィラー等をキャリアレジンに高濃度で分散させたマスターバッチをドライブレンドする方法等によって製造することができる。
表面加飾層(III)を構成するポリプロピレン系樹脂(D)がポリプロピレン系樹脂組成物であるとき、このポリプロピレン系樹脂組成物は、シール層(I)を構成するプロピレン系樹脂(A)を組成するポリプロピレン系樹脂組成物と同じものであっても、異なるものであっても良い。
本発明の加飾フィルムは、厚みが、好ましくは約20μm以上、より好ましくは約50μm以上、さらに好ましくは約80μm以上である。加飾フィルムの厚みをこのような値以上にすることにより、意匠性を付与する効果が向上し、成形時の安定性も向上し、より良好な加飾成形体を得ることが可能となる。一方、加飾フィルムの厚みは、好ましくは約2mm以下、より好ましくは約1.2mm以下、さらに好ましくは約0.8mm以下である。加飾フィルムの厚みをこのような値以下にすることにより、熱成形時の加熱に要する時間が短縮することで生産性が向上し、不要な部分をトリミングすることが容易になる。
本発明の加飾フィルムにおいて、加飾フィルム全体の厚みに占めるシール層(I)の厚みの割合は、好ましくは1〜70%であり、層(II)の厚みの割合は、好ましくは30〜99%である。加飾フィルム全体に占めるシール層(I)の厚みの割合が上記の値の範囲であれば、十分な接着強度を発揮することが出来、樹脂成形体(基体)の傷が表面に浮き出すのを抑制することが出来る。また加飾フィルム全体に占める層(II)の厚みの割合が上記の値の範囲であれば、加飾フィルムの熱成形性が不十分となることを避けることができる。
また、加飾フィルムの最表面にポリプロピレン系樹脂(D)からなる表面加飾層(III)を設けた多層フィルムにおいては、加飾フィルム中で層(III)の厚みの表面加飾フィルム全体の厚みに占める割合は、好ましくは30%以下である。
[加飾フィルムの製造]
本発明の加飾フィルムは、公知の様々な成形方法により製造することが出来る。
例えば、ポリプロピレン系樹脂(A)および熱可塑性エラストマー(B)からなるシール層(I)とポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)からなる層(II)とを共押出成形する方法、シール層(I)および層(II)とさらに他の層とを共押出成形する方法、あらかじめ押出成形した一方の層の片方の面の上に、他の層を熱及び圧力をかけて貼り合せる熱ラミネーション法、接着剤を介して貼り合せるドライラミネーション法及びウェットラミネーション法、あらかじめ押出成形した一方の層の片方の面の上に、ポリプロピレン系樹脂を溶融押出しする押出ラミネーション法やサンドラミネーション法などが挙げられる。加飾フィルムを形成するための装置としては、公知の共押出Tダイ成形機や、公知のラミネート成形機を用いることができる。この中で、生産性の観点から、共押出Tダイ成形機が好適に用いられる。
ダイスより押出された溶融状の加飾フィルムを冷却する方法としては、一本の冷却ロールにエアナイフユニットやエアチャンバーユニットより排出された空気を介して溶融状の加飾フィルムを接触させる方法や、複数の冷却ロールで圧着して冷却する方法が挙げられる。
本発明の加飾フィルムに光沢を付与する場合には、加飾フィルムの、製品の意匠面に鏡面状の冷却ロールを面転写して鏡面加工を施す方法が用いられる。
さらに、本発明の加飾フィルムの表面にシボ形状を有していてもよい。このような加飾フィルムは、ダイスより押出された溶融状態の樹脂を、凹凸形状を施したロールと平滑なロールとで直接圧着して凹凸形状を面転写する方法、平滑なフィルムを、凹凸形状を施した加熱ロールと平滑な冷却ロールとで圧接して面転写する方法等により製造することができる。シボ形状としては梨地調、獣皮調、ヘアライン調、カーボン調等が例示される。
本発明の加飾フィルムは、成膜後に熱処理してもよい。熱処理の方法としては、熱ロールで加熱する方法、加熱炉や遠赤外線ヒータで加熱する方法、熱風を吹き付ける方法等が挙げられる。
[加飾成形体]
本発明において加飾される成形体(加飾対象)として、好ましくはポリプロピレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂組成物からなる各種成形体(以下、「基体」と言うことがある。)を用いることが出来る。成形体の成形方法は、特に制限されるものでなく、例えば射出成形、ブロー成形、プレス成形、押出成形等を挙げることができる。
ポリプロピレン系樹脂は非極性であることから、難接着性の高分子であるが、本発明における加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)および熱可塑性エラストマー(B)からなるシール層(I)、およびポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)からなる層(II)を含むことにより、ポリプロピレン系樹脂からなる加飾対象と加飾フィルムが貼着することで非常に高い接着強度を発揮し、かつ加飾対象の表面に付いた傷を目立ちにくくすることが出来る。
加飾対象である成形体のポリプロピレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂組成物のベース樹脂としては、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン−α−オレフィン共重合体、あるいは、プロピレンブロック共重合体等の公知の様々なプロピレンモノマーを主原料とする様々なタイプのものを選択することが出来る。また、本発明の効果を損なわない限り、剛性付与のためにタルク等のフィラーや、耐衝撃性付与のためにエラストマー等を含んでいても良い。また、上述した加飾フィルムを構成し得るポリプロピレン系樹脂組成物と同様に添加剤成分やその他の樹脂成分を含んでも良い。
本発明における加飾フィルムを、ポリプロピレン系樹脂からなる三次元形状に形成された各種成形体に貼着した加飾成形体は、塗装や接着剤に含まれるVOCが大きく削減されるため、自動車部材、家電製品、車輌(鉄道など)、建材、日用品などとして好適に使用することができる。
[加飾成形体の製造]
本発明の加飾成形体の製造方法は、上述した加飾フィルムを準備するステップ、樹脂成形体を準備するステップ、減圧可能なチャンバーボックス中に、前記樹脂成形体及び前記加飾フィルムをセットするステップ、前記チャンバーボックス内を減圧するステップ、前記加飾フィルムを加熱軟化させるステップ、前記樹脂成形体に前記加飾フィルムを押し当てるステップ、前記減圧したチャンバーボックス内を大気圧に戻す又は加圧するステップを含むことを特徴とする。
三次元加飾熱成形は、減圧可能なチャンバーボックス中に、加飾対象と加飾フィルムをセットし、チャンバーボックス内を減圧した状態でフィルムを加熱軟化させ、加飾対象にフィルムを押し当て、チャンバーボックス内を大気圧に戻す、あるいは、加圧することで、加飾フィルムを加飾対象の表面に貼り付ける、という基本的な工程を有し、減圧下でフィルムの貼り付けを行う。これにより空気だまりが生じない、きれいな加飾成形体を得ることができる。本発明の製造方法において、三次元加飾熱成形に相応しい装置、条件であれば公知のあらゆる技術を用いることが出来る。
すなわち、チャンバーボックスは、加飾対象と加飾フィルム、および、それを押し当てるための機構、加飾フィルムを加熱するための装置等の全てを一つに納めるものでもよいし、加飾フィルムによって分割された複数のものでもよい。
また、加飾対象と加飾フィルムを押し当てるための機構は、加飾対象を移動させるもの、加飾フィルムを移動させるもの、両者を移動させるもの、いずれのタイプでもかまわない。
より具体的に代表的な成形方法を以下に例示する。
以下、図を参照しながら、三次元加飾熱成形機を用いて加飾フィルムを加飾対象に貼着する方法について例示的に説明する。
図2に示すように、この実施形態の三次元加飾熱成形機は上下にチャンバーボックス11,12を具備すると共に、前記2つのチャンバーボックス11,12内で加飾フィルム1の熱成形を行なうようにしている。上下のチャンバーボックス11,12には、真空回路(図示せず)と空気回路(図示せず)がそれぞれ配管されている。
また、上下のチャンバーボックス11,12の間には、加飾フィルム1を固定する治具13が備えられている。また、下チャンバーボックス12には、上昇・下降が可能なテーブル14が設置されており、樹脂成形体(加飾対象)5はこのテーブル14上に(治具等を介して又は直接)セットされる。上チャンバーボックス11内にはヒータ15が組み込まれており、このヒータ15により加飾フィルム1は加熱される。加飾対象5は、プロピレン系樹脂組成物を基体とすることができる。
このような三次元加飾熱成形機としては、市販の成形機(例えば布施真空株式会社製NGFシリーズ)を使用することができる。
図3に示すように、まず上下チャンバーボックス11,12が開放された状態で、下チャンバーボックス12内のテーブル14上に加飾対象5を設置し、テーブル14を下降した状態にする。続いて、上下チャンバーボックス11,12間のフィルム固定用の治具13に加飾フィルム1をシール層(I)が基体に対向するようにセットする。
図4に示すように、上チャンバーボックス11を降下させ、上下チャンバーボックス11,12を接合させ前記ボックス内を閉塞状態とした後、それぞれのチャンバーボックス11,12内を真空吸引状態にし、ヒータ15により加飾フィルム1の加熱を行う。
加飾フィルム1を加熱軟化した後、図5に示すように、上下チャンバーボックス11,12内を真空吸引状態のまま下チャンバーボックス12内のテーブル14を上昇させる。加飾フィルム1は加飾対象5に押し付けられて、加飾対象5を被覆する。さらに図6に示すように、上チャンバーボックス11を大気圧下に開放または圧空タンクより圧縮空気を供給することにより、さらに大きな力で加飾フィルム1を加飾対象5に密着させる。
続いて、上下チャンバーボックス11,12内を大気圧下に開放し、加飾成形体6を下チャンバーボックス12から取り出す。最後に、図7に例示するように加飾成形体6の周囲にある不要な加飾フィルム1のエッジをトリミングする。
[成形条件]
チャンバーボックス11,12内の減圧は、空気だまりが発生しない程度であれば良く、チャンバーボックス内の圧力が10kPa以下、好ましくは3kPa、より好ましくは1kPa以下である。
また、加飾フィルム1により上下に分割された二つのチャンバーボックス11,12においては、加飾対象5と加飾フィルム1が貼り付けられる側のチャンバーボックス内圧力が本範囲であれば良く、上下のチャンバーボックス11,12の圧力を変えることで加飾フィルム1のドローダウンを抑制することも出来る。
このとき、一般的なポリプロピレン系樹脂からなるフィルムは加熱時の粘度低下により、わずかな圧力変動で大きく変形および破膜することがある。
しかし、本発明の加飾フィルム1は、特定のポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)からなる層(II)を含むため、ドローダウンしにくいだけでなく、圧力変動によるフィルム変形にも耐性を有する。
加飾フィルム1の加熱はヒータ温度(出力)と加熱時間によって制御される。また、フィルムの表面温度を放射温度計等の温度計により測定し適切な条件の目安とすることも可能である。
本発明において、ポリプロピレン系樹脂からなる加飾対象5にポリプロピレン系加飾フィルム1を貼着させるには、樹脂成形体5表面及び加飾フィルム1が十分に軟化又は融解することが必要である。
そのために、ヒータ温度は加飾対象5を構成するポリプロピレン系樹脂と加飾フィルム1を構成するポリプロピレン系樹脂の融解温度よりも高いことが必要である。ヒータ温度は、好ましくは160℃以上、より好ましくは180℃以上、最も好ましくは200℃以上である。
ヒータ温度が高いほど加熱に要する時間は短縮されるが、加飾フィルム1の内部(あるいはヒータが片側にのみ設置させる場合にはヒータと反対の面)が十分に加熱されるまでに、ヒータ側の温度が高くなりすぎることで成形性の悪化を招くばかりでなく樹脂が熱劣化してしまうため、ヒータ温度は500℃以下であることが好ましく、より好ましくは450℃以下、最も好ましくは400℃以下である。
適切な加熱時間はヒータ温度によって異なるが、短くてもポリプロピレン系加飾フィルムが加熱され、スプリングバックと呼ばれる張り戻りが開始するまでの時間またはそれを超える時間加熱されることが好ましい。
すなわち、ヒータによって加熱された加飾フィルムは、固体状態から加熱されることで熱膨張し結晶溶融に伴い一度たるみ、結晶融解が全体に進行すると分子が緩和することで一時的に張り戻るスプリングバックが観察され、その後、自重によって垂れ下がるという挙動を示すが、スプリングバック後には、フィルムは完全に結晶が融解しており、分子の緩和が十分であるため、十分な接着強度が得られる。
さらに、本発明の加飾フィルムは、驚くべきことに張り戻りが終了する前に加飾熱成形しても基体と強く接着することが可能であるため、熱成形時にフィルム中に含まれる添加剤がフィルム外に移行するといたフィルムへのダメージが少なくすることができ、さらにシボ戻りの抑制にも大きな効果がある。
一方、加熱時間が長くなりすぎると、フィルムは自重によって垂れ下がったり、上下チャンバーボックスの圧力差により変形してしまったりするので、スプリングバック終了後、120秒未満の加熱時間であることが好ましい。
凹凸を有する複雑な形状の成形体を加飾する場合や、より高い接着力を達成する場合には、加飾フィルムを基体に密着させる際に、圧縮空気を供給することが好ましい。圧縮空気を導入した際の上チャンバーボックス内の圧力は、150kPa以上、好ましくは200kPa以上、より好ましくは250kPa以上である。上限については特に制限しないが、圧力が高すぎると機器を損傷するおそれがあるため、450kPa以下、好ましくは400kPa以下が良い。
以下、実施例として、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
1.諸物性の測定方法
(i)メルトフローレート(MFR)
ISO 1133:1997 Conditions Mに準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定した。単位はg/10分である。
(ii)融解ピーク温度(融点)
融解ピーク温度は、示差走査熱量計(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて10分間保持した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融解ピーク温度とした。単位は℃である。
(iii)密度
熱可塑性エラストマー(B)の密度は、JIS K7112:1999年の密度勾配管法に従って、測定した。
(iv)エチレン含量[E(B)]
熱可塑性エラストマー(B)のエチレン含量[E(B)]は、上述したような方法に基づき、13C−NMR測定で得られた積分強度から求めた。試料の調製と測定条件は以下の通りである。
試料である熱可塑性エラストマー(B)200mgをo−ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(CBr)=4/1(体積比)2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ溶解した。
NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)製のAV400型NMR装置を用いて行った。
13C−NMR測定条件は、試料の温度120℃、パルス角を90°、パルス間隔を20秒、積算回数を512回とし、ブロードバンドデカップリング法で実施した。
(v)ひずみ硬化度λ
ひずみ硬化度λの求め方は、前述した方法で行った。このとき、剪断粘度の値として用いるη(0.01)、伸長粘度の値として用いるηe(3.5)は以下の方法で測定を行った。また、このとき測定に用いた試料は、温度180℃、加圧10MPaの条件で1時間プレスすることで厚さ0.7mmおよび2mmの平板に成形したものであり、厚さ0.7mmの試料を伸長粘度測定に、2mmの試料を動的周波数掃引実験に用いた。
(v−1)剪断粘度η(0.01)
Rheometric Scientific社製ARESを用いて、動的周波数掃引実験を行った。測定ジオメトリには直径25mmの平行円板を使用した。装置制御ソフトウェアTA Orchestratorを用い、測定モードDynamic Frecuency Sweep Testにて測定を実施した。試料は上記の方法で作成した厚さ2mmのプレス成形体を用いた。測定温度は180℃とした。角振動数ωは0.01〜100rad/sの間を、対数スケールで等間隔となるように一桁あたり5点測定した。
試料の低剪断速度での粘度を示す指標として、ω=0.01rad/sにおける複素粘性率η(0.01)[単位:Pa・s]を採用する。なお、複素粘性率η*は、複素弾性率G[単位:Pa]とωから、η=G/ωにて計算される。
(v−2)伸長粘度ηe(3.5)
Rheometric Scientific社製ARESの測定治具に、ティーエーインスツルメント社製 Extensional Viscosity Fixtureを使用して伸長粘度測定を行った。装置制御ソフトウェアTA Orchestratorを用い、測定モードExtensional Viscosity Testにて測定を実施した。試料は上記の方法で成形した厚さ0.7mmの試験片を用いた。試験片の幅は10mm、長さ18mmとした。歪速度は1.0s−1、測定温度は180℃である。その他の測定パラメータは以下のように設定した。
Sampling Mode:log
Points Per Zone:200
Solid Density:0.9
Melt Density:0.8
Prestretch Rate:0.05s−1
Relaxation after Prestretch:30sec
本条件で、少なくとも測定開始からの時間3.7秒までのデータを採取する。ソフトウェアにより、伸長粘度の時間依存性データが得られる。得られた伸長粘度カーブの、時間3.5sec(すなわち歪量3.5)の時点での伸長粘度の値をηe(3.5)[単位:Pa・s]とした。
(vi)絶対分子量Mabsが100万における分岐指数g’の測定:
前述した方法に従って、光散乱計と粘度計を検出器に備えたGPCを使用した測定を行い、前述した解析方法に基づき、分岐指数g’を求めた。
(vii)13C−NMRを用いた長鎖分岐構造の検出:
前述した方法に従って、13C−NMRを使用した測定を行い、長鎖分岐構造の有無を測定した。
2.使用材料
(1)ポリプロピレン系樹脂
以下のポリプロピレン系樹脂を用いた。
(A−1):プロピレン−α−オレフィン共重合体(MFR(A)=7g/10分、Tm(A)=146℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FW3GT」
(A−2):プロピレン単独重合体(MFR(A)=10g/10分、Tm(A)=161℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FA3KM」
(A−3):プロピレン−α−オレフィン共重合体(MFR(A)=5g/10分、Tm(A)=127℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FX4G」
(C−1−1):マクロマー共重合法により製造された長鎖分岐を有するプロピレン単独重合体、日本ポリプロ(株)製、商品名「WAYMAX(登録商標)MFX3」、MFR(C)=9g/10分、ひずみ硬化度λ=7.8、Tm(C)=154℃、絶対分子量Mabsが100万における分岐指数g’=0.85、13C−NMRの測定により長鎖分岐構造を有することを確認。
(C−1−2):マクロマー共重合法により製造された長鎖分岐を有するプロピレン単独重合体、日本ポリプロ(株)製、商品名「WAYMAX(登録商標)MFX8」、MFR(C)=1g/10分、ひずみ硬化度λ=9.7、Tm(C)=154℃、絶対分子量Mabsが100万における分岐指数g’=0.89、13C−NMRの測定により長鎖分岐構造を有することを確認。
(C−1−3):ポリプロピレン系樹脂(C−1−1)96重量%に黒色顔料MB(ポリコール興業(株)製 EPP−K−120601)を4重量%ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物、MFR(C)=9g/10分、ひずみ硬化度λ=7.3、Tm(C)=154℃
(D−1):ポリプロピレン系樹脂(A−2)100重量部に、造核剤(ミリケン・ジャパン(株)製、商標名「Millad NX8000J」)を0.4重量部ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物、MFR(D)=10g/10分、Tm(D)=164℃
(D−2):メタロセン系触媒によるプロピレン−α−オレフィン共重合体(MFR(D)=7g/10分、Tm(D)=125℃、Mw/Mn=2.5)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ウィンテック(登録商標)WFX4M」
(D−3):ポリプロピレン系樹脂(D−2)100重量部に、造核剤(ミリケン・ジャパン(株)製、商標名「Millad NX8000J」)を0.4重量部ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物、MFR(D)=7g/10分、Tm(D)=127℃
(D−4):ポリプロピレン系樹脂(A−2)96重量%にMFR=11g/10分の白色顔料MB(ポリコール興業(株)製 EPP−W−59578、酸化チタン含有量80重量%)を4重量%ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物、MFR(D)=10g/10分、Tm(D)=161℃
(D−5):ポリプロピレン系樹脂(A−2)96重量%に銀色顔料MB(トーヨーカラー(株)製 PPCM913Y−42 SILVER21X)を4重量%ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物、MFR=10g/10分、Tm=161℃
(2)熱可塑性エラストマー(B)
以下の熱可塑性エラストマーを用いた。
(B−1):プロピレンを主成分とするプロピレン−ブテンランダム共重合体(MFR(B)=7.0g/10分、Tm(B)=75℃、密度=0.885g/cm、プロピレン含量=69重量%、ブテン含量=31重量%、エチレン含量[E(B)]=0重量%):三井化学(株)製、商品名「タフマーXM7070」
(B−2):ブテン単独重合体(MFR(B)=5.0g/10分、Tm(B)=125℃、密度=0.915g/cm、エチレン含量[E(B)]=0重量%): 三井化学(株)製、商品名「タフマーBL4000」
(B−3):プロピレンを主成分とするプロピレンーエチレン−ブテンランダム共重合体(MFR(B)=6.0g/10分、Tm(B)=160℃、密度=0.868g/cm、プロピレン含量=84重量%、エチレン含量[E(B)]=9重量%、ブテン含量=7重量%):三井化学(株)製、商品名「タフマーPN2060」
(B−4):プロピレンを主成分とするプロピレン−エチレンランダム共重合体(MFR(B)=8.0g/10分、Tm(B)=61℃、密度=0.871g/cm、プロピレン含量=89重量%、エチレン含量[E(B)]=11重量%):エクソンモービルケミカル社製、商品名「VISTAMAXX3000」
3.樹脂成形体(基体)の製造
以下のポリプロピレン系樹脂(X−1)〜(X−3)を用い、以下の方法で射出成形体を得た。
(X−1):プロピレン単独重合体(MFR=40g/10分、Tm=165℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)MA04H」
(X−2):プロピレンエチレンブロック共重合体(MFR=30g/10分、Tm=164℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)NBC03HR」
(X−3):ポリプロピレン系樹脂(X−2)60重量%に、MFR=1.0のEBR(三井化学(株)製 タフマー(登録商標)A0550S)を20重量%、無機フィラー(日本タルク(株)製 タルクP−6、平均粒径4.0μm)を20重量%ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物
射出成形機:東芝機械株式会社製「IS100GN」、型締め圧100トン
シリンダー温度:200℃
金型温度:40℃
射出金型:幅×高さ×厚さ=120mm×120mm×3mmの平板
状態調整:温度23℃、湿度50%RHの恒温恒湿室にて5日間保持
また得られた射出成形体に以下の方法により、引掻き傷を付け樹脂成形体(基体)とした。
傷評価用加工:温度23℃、湿度50%RHの恒温恒湿室で引掻試験器(ROCKWOOD SYSTEMS AND EQUIPMENT社製「SCRATCH&MAR TESTER」)を用い、25Nの荷重にて、形状(曲率半径0.5mm、ボール状)加工を施した引掻先端にて、引掻速度=100mm/分にて引掻き、上記射出成形体に引掻き傷を付けた。
樹脂成形体(基体)の表面に付けた引掻き傷を形状測定器レーザマイクロスコープ(KEYENCE社製 「VX−X200」)で測定したところ、引掻き傷の深さは16μmであった。また、引掻き傷は白化傷となっていた。
実施例1
・加飾フィルムの製造
口径30mm(直径)のシール層(I)用押出機−1、及び口径40mm(直径)の層(II)用押出機−2が接続された、リップ開度0.8mm、ダイス幅400mmの2種2層Tダイを用いた。シール層(I)用押出機−1にポリプロピレン系樹脂(A−1)と熱可塑性エラストマー(B−1)とを重量比が85:15となるようにブレンドしたものを、層(II)用押出機−2に長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1−1)をそれぞれ投入し、樹脂温度240℃、シール層(I)用押出機−1の吐出量を4kg/h、層(II)用押出機−2の吐出量を12kg/hの条件で溶融押出を行った。溶融押出されたフィルムを、シール層(I)が外側になるように80℃の3m/minで回転する第1ロールにエアナイフで押付けながら冷却固化させ、厚さ50μmのシール層(I)と、厚さ150μmの層(II)が積層された2層の未延伸フィルムを得た。
・三次元加飾熱成形
樹脂成形体(基体)5として、上記により得られたポリプロピレン系樹脂(X−1)からなる射出成形体を用いた。
三次元加飾熱成形装置として、布施真空株式会社製「NGF−0406−SW」を用いた。図2〜7に示すように、加飾フィルム1を、シール層(I)が基体に対向するとともに長手方向がフィルムのMD方向となるように、幅250mm×長さ350mmで切り出し、開口部のサイズが210mm×300mmのフィルム固定用治具13にセットした。樹脂成形体(基体)5は、フィルム固定用治具13よりも下方に位置するテーブル14上に設置された、高さ20mmのサンプル設置台の上に、ニチバン株式会社製「ナイスタック NW−K15」を介して貼り付けた。フィルム固定治具13とテーブル14をチャンバーボックス11,12内に設置し、チャンバーボックスを閉じてチャンバーボックス11,12内を密閉状態とした。チャンバーボックスは、加飾フィルム1を介して上下に分割されている。上下ボックスを真空吸引し、大気圧(101.3kPa)から1.0kPaまで減圧した状態で、上チャンバーボックス11上に設置された遠赤外線ヒータ15を出力80%で始動させて加飾フィルム1を加熱した。加熱中も真空吸引を継続し、最終的に0.1kPaまで減圧した。加飾フィルム1が加熱され一時的にたるみ、その後、張り戻るスプリングバック現象が終了してから5秒後に、下チャンバーボックス12内に設置されたテーブル14を上方に移動させて、樹脂成形体(基体)5を加飾フィルム1に押し付け、直後に上チャンバーボックス11内の圧力が270kPaとなるように圧縮空気を送り込んで樹脂成形体(基体)5と加飾フィルム1を密着させた。このようにして、樹脂成形体(基体)5の上面及び側面に加飾フィルム1が貼着された三次元加飾熱成形品6を得た。
・物性評価
(1)成形性の評価(加飾成形体の外観)
三次元加飾熱成形時の加飾フィルムのドローダウン状態、ならびに基体に加飾フィルムを貼着した加飾成形体の加飾フィルムの貼着状態を目視にて観察し、以下に示した基準で評価した。
○:三次元加飾熱成形時に、加飾フィルムがドローダウンせずに基体と加飾フィルムとの接触が接触面全面にて同時に行われたため、接触ムラが発生せず、均一に貼着されている。
×:三次元加飾熱成形時に、加飾フィルムがドローダウンしたため、基体全面に接触ムラが発生。
(2)樹脂成形体(基体)と加飾フィルムとの接着力
株式会社ニトムズ社製「クラフト粘着テープ No.712N」を幅75mm、長さ120mmに切り出し、樹脂成形体(基体)の端部より75mm×120mmの範囲で樹脂成形体(基体)に貼り付けてマスキング処理を施した(基体表面露出部は幅45mm、長さ120mm)。樹脂成形体(基体)のマスキング面が加飾フィルムと接触するように三次元加飾熱成形装置NGF−0406−SWに設置し、三次元加飾熱成形を行った。
得られた加飾成形体の加飾フィルム面を、粘着テープの長手方向に対して垂直方向にカッターを用いて10mm幅で基体表面までカットし、試験片を作成した。得られた試験片において、基体と加飾フィルムとの接着面は幅10mm×長さ45mmである。試験片の基体部と加飾フィルム部とが180°となるように引張試験機に取付け、200mm/minの引張速度で接着面の180°剥離強度測定を行い、剥離時または破断時の最大強度(N/10mm)を5回測定し、平均した強度を接着力とした。
(3)傷つきを目立ちにくくする効果の評価
25Nの荷重で傷をつけた成形体(基体)の三次元加飾熱成形品の引掻き傷があった部位の傷の深さを形状測定レーザマイクロスコープ(KEYENCE社製 「VX−X200」)で測定した。測定の回数はn=5とし、その平均値を傷深さ(μm)とした。
また、白化外観として、25Nの荷重で傷をつけた成形体(基体)の白化傷が、加飾フィルムによって目立たなくなっているかを以下の基準で目視にて判定し、評価した。
○:白化傷の痕跡が目立たず、外観に優れている。
×:白化傷が残り、外観が悪い。
(4)リサイクル性評価
得られた加飾成形体を粉砕し、樹脂成形体(基体)の製造と同様に射出成形によりリサイクル成形体を得、外観を目視で評価した。
(5)グロス
加飾フィルムが貼着された加飾成形体の中央付近の光沢(グロス)を日本電色工業(株)社製GLOSS計Gloss Meter VG2000を用いて、入射角60°で測定した。測定方法はJIS K7105−1981に準拠した。
得られた加飾成形体等の物性評価結果を表1に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B−1)およびポリプロピレン系樹脂(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例2
実施例1の加飾フィルムの製造において、層(II)に用いた長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1−1)を、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1−1)とポリプロピレン系樹脂(A−2)とを重量比が30:70となるようにブレンドしたものに変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)およびポリプロピレン系樹脂組成物(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例3
実施例1の加飾フィルムの製造において、層(II)に用いた長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1−1)を、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1−1)とポリプロピレン系樹脂(A−2)とを重量比が5:95となるようにブレンドしたものを変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)およびポリプロピレン系樹脂組成物(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例4
実施例1の加飾フィルムの製造において、層(II)に用いた長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1−1)を、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1−2)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)およびポリプロピレン系樹脂(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例5
実施例1の加飾フィルムの製造において、層(II)に用いた長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1−1)を、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1−2)とポリプロピレン系樹脂(A−2)とを重量比が30:70となるようにブレンドしたものに変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)およびポリプロピレン系樹脂組成物(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例6
実施例1の加飾フィルムの製造において、層(II)に用いた長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1−1)を、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1−2)とポリプロピレン系樹脂(A−2)とを重量比が5:95となるようにブレンドしたものに変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)およびポリプロピレン系樹脂組成物(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例7
実施例1の加飾フィルムの製造において、ポリプロピレン系樹脂(A−1)と熱可塑性エラストマー(B−1)との配合比を70:30としたこと以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)、およびポリプロピレン系樹脂(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例8
実施例1の加飾フィルムの製造において、ポリプロピレン系樹脂(A−1)と熱可塑性エラストマー(B−1)との配合比を30:70としたこと以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)、およびポリプロピレン系樹脂(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例9
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層に用いた熱可塑性エラストマーを(B−2)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)、およびポリプロピレン系樹脂(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例10
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層に用いた熱可塑性エラストマーを(B−3)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)、およびポリプロピレン系樹脂(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例11
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層に用いた熱可塑性エラストマーを(B−4)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)、およびポリプロピレン系樹脂(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例12
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層に用いたポリプロピレン系樹脂を(A−2)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)、およびポリプロピレン系樹脂(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例13
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層に用いたポリプロピレン系樹脂を(A−3)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)、およびポリプロピレン系樹脂(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例14
加飾フィルムの製造において、口径30mmφのシール層(I)用押出機−1、口径40mmφの層(II)用押出機−2、及び口径30mmφの表面加飾層(III)用押出機−3が接続された、リップ開度0.8mm、ダイス幅400mmの3種3層Tダイを用いた。シール層(I)用押出機−1にポリプロピレン系樹脂(A−1)と熱可塑性エラストマー(B−1)とを重量比が85:15となるようにブレンドしたものを、層(II)用押出機−2に長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1−1)を、表面加飾層(III)用押出機−3にポリプロピレン系樹脂(A−2)をそれぞれ投入し、樹脂温度240℃、シール層(I)用押出機−1の吐出量を4kg/h、層(II)用押出機−1の吐出量を8kg/h、表面加飾層(III)用押出機−1の吐出量を4kg/hの条件で溶融押出を行った。
溶融押出されたフィルムを、表面加飾層(III)が接するように80℃の3m/minで回転する第1ロールにエアナイフで押付けながら冷却固化させ、厚さ50μmのシール層(I)と、厚さ100μmの層(II)と、厚さ50μmの表面加飾層(III)が積層された3層の未延伸フィルムを得た。
それ以外は実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表1に示す。ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)、およびポリプロピレン系樹脂(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。また、表面加飾層(III)を設けることにより、より表面光沢に優れる加飾成形体を得ることができた。
比較例1
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に熱可塑性エラストマー(B)を配合せずポリプロピレン系樹脂(A−1)のみを用い、層(II)に長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂を配合せずポリプロピレン系樹脂(A−2)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
シール層(I)に熱可塑性エラストマー(B)が含まれていないため接着力が小さく、層(II)に長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂が含まれていないため、フィルムのドローダウンが激しく、加飾成形体の外観が劣るものであり、傷および表面光沢の評価は行わなかった。
比較例2
実施例1の加飾フィルムの製造において、層(II)に長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂を配合せずポリプロピレン系樹脂(A−2)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
層(II)に長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂が含まれていないため、フィルムのドローダウンが激しく、加飾成形体の外観が劣るものであり、傷および表面光沢の評価は行わなかった。
比較例3
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に熱可塑性エラストマー(B)を配合せずポリプロピレン系樹脂(A−1)のみを用いたこと以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
シール層(I)に熱可塑性エラストマー(B)が含まれていないため接着力が小さく、また傷の浮き出しを十分に抑制することが出来ず、白化外観に劣るものであった。
実施例15
実施例1の三次元加飾熱成形において、基体を樹脂(X−2)を用いた射出成形体に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)およびポリプロピレン系樹脂組成物(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例16
実施例1の三次元加飾熱成形において、基体を樹脂(X−3)を用いた射出成形体に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)およびポリプロピレン系樹脂組成物(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例17
実施例14の加飾フィルムの製造において、表面加飾層(III)用押出機−3に投入したポリプロピレン系樹脂(A−2)をポリプロピレン系樹脂(D−1)に変更した以外は、実施例14と同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)およびポリプロピレン系樹脂組成物(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。また、造核剤が添加されたポリプロピレン系樹脂(D−1)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されたことで、光沢に優れる結果であった。
実施例18
実施例14の加飾フィルムの製造において、表面加飾層(III)用押出機−3に投入したポリプロピレン系樹脂(A−2)をポリプロピレン系樹脂(D−2)に変更した以外は、実施例14と同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)およびポリプロピレン系樹脂組成物(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。また、ポリプロピレン系樹脂(D−2)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されたことで、光沢に優れる結果であった。
実施例19
実施例14の加飾フィルムの製造において、表面加飾層(III)用押出機−3に投入したポリプロピレン系樹脂(A−2)をポリプロピレン系樹脂(D−3)に変更した以外は、実施例14と同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)およびポリプロピレン系樹脂組成物(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。また、造核剤が添加されたポリプロピレン系樹脂(D−3)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されたことで、光沢に優れる結果であった。
実施例20
実施例14の加飾フィルムの製造において、表面加飾層(III)用押出機−3に投入したポリプロピレン系樹脂(A−2)をポリプロピレン系樹脂(D−4)に変更した以外は、実施例14と同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)およびポリプロピレン系樹脂組成物(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れていた。また、白色に着色された加飾フィルムが貼着されたことも相俟って、傷つけた箇所を特定できないほど十分に傷が隠蔽された。そのため、傷深さを測定しなかった。また、光沢に優れる表面加飾層(III)が白色に着色されているため、外観に優れるものであった。
実施例21
実施例14の加飾フィルムの製造において、ポリプロピレン系樹脂(C−1−1)をポリプロピレン系樹脂(C−1−3)に変更した以外は、実施例14と同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)およびポリプロピレン系樹脂組成物(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れていた。また、黒色に着色された加飾フィルムが貼着されたことも相俟って、傷つけた箇所を特定できないほど十分に傷が隠蔽された。そのため、傷深さを測定しなかった。また、層(II)が黒色に着色されているため、外観に優れるものであった。さらに、ポリプロピレン系樹脂(A−2)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されているため、光沢に優れる結果であった。
実施例22
実施例21の加飾フィルムの製造において、表面加飾層(III)用押出機−3に投入したポリプロピレン系樹脂(A−2)をポリプロピレン系樹脂(D−5)に変更した以外は、実施例21と同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)およびポリプロピレン系樹脂組成物(C)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れていた。また、着色された加飾フィルムが貼着されたことも相俟って、傷つけた箇所を特定できないほど十分に傷が隠蔽された。そのため、傷深さを測定しなかった。また、ポリプロピレン系樹脂(D−5)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されているため、光沢に優れる結果であった。さらに、層(II)が黒色に、表面加飾層(III)が銀色に着色されているため、金属調のフィルムとなり、外観に優れるものであった。
実施例23
・加飾フィルムの製造
実施例22の加飾フィルムの製造において、シール層(I)用押出機−1の吐出量を4kg/h、層(II)用押出機−2の吐出量を12kg/h、表面加飾層(III)用押出機−3の吐出量を4kg/hの条件で溶融押出を行い、得られた3層の未延伸フィルムを幅200mmにスリットすることで、厚さ50μmの表面加飾層と、厚さ150μmの層と、厚さ50μmのシール層が積層された3層の未延伸フィルムを得た。
・エンボスフィルムの製造
エンボス成形装置として、由利ロール(株)製、電気加熱式テストエンボス機を用いた。電気加熱式テストエンボス機は、上段に設置された加熱可能な凹凸形状を施したロール(エンボスロール)と、下段に設置された平滑なロールとでフィルムを加熱圧接することで、上段の凹凸形状をフィルム表面に転写する機構を有する。エンボスロールは、深さ30μmのヘアライン柄を用いた。
加飾フィルムの製造により得られた3層の未延伸フィルムを、表面加飾層(III)がエンボスロールと接するように、エンボス機の2本ロールに繰り出した。エンボスロール温度145℃、接圧力3MPa、ロール速度3m/minの条件でエンボス転写を行うことで、表面加飾層(III)表面にヘアライン柄が転写された加飾フィルムを得た。
・三次元加飾熱成形
実施例1と同様の方法で三次元加飾熱成形品を得た。
・物性評価
(1)エンボス転写の評価
得られた加飾フィルムの表面加飾層に施されたヘアライン柄部位の深さを形状測定レーザマイクロスコープ(KEYENCE社製 「VX−X200」)で測定した。測定の回数はn=5とし、その平均値をエンボス深さ(μm)とした。
(2)熱成形後のエンボス模様の評価
三次元加飾熱成形後のエンボス模様の残りかたを目視にて観察し、以下に示した基準で評価した。
○:三次元加飾熱成形後の三次元加飾熱成形品表面にエンボス模様が残っており、意匠性に優れている。
×:三次元加飾熱成形後の三次元加飾熱成形品表面の大部分でエンボス模様が消失しており、意匠性に劣る。
得られた加飾成形体等の物性評価結果を表3に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)およびポリプロピレン系樹脂組成物(C)が本発明の要件を全て満足しているため、エンボスフィルムの製造により得られたフィルムのエンボス深さは25μmと優れていた。また三次元加飾熱成形後の三次元加飾熱成形品表面においても、へアライン柄が強く残っており、意匠性に優れるものであった。
Figure 0006874622
Figure 0006874622
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本発明によれば、十分な接着強度と優れた製品外観を両立することが可能であり、シボ戻りが少なく、基体の傷を目立たなくすることで製品不良の低減を可能とし、さらにリサイクルを容易とする三次元加飾熱成形に用いる加飾フィルム及びそれを用いた加飾成形体の製造方法が提供される。
1 加飾フィルム
2 層(II)
3 シール層(I)
5 樹脂成形体(加飾対象、基体)
6 加飾成形体
11 上チャンバーボックス
12 下チャンバーボックス
13 治具
14 テーブル
15 ヒータ

Claims (9)

  1. 樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための加飾フィルムであって、
    該加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)および熱可塑性エラストマー(B)を主成分として含み、
    ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(B)との重量比率は97:3〜5:95である樹脂組成物からなるシール層(I)、並びに
    ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)からなる層(II)を含み、
    前記ポリプロピレン系樹脂(A)は下記要件(a1)を満たし、
    前記熱可塑性エラストマー(B)は下記要件(b1)〜(b3)を満たし、
    前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)は下記要件(c1)〜(c2)を満たすことを特徴とする加飾フィルム。
    (a1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(A))は、0.5g/10分を超える。
    (b1)プロピレンおよび/またはブテンを主成分とする熱可塑性エラストマーである。
    (b2)密度は、0.850〜0.950g/cmである。
    (b3)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))は、0.1〜100g/10分である。
    (c1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(C))は、40g/10分以下である。
    (c2)ひずみ硬化度λは、1.1以上である。
  2. 前記熱可塑性エラストマー(B)は、エチレン含量が50重量%未満であるプロピレン−エチレン共重合体、エチレン含量が50重量%未満であるブテン−エチレン共重合体、エチレン含量が50重量%未満であるプロピレン−エチレンーブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、またはブテン単独重合体であることを特徴とする請求項1に記載の加飾フィルム。
  3. 前記熱可塑性エラストマー(B)は、下記要件(b4)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾フィルム。
    (b4)融解ピーク温度(Tm(B))が30〜170℃である。
  4. 前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)は、下記要件(c1’)〜(c2’)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の加飾フィルム。
    (c1’)MFR(B)は、20g/10分以下である。
    (c2’)ひずみ硬化度λは、1.8以上である。
  5. 前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)は、下記要件(c1”)〜(c2”)を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の加飾フィルム。
    (c1”)MFR(B)は、12g/10分以下である。
    (c2”)ひずみ硬化度λは、2.3以上である。
  6. 前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(C)は、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(C−1)を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の加飾フィルム。
  7. 前記ポリプロピレン系樹脂(C−1)は、架橋法以外の方法により製造されたゲルの少ないポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項6に記載の加飾フィルム。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の加飾フィルムを準備するステップ、樹脂成形体を準備するステップ、減圧可能なチャンバーボックス中に、前記樹脂成形体及び前記加飾フィルムをセットするステップ、前記チャンバーボックス内を減圧するステップ、前記加飾フィルムを加熱軟化させるステップ、前記樹脂成形体に前記加飾フィルムを押し当てるステップ、前記減圧したチャンバーボックス内を大気圧に戻す又は加圧するステップを含むことを特徴とする加飾成形体の製造方法。
  9. 前記樹脂成形体は、プロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とする請求項8に記載の加飾成形体の製造方法。
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