JP6950341B2 - 加飾フィルムおよびそれを用いた加飾成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
さらに、驚くべきことにこのような加飾フィルムは傷を目立たなくする効果が高く、前記課題を解決しうることを見出し本発明を完成するに至った。
[1] 樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための加飾フィルムであって、該加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)からなるシール層(I)およびポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)からなる層(II)を含み、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、下記要件(a1)〜(a4)を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、下記要件(b1)〜(b3)を満たすことを特徴とする加飾フィルム。
(a1)メタロセン触媒系プロピレン系重合体である
(a2)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(A))は、0.5g/10分を超える
(a3)融解ピーク温度(Tm(A))は、150℃未満である
(a4)GPC測定により得られる分子量分布(Mw/Mn(A))は、1.5〜3.5である
(b1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))は、40g/10分以下である
(b2)ひずみ硬化度λは、1.1以上である
(b3)融解ピーク温度(Tm(B))とTm(A)とは、関係式(b−3)を満たす
Tm(B)>Tm(A) ・・・ 式(b−3)
[2] 前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン・α−オレフィン共重合体であることを特徴とする[1]に記載の加飾フィルム。
[3] Tm(A)は、140℃以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の加飾フィルム。
[4] 前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、下記要件(b1’)〜(b2’)を満たすことを特徴とする[1]〜[3]に記載の加飾フィルム。
(b1’)MFR(B)は、20g/10分以下である
(b2’)ひずみ硬化度λは、1.8以上である
[5] 前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、下記要件(b1”)〜(b2”)を満たすことを特徴とする請求項1および4に記載の加飾フィルム。
(b1”)MFR(B)は、12g/10分以下である
(b2”)ひずみ硬化度λは、2.3以上である
[6] 前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(B−1)を含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の加飾フィルム。
[7] 前記ポリプロピレン系樹脂(B−1)は、架橋法以外の方法により製造されたゲルの少ないポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする[6]に記載の加飾フィルム。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載の加飾フィルムを準備するステップ、樹脂成形体を準備するステップ、減圧可能なチャンバーボックス中に、前記樹脂成形体及び前記加飾フィルムをセットするステップ、前記チャンバーボックス内を減圧するステップ、前記加飾フィルムを加熱軟化させるステップ、前記樹脂成形体に前記加飾フィルムを押し当てるステップ、前記減圧したチャンバーボックス内を大気圧に戻す又は加圧するステップを含むことを特徴とする加飾成形体の製造方法。
[9] 前記樹脂成形体は、プロピレン系樹脂組成物を基材とすることを特徴とする[8]に記載の加飾成形体の製造方法。
前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、下記要件(a1)〜(a4)を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、下記要件(b1)〜(b3)を満たすことを特徴とする加飾フィルムである。
(a1)メタロセン触媒系プロピレン系重合体である
(a2)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(A))は、0.5g/10分を超える
(a3)融解ピーク温度(Tm(A))は、150℃未満である
(a4)GPC測定により得られる分子量分布(Mw/Mn(A))は、1.5〜3.5である
(b1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))は、40g/10分以下である
(b2)ひずみ硬化度λは、1.1以上である
(b3)融解ピーク温度(Tm(B))とTm(A)とは、関係式(b−3)を満たす
Tm(B)>Tm(A) ・・・ 式(b−3)
本発明の加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)からなるシール層(I)を含むものである。シール層(I)は、三次元加飾熱成形の際に、樹脂成形体(基体)と接する層である。ポリプロピレン系樹脂(A)は、溶融・緩和しやすい樹脂であることが好ましい。シール層(I)を設けることにより、加飾成形体の表面に穴、しわ、空気の巻き込み等の発生が抑えられ、基体表面についた傷を目立ちにくくすることができる。
なお、Mn、Mwは、「高分子化学の基礎」(高分子学会編、東京化学同人、1978)等に記載されており、GPCによる分子量分布曲線から計算される値である。
α−オレフィンとしては、エチレン及び炭素数が3〜8のα−オレフィンから選ばれる一種または二種以上の組み合わせ等を用いることが出来る。
加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)からなる層(I)を含むことで、熱成形時にフィルムが破断したり暴れたりすることによる外観不良の発生を抑制することが出来る。これにより、加飾フィルムの熱成形性が改良されるため、熱成形性に優れる熱硬化性樹脂層を含まなくてもよい。層(II)は、ポリプロピレン系樹脂(B)からなることも、複数のポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂組成物(B)からなることもでき、また、ポリプロピレン系樹脂(B)以外に、他のポリプロピレン系樹脂が存在していてもよい。層(II)がポリプロピレン系樹脂(B)からなるときには、ポリプロピレン系樹脂(B)は、後述する要件(b1)および(b2)を満たす。層(II)がポリプロピレン系樹脂組成物(B)からなるときには、ポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、後述する要件(b1)および(b2)を満たす。また、ポリプロピレン系樹脂(B)以外に、他のポリプロピレン系樹脂が存在する場合には、ポリプロピレン系樹脂組成物(B)に加え、少なくともポリプロピレン系樹脂(B)が、後述する要件(b1)および(b2)を満たすとよい。ポリプロピレン系樹脂(B)および他のポリプロピレン系樹脂のブレンドは、特に制限されるものではなく、ペレットおよび/またはパウダーの混合、溶融ブレンド、或は溶液ブレンドのいずれでもよく、これらの組合せでもよい。
(b2)ひずみ硬化度λが1.1以上であること
(b2′)ひずみ硬化度λが1.8以上であること
(b2″)ひずみ硬化度λが2.3以上であること
λ=ηe(3.5)/{3×η*(0.01)} 式(b−2)
上記式(b−2)において、η*(0.01)は動的周波数掃引実験により測定される、測定温度180℃、角振動数ω=0.01rad/sにおける複素粘性率[単位:Pa・s]であり、複素粘性率η*は、複素弾性率G*[単位:Pa]と角振動数ωから、η*=G*/ωにて計算される。またηe(3.5)は伸長粘度測定により測定される、測定温度180℃、歪速度1.0s−1、ひずみ量3.5における伸長粘度である。
(b1)MFR(B)が40g/10分以下であること
(b1′)MFR(B)が20g/10分以下であること
(b1″)MFR(B)が12g/10分以下であること
分岐指数g’=[η]br/[η]lin
[η]br:長鎖分岐構造を有するポリマー(br)の固有粘度
[η]lin:ポリマー(br)と同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度
上記定義から明らかな通り、分岐指数g’が1よりも小さな値を取ると、長鎖分岐構造が存在すると判断され、長鎖分岐構造が増えるほど分岐指数g’の値は、小さくなっていく。
[測定方法]
GPC:Alliance GPCV2000(Waters社製)
検出器:接続順に記載
多角度レーザー光散乱検出器(MALLS):DAWN−E(Wyatt Technology社製)
示差屈折計(RI):GPC付属
粘度検出器(Viscometer):GPC付属
移動相溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン(Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)
移動相流量:1mL/分
カラム:東ソー社製 GMHHR−H(S) HTを2本連結
試料注入部温度:140℃
カラム温度:140℃
検出器温度:全て140℃
試料濃度:1mg/mL
注入量(サンプルループ容量):0.2175mL
多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)から得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)、および、Viscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行う。
参考文献:
1.「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983. Chapter1.)
2.Polymer, 45, 6495−6505(2004)
3.Macromolecules, 33, 2424−2436(2000)
4.Macromolecules, 33, 6945−6952(2000)
13C―NMRは、短鎖分岐構造と長鎖分岐構造を区別することができる。Macromol.Chem.Phys.2003,vol.204,1738に詳細な説明があるが、その概要は以下の通りである。
なお、本発明における13C−NMRの測定方法については下記の通りである。
試料200mgをo−ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(C6D5Br)=4/1(体積比)2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ溶解し、13C−NMR測定を行った。
13C−NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400M型NMR装置を用いて行った。
試料の温度120℃、プロトン完全デカップリング法で測定を実施した。その他の条件は以下の通りである。
パルス角:90°
パルス間隔:4秒
積算回数:20000回
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチル炭素のピークを1.98ppmとして設定し、他の炭素によるピークの化学シフトはこれを基準とした。
44ppm付近のピークを使用して長鎖分岐量を算出することができる。
ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)の融点(DSC融解ピーク温度)は、好ましくは140℃以上、より好ましくは145〜170℃、更に好ましくは150〜168℃であるとよい。ポリプロピレン系樹脂(B)は、このような融点をもつプロピレン単独重合体あるいはプロピレン−α−オレフィン共重合体であることが好ましい。また、融点が高くても低結晶性の成分を含むと耐傷つき性や耐溶剤性は低下するため、ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、エチレン含有量が50〜70重量%のエチレン−α−オレフィン共重合体を含まないことが好ましい。
本発明における加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)からなるシール層(I)およびポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)からなる層(II)を含む。加飾フィルムは、シール層(I)、層(II)の他に様々な構成を取ることが可能である。すなわち、加飾フィルムは、シール層(I)および層(II)からなる二層フィルムであっても、シール層(I)および層(II)と他の層からなる三層以上の多層フィルムであってもよい。なお、シール層(I)は、樹脂成形体(基体)に沿って貼着する。また、加飾フィルムは、その表面にシボ、エンボス、印刷、サンドプラスト、スクラッチ等が施されていてもよい。
本発明の加飾フィルムは、公知の様々な成形方法により製造することが出来る。例えば、ポリプロピレン系樹脂(A)からなるシール層(I)とポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)からなる層(II)を共押出成形する方法、シール層(I)および層(II)とさらに他の層とを共押出成形する方法、あらかじめ押出成形した一方の層の片方の面の上に、他の層を熱及び圧力をかけて貼り合せる熱ラミネーション法、接着剤を介して貼り合せるドライラミネーション法及びウェットラミネーション法、あらかじめ押出成形した一方の層の片方の面の上に、ポリプロピレン系樹脂を溶融押出しする押出ラミネーション法やサンドラミネーション法などが挙げられる。加飾フィルムを形成するための装置としては、公知の共押出Tダイ成形機や、公知のラミネート成形機を用いることができる。この中で、生産性の観点から、共押出Tダイ成形機が好適に用いられる。
本発明において加飾される成形体(加飾対象)として、好ましくはポリプロピレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂組成物からなる各種成形体(以下、「基体」と言うことがある。)を用いることが出来る。成形体の成形方法は、特に制限されるものでなく、例えば射出成形、ブロー成形、プレス成形、押出成形等を挙げることができる。
より具体的に代表的な成形方法を以下に例示する。
チャンバーボックス11,12内の減圧は、空気だまりが発生しない程度であれば良く、チャンバーボックス内の圧力が10KPa以下、好ましくは3KPa、より好ましくは1KPa以下である。
(i)MFR
ISO 1133:1997 Conditions Mに準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定した。単位はg/10分である。
示差走査熱量計(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて10分間保持した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点とした。単位は℃である。
以下の装置と条件でGPC測定をおこないMw/Mnの算出をおこなった。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して、較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
(1)ポリプロピレン系樹脂
以下のポリプロピレン系樹脂を用いた。
(A−1):メタロセン系触媒によるプロピレン−α−オレフィン共重合体(MFR=7g/10分、Tm=125℃、Mw/Mn=2.5)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ウィンテック(登録商標)WFX4M」
(A−2):メタロセン系触媒によるプロピレン−α−オレフィン共重合体(MFR=25g/10分、Tm=125℃、Mw/Mn=2.4)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ウィンテック(登録商標)WSX03」
(A−3):メタロセン系触媒によるプロピレン−α−オレフィン共重合体(MFR=7g/10分、Tm=135℃、Mw/Mn=2.3)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ウィンテック(登録商標)WFW4M」
(A−4):メタロセン系触媒によるプロピレン−α−オレフィン共重合体(MFR=3.5g/10分、Tm=143℃、Mw/Mn=2.8)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ウィンテック(登録商標)WFW5T」
(A−5):チーグラー・ナッタ系触媒によるプロピレン−α−オレフィン共重合体(MFR=7g/10分、Tm=145℃、Mw/Mn=4.0)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FW3GT」
(B−1−1):マクロマー共重合法により製造された長鎖分岐を有するプロピレン単独重合体(MFR=1g/10分、Tm=154℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「WAYMAX(登録商標)MFX8」
(B−1−2):マクロマー共重合法により製造された長鎖分岐を有するプロピレン単独重合体(MFR=8.8g/10分、Tm=154℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「WAYMAX(登録商標)MFX3」
(B−1−3):ポリプロピレン系樹脂(B−1−1)96重量%に黒色顔料MB(ポリコール興業(株)製 EPP−K−120601)を4重量%ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=1.0g/10分、ひずみ硬化度λ=9.3、Tm=154℃)
(B−2−1):通常の(長鎖分岐を有さない)プロピレン単独重合体(MFR=10g/10分、Tm=161℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FA3KM」
(B−2−2):通常の(長鎖分岐を有さない)プロピレン単独重合体(MFR=2.4g/10分、Tm=161℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FY6」
(C−1):ポリプロピレン系樹脂(B−2−1)100重量部に、造核剤(ミリケン・ジャパン(株)製、商標名「Millad NX8000J」)0.4重量部ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=10g/10分、Tm=164℃)
(C−2):ポリプロピレン系樹脂(A−1)100重量部に、造核剤(ミリケン・ジャパン(株)製、商標名「Millad NX8000J」)0.4重量部ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=7g/10分、Tm=127℃)
(C−3):ポリプロピレン系樹脂(B−2−1)96重量%にMFR=11g/10分の白色顔料MB(ポリコール興業(株)製 EPP−W−59578、酸化チタン含有量80重量%)を4重量%ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=10g/10分、Tm=161℃)
(C−4):ポリプロピレン系樹脂(B−2−1)96重量%に銀色顔料MB(トーヨーカラー(株)製 PPCM913Y−42 SILVER21X)を4重量%ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=10g/10分、Tm=161℃)
以下のポリプロピレン系樹脂(X−1)〜(X−3)を用い、以下の方法で射出成形体を得た。
(X−1):プロピレン単独重合体(MFR=40g/10分、Tm=165℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)MA04H」
(X−2):プロピレンエチレンブロック共重合体(MFR=30g/10分、Tm=164℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)NBC03HR」
(X−3):ポリプロピレン系樹脂(X−2)60重量%に、MFR=1.0のEBR(三井化学(株)製 タフマー(登録商標)A0550S)を20重量%、無機フィラー(日本タルク(株)製 タルクP−6、平均粒径4.0μm)20重量%ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物
射出成形機:東芝機械株式会社製「IS100GN」、型締め圧100トン
シリンダー温度:200℃
金型温度:40℃
射出金型:幅×高さ×厚さ=120mm×120mm×3mmの平板
状態調整:温度23℃、湿度50%RHの恒温恒湿室にて5日間保持
傷評価用加工:温度23℃、湿度50%RHの恒温恒湿室で引掻試験器(ROCKWOOD SYSTEMS AND EQUIPMENT社製「SCRATCH&MAR TESTER」)を用い、15Nの荷重にて、形状(曲率半径0.5mm、ボール状)加工を施した引掻先端にて、引掻速度=100mm/分にて引掻き、上記射出成形体に引掻き傷を付けた。
・加飾フィルムの製造
口径30mm(直径)のシール層用押出機−1及び口径40mm(直径)の押出機−2が接続された、リップ開度0.8mm、ダイス幅400mmの2種2層Tダイを用いた。シール層用押出機−1にポリプロピレン系樹脂(A−1)を、押出機−2にポリプロピレン系樹脂(B−1−1)をそれぞれ投入し、樹脂温度240℃、シール層用押出機−1の吐出量を4kg/h、押出機−2の吐出量を12kg/hの条件で溶融押出を行った。溶融押出されたフィルムを、シール層が外側になるように80℃の3m/minで回転する第1ロールにエアナイフで押付けながら冷却固化させ、厚さ50μmのシール層(I)と、厚さ150μmの層(II)が積層された2層の未延伸フィルムを得た。
樹脂成形体(基体)5として、上記により得られたポリプロピレン系樹脂(X−1)からなる射出成形体を用いた。
三次元加飾熱成形装置として、布施真空株式会社製「NGF−0406−SW」を用いた。図2〜7に示すように、加飾フィルム1を、シール層が基体に対向するとともに長手方向がフィルムのMD方向となるように、幅250mm×長さ350mmで切り出し、開口部のサイズが210mm×300mmのフィルム固定用治具13にセットした。樹脂成形体(基体)5は、フィルム固定用治具13よりも下方に位置するテーブル14上に設置された、高さ20mmのサンプル設置台の上に、ニチバン株式会社製「ナイスタック NW−K15」を介して貼り付けた。フィルム固定治具13とテーブル14をチャンバー11,12内に設置し、チャンバーを閉じてチャンバーボックス11,12内を密閉状態とした。チャンバーボックスは、加飾フィルム1を介して上下に分割されている。上下ボックスを真空吸引し、大気圧(101.3kPa)から1.0kPaまで減圧した状態で、上チャンバーボックス11上に設置された遠赤外線ヒータ15を出力80%で始動させて加飾フィルム1を加熱した。加熱中も真空吸引を継続し、最終的に0.1kPaまで減圧した。加飾フィルム1、が加熱され一時的にたるみ、その後、張り戻るスプリングバック現象が終了してから5秒後に、下チャンバーボックス12内に設置されたテーブル14を上方に移動させて、樹脂成形体(基体)5を加飾フィルム1に押し付け、直後に上チャンバーボックス11内の圧力が270kPaとなるように圧縮空気を送り込んで樹脂成形体(基体)5と加飾フィルム1を密着させた。このようにして、樹脂成形体(基体)5の上面及び側面に加飾フィルム1が貼着された三次元加飾熱成形品6を得た。
(1)熱成形性の評価
三次元加飾熱成形時の加飾フィルムのドローダウン状態、ならびに基体に加飾フィルムを貼着した加飾成形体の加飾フィルムの貼着状態を目視にて観察し、以下に示した基準で評価した。
○:三次元加飾熱成形時に、加飾フィルムがドローダウンせずに基体と加飾フィルムとの接触が接触面全面にて同時に行われたため、接触ムラが発生せず、均一に貼着されている。
×:三次元加飾熱成形時に、加飾フィルムが大きくドローダウンしたため、基体全面に接触ムラが発生。
株式会社ニトムズ社製「クラフト粘着テープ No.712N」を幅75mm、長さ120mmに切り出し、樹脂成形体(基体)の端部より75mm×120mmの範囲で樹脂成形体(基体)に貼り付けてマスキング処理を施した(基体表面露出部は幅45mm、長さ120mm)。樹脂成形体(基体)のマスキング面が加飾フィルムと接触するように三次元加飾熱成形装置NGF−0406−SWに設置し、三次元加飾熱成形を行った。
15Nの荷重で傷をつけた成形体(基体)の三次元加飾熱成形品の引掻き傷があった部位の傷の深さを形状測定レーザマイクロスコープ(KEYENCE社製 「VX−X200」)で測定した。測定の回数はn=5とし、その平均値を傷深さ(μm)とした。
また、白化外観として、15Nの荷重で傷をつけた成形体(基体)の白化傷が、加飾フィルムによって目立たなくなっているかを以下の基準で目視にて判定し、評価した。
○:白化傷の痕跡が目立たず、外観に優れている。
×:白化傷が全体的に残り、外観が悪い。
加飾フィルムが貼着された加飾成形体の中央付近の光沢(グロス)を日本電色工業(株)社製GLOSS計Gloss Meter VG2000を用いて、入射角60°で測定した。測定方法はJIS K7105−1981に準拠した。
得られた加飾成形体を粉砕し、樹脂成形体(基体)の製造と同様に射出成形によりリサイクル成形体を得、外観を目視で評価した。
ポリプロピレン系樹脂(A)およびポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるもの(評価:○)であった。
実施例1の加飾フィルムの製造において、層(II)に用いたポリプロピレン系樹脂を、(B−1−1)と(B−2−1)を表1に示す割合でブレンドし、使用原料に用いた以外は実施例1と同様に成形・評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1の加飾フィルムの製造において、層(II)に用いたポリプロピレン系樹脂を(B−1−2)とした以外は実施例1と同様に成形・評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7〜10)
実施例6の加飾フィルムの製造において、層(II)に用いたポリプロピレン系樹脂を、(B−1−2)と(B−2−1)を表1に示す割合でブレンドし、使用原料に用いた以外は実施例6と同様に成形・評価を行った。実施例7〜9の結果を表1に示し、実施例10の結果を表2に示す。
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に用いたポリプロピレン系樹脂を(A−2)とした以外は実施例1と同様に成形・評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例12)
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に用いたポリプロピレン系樹脂を(A−3)とした以外は実施例1と同様に成形・評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例13)
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に用いたポリプロピレン系樹脂を(A−4)とした以外は実施例1と同様に成形・評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例14)
加飾フィルムの製造には、口径30mmφのシール層用押出機−1、口径40mmφの押出機−2及び口径30mmφの表面層用押出機−3が接続された、リップ開度0.8mm、ダイス幅400mmの3種3層Tダイを用いた。シール層用押出機−1にポリプロピレン系樹脂(A−1)を、押出機−2にポリプロピレン系樹脂(B−1―1)を、表面層用押出機−3にポリプロピレン系樹脂(B−2−1)をそれぞれ投入し、樹脂温度240℃、シール層用押出機−1の吐出量を4kg/h、表面層用押出機−1の吐出量を8kg/h、表面層用押出機−1の吐出量を4kg/hの条件で溶融押出を行った。
溶融押出されたフィルムを、表面加飾層が接するように80℃の3m/minで回転する第1ロールにエアナイフで押付けながら冷却固化させ、厚さ50μmのシール層と、厚さ100μmの中間層と、厚さ50μmの表面加飾層が積層された3層の未延伸フィルムを得た。
それ以外は実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
表面加飾層が積層されていない実施例1と比較して、ポリプロピレン系樹脂(B−2−1)が表面加飾層(III)として積層されたことで、光沢に優れる結果であった。
三次元加飾熱成形において、加飾フィルムの加熱時間を延長し、張り戻るスプリングバック現象が終了してから20秒後に、成形を行ったこと以外は実施例1と同様に成形・評価を行った。結果を表2に示す。
加飾フィルムの加熱時間が延長されても、加飾フィルムのドローダウンが発生せず、加飾成形体は外観に優れるものであった。
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に用いたポリプロピレン系樹脂を(A−5)とした以外は実施例1と同様に成形・評価を行った。結果を表2に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A−5)はMw/Mnが4.0と高いため、接着力が小さく、また傷の浮き出しを十分に抑制することが出来ず、外観に劣るものであった。
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に用いたポリプロピレン系樹脂を(A−5)とし、層(II)に用いたポリプロピレン系樹脂を(B−2−2)とした。さらに、三次元加飾熱成形において、加飾フィルムの加熱時間を延長し、張り戻るスプリングバック現象が終了してから20秒後に、成形を行ったこと以外は実施例1と同様に成形・評価を行った。結果を表2に示す。
加飾フィルムの加熱時間を延長することで、接着力には優れていたが、加飾フィルムのドローダウンにより接触ムラが発生し、著しく外観に劣るものであった。外観が著しく劣るため、傷と表面グロスについては評価を実施しなかった。
実施例1の三次元加飾熱成形において、基体を樹脂(X−2)を用いた射出成形体に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)およびポリプロピレン系樹脂組成物(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
実施例1の三次元加飾熱成形において、基体を樹脂(X−3)を用いた射出成形体に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
実施例14の加飾フィルムの製造において、表面層用押出機−3に投入したポリプロピレン系樹脂(B−2−1)をポリプロピレン系樹脂(C−1)に変更した以外は、実施例14と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
造核剤が添加されたポリプロピレン系樹脂(C−1)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されたことで、光沢に優れる結果であった。
実施例14の加飾フィルムの製造において、表面層用押出機−3に投入したポリプロピレン系樹脂(B−2−1)をポリプロピレン系樹脂(A−1)に変更した以外は、実施例14と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A−1)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されたことで、光沢に優れる結果であった。
実施例14の加飾フィルムの製造において、表面層用押出機−3に投入したポリプロピレン系樹脂(B−2−1)をポリプロピレン系樹脂(C−2)に変更した以外は、実施例14と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
造核剤が添加されたポリプロピレン系樹脂(C−2)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されたことで、光沢に優れる結果であった。
実施例14の加飾フィルムの製造において、表面層用押出機−3に投入したポリプロピレン系樹脂(B−2−1)をポリプロピレン系樹脂(C−3)に変更した以外は、実施例14と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
白色に着色された加飾フィルムが貼着されたことも相俟って、傷つけた箇所を特定できないほど十分に傷が隠蔽された。そのため、傷深さを測定しなかった。また、光沢に優れる表面加飾層(III)が白色に着色されているため、外観に優れるものであった。
実施例14の加飾フィルムの製造において、ポリプロピレン系樹脂(B−1−1)をポリプロピレン系樹脂(B−1−3)に変更した以外は、実施例14と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
ポリプロピレン系樹脂(A)およびポリプロピレン系樹脂組成物(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れていた。また、黒色に着色された加飾フィルムが貼着されたことも相俟って、傷つけた箇所を特定できないほど十分に傷が隠蔽された。そのため、傷深さを測定しなかった。また、層(II)が黒色に着色されているため、外観に優れるものであった。さらに、ポリプロピレン系樹脂(B−2−1)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されているため、光沢に優れる結果であった。
実施例22の加飾フィルムの製造において、表面層用押出機−3に投入したポリプロピレン系樹脂(B−2−1)をポリプロピレン系樹脂(C−4)に変更した以外は、実施例22と同様に評価を行った。得られた結果を表3に示す。
着色された加飾フィルムが貼着されたことも相俟って、傷つけた箇所を特定できないほど十分に傷が隠蔽された。そのため、傷深さを測定しなかった。また、ポリプロピレン系樹脂(C−4)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されているため、光沢に優れる結果であった。さらに、層(II)が黒色に、表面加飾層(III)が銀色に着色されているため、金属調のフィルムとなり、外観に優れるものであった。
2 層(II)
3 シール層(I)
5 樹脂成形体(加飾対象、基体)
6 加飾成形体
11 上チャンバーボックス
12 下チャンバーボックス
13 治具
14 テーブル
15 ヒータ
Claims (9)
- 樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための加飾フィルムであって、該加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)からなるシール層(I)およびポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)からなる層(II)を含み、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、下記要件(a1)〜(a4)を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、下記要件(b1)〜(b3)を満たすことを特徴とする加飾フィルム。
(a1)メタロセン触媒系プロピレン系重合体である
(a2)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(A))は、0.5g/10分を超える
(a3)融解ピーク温度(Tm(A))は、150℃未満である
(a4)GPC測定により得られる分子量分布(Mw/Mn(A))は、1.5〜3.5である
(b1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))は、40g/10分以下である
(b2)ひずみ硬化度λは、1.1以上である
(b3)融解ピーク温度(Tm(B))とTm(A)とは、関係式(b−3)を満たす
Tm(B)>Tm(A) ・・・ 式(b−3)
ただし、ポリプロピレン系樹脂(A)は、MFR(A):2.0g/10分、Tm(A):125〜126℃及びMw/Mn(A):2.8ではないものとする。 - 前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン・α−オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の加飾フィルム。
- Tm(A)は、140℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の加飾フィルム。
- 前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、下記要件(b1’)〜(b2’)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加飾フィルム。
(b1’)MFR(B)は、20g/10分以下である
(b2’)ひずみ硬化度λは、1.8以上である - 前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、下記要件(b1”)〜(b2”)を満たすことを特徴とする請求項1または4に記載の加飾フィルム。
(b1”)MFR(B)は、12g/10分以下である
(b2”)ひずみ硬化度λは、2.3以上である - 前記ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(B−1)を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の加飾フィルム。
- 前記ポリプロピレン系樹脂(B−1)は、架橋法以外の方法により製造されたゲルの少ないポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項6に記載の加飾フィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の加飾フィルムを準備するステップ、樹脂成形体を準備するステップ、減圧可能なチャンバーボックス中に、前記樹脂成形体及び前記加飾フィルムをセットするステップ、前記チャンバーボックス内を減圧するステップ、前記加飾フィルムを加熱軟化させるステップ、前記樹脂成形体に前記加飾フィルムを押し当てるステップ、前記減圧したチャンバーボックス内を大気圧に戻す又は加圧するステップを含むことを特徴とする加飾成形体の製造方法。
- 前記樹脂成形体は、プロピレン系樹脂組成物を基材とすることを特徴とする請求項8に記載の加飾成形体の製造方法。
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