JP6830587B2 - 導電膜付き柱状インゴット基板及びその製造方法、シリサイド系熱電変換素子及びその製造方法、熱電変換モジュール、並びにシリサイド系熱電変換素子の電極層形成用組成物 - Google Patents

導電膜付き柱状インゴット基板及びその製造方法、シリサイド系熱電変換素子及びその製造方法、熱電変換モジュール、並びにシリサイド系熱電変換素子の電極層形成用組成物 Download PDF

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本発明は、導電膜付き柱状インゴット基板及びその製造方法、シリサイド系熱電変換素子及びその製造方法、熱電変換モジュール、並びにシリサイド系熱電変換素子の電極層形成用組成物に関する。
近年、省エネルギー社会の実現に向けて、工場設備、発電設備、自動車等から生じる廃熱を利用した発電方法の開発が活発化している。廃熱を利用した発電方法としては、例えば、ゼーベック効果又はペルチェ効果を利用して可逆的に熱電変換を行う熱電変換素子を用いた方法が提案されている。
熱電変換素子は、一般に、熱電変換材料からなる熱電変換層の片面又は両面に電極層が設けられた構成を有する。熱電変換材料としては、ビスマス−テルル系材料、鉛−テルル系材料、コバルト−アンチモン系材料、シリサイド系材料(例えば、マグネシウムシリサイド)等が知られている。その中でも、環境負荷が少なく、且つ、熱電変換性能が高い点から、マグネシウムシリサイドが注目されている。
熱電変換素子は、例えば、熱電変換材料からなる柱状インゴット基板の片面又は両面に導電膜が設けられた導電膜付き柱状インゴット基板を製造した後、所望の形状に切り出すことにより製造することができる(例えば、特許文献1及び2参照)。より具体的には、熱電変換材料の粒子からなる層と導電性金属粒子からなる層とを積層した後、焼結することにより、導電膜付き柱状インゴット基板を製造する。次いで、この導電膜付き柱状インゴット基板から所望の形状の複数個の熱電変換素子を切り出す。
また、熱電変換素子は、熱電変換材料からなる熱電変換層の片面又は両面に導電性ペーストを塗布し、焼成して電極層を形成することにより製造することもできる(例えば、特許文献3参照)。特許文献3の導電性ペーストは、例えば、導電性金属粒子、バインダ樹脂、及び溶媒を含有する。
特開2009−260173号公報 特開2011−29632号公報 特開2009−81252号公報
しかし、特許文献1及び2の製造方法では、導電膜と柱状インゴット基板との密着性が不充分となり、導電膜付き柱状インゴット基板を製造する際に導電膜が剥離し易く、また、熱電変換素子の実使用時において電極層が熱電変換層から剥離し易いという問題があった。
一方、特許文献3の製造方法では、熱電変換層の片面又は両面に導電性ペーストを塗布し、焼成して電極層を形成するため、生産性が低いという問題があった。ここで、生産性を向上させるには、柱状インゴット基板の片面又は両面に導電性ペーストを塗布し、焼成して導電膜を形成して導電膜付き柱状インゴット基板を製造し、この導電膜付き柱状インゴット基板から所望の形状の複数個の熱電変換素子を切り出すことが考えられる。しかし、本発明者らが確認したところ、特許文献3の導電性ペーストを使用した場合には、導電膜と柱状インゴット基板との密着性が不充分となり、導電膜付き柱状インゴット基板を製造する際に導電膜が剥離し易く、また、熱電変換素子の実使用時において電極層が熱電変換層から剥離し易いことが判明した。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、導電膜と柱状インゴット基板との密着性に優れた導電膜付き柱状インゴット基板及びその製造方法、該導電膜付き柱状インゴット基板から切り出されるシリサイド系熱電変換素子及びその製造方法、該シリサイド系熱電変換素子を備える熱電変換モジュール、並びにシリサイド系熱電変換素子の電極層形成用組成物を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 複数個の熱電変換素子の切り出しに用いられる導電膜付き柱状インゴット基板であって、
シリサイド系熱電変換材料からなる柱状インゴット基板と、
前記柱状インゴット基板の片面又は両面に設けられた、酸化ホウ素を含有する導電膜と、
を有する導電膜付き柱状インゴット基板。
<2> 前記柱状インゴット基板が焼結体である<1>に記載の導電膜付き柱状インゴット基板。
<3> 前記導電膜がポーラス構造を有する<1>又は<2>に記載の導電膜付き柱状インゴット基板。
<4> 前記導電膜中における酸化ホウ素が、前記柱状インゴット基板との界面側に偏在している<1>〜<3>のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板。
<5> 前記導電膜がシリサイド系熱電変換材料を含有する<1>〜<4>のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板。
<6> 前記柱状インゴット基板と前記導電膜とを合わせた厚さの最大値と最小値との差が40μm以下である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板。
<7> 前記柱状インゴット基板を構成するシリサイド系熱電変換材料がマグネシウムシリサイドである<1>〜<6>のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板。
<8> シリサイド系熱電変換材料からなる熱電変換層と、
前記熱電変換層の片面又は両面に設けられた、酸化ホウ素を含有する電極層と、
を有するシリサイド系熱電変換素子。
<9> 前記熱電変換層が焼結体である<8>に記載のシリサイド系熱電変換素子。
<10> 前記電極層がポーラス構造を有する<8>又は<9>に記載のシリサイド系熱電変換素子。
<11> 前記電極層中における酸化ホウ素が、前記熱電変換層との界面側に偏在している<8>〜<10>のいずれか1項に記載のシリサイド系熱電変換素子。
<12> 前記電極層がシリサイド系熱電変換材料を含有する<11>に記載のシリサイド系熱電変換素子。
<13> 体積抵抗率が4.0×10−6Ω・m以下であり、前記熱電変換層と前記電極層との接触抵抗率が1.0×10−10Ω・m〜1.0×10−9Ω・mである<8>〜<12>のいずれか1項に記載のシリサイド系熱電変換素子。
<14> 前記熱電変換層を構成するシリサイド系熱電変換材料がマグネシウムシリサイドである<8>〜<13>のいずれか1項に記載のシリサイド系熱電変換素子。
<15> <8>〜<14>のいずれか1項に記載のシリサイド系熱電変換素子を含む複数個の熱電変換素子と、
複数個の前記熱電変換素子の電極層に接して設けられた電極板と、
を備える熱電変換モジュール。
<16> 複数個の熱電変換素子の切り出しに用いられる導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法であって、
シリサイド系熱電変換材料からなる柱状インゴット基板の片面又は両面に導電膜形成用組成物を付与し、焼成することにより導電膜を形成する工程を有し、
前記導電膜形成用組成物が、導電性金属粒子、ホウ素粒子、バインダ樹脂、及び溶媒を含有する導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
<17> 前記柱状インゴット基板が焼結体である<16>に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
<18> 前記導電性金属粒子が、ニッケル粒子、銅粒子、及びアルミニウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種である<16>又は<17>に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
<19> 前記導電性金属粒子がニッケル粒子であり、前記導電膜を形成する工程における焼成温度が600℃〜800℃である<16>〜<18>のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
<20> 前記導電膜形成用組成物がシリサイド系熱電変換材料の粒子を更に含有する<16>〜<19>のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
<21> 前記導電膜形成用組成物を印刷法により前記柱状インゴット基板に付与する<16>〜<20>のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
<22> 前記導電膜形成用組成物の付与前に、前記柱状インゴット基板における前記導電膜形成用組成物を付与する面を加工する工程を更に有する<16>〜<21>のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
<23> 前記導電膜の形成後に、前記導電膜の表面を加工する工程を更に有する<16>〜<22>のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
<24> 前記柱状インゴット基板を構成するシリサイド系熱電変換材料がマグネシウムシリサイドである<16>〜<23>のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
<25> シリサイド系熱電変換材料からなる熱電変換層と、前記熱電変換層の片面又は両面に設けられた、酸化ホウ素を含有する電極層と、を有するシリサイド系熱電変換素子の製造方法であり、
<1>〜<7>のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板から複数個のシリサイド系熱電変換素子を切り出す工程を有するシリサイド系熱電変換素子の製造方法。
<26> <16>〜<24>のいずれか1項に記載の製造方法により前記導電膜付き柱状インゴット基板を製造する工程を更に有する<25>に記載のシリサイド系熱電変換素子の製造方法。
<27> 導電性金属粒子、ホウ素粒子、バインダ樹脂、及び溶媒を含有するシリサイド系熱電変換素子の電極層形成用組成物。
<28> 前記導電性金属粒子が、ニッケル粒子、銅粒子、及びアルミニウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種である<27>に記載のシリサイド系熱電変換素子の電極層形成用組成物。
<29> シリサイド系熱電変換材料の粒子を更に含有する<27>又は<28>に記載のシリサイド系熱電変換素子の電極層形成用組成物。
本発明によれば、導電膜と柱状インゴット基板との密着性に優れた導電膜付き柱状インゴット基板及びその製造方法、該導電膜付き柱状インゴット基板から切り出されるシリサイド系熱電変換素子及びその製造方法、該シリサイド系熱電変換素子を備える熱電変換モジュール、並びにシリサイド系熱電変換素子の電極層形成用組成物を提供することができる。
(A)は柱状インゴット基板の両面に導電膜が形成された導電膜付き柱状インゴット基板の一例を示す図であり、(B)は導電膜付き柱状インゴット基板から切り出されたシリサイド系熱電変換素子の一例を示す図である。 柱状インゴット基板の製造装置の一例を示す図である。 熱電変換モジュールの一例を示す図である。 実施例2で得られた導電膜付き柱状インゴット基板の外観を示す図である。 実施例2で得られたシリサイド系熱電変換素子の電極層切断面の極低加速電圧走査電子顕微鏡像を示す図である。 実施例2で得られたシリサイド系熱電変換素子の電極層切断面におけるホウ素、酸素、マグネシウム、シリコン、及びニッケルの元素分布のラインプロファイルを示す図である。 実施例3で得られた導電膜付き柱状インゴット基板の外観を示す図である。 比較例3で得られた導電膜付き柱状インゴット基板の外観を示す図である。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態で適宜参照される図面は概念的なものであり、図面における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。図面中、同様の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略することがある。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
<導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法>
本実施形態の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法は、シリサイド系熱電変換材料からなる柱状インゴット基板の片面又は両面に導電膜形成用組成物を付与し、焼成することにより導電膜を形成する工程を有し、導電膜形成用組成物が、導電性金属粒子、ホウ素粒子、バインダ樹脂、及び溶媒を含有する。
ここで、「導電膜付き柱状インゴット基板」とは、複数個のシリサイド系熱電変換素子の切り出しに用いられる素材を意味し、シリサイド系熱電変換材料からなる柱状インゴット基板の片面又は両面に導電膜が設けられたものである。
導電膜付き柱状インゴット基板とシリサイド系熱電変換素子との関係について、図1を用いて説明する。図1(A)に示す導電膜付き柱状インゴット基板1は、柱状インゴット基板2の両面に導電膜3が設けられたものである。この導電膜付き柱状インゴット基板1を導電膜3と垂直な方向に切り出すことで、図1(B)に示すように、シリサイド系熱電変換層5の両面に電極層6が設けられた複数個のシリサイド系熱電変換素子4を得ることができる。
なお、導電膜付き柱状インゴット基板を導電膜と垂直な方向に切り出すのではなく、導電膜付き柱状インゴット基板を研削することによっても、シリサイド系熱電変換素子を得ることができる。例えば、導電膜付き柱状インゴット基板を回転させながら研削して縮径することによって、大面積の1個のシリサイド系熱電変換素子を得ることができる。
以下ではまず、柱状インゴット基板及び導電膜形成用組成物について説明し、次いで、導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法について説明する。
[柱状インゴット基板]
柱状インゴット基板は、シリサイド系熱電変換材料からなるものである。シリサイド系熱電変換材料としては、特に制限されず、マグネシウムシリサイド、マンガンシリサイド、鉄シリサイド、コバルトシリサイド、ゲルマニウムシリサイド、バリウムガリウムシリサイド等が挙げられる。
シリサイド系熱電変換材料の中でも、環境負荷が少なく、且つ、熱電変換性能が高い点から、マグネシウムシリサイドが好ましい。マグネシウムシリサイドは、所望により、Sb、Zn、Al、Bi、P、Ga、As、In、Ag、Cu、Au、Ni、Fe、Mn、Co、Ta、Nd、Nb、Pb等のドーパントを含んでいてもよい。マグネシウムシリサイドの合成方法としては、1)Mg、Si等の原料を溶解して合金化する溶融合成法、2)原料を溶解せずに固体状態のまま合金化するメカニカルアロイング法等が知られているが、均質なマグネシウムシリサイドが得られ易い点から、溶融合成法が好ましい。
マグネシウムシリサイドとしては、未反応のMg及びSiを実質的に含まないものが好ましい。未反応のMg及びSiを実質的に含まないマグネシウムシリサイドの合成方法としては、例えば、特開2011−29632号公報に記載される溶融合成法が挙げられる。
特開2011−29632号公報に記載される溶融合成法の概要について、一例を挙げて説明する。
所定割合のMg及びSiと、必要に応じて含まれる1種以上のドーパントとの混合物を組成原料とし、この組成原料を溶融ルツボ(溶融ルツボと蓋部との接触面を研磨することにより密着性が高められたもの)に投入する。溶融ルツボの開口部に蓋部を密着させて加熱炉内に静置し、加熱炉の外部からおもりで加圧した後、加熱炉の内部をロータリーポンプ等で減圧し、反応中のMg及びSiが外部に流出しないようにする。
この状態で、例えば、加熱炉内を200℃/時間で150℃に達するまで加熱し、150℃で1時間保持して組成原料を乾燥させる。この際、加熱炉内には水素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを充填する。その後、400℃/時間で1150℃に達するまで加熱し、1150℃で3時間保持する。そして、100℃/時間で900℃にまで冷却し、1000℃/時間で室温にまで冷却することで、所期のマグネシウムシリサイドを合成する。
シリサイド系熱電変換材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリサイド系熱電変換材料を2種以上組み合わせる態様としては、ドーパント以外の主成分が異なるシリサイド系熱電変換材料を2種以上組み合わせる態様、主成分が同じでドーパントが異なるシリサイド系熱電変換材料を2種以上組み合わせる態様等が挙げられる。2種以上のシリサイド系熱電変換材料を組み合わせる場合、2種以上のシリサイド系熱電変換材料が混合されていてもよく、各シリサイド系熱電変換材料が柱状インゴット基板内で異なる層を形成していてもよい。
柱状インゴット基板の形状及び大きさは特に制限されない。柱状インゴット基板の形状は、円柱状であっても多角柱状であってもよく、特に、直径5mm〜500mm、厚さ1mm〜300mmの円柱状のものが好ましく用いられる。
柱状インゴット基板は、例えば、シリサイド系熱電変換材料の粒子を焼結することにより、焼結体として得ることができる。具体的には、柱状インゴット基板の形状に対応した空間部が形成された成形型にシリサイド系熱電変換材料の粒子を投入し、焼結することにより、柱状インゴット基板を製造することができる。
柱状インゴット基板の製造装置の一例を図2に示す。図2に示すように、柱状インゴット基板の製造装置10は、円柱状の空間部が形成されたカーボンダイ11と、空間部の上方及び下方に配設されるカーボンパンチ12a、12bとを備える。なお、図2では、カーボンダイ11の内部の状態が分かり易くなるように、カーボンダイ11の一部の図示を省略している。
カーボンダイ11とカーボンパンチ12a、12bとで囲まれる円柱状の空間部にシリサイド系熱電変換材料の粒子を投入し、焼結することにより、円柱状である柱状インゴット基板を製造することができる。
焼結方法としては、放電プラズマ焼結法、ホットプレス焼結法、熱間等方圧焼結法等が挙げられ、放電プラズマ焼結法が好ましい。放電プラズマ焼結法は、直流パルス通電法を用いた加圧圧縮焼結法の一種であり、パルス大電流を種々の材料に通電することによって焼結する方法である。
具体的な焼結条件は、シリサイド系熱電変換材料の種類、柱状インゴット基板の大きさ等に応じて適宜調整することが好ましい。
[導電膜形成用組成物]
前述したとおり、導電膜形成用組成物は、導電性金属粒子、ホウ素粒子、バインダ樹脂、及び溶媒を含有する。以下、導電膜形成用組成物に含有される成分について詳細に説明する。
導電膜形成用組成物は、導電性金属粒子を含有する。導電性金属粒子としては、特に制限されず、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、銀、白金、金等の粒子が挙げられる。
導電性金属粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の導電性金属粒子を組み合わせることにより、導電膜の線熱膨張係数を柱状インゴット基板の線熱膨張係数に近付け易くなる。導電膜の線熱膨張係数を柱状インゴット基板の線熱膨張係数に近付けることで、例えば、導電膜付き柱状インゴット基板から切り出されるシリサイド系熱電変換素子の実使用時において、電極層が熱電変換層から剥離することが抑制される傾向にある。
一例として、マグネシウムシリサイドの線熱膨張係数は17.1μm/m/Kであり、ニッケルの線熱膨張係数は13.4μm/m/Kであり、銅の線熱膨張係数は16.5μm/m/Kであり、アルミニウムの線熱膨張係数は23.1μm/m/Kである。
導電性金属粒子としては、電気抵抗率、コスト、及び入手容易性の点から、ニッケル粒子、銅粒子、及びアルミニウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、融点が高く耐熱性に優れる点から、ニッケル粒子がより好ましい。
導電性金属粒子の平均粒子径は、例えば、0.01μm〜2.0μmであることが好ましく、0.06μm〜1.0μmであることがより好ましく、0.1μm〜0.6μmであることが更に好ましい。導電性金属粒子の平均粒子径が0.01μm以上であると、導電性金属粒子の酸化による導電膜の抵抗値上昇が抑制され、また、導電膜形成用組成物により形成される組成物膜の焼成時における膜収縮が小さくなり、導電膜の反り又は剥離が抑制される傾向にある。一方、導電性金属粒子の平均粒子径が2.0μm以下であると、より低い温度で焼結させることができ、また、導電膜の気孔率が過度に大きくならない傾向にある。
なお、本明細書における平均粒子径は、横軸に粒子径を、縦軸に個数累積をとった個数累積粒度分布曲線において、累積が50%となるときの粒子径(D50)を意味する。
また、導電性金属粒子としては、平均粒子径の小さな第1の粒子群と平均粒子径の大きな第2の粒子群とを併用することも好ましい。この場合、第1の粒子群の平均粒子径は、例えば、0.01μm〜2.0μmであることが好ましく、0.06μm〜1.0μmであることがより好ましく、0.1μm〜0.6μmであることが更に好ましい。また、第2の粒子群の平均粒子径は、例えば、2.1μm〜50.0μmであることが好ましく、2.1μm〜40.0μmであることがより好ましく、2.1μm〜30.0μmであることが更に好ましい。第1の粒子群と第2の粒子群とを併用することで、導電膜形成用組成物により形成される組成物膜の嵩容積が小さくなる結果、焼成時の収縮率が小さくなり、導電膜の反り又は剥離がより抑制される傾向にある。
第1の粒子群と第2の粒子群とを併用する場合、第2の粒子群の混合割合は、第1の粒子群の全量に対して、0.1質量%〜20.0質量%であることが好ましく、0.5質量%〜10.0質量%であることがより好ましく、1.0質量%〜8.0質量%であることが更に好ましい。第2の粒子群の混合割合が0.1質量%以上であると、第2の粒子群を混合する効果が得られ易い傾向にあり、第2の粒子群の混合割合が20.0質量%以下であると、導電膜形成用組成物の焼結を阻害しない傾向にある。
第1の粒子群と第2の粒子群とを併用する場合、導電性金属粒子は、横軸に粒子径を、縦軸に頻度をとった粒度分布曲線において、0.01μm〜2.0μmの範囲に第1のピークを有し、2.1μm〜50.0μmの範囲に第2のピークを有することが好ましい。
導電性金属粒子の含有率は、導電膜形成用組成物の全量に対して、例えば、50.0質量%〜80.0質量%であることが好ましく、55.0質量%〜80.0質量%であることがより好ましく、60.0質量%〜75.0質量%であることが更に好ましい。導電性金属粒子の含有率が50.0質量%以上であると、導電膜の導電性がより向上する傾向にあり、導電性金属粒子の含有率が80.0質量%以下であると、導電膜形成用組成物の付与特性がより向上する傾向にある。
導電膜形成用組成物は、ホウ素粒子を含有する。導電膜形成用組成物がホウ素粒子を含有することにより、導電膜形成用組成物を焼成する際に導電性金属粒子の酸化が抑制され、導電膜の導電性が向上する傾向にある。
また、導電膜形成用組成物がホウ素粒子を含有することにより、導電膜と柱状インゴット基板との密着性が向上する傾向にある。その結果、導電膜を形成する際又は導電膜付き柱状インゴット基板から複数個のシリサイド系熱電変換素子を切り出す際に、導電膜が柱状インゴット基板から剥離することが抑制され、また、導電膜付き柱状インゴット基板から切り出されるシリサイド系熱電変換素子の実使用時において、電極層が熱電変換層から剥離することが抑制される傾向にある。
なお、ホウ素粒子により導電膜と柱状インゴット基板との密着性が向上する理由は明確ではないが、ホウ素粒子が、環境酸素又は導電膜形成用組成物中の他の成分に対する還元作用により酸化された後、導電膜と柱状インゴット基板との界面近傍に押し出される結果、界面近傍において酸化ホウ素が偏在し、ガラス層を形成するためと推測される。
ホウ素粒子としては、不純物が少ないものが好ましい。ホウ素粒子は通常、Mg、Fe、Na、Ca、Cl等を含む還元剤により酸化ホウ素を還元して生成されるため、還元剤に由来する成分が不純物として残留することがある。このような不純物は、導電膜の体積抵抗率等に影響し得る。このため、ホウ素粒子中の不純物の含有率は、例えば、0.3質量%以下にすることが好ましい。不純物の含有率を低減する方法としては、例えば、酢酸等の有機酸で洗浄した後、純水で洗浄する方法が挙げられる。
ホウ素粒子の平均粒子径は、例えば、0.1μm〜10.0μmであることが好ましく、0.1μm〜5.0μmであることがより好ましく、0.1μm〜1.0μmであることが更に好ましい。ホウ素粒子の平均粒子径が0.1μm以上であると、大気中で燃えることが抑えられ、材料製作の安定性が得られる傾向にあり、ホウ素粒子の平均粒子径が10.0μm以下であると、卑金属の酸化防止効果が向上し、且つ、形成される導電膜が平滑化される傾向にある。
ホウ素粒子の含有率は、導電性金属粒子の全量に対して、例えば、1.0質量%〜15.0質量%であることが好ましく、3.0質量%〜10.0質量%であることがより好ましく、4.0質量%〜10.0質量%であることが更に好ましい。ホウ素粒子の含有率が1.0質量%以上であると、導電膜と柱状インゴット基板との密着性がより向上する傾向にある。一方、ホウ素粒子の含有率が15.0質量%以下であると、導電膜の導電性が保たれる傾向にある。
導電膜形成用組成物は、バインダ樹脂を含有する。バインダ樹脂としては、導電膜形成用組成物を焼成する際に熱分解される樹脂であれば、特に制限されない。バインダ樹脂としては、アクリル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、ひまし油脂肪酸変性アルキド樹脂等のアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。バインダ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
バインダ樹脂の含有率は、導電膜形成用組成物の全量に対して、例えば、0.2質量%〜4.0質量%であることが好ましく、0.3質量%〜3.0質量%であることがより好ましく、0.5質量%〜2.0質量%であることが更に好ましい。
導電膜形成用組成物は、溶媒を含有する。溶媒としては、特に制限されず、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールのエーテル系溶媒、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノプロピオネート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリエチル−1,3−ペンタンジオールモノアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の多価アルコールのエステル系溶媒、ターピネオール、ジヒドロターピネオール等のテルペン系溶媒、ミネラルスピリット等のパラフィン系炭化水素溶媒などが挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶媒の含有率は、導電膜形成用組成物が所望の粘度となるように適宜調整することが好ましい。
導電膜形成用組成物は、所望により、導電性金属粒子、ホウ素粒子、バインダ樹脂、及び溶媒以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、シリサイド系熱電変換材料の粒子、分散剤等が挙げられる。特に、40μm以上の厚さの導電膜を形成する場合、導電膜の反り又は剥離をより抑制する観点から、導電膜形成用組成物は、シリサイド系熱電変換材料の粒子を含有することが好ましい。
シリサイド系熱電変換材料の粒子は、柱状インゴット基板を構成するシリサイド系熱電変換材料と主成分が同じ材料からなる粒子であってもよく、主成分が異なる材料からなる粒子であってもよい。一実施態様では、柱状インゴット基板を構成するシリサイド系熱電変換材料と主成分が同じ材料(例えば、マグネシウムシリサイド)からなる粒子が用いられる。
シリサイド系熱電変換材料の粒子の平均粒子径は、例えば、2.1μm〜50.0μmであることが好ましく、2.1μm〜40.0μmであることがより好ましく、2.1μm〜30.0μmであることが更に好ましい。シリサイド系熱電変換材料の粒子の平均粒子径が2.1μm以上であると、導電膜形成用組成物により形成される組成物膜の嵩容積が小さくなる結果、焼成時の収縮率が小さくなり、導電膜の反り又は剥離がより抑制される傾向にある。一方、シリサイド系熱電変換材料の粒子の平均粒子径が50.0μm以下であると、導電膜の厚さと比べて粒子径を充分に小さくすることができ、また、導電性金属粒子の結着が良好になる傾向にある。
導電膜形成用組成物がシリサイド系熱電変換材料の粒子を含有する場合、シリサイド系熱電変換材料の粒子の含有率は、導電性金属粒子の全量に対して、0.1質量%〜20.0質量%であることが好ましく、0.5質量%〜10.0質量%であることがより好ましく、1.0質量%〜8.0質量%であることが更に好ましい。シリサイド系熱電変換材料の粒子の含有率が0.1質量%以上であると、シリサイド系熱電変換材料の粒子を含有させる効果が得られ易い傾向にあり、シリサイド系熱電変換材料の粒子の含有率が20.0質量%以下であると、導電膜の導電性の低下が抑制される傾向にある。
分散剤としては、特に制限されず、脂肪酸系分散剤、カルボン酸系分散剤、アミン系分散剤等が挙げられる。
導電膜形成用組成物が分散剤を含有する場合、分散剤の含有率は、導電膜形成用組成物の全量に対して、例えば、0.2質量%〜2.0質量%であることが好ましく、0.2質量%〜1.5質量%であることがより好ましい。
導電膜形成用組成物は、例えば、上記の各成分を充分に混合し、所望により脱泡することにより調製することができる。
導電膜形成用組成物の粘度は、特に制限されず、該組成物の付与方法、付与膜厚等に応じて適宜調整することができる。導電膜形成用組成物の粘度は、例えば、BROOKFIELD HBT型粘度計を用いて25℃、10rpmの条件で測定したときに、20.0Pa・s〜100.0Pa・sであることが好ましく、30.0Pa・s〜80.0Pa・sであることがより好ましい。また、BROOKFIELD HBT型粘度計を用いて25℃、100rpmの条件で測定したときに、5.0Pa・s〜30.0Pa・sであることが好ましく、5.0Pa・s〜20.0Pa・sであることがより好ましい。
[導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法]
前述したとおり、導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法は、柱状インゴット基板の片面又は両面に導電膜形成用組成物を付与し、焼成することにより導電膜を形成する工程(以下、「導電膜形成工程」ともいう。)を有する。導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法は、導電膜形成用組成物の付与前に、柱状インゴット基板における導電膜形成用組成物を付与する面を加工する工程(以下、「前加工工程」ともいう。)を更に有していてもよい。また、導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法は、導電膜の形成後に、導電膜の表面を加工する工程(以下、「後加工工程」ともいう。)を更に有していてもよい。
前加工工程では、導電膜形成用組成物の付与前に、柱状インゴット基板における導電膜形成用組成物を付与する面を加工する。加工方法としては、研削、ラップ(湿式又は乾式)、研磨等を単独又は組み合わせることができる。
前加工工程を実施する場合、柱状インゴット基板の厚さの最大値と最小値との差を40μm以下に調整することが好ましい。
なお、本明細書において、厚さの最大値と最小値との差は、任意に選択した5箇所の厚さをマイクロメーターにより測定し、最大値から最小値を減算することにより計算される。
導電膜形成工程では、柱状インゴット基板の片面又は両面に導電膜形成用組成物を付与し、焼成することにより導電膜を形成する。
導電膜形成用組成物の付与方法は特に制限されず、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、3D印刷法等の印刷法、スピン塗布法などが挙げられる。これらの中でも、大面積の柱状インゴット基板に適用可能である、導電膜の厚さ制御が容易である、低コストである等の点から、印刷法が好ましく、スクリーン印刷法がより好ましい。
導電膜形成用組成物の付与方法としては、特に、メタルマスクを用いたスクリーン印刷法が好ましく挙げられる。メタルマスクの材質はステンレス鋼が一般的であり、中でも耐食性に優れるオーステナイト系のステンレス鋼が好ましい。印刷に際しては、例えば、所望の開孔パターンが形成されたメタルマスクを柱状インゴット基板に重ね、導電膜形成用組成物をスキージにて開孔部に刷り込む。刷り込み後、メタルマスクを取り除くことにより、所望形状の組成物膜が形成される。
組成物膜の形成後には、溶媒を除去し、気泡等の発生を抑えるため、組成物膜を乾燥させることが好ましい。乾燥には、ホットプレート、赤外線乾燥機、熱風乾燥機等を使用することができる。乾燥条件は、溶媒の種類等に応じて適宜調整することが好ましい。一実施態様では、50℃〜300℃の温度で加熱することにより乾燥させる。
組成物膜の焼成は、閉管式焼成炉で行ってもよく、開管式焼成炉で行ってもよい。焼成炉としては、ボックス炉、ベルト炉、ローラーハース炉等の電気炉、マッフル炉などが挙げられる。焼成雰囲気は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気であってもよく、大気雰囲気であってもよい。生産効率等を考慮すると、大気雰囲気下で焼成を行うことが好ましい。
焼成温度は、導電膜形成用組成物に含有される導電性金属粒子の種類等に応じて適宜調整することが好ましい。導電性金属粒子がニッケル粒子である場合、焼成温度は、例えば、600℃〜800℃であることが好ましく、650℃〜750℃であることがより好ましい。焼成温度が600℃以上であると、焼結が充分となり、充分な機械的強度が得られる傾向にある。一方、焼成温度が800℃以下であると、シリサイド系熱電変換材料の熱崩壊が抑えられ、また、導電性金属粒子とシリサイド系熱電変換材料との相互拡散反応が抑えられる傾向にある。
焼成時間は、例えば、1分間〜240分間であることが好ましく、5分間〜60分間であることがより好ましい。
なお、柱状インゴット基板が焼結体である場合、焼結の際の加熱に加え、焼成工程においても更に加熱されることになる。その結果、柱状インゴット基板がより緻密化し、熱電変換性能が向上する傾向にある。
焼成後の冷却は、過度な冷却ストレスを与えない程度の熱勾配で行うことが好ましい。冷却速度は、例えば、20℃/分以下に設定される。
後加工工程では、導電膜の形成後に、導電膜の表面を加工する。焼成後の導電膜の表面は、抵抗値が高く、平滑性に劣ることが多いため、後加工工程を実施することが好ましい。加工方法としては、研削、ラップ(湿式又は乾式)、研磨等を単独又は組み合わせることができる。
後加工工程を実施する場合、柱状インゴット基板と導電膜とを合わせた厚さの最大値と最小値との差を40μm以下に調整することが好ましい。このように、厚さの最大値と最小値との差を40μm以下とすることで、導電膜付き柱状インゴット基板から複数個のシリサイド系熱電変換素子を切り出して熱電変換モジュールを製造する際に、電極層と電極板との接触性が高まり、熱電変換効率が向上する傾向にある。また、熱電変換モジュールの一部のシリサイド系熱電変換素子に熱的ストレス及び機械的ストレスが集中して破損することが抑制される傾向にある。
また、後加工工程を実施する場合、導電膜の表面粗さRaは、1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm〜0.6μmであることがより好ましい。
以上の工程を経て、柱状インゴット基板の片面又は両面に導電膜が形成された導電膜付き柱状インゴット基板が得られる。
導電膜の厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm〜100μmであることがより好ましい。
また、導電膜の体積抵抗率は、1350μΩ・cm以下であることが好ましく、200μΩ・cm以下であることがより好ましい。
<導電膜付き柱状インゴット基板>
本実施形態の導電膜付き柱状インゴット基板は、シリサイド系熱電変換材料からなる柱状インゴット基板と、柱状インゴット基板の片面又は両面に設けられた、酸化ホウ素を含有する導電膜と、を有する。すなわち、本実施形態の導電膜付き柱状インゴット基板は、柱状インゴット基板と導電膜とがこの順で積層された構成、又は導電膜と柱状インゴット基板と導電膜とがこの順で積層された構成を有する。本実施形態の導電膜付き柱状インゴット基板は、前述した製造方法により製造することができる。
前述したとおり、ホウ素粒子を含有する導電膜形成用組成物を用いて導電膜を形成することにより、導電膜と柱状インゴット基板との密着性が向上する。これは、ホウ素粒子が、環境酸素又は導電膜形成用組成物中の他の成分に対する還元作用により酸化された後、導電膜と柱状インゴット基板との界面近傍に押し出される結果、界面近傍において酸化ホウ素が偏在し、ガラス層を形成するためと推測される。
したがって、本実施形態の導電膜付き柱状インゴット基板は、導電膜中における酸化ホウ素が、柱状インゴット基板との界面側に偏在していることが好ましい。
本実施形態の導電膜付き柱状インゴット基板の導電膜は、ポーラス構造を有することが好ましい。導電膜がポーラス構造を有することにより、導電膜付き柱状インゴット基板から切り出されるシリサイド系熱電変換素子の実使用時において、電極層が熱電変換層から剥離することが抑制される傾向にある。
導電膜の気孔率は、例えば、1%〜50%であることが好ましく、10%〜30%であることがより好ましい。導電膜の気孔率は、走査電子顕微鏡(SEM)で導電膜の断面を観察し、気孔部分の面積を測定することにより求めることができる。
なお、導電膜のポーラス構造は開気孔で構成されることが好ましい。導電膜のポーラス構造が開気孔で構成される場合、組成物膜の焼成時の収縮により、開気孔を通じて酸化ホウ素が界面に押し出される結果、導電膜と柱状インゴット基板との界面近傍において酸化ホウ素が偏在し、ガラス層が形成され易くなる傾向にある。
<シリサイド系熱電変換素子の製造方法>
本実施形態のシリサイド系熱電変換素子の製造方法は、シリサイド系熱電変換材料からなる熱電変換層と、該熱電変換層の片面又は両面に設けられた、酸化ホウ素を含有する電極層と、を有するシリサイド系熱電変換素子の製造方法であり、前述した導電膜付き柱状インゴット基板から複数個のシリサイド系熱電変換素子を切り出す工程を有する。本実施形態のシリサイド系熱電変換素子の製造方法は、前述した製造方法により導電膜付き柱状インゴット基板を製造する工程を更に有していてもよい。
導電膜付き柱状インゴット基板から複数個のシリサイド系熱電変換素子を切り出す方法は特に制限されず、ワイヤーソー等の切断装置を用いることができる。シリサイド系熱電変換素子の形状及び大きさは特に制限されない。シリサイド系熱電変換素子の形状は、多角柱状であっても円柱状であってもよい。
<シリサイド系熱電変換素子>
本実施形態のシリサイド系熱電変換素子は、シリサイド系熱電変換材料からなる熱電変換層と、熱電変換層の片面又は両面に設けられた、酸化ホウ素を含有する電極層と、を有する。すなわち、本実施形態のシリサイド系熱電変換素子は、熱電変換層と電極層とがこの順で積層された構成、又は電極層と熱電変換層と電極層とがこの順で積層された構成を有する。本実施形態のシリサイド系熱電変換素子は、前述した製造方法により製造することができる。
前述したとおり、導電膜付き柱状インゴット基板を製造する際に、ホウ素粒子を含有する導電膜形成用組成物を用いて導電膜を形成することにより、導電膜と柱状インゴット基板との密着性が向上する。これは、ホウ素粒子が、環境酸素又は導電膜形成用組成物中の他の成分に対する還元作用により酸化された後、導電膜と柱状インゴット基板との界面近傍に押し出される結果、界面近傍において酸化ホウ素が偏在し、ガラス層を形成するためと推測される。
したがって、導電膜付き柱状インゴット基板から切り出された本実施形態のシリサイド系熱電変換素子は、電極層中における酸化ホウ素が、熱電変換層との界面側に偏在していることが好ましい。
本実施形態のシリサイド系熱電変換素子の電極層は、ポーラス構造を有することが好ましい。電極層がポーラス構造を有することにより、シリサイド系熱電変換素子の実使用時において、電極層が熱電変換層から剥離することが抑制される傾向にある。
電極層の気孔率は、例えば、1%〜50%であることが好ましく、10%〜30%であることがより好ましい。
なお、電極層のポーラス構造は開気孔で構成されることが好ましい。
また、本実施形態のシリサイド系熱電変換素子は、実用上の観点から、体積抵抗率が4.0×10−6Ω・m以下であり、熱電変換層と電極層との接触抵抗率が1.0×10−10Ω・m〜1.0×10−9Ω・mであることが好ましい。熱電変換層と電極層との接触抵抗率は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
<熱電変換モジュール>
本実施形態の熱電変換モジュールは、前述したシリサイド系熱電変換素子を含む複数個の熱電変換素子と、複数個の熱電変換素子の電極層に接して設けられた電極板と、を備える。複数個の熱電変換素子は、その半数以上が前述したシリサイド系熱電変換素子であることが好ましく、その全てが前述したシリサイド系熱電変換素子であることがより好ましい。
本実施形態の熱電変換モジュールの一例を図3に示す。図3に示す熱電変換モジュール7は、n型半導体となる複数個の熱電変換素子4と、熱電変換素子4の電極層6を挟み込むように配置される一対の電極板8と、を備える。
また、本実施形態の熱電変換モジュールは、n型半導体となる熱電変換素子とp型半導体となる熱電変換素子とを交互に複数個配置し、n型半導体となる熱電変換素子の電極層とp型半導体となる熱電変換素子の電極層とが電気的に直列に接続されるように複数個の電極板で挟み込んだ構成であってもよい。
また、本実施形態の熱電変換モジュールは、特開2015−79796号公報に記載のように、n型半導体となる熱電変換素子とp型半導体となる熱電変換素子とを直接接合してpn接合部を形成した上で、n型半導体となる熱電変換素子の電極層とp型半導体となる熱電変換素子の電極層とが電気的に直列に接続されるように電極板を配置した構成であってもよい。
<シリサイド系熱電変換素子の電極層形成用組成物>
本実施形態のシリサイド系熱電変換素子の電極層形成用組成物(以下、単に「電極層形成用組成物」という。)は、導電性金属粒子と、ホウ素粒子と、バインダ樹脂と、溶媒とを含有する。電極層形成用組成物は、所望により、導電性金属粒子、ホウ素粒子、バインダ樹脂、及び溶媒以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、シリサイド系熱電変換材料の粒子、分散剤等が挙げられる。
本実施形態の電極層形成用組成物の組成は前述した導電膜形成用組成物と同様であるため、詳細な説明を省略する。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<実施例1>
(柱状インゴット基板の製造)
ドーパントとしてSbを0.5at%含有するマグネシウムシリサイド((株)安永製)を、自動乳鉢を用いて粒子径が25μm〜75μmになるまで粉砕した。そして、図2に示すカーボンダイ11(内径:30mm)とカーボンパンチ12a、12bとで囲まれた空間に、粉砕後のマグネシウムシリサイドの粒子を充填した。その際、固着を防ぐため、マグネシウムシリサイドの粒子とカーボンダイ11及びカーボンパンチ12a、12bとの接触部分にカーボンペーパーを挟んだ。
その後、放電プラズマ焼結装置((株)エレニックス製、Ed−PAS III−Es)を用いて減圧雰囲気下で焼結を行い、柱状インゴット基板を得た。焼結条件は下記のとおりである。
焼結温度:840℃
圧力:30.0MPa
昇温レート:300℃/分×2分(〜600℃)
100℃/分×2分(600℃〜800℃)
10℃/分×4分(800℃〜840℃)
0℃/分×5分(840℃)
冷却条件:真空放冷
雰囲気:アルゴンガス(冷却時は真空)
焼結後、付着したカーボンペーパーをサンドペーパーで除去した。なお、得られた柱状インゴット基板の形状は、直径が30mm、高さが10mmの円柱状である。
得られた柱状インゴット基板の両底面を以下のように加工した。具体的には、高精度貼り付けホルダーに柱状インゴット基板の一方の底面を貼り付け、焼付けホイール#80レジノイドを定盤とした卓上研磨機により研削加工を行った。柱状インゴット基板の他方の底面についても同様に研削加工を行った。加工後は、アセトンを湿らせたウェスにより削り屑を拭き取った。
(導電膜形成用組成物の調製)
下記の成分を撹拌機にて充分に撹拌し、脱泡することにより、導電膜形成用組成物を調製した。
ニッケル粒子(平均粒子径:0.15μm)・・・70部
マグネシウムシリサイド(柱状インゴット基板と同組成)の粒子(平均粒子径:18.0μm)・・・3部
ホウ素粒子(平均粒子径:1.0μm)・・・4.9部
バインダ樹脂(アクリル樹脂及びエチルセルロース樹脂)・・・1部
カルボン酸系分散剤・・・1部
ターピネオール ・・・20.1部
BROOKFIELD HBT型粘度計を用いて測定した25℃における導電膜形成用組成物の粘度は、10rpmの条件の場合に76.0Pa・sであり、100rpmの条件の場合に15.5Pa・sであった。
(導電膜付き柱状インゴット基板の製造)
柱状インゴット基板を台座に固定し、メタルマスクを押し当て、メタルマスクの開孔部にスキージにて導電膜形成用組成物を流し込むことにより、柱状インゴット基板の一方の底面に組成物膜を形成した。メタルマスクとしては、直径が28mmの円形状の開孔部が形成された厚さ250μmのマスクを用いた。
次いで、セラミックス製のセッターに組成物膜が上面となるように載せ、ホットプレート上に置き、100℃で10分間、150℃で5分間、200℃で5分間の順に加熱し、組成物膜を乾燥させた。乾燥後の組成物膜の膜厚は80μmであった。
柱状インゴット基板の他方の底面についても同様にして組成物膜を形成し、乾燥させた。
次いで、両底面に組成物膜が形成された柱状インゴット基板を組成物膜が溝と平行になるようにセラミックス製の溝切りボートに載置し、プログラム管状電気炉の石英炉心管の内部に室温にて挿入した。挿入後に石英キャップを閉じ、大気組成(窒素:酸素=4:1)のガスを1.0L/分の流量で流し、700℃まで5℃/分のレートで昇温した。700℃に到達後、同温度で10分間保持することにより、組成物膜を焼成した。その後、室温まで3℃/分のレートで降温し、得られた導電膜付き柱状インゴット基板を電気炉から取り出した。得られた導電膜付き柱状インゴット基板の導電膜について、剥離は観察されなかった。
得られた導電膜付き柱状インゴット基板の両底面に形成された導電膜を以下のように加工した。具体的には、高精度貼り付けホルダーに柱状インゴット基板の一方の底面を貼り付け、焼付けホイール#30000ビトリファイドを定盤とした卓上研磨機により研削加工を行った。導電膜付き柱状インゴット基板の他方の底面についても同様に研削加工を行った。その結果、導電膜付き柱状インゴット基板の厚さは7mmとなった。
加工後の導電膜は鏡面化しており、表面粗さRaは0.1μmであった。また、加工後の導電膜の任意の5箇所の厚さを3D測定機((株)キーエンス製、VR3200)により測定したところ、平均値は56μmであった。また、柱状インゴット基板と導電膜とを合わせた任意の5箇所の厚さをマイクロメーター((株)ミツトヨ製)により測定したところ、最大値と最小値との差は7μmであった。
(シリサイド系熱電変換素子の製造)
ワイヤーソーを用いて、導電膜付き柱状インゴット基板から3mm×3mm×7mmのシリサイド系熱電変換素子を30個切り出した。
切り出されたシリサイド系熱電変換素子の接触抵抗率を4端子法により測定したところ、接触抵抗率は0.955×10−9Ω・mであった。接触抵抗率の測定方法は以下のとおりである。
[接触抵抗率の測定方法]
シリサイド系熱電変換素子をニッケルめっきされた銅ブロックで挟み、0.5Aの電流を印加した後、電流方向の任意の2点上に探針を置き、電圧を測定した。印加電流及び測定電圧からオームの法則により抵抗値を算出した。このとき、一方の探針を電極層の界面に固定し、この点を原点として、他方の探針を0.25mmずつ1mmまで動かすことで、距離に依存した電圧変化を測定した。接触抵抗が存在する場合、距離を横軸、抵抗値を縦軸としたグラフに切片が現れる。測定データを基に切片の値を求め、この値に素子の断面積を乗算することで、接触抵抗率を得た。この測定を各5回、素子両側の電極層界面について行い(計10回)、これらの平均値をもって接触抵抗率とした。
切り出された30個のシリサイド系熱電変換素子について、粘着テープを用いて電極層の密着性を評価した。具体的には、電極層に粘着テープ(日新イーエム(株)製、導電性カーボン両面テープ)を貼った後、剥がすことにより、電極層の剥離の有無を確認し、剥離率(%)を求めた。その結果、30個全てのシリサイド系熱電変換素子について電極層の剥離は確認されず、剥離率は0%であった。
(シリサイド系熱電変換素子の高温耐久性の評価)
切り出されたシリサイド系熱電変換素子を大気雰囲気下の抵抗加熱炉に入れ、10分間かけて600℃まで加熱し、600℃で所定時間保持した後、10分間かけて室温まで冷却した。その結果、600℃で1000時間保持した試料であっても、電極層の剥離は観察されなかった。
<比較例1>
(導電膜付き柱状インゴット基板の製造)
ドーパントとしてSbを0.5at%含有するマグネシウムシリサイド((株)安永製)を、自動乳鉢を用いて粒子径が25μm〜75μmになるまで粉砕した。そして、図2に示すカーボンダイ11(内径:30mm)とカーボンパンチ12a、12bとで囲まれた空間に、ニッケル粒子(平均粒子径:2.0μm、純度:3N)と、マグネシウムシリサイドの粒子と、ニッケル粒子(平均粒子径:2.0μm、純度:3N)とをこの順で充填した。その際、固着を防ぐため、ニッケル粒子とカーボンダイ11及びカーボンパンチ12a、12bとの接触部分にカーボンペーパーを挟んだ。
その後、放電プラズマ焼結装置((株)エレニックス製、Ed−PAS III−Es)を用いて減圧雰囲気下で焼結を行い、柱状インゴット基板を得た。焼結条件は下記のとおりである。
焼結温度:840℃
圧力:30.0MPa
昇温レート:300℃/分×2分(〜600℃)
100℃/分×2分(600℃〜800℃)
10℃/分×4分(800℃〜840℃)
0℃/分×5分(840℃)
冷却条件:真空放冷
雰囲気:アルゴンガス(冷却時は真空)
焼結後、付着したカーボンペーパーをサンドペーパーで除去した。
得られた導電膜付き柱状インゴット基板の両底面に形成された導電膜を実施例1と同様に研磨加工し、直径30mm、高さ7mmの円柱状の導電膜付き柱状インゴット基板を得た。焼結及び研磨は、最終素子サイズに合わせて、マグネシウムシリサイドの粒子及びニッケル粒子の使用量を調整するなどして行った。同様にして、合計8個の導電膜付き柱状インゴット基板を製造した。
(シリサイド系熱電変換素子の製造)
ワイヤーソーを用いて、8個の各導電膜付き柱状インゴット基板からそれぞれ3mm×3mm×7mmのシリサイド系熱電変換素子を30個ずつ切り出し、合計240個のシリサイド系熱電変換素子を得た。
シリサイド系熱電変換素子を切り出す際に、一部のシリサイド系熱電変換素子については電極層が剥離した。電極層が剥離しなかったシリサイド系熱電変換素子について、実施例1と同様にして、粘着テープを用いて電極層の密着性を評価した。その結果、シリサイド系熱電変換素子を切り出す際に電極層が剥離したものと、密着性試験により電極層が剥離したものとを合わせた剥離率は91%であった。
(シリサイド系熱電変換素子の高温耐久性の評価)
切り出されたシリサイド系熱電変換素子を大気雰囲気下の抵抗加熱炉に入れ、10分間かけて600℃まで加熱し、600℃で所定時間保持した後、10分間かけて室温まで冷却した。その結果、600℃で50時間保持した試料について、電極層の剥離が観察された。
<比較例2>
(導電膜付き柱状インゴット基板の製造)
ドーパントとしてAlを0.5at%含有するマグネシウムシリサイド((株)安永製)を、自動乳鉢を用いて粒子径が25μm〜75μmになるまで粉砕した。そして、このマグネシウムシリサイドの粒子を使用したほかは比較例1と同様にして、導電膜付き柱状インゴット基板を製造した。同様にして、合計3個の導電膜付き柱状インゴット基板を製造した。
(シリサイド系熱電変換素子の製造)
ワイヤーソーを用いて、3個の各導電膜付き柱状インゴット基板からそれぞれ3mm×3mm×7mmのシリサイド系熱電変換素子を30個ずつ切り出し、合計90個のシリサイド系熱電変換素子を得た。
シリサイド系熱電変換素子を切り出す際に、一部のシリサイド系熱電変換素子については電極層が剥離した。電極層が剥離しなかったシリサイド系熱電変換素子について、実施例1と同様にして、粘着テープを用いて電極層の密着性を評価した。その結果、シリサイド系熱電変換素子を切り出す際に電極層が剥離したものと、密着性試験により電極層が剥離したものとを合わせた剥離率は87%であった。
(シリサイド系熱電変換素子の高温耐久性の評価)
切り出されたシリサイド系熱電変換素子を大気雰囲気下の抵抗加熱炉に入れ、10分間かけて600℃まで加熱し、600℃で所定時間保持した後、10分間かけて室温まで冷却した。その結果、600℃で100時間保持した試料について、電極層の剥離が観察された。
<実施例2>
(柱状インゴット基板の製造)
ドーパントとしてSbを0.5at%、Znを0.5at%含有するマグネシウムシリサイド((株)安永製)を、自動乳鉢を用いて粒子径が25μm〜75μmになるまで粉砕した。そして、図2に示すカーボンダイ11(内径:30mm)とカーボンパンチ12a、12bとで囲まれた空間に、粉砕後のマグネシウムシリサイドの粒子を充填した。その際、固着を防ぐため、マグネシウムシリサイドの粒子とカーボンダイ11及びカーボンパンチ12a、12bとの接触部分にカーボンペーパーを挟んだ。
その後、放電プラズマ焼結装置((株)エレニックス製、Ed−PAS III−Es)を用いて減圧雰囲気下で焼結を行い、柱状インゴット基板を得た。焼結条件は下記のとおりである。
焼結温度:840℃
圧力:30.0MPa
昇温レート:300℃/分×2分(〜600℃)
100℃/分×2分(600℃〜800℃)
10℃/分×4分(800℃〜840℃)
0℃/分×5分(840℃)
冷却条件:真空放冷
雰囲気:アルゴンガス(冷却時は真空)
焼結後、付着したカーボンペーパーをサンドペーパーで除去した。なお、得られた柱状インゴット基板の形状は、直径が30mm、高さが10mmの円柱状である。
この柱状インゴット基板の両底面を以下のように加工した。具体的には、高精度貼り付けホルダーに柱状インゴット基板の一方の底面を貼り付け、焼付けホイール#80レジノイドを定盤とした卓上研磨機により研削加工を行った。柱状インゴット基板の他方の底面についても同様に研削加工を行った。加工後は、アセトンを湿らせたウェスにより削り屑を拭き取った。
(導電膜形成用組成物の調製)
下記の成分を撹拌機にて充分に撹拌し、脱泡することにより、導電膜形成用組成物(1)を調製した。
ニッケル粒子(平均粒子径:0.1μm)・・・73部
ホウ素粒子(平均粒子径:1.0μm)・・・5.1部
バインダ樹脂(アクリル樹脂及びエチルセルロース樹脂)・・・1部
カルボン酸系分散剤・・・1部
ターピネオール ・・・19.9部
BROOKFIELD HBT型粘度計を用いて測定した25℃における導電膜形成用組成物(1)の粘度は、10rpmの条件の場合に71.0Pa・sであり、100rpmの条件の場合に15.0Pa・sであった。
(導電膜付き柱状インゴット基板の製造)
柱状インゴット基板を台座に固定し、メタルマスクを押し当て、メタルマスクの開孔部にスキージにて導電膜形成用組成物(1)を流し込むことにより、柱状インゴット基板の一方の底面に組成物膜を形成した。メタルマスクとしては、直径が28mmの円形状の開孔部が形成された厚さ250μmのマスクを用いた。
次いで、セラミックス製のセッターに組成物膜が上面となるように載せ、ホットプレート上に置き、100℃で10分間、150℃で5分間、200℃で5分間の順に加熱し、組成物膜を乾燥させた。乾燥後の組成物膜の膜厚は73μmであった。
柱状インゴット基板の他方の底面についても同様にして組成物膜を形成し、乾燥させた。
次いで、両底面に組成物膜が形成された柱状インゴット基板を組成物膜が溝と平行になるようにセラミックス製の溝切りボートに載置し、プログラム管状電気炉の石英炉心管の内部に室温にて挿入した。挿入後に石英キャップを閉じ、大気組成(窒素:酸素=4:1)のガスを1.0L/分の流量で流し、700℃まで5℃/分のレートで昇温した。700℃に到達後、同温度で10分間保持することにより、組成物膜を焼成した。その後、室温まで3℃/分のレートで降温し、電気炉から取り出した。
焼成後に得られた導電膜付き柱状インゴット基板の外観を図4に示す。図4から分かるように、得られた導電膜付き柱状インゴット基板では、柱状インゴット基板から剥離することなく導電膜が形成されていた。
(シリサイド系熱電変換素子の製造)
ワイヤーソーを用いて、導電膜付き柱状インゴット基板から3mm×3mm×7mmのシリサイド系熱電変換素子を30個切り出した。
切り出されたシリサイド系熱電変換素子の接触抵抗率を実施例1と同様にして測定したところ、接触抵抗率は0.647×10−9Ω・mであった。
(シリサイド系熱電変換素子の電極層切断面の構造観察及び元素分析)
切り出されたシリサイド系熱電変換素子の切断面について、イオンミリング法にてクロスセクションポリッシュを行い、極低加速電圧走査電子顕微鏡(ULV−SEM;カール・ツァイス社製、ULTRA55)により観察した。ULV−SEMにより観察した電極層切断面の構造を図5に示す。図5から分かるように、電極層はポーラス構造を有していた。
また、同様にイオンミリング法にてクロスセクションポリッシュした電極層切断面における元素分布を、エネルギー分散型X線分光器(EDX;サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製、NSS312E)により分析した。電極層切断面におけるホウ素、酸素、マグネシウム、シリコン、及びニッケルの元素分布のラインプロファイルを図6に示す。図6から分かるように、電極層中のホウ素及び酸素は、熱電変換層との界面近傍に偏在していた。この結果から、電極層中の酸化ホウ素は熱電変換層との界面近傍に偏在していることが示唆される。
<実施例3>
ホウ素粒子の添加量を6.5部、ニッケル粒子の添加量を71.5部、ターピネオールの添加量を20部にそれぞれ変更したほかは実施例2と同様にして、導電膜形成用組成物(2)を調製した。BROOKFIELD HBT型粘度計を用いて測定した25℃における導電膜形成用組成物(2)の粘度は、10rpmの条件の場合に73.0Pa・sであり、100rpmの条件の場合に16.3Pa・sであった。
そして、導電膜形成用組成物(1)の代わりに導電膜形成用組成物(2)を使用したほかは実施例2と同様にして、導電膜付き柱状インゴット基板を製造した。
焼成後に得られた導電膜付き柱状インゴット基板の外観を図7に示す。図7から分かるように、得られた導電膜付き柱状インゴット基板では、柱状インゴット基板から剥離することなく導電膜が形成されていた。
<比較例3>
ホウ素粒子を添加せず、ニッケル粒子の添加量を78部、ターピネオールの添加量を20部にそれぞれ変更したほかは実施例2と同様にして、導電膜形成用組成物(3)を調製した。BROOKFIELD HBT型粘度計を用いて測定した25℃における導電膜形成用組成物(3)の粘度は、10rpmの条件の場合に72.0Pa・sであり、100rpmの条件の場合に13.5Pa・sであった。
そして、導電膜形成用組成物(1)の代わりに導電膜形成用組成物(3)を使用したほかは実施例2と同様にして、導電膜付き柱状インゴット基板を製造した。
焼成後に得られた導電膜付き柱状インゴット基板の外観を図8に示す。図8から分かるように、得られた導電膜付き柱状インゴット基板では、導電膜が柱状インゴット基板から剥離していた。
<実施例4>
(柱状インゴット基板の製造)
実施例2と同様にして柱状インゴット基板(直径が30mm、高さが10mmの円柱状)を製造し、両底面を研削加工した。
(導電膜形成用組成物の調製)
下記の成分を撹拌機にて充分に撹拌し、脱泡することにより、導電膜形成用組成物(4)を調製した。
ニッケル粒子(平均粒子径:0.1μm)・・・74.5部
ホウ素粒子(平均粒子径:1.0μm)・・・3.7部
バインダ樹脂(アクリル樹脂及びエチルセルロース樹脂)・・・1部
カルボン酸系分散剤・・・1部
ターピネオール・・・19.8部
BROOKFIELD HBT型粘度計を用いて測定した25℃における導電膜形成用組成物(4)の粘度は、10rpmの条件の場合に71.0Pa・sであり、100rpmの条件の場合に15.0Pa・sであった。
(導電膜付き柱状インゴット基板の製造)
柱状インゴット基板を台座に固定し、メタルマスクを押し当て、メタルマスクの開孔部にスキージにて導電膜形成用組成物(4)を流し込むことにより、柱状インゴット基板の一方の底面に組成物膜を形成した。メタルマスクとしては、直径が28mmの円形状の開孔部が形成された厚さ250μmのマスクを用いた。
次いで、セラミックス製のセッターに組成物膜が上面となるように載せ、ホットプレート上に置き、100℃で10分間、150℃で5分間、200℃で5分間の順に加熱し、組成物膜を乾燥させた。乾燥後の組成物膜の膜厚は90μmであった。
柱状インゴット基板の他方の底面についても同様にして組成物膜を形成し、乾燥させた。
次いで、両底面に組成物膜が形成された柱状インゴット基板を組成物膜が溝と平行になるようにセラミックス製の溝切りボートに載置し、プログラム管状電気炉の石英炉心管の内部に室温にて挿入した。挿入後に石英キャップを閉じ、大気組成(窒素:酸素=4:1)のガスを1.0L/分の流量で流し、700℃まで5℃/分のレートで昇温した。700℃に到達後、同温度で10分間保持することにより、組成物膜を焼成した。その後、室温まで3℃/分のレートで降温し、得られた導電膜付き柱状インゴット基板を電気炉から取り出した。得られた導電膜付き柱状インゴット基板の導電膜について、剥離は観察されなかった。
得られた導電膜付き柱状インゴット基板の両底面に形成された導電膜を以下のように加工した。具体的には、高精度貼り付けホルダーに柱状インゴット基板の一方の底面を貼り付け、焼付けホイール#30000ビトリファイドを定盤とした卓上研磨機により研削加工を行った。導電膜付き柱状インゴット基板の他方の底面についても同様に研削加工を行った。その結果、導電膜付き柱状インゴット基板の厚さは7mmとなった。
加工後の導電膜は鏡面化しており、表面粗さRaは0.1μmであった。また、加工後の導電膜の任意の5箇所の厚さを3D測定機((株)キーエンス製、VR3200)により測定したところ、平均値は72μmであった。また、柱状インゴット基板と導電膜とを合わせた任意の5箇所の厚さをマイクロメーター((株)ミツトヨ製)により測定したところ、最大値と最小値との差は5μmであった。
(シリサイド系熱電変換素子の製造)
ワイヤーソーを用いて、導電膜付き柱状インゴット基板から2mm×2mm×7mmのシリサイド系熱電変換素子を90個切り出した。なお、素子のサイズを3mm×3mm×7mmから2mm×2mm×7mmのより小さなものに変更した理由は、電極層の密着性をより厳しく評価するためである。
切り出された90個のシリサイド系熱電変換素子について、実施例1と同様にして、粘着テープを用いて電極層の密着性を評価した。その結果、電極層の剥離が確認されたのは5個のみであり、剥離率は5.6%であった。
<実施例5>
(導電膜形成用組成物の調製)
マグネシウムシリサイド(柱状インゴット基板と同組成)の粒子(平均粒子径:18.0μm)を1部添加し、ニッケル粒子の添加量を73.5部、ホウ素粒子の添加量を3.6部、ターピネオールの添加量を19.9部にそれぞれ変更したほかは実施例4と同様にして、導電膜形成用組成物(5)を調製した。BROOKFIELD HBT型粘度計を用いて測定した25℃における導電膜形成用組成物(5)の粘度は、10rpmの条件の場合に74.0Pa・sであり、100rpmの条件の場合に11.6Pa・sであった。
(導電膜付き柱状インゴット基板の製造)
導電膜形成用組成物(4)の代わりに導電膜形成用組成物(5)を使用したほかは実施例4と同様にして、導電膜付き柱状インゴット基板を製造した。研削加工後の導電膜の任意の5箇所の厚さを3D測定機((株)キーエンス製、VR3200)により測定したところ、平均値は71μmであった。また、柱状インゴット基板と導電膜とを合わせた任意の5箇所の厚さをマイクロメーター((株)ミツトヨ製)により測定したところ、最大値と最小値との差は8μmであった。
(シリサイド系熱電変換素子の製造)
ワイヤーソーを用いて、導電膜付き柱状インゴット基板から2mm×2mm×7mmのシリサイド系熱電変換素子を90個切り出した。
切り出された90個のシリサイド系熱電変換素子について、実施例1と同様にして、粘着テープを用いて電極層の密着性を評価した。その結果、電極層の剥離が確認されたのは3個のみであり、剥離率は3.3%であった。
<実施例6>
(導電膜形成用組成物の調製)
マグネシウムシリサイド(柱状インゴット基板と同組成)の粒子(平均粒子径:18.0μm)を5部添加し、ニッケル粒子の添加量を69.5部、ホウ素粒子の添加量を3.5部、ターピネオールの添加量を20部にそれぞれ変更したほかは実施例4と同様にして、導電膜形成用組成物(6)を調製した。BROOKFIELD HBT型粘度計を用いて測定した25℃における導電膜形成用組成物(6)の粘度は、10rpmの条件の場合に76.0Pa・sであり、100rpmの条件の場合に14.5Pa・sであった。
(導電膜付き柱状インゴット基板の製造)
導電膜形成用組成物(4)の代わりに導電膜形成用組成物(6)を使用したほかは実施例4と同様にして、導電膜付き柱状インゴット基板を製造した。研削加工後の導電膜の任意の5箇所の厚さを3D測定機((株)キーエンス製、VR3200)により測定したところ、平均値は72μmであった。また、柱状インゴット基板と導電膜とを合わせた任意の5箇所の厚さをマイクロメーター((株)ミツトヨ製)により測定したところ、最大値と最小値との差は4μmであった。
(シリサイド系熱電変換素子の製造)
ワイヤーソーを用いて、導電膜付き柱状インゴット基板から2mm×2mm×7mmのシリサイド系熱電変換素子を90個切り出した。
切り出された90個のシリサイド系熱電変換素子について、実施例1と同様にして、粘着テープを用いて電極層の密着性を評価した。その結果、90個全てのシリサイド系熱電変換素子について電極層の剥離は確認されず、剥離率は0%であった。
<実施例7>
(導電膜形成用組成物の調製)
マグネシウムシリサイド(柱状インゴット基板と同組成)の粒子(平均粒子径:18.0μm)を10部添加し、ニッケル粒子の添加量を64.5部、ホウ素粒子の添加量を3.2部、ターピネオールの添加量を20.3部にそれぞれ変更したほかは実施例4と同様にして、導電膜形成用組成物(7)を調製した。BROOKFIELD HBT型粘度計を用いて測定した25℃における導電膜形成用組成物(7)の粘度は、10rpmの条件の場合に77.4Pa・sであり、100rpmの条件の場合に15.7Pa・sであった。
(導電膜付き柱状インゴット基板の製造)
導電膜形成用組成物(4)の代わりに導電膜形成用組成物(7)を使用したほかは実施例4と同様にして、導電膜付き柱状インゴット基板を製造した。研削加工後の導電膜の任意の5箇所の厚さを3D測定機((株)キーエンス製、VR3200)により測定したところ、平均値は76μmであった。また、柱状インゴット基板と導電膜とを合わせた任意の5箇所の厚さをマイクロメーター((株)ミツトヨ製)により測定したところ、最大値と最小値との差は4μmであった。
(シリサイド系熱電変換素子の製造)
ワイヤーソーを用いて、導電膜付き柱状インゴット基板から2mm×2mm×7mmのシリサイド系熱電変換素子を90個切り出した。
切り出された90個のシリサイド系熱電変換素子について、実施例1と同様にして、粘着テープを用いて電極層の密着性を評価した。その結果、90個全てのシリサイド系熱電変換素子について電極層の剥離は確認されず、剥離率は0%であった。
1 導電膜付き柱状インゴット基板
2 柱状インゴット基板
3 導電膜
4 シリサイド系熱電変換素子
5 シリサイド系熱電変換層
6 電極層
7 熱電変換モジュール
8 電極板
10 柱状インゴット基板の製造装置
11 カーボンダイ
12a、12b カーボンパンチ

Claims (24)

  1. 複数個の熱電変換素子の切り出しに用いられる導電膜付き柱状インゴット基板であって、
    シリサイド系熱電変換材料からなる柱状インゴット基板と、前記柱状インゴット基板の片面又は両面に設けられ、導電性金属粒子、ホウ素粒子、バインダ樹脂、及び溶媒を含有する組成物の焼成体であり、かつ、酸化ホウ素を含有する導電膜と、を有し、
    前記導電膜中における酸化ホウ素が、前記柱状インゴット基板との界面側に偏在している導電膜付き柱状インゴット基板。
  2. 前記柱状インゴット基板が焼結体である請求項1に記載の導電膜付き柱状インゴット基板。
  3. 前記導電膜がポーラス構造を有する請求項1又は請求項2に記載の導電膜付き柱状インゴット基板。
  4. 前記導電膜がシリサイド系熱電変換材料を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板。
  5. 前記柱状インゴット基板と前記導電膜とを合わせた厚さの最大値と最小値との差が40μm以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板。
  6. 前記柱状インゴット基板を構成するシリサイド系熱電変換材料がマグネシウムシリサイドである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板。
  7. シリサイド系熱電変換材料からなる熱電変換層と、
    前記熱電変換層の片面又は両面に設けられ、導電性金属粒子、ホウ素粒子、バインダ樹脂、及び溶媒を含有する組成物の焼成体であり、かつ、酸化ホウ素を含有する電極層と、
    を有し、
    前記電極層中における酸化ホウ素が、前記熱電変換層との界面側に偏在しているシリサイド系熱電変換素子。
  8. 前記熱電変換層が焼結体である請求項7に記載のシリサイド系熱電変換素子。
  9. 前記電極層がポーラス構造を有する請求項7又は請求項8に記載のシリサイド系熱電変換素子。
  10. 前記電極層がシリサイド系熱電変換材料を含有する請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載のシリサイド系熱電変換素子。
  11. 体積抵抗率が4.0×10−6Ω・m以下であり、前記熱電変換層と前記電極層との接触抵抗率が1.0×10−10Ω・m〜1.0×10−9Ω・mである請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載のシリサイド系熱電変換素子。
  12. 前記熱電変換層を構成するシリサイド系熱電変換材料がマグネシウムシリサイドである請求項7〜請求項11のいずれか1項に記載のシリサイド系熱電変換素子。
  13. 請求項7〜請求項12のいずれか1項に記載のシリサイド系熱電変換素子を含む複数個の熱電変換素子と、
    複数個の前記熱電変換素子の電極層に接して設けられた電極板と、
    を備える熱電変換モジュール。
  14. 複数個の熱電変換素子の切り出しに用いられる導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法であって、
    シリサイド系熱電変換材料からなる柱状インゴット基板の片面又は両面に導電膜形成用組成物を付与し、酸素存在下で焼成することにより酸化ホウ素を含む導電膜を形成する工程を有し、
    前記導電膜形成用組成物が、導電性金属粒子、ホウ素粒子、バインダ樹脂、及び溶媒を含有する導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
  15. 前記柱状インゴット基板が焼結体である請求項14に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
  16. 前記導電性金属粒子が、ニッケル粒子、銅粒子、及びアルミニウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種である請求項14又は請求項15に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
  17. 前記導電性金属粒子がニッケル粒子であり、前記導電膜を形成する工程における焼成温度が600℃〜800℃である請求項14〜請求項16のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
  18. 前記導電膜形成用組成物がシリサイド系熱電変換材料の粒子を更に含有する請求項14〜請求項17のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
  19. 前記導電膜形成用組成物を印刷法により前記柱状インゴット基板に付与する請求項14〜請求項18のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
  20. 前記導電膜形成用組成物の付与前に、前記柱状インゴット基板における前記導電膜形成用組成物を付与する面を加工する工程を更に有する請求項14〜請求項19のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
  21. 前記導電膜の形成後に、前記導電膜の表面を加工する工程を更に有する請求項14〜請求項20のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
  22. 前記柱状インゴット基板を構成するシリサイド系熱電変換材料がマグネシウムシリサイドである請求項14〜請求項21のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板の製造方法。
  23. シリサイド系熱電変換材料からなる熱電変換層と、前記熱電変換層の片面又は両面に設けられた、酸化ホウ素を含有する電極層と、を有するシリサイド系熱電変換素子の製造方法であり、
    請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の導電膜付き柱状インゴット基板から複数個のシリサイド系熱電変換素子を切り出す工程を有するシリサイド系熱電変換素子の製造方法。
  24. 請求項14〜請求項22のいずれか1項に記載の製造方法により前記導電膜付き柱状インゴット基板を製造する工程を更に有する請求項23に記載のシリサイド系熱電変換素子の製造方法。
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