JP6829111B2 - Tig溶接用溶加材 - Google Patents

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Description

本発明は、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接用溶加材に関する。より詳細には、特に、400N/mm級の引張強度を有する低強度鋼用のTIG溶接材料として有用な、TIG溶接用溶加材に関する。
従来、溶接構造用圧延鋼として種々の鋼材が用いられており、例えば、溶接構造用圧延鋼SM400(JIS G3106)に代表される400MPa級の引張強度を有する鋼材(400MPa級鋼)が用いられている。構造物を溶接する場合、一般的には、当該構造物に荷重が印加された際に、溶接部ではなく母材の部分で破壊が生じるように設計される。したがって、一般的には、溶接部には母材よりも高い強度が要求される。ここで、JIS Z3316には、軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用TIG溶接溶加棒及びソリッドワイヤの規格が定められている。
ここで、炭素鋼のTIG溶接においては、一般的に、シールドガスとして高純度のアルゴン(Ar)ガスが用いられる。アルゴンガスは溶融池の酸化反応を生じさせないので、溶接金属の酸素量は他の溶接法と比べて著しく低くなる。したがって、TIG溶接金属は、酸化物等の介在物が少なく、強度や靱性に優れるという性質を有する。
しかしながら、酸素量の少ない炭素鋼は焼入れ性が非常に高くなるという性質を有するため、溶接金属の原質部では強度及び硬度が非常に上昇するといった問題があった。特に、厚板の場合には、薄板の場合と比較して冷却速度が速くなり、焼入れ性がさらに高められる結果、過剰硬度が助長されるという問題があった。
また、多層溶接における最終層や単層溶接など、溶接による再熱を受けない箇所では、組織が原質部となるため、硬度が過剰に高くなる場合があり、遅れ割れや硫化物応力腐食割れ(SSCC)が発生する恐れがあった。これら割れは、溶接金属の拡散性水素量や溶接金属へ負荷される拘束力にも依存するが、一般的に溶接金属のビッカース硬さがHV350以上となった場合、割れが発生しやすいとされている。
ここで、溶接材料の硬度を低減させる方法としては、溶接施工面において、冷却速度を小さくするために溶接入熱を増加させ、予熱温度及びパス間温度を上昇させる方法が知られている。また、溶接後熱処理(PWHT)として、硬化した原質部を焼鈍することによって組織を焼戻し、硬度を低下させる方法も知られている。
しかしながら、これらの方法では工数が増加するため、生産性が低下し、コストが上昇するといった問題があった。また、溶接入熱の増加は熱影響部(HAZ)に影響し、継手強度を確保できなくなるといった問題もあった。さらに、溶接後熱処理(PWHT)についても、炉の大きさや溶接構造物の大きさによっては、熱処理を適用することが難しいという設備上の制約もあった。
また、溶接材料として、例えば、特許文献1には、Cが0.03重量%以下、Siが0.05重量%以下、Mnが0.80重量%以下、Tiが0.008重量%以下、Oが0.025重量%以下に規制され残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とするガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤが記載されている。
特開平11−221672号公報
特許文献1に記載のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤは、単層溶接における溶接金属の過剰硬度を抑制するためには有効である。しかしながら、多層溶接のような再熱部を含む溶接金属の強度は、鋼板強度よりも軟化するため、特許文献1に記載のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤは、400MPa級鋼用の溶接材料として求められる溶接継手強度を満足することができないという問題があった。すなわち、特許文献1に記載のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤを用いた溶接金属は、いずれも引張強度が400MPaよりも低いものであった。また、多層溶接で硬度過剰となる最終層のみを当該ワイヤで施行することで原質部の硬度を低下させることも考えられるが、ワイヤ管理面や溶接施工の効率面における問題があった。
前記従来の課題を鑑みて、本発明は、単層溶接における遅れ割れの要因となる溶接金属の過剰硬度を抑制するとともに、多層溶接において400MPa級鋼の溶接材料として求められる溶接継手性能(強度、靱性等)を満足するTIG溶接用溶加材を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、C:0.02〜0.06質量%、Si:0.30〜0.85質量%、及びMn:0.70〜1.40質量%を含有し、Ni:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む)、Cr:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む)、Mo:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む)、V:0.05質量%以下(但し、0質量%を含む)、P:0.030質量%以下(但し、0質量%を含まない)、S:0.030質量%以下(但し、0質量%を含まない)、及びN:0.0100質量%以下(但し、0質量%を含まない)にそれぞれ規制され、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で表される炭素当量Ceqが0.15〜0.35の範囲内であるTIG溶接用溶加材を提供する。
Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14 (1)
(但し、[C]、[Si]、[Mn]、[Ni]、[Cr]、[Mo]および[V]は、それぞれC、Si、Mn、Ni、Cr、MoおよびVの含有量(質量%)を示す。)
ここで、本発明のTIG溶接用溶加材においては、前記炭素当量Ceqが0.20〜0.33の範囲内であってもよい。
また、本発明のTIG溶接用溶加材は、Al:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む)、Ti:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む)、Zr:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む)、及びO:0.0100質量%以下(但し、0質量%を含まない)からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含有し、かつ下記式(2)の関係を満足するものであってもよい。
[X]=([Ti]+[Al]+[Zr])×[O]×10000≦10.0 (2)
(但し、[Ti]、[Al]、[Zr]、および[O]は、それぞれTi、Al、ZrおよびOの含有量(質量%)を示す。)
また、本発明のTIG溶接用溶加材は、Cu:0.50質量%以下(但し、0質量%を含む)をさらに含有してもよい。
本発明のTIG溶接用溶加材は、単層溶接における遅れ割れの要因となる溶接金属の過剰硬度を抑制するとともに、多層溶接において400MPa級鋼の溶接材料として求められる溶接継手性能(強度、靱性等)を満足する。したがって、本発明のTIG溶接用溶加材は、特に、400MPa級鋼のTIG溶接材料として有用に用いられる。
図1は多層溶接(全溶着金属)に使用した母材の形状を示す図であり、図1(a)は平面図であり、図1(b)は断面図である。 図2は単層すみ肉溶接の状態を表す説明図であり、図2(a)は平面図であり、図2(b)は断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本実施形態のTIG溶接用溶加材(以下において、単に「溶加材」ともいう)は、C:0.02〜0.06質量%、Si:0.30〜0.85質量%、及びMn:0.70〜1.40質量%を含有し、Ni:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む)、Cr:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む)、Mo:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む)、V:0.05質量%以下(但し、0質量%を含む)、P:0.030質量%以下(但し、0質量%を含まない)、S:0.030質量%以下(但し、0質量%を含まない)、及びN:0.0100質量%以下(但し、0質量%を含まない)にそれぞれ規制され、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、下記式(1)で表される炭素当量Ceqが0.15〜0.35の範囲内である。
Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14 (1)
(但し、[C]、[Si]、[Mn]、[Ni]、[Cr]、[Mo]および[V]は、それぞれC、Si、Mn、Ni、Cr、MoおよびVの含有量(質量%)を示す。)
以下において、本実施形態の溶加材の化学組成等の限定理由について説明する。なお、以下において、組成の説明における百分率(%)は、特にことわりが無い限り、全て質量を基準とした百分率(質量%)を表すものとする。また、本明細書において、質量%は重量%と同じであるとする。
(C:0.02〜0.06%)
Cは、溶接金属に固溶することにより、強度及び硬度を向上させる効果を有する元素である。溶加材中のC含有量が0.02%以上であると、強度の向上効果が十分に発揮され、400MPa級鋼の溶接材料として適切な溶接金属の強度を確保することが可能となる。また、溶加材中のC含有量が0.06%以下であると、硬度が高くなりすぎず、過剰硬度に由来した遅れ割れを防止することができる。
C含有量は、好ましくは0.03%以上である。また、C含有量は、好ましくは0.05%以下である。
(Si:0.30〜0.85%)
Siは、溶接金属に固溶することにより、強度及び硬度を向上させる効果を有する元素である。また、Siは、ビード止端部の馴染みを向上させる効果も有する。溶加材中のSi含有量が0.30%以上であると、強度の向上効果が十分に発揮され、400MPa鋼の溶接材料として適切な強度とすることができるとともに、ビード止端部の馴染みを良好とすることができる。また、溶加材中のSi含有量が0.85%以下であると、硬度が高くなりすぎず、過剰硬度に由来する遅れ割れを防止することができる。
Si含有量は、好ましくは0.40%以上であり、より好ましくは0.50%以上である。また、Si含有量は、好ましくは0.80%以下であり、より好ましくは0.70%以下である。
(Mn:0.70〜1.40%)
Mnは、溶接金属に固溶することにより、強度及び硬度を向上させる効果を有する元素である。また、Mnは、靱性を向上させる効果も有する。溶加材中のMn含有量が0.70%以上であると、強度の向上効果が十分に発揮され、400MPa級鋼の溶接材料として適切な強度とすることができるとともに、優れた靱性を得ることができる。また、溶加材中のMn含有量が1.40%以下であると、硬度が高くなりすぎず、過剰硬度に由来する遅れ割れを防止することができる。
Mn含有量は、好ましくは0.80%以上であり、より好ましくは1.00%以上である。また、Mn含有量は、好ましくは1.30%以下であり、より好ましくは1.25%以下である。
(Ni:0.10%以下(但し、0%を含む)、Cr:0.10%以下(但し、0%を含む)、Mo:0.10%以下(但し、0%を含む)、及びV:0.05%以下(但し、0%を含む))
Ni、Cr、Mo及びVは、硬度を向上させる効果を有する元素であるが、過剰に含有すると硬度が高くなりすぎ、過剰硬度に由来する遅れ割れが発生する恐れがある。
したがって、これら元素は溶加材中に含有されてもよく、あるいは、含有されなくてもよいが、含有される場合であっても、溶加材中のそれぞれの含有量は、Niであれば0.10%以下、Crであれば0.10%以下、Moであれば0.10%以下、また、Vであれば0.05%以下に、それぞれ規制する。
なお、Ni含有量は、好ましくは0.05%以下に規制する。
また、Cr含有量は、好ましくは0.05%以下に規制する。
また、Mo含有量は、好ましくは0.05%以下に規制する。
また、V含有量は、好ましくは0.02%以下に規制する。
(炭素当量Ceq:0.15〜0.35)
本実施形態の溶加材は、下記式(1)で表される炭素当量Ceqが0.15〜0.35の範囲内である。
Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14 (1)
(但し、[C]、[Si]、[Mn]、[Ni]、[Cr]、[Mo]および[V]は、それぞれC、Si、Mn、Ni、Cr、MoおよびVの含有量(質量%)を示す。)
当該炭素当量Ceqが0.15以上であると、適切な強度向上効果が得られ、400MPa級鋼の溶接材料として適切な強度とすることができる。また、炭素当量Ceqが0.35以下であると、硬度が高くなりすぎず、過剰硬度に由来する遅れ割れを防止することができる。
当該炭素当量Ceqは、好ましくは0.20以上である。また、当該炭素当量Ceqは、好ましくは0.33以下である。
(P:0.030%以下(但し、0%を含まない)、及びS:0.030%以下(但し、0%を含まない))
P及びSは溶加材中に不可避的に存在する元素であるが、高温割れ感受性を増大させ、また、靱性を低下させる効果を有する。したがって、溶加材中のP含有量は0.030%以下に、また、S含有量は0.030%以下に、それぞれ規制する。P含有量は、好ましくは0.025%以下に規制する。また、S含有量は、好ましくは0.025%以下に規制する。なお、P及びSの含有量は、それぞれ極力小さい方が好ましいが、溶加材がこれら元素を全く含有しないようにすることは通常困難である。したがって、P及びSの含有量の下限値を規定するとすれば、例えば0%超である。
(N:0.0100%以下(但し、0%を含まない))
Nは溶加材中に不可避的に存在する元素であるが、靱性を低下させる効果を有する。したがって、溶加材中のN含有量は0.0100%以下に規制する。N含有量は、好ましくは0.0070%以下に規制する。なお、N含有量は、極力小さい方が好ましいが、溶加材がNを全く含有しないようにすることは通常困難である。したがって、N含有量の下限値を規定するとすれば、例えば0%超である。
また、本実施形態の溶加材は、上述した各元素に加えて、所定の含有量以下であれば、以下の元素をさらに含有していてもよい。
(Al:0.10%以下(但し、0%を含む)、Ti:0.10%以下(但し、0%を含む)、Zr:0.10%以下(但し、0%を含む)、及びO:0.0100%以下(但し、0%を含まない)からなる群から選ばれる少なくとも1種)
Al、Ti及びZrは、固溶及び析出等により溶接金属の強度を上昇させる効果を有する元素であるが、一方で、Oと結合して溶接金属内に酸化物を形成し、伸びと靱性を低下させる元素でもある。また、これらは溶接金属外に排出されるとスラグを形成し、スラグ巻込み等の溶接欠陥となり、更にビード外観を阻害する要因となる。また、Oは溶加材中に不可避的に存在する元素であるが、Oが多く存在すると、上記した効果が助長される。
したがって、Al、Ti及びZrは溶加材中に含有させてもよく、あるいは、含有させなくてもよいが、含有させる場合であっても、溶加材中のそれぞれの含有量は、Alであれば0.10%以下、Tiであれば0.10%以下、また、Zrであれば0.10%以下とする。
Al含有量は、好ましくは0.05%以上である。また、Al含有量は、好ましくは0.01%以下である。
Ti含有量は、好ましくは0.05%以上である。また、Ti含有量は、好ましくは0.01%以下である。
Zr含有量は、好ましくは0.05%以上である。また、Zr含有量は、好ましくは0.01%以下である。
また、Oの含有量は、0.0100%以下、好ましくは0.0070%以下とする。なお、Oの含有量は、極力小さい方が好ましいが、溶加材がOを全く含有しないようにすることは通常困難である。したがって、O含有量の下限値を規定するとすれば、例えば0%超である。
([X]≦10.0)
また、本実施形態の溶加材がAl、Ti、Zr及びOの少なくとも1種を上記範囲内で含有する場合においては、下記式(2)の関係を満足することが好ましい。
[X]=([Ti]+[Al]+[Zr])×[O]×10000≦10.0 (2)
(但し、[Ti]、[Al]、[Zr]、および[O]は、それぞれTi、Al、ZrおよびOの含有量(質量%)を示す。)
上記式(2)で表される[X]が10.0以下であると、スラグの形成量を良好に抑制することができ、スラグ巻込み等の溶接欠陥を防止でき、外観性に優れたビードを得ることができる。
(Cu:0.50%以下)
Cuは、強度を向上させる効果を有する元素であるが、過剰に添加すると強度が高くなりすぎ、また、高温割れ感受性が増大する。したがって、Cuは溶加材中に含有させてもよく、あるいは、含有させなくてもよいが、含有させる場合であっても、溶加材中のCu含有量は、0.50%以下とする。
Cu含有量は、好ましくは0.35%以上である。なお、本実施形態の溶加材には、所望によりCuめっきを施す場合がある。ここで、本明細書においては、溶加材にCuめっきを施した場合におけるCu含有量とは、溶加材とCuめっき膜とを合わせた全体に対する、溶加材とCuめっき膜中のCu含有量を意味するものとする。
なお、本実施形態の溶加材における残部は、Fe及び不可避的不純物からなる。前記元素以外の不可避的不純物としては、Nb、Sn及びB等の元素が存在する。これらの元素は固溶及び析出等により溶接金属の強度を上昇させると共に、高温割れ感受性を増大させるものであるので、できるだけ低減することが好ましいが、各元素の含有量が0.1%までの範囲であれば、含有が許容される。
本実施形態の溶加材の形態としては、例えば、溶接棒やワイヤ等が挙げられる。なお、本実施形態においては、溶加材表面のCuめっきの有無、粒界酸化等の表面形態及び表面塗布油の性状等は、特に制限されない。更に、本実施形態においては、ワイヤの巻形状についても特に限定されるものではなく、例えばスプール巻きワイヤ、パック入りワイヤ等を使用することができる。
なお、本実施形態の溶加材を製造するにあたっては、溶加材の製造方法として従来公知の種々の方法を、特に制限なく適用することができる。
本実施形態の溶加材は、単層溶接における遅れ割れの要因となる溶接金属の過剰硬度を抑制するとともに、多層溶接において400MPa級鋼の溶接材料として求められる溶接継手性能(強度、靱性等)を満足する。したがって、本実施形態の溶加材は、特に、400MPa級鋼のTIG溶接材料として有用に用いられる。なお、本実施形態の溶加材は、400MPa級鋼以外の各種鋼のTIG溶接材料としても適宜使用可能である。また、本実施形態の溶加材は、TIG溶接以外の各種溶接手法にも、適宜応用可能である。
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(全溶接金属引張試験、シャルピー衝撃試験及びスラグ量評価)
図1は多層溶接(全溶着金属)に使用した母材の形状を示す図であり、図1(a)は平面図であり、図1(b)は断面図である。図1に示すように、先ず、端面に傾斜した切欠きを有するJIS G3106 SM400B鋼板1を2枚準備して、その傾斜面1a同士を対向させ傾斜面1aの先端を10mm離間させた状態で2枚の鋼板1を配置することにより、2枚の鋼板1間に45゜の開先角度を有する開先2を形成した。次に、開先2の裏面側にJIS G3106 SM400Bからなる裏当て材3を配置した後、開先2に対して、表3及び表4に示される種々の組成を有する溶加材(ワイヤ)を使用して、下記表1に示す溶接条件で多層溶接(全溶着金属)を実施した。なお、本試験においては、鋼板1の板厚を16mmとし、鋼板1の傾斜面1aに平行な方向の長さを300mm、傾斜面1aに直交する方向の長さを125mmとした。また、裏当て材3の板厚を6mmとした。なお、表3及び表4における「−」はその成分量が検出限界未満であったことを示す。また、組成の残部はFe及び不可避的不純物である。
次に、得られた溶接金属について、下記表2に示す条件で、全溶接金属の引張試験を実施することにより、引張強度(MPa)、0.2%耐力(MPa)及び伸び(%)を測定し、評価した。これらの結果を表5及び表6に示す。
ここで、引張強度については、430〜600MPaの範囲にある場合を良好と判断し、それ以外の場合を不良として評価した。
0.2%耐力については、330MPa以上の場合を良好、330MPa未満の場合を不良として評価した。
伸びについては、20%以上の場合を良好、20%未満の場合を不良として評価した。
また、得られた溶接金属について、下記表2に示す条件でシャルピー衝撃試験を実施することにより、吸収エネルギー(J)を測定し、評価した。この結果を表5及び表6に示す。ここで、吸収エネルギーが100J以上の場合を良好、100J未満の場合を不良として評価した。
また、得られた溶接金属について、スラグ量を目視により評価した。この結果を表5及び表6に示す。ここで、スラグ量が少なく外観に優れると評価される場合を良好(○)、スラグ量が多く外観に劣り、且つ、超音波探傷にてスラグ巻込み等の融合不良(溶接欠陥)が生じた場合を不良(×)として評価した。
(ビッカース硬さ試験)
図2は単層すみ肉溶接の状態を表す説明図であり、図2(a)は平面図であり、図2(b)は断面図である。図2に示すように、鋼板4としての、幅150mm×長さ200mm×板厚50mmのJIS G3106 SM400B鋼板、及び、鋼板5としての、幅70mm×長さ200mm×板厚6mmのJIS G3106 SM400B鋼板を用意した。これら下板及び立板に対して、表3及び表4に示される種々の組成を有する溶加材(ワイヤ)を使用して、下記表1に示す溶接条件で単層すみ肉溶接部6を作製した。
次に、得られた溶接金属について、下記表2に示す条件で、溶接金属の断面中央部のビッカース硬さ試験を実施することにより、ビッカース硬さHVを測定し、評価した。この結果を表5及び表6に示す。ここで、ビッカース硬さがHV350以下の場合を良好とし、HV350を超える場合を不良(×)として評価した。
Figure 0006829111
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実験例1〜11は実施例であり、実験例12〜25は比較例である。
表3〜6に示されるように、実験例1〜11の各溶加材は、適切な化学組成を有しているため、全溶接金属の引張試験における引張強度が430〜600MPaの範囲になると共に、0.2%耐力が330MPa以上、伸びが20%以上の良好な機械的性能が得られた。更に、単層すみ肉溶接金属のビッカース硬さもHV350以下となり、良好であった。したがって、実験例1〜11の各溶加材は、単層溶接における遅れ割れの要因となる溶接金属の過剰硬度を抑制するとともに、多層溶接において400MPa級鋼の溶接材料として求められる溶接継手性能(強度、靱性等)を満足するものであった。
なお、実験例4及び9は[X]がそれぞれ12.7及び11.9と大きいため、スラグ発生量が多く、外観には劣るものであった。
一方、実験例12は、Mn含有量が本発明規定の範囲より小さく、また、Ceqが本発明規定の範囲より小さい。そのため、全溶着金属の0.2%耐力および引張強度が不足し、評価結果が不良であった。
実験例13は、Si含有量が本発明規定の範囲より小さい。そのため、全溶着金属の引張強度が不足し、評価結果が不良であった。
実験例14は、C含有量及びMn含有量が本発明規定の範囲より小さく、また、Ceqが本発明規定の範囲より小さい。そのため、全溶着金属の0.2%耐力および引張強度が不足し、評価結果が不良であった。
実験例15は、C含有量、Si含有量、Mn含有量及びMo含有量が本発明規定の範囲より大きく、また、Ceqが本発明規定の範囲より大きい。そのため、全溶着金属の引張強度が高く、評価結果が不良であり、またビッカース硬さもHV350を超過し、評価結果も不良であった。
実験例16は、Si含有量及びMn含有量が本発明規定の範囲より大きく、また、Ceqが本発明規定の範囲より大きい。そのため、全溶着金属の引張強度が高く、評価結果が不良であり、またビッカース硬さもHV350を超過し、評価結果も不良であった。
実験例17は、C含有量が本発明規定の範囲より大きく、また、Ceqが本発明規定の範囲より大きい。そのため、全溶着金属の引張強度が高く、評価結果が不良であり、またビッカース硬さもHV350を超過し、評価結果も不良であった。
実験例18は、N含有量が本発明規定の範囲より大きい。そのため、全溶着金属の吸収エネルギーが不足し、評価結果が不良であった。
実験例19は、Si含有量が本発明規定の範囲より小さく、また、S含有量が本発明規定の範囲より大きい。そのため、全溶着金属の引張強度および吸収エネルギーが不足し、評価結果が不良であった。
実験例20は、Mn含有量が本発明規定の範囲より小さく、また、Ni含有量が本発明規定の範囲より大きい。そのため、全溶着金属の引張強度および0.2%耐力が不足し、評価結果が不良であった。
実験例21は、Cr含有量が本発明規定の範囲より大きく、また、Ceqも本発明規定の範囲より大きい。そのため、全溶着金属の引張強度およびビッカース硬さが高く、評価結果が不良であった。
実験例22は、Mo含有量が本発明規定の範囲より大きい。そのため、全溶着金属の引張強度およびビッカース硬さが高く、評価結果が不良であった。
実験例23は、Cr含有量、V含有量およびN含有量が本発明規定の範囲より大きい。そのため、全溶着金属の吸収エネルギーが不足し、且つ、ビッカース硬さが高く、評価結果が不良であった。
実験例24は、C含有量が本発明規定の範囲より大きく、また、Ceqも本発明規定の範囲より大きい。そのため、全溶着金属の引張強度およびビッカース硬さが高く、評価結果が不良であった。
実験例25は、P含有量が本発明規定の範囲より大きい。そのため、全溶着金属の吸収エネルギーが不足し、評価結果が不良であった。また、スラグ発生量が多く、外観に劣るものであった。
1 鋼板
1a 傾斜面
2 開先
3 裏当て材
4 下板
5 立板
6 溶接金属

Claims (4)

  1. C:0.02〜0.06質量%、
    Si:0.30〜0.85質量%、及び
    Mn:0.70〜1.40質量%を含有し、
    Ni:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む)、
    Cr:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む)、
    Mo:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む)、
    V:0.05質量%以下(但し、0質量%を含む)、
    P:0.030質量%以下(但し、0質量%を含まない)、
    S:0.030質量%以下(但し、0質量%を含まない)
    N:0.0100質量%以下(但し、0質量%を含まない)、及び
    O:0.0100質量%以下(但し、0質量%を含まない)にそれぞれ規制され、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、
    下記式(1)で表される炭素当量Ceqが0.15〜0.35の範囲内であるTIG溶接用溶加材。
    Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14 (1)
    (但し、[C]、[Si]、[Mn]、[Ni]、[Cr]、[Mo]および[V]は、それぞれC、Si、Mn、Ni、Cr、MoおよびVの含有量(質量%)を示す。)
  2. 前記炭素当量Ceqが0.20〜0.33の範囲内である請求項1に記載のTIG溶接用溶加材。
  3. Al:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む)、
    Ti:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む)、及び
    Zr:0.10質量%以下(但し、0質量%を含む
    らなる群から選ばれる少なくとも1種と、
    Cu:0.50質量%以下(但し、0質量%を含まない)と、
    をさらに含有し、かつ
    下記式(2)の関係を満足する請求項1又は2に記載のTIG溶接用溶加材。
    [X]=([Ti]+[Al]+[Zr])×[O]×10000≦10.0 (2)
    (但し、[Ti]、[Al]、[Zr]、および[O]は、それぞれTi、Al、ZrおよびOの含有量(質量%)を示す。)
  4. Cu:0.50質量%以下(但し、0質量%を含む)をさらに含有する請求項1又は2に記載のTIG溶接用溶加材。
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