<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を、図1〜図5を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、画像形成装置1の一例としてタンデム型のフルカラープリンタについて説明している。但し、本発明はタンデム型の画像形成装置1に限られず、他の方式の画像形成装置であってもよく、また、フルカラーであることにも限られず、モノクロやモノカラーであってもよい。あるいは、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施することができる。また、本実施形態では、画像形成装置1は、中間転写ベルト44bを有し、感光ドラム51から中間転写ベルト44bに各色のトナー像を一次転写した後、各色の複合トナー像をシートSに一括して二次転写する方式としている。但し、これには限られず、シート搬送ベルトで搬送されたシートに感光ドラムから直接に転写する方式を採用してもよい。
画像形成装置1は、不図示の原稿読取装置、パーソナルコンピュータ等のホスト機器、あるいはデジタルカメラやスマートフォン等の外部機器からの画像信号に応じて、4色フルカラー画像を記録材に形成することができる。尚、記録材であるシートSは、トナー像が形成されるものであり、具体例として、普通紙、普通紙の代用品である合成樹脂製のシート、厚紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート等がある。
図1に示すように、画像形成装置1は、装置本体10と、不図示のシート給送部と、画像形成部40と、不図示のシート排出部と、制御部11と、装置本体10の内部の温度及び湿度を検知可能な温湿度センサ(環境検知部)12とを備えている。温湿度センサ12は、制御部11に接続され、後述する感光ドラム51の周囲の少なくとも温度又は湿度を含む環境情報を検知して、制御部11に送信する。
画像形成部40は、シート給送部から給送されたシートSに対して、画像情報に基づいて画像を形成可能である。画像形成部40は、画像形成ユニット50y,50m,50c,50kと、トナーボトル41y,41m,41c,41kと、露光装置42y,42m,42c,42kと、中間転写ユニット44と、二次転写部45と、定着部46とを備えている。尚、本実施形態の画像形成装置1は、フルカラーに対応するものであり、画像形成ユニット50y,50m,50c,50kは、イエロー(y)、マゼンタ(m)、シアン(c)、ブラック(k)の4色それぞれに同様の構成で別個に設けられている。このため、図1中では4色の各構成について同符号の後に色の識別子を付して示すが、図2及び図3、明細書中では色の識別子を付さずに符号のみで説明する場合もある。
画像形成ユニット50は、トナー画像を形成する感光ドラム(感光体)51と、帯電ローラ52と、現像装置53と、前露光装置(除電手段)54と、規制ブレード55と、メモリ(記憶部)62(図3参照)と、を有している。画像形成ユニット50は、プロセスカートリッジとして一体にユニット化されて、装置本体10に対して着脱可能に構成されている。このため、規定枚数の画像形成により感光ドラム51が寿命に達した場合等に、画像形成ユニット50を交換等することができる。
感光ドラム51は、回転可能であり、画像形成に用いられる静電像が形成される。感光ドラム51は、モータ(駆動手段)13により回転され、モータ13は、駆動回路63を介して制御部11により制御される(図3参照)。感光ドラム51は、本実施形態では、外径30mmの負帯電性の有機感光体(OPC)であり、例えば210mm/secのプロセススピード(周速度)で矢印方向に回転駆動される。尚、各感光ドラム51には、帯電ローラ52から感光ドラム51へ注入される直流電流である注入電流Idcを検知する電流値測定回路(電流検知手段)61がそれぞれ接続されている(図3参照)。
図2に示すように、感光ドラム51は、アルミニウム製シリンダ(導電性ドラム基体)21を基体とし、その表面に表面層として、順に塗布して積層された下引き層22と、光電荷発生層23と、電荷輸送層24との3層を有している。ここで、感光ドラム51の表面層である各層22,23,24は、結着樹脂として硬化性樹脂を用いて硬化層としている。尚、本実施形態では、感光ドラム51の表面硬化処理として硬化性樹脂を用いる硬化層を用いたが、これには限られない。例えば、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送性モノマーと、を熱または光のエネルギにより硬化重合させることによって形成される電荷輸送性硬化層を用いてもよい。あるいは、例えば、同一分子内に連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を、電子線のエネルギにより硬化重合させることによって形成される電荷輸送性硬化層等を用いてもよい。
帯電ローラ52は、感光ドラム51の表面に接触し、従動して回転するゴムローラを用いており、感光ドラム51の表面を均一に帯電する。帯電ローラ52は、芯金25を基体とし、その外回りに順に積層された下層26と、中間層27と、表層28との3層を有しており、軸方向の長さを例えば320mmとしている。下層26は、帯電音を低減するための発泡スポンジ層である。表層28は、感光ドラム51の表面にピンホール等の欠陥があってもリークが発生するのを防止するために設けている保護層であり、凹凸形状に形成されている。表層28は、凹凸形状に形成されることで、凹部と感光ドラム51との圧力を低減させ、帯電ローラ52の汚染を軽減する。表層28を凹凸形状にする方法としては、表層28に微粒子を含有させる方法や、機械的研磨により処理する方法等が提案されている。
本実施形態では、帯電ローラ52は、以下の仕様としている。
(1)芯金25:直径6mmのステンレス丸棒
(2)下層26:カーボン分散の発泡EPDM、比重0.5g/cm3、体積抵抗値102〜109Ωcm、層厚3.0mm
(3)中間層27:カーボン分散のNBR系ゴム、体積抵抗値102〜105Ωcm、層厚700μm
(4)表層28:フッ素化合物のトレジン樹脂に酸化錫とカーボンを分散、体積抵抗値107〜1010Ωcm、層厚10μm、表面粗さ(JIS規格10点平均表面粗さRa)1.5μm
帯電ローラ52の芯金25には、帯電バイアス電源(電圧印加手段)60が接続されている。これにより、芯金25には、帯電バイアス電源60より所定の条件の直流電圧が印加されることによって、感光ドラム51の周面が所定の極性及び電位に接触帯電処理される。即ち、帯電バイアス電源60は、帯電ローラ52に帯電バイアスとして直流電圧を印加し、帯電ローラ52を介して感光ドラム51を帯電する。
帯電は帯電ローラ52から感光ドラム51への放電によって行われるため、ある閾値電圧以上の直流電圧を印加することによって、帯電が開始される。本実施形態では、感光ドラム51の表面電位Vdは、約−600V以上の直流電圧を印加することで上昇を始め、それ以降は印加電圧に対して傾き1で線形に上昇する。例えば、本実施形態では、−300Vの表面電位Vdを得るためには−900Vの直流電圧を印加すれば良く、−500Vの表面電位Vdを得るためには−1100Vの直流電圧を印加すれば良い。
本実施形態では、印加電圧に対して傾き1で線形に上昇するようになる閾値電圧を、放電開始電圧(帯電開始電圧)Vthと定義する。つまり、電子写真に必要とされる感光ドラム51の表面電位Vd(暗部電位)を得るためには、帯電ローラ52には、必要とされる表面電位Vd以上のVd+Vthという直流電圧の印加が必要となる。本実施形態では、画像形成中は感光ドラム51の周面を表面電位Vd=−500Vに一様に接触帯電処理するために、帯電ローラ52に対して帯電バイアス電源60から−1100Vの直流電圧を印加する。
図1に示すように、露光装置(露光手段)42は、レーザスキャナであり、制御部11から出力される分解色の画像情報に従って、レーザ光を発する。各感光ドラム51の表面は、帯電後、各露光装置42によって対応する分解色の画像情報に基づいて露光され、表面において画像情報に応じた静電像(潜像)が形成される。感光ドラム51は、形成された静電像を担持して、周回移動する。
現像装置53は、現像バイアスが印加されることにより感光ドラム51に形成された静電像をトナーで現像する。現像装置53は、二成分磁気ブラシ現像方式の反転現像装置であり、感光ドラム51の表面の露光部分(明部電位部)にトナーを付着させて、感光ドラム51の表面上の静電潜像を反転現像する。現像容器内の現像剤は、非磁性トナーと磁性キャリアとの混合物であり、2つの現像剤攪拌部材の回転によって、均一に攪拌されながら現像スリーブ側に搬送される。
感光ドラム51に現像されたトナー像は、後述する中間転写ベルト44bに一次転写される。一次転写後の感光ドラム51は、前露光装置54によって表面を除電される。前露光装置54は、本体付けの露光ランプを拡散する露光ガイドによって、一次転写後で帯電前の感光ドラム51の表面に残った電位を露光して除電する。即ち、前露光装置54は、静電像がトナーにより現像されて形成されたトナー像が転写された後に、感光ドラム51の表面を除電する。本実施形態では、前露光装置54は、光源波長が400nm〜800nmにピークを有し、感光ドラム51の表面における光量が0.1μW〜40μWの範囲で制御可能であり、光源に印加する電圧を調整することで光量を調節できる。即ち、この前露光装置54は露光手段であり、除電手段としての除電量は、前露光装置54の露光量である。
規制ブレード55は、カウンターブレード方式であり、ブレードの自由長を8mmとするウレタンを主体とした弾性ブレードで、感光ドラム51に対して線圧約35g/cmの押圧力で当接されている。規制ブレード55は、除電後の感光ドラム51の表面に残留する転写残留トナー等の残留物を清掃する。
メモリ62は、感光ドラム51に関する情報を格納する。ここでの感光ドラム51に関する情報は、感光ドラム51の膜厚に関する情報と、感光ドラム51の累積回転時間と、感光ドラム51の使用履歴に関する情報とのうち、少なくとも一つを含む。
中間転写ユニット44は、駆動ローラ44aや従動ローラ44d、一次転写ローラ47y,47m,47c,47k等の複数のローラと、これらのローラに巻き掛けられ、トナー像を担持する中間転写ベルト44bとを備えている。一次転写ローラ47y,47m,47c,47kは、感光ドラム51y,51m,51c,51kにそれぞれ対向して配置され、中間転写ベルト44bに当接する。
中間転写ベルト44bに一次転写ローラ47によって正極性の転写バイアスを印加することにより、感光ドラム51上のそれぞれの負極性を持つトナー像が順次中間転写ベルト44bに多重転写される。二次転写部45は、二次転写内ローラ45aと、二次転写外ローラ45bとを備えている。二次転写外ローラ45bに正極性の二次転写バイアスを印加することによって、中間転写ベルト44bに形成されたフルカラーのトナー像をシートSに転写する。定着部46は、定着ローラ46a及び加圧ローラ46bを備えている。定着ローラ46aと加圧ローラ46bとの間をシートSが挟持され搬送されることにより、シートSに転写されたトナー像は加熱及び加圧されてシートSに定着される。シート排出部は、定着後、排出経路から搬送されるシートSを給送し、例えば、排出口から排出して排出トレイに積載する。
図3に示すように、制御部11はコンピュータにより構成され、例えばCPU71と、各部を制御するプログラムを記憶するROM72と、データを一時的に記憶するRAM73と、外部と信号を入出力する入出力回路(I/F)74とを備えている。CPU71は、画像形成装置1の制御全体を司るマイクロプロセッサであり、システムコントローラの主体である。CPU71は、入出力回路74を介して、シート給送部、画像形成部40、シート排出部、温湿度センサ12に接続され、各部と信号をやり取りすると共に動作を制御する。ROM72には、シートSに画像を形成するための画像形成制御シーケンスや、横スジ防止の補正を行う際の注入電流Idcと帯電電圧の補正量との関係を示すテーブル(表2参照)等が記憶される。
また、制御部11には、帯電バイアス電源60と、電流値測定回路61と、駆動回路63とが接続されている。制御部11は、帯電バイアス電源60から帯電バイアスとして直流電圧を出力させ、芯金25を介して帯電ローラ52に印加することで、回転する感光ドラム51の表面を所定の電位に帯電制御する。電流値測定回路61は、帯電ローラ52から感光ドラム51に流れて注入される注入電流Idcを検知する。駆動回路63は、感光ドラム51を回転させるためのモータ13のドライバ回路である。
制御部11は、非画像形成時に感光ドラム51と帯電ローラ52との間で放電が開始する電圧未満の帯電バイアスを帯電ローラ52に印加した際に電流値測定回路61による検知値が所定範囲外である場合に、画像形成時における画像形成条件を変更する。また、制御部11は、帯電バイアス電源60により帯電バイアスを増加することによって、感光ドラム51と帯電ローラ52との感光ドラム51の回転方向の下流側帯電ギャップ部Gdにおける電位差を増加する。制御部11は、電流値測定回路61により検知された注入電流Idcに基づいて、画像形成時に目標とする帯電バイアスを印加した際に帯電ローラ52から感光ドラム51に流れる注入電流Idcを算出する。更に、制御部11は、算出した注入電流Idcに基づいて画像形成時における画像形成条件を変更する。
尚、本明細書で、画像形成時とは、画像形成装置1に備えられたスキャナやパーソナルコンピュータなどの外部端末から入力された画像情報に基づいて、感光ドラム51にトナー像を形成しているときである。また、非画像形成時とは、画像形成時以外のときであり、例えば、画像形成ジョブ中の前回転時、紙間、後回転時、あるいは画像形成ジョブが実行されていないときである。
次に、このように構成された画像形成装置1における画像形成動作について説明する。
画像形成動作が開始されると、まず感光ドラム51が回転して表面が帯電ローラ52により帯電される。そして、露光装置42により画像情報に基づいてレーザ光が感光ドラム51に対して発光され、感光ドラム51の表面上に静電潜像が形成される。この静電潜像にトナーが付着することにより、現像されてトナー画像として可視化され、中間転写ベルト44bに転写される。
一方、このようなトナー像の形成動作に並行してシートSが供給され、中間転写ベルト44bのトナー画像にタイミングを合わせて、搬送経路を介してシートSが二次転写部45に搬送される。更に、中間転写ベルト44bからシートSに画像が転写され、シートSは、定着部46に搬送され、ここで未定着トナー像が加熱及び加圧されてシートSの表面に定着され、装置本体10から排出される。
ここで、横スジが発生する機序について、詳細に説明する。
図2に示すように、感光ドラム51の回転に対して、帯電ローラ52は順方向に回転して、感光ドラム51を帯電する。上流側帯電ギャップ部Guにおいて、感光ドラム51と帯電ローラ52の間の電位差が放電開始電圧Vth(パッシェン則に基づく)を超えると放電が行われ、感光ドラム51は表面電位Vdとなるように帯電される。しかしながら、帯電ローラ52の一部の抵抗が高かったりすると、上流側帯電ギャップ部Guにおいて均一に帯電が完了しない場合がある。そのとき、下流側帯電ギャップ部Gdにおいて、微小放電が発生するために、帯電横スジが発生してしまう。
そのため、帯電横スジ防止のためには、
(1)下流側帯電ギャップ部Gdにおいて、微小放電を発生させない、もしくは、
(2)下流側帯電ギャップ部Gdにおいて、連続的な安定した放電を発生させる、
ことが望まれる。ここで、下流側帯電ギャップ部Gdにおける感光ドラム51と帯電ローラ52の電位差を、下流放電電位差Vgapとする。すると、帯電横スジ防止のためには、上記(1)(2)の方法はそれぞれ、
(1)下流放電電位差Vgapが、放電開始電圧Vthと等しい(Vgap=Vth)、もしくは、
(2)下流放電電位差Vgapが、放電開始電圧Vthより十分に大きい、
となる。
より具体的には、図4(a)に示すように、Vgap−Vthと横スジランク(A:良〜E:悪)には相関があり、本実施形態では、Vgap−Vth=15Vにおいて、最も横スジランクが悪くなる。これは、Vgap−Vth=15Vの付近では微小放電による帯電不良が発生してしまうが、Vgap−Vth=0V付近では下流側帯電ギャップ部Gdでの放電が発生しないため横スジランクが良い。また、Vgap−Vth>30Vの領域では、安定した放電が発生するために帯電不良が発生せず横スジランクが良い。尚、ここでの横スジランクを設定するための画像評価には、ハーフトーン(255階調における125)画像をシートの全面に形成したものを用いた。
しかし、上記(1)の下流放電電位差Vgapを放電開始電圧Vthと等しくする方法では、上流側帯電ギャップ部Guにて、均一に帯電を完了させることが必要となる。ところが、帯電ローラ52の抵抗ムラによる帯電ムラや、感光ドラム51の暗減衰による表面電位の低下などにより、下流側帯電ギャップ部Gdでの電位差をVgap=Vthとすることは困難である。一方、上記(2)の下流側帯電ギャップ部Gdの電位差をVthより十分に大きくする方法は、上流側帯電ギャップ部Guでの放電量の抑制と、ニップ部での感光ドラム51の暗減衰量の増加とにより実現できる。尚、上記(2)の場合、横スジのレベルは高温多湿環境で悪化する。これは、高温多湿環境では帯電ローラ52の放電性(帯電性能)が良く、上流側帯電ギャップ部Guで十分に感光ドラム51が帯電され、下流放電電位差Vgapを大きくできないためである。本実施形態での感光ドラム51と帯電ローラ52の構成では、初期のVgap−Vthが30Vであるものを使用した。
次に、電荷注入について説明する。画像流れに至らないレベルの感光ドラム51の表面の電気抵抗の低下であっても、帯電ローラ52の接触部分では帯電ローラ52から感光ドラム51へ直接電荷が注入され(以下、電荷注入という)、感光ドラム51の表面電位Vdの上昇が発生する。AC+DC帯電の構成においては、接触部分の電荷注入によって感光ドラム51の表面電位Vdの上昇が起こったとしても、接触部下流におけるAC放電(ポジとネガ)によって表面電位Vdの上昇は打ち消される。しかし、DC帯電の構成においては、下流側帯電ギャップ部Gdで十分にポジ側放電が起こらず、電荷注入による表面電位Vdの上昇の影響がそのまま残ってしまう虞があった。
このため、接触DC帯電方式を採用した画像形成装置1において、下流側帯電ギャップ部Gdにおいて十分な下流放電電位差Vgapを形成することで帯電横スジの発生を抑えているものでは、以下の課題があった。即ち、ニップ中での電荷注入により電位上昇が発生すると、横スジ発生の抑制に必要な下流放電電位差Vgapを確保できなくなり、剥離放電の発生により横スジのレベルが悪化する虞があるという課題があった。特に、高温多湿環境下では注入電荷量が多いため、横スジが発生しやすかった。
次に、電荷注入量の計測について説明する。本実施形態では、帯電ローラ52に放電開始電圧Vth未満の直流電圧を印加し、その時の直流電流である注入電流Idcを計測し、Idc=0であれば、画像形成を開始する。注入電流Idc≠0ならば、電荷注入による画像形成時の感光ドラム51の電位上昇値を計算し、電位上昇値に応じて後述する横スジ防止の制御を行う。
電荷注入による直流電流(以下、注入電流という)は、電荷注入が発生している感光ドラム51に直流電圧を印加した際の直流電流と、電荷注入が発生していない感光ドラム51に直流電圧を印加した際の直流電流と、の差で表される。印加電圧と注入電流とは概ね比例関係にあるため、未放電領域の直流電圧を印加した際の注入電流の値より、画像形成時の印加電圧における注入電流を計算することができる。ここでの算出は、非画像形成時の印加電圧V1の時の注入電流をIdc1、印加電圧V2の時の注入電流をIdc2、画像形成時の印加電圧Vの時に求めたい注入電流をIdcと置くと、数式1のように表される。
本実施形態では、−300Vの直流電圧を帯電ローラ52に印加した際の注入電流Idc1と、−500Vの直流電圧を帯電ローラ52に印加した際の注入電流Idc2と、により得られる直線から、画像形成時の印加電圧Vにおける注入電流の値を求める。例えば、印加電圧V1=−300Vでの注入電流Idc1が−0.12μA、印加電圧V2=−500Vでの注入電流Idc2が−0.34μAであったとする。この場合、画像形成時の印加電圧V=−1100Vでの注入電流Idcは、数式1により、(−0.34−(−0.12))/(−500−(−300))×(−1100)=−1.21μAとなる。
ここで、図4(b)に示すように、注入電流と感光ドラム51の電位上昇値には相関がみられるため、注入電流の値から、画像形成時の感光ドラム51と帯電ローラ52とのニップ部での電位上昇値を求めることができる。ここでの電位上昇値の算出は、注入電流をIdc(A)、感光ドラム51の表面層の膜厚をd(m)、感光ドラム51の誘電率をε(F/m)、感光ドラム51のプロセススピードをp(m/s)、帯電ローラ52の幅w(m)と置くと、数式2のように表される。この数式2は、電位と電荷及び静電容量の関係式から導かれる。
次に、横スジと電荷注入量との関係について説明する。本実施形態では、Vgap−Vth=30Vとなる感光ドラム51及び帯電ローラ52を使用している。そのため、図4(b)に示す注入電流と感光ドラム51の電位上昇値と、図4(a)に示すVgap−Vthと横スジランクとの関係から、注入電流Idcと帯電横スジランクには、表1に示す関係が求められる。表1に示すように、注入電流Idcの増加に伴い、横スジのランクが悪化する。尚、ここでの画像評価では、帯電バイアスの印加及び画像形成は、温度30℃及び相対湿度Rh80%の高温高湿環境で行った。
ここで、横スジ発生への対策について説明する。表1に示すように、注入電流Idcと横スジランクには相関があるため、注入電流Idcの増加分に応じて、下流放電電位差Vgapを増加させることが必要となる。本実施形態では、注入電流Idcの増加により電位上昇値が増加するのに対し、感光ドラム51の表面電位Vdを高くすることで横スジの発生を抑制している。具体的には、本実施形態では感光ドラム51の表面電位Vdの初期設定−500V(帯電ローラ52への印加電圧1100V)に対して、注入電流Idcが0.25μA増加することで電位上昇値が−5V増加するごとに表面電位Vdを−50V増加させた。その結果、表面電位Vdの補正後の横スジランクは、表2に示すようになった。表2に示すように、表面電位Vdの補正により、横スジランクは大きく改善された。尚、表2において、補正前の横スジランクは温度30℃及び相対湿度80%の高温高湿環境における横スジランクであるが、補正後の横スジランクは温度及び湿度にかかわらず一律に補正を行った結果の横スジランクである。
横スジランクが改善された理由としては、表面電位Vdの設定値を大きくすることで、(1)上流側帯電ギャップ部Guでの帯電が不十分になったこと、(2)感光ドラム51の短期暗減衰量が増加したこと、の2つが挙げられる。この2つにより、下流放電電位差Vgapが増加し、横スジ発生が抑制された。尚、画像のコントラスト維持のために、感光ドラム51の表面電位Vdの増加量に応じて、現像装置53に印加する現像DCバイアスと、露光装置42の露光出力との調整を行っている。また、初期から感光ドラム51の表面電位Vdの設定値をVd=−700Vとした場合、放電電流量の増加により、感光ドラム51及び帯電ローラ52の摩耗が促進され、寿命が短くなる可能性がある。そのため、注入電流Idcのレベルに応じて、感光ドラム51の表面電位Vdを調整することが好ましい。
次に、上述した画像形成装置1において画像形成前の非画像形成時に、横スジ発生を抑制するために感光ドラム51の電位を設定する手順を、図5に示すフローチャートに沿って説明する。
制御部11は、前回転時や紙間等の非画像形成時において、横スジランクの検知を実行するタイミングであるか否かを判断する(ステップS1)。制御部11は、例えば、所定枚数の画像形成を行ったか否かにより、横スジランクの検知を実行する。制御部11は、横スジランクの検知を実行するタイミングではないと判断した場合は、画像形成を実行する(ステップS10)。制御部11は、横スジランクの検知を実行するタイミングであると判断した場合は、感光ドラム51を回転させ、各バイアスや露光を制御する(ステップS2)。ここでは、制御部11は、帯電バイアス電源60から帯電ローラ52に放電開始電圧Vth未満の直流電圧、例えば−500Vの直流電圧を印加する。また、制御部11は、前露光装置54をオン、露光装置42をオフ、現像バイアス及び転写バイアスをオフとする。
制御部11は、帯電バイアスの印加により帯電ローラ52から感光ドラム51へ注入される注入電流Idcを、電流値測定回路61によって測定する(ステップS3)。ここで、電荷注入が発生し得る感光ドラム51であれば、放電開始電圧Vth未満の直流電圧が印加された場合でも、帯電ローラ52から感光ドラム51へ注入される電流が、電流値測定回路61によって注入電流Idcとして検出される。制御部11は、電流値測定回路61により測定された注入電流Idcが、0μAであるか否かを判断する(ステップS4)。
制御部11は、注入電流Idcが0μAであると判断した場合は、感光ドラム51に電荷注入が発生しておらず、横スジランクは良好であるとして画像形成を実行する(ステップS10)。また、制御部11は、注入電流Idcが0μAではないと判断した場合は、再び感光ドラム51を回転させた状態で、各バイアスや露光を制御する(ステップS5)。ここでは、制御部11は、帯電バイアス電源60から帯電ローラ52に放電開始電圧Vth未満の直流電圧であって、ステップS2とは異なる例えば−300Vの直流電圧を印加する。また、制御部11は、前露光装置54をオン、露光装置42をオフ、現像バイアス及び転写バイアスをオフとする。制御部11は、帯電バイアスの印加により帯電ローラ52から感光ドラム51へ注入される注入電流Idcを、電流値測定回路61によって測定する(ステップS6)。
制御部11は、ステップS3,S6で検出された2つの注入電流Idcに基づいて、画像形成時に目標となる帯電バイアスを印加した際に流入する注入電流Idcを、例えば数式1を利用して算出する(ステップS7)。そして、制御部11は、例えば数式2に基づいて、数式1により得られた注入電流Idcを利用して画像形成時の感光ドラム51の電位上昇値を算出する(ステップS8)。更に、制御部11は、例えば、表2に示すように、得られた注入電流Idcが増加して電位上昇値が増加するほど感光ドラム51の表面電位Vdが増加するように、帯電バイアスを増加させて印加し(ステップS9)、画像形成を実行する(ステップS10)。即ち、制御部11は、画像形成時の感光ドラム51の電位上昇値に基づいて、帯電バイアスの増加量を設定している。
尚、本実施形態では、制御部11は、画像形成時の感光ドラム51の電位上昇値に基づいて帯電バイアスの増加量を設定しているが、これには限られない。例えば、電位上昇値を算出せず、注入電流Idcに基づいて、計算あるいはテーブル参照により帯電バイアスの増加量を設定するようにしてもよい。
上述したように本実施形態の画像形成装置1によれば、制御部11は、非画像形成時に感光ドラム51と帯電ローラ52との間で放電が開始する電圧未満の帯電バイアスを帯電ローラ52に印加した際に、以下のように制御を実行する。その際に、制御部11は、電流値測定回路61による検知値が所定範囲外である場合に、画像形成条件を変更する。このため、制御部11は、感光ドラム51と帯電ローラ52との間で放電が開始する電圧未満の帯電バイアスであるにも関わらず、帯電バイアスの印加により感光ドラム51から帯電ローラ52に注入される直流電流が検知された場合は、以下のようにする。この場合、制御部11は、注入電流Idcに応じて、横スジを抑制できる画像形成条件を設定する。これにより、感光ドラム51や帯電ローラ52の寿命を短くすることなく、かつ消費電力を増加することなく帯電横スジの発生を抑制できる。
また、本実施形態の画像形成装置1によれば、制御部11は、帯電バイアス電源60により帯電バイアスを増加することによって、感光ドラム51と帯電ローラ52との感光ドラム51の回転方向の下流側帯電ギャップ部Gdにおける電位差を増加する。このため、制御部11は、帯電バイアス電源60により帯電バイアスを増加するという簡易な手法により、感光ドラム51や帯電ローラ52の寿命を短くすることなく、かつ消費電力を増加することなく帯電横スジの発生を抑制することができる。
尚、上述した第1の実施形態の画像形成装置1では、帯電電圧の補正量を温度30℃及び相対湿度80%の高温高湿環境における帯電横スジランクを元に決定し、温度及び湿度にかかわらず一律に補正を行ったが、これには限られない。例えば、制御部11は、検知した環境情報に基づいて、下流側帯電ギャップ部Gdにおける電位差を制御するようにしてもよい。即ち、注入電流Idcが等しい場合でも、温度及び湿度によって帯電ローラ52の帯電性能や感光ドラム51の暗減衰量は異なるため、温度や湿度ごとに補正量を調整してもよい。特に、低温低湿環境では帯電性能が低下し、上流側帯電ギャップ部Guでの放電量が小さくなるため、帯電横スジの抑制には有利であり、帯電電圧の補正量は小さくてもよい。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を、図6に沿って詳細に説明する。本実施形態では、制御部11は、例えば、検知値から算出して得られた画像形成時の注入電流Idcが増加するほど感光ドラム51の表面電位Vdを増加させるために、前露光装置54の露光量を増加させる。第2の実施形態は、上記の点において第1の実施形態と構成を異にしているが、それ以外の構成や制御等は第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
本実施形態では、制御部11は、前露光装置54の露光量(除電量)を増加することにより、感光ドラム51と帯電ローラ52との感光ドラム51の回転方向の下流側帯電ギャップ部Gdにおける電位差を増加する。また、ROM72には、横スジ防止の補正を行う際の注入電流Idcと前露光量の補正量との関係を示すテーブル(表3参照)等が記憶される。以下、具体的に説明する。
本実施形態では、注入電流Idcの増加に伴って、前露光装置(除電手段)54の前露光量を増加させる。具体的には、本実施形態では前露光装置54の初期の光量L=10μWに対して、注入電流Idcが0.25μA増加するごとに光量を8μWずつ増加させた。その結果、前露光量の補正後の横スジランクは、表3に示すようになった。表3に示すように、前露光量の補正により、横スジランクは大きく改善された。尚、表3において、補正前の横スジランクは温度30℃及び相対湿度80%の高温高湿環境における横スジランクであるが、補正後の横スジランクは温度及び湿度にかかわらず一律に補正を行った結果の横スジランクである。
横スジランクが改善された理由としては、前露光量を大きくすることで、以下の2つの作用が挙げられる。(1)上流側帯電ギャップ部Guの手前での感光ドラム51の表面電位Vdを低くすることで、上流側での帯電を不十分にすること。(2)感光ドラム51内のフォトキャリアの残留量の増加による暗減衰量の増加すること。これらの2つにより、下流放電電位差Vgapを大きくし、横スジの発生を抑制することができたためである。また、最初から前露光装置54の初期の光量L=32μWとした場合、放電電流量の増加により感光ドラム51及び帯電ローラ52の削れが促進され、寿命が短くなる可能性がある。そのため、電荷注入のレベルに応じて、前露光量を調整することが好ましい。
次に、上述した画像形成装置1において画像形成前の非画像形成時に、横スジ発生を抑制するために前露光量を設定する手順を、図6に示すフローチャートに沿って説明する。尚、図6において、ステップS1〜S8及びS10は、第1の実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
本実施形態では、制御部11は、2つの注入電流Idcを測定した場合(ステップS3,S6)、2つの注入電流Idcに基づいて、画像形成時の注入電流Idcを、例えば数式1を利用して算出する(ステップS7)。そして、制御部11は、例えば数式2に基づいて、数式1により得られた注入電流Idcを利用して画像形成時の感光ドラム51の電位上昇値を算出する(ステップS8)。更に、制御部11は、例えば、表3に示すように、得られた注入電流Idcが増加して電位上昇値が増加するほど前露光量が増加するように、前露光量を増加させて露光し(ステップS19)、画像形成を実行する(ステップS10)。尚、本実施形態では、制御部11は、制御部11は、画像形成時の感光ドラム51の電位上昇値に基づいて前露光量の増加量を設定しているが、これには限られない。例えば、電位上昇値を算出せず、注入電流Idcに基づいて、計算あるいはテーブル参照により前露光量の増加量を設定するようにしてもよい。
上述したように本実施形態の画像形成装置1によっても、制御部11は、非画像形成時に感光ドラム51と帯電ローラ52との間で放電が開始する電圧未満の帯電バイアスを帯電ローラ52に印加した際に、以下のように制御を実行する。制御部11は、電流値測定回路61による検知値が所定範囲外である場合に、注入電流Idcに応じて、横スジを抑制できる画像形成条件を設定する。これにより、感光ドラム51や帯電ローラ52の寿命を短くすることなく、かつ消費電力を増加することなく帯電横スジの発生を抑制できる。
また、本実施形態の画像形成装置1によれば、制御部11は、前露光装置54の前露光量を増加することにより、感光ドラム51と帯電ローラ52との感光ドラム51の回転方向の下流側帯電ギャップ部Gdにおける電位差を増加する。このため、制御部11は、前露光装置54の除電量を増加するという簡易な手法により、感光ドラム51や帯電ローラ52の寿命を短くすることなく、かつ消費電力を増加することなく帯電横スジの発生を抑制することができる。
尚、上述した第2の実施形態の画像形成装置1では、前露光の補正量を温度30℃及び相対湿度80%の高温高湿環境における帯電横スジランクを元に決定し、温度及び湿度にかかわらず一律に補正を行ったが、これには限られない。例えば、注入電流Idcが等しい場合でも、温度及び湿度によって帯電ローラ52の帯電性能や感光ドラム51の暗減衰量は異なるため、温度や湿度ごとに補正量を調整してもよい。特に、低温低湿環境では帯電性能が低下し、上流側帯電ギャップ部Guでの放電量が小さくなるため、帯電横スジの抑制には有利であり、前露光量の補正量は小さくてもよい。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態を、図7に沿って詳細に説明する。本実施形態では、制御部11は、例えば、検知値から算出して得られた画像形成時の注入電流Idcが増加するほど感光ドラム51の回転速度であるプロセススピードを増加させる。第3の実施形態は、上記の点において第1の実施形態と構成を異にしているが、それ以外の構成や制御等は第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
本実施形態では、制御部11は、モータ(駆動手段)13により感光ドラム51の回転速度を増加することによって、感光ドラム51と帯電ローラ52との下流側帯電ギャップ部Gdにおける電位差を増加する。また、ROM72には、横スジ防止の補正を行う際の注入電流Idcとプロセススピードの補正量との関係を示すテーブル(表4参照)等が記憶される。以下、具体的に説明する。
本実施形態では、注入電流Idcの増加に伴って、プロセススピードを増加させる。具体的には、本実施形態ではプロセススピード210mm/sに対して、注入電流Idcが0.25μA増加するごとにプロセススピードを26mm/sずつ増加させた。その結果、プロセススピードの補正後の横スジランクは、表4に示すようになった。表4に示すように、プロセススピードの補正により、横スジランクは大きく改善された。尚、表4において、本実施形態で使用した画像形成装置1ではプロセススピードの上限値が270mm/sであったため、注入電流Idc=−0.24μA、−0.53μAの条件に対して実施した。また、表4において、補正前の横スジランクは温度30℃及び相対湿度80%の高温高湿環境における横スジランクであるが、補正後の横スジランクは温度及び湿度にかかわらず一律に補正を行った結果の横スジランクである。
横スジランクが改善された理由としては、プロセススピードを大きくすることで、以下の2つの作用が挙げられる。(1)上流側帯電ギャップ部Guを通過するのに要する時間が短くなるため、上流での帯電が不十分になること。(2)感光ドラム51と帯電ローラ52の接触部を通過する時間が短くなるため、電荷注入量が減少すること。これらの2つにより、下流放電電位差Vgapを大きくし、横スジの発生を抑制することができたためである。また、最初からプロセススピードを262mm/sとした場合、シート搬送速度増加による定着性能の低下を補うために、定着部46の定着温度を大きくする必要があり、消費電力の増加及び定着部46の短寿命化を招く可能性がある。そのため、電荷注入のレベルに応じて、プロセススピードを調整することが好ましい。
次に、上述した画像形成装置1において画像形成前の非画像形成時に、横スジ発生を抑制するためにプロセススピードを設定する手順を、図7に示すフローチャートに沿って説明する。尚、図7において、ステップS1〜S8及びS10は、第1の実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
本実施形態では、制御部11は、2つの注入電流Idcを測定した場合(ステップS3,S6)、2つの注入電流Idcに基づいて、画像形成時の注入電流Idcを、例えば数式1を利用して算出する(ステップS7)。そして、制御部11は、例えば数式2に基づいて、数式1により得られた注入電流Idcを利用して画像形成時の感光ドラム51の電位上昇値を算出する(ステップS8)。更に、制御部11は、例えば、表4に示すように、得られた注入電流Idcが増加して電位上昇値が増加するほどプロセススピードが増加するように、モータ13の回転速度を増加させ(ステップS29)、画像形成を実行する(ステップS10)。尚、本実施形態では、制御部11は、画像形成時の感光ドラム51の電位上昇値に基づいてプロセススピードの増加量を設定しているが、これには限られない。例えば、電位上昇値を算出せず、注入電流Idcに基づいて、計算あるいはテーブル参照によりプロセススピードの増加量を設定するようにしてもよい。
上述したように本実施形態の画像形成装置1によっても、制御部11は、非画像形成時に感光ドラム51と帯電ローラ52との間で放電が開始する電圧未満の帯電バイアスを帯電ローラ52に印加した際に、以下のように制御を実行する。制御部11は、電流値測定回路61による検知値が所定範囲外である場合に、注入電流Idcに応じて、横スジを抑制できる画像形成条件を設定する。これにより、感光ドラム51や帯電ローラ52の寿命を短くすることなく、かつ消費電力を増加することなく帯電横スジの発生を抑制できる。
また、本実施形態の画像形成装置1によれば、制御部11は、感光ドラム51のプロセススピードを増加することにより、感光ドラム51と帯電ローラ52との感光ドラム51の回転方向の下流側帯電ギャップ部Gdにおける電位差を増加する。このため、制御部11は、プロセススピードを増加するという簡易な手法により、感光ドラム51や帯電ローラ52の寿命を短くすることなく、かつ消費電力を増加することなく帯電横スジの発生を抑制することができる。
尚、上述した第3の実施形態の画像形成装置1では、プロセススピードの補正量を温度30℃及び相対湿度80%の高温高湿環境における帯電横スジランクを元に決定し、温度及び湿度にかかわらず一律に補正を行ったが、これには限られない。例えば、注入電流Idcが等しい場合でも、温度及び湿度によって帯電ローラ52の帯電性能や感光ドラム51の暗減衰量は異なるため、温度や湿度ごとに補正量を調整してもよい。特に、低温低湿環境では帯電性能が低下し、上流側帯電ギャップ部Guでの放電量が小さくなるため、帯電横スジの抑制には有利であり、プロセススピードの補正量は小さくてもよい。
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態を、図8〜図10に沿って詳細に説明する。本実施形態では、制御部11は、感光ドラム51の現像位置での表面電位Vdが制御の前後で大きく変化しないように、現像時にトナーが付着しない白地部の画像露光量を増加させる。第4の実施形態は、上記の点において第1の実施形態と構成を異にしているが、それ以外の構成や制御等は第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
本実施形態の画像形成装置1は、第1の実施形態と同様に、制御部11は、横スジ対策の制御として非画像形成時に感光ドラム51と帯電ローラ52の間で放電が開始する電圧未満の直流電圧を帯電ローラ52に印加する。そして、制御部11は、直流電流の検知量に応じて画像形成時の印加電圧を増加させ、表面電位Vdを増加させる。しかし、表面電位Vdが増加すると、白地部のカブリ電位差(表面電位Vdと現像バイアスVdcの差分)が増加してしまうため、現像装置53からの現像剤の微小な流出が発生し易くなってしまう。そこで、本実施形態の画像形成装置1では、制御部11は、現像位置での表面電位Vdが制御の前後で変化しないように、露光装置42の露光量を増加することにより、現像時にトナーが付着しない白地部の画像露光量を増加する。また、ROM72には、横スジ防止の補正を行う際の露光装置42の露光量を補正するシーケンス等が記憶される。
ここで、白地部の画像露光量の補正について説明する。図8(a)において、第1の実施形態において横スジ防止の補正を行わない場合を逆三角形のプロットで示す。この場合、帯電ローラ52への印加電圧Vprを−1100Vとし、画像信号が0の場合は暗部電位で−500V、画像信号が255の場合は明部電位で−200Vである。ここでは、露光補正を行っていない。これに対し、第1の実施形態において横スジ防止の補正として、印加電圧Vprを200V上昇させた場合を、四角形のプロットで示す。この場合、帯電ローラ52への印加電圧Vprを−1300Vとし、画像信号が0の場合は暗部電位で−700Vに増加し、画像信号が255の場合は明部電位で−250Vに増加している。この場合も、露光補正を行っていない。
そして、図8(b)では、縦軸は、画像信号に対応するドラム電位を示し、プラス側が現像コントラスト電位、マイナス側がカブリ電位である。横スジ防止の補正を行わない場合(逆三角形のプロット)、現像装置53に印加された現像バイアスVdcが−550Vの場合、現像コントラスト電位は明部電位−200Vと現像バイアスVdc−350Vとの差分で150Vである。また、この場合、現像カブリを抑制するためのカブリ電位は、暗部電位−500Vと現像バイアスVdc−350Vとの差分である−150Vであった。
これに対し、横スジ防止の補正として、印加電圧Vprを200V上昇させた場合(四角形のプロット)、画像信号が255での明部電位が−250Vである。このため、画像濃度を横スジ補正の有無で同じにしようとすると、現像バイアスVdcは−400Vにする必要がある。一方で、横スジ防止の補正により帯電ローラ52への印加電圧Vprを−1.1kVから−1.3kVに増加させた画像信号が0での暗部電位は前述の通り−700Vである。このため、カブリ電位は、暗部電位−700Vと現像バイアスVdc−400Vとの差分の−300Vとなる。一般的に、カブリ電位が大きいほどカブリはよくなるが、キャリア等の微小な現像剤流出は増えるため、何らかの対策を採用することが好ましい。
そこで、本実施形態では、図9(a)に示すように、横スジ防止の補正に伴って画像信号に対する画像露光量を補正することで、補正による白地部の表面電位Vdの変化をできるだけ小さくしている。図9(a)に示すように、帯電ローラ52への印加電圧Vprを−1300Vとし露光補正を行わない場合(四角形のプロット)、画像信号が0の画像露光量は0、即ちゼロ発光で、画像信号が255の画像露光量は100%である。これに対し、帯電ローラ52への印加電圧Vprを−1300Vとし露光補正を行う場合(三角形のプロット)、画像信号が0の画像露光量30%から、画像信号が255の画像露光量100%までの間を線形補完している。このような画像信号と画像露光量の関係は、画像形成装置1のROM72に演算テーブルとして複数格納されており、必要に応じて切り換えが可能になっている。
更に、図9(b)に示すように、露光補正を行わない場合(四角形のプロット)、画像信号が0でのカブリ電位は−300Vとなっているのに対し、露光補正を行う場合(三角形のプロット)、画像信号が0でのカブリ電位は−150Vに減少している。即ち、画像上では白地になっているカブリ電位部でも画像露光を行うことで、現像位置での表面電位Vdを低下させ、カブリ電位が過剰に大きくなることを防止できる。これにより、現像装置53での微小な現像剤の流出を防止することが可能となる。
次に、上述した画像形成装置1において画像形成前の非画像形成時に、横スジ発生を抑制するために感光ドラム51の電位を設定し、白地部の露光補正を実行する手順を、図10に示すフローチャートに沿って説明する。尚、図10において、ステップS1〜S9及びS10は、第1の実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
本実施形態では、制御部11は、例えば数式2に基づいて、数式1により得られた注入電流Idcを利用して画像形成時の感光ドラム51の電位上昇値を算出する(ステップS8)。そして、制御部11は、例えば、表2に示すように、得られた注入電流Idcが増加して電位上昇値が増加するほど感光ドラム51の表面電位Vdが増加するように、帯電バイアスを増加させて印加する(ステップS9)。更に、制御部11は、白地部の露光補正を行い(ステップS39)、画像形成を実行する(ステップS10)。
上述したように本実施形態の画像形成装置1によっても、制御部11は、非画像形成時に感光ドラム51と帯電ローラ52との間で放電が開始する電圧未満の帯電バイアスを帯電ローラ52に印加した際に、以下のように制御を実行する。制御部11は、電流値測定回路61による検知値が所定範囲外である場合に、注入電流Idcに応じて、横スジを抑制できる画像形成条件を設定する。これにより、感光ドラム51や帯電ローラ52の寿命を短くすることなく、かつ消費電力を増加することなく帯電横スジの発生を抑制できる。
また、本実施形態の画像形成装置1によれば、制御部11は、帯電バイアス電源60により帯電バイアスを増加することによって、感光ドラム51と帯電ローラ52との感光ドラム51の回転方向の下流側帯電ギャップ部Gdにおける電位差を増加する。更に、制御部11は、現像位置での表面電位Vdが制御の前後で変化しないように、白地部の画像露光量を増加させる。これにより、現像装置での微小な現像剤の流出を防止することが可能となる。
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態を、図11及び図12に沿って詳細に説明する。本実施形態では、制御部11は検知した注入電流Idc及び感光ドラム51に関する情報に応じて、下流側帯電ギャップ部Gdにおける電位差を制御する。第5の実施形態は、上記の点において第1の実施形態と構成を異にしているが、それ以外の構成や制御等は第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
本実施形態では、制御部11は、注入電流Idcの検知値及び感光ドラム51に関する情報に応じて、下流側帯電ギャップ部Gdにおける電位差を制御する。ROM72には、シートSに画像を形成するための画像形成制御シーケンスや、横スジ防止の補正を行う際の注入電流Idcと帯電電圧の補正量との関係を示すテーブル(表2参照)等が記憶される。
本実施形態では、制御部11は、非画像形成時に放電開始電圧以下の電圧を印加して注入電流Idcを検知後、画像形成ユニット50に装着されているメモリ62の感光ドラム51に関する情報を読み出す。そして、制御部11は、感光ドラム51に関する情報から、電位上昇量を算出している。このメモリ62に保持された感光ドラム51に関する情報としては、感光ドラム51の表面層の膜厚に関する情報や、感光ドラム51の回転時間や、感光ドラム51の過去の使用履歴などがある。
ここで、感光ドラム51の表面層の厚みに関する情報と横スジランクとの関係について説明する。数式2において、プロセススピード、感光ドラム51の誘電率、帯電ローラ52の幅が既知の値の場合、感光ドラム51の表面層の厚みによって電位上昇値が決まる。即ち、図11に示すように、同じ注入電流Idcであっても、感光ドラム51の表面層が膜厚20μmの場合と膜厚10μmの場合とでは、電位上昇値が約2倍の異なる値になる。
画像形成装置1に配置される感光ドラム51の表面層の膜厚が常に同じであれば、画像形成装置1の制御部11が感光ドラム51の表面層の膜厚情報を持てばよい。しかしながら、例えばカラープリンタで各色ごとに感光ドラム51の表面層の膜厚が異なる場合や、仕向けで感光ドラム51の表面層の膜厚が異なる等、様々な場合がある。そこで、画像形成ユニット50に設けられたメモリ62に感光ドラム51の表面層の膜厚に関する情報を格納し、そのメモリ62の情報を制御部11が読み出すことで、異なる感光ドラム51の表面層の膜厚に対応することができる。
更に、感光ドラム51の表面層の膜厚が感光ドラム51の回転により削れて変動する場合、その情報を制御部11が記憶してもよいが、画像形成ユニット50のメモリ62に記憶してもよい。その場合、膜厚を導出する数式は、画像形成装置1のプロセス条件によって様々な近似式が考えられる。ここで、簡単な直線近似が成り立つ場合は、感光ドラム51の回転時間をX(h)、1時間当たりの感光ドラム51の表面層の膜厚減少速度をα(μm/h)、感光ドラム51の表面層の初期膜厚をβ(μm)と置く。この場合、x時間、耐久した時の感光ドラム51の表面層の膜厚y(μm)は、数式3により算出される。
即ち、メモリ62の内部に感光ドラム51の表面層の初期膜厚β、感光ドラム51の表面層の膜厚減少率αを予め記録し、制御部11を介して使用時間に応じて感光ドラム51の回転時間xをその都度記録する。これにより、制御部11は、感光ドラム51の使用時間に応じて、適切な電位上昇値を算出することができる。
また、上述したように、帯電ローラ52の注入電流Idcは画像形成装置1が設置された温湿度環境に依存し、高温高湿環境ほど注入電流Idcが増加し、逆に低温低湿度環境ほど注入電流Idcが減少する。このような温湿度環境の変化は、感光ドラム51の耐久履歴として影響することがある。これは、主に空気中の水分が感光ドラム51内に浸透することで電気抵抗が低下し、暗減衰が増加することが原因と考えられている。
このような長時間高温高湿度で放置された感光ドラム51は、新品の感光ドラム51に比べて、同じ注入電流Idcでも、より横スジレベルが悪化することがある。このため、制御部11が、検知した温湿度及びその時間を画像形成ユニット50のメモリ62に記録し、その温湿度及びその時間の情報に応じて帯電バイアスの補正値を切り換えるようにすることが好ましい。ここでは、表5に示すように、高温高湿の環境に放置した時間によって、電位上昇値に対応する帯電バイアスの補正値を変更する。これにより、画像形成ユニット50の使用履歴に応じて、帯電バイアスの補正量を適正化することが可能となる。
次に、上述した画像形成装置1において画像形成前の非画像形成時に、注入電流Idc及び感光ドラム51に関する情報に基づいて感光ドラム51の電位を設定する手順を、図12に示すフローチャートに沿って説明する。尚、図12において、ステップS1〜S7及びS9,S10は、第1の実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
本実施形態では、制御部11は、2つの注入電流Idcを測定した場合(ステップS3,S6)、2つの注入電流Idcに基づいて、画像形成時の注入電流Idcを、例えば数式1を利用して算出する(ステップS7)。また、制御部11は、画像形成ユニット50のメモリ62を参照して、感光ドラム51に関する情報、例えば表面層の膜厚を取得する(ステップS47)。そして、制御部11は、例えば数式2に基づいて、数式1により得られた注入電流Idcと、感光ドラム51の表面層の膜厚と、を利用して画像形成時の感光ドラム51の電位上昇値を算出する(ステップS48)。そして、制御部11は、例えば、表2に示すように、得られた注入電流Idcが増加して電位上昇値が増加するほど感光ドラム51の表面電位Vdが増加するように、帯電バイアスを増加させて印加し(ステップS9)、画像形成を実行する(ステップS10)。
上述したように本実施形態の画像形成装置1によっても、制御部11は、非画像形成時に感光ドラム51と帯電ローラ52との間で放電が開始する電圧未満の帯電バイアスを帯電ローラ52に印加した際に、以下のように制御を実行する。制御部11は、電流値測定回路61による検知値が所定範囲外である場合に、注入電流Idcに応じて、横スジを抑制できる画像形成条件を設定する。これにより、感光ドラム51や帯電ローラ52の寿命を短くすることなく、かつ消費電力を増加することなく帯電横スジの発生を抑制できる。
また、本実施形態の画像形成装置1によれば、制御部11は、帯電バイアス電源60により帯電バイアスを増加することによって、感光ドラム51と帯電ローラ52との感光ドラム51の回転方向の下流側帯電ギャップ部Gdにおける電位差を増加する。更に、制御部11は、注入電流Idcに加えて感光ドラム51に関する情報をも利用して、電位上昇値を算出している。このため、感光ドラム51の実際の使用状況に応じた適切な電位上昇値を算出することができ、より効果的に帯電横スジの発生を抑制できる。
<その他の実施形態>
上述した第1〜第5の実施形態では、それぞれ、帯電バイアスの増加、露光装置42の露光量の増加、プロセススピードの増加により下流側帯電ギャップ部Gdにおける電位差を増加しているが、これには限られない。例えば、他の手法によって下流側帯電ギャップ部Gdにおける電位差を増加するようにしてもよく、あるいは、これらのうちの複数あるいは1つを選択的に実行するようにしてもよい。